JP4504267B2 - 半導体ナノ粒子の製造方法及び半導体材料の表面を被覆する方法 - Google Patents

半導体ナノ粒子の製造方法及び半導体材料の表面を被覆する方法 Download PDF

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Description

本発明はシリコン、ゲルマニウム、炭素、および錫、などの元素を含む半導体ナノ粒子の製造方法、同元素を含む半導体表面の被覆方法、並びにそれらにより製造された半導体ナノ粒子、表面が被覆された半導体材料、及び発光素子に関するものである。
光情報通信分野への応用を目指した、発光材料としてのシリコンを始めとするシリコン系半導体材料(他にゲルマニウム、炭素、錫など)の研究は、歴史的にも旧く、1980年代半ばから現在にかけて長期に亘って行われている。しかしながら、3−5族化合物であるインジウム燐、ガリウムヒ素、窒化ガリウムなどの発光材料の研究と比較すると、シリコン系半導体材料の研究にはあまり進展が見られない。
これには大きな理由がある。それは、シリコン系半導体材料には光を放出する機構が備わっていない、すなわち、発光を示さないことである。
たとえば、シリコンが発光しない理由は、間接バンドギャップを有する半導体材料であり、半導体レーザーのような効率的な発光素子を作れない結晶構造を持つためである。これとは対照的に、3−5族化合物のインジウム燐、ガリウムヒ素、窒化ガリウムは直接バンドギャップを有する半導体材料であることから、半導体レーザーの材料としてよく用いられている。
表1は、シリコンに発光機能を与える従来の材料技術をまとめたもので、6つの代表的な技術である、液相合成シリコンナノ粒子、希土類イオンドーピング、気相合成シリコンクラスター、ポーラスシリコン、シリサイド半導体、歪み超格子について、課題などをそれぞれ示した。
Figure 0004504267
結論から言うと、本発明者らの知る限り、これまでいずれの材料技術によってもシリコンを効率的に光らせるには至っていない。1つ目の、液相合成シリコンナノ粒子については、不均一な還元反応が原因となって、ナノ粒子の構造と粒径の制御が難しいという課題がある。
2つ目の希土類イオンドーピング(Erイオンドーピング)については、シリコン結晶中に発光性のErイオンが殆ど溶けないために、ドーピングが困難であり、結果として発光が得づらい課題がある。
3つ目の気相合成シリコンクラスターについては、液相合成シリコンナノ粒子とは対照的に、粒径が大きいものしか作れない「大粒径問題」という課題がある。クラスターは主に赤外領域でしか発光を示さず、可視領域では一般に発光しない。
4つ目のポーラスシリコンについては、気相合成シリコンクラスターと同様、「大粒径問題」という課題がある。陽極酸化では得られる粒子の粒径がまだ大きいため、赤領域での発光を示すという結果が得られているが、青や緑の発光は得られ難い。
5つ目のシリサイド半導体(おもにβ−FeSiを指す)については、結晶中に歪みを導入しないと光らないという課題がある。なお、計算と実験の両方から、β−FeSiは間接バンドギャップの半導体であることが示されており、本質的に発光しない物質であることが判明してきた。
6つ目の歪み超格子(Si/SiGe)については、殆ど発光が得られないという課題がある。SiGeがそもそも間接バンドギャップの半導体であり、そのために発光し難いことが判明しつつある。
以上の説明から、シリコンを始めとするシリコン系半導体材料に発光機能を与えることを目的とした現状技術の中には、実際に効率よく発光させる技術が見当たらないという、大きな問題があった。
シリコンを始めとするシリコン系半導体材料に発光機能を与えることができると、以下に述べるような理由で、エレクトロニクスを大きく進化させることが可能になり、豊かな未来社会の実現に大きく貢献すると期待される。
来るべき未来社会では、情報を自在に活用したいという社会的欲求が益々高まると考えられ、LSIを始めとするエレクトロニクスには今以上の超高速性が求められると考えられている。情報処理や情報伝達の担い手は、その主役の座が、現在の電子から、最速の情報速度を持つ光へと代わるものと予測されている。
光情報通信の分野において、光ファイバ通信をハードウエア面で支える個別の光デバイス(半導体レーザー、光変調器他)が各々シリコンで置き換えられるようになると、LSIと光ファイバがシリコンウエハ上で一体化し、やがて同化する時代が到来する。これは、エレクトロニクスと通信が一体化し、情報処理・伝達の速度が光速の極限にまで速められることを意味する。従って、光デバイスのシリコン化は、広帯域を必要とする、パソコン、検索(インターネット)、画像認識システム、通信、予報・予測(演算や計算)など、様々なアプリケーションや社会インフラの超高速化に大きく貢献するという訳である。
ところが、シリコン系半導体材料に発光機能を与えようとする現状の材料技術では、シリコン系半導体材料を効率的に発光させることが出来ないという本質的な課題を抱えている。
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、シリコン系半導体材料に発光機能を与える方法として、従来法とは全く異なる、新規な液相合成ナノ粒子の製造方法と、同様な手法に基づく新規な半導体表面の被覆方法とを提供し、かつ、これらの方法により得られる発光機能を持たせたシリコン系半導体材料をベースとする発光素子を提供するものである。
本発明による半導体ナノ粒子の製造方法は、不活性有機溶媒中において、シリコン、ゲルマニウム、炭素、および錫からなる群から選ばれる半導体元素を含む分子と、前記不活性有機溶媒に可溶な還元剤とを、前記半導体元素を含む分子中の半導体元素のモル数と前記還元剤の当量数とをそれぞれAおよびBとしたときの比B/Aが3以上4以下となるようにして、0℃以下の反応温度で反応させて、前記半導体元素を含む分子に由来する半導体元素を含む半導体ナノ粒子を成長させることを特徴とするものである。
また、本発明による半導体ナノ粒子は、前記の方法により製造されたことを特徴とするものである。
また、本発明による第1の光素子は、電気的または光学的なエネルギー励起により光を発する発光部を具備してなる光素子であって、前記発光部が前記の半導体ナノ粒子を有することを特徴とするものである。
また本発明による半導体材料の表面を被覆する方法は、シリコン、ゲルマニウム、炭素、および錫からなる群から選ばれる半導体元素を含む半導体材料の表面を不活性有機溶媒中に晒し、シリコン、ゲルマニウム、炭素、および錫からなる群から選ばれる半導体元素を含む分子と、前記不活性有機溶媒に可溶な還元剤とを、前記半導体元素を含む分子中の半導体元素のモル数と前記還元剤の当量数をそれぞれAおよびBとしたときの前記不活性溶媒中における比B/Aが1以上4以下となるようにし、0℃以下の反応温度で反応させて、前記半導体材料の表面を、前記半導体を含む分子に由来する半導体元素を含む被覆層で被覆することを特徴とするものである。
また、本発明による半導体材料は、前記の方法により製造されたことを特徴とするものである。
また、本発明による第2の光素子は、電気的または光学的なエネルギー励起により光を発する発光部を具備してなる光素子であって、前記発光部が前記の半導体材料を有することを特徴とするものである。
本発明の製造方法によれば、精密に粒径制御され、かつ組成制御されたシリコン系半導体ナノ粒子の合成が、はじめて可能になる。他の製造法で作られたシリコン系半導体ナノ粒子と比較して、発光波長のテーラーメード化、発光効率の向上など、真に発光特性に優れたシリコン系半導体ナノ粒子がはじめて実現可能になる。
そして、本発明の製造方法によるシリコン系半導体ナノ粒子を用いることで、発光素子がシリコン化でき、LSIの光速化が進むため、広帯域を必要とする、パソコン、検索(インターネット)、画像認識システム、通信、予報・予測(演算や計算)など、様々なアプリケーションや社会インフラの超高速化が実現可能になり、その産業上のメリットは多大である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(実施形態)を詳細に説明すると以下の通りである。
まず初めに、何故シリコン系材料を発光させるために「液相合成」による「ナノ粒子」を選んだか、その理由を簡単に述べる。次に、本発明の特徴を明確にするために、従来の液相合成法を例に上げ、その原理と問題点を指摘する。次に、この問題点をクリアするために必要な種々の条件について考察し、本発明の合成法に至った経緯とその原理を説明する。そして、本発明により、原子レベルでの精密な構造制御と粒径制御が可能になり、従来は光らないと考えられていたシリコン系半導体材料において、強い蛍光を示すナノ粒子(ナノ構造体)が実現可能になることを説明していく。
1)何故、液相合成ナノ粒子を選んだか
ナノ粒子(ナノ構造体)を選んだ理由はとてもシンプルである。ナノ構造化によって結晶の並進対称性、言い換えると結晶の周期性は壊れる。シリコン系半導体において、バンドギャップ付近のエネルギー領域で遷移確率が本質的にゼロである理由は、結晶がダイヤモンド構造であることに由来する。従って、周期性が破れれば、そのことによって遷移確率は増大する。要するに、発光の増大が期待できる。ナノ構造体を作るには様々な方法が考えられるが、その中から液相合成を選択した理由は、カドミウムセレンなどの化合物半導体や、金、白金などの金属材料において、均一な粒径分布を持つナノ粒子が作られており、この方法がナノ構造化の実現に大変向いた手法であると考えられたためである。
2)基盤となる従来の液相合成法
図1を用いて、本発明の基礎となる、従来液相合成法の特徴を簡単に説明すると以下の通りである。
この合成法では、固体金属を用いたシラン化合物の還元反応によってSi−Si結合を成長させ、シリコンナノ粒子を得ようとするものである。例として、塩化シラン(液体)と金属リチウム(粉体)の還元反応を取り上げた。この反応は次の反応式で表される。
SiCl + 4Li → Siナノ粒子 + 4LiCl (1)
不活性有機溶媒中での反応ステップは、以下の通りである。
1. 攪拌などで塩化シランと金属リチウム粉を衝突させることで、反応中間体であるシリルラジカルをその場生成させる
2. シリルラジカル同士の縮合反応によって、Si−Si結合を形成させる
3. 攪拌により、2の生成物と金属リチウムを接触させ、一部がラジカル化した反応中間体をその場生成させる
4. 3の反応中間体と、別のシリルラジカルとの縮合反応によって、Si−Si結合を成長させる。
以下、繰り返し
上記の反応ステップ2からわかるように、Si−Si結合は、その場生成させたラジカルが反応点となって形成される。
ただし、還元剤として用いた金属リチウム粉は一般に不活性有機溶媒には溶解しないため、溶液中での還元剤濃度は不均一である。要するに、従来の塩化シランの還元反応は「不均一反応」であるということができる。しかも、金属リチウムは粉体であるために、塩化シランと金属リチウムの接触回数は一般に少ない。
この反応で合成したいのは3次元のダイヤモンド状シリコンナノ粒子であるが、不均一反応であること、接触回数が少ないことの2点に起因して生成する反応点が作られにくく、低次元構造の1次元ポリシランや2次元ポリシランが出来やすい。従って、所望の構造、粒径を持ったナノ粒子に反応制御することが大変困難だという問題があった。
3)構造次元性
以上のことから、構造と粒径が制御されたナノ粒子を合成するには、新しい合成法が必要である。本発明の新合成法を説明する前に、3次元構造とそれより低次元構造のナノ構造体の間にどのような違いがあるかを、まず見てみる。
図2は、原子数を同じに揃えたときの1次元鎖状構造体、2次元平面構造体、3次元ダイヤモンド構造体を模式的に示したものである。また、これらの構造のそれぞれについて、Si−Si結合とSi原子数との関係をまとめたものが表2である。これらから最初に気付くことは、構造次元性が増すほど、Si−Si結合数がSi原子数に対して相対的に増えることである。言い換えると、構造次元性はSi−Si結合数とSi原子数の比に関係がある。結合数は還元剤の当量数B、原子数はシラン化合物に含まれるシラン原子のモル数Aと各々相関するため、結局、構造次元性は還元剤の当量数とシラン化合物に含まれるSi原子数(モル数)との比B/Aと関係があることが推測される。
Figure 0004504267
4)構造次元性と比B/A
このことを、反応式から説明する。
A*シラン化合物+B*還元剤 → C*Siナノ構造+D*塩 (2)
式2は、シリコンナノ構造体の仮想的な反応式である。図3は、この反応式から作られる1次元鎖状構造体、2次元平面構造体、そして2種類の3次元構造体(立方八面体と正四面体)について、各シリコンナノ構造体のシリコン原子数に対し、原子数と結合数から逆算した比B/Aがどのような値を示すか、各々の計算値をプロットしたものである。ここでシラン化合物としてテトラクロロシランのようなSi原子を1つ含む半導体分子、還元剤として1当量の還元剤を用いる場合には、前記の比B/Aはシラン化合物(半導体元素を含む半導体分子)と還元剤とのモル比に対応する。以降、簡便化のために、特に断らない限り、シラン化合物としてSi原子を1つ含む半導体分子、還元剤として1当量の還元剤の場合について説明する。すなわち、以下の説明では比B/Aをモル比として記載することがあるが、Si原子(半導体元素)を2つ以上含む半導体分子を用いる場合、または還元剤として2当量以上の還元剤を用いる場合にはB/Aはモル比には対応しないことに注意しなければならない。
図3から、構造次元性が増すほどモル比は大きくなり、また第2節の従来合成法の反応式1とは異なり、モル比B/Aの最適点は4には限定されず、3以上4以下であることが分る。
5)粒径とモル比B/A
次に、やはり式2に基いて、3次元シリコンナノ構造体(ナノ粒子)の粒径と、モル比B/Aの関係について見てみる。
図4は、立方八面体と正四面体の2種類の3次元構造体について、シリコン原子数を定めたときの換算粒径(計算値)に対するモル比B/Aの計算値をプロットしたものである。換算粒径をdとし、結晶シリコンの格子定数をa=0.543nm、原子数をMとすると、換算粒径は、d=a*(3M/4π)1/3で求められる。この図から、モル比は構造だけでなく、粒径とも相関があることが推測される。なお、実際に半導体ナノ粒子を製造した場合には、その粒子径を実際に測定することができるが、ここでいう換算粒子径は測定される平均粒子径に対応するものである。
シリコン粒子を発光させようとする場合、ターゲットとなる粒径は、一般に可視−近赤外のバンドギャップを持つ2−10nmの範囲である。シリコンのバルク結晶は、5nm程度の励起子半径を有する。ナノ粒子化によって励起子を物理的に閉じ込めると、励起子半径は減り、結果としてバンドギャップがバルクと比べて増加する。同時に、ナノ粒子化により並進対称性が壊れるために青色、緑色、赤色発光など、可視域で強い発光を示すようになる。青色、緑色、赤色発光を得るには、それぞれ粒径2−2.5nm、粒径2.5−3nm、粒径3−5nmにそれぞれ調整すればよい。また粒径5−10nmに調整した場合は近赤外で発光することが期待される。粒径が小さくなるほど発光色が近赤外→赤→緑→青と短波長化するこの現象は、量子閉じ込め効果と呼ばれるものである。
図4から、可視―近赤外のバンドギャップとなる粒径2−10nmを実現するモル比B/Aを求めると、3−3.85の範囲にあると見積もることができる。この図に炭素(ダイヤモンド)、ゲルマニウム、錫など、他の材料系の平均粒径の計算値をプロットすると、炭素については格子定数がシリコンより小さいことに起因して、2本の曲線とも、平均粒径の値はシリコンの30%程度減少する。一方、格子定数がシリコンよりも大きいゲルマニウムや錫では、平均粒径はそれぞれ5%、20%程度増加する。
半導体粒子を発光させようとする場合、ターゲットとなる粒径は用いられる材料により異なり、それに応じて適切なモル比の範囲も変化すると考えられる。ゲルマニウムと錫については、励起子半径がシリコンよりも大きいため、モル比B/Aが3−3.85の範囲で、偶然、可視−近赤外に対応するバンドギャップを持つナノ粒子を得ることが可能になる。
炭素については、元来バルクのバンドギャップがすでに紫外領域にあり可視発光は得られないことが予想されるが、ナノ粒子化によって紫外光をも透過する、優れた光学窓材料になる。
6)還元剤に求められる条件
モル比B/Aと、ナノ粒子の次元性や粒径は相関が見られるが、現実の反応ではこの条件だけで所望の制御されたナノ粒子を得ることは困難であり、更なる条件が必要である。
構造と粒径を制御して均質なナノ粒子を得るには、原理的に、不活性有機溶媒中において、シラン化合物と還元剤とが均一に混合されて反応する「均一反応」が求められる。あるべき反応系の姿としては、還元剤が溶媒に溶け、シラン化合物と還元剤が溶媒中で均一に反応することが望ましい。ところが、シラン化合物を還元する1当量の還元剤は、従来、アルカリ金属・ナフタレン錯体、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびマグネシウムのわずかに5種類が報告例されているのみであり、このうち溶媒に溶けるものはアルカリ金属・ナフタレン錯体1種類だけである。
本発明においては、後述する不活性有機溶媒に可溶な還元剤を用いるが、この還元剤はシラン化合物などの半導体元素を含む半導体分子を還元できるものである。このような還元剤としては、
(a)サマリウム、イッテルビウム、およびユーロピウムからなる群から選ばれる希土類元素をEとしたとき、式EIで表されるヨウ素化合物である還元剤、
(b)芳香族分子から選ばれる電子吸引性分子をZとし、アルカリ金属から選ばれる金属元素をMとしたとき、前記還元剤が式Mで表される金属錯体である還元剤
が好ましい。具体的には、アルカリ金属・ナフタレン錯体の他に、アルカリ金属・ビフェニル錯体、アルカリ金属・4,4‘−ジ−ターシャル−ブチルビフェニル錯体などの、アルカリ金属原子(リチウム、ナトリウム、カリウム等)と芳香族分子からなるアルカリ金属アレーニド、二ヨウ化サマリウム(SmI)、二ヨウ化イッテルビウム(YbI)、二ヨウ化ユーロピウム(EuI)などの希土類ヨウ化物を挙げることができる。これらはいずれも1当量の還元剤であるが、このほかに、2当量の還元剤としてマグネシウム・アントラセン錯体も用いることができる。また、これらの還元剤を組み合わせて用いることもできる。
7)シラン化合物と還元剤との混合、および不活性有機溶媒に関する条件
均質なナノ粒子の合成には「均一反応」が重要であり、それには、シラン化合物と還元剤とを均一に混合することが望ましい。ここで、還元剤を含む不活性有機溶媒中にシラン化合物を滴下する場合を想定すると、シラン化合物が溶液中に拡散した後、還元剤と反応すれば均一反応となる。要するに、出来得る限り速やかにシラン化合物と還元剤とを混合し、拡散速度が反応速度よりも優るような温度・濃度・攪拌などの反応条件下で合成することが均一反応実現のキーとなる。このとき、用いられる不活性有機溶媒は、シラン化合物および還元剤とは実質的に反応しない不活性有機溶媒であることが重要である。このような溶媒として、例えばエチレングリコールジメチルエーテル(以下、glymeという)、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど、エーテル結合を有する溶媒を用いることができる。なお、溶媒の役割は上記還元剤を溶かし、均一反応を促進することにある。この意味で、上記還元剤が溶けて、且つ上述したシラン化合物、ゲルマニウム化合物、錫化合物、鉛化合物、炭素化合物と不活性であれば、エーテル系以外の溶媒を用いることも可能である。
8)溶液中での核生成
ナノ粒子は、シラン化合物と還元剤とが反応して出来た反応中間体のシリルラジカルが多数凝集し、結合することで核成長すると考えられる。シリルラジカルの個数濃度をNとすると、溶液中での時間的・空間的揺らぎにより、局所的にナノ粒子の素となる核が生成され、その個数濃度Npはボルツマンの法則から次のように表される。
Np=N*exp(−ΔG/kT) (3)
ΔG=(4πγ/3)*(2γV/kT/lnS)
S=C/Cs
N∝C
ここで、ΔGはナノ粒子(固相)が液相から1個生成するときの反応系の自由エネルギー変化、Tは絶対温度、kはボルツマン因子、γはナノ粒子・溶媒間の界面エネルギー、Vはシリルラジカル1個の体積、Sは飽和比、Csは温度Tにおけるシリルラジカルの飽和溶解度、Cは溶液中での実際のシリルラジカルの溶解度である。
式3の意味するところは、温度が低いほど活性化エネルギー(ΔG)は増す方向に変化し、エネルギー障壁を乗り越えて生成する核の数は少なくなることを示している。すなわち、反応温度は核生成数の支配因子の一つである。
また、式3より、シリルラジカル濃度、すなわち、シラン化合物と還元剤の濃度制御によっても核生成数は変化する。このため、濃度も核生成数の支配因子の一つである。
9)ナノ粒子の粒径の支配要因
表3は、図4を数表に直したもので、代表的な原子数における、立方八面体のシリコンナノ粒子の換算粒径と、式2のモル比B/Aの関係を示したものである。この表に基づき、モル比B/Aを調整することでナノ粒子の粒径制御を試みても、実際には表の換算粒径とは異なる大きさの粒子が合成されることが一般的である。これは次のような理由による。
Figure 0004504267
表3の最も右の欄は、各々の粒径のナノ粒子について、原料のシラン化合物は一定量とし、さらにモル比B/Aと一致するよう還元剤の量を定めた際の、仮想的な粒子数を示したものである。現実の反応系で得られる粒径が、モル比B/Aから期待される換算粒径と一致しない理由は、前節で述べたように、現実の反応系で生じるナノ粒子の粒子数(前節で言うところの核生成数)は温度などに依存して変化し、表3の仮想的粒子数と一致しないことが多いためである。従って、実際に合成されるナノ粒子の粒径は表3から期待される大きさと比べて大きい方向、若しくは小さい方向のいずれかにずれる。
表4を用いて、この「ずれ」を説明する。換算粒径2.717nm狙いで、原料のハロゲン化シランを1ミリモル、還元剤を3.291ミリモル仕込むものとする。期待される仮想的粒子数は1.147×1018個である。
Figure 0004504267
ここで、まず実際生成されたナノ粒子数が多い場合(表では仮に5×1018個とした)を考える。最終的に表から粒径を予測したい訳であるが、それにはまず仮想的粒子数の列で5×1018個に近い値を探す(表中、太枠で示した4.097×1018個と7.255×1018個)。次にこれらと同じ行に記されている換算粒径を探す(1.469nm、1.778nm)。すなわち、実際の粒径は1.469nmから1.778nmの間に個数濃度のピークを持つと予測される。実際生成されたナノ粒子の粒子数が仮想的粒子数より多い場合、粒径はモル比B/Aから期待される粒径よりも小さい方向にずれる。
これは、シラン化合物と還元剤の仕込み量と消費量を比較すると容易に理解できる。今度は、探し出した仮想的粒子数(4.097×1018個と7.255×1018個)と同じ行に記されている、シラン化合物の消費量を見る(0.689、1.221。単位ミリモル)。シラン化合物の消費量であるが、この値は同じ行に記載された「1粒子当りのシリコン原子数」と「実際の粒子数、5×1018個」とを掛け合わせ、モル数になおした値である。要するに、仕込み量を超えない最も大きな値となるところが実際の消費量である。シラン化合物の仕込み量1ミリモルは探し出した0.689ミリモルより大きく、1.221ミリモルより少ない。従って、実際の粒径は、0.689ミリモル、1.221ミリモルに各々対応する、粒径1.469nmと1.778nmの間の値を示すという訳である。
次に、実際生成されたナノ粒子数が少ない場合(2×1017個)を考える。同様な手順により、実際の粒径は4.61nmから4.926nmの間に個数濃度のピークがあると予測される。実際生成されたナノ粒子の粒子数が仮想的粒子数より少ない場合、粒径はモル比B/Aから期待される粒径よりも大きい方向にずれる。
なお、ナノ粒子表面についてであるが、実際に生成されたナノ粒子数が仮想的粒子数よりも多い場合、還元剤が余剰であることが効いて、ハロゲン原子以外の化学種が一部表面を覆う可能性がある。たとえば、シリルラジカル、アルカリ金属原子、>Si=Si<の二重結合などである。また、逆に、実際に生成されたナノ粒子数が仮想的粒子数より少ない場合、ハロゲン化シランが余剰に存在することから、この場合には表面は全てハロゲン原子で覆われる。偶然、ナノ粒子数が仮想的粒子数と等しくなる場合も、表面は全てハロゲン原子で覆われる。ナノ粒子は、大気成分に対して表面が活性であるために、表面安定化を目的とした2段目の反応が必要である。この点から見て、表面の化学種が単一である方が2段目の反応のデザインがし易い。この意味で、ナノ粒子数が仮想的粒子数より少ない場合、若しくは等しくなる場合は、ともに表面がハロゲン終端であり、望ましい。
10)新しい合成法に求められる条件の整理
以上を整理すると以下のようにまとめられる。すなわち、構造と粒径を制御して所望のナノ粒子を合成するためには、
(a)比B/Aは4ではなく、4以下、望ましくは3から4の範囲で設定し、
(b)核生成数を調整することで粒径を制御すること、
が大変有効である。
核生成数の制御方法としては、好ましくは
(a)反応温度、
(b)シラン化合物と還元剤の濃度、
(c)上の両者の組み合わせ、
の3通りが考えられる。
この他に、均一反応を実現するために、
(d)溶媒に溶ける還元剤を用いる、
(e)シラン化合物と還元剤との混合を拡散速度が反応速度に勝るように迅速に行う、
といった条件も重要である。
本発明の合成法はこれら条件を満足し、均質なシリコン系半導体ナノ粒子を合成するために考案されたものである。
11)本発明の液相合成方法
シリコン系半導体ナノ粒子とは異なり、Au、Ag、Pt、Pt、Cu、Fe、Co、Niなどの金属ナノ粒子、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTeなどの2−6族化合物半導体ナノ粒子、さらにGaAs、InAs、InPなどの3−5族化合物半導体ナノ粒子では、液相合成法が確立している。これは、構成原子である、Au、Ag、Pt、Pt、Cu、Fe、Co、Ni、Cd、Zn、S、Se、Te、Ga、In、As、Pなどの各原子が、溶媒中で、原子イオンやラジカル状態で比較的高温まで安定に存在でき、金属ナノ粒子や化合物半導体ナノ粒子の結晶成長が、時間、試薬濃度、温度などの実験パラメータで容易に制御できるためである。
これに対して、Si、Ge、C、Snなど4族原子は、原子イオンやラジカル状態が極めて不安定である。従って、化合物半導体ナノ粒子や金属ナノ粒子の液相合成法とは根本的に質が異なる反応系をデザインし直す必要がある。
本発明の液相合成法では、半導体元素、特にシリコン、ゲルマニウム、炭素、および錫からなる群から選ばれる半導体元素を含んでなる分子(塩化シラン、臭化シランなど)と、不活性有機溶媒に溶ける還元剤(リチウム・ナフタレン錯体、リチウム・ビフェニル錯体、二ヨウ化サマリウムなど)を用い、金属系ナノ粒子や化合物系ナノ粒子が200−300℃の高温で反応させるのとは対照的に、シラン化合物と還元剤を低温で反応させることにより、粒径・構造が制御されたシリコン系半導体ナノ粒子をつくることを特徴としている。ここでいう低温とは、0℃以下を指す。下限値は特に限定されないが、好ましくは溶媒の融点である。
上限温度が0℃に限定されるのは以下に述べるような2つの理由からである。1つ目の理由は、粒子数の点からの制約による。本発明者らの研究によれば、ある臨界温度を超えると、8節で示した核生成数が、モル比B/A=3のときに期待される最大の仮想的粒子数よりもつねに大きい値を示すようになる。要するに、小さい粒径のナノ粒子しか得られない温度領域がある。この臨界温度は、シラン化合物や還元剤の濃度やその他因子の複雑な関数であり、現時点で解析的に予測することは出来ていないが、実験的には0℃付近に存在すると見積もっている。これが、上限温度を0℃に設定した1つ目の理由である。
2つ目の理由は、還元剤による副反応を抑えるためである。有機溶剤に可溶な還元剤であるアルカリ金属ナフタレンを例に説明すると、下記の反応式に示すように、シリルラジカルを作り出す本来の還元作用の他に、ナフタレンとシリルラジカルが反応する副反応が起こり得る。この副反応は0℃以上の温度では無視できない割合で生ずる。これが、上限温度を0℃に定めた2つ目の理由である。
Figure 0004504267
下限温度は溶媒の融点であることが好ましいが、それ以下でも良い。具体的には、凝固点降下などの効果で融点以下の温度で反応させることも可能である。
本方法により、原子レベルで精密に粒径制御され、かつ組成制御されたシリコン系半導体ナノ粒子をつくることがはじめて可能になる。このようにして作られたナノ粒子は、表1の従来技術で合成したナノ粒子と比較して、所望の発光波長で、高い量子収率で発光させることが可能になる。
以下、11−a節では単一元素からなるシリコン系半導体ナノ粒子の合成法、11−b節では多元系からなるシリコン系化合物半導体ナノ粒子の合成法、そして11−c節ではシリコンウエハ上への被膜成長法の原理をそれぞれ説明する。
11−a)単一元素からなるシリコン系半導体ナノ粒子の合成法
例として、シリコンナノ粒子で説明する。合成手順は、不活性有機溶媒であるglyme中において、半導体分子である塩化シランと、それを還元する還元剤であるリチウム・ナフタレン金属錯体(正確には(リチウム)(ナフタレン)金属錯体。以下、LN錯体という)の両者を、0℃以下の低温で混ぜ合わせ、所望の粒径に核成長させることを基本とする。
もう少し具体的に説明する。予めフラスコなどの密閉容器にアルゴンガス(または窒素ガス、ただしアルカリ金属にリチウムを用いる場合はアルゴンが望ましい)などの不活性ガスを満たし、充分に乾燥させた上で、前記した還元剤、例えばLN錯体を溶かした不活性有機溶媒、例えばglyme溶液を注入する。次に、このフラスコを寒剤(ドライアイス/メタノールなど)に浸漬させ、溶液が凍らないことに注意して充分に冷やす。
溶液が冷えて温度が一定になったら、シリンジなどを用いて塩化シランを一気に添加し、激しく攪拌する。塩化シラン滴下により発熱が生じ、溶液温度は数度程度上昇するが、数分以内に滴下直前の温度に戻る。このまま、溶液温度を保ちながら、核生成が起こり、ナノ粒子に成長する充分な時間、望ましくは30分から数時間程度攪拌し続ける。この間、溶液中では、塩化シランとLN錯体の均一反応が起こり、塩素終端されたシリコンナノ粒子が生じる。なお、溶液中には、LiClと中性化したナフタレン分子が混在するが、両者とも安定物質に変化しているため、もはやナノ粒子とは反応しない。
ナノ粒子の粒径は、塩化シランのモル数Aと、LN錯体のモル数Bとのモル比B/Aを3から4の間の一定値に固定した上で、溶液温度を調整することで制御する。溶液温度としては、0℃以下で、かつ溶媒の融点以上が望ましい。B/Aが一定の場合、上述の温度範囲では、溶液温度が下がるほど粒径は増大する傾向にある。
また、ナノ粒子の粒径は、溶液温度を低温の一定値に保ち、モル比B/Aを3から4の間の一定値に固定し、シラン化合物濃度(と、連動する還元剤濃度)を調整することで粒径制御することも可能である。この場合、濃度が下がるほど粒径は増大する傾向にある。
また、ナノ粒子の粒径は、溶液温度、シラン化合物濃度(と、連動する還元剤濃度)を調整することで制御することも可能である。この場合、温度が下がるほど、且つ濃度が下がるほど粒径は増大する傾向にある。
制御可能な粒径範囲は下限が約1nm、上限は約20nmである。とくに、青色、緑色、赤色発光、または近赤外発光を得るには、それぞれ粒径2−2.5nm、粒径2.5−3nm、粒径3−5nm、または粒径5−10nmにそれぞれ調整すると良い結果が得られる。発光色が青→緑→赤→近赤外の順に変化するほど粒径が大きくなるのは、以前の節で述べたように、量子閉じ込め効果によるものである。
ここで説明したシリコンナノ粒子だけでなく、ゲルマニウムナノ粒子、ダイヤモンドナノ粒子、錫ナノ粒子なども基本的に同様な手順で合成可能である。
シリコン元素の供給源となる半導体分子としては、シリコン元素を含む、塩化シラン(SiCl)、臭化シラン(SiBr)などのハロゲン化シラン(SiX、X=ハロゲン元素)、テトラエトキシシラン(SiOEt、OEt=エトキシ基)などのアルコキシシラン(SiOR、OR=アルコキシ基)を用いることができる。シリコン以外の半導体材料を製造する場合には、半導体分子として、ハロゲン化ゲルマニウム(GeX)、アルコキシゲルマニウム(GeOR)、ハロゲン化錫(SnX)、アルコキシ錫(SnOR)、四臭化炭素などのハロゲン化炭素(CX)などを用いることができる。
11−b)多元系からなるシリコン系化合物半導体ナノ粒子の合成法
単一元素からなるシリコン系半導体ナノ粒子の合成法と異なる点は、化合物半導体を構成する各元素の供給源となる、2種類以上の異なる分子を用いる点である。例として、シリコン・カーボン化合物ナノ粒子で説明する。
合成手順は、不活性有機溶媒であるglyme中において、半導体分子である塩化シラン・四臭化炭素の混合溶液と、それを還元する還元剤であるLN錯体の両者を、室温以下の低温で混ぜ合わせ、所望の粒径に核成長させることを基本とする。
もう少し具体的に説明すると以下の通りである。予めフラスコなどの密閉容器にアルゴンガス(または窒素ガス、ただしアルカリ金属にリチウムを用いる場合はアルゴンが望ましい)などの不活性ガスを満たし、充分に乾燥させた上で、LN錯体を溶かしたglyme溶液を注入する。次に、このフラスコを寒剤(ドライアイス/メタノールなど)に浸漬させ、溶液が凍らないことに注意して充分に冷やす。
溶液が冷えて温度が一定になったら、シリンジなどを用いて塩化シラン・四臭化炭素混合溶液を一気に添加し、激しく攪拌する。滴下により反応熱が生じ、溶液温度は数度上昇するが、数分以内に滴下直前の温度に戻る。このまま、溶液温度を保ちながら、核生成が起こり、ナノ粒子に成長する充分な時間、望ましくは30分から数時間程度攪拌し続ける。この間、溶液中では、塩化シラン・四臭化炭素混合溶液とLN錯体の均一反応が起こり、塩素終端されたシリコン・カーボンナノ粒子が生じる。なお、溶液中には、LiClと中性化したナフタレン分子が混在するが、両者とも安定物質に変化しているため、もはやナノ粒子とは反応しない。
ナノ粒子の粒径は、塩化シラン・四臭化炭素の合計モル数Aと、LN錯体のモル数Bとのモル比B/Aを3から4の間の一定値に固定した上で、溶液温度を調整することで制御することができる。溶液温度としては、0℃以下、溶媒の融点以上が望ましい。B/Aが一定の場合、上述の温度範囲では、溶液温度が下がるほど粒径は増大する傾向にある。
また、ナノ粒子の粒径は、溶液温度を低温の一定値に保ち、モル比B/Aを3から4の間の一定値に固定し、塩化シラン・四臭化炭素の合計濃度(と、連動する還元剤濃度)を調整することで粒径制御することも可能である。この場合、濃度が下がるほど粒径は増大する傾向にある。
また、ナノ粒子の粒径は、溶液温度、塩化シラン・四臭化炭素の合計濃度(と、連動する還元剤濃度)を調整することで制御することも可能である。この場合、温度が下がるほど、且つ濃度が下がるほど粒径は増大する傾向にある。
制御可能な粒径範囲は一般に、下限が約1nm、上限は約20nmである。とくに、青色、緑色、赤色発光、近赤外発光を得るには、粒径2−2.5nm、粒径2.5−3nm、粒径3−5nm、粒径5−10nmにそれぞれ調整すると良い結果が得られる。発光色が青→緑→赤→近赤外の順に変化するほど粒径が大きくなるのは、以前の節で述べたように、量子閉じ込め効果によるものである。
多元系においても、不活性有機溶媒に可溶な還元剤を用いることは、本合成法を実現する上で重要な条件の1つであることを述べた。不活性有機溶媒に可溶な還元剤としては、前記した、式EIまたはMで示されるものを用いることができる。
シリコン、ゲルマニウム、炭素、および錫元素の供給源となる半導体分子としては、ハロゲン化シラン(SiX)、アルコキシシラン(SiOR)、ハロゲン化ゲルマン(GeX)、アルコキシゲルマン(GeOR)、ハロゲン化錫(SnX)、アルコキシ錫(SnOR)、ハロゲン化炭素(CX)、などを用いることができる。
また、多元系においては、シリコン、ゲルマニウム、炭素、および錫からなる群から選ばれる半導体元素を含んでなる分子に、その他の元素を含む分子を組み合わせることができる。たとえば、鉛、チタニウム、バナジウム、ジルコニウム、およびハフニウムからなる群から選ばれる金属元素を含む分子を組み合わせることで、それらの金属元素を含む何の粒子を製造することもできる。
鉛、チタニウム、バナジウム、ジルコニウム、およびハフニウム元素の供給源としては、ハロゲン化鉛(PbX)、アルコキシ鉛(PbOR)、ハロゲン化チタン(TiX)、アルコキシチタン(TiOR)、ハロゲン化バナジウム(VX)、ハロゲン化ジルコニウム(ZrX)、アルコキシジルコニウム(ZrOR)、ハロゲン化ハフニウム(HfX)、アルコキシハフニウム(HfOR)などを用いることができる。
不活性有機溶媒としては、上述した還元剤や塩化シリコンとは反応しない不活性有機溶媒が必須であり、前記したものから適宜選択される。
以上より、本発明の液相合成法によって、構造、粒径、組成が各々制御され、且つ発光波長がテーラーメード化され、発光効率が優れたシリコン系半導体ナノ粒子が、初めて実現可能になる。
11−c)シリコンウエハ上への成長法
本合成法の原理を応用すると、溶液中でシリコン系半導体ナノ粒子が合成できるだけでなく、半導体材料の表面に種々の4族系半導体を成長し、半導体元素を含む被覆層で被覆することが可能になる。ここではシリコンウェハを半導体材料の例として説明する。
手順は以下の通りである。
まず、半導体材料、例えばシリコンウエハを合成チャンバーに導入し、必要に応じて超高真空状態で表面を清浄化処理し、酸化膜や汚染物質を取り除く。
次に、合成室にアルゴンガスのような不活性ガスを導入して真空を破り、大気圧に戻す。この際、表面汚染を避けるため、充分に乾燥した露点の低い高純度不活性ガスを導入する。
次に、必要に応じて半導体の表面にアルカリ金属元素、またはハロゲン元素を反応させて終端する。例えばハロゲン元素で終端させるには、ウエハ表面に臭素(Br)、若しくは臭酸(HBr)、若しくは塩酸(HCl)などの酸を接触させて、表面のシリコン原子をハロゲン終端させる。単位面積当りのシリコン原子数は、面方位にも依存するが、おおよそ1015個である。モル数でいうと、約2ナノモルである。また、アルカリ金属元素で終端させるには、前記したLN錯体などをウェハ表面に接触させ、表面のシリコン原子の一部をアルカリ金属元素で置き換えることにより、アルカリ金属元素で終端させる。アルカリ金属元素で終端させた場合においても、ハロゲン元素で終端させた場合と同様に表面を被覆することができる。
なお、ウエハ表面をハロゲン化する手法については、上記とは異なる手法によっても実現可能である。例を挙げると、塩素終端化については、フッ酸(HF)、若しくはフッ化アンモニウム(NHF)で処理し、ウエハ表面を一旦水素終端した後、ラジカル開始剤として過酸化ベンゾイル等を用い、5塩化リン(PCl)若しくは塩素(Cl)を適量加えたクロロベンゼン中で処理することによって、塩素終端表面が得られる。また、臭素終端化については、やはり一旦水素終端した後、ラジカル開始剤として過酸化ベンゾイル等を用い、ブロモトリクロロメタン(CBrCl)で処理することによって、臭素終端表面が得られる。
ウエハ上に2元系のシリコン系半導体、たとえばシリコン・チタニウム化合物を成長させる場合、前節までの要領とは異なり、ウエハを、低温に冷やされた塩化シランと塩化チタンが溶けているglyme溶液に浸漬した後、glymeに溶かしたLN錯体溶液をシリンジ等を用いて一気に注入し、混ぜ合わせ、ウエハ上にシリコン・チタニウム化合物を核成長させ、表面を被覆することを基本とする。
先のナノ粒子合成の場合と異なり、塩化シラン・塩化チタン混合溶液のモル数AとLN錯体とのモル数Bの比B/Aは、被覆形状に応じて変化させることが望ましい。一次元構造体(形状は線状)ではモル比は1−2の範囲に、2次元構造体(面状)では2−3の範囲に、そして3次元構造体(粒状)の場合には3−4の範囲に、それぞれ調整すると良い結果が得られる。
最終的に得られる被覆物の形状は、モル比を調整し、更に、以下に述べるマスキングを実施すると、より制御性が高まる。上述した酸による表面のハロゲン終端化は、酸化膜が残っている表面では生じない。要するに、酸化膜とシリコン表面とでは、酸に対する反応に選択性がある。従って、ウエハ表面を酸化膜でマスキングすることにより、酸化膜で覆われていない箇所において、半導体材料を、膜状、線状、または粒状など所望の形状に成長し、被覆することが可能になる訳である。
なお、ウエハ上には、単一成分の半導体や、3元系以上の多元系化合物を成長させ、表面を被覆することも可能である。
また、ここでは半導体材料としてシリコンウエハを用いた場合を説明したが、そのほか半導体材料として、シリコン、ゲルマニウム、炭素、および錫からなる群から選ばれる半導体元素を含んでなる半導体材料を用いることができる。また、この半導体材料は、鉛、チタニウム、バナジウム、ジルコニウム、およびハフニウムからなる群から選ばれる金属元素をさらに含んでいてもよい。具体的には、ゲルマニウム基板、SiC基板や、鉛、チタンなどを含むシリコンウェハなどを用いることが出来る。
図5は、本発明に用いる合成装置を模式的に表したものである。反応容器の4つ口フラスコ1は、開口部2および3を具備し、開口部2には滴下ロート、開口部3には冷却管が接続されている。そして4つ口フラスコ内部がアルゴンガス5(露点−80℃以下)でパージされ、十分に乾燥されている。本実施例を含め、本発明の合成法では、水や酸素などの大気成分はナノ粒子の汚染に直結することから、このような雰囲気が制御されたフラスコ内で合成を行うことが好ましい。
シリコンナノ粒子を合成するために、フラスコ内に予めリチウム30ミリモルを測りとり、アルゴンガスで充分に乾燥させる。次いで、滴下ロートを介して、4,4‘−ジ−ターシャル−ブチルビフェニル(以下DBBという)40ミリモルが溶けた無水テトラヒドロフラン(以下THFという)溶液200mlを注入し、室温で攪拌子4を用いて反応溶液6を攪拌しながらリチウム・DBB錯体(以下LDBB錯体という)をその場生成させる。滴下直後から、LDBB錯体が生成し、やがて溶液は濃い緑色に変化する。温度に依存するが、室温では2−4時間でLDBB錯体の用意が完了する。
次に、フラスコを寒剤に浸し、LDBB/THF溶液を−60℃に冷却する。フラスコ内の溶液が冷えたことを温度計で確認したら、注射器で塩化シラン10ミリモル(B/A=3)を一気に注入し、激しく攪拌させて素早く混ぜ合わせる。
反応が進行すると、反応溶液のボディーカラーは濃い緑色からこげ茶色に変化していく。更に反応が進むと溶液は赤茶色に変化する。そのまま−60℃で6時間攪拌を続ける。溶液中には、塩素終端シリコンナノ粒子、LiCl、中性化したDBB分子が混在する。
フラスコ内に生成したナノ粒子は塩素終端シリコンナノ粒子である。そのまま大気中に取り出すと、表面塩素原子と大気中の水分とが反応し、表面は水酸基に変わりやすい。水酸基終端シリコンナノ粒子同士が接触すると、室温程度の熱によっても容易に加水分解が起こり、表面から酸化劣化してゲル状シリコーンが生じる。このため、大気暴露せずに、引き続きフラスコ内で表面安定化処理を行う。
表面安定化処理では、反応が暴走しないようまず溶液を0℃付近に冷やし、次に滴下ロートを用いてグリニャール試薬の1つである臭化ヘキシルマグネシウム20ミリモルを溶解させたジエチルエーテル溶液10mlをゆっくり滴下する。30分程度、0℃付近で反応させた後、寒剤を取り除き、室温に自然昇温させて24時間攪拌する。こうすることで、フラスコ内には、目的物である、アルキル基(ヘキシル基)終端シリコンナノ粒子が生成する。
溶液中には、副生成物としてリチウム塩、マグネシウム塩、DBB分子が生じる。この中からアルキル基終端シリコンナノ粒子を抽出し精製するために、次にフラスコにヘキサン100mlを注入し、十分に撹拌して、シリコンナノ粒子を完全に溶かす。ピペットで抽出したこのヘキサン溶液は、分液ロートを用いて純水で3回水洗し、残存するリチウム塩、マグネシウム塩を除去する。水洗したヘキサン溶液は硫酸マグネシウムに潜らせて脱水する。次いで、カラム分離でDBBとヘキサンをそれぞれ除去し、目的物であるアルキル基終端されたシリコンナノ粒子を得ることができる。
電子顕微鏡観察からは、アルキル基終端シリコンナノ粒子のシリコン部分の平均粒径はおよそ2.0nmであることが確認できる。構成元素の組成分析によれば、塩素と酸素は検出されなかった点から、純度の高いナノ粒子が得られていると言える。
このアルキル基終端シリコンナノ粒子は再度ヘキサンに溶解させることが可能である。このヘキサン溶液の蛍光特性については、350nmの紫外線励起によって、ピーク発光波長440nm、スペクトル半値幅約60nmの蛍光スペクトルが得られる。蛍光量子収率はローダミン6G色素を基準にして求めることができ、約40%の値が得られる。このことから、本発明の合成法により、効率よく発光するシリコン系半導体材料が実現可能なことがわかる。
なお、表面安定化処理は他の方法もある。有機リチウム試薬を用いる方法はそのうちの1つである。塩素終端シリコンナノ粒子を含む溶液を0℃に冷やし、ヘキシルリチウム20ミリモルが溶けたジエチルエーテル溶液10mlを加えて30分攪拌し、室温に自然昇温させ、さらに24時間反応させる。こうすることで、上述した臭化ヘキシルマグネシウムを用いた場合と同様の、アルキル基(ヘキシル基)終端シリコンナノ粒子を生成することができる。
塩素終端シリコンナノ粒子を一旦水素終端化した後、炭素二重結合を含む有機試薬(たとえばアルケン)で改めて表面終端する方法もある。塩素終端シリコンナノ粒子を含む溶液を0℃に冷やし、リチウムアルミニウムハイドライド10ミリモルを溶かしたglyme溶液20mlを加えて30分攪拌し、室温に自然昇温させ、さらに1時間反応させることで水素終端シリコンナノ粒子に表面改質する。次にメタノールを10ミリモル加えて、未反応のリチウムアルミニウムハイドライドをクエンチする。その後、反応触媒である塩化白金酸塩・イソプロパノール溶液を触媒量加え、続いてアルケンの1種であるヘキセンを10ミリモル加え、還流させながら24時間反応させる。こうすることで、上述したグリニャール試薬や有機リチウム試薬を用いた場合と同様の、アルキル基(ヘキシル基)終端シリコンナノ粒子を生成することができる。
実施例2では、実施例1と同様な手順で、還元剤とシラン化合物の種類を変えてシリコンナノ粒子を合成する。
還元剤として二ヨウ化サマリウム(30ミリモル)、シラン化合物として臭化シラン(10ミリモル)をそれぞれ用いる。反応式は以下のようである。
SiBr + 3*SmI
Siナノ粒子(ハロゲン終端) + 3*SmI3−xBr (3)
二ヨウ化サマリウムはサマリウムイオンの2価→3価の価数変化を利用した還元剤であり、LDBB錯体などのアルカリ金属アレーニドと異なり、副生成物として芳香族分子を生じないため、後工程の抽出・精製が容易になる利点がある。
実施例1と同様な手順でシリコンナノ粒子を表面安定化した後、抽出、精製されたナノ粒子を電子顕微鏡観察すると、第1の実施例同様、平均粒径は2.0nmであることが確認できる。蛍光スペクトル、蛍光量子収率などの蛍光特性も遜色ない。
従来、シラン化合物を還元でき、かつ溶媒に溶ける還元剤は、アルカリ金属アレーニドだけが知られていたが、2価の希土類イオンも大変有効な還元剤として働くことがわかる。以上のことから、本発明により、効率よく発光するシリコン系半導体材料が実現可能なことがわかる。
実施例3では、シリコンナノ粒子の粒径を制御させるために、LDBB錯体溶液の溶液温度を第1の実施例での−60℃から、より低温の−80℃、ならびに−100℃に変更した点を除き、実施例1と同様な手順で、2種類のシリコンナノ粒子を合成する。
電子顕微鏡観察によって、このようにして合成したシリコンナノ粒子の、シリコン部分の平均粒径はおよそ3.8nm(−80℃)、7.7nm(−100℃)であることが確認可能である。紫外線励起によって、ピーク発光波長が640nm(−80℃)、960nm(−100℃)、スペクトル半値幅は約70nm(−80℃)、約85nm(−100℃)を示す。蛍光量子効率は両者ともに50%程度の値を示し、非常に優れた蛍光特性を持つ、粒径の大きいシリコンナノ粒子が実現可能である。本発明により、溶液温度制御によって粒径制御が可能であり、延いては発光ピーク波長の制御が可能になる。
実施例4では、シリコンナノ粒子の粒径を制御させるために、LDBB錯体溶液の溶液濃度を第1の実施例の0.15モル/リットルから、4分の1の濃度の0.06モル/リットル、ならびに10分の1の濃度の0.015モル/リットルに変更した点を除き、実施例1と同様な手順で、2種類のシリコンナノ粒子を合成する。
電子顕微鏡観察によって、このようにして合成したシリコンナノ粒子の、シリコン部分の平均粒径はおよそ3.6nm(0.06モル/リットル)、7.1nm(0.015モル/リットル)であることが確認可能である。紫外線励起によって、ピーク発光波長が600nm(0.06モル/リットル)、880nm(0.015モル/リットル)、スペクトル半値幅は約70nm(0.06モル/リットル)、約80nm(0.015モル/リットル)を示す。蛍光量子効率は両者ともに40−50%程度の値を示し、非常に優れた蛍光特性を持つ、粒径の大きいシリコンナノ粒子が実現可能である。本発明により、溶液濃度制御によって粒径制御が可能であり、延いては発光ピーク波長の制御が可能になる。
本実施例では、シリコンウエハ上にシリコン・チタニウム化合物を面状に被膜させる。本発明に用いる合成装置は原理的には図5の装置と実質的に同様の構成であり、異なる点は超高真空対応とするために反応容器は全て金属製である点と、ウエハ温度を調整するためにヒーターが追加されている点である。
ウエハは1cm角の大きさである。表面は酸化膜で覆われているが、部分的に一辺が20μmの正方形状の穴が複数開けられており、その部分はシリコン表面が出ている。
合成に先立ち、ウエハが置かれた反応容器のフラスコを超高真空に引き、この雰囲気でウエハ温度を上げて表面清浄化処理を行い、不要な酸化膜や汚染物質を取り除いておく。なお、清浄化処理は通常のLSIプロセスに準拠している。
次に、反応容器にアルゴンガスを導入して大気圧に戻す。この際、表面汚染を避けるため、充分に乾燥した露点(−80℃以下)の低い高純度不活性ガスを導入する。
次に、ウエハ表面を臭素(Br)、若しくは臭酸(HBr)、若しくは塩酸(HCl)などの酸に接触させて、表面のシリコン原子をハロゲン終端させる。1cm角のウエハ表面全体で、シリコン原子はおよそ1015個(約2ナノモル)存在する。なお、酸化膜がある部分については、酸とは殆ど反応しないため、シリコン表面が出ている20μm角の穴部分だけがハロゲン終端される。
次に、ウエハを−60℃のTHFに浸漬し、冷却する。充分に冷えたら、穴部のハロゲン終端面に、塩化シラン・塩化チタン混合溶液(塩化シラン19ミリモル、塩化チタン1ミリモル)を滴下する。次に、穴部のハロゲン終端面、塩化シラン、塩化チタンをそれぞれ還元するLDBB錯体のTHF溶液(LDBB錯体40ミリモル、)をシリンジで滴下し、約5時間反応させる。そうすることで、穴部にはシリコン・チタニウム化合物が面状に成長し、表面を被覆する。
その後、表面安定化処理を行う。表面安定化処理では、臭化ヘキシルマグネシウムが50ミリモル溶けたジエチルエーテル溶液25mlをゆっくり滴下し、室温で24時間、穴部に接触、反応させる。こうすることで、穴部には、目的物である、アルキル基(ヘキシル基)で終端された、面状のシリコン・チタニウム被膜が出来上がる。ウエハには、副生成物として、シリコン・チタニウムナノ粒子、リチウム塩、マグネシウム塩、DBB分子などが付着する可能性があるが、ヘキサンと純水で交互にウエハを洗浄することで取り除くことが出来る。
断面の電子顕微鏡観察によって、合成した被膜層の膜厚はおよそ20nmから30nmの間にあることが確認できる。構成元素の組成分析によれば、被膜層からシリコンとチタニウムが各々検出され、その比率は仕込み比と同じくSi:Ti=19:1であることが示されている。元素分析かたは、塩素、酸素、リチウムなどの不純物は検出されないことから、純度の高い被膜が獲られる製法といえる。
因みに、得られた被膜を紫外線励起したところ、1200nmの近赤外領域にピークを持つ発光スペクトルが得られている。発光量子効率はおよそ50%であり、優れた発光特性を持つシリコン系化合物半導体が実現可能である。
図6は、本発明の実施例の発光素子を概略的に表す断面図である。この発光素子は、シリコンウエハ7上に形成可能であり、活性層10と、それに接するp電極8と、対抗するn電極9とからなる。さらにこの発光素子は、SiO11とパッド電極12とを具備する。
活性層10は例えばシリコン・チタニウム膜からなる。成膜方法は実施例5に準拠する。なお活性層には、ナノ粒子を充填してもよい。
p電極としてはpSi層を用い、対抗するn電極としてはアモルファスSi層を用いるのが一般的である。因みに、n電極は金属薄膜でも構わない。この発光素子は、図示しない電極取出し配線に電気的に接続されている。
活性層に用いるシリコン・チタニウム膜は、1200nm付近で発光する。20mA、3Vでこの発光素子を駆動することができ、発光効率としては10cd/Aと大変良好な値を得ることも可能である。
従来製造法を説明する概念図 原子数が一定で構造が異なるシリコン(a)1次元鎖状構造体 (b)2次元平面構造体 (c)3次元ダイヤモンド構造体 式2に基づいてナノ構造体の構造次元性の違いを説明する、シリコン原子数とモル比B/Aの関係を示す図(計算結果) 式2に基づいて、ナノ粒子の粒径とモル比B/Aとの関係を示す図(計算結果) 還元剤の副反応を説明する図 本発明の第1の実施例に関わる発光素子を概略的に表す断面図
符号の説明
1 4つ口フラスコ
2、3 開口部
4 攪拌子
5 アルゴンガス
6 反応溶液
7 シリコンウェハ
8 p電極
9 n電極
10 活性層
11 SiO
12 パッド電極

Claims (11)

  1. 不活性有機溶媒中において、シリコンを含む分子と、前記不活性有機溶媒に可溶な還元剤とを、前記シリコンを含む分子中の半導体元素のモル数と前記還元剤の当量数とをそれぞれAおよびBとしたときの比B/Aが3以上4以下となるようにして、−60℃以下の反応温度で反応させて、前記シリコンを含む分子に由来する半導体元素を含む半導体ナノ粒子を成長させることを特徴とする、半導体ナノ粒子の製造方法。
  2. チタニウムを含む分子をさらに反応させて、前記チタニウムをさらに含む前記半導体ナノ粒子を成長させることを特徴とする、請求項1に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  3. 前記半導体元素をTとし、
    ハロゲン、およびアルコキシからなる群から選ばれる官能基をXとしたとき、
    前記半導体元素を含む分子が式TX4で表されることを特徴とする、請求項1または2に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  4. サマリウム、イッテルビウム、およびユーロピウムからなる群から選ばれる希土類元素をEとしたとき、前記還元剤は式EI2で表されるヨウ素化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  5. 芳香族分子から選ばれる電子吸引性分子をZとし、アルカリ金属から選ばれる金属元素をMとしたとき、前記還元剤が式M+Z−で表される金属錯体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  6. 前記芳香族分子が、ナフタレン、ビフェニル、および4,4‘−ジ−ターシャル−ブチルビフェニルからなる群から選ばれるものであり、かつ前記金属元素が、リチウム、ナトリウム、およびカリウムからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  7. 前記不活性有機溶媒が、エーテル結合を有するものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  8. 前記不活性有機溶媒が、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジエチルエーテルからなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項7に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  9. シリコンを含む半導体材料の表面を不活性有機溶媒中に晒し、シリコンを含む分子と、前記不活性有機溶媒に可溶な還元剤とを、前記シリコンを含む分子中の半導体元素のモル数と前記還元剤の当量数をそれぞれAおよびBとしたときの前記不活性溶媒中における比B/Aが1以上4以下となるようにし、−60℃以下の反応温度で反応させて、前記半導体材料の表面を、前記シリコンを含む分子に由来する半導体元素を含む被覆層で被覆することを特徴とする、半導体材料の表面を被覆する方法。
  10. チタニウムを含む分子をさらに反応させて、前記チタニウムをさらに含む前記被覆層で前記半導体材料の表面を被覆することを特徴とする、請求項9に記載の半導体材料の表面を被覆する方法。
  11. 前記半導体材料の表面を前記被覆層で被覆するにさきだって、前記半導体材料の表面をアルカリ金属元素、またはハロゲン元素で終端することを特徴とする、請求項9または10に記載の半導体材料の表面を被覆する方法。
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