JP4502180B2 - Ptc面状発熱体 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
本発明は、PTC面状発熱体に関し、特に床暖房用に好適なPTC面状発熱体に関するものである。
従来、電気式発熱体として、約100℃以下の低温領域において自己温度制御性(PTC特性:電気抵抗の正温度係数の略であり、温度上昇につれて電気抵抗が大きくなる性質)を有しない抵抗発熱体、たとえばニクロム線を使用した発熱体は広く利用されている。しかし、この発熱体の宿命的欠陥は、温度が、実用上または安全上好ましくない程度の高い領域までに上昇する危険があり、複雑な過熱防止機構が必要であった。また、線状の発熱体であるので、面状発熱体として用いるには、ニクロム線の工夫された配置と高性能な均熱材が必要となる。
また、PTC特性を有する導電性塗料をたとえば繊維布帛上に形成し、これを面状発熱体として使用することが知られている。導電性塗料にPTC特性を付与する付与剤としてパラフィンが知られている。一般的にパラフィンはその融点が低く、60℃以下であるのが通常である。かかるパラフィンを用いた導電性塗料は、これから得られる面状発熱体が比較的低い温度で軟化してしまうという欠陥を有している。
面状発熱体に用いられるパラフィン使いのPTC導電性塗料は、導電性物質としてのカーボンブラック或いはグラファイト、PTC付与剤としてのパラフィン、構造材としての熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等の樹脂成分、及び溶剤から構成されているものが一般的である。かかるPTC導電性塗料から面状発熱体を取得する典型的な製法は、該塗料を繊維布帛あるいはフィルム等に塗布し、ついで、熱硬化性樹脂使いの場合は架橋のための焼成、乾燥、及びエイジング等の処理を順次施すという工程からなる。このようにして得られる従来の面状発熱体は、柔軟性に欠けて耐屈曲性に劣り、屈曲を繰り返すことにより亀裂が生じ抵抗を無視し得ないほど変化させてしまうとか、上述した様にパラフィンの融点が低いことに起因して耐熱安定性に欠けるばかりでなく、低すぎる温度でPTC特性が発揮されるために暖房機能が劣るとか、優秀なPTC特性を付与せんとすると初期電気抵抗が高くなりすぎ、即ち優秀なPTC特性と低い初期電気抵抗との兼備が困難であり、結局発熱量の大きな面状発熱体が得られないとか、および長期間使用後の経時変化を免れ得ないものがあるとか等の欠陥を有し面状発熱体の典型的用途である床暖房システムに適するものが極めて少ない。また、高いPTC倍率の面状発熱体においては、時としてホットラインとかホットスポットと称される局部過熱が生じるという問題がる。
発明が解決しようとする課題
従って、本発明の目的は、優秀なPTC特性と低い初期電気抵抗とを兼備し、しかも局部過熱を生じない高発熱機能を有し、かつ優れた柔軟性及び良好な形態安定性を有し、かつ厚さの薄い新規な面状発熱体を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明者らが、鋭意検討した結果、本発明の上記目的は下記の構成を有する本発明によって工業的に有利に達成された。
〔1〕カーボンブラック或いはグラファイト、融点が70℃〜85℃の範囲内であるパラフィン、熱可塑性エラストマ、結晶性熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなり、PTC導電性組成物中のカーボンブラック或いはグラファイトの量が14重量%〜22重量%の範囲内であるPTC導電性組成物が繊維布帛に含浸乃至塗布されて成る面状発熱シートに順次片面もしくは両面に均熱シートが、両面に絶縁フィルムが被覆されてなり、かつ下記(1)〜(4)の条件を満足するPTC面状発熱体;
(1)厚さが0.6mm〜1.2mmの範囲内であること
(2)D25が250W/m〜500W/mの範囲であること
(3)D25/D45が1.5以下であること
(4)D45/D80が13以上であること
ただし、D25、D45、D80は、それぞれ25℃、45℃、80℃における電力密度(W/m)を意味する。
本発明の最大の特徴は、特定のPTC導電性組成物の採用、複数の温度に於ける電力密度の規定、および厚さの特定等により、優秀なPTC特性と25℃における高い電極密度とを兼備し、ホットラインとかホットスポットと称される局部過熱が生じない、優れた発熱機能を有し、かつ優れた柔軟性及び良好な形態安定性を有し、かつ厚さの薄い新規な面状発熱体を提供した点にある。
本発明において、PTC導電性組成物は、グラファイト或いはカーボンブラック、パラフィンと熱可塑性エラストマとを含む樹脂成分からなる。かかるPTC導電性組成物を繊維布帛に含侵乃至塗布する典型的な方法としては、このPTC導電性組成物と適当量の溶剤との均一混合物からなるPTC導電性塗料を作り、この塗料を繊維布帛に塗布する方法がとられる。グラファイト或いはカーボンブラックが導電性付与材であり、パラフィンがPTC付与材であり、そして熱可塑性エラストマは樹脂成分であって、いわゆる構造材としての機能を果たし、これらが固形成分である。PTC導電性塗料において、かかる固形成分と溶剤との比を固溶比という。
本発明において、カーボンブラック或いはグラファイトが全固形分に対して14重量%〜22重量%の範囲内であることが好ましい。この値が14重量%未満であると、初期電気抵抗が高くなりすぎ、また22重量%を超えると、所望とするPTC倍率を得ることが困難となる。カーボンブラック或いはグラファイトは、如何なる種類のものも使用可能である。この導電性物質は、通常、微細粉末状で用いられる。
本発明において、パラフィンは、その融点が70℃〜85℃の範囲内であることが好ましい。融点が70℃未満では、耐熱性が劣り、かつ低い温度で軟化する恐れが生じる傾向にあり、85℃を超えるとPTC特性が充分発揮される温度が高くなりすぎ、別途温度をコントロールするための工夫が必要となり、床暖房用の面状発熱体として好ましくない。パラフィンの融点の更に好ましい範囲は75℃〜85℃の範囲である。パラフィンには製造由来から石炭系と石油系があるが、本発明においてはいずれも採用可能である。
パラフィンのカーボンブラック或いはグラファイトに対する重量比が1.5〜3.5の範囲内であることが好ましく、1.5未満であると、所望のPTC特性を付与することが困難となり、また3.5を超えるとカーボンブラックの濃度を極端に低下させる結果になり、初期電気抵抗が高くなりすぎてしまう。
本発明において、パラフィンが熱可塑性エラストマを含む樹脂成分及びパラフィンの合計量に対して、40重量%〜80重量の範囲内であることが好ましい。この値が40重量%未満であると所望のPTC特性を付与することが困難となり、また80重量%を超えると、構造材としての樹脂成分が少なくなりすぎ、得られる面状発熱体の機械的物性が損なわれる傾向がある。
より好ましい範囲は50重量%〜70重量%である。本発明に使用されるパラフィンはイソパラフィン含有量の少ないものが顕著なPTC特性を得るために好ましい。またパラフィンは微粉末状であることが好ましい。
本発明において使用できる熱可塑性エラストマとしては特に制限がなく、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体、水素添加型スチレン・ブタヂエンランダム共重合体、動的加硫型ポリオレフィン系熱可塑性エラストマ、ポリエステル系熱可塑性エラストマ、ポリアミド系熱可塑性エラストマ、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマ、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマ、フッソゴム系熱可塑性エラストマ、トランス−ポリイソプレン系熱可塑性エラストマ、および塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマ等が挙げられる。
本発明において、樹脂成分として更に結晶性熱可塑性樹脂を併用することができる。かかる併用は、面状発熱体に適度な柔軟性を付与するのに好ましい。この場合、結晶性熱可塑性樹脂の使用量は熱可塑性エラストマに対して35重量%以下であることが好ましい。35重量%を超えると、面状発熱体が剛直になりすぎ好ましくないのである。
本発明において使用できる結晶性熱可塑性樹脂としては特に制限がなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリイミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルファイド、およびポリパラキシレン等が挙げられる。
本発明において、熱可塑性エラストマと結晶性熱可塑性樹脂とは、同じモノマ単位を有するものの組み合わせで使用することが、両者の良好な相溶性の観点から好ましく、即ち、熱可塑性エラストマとしてスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体、水素添加型スチレン・ブタヂエンランダム共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマを使用する場合は、結晶性熱可塑性樹脂としてポリスチレンを使用するのが好ましい。
本発明において、樹脂成分として更に熱硬化性樹脂を使用することができる。かかる熱硬化性樹脂としては、塗料用として通常用いられるフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアルキド・メラミン系樹脂等が挙げられる。なかでも、アルキド樹脂およびアルキド・メラミン系樹脂が好ましく用いられる。
本発明において、面状発熱シートの片面もしくは両面に均熱シートを被覆する必要がある。均熱シートとしては樹脂フィルム/アルミニュウム積層体が好ましく用いられる。この樹脂フィルムとしてはポリエステルフィルムおよびポリオレフィンフィルム等が用いられるが、ポリエステルフィルムが好ましく用いられる。通常、この均熱シートの樹脂フィルム面を粘着剤もしくは接着剤により発熱シートに被覆する。均熱シートを被覆した後、さらに両面を絶縁フィルムで被覆することが必要である。この絶縁フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム及びポリプロピレンフィルム等が挙げられる。なかでもポリエステルフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。
本発明にかかる面状発熱体はその厚さが0.6mm〜1.2mmの範囲である必要がある。0.6mm未満では、所望とする電力密度を得るのが困難となり、又1.2mmを超えると面状発熱体としての応用範囲が狭まり、好ましくない。本発明の面状発熱体は極めて薄いにも拘わらず、高性能であることが特徴のひとつである。
本発明において、D25、D45、D80は、それぞれ25℃、45℃、80℃における電力密度を意味する。
本発明においては、電力密度に関する下記の条件を満足する必要がある。
条件1:D25が250W/m〜500W/mの範囲内であること。
条件2:D25/D45が1.5以下であること。
条件3:D45/D80が7以上であること。
25が250W/m未満であると、初期の発熱量が少なすぎ、対象物を暖める速度が遅くなり好ましくなく、またD25が500W/mを超えると、初期の発熱量が多すぎ、通常の暖房システムでの特定温度たとえば80℃の発熱量を所望の値に低減することが難しくなり、好ましくない。特に好ましいD25は300W/m〜500W/mの範囲である。また、D25/D45が1.5を超えると、面状発熱体の発熱能力が使用時間の経過とともに低下しすぎることになり、好ましくない。この値が1.4以下であることがより好ましい。本発明においてはD45/D80が7以上である必要があり、7未満であると、面状発熱体を床暖房用等の暖房用に使用する場合に、高温での発熱量が多くなりすぎ、不経済になるばかりでなく、別途温度コントロールを行う工夫が必要となり、好ましくない。この値が13以上であることがより好ましい。
本発明にあっては、D25/D80が20以上なるような充分高いPTC倍率であることが好ましい。
本発明において、上記▲1▼〜▲4▼の条件を満足するPTC面状発熱体を取得する方法は次の通りである。条件▲1▼である「厚さが0.6mm〜1.2mmの範囲内であること」という条件は、繊維布帛の厚み調整とPTC導電性組成物の含侵乃至塗布の量の調整、均熱シート及び絶縁フィルムの厚み調整等とにより達成することができる。
条件▲1▼を満足した上で、条件▲2▼「D25が250W/m〜500W/mの範囲内であること」、条件▲3▼「D25/D45が1.5以下であること」、及び条件▲4▼「D45/D80が7以上であること」をすべて満足させるためには、まず第一に、カーボンブラック或いはグラファイト、パラフィン、熱可塑性エラストマからなるPTC導電性組成物の特定、繊維布帛の特定及び繊維布帛へのPTC導電性組成物の含侵量乃至塗布量の特定等の好適な組み合わせが必要であり、PTC導電性組成物の特定に関しては、▲1▼パラフィンの融点が70℃〜85℃の範囲内であり、▲2▼パラフィンのカーボンブラック或いはグラファイトに対する重量比が1.5〜3.5の範囲内であり、▲3▼パラフィンの熱可塑性エラストマを含む樹脂成分及びパラフィンの合計量に対して40重量%〜80重量%の範囲内であり、及び▲4▼カーボンブラックが全固形分に対して14重量%〜22重量%の範囲内である、という条件設定が好ましく、繊維布帛としては木綿からなる目の粗い織物が好ましく、またPTC導電性組成物の含侵乃至塗布の量の特定は、PTC導電性組成物の電気抵抗に関する特性と連動して調整することが必要であり、抵抗が低いPTC導電性組成物である場合は含侵量乃至塗布量を少なく、逆の場合は含侵量乃至塗布量を多くする必要がある。
本発明において、PTC導電性組成物を繊維布帛に含侵乃至塗布するには、典型例はPTC導電性塗料を使用する方法である。PTC導電性塗料の製法は特に制限を受けないが、典型的な製法は次の通りである。すなわち、次の順序の工程により製造される。(1)加熱された攪拌容器に芳香族の溶剤を入れ、40〜60℃の温度まで加熱する、(2)結晶性熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマからなる樹脂成分を加える、(3)パラフィンを添加し、すべての固形分が溶解乃至十分分散するまで、攪拌を続ける、(4)カーボンブラックまたはグラファイトの導電性微細粉体を加え、滑らかなペーストが形成されるまで攪拌する、そして、(5)そのペーストを、この導電性微細粉体の実質的に均一な分散体となるまで混練する。
このPTC導電性塗料から面状発熱体を得る方法としては繊維シートに該塗料を塗布・焼成する方法が典型的である。繊維シートに塗布・焼成する方法について詳述すると、繊維シートとしての繊維布帛には、予め電極線を内包するものを用いるのが好ましく、またかかる繊維布帛としては、綿、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ビニロン系繊維等、又はこれらのうち少なくとも1種を含む紡績糸、又は混繊糸等よりなる繊維糸条を経糸及び/又は緯糸に配し、その経糸及び又は緯糸の一部に銅線又はこれに代わる良導電性線条物を所定間隔で配置した繊維織物が挙げられる。焼成のための加熱方法としては、たとえば、遠赤外線照射、マイクロウエーブ照射、誘電加熱等が利用出来るが、これらに限定されるものではなく、適切な温度管理が可能なものであればよく、また、導電性塗料の溶媒の発散速度に塗膜の表面と内部とで差ができない方法が好ましい。
本発明にかかる面状発熱体の典型的構造を示すのが図1である。図1において、それぞれ、1は発熱シート、2は電極、3は電源線、4及び5は均熱シート、6及び7は絶縁フィルムである。250mm幅の発熱シートの両端部と中央部とに電極が設けられている。2本の電源線が電極に接続される。発熱シートの両面(裏面は図示されず)を均熱シートで被覆し、更に絶縁フィルムで被覆する。発熱シートの長さは、典型的仕様では600mm、1750mm、2650mmである。例えば、6帖用は1750mmの長さのものを10枚、8帖用は2650mmのものを10枚、12帖用は2650mmのものを15枚、キッチン・トイレ用は600mmのものを3枚、それぞれ連結される。
本発明にかかるPTC面状発熱体は、種々な用途、例えば暖房用床パネル、ビニールハウス用暖房機器、除霜・水凍結防止ヒーター、調理器、融雪機器、便座装置、屋外用座席、および植物乾燥器等に好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
アセチレンブラック(電気化学社製:デンカブラック)3kg、をエチレン/プロピレン/スチレンコポリマー(シェル社製:KratonG1701)4kg、ポリスチレン1kg、融点83℃のパラフィン7kg、及びMEK/キシレン=20/80の混合溶媒15kgよりなる溶液に添加し、充分撹拌した後、3本ロールにより混練して均一なペーストとした後、これを1.5倍量のキシレンで希釈・撹拌して発熱材を含むコーティング液を調整した。
一方、約1mmの間隔で整経したポリエステル/綿混紡糸(20/2メートル番手)の中に良導電性線条物として275dtex/fのポリエステルフィラメント糸の表面に幅約0.3mmの銅箔を巻いたカバーリング糸5本を引き揃えて中央部と両端部に3本の電極を配置し、緯糸にポリエステル/綿混紡糸(20/2メートル番手)を用いて約1mm間隔で打ち込んで幅約250mmの目の粗い織物を形成し、得られた織物を上記コーティング液に浸漬して、軽くロールで絞った後、加熱乾燥した。かくして、PTC導電性の長さ600mm面状シートを得た。この発熱シートの両面を25ミクロンのポリエチレンテレフタレートフィルムに40ミクロンのアルミニュウム箔を積層させたシートによりポリエチレンテレフタレートフィルムが発熱シート面に接する様に被覆し、ついでポリエチレンフィルム(50ミクロン)の絶縁フィルムで両面を被覆した。ロールでの絞りの調整および予備実験等により生成する面状発熱体の25℃における電力密度が約400W/mになるように面状発熱体を作成した。
取得した面状発熱体の特性は下記の通りであった。
▲1▼厚さ:0.7mm
▲2▼25℃における電力密度:410W/m
▲3▼45℃における電力密度:300W/m
▲4▼80℃における電力密度:17W/m
従って、D25/D45は1.37であり、D45/D80は17.6であった。
この面状発熱体は、極めて薄く、柔軟性に富み、発熱性能が抜群であり、しかもPTC倍率が極めて高く優れた安全性を具備しているものであった。また、この面状発熱体は、ホットラインとかホットスポットと称される局部過熱は全く認められなかった。
〔実施例2〕
アセチレブラック(電気化学社製:デンカブラック)3.2kg、をエチレン/プロピレン/スチレンコポリマー(シェル社製:KratonG1701)3.8kg、ポリスチレン1.2kg、融点83℃のパラフィン6.8kg、及びMEK/キシレン=20/80の混合溶媒15kgよりなる溶液に添加し、充分撹拌した後、3本ロールにより混練して均一なペーストとした後、これを1.5倍量のキシレンで希釈・撹拌して発熱材を含むコーティング液を調整した。
実施例1と同じ織物を上記コーティング液に浸漬して、軽くロールで絞った後、加熱乾燥した。かくして、PTC導電性の長さ600mmの面状発熱体を得た。この発熱シートの両面を25ミクロンのポリエチレンテレフタレートフィルムに40ミクロンのアルミニュウム箔を積層させたシートによりポリエチレンテレフタレートフィルムが発熱シート面に接する様に被覆し、ついでポリエチレンフィルム(50ミクロン)の絶縁フィルムで両面を被覆した。ロールでの絞りの調整および予備実験等により生成する面状発熱体の25℃における電力密度が約450W/mになるように面状発熱体を作成した。
取得した面状発熱体の特性は下記の通りであった。
▲1▼厚さ:0.69mm
▲2▼25℃における電力密度:460W/m
▲3▼45℃における電力密度:340W/m
▲4▼80℃における電力密度:22W/m
従って、D25/D45は1.35であり、D45/D80は15.5であった。
この面状発熱体は、極めて薄く、柔軟性に富み、発熱性能が抜群であり、しかもPTC倍率が極めて高く優れた安全性を具備しているものであった。また、この面状発熱体は、ホットラインとかホットスポットと称される局部過熱は全く認められなかった。
〔実施例3〕
アセチレブラック(電気化学社製:デンカブラック)2.7kg、をエチレン/プロピレン/スチレンコポリマー(シェル社製:KratonG1701)3.8kg、ポリスチレン1.2kg、融点83℃のパラフィン7.3kg、及びMEK/キシレン=20/80の混合溶媒15kgよりなる溶液に添加し、充分撹拌した後、3本ロールにより混練して均一なペーストとした後、これを1.5倍量のキシレンで希釈・撹拌して発熱材を含むコーティング液を調整した。
実施例1と同じ織物を上記コーティング液に浸漬して、軽くロールで絞った後、加熱乾燥した。かくして、PTC導電性の長さ600mmの面状発熱体を得た。この発熱シートの両面を25ミクロンのポリエチレンテレフタレートフィルムに40ミクロンのアルミニュウム箔を積層させたシートによりポリエチレンテレフタレートフィルムが発熱シート面に接する様に被覆し、ついでポリエチレンフィルム(50ミクロン)の絶縁フィルムで両面を被覆した。ロールでの絞りの調整および予備実験等により生成する面状発熱体の25℃における電力密度が約370W/mになるように面状発熱体を作成した。
取得した面状発熱体の特性は下記の通りであった。
▲1▼厚さ:0.71mm
▲2▼25℃における電力密度:360W/m
▲3▼45℃における電力密度:261W/m
▲4▼80℃における電力密度:13W/m
従って、D25/D45は1.38であり、D45/D80は20.1であった。
この面状発熱体は、極めて薄く、柔軟性に富み、発熱性能が抜群であり、しかもPTC倍率が極めて高く優れた安全性を具備しているものであった。また、この面状発熱体は、ホットラインとかホットスポットと称される局部過熱は全く認められなかった。
発明の効果
本発明によれば、特定のPTC導電性組成物の採用、複数の温度に於ける電力密度の規定、および厚さの特定等により、優秀なPTC特性と25℃における高い電力密度とを兼備し、ホットラインとかホットスポットと称される局部過熱が生じない、優れた発熱機能を有し、かつ優れた柔軟性及び良好な形態安定性を有し、かつ厚さの薄い新規な面状発熱体が提供された。
本発明に係るPTC面状発熱体の構造を示す。
符号の説明
1:発熱シート
2:電極
3:電源線
4及び5:均熱シート
6及び7:絶縁フィルム

Claims (1)

  1. カーボンブラック或いはグラファイト、融点が70℃〜85℃の範囲内であるパラフィン、熱可塑性エラストマ、結晶性熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなり、PTC導電性組成物中のカーボンブラック或いはグラファイトの量が14重量%〜22重量%の範囲内であるPTC導電性組成物が繊維布帛に含浸乃至塗布されて成る面状発熱シートに順次片面もしくは両面に均熱シートが、両面に絶縁フィルムが被覆されてなり、かつ下記(1)〜(4)の条件を満足するPTC面状発熱体;
    (1)厚さが0.6mm〜1.2mmの範囲内であること
    (2)D25が250W/m〜500W/mの範囲であること
    (3)D25/D45が1.5以下であること
    (4)D45/D80が13以上であること
    ただし、D25、D45、D80は、それぞれ25℃、45℃、80℃における電力密度(W/m)を意味する。
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