JP4500673B2 - 加ピロリン酸分解活性化重合(pap) - Google Patents

加ピロリン酸分解活性化重合(pap) Download PDF

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Description

発明の背景
[0001]本発明は、核酸重合および増幅に関する。特に、本発明は、加ピロリン酸分解(pyrophosphorolysis)および重合を連続してカップリングする、核酸増幅の新規でそして一般的な方法に関する。該方法はアレル特異的増幅に適応されてきており、そして野生型アレルの存在下で、非常に稀なアレルを検出する特異性を非常に増加させることも可能である。我々は該方法を加ピロリン酸分解活性化重合(PAP)と称する。
[0002]本発明の背景を解明するか、または実施に関してさらなる詳細を提供する、本明細書に用いられる刊行物および他の資料は、本明細書に援用され、そして便宜上、付随する参考文献一覧にそれぞれ集めてある。
[0003]細胞の10%未満に存在する突然変異(すなわち稀なアレル)を検出する多数の方法が開発されてきており、これらには特異的アレルのPCR増幅(PASA)、ペプチド核酸(PNA)固定(clamping)ブロッカーPCR、アレル特異的競合的ブロッカーPCR、ミスマッチ増幅突然変異アッセイ(MAMA)、制限断片長多型(RFLP)/PCR(ParsonsおよびHeflich、1997)およびQE−PCR(RonaiおよびMinamoto、1997)が含まれる。これらの方法は:i)稀なアレルを選択的に増幅するか、ii)豊富な野生型アレルを破壊するか、またはiii)野生型アレルから稀なアレルを空間的に分離する。典型的な研究/臨床条件下で達成可能な特異性は10−3である(ParsonsおよびHeflich、1997)が、いくつかの刊行物は、より高い検出特異性を報告した(PourzandおよびCerutti、1993;Knollら、1996)。これらの方法は、一般的に、より高い特異性を達成しないか、または日常的な解析に適していない。
[0004]10〜10野生型アレル中の1つの突然変異アレルを検出する堅固な方法は、微小残存病変(寛解後の再発またはリンパ節および他の隣接組織における稀な残存癌細胞)の検出および突然変異負荷(正常組織に存在する体細胞突然変異の頻度およびパターン)の測定を含む、多くの適用に好適であろう。高い突然変異負荷を持つ個体は、環境曝露、またはゲノムの完全性を維持するのに必要な何百もの遺伝子のいずれかにおける内因性の欠損によって、癌のリスクが増加している可能性もある。高い突然変異負荷を有することが見出された個体に関しては、突然変異パターンを定義することによって、病因学の手掛かりを得ることも可能である。
[0005]多くのDNA配列決定法およびその変型法があり、例えばジデオキシ末端処理および変性ゲル電気泳動を用いるサンガー配列決定法(Sangerら、1977)、化学的切断および変性ゲル電気泳動を用いるマクサム−ギルバート配列決定法(MaxamおよびGilbert、1977)、DNAポリメラーゼ反応中に放出されたピロホスフェート(PP)を検出するピロ配列決定法(Ronaghiら、1998)、およびオリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションによる配列決定法(SBH)(Lysovら、1988;BainsおよびSmith、1988;Drmanacら、1989;Khrapkoら、1989;Pevznerら、1989:Southernら、1992)がある。
[0006]未知の突然変異に関してスキャンする、ゲルに基づく方法が多くあり、これらには、一本鎖コンホメーション多型(SSCP)およびジデオキシフィンガープリンティング(ddF)のSSCPハイブリッド法、制限エンドヌクレアーゼ・フィンガープリンティング(REF)、並びに実質的にすべての突然変異−SSCPの検出(DOV AM−S)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、変性HPLC(dHPLC)化学的または酵素的切断が含まれる(Sarkarら、1992;LiuおよびSommer、1995;Liuら、1999;Myersら、1985;Cottonら、1988;Liuら、1999;Buzinら、2000;Spiegelmanら、2000)。DOVAM−Sおよび化学的切断反応は、盲検化解析において、本質的にすべての突然変異を同定することが示されている(Buzinら、2000)。逆相クロマトグラフィーに基づくdHPLCもまた、適切な条件下で、本質的にすべての当然変異を同定可能である(O’Donovanら、1998;OefnerおよびUnderhill、1998;Spiegelmanら、2000)。より高いスループットを持つ一般的なスキャン法を開発する努力がなされている。
[0007]ハイブリダイゼーションによる配列決定(SBH)は、マイクロアレイ上の未知の突然変異に関してスキャンするかまたは再配列決定するのに適応されてきている(Southern、1996)。これは熱心な研究がなされる有望な領域でありつづけている。しかし、このアプローチでは、いまだに大部分のマイクロ挿入および欠失を検出することが不可能であり、そして一塩基変化のシグナル対ノイズ比のために、5〜10%の一ヌクレオチド変化の検出が妨げられている(Hacia、1999)。別のアプローチでも探査を可能にする。
[0008]哺乳動物遺伝子制御および発生には、in vivoクロマチン構造が重要であることが、ますます明らかになってきている。クロマチン構造の安定な変化はしばしば、メチル化の変化および/またはヒストンアセチル化の変化を伴う。クロマチン構造における体細胞遺伝性変化は、通常、エピジェネティック変化と称され(RussoおよびRiggs、1996)、そして現在、癌発生には、エピジェネティック「ミス」またはエピミューテーション(epimutation)がしばしば重要な寄与要因であることが明らかである(JonesおよびLaird、1999)。
[0009]in vivoクロマチン構造をアッセイするいくつかの方法の1つであり、そして一ヌクレオチドレベルでの解像度を持つ唯一の方法は、連結仲介PCR(LM−PCR)(MuellerおよびWold、1989;Pfeiferら、1989)およびその変型法のターミナルトランスフェラーゼ仲介PCR(TD−PCR)(KomuraおよびRiggs、1998)である。メチル化シトシン残基、結合している転写因子、または配置されているヌクレオソームの位置などの、クロマチン構造の多くの側面が、LM−PCRによって決定可能である。LM−PCRがあるプライマーセットを用いた場合に、他のものよりよく働くことは容易に明らかである。したがって、クロマチン構造を測定する、より堅固な方法を開発することが望ましい。
[0010]したがって、DNAを増幅する代替法、DNAを配列決定する代替法、およびクロマチン構造を解析する代替法を開発するのが本発明の目的である。この目的は、本明細書に記載するように、新規加ピロリン酸分解活性化重合(PAP)を使用することによって達成される。PAPは、DNAを再配列決定し、そしてクロマチン構造を解析するため、特定のアレルを増幅する特異性を劇的に増進させる潜在能力を有する。
発明の概要
[0011]本発明は、核酸テンプレート鎖上で、所望の核酸鎖を合成する、加ピロリン酸分解活性化重合(PAP)法である。該方法は、連続的に行われる以下の工程を含んでなる。
[0012](a)相補的な活性化可能オリゴヌクレオチドPを、テンプレート鎖にアニーリングさせる工程。この活性化可能オリゴヌクレオチドは、加ピロリン酸分解によって活性化可能な伸長不能3’末端(以後、伸長不能3’末端または3’伸長不能端または伸長不能3’端と称する)を有する。伸長不能3’末端(または端)は、相補ヌクレオチドとワトソン−クリック塩基対を形成する能力を有し、そして核酸ポリメラーゼによって伸長されることが可能な3’OHを欠く、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体である。1つの態様において、伸長不能3’末端は、ジデオキシヌクレオチドなどの、伸長不能3’デオキシヌクレオチドであることも可能である。第二の態様において、伸長不能3’末端は、アシクロヌクレオチドなど、3’ヒドロキシル基を欠く、化学的に修飾されたヌクレオチドであることも可能である。アシクロヌクレオチドでは、dNMPに通常存在する2’−デオキシリボフラノシル糖が、2−ヒドロキシエトキシメチル基で置換されている。他の態様において、伸長不能3’末端は、本明細書に記載するような他のブロッカーであることも可能である。1つの態様において、活性化可能オリゴヌクレオチドPは、3’末端またはその近傍に、テンプレート鎖上の対応するヌクレオチドにミスマッチするヌクレオチドを持たない。第二の態様において、活性化可能オリゴヌクレオチドPは、その3’末端またはそこから16ヌクレオチド以内に、テンプレート鎖上の対応するヌクレオチドに関するミスマッチを有する。末端3’−デオキシヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドPがアニーリングする際、テンプレート鎖にハイブリダイズする。
[0013](b)ピロホスフェート、および加ピロリン酸分解活性を有する酵素を用いて、アニーリングした活性化可能オリゴヌクレオチドPを加ピロリン酸分解する工程。これは、ハイブリダイズした伸長不能3’末端の除去によってオリゴヌクレオチドPを活性化する。
[0014](c)4種のヌクレオシド三リン酸またはその類似体および核酸ポリメラーゼの存在下で、テンプレート鎖上、活性化されたオリゴヌクレオチドPを伸長することによって重合させ、所望の核酸鎖を合成する工程。
[0015]PAP法を適用して、以下のさらなる工程によって所望の核酸鎖を増幅することも可能である。
[0016](d)テンプレート鎖から工程(c)の所望の核酸鎖を分離する工程、および
[0017](e)所望の核酸鎖の所望の増幅レベルが達成されるまで、工程(a)〜(d)を反復する工程。
[0018]好ましい側面において、上述のようなPAP法を、アレル特異的増幅(PAP−A)に適用する。この適用において、核酸テンプレート鎖は、1つのアレルのセンス鎖またはアンチセンス鎖であり、そして第二のアレルの対応する(センスまたはアンチセンス)核酸鎖(アレル鎖)と混合されて存在する。活性化可能オリゴヌクレオチドPは、その3’端またはその近傍に、例えば3’末端から16ヌクレオチド以内に、アレル鎖の対応するヌクレオチドとミスマッチする、少なくとも1つのヌクレオチドまたは類似体を有する。このミスマッチのため、PAP法の工程(a)において、オリゴヌクレオチドPの伸長不能3’末端は、アレル鎖に実質的にハイブリダイズしない。工程(b)において、加ピロリン酸分解は、アレル鎖にアニーリングした活性化可能オリゴヌクレオチドPから、ハイブリダイズしていない伸長不能3’末端を実質的に除去しない。工程(c)において、オリゴヌクレオチドPは、アレル鎖上の重合によって、実質的に伸長されない。その結果、テンプレート鎖上で合成される所望の核酸鎖が、アレル鎖上で合成されるいかなる核酸鎖よりも優先的に増幅される。
[0019]第二の好ましい側面において、上述のPAP−A法を双方向に行うことも可能である(Bi−PAP−A)。双方向性PAP(Bi−PAP)は、好ましくは、3’末端に1ヌクレオチド重複を持つ、2つの相対する加ピロリン酸分解活性化可能オリゴヌクレオチド(P)を用いる、新規設計である。したがって、Bi−PAPにおいて、相対する活性化可能オリゴヌクレオチドPの対を用いて、PAP−Aを行う。下流Pおよび上流Pはどちらも、3’末端で目的のヌクレオチドに特異的である(例えばA:T塩基対)。ゲノムDNAからの最初の増幅周期において、定義されないサイズのセグメントを生成する。続く周期において、オリゴヌクレオチドを合わせた長さから1引いた長さに等しいセグメントを指数関数的に増幅する。この設計では、ブロッキングされていない上流からの誤った取り込みによるエラーが排除されるため、非特異的増幅は、より低い頻度でしか起こらない。最も効率的な増幅のため、Pは30〜60ヌクレオチドであることも可能である。
[0020]PAP法を用いて、RNAまたはDNAいずれかを増幅することも可能である。DNAを増幅するのに用いる際、活性化可能オリゴヌクレオチドPは2’−デオキシオリゴヌクレオチドであることも可能であり、伸長不能3’末端は、例えば2’,3’−ジデオキシヌクレオチドまたはアシクロヌクレオチド、あるいは本明細書に記載するような他のブロッカーであることも可能であり、4種のヌクレオシド三リン酸は2’−デオキシヌクレオシド三リン酸またはその類似体であり、そして核酸ポリメラーゼはDNAポリメラーゼである。工程(c)で用いるDNAポリメラーゼはまた、工程(b)で用いる加ピロリン酸分解活性を有する酵素でもあることも可能である。加ピロリン酸分解活性を有する好ましいDNAポリメラーゼは、熱安定性Tfl、Taq、並びにAmpliTaqFsおよびThermoSequenaseTMなどの遺伝子操作されたDNAポリメラーゼである。これらの遺伝子操作されたDNAポリメラーゼは、突然変異F667Yまたは活性部位での同等の突然変異を有する。AmpliTaqFsおよびThermoSequenaseTMなどの遺伝子操作されたDNAポリメラーゼの使用は、PAPの有効性を非常に改善する。活性化可能オリゴヌクレオチドPが3’ジデオキシヌクレオチドまたはアシクロヌクレオチドである場合、これらのファミリーI DNAポリメラーゼが使用可能である。活性化可能オリゴヌクレオチドPがアシクロヌクレオチドである場合、ファミリーII始原菌(archaeon)DNAポリメラーゼもまた使用可能である。こうしたポリメラーゼの例には、限定されるわけではないが、Vent(エキソ−)およびPfu(エキソ−)が含まれる。これらのポリメラーゼは、3’アシクロヌクレオチドでブロッキングされたPを効率的に増幅する。2以上のポリメラーゼを1つの反応で使用することもまた可能である。テンプレートがRNAである場合、核酸ポリメラーゼはRNAポリメラーゼ、逆転写酵素、またはその変異体であることも可能である。活性化可能オリゴヌクレオチドPはリボヌクレオチドまたは2’−デオキシヌクレオチドであることも可能である。伸長不能3’末端は3’デオキシリボヌクレオチドまたはアシクロヌクレオチドであることも可能である。4種のヌクレオシド三リン酸は、リボヌクレオシド三リン酸、2’デオキシヌクレオシド三リン酸またはその類似体であることも可能である。便宜上、続く説明ではDNAをテンプレートとして用いる。しかし、本側面に記載するように、RNAもまた含まれる。
[0021]PAP法による増幅は、線形または指数関数的であることも可能である。線形増幅は、活性化可能オリゴヌクレオチドPが、用いられる唯一の相補オリゴヌクレオチドである場合に得られる。指数関数的増幅は、所望の核酸鎖に相補的である、Pであることも可能な第二の相対するオリゴヌクレオチドが存在する場合に得られる。活性化可能オリゴヌクレオチドPおよび第二のオリゴヌクレオチドは、増幅の標的とされる領域に隣接する。工程(a)において、第二のオリゴヌクレオチドは、工程(d)の分離された所望の核酸鎖産物にアニーリングする。工程(c)において、重合は、所望の核酸鎖上で、第二のオリゴヌクレオチドを伸長し、核酸テンプレート鎖のコピーを合成する。工程(d)において、合成された核酸テンプレート鎖を、所望の核酸鎖から分離する。所望のレベルの指数関数的増幅が達成されるまで、工程(a)〜(d)を反復する。
[0022]PAP法において、活性化可能オリゴヌクレオチドPおよびテンプレート鎖の間のミスマッチは、Pの3’末端またはPの3’末端から16ヌクレオチド以内で、Pの3’特異的下位配列においてミスマッチが生じるならば、実質的な増幅をまったく生じない。Pの3’特異的下位配列において、こうしたミスマッチに対する増幅が欠けていることによって、一塩基置換の解像度で、40億の異なる、そして特異的なオリゴヌクレオチドが提供される。
[0023]好ましい側面において、1以上の野生型アレルを含有する混合物において、稀な突然変異アレルを指数関数的に増幅するため、PAP法を用いる。アレル鎖を分離して、一本鎖核酸を提供し、そして次いで、以下の工程を連続して行う。
[0024](a)各アレルのセンス鎖またはアンチセンス鎖に、伸長不能3’末端を有する相補的活性化可能2’−デオキシオリゴヌクレオチドPをアニーリングさせる工程。伸長不能3’末端は、例えば伸長不能2’,3’−ジデオキシヌクレオチドまたはアシクロヌクレオチドであることも可能である。Pは、その3’末端またはその近傍に、突然変異鎖上の対応する2’−デオキシヌクレオチドにミスマッチする2’−デオキシヌクレオチドを持たないが、その3’末端またはその近傍に、野生型鎖上の対応する2’−デオキシヌクレオチドにミスマッチする2’−デオキシヌクレオチドを少なくとも1つ持つ。その結果、オリゴヌクレオチドPをアニーリングさせた際、伸長不能3’末端は、突然変異鎖にハイブリダイズするが、野生型鎖にはハイブリダイズしない。同時に、各アレルの逆平行鎖に相補的な第二の2’−デオキシオリゴヌクレオチドを逆平行鎖にアニーリングさせる。活性化可能2’−デオキシオリゴヌクレオチドPおよび第二の2’−デオキシオリゴヌクレオチドは、増幅しようとする遺伝子領域に隣接する。
[0025](b)ピロホスフェート、および加ピロリン酸分解活性を有する酵素を用いて、突然変異鎖にアニーリングした活性化可能2’−デオキシオリゴヌクレオチドPを加ピロリン酸分解する工程。この工程は、ハイブリダイズした伸長不能3’末端の除去によって、突然変異鎖にアニーリングした2’−デオキシオリゴヌクレオチドPを活性化する。ハイブリダイズしていない伸長不能3’末端は加ピロリン酸分解によって実質的に除去されないため、この工程は、2’−デオキシオリゴヌクレオチドPが突然変異鎖にアニーリングした際、2’−デオキシオリゴヌクレオチドPを実質的に活性化しない。
[0026](c)4種のヌクレオシド三リン酸またはその類似体およびDNAポリメラーゼの存在下で、突然変異鎖上、活性化されたオリゴヌクレオチドPを伸長し、そして突然変異体および野生型両方の逆平行鎖上、第二の2’−デオキシオリゴヌクレオチドを伸長することによって重合させる工程。
[0027](d)工程(c)の伸長産物を分離する工程;
[0028](e)突然変異アレルの所望の増幅レベルが達成されるまで、工程(a)〜(d)を反復する工程。
[0029]活性化可能2’−デオキシオリゴヌクレオチドPをアレルのアンチセンス鎖にアニーリングさせ、そして第二の2’−デオキシオリゴヌクレオチドをセンス鎖にアニーリングさせるか、またはその逆にする。
[0030]PAPの工程(a)〜(c)を、サーモサイクラー上、2以上の温度段階として、連続して行うか、またはサーモサイクラー上、1つの温度段階として行うことも可能である。
[0031]ヌクレオシド三リン酸および2’−デオキシヌクレオシド三リン酸またはその化学的修飾型を、PAPによる多数のヌクレオチド伸長の基質として使用可能であり、すなわち1つのヌクレオチドを取り込む際、伸長中の鎖をさらに伸長させることも可能である。2’,3’−ジデオキシヌクレオチド三リン酸、その化学的修飾型、アシクロヌクレオチド、またはさらなる伸長のターミネーターである他のブロッキングされたヌクレオチドを一ヌクレオチド伸長に使用可能である。存在する場合、オリゴヌクレオチドPの3’末端ジデオキシヌクレオチドと区別するため、放射能または色素で、2’,3’−ジデオキシヌクレオシド三リン酸を標識することも可能である。ヌクレオシド三リン酸または2’−デオキシヌクレオチド三リン酸またはその類似体、および2’,3’−ジデオキシヌクレオシド三リン酸またはその類似体の混合物もまた使用可能である。
[0032]PAPをDNA配列決定の新規方法において使用することも可能である。PAPでは、P、伸長不能3’末端を含有するオリゴヌクレオチドを用いることによって、DNAポリメラーゼによる加ピロリン酸分解および重合を連続してカップリングする。伸長不能3’末端は、例えば、伸長不能3’−デオキシヌクレオチドまたはアシクロヌクレオチドであることも可能である。この原理は、PAPの特異性に、そして次に、3’特異的下位配列の塩基対形成特異性に基づく。3’特異的下位配列のこの特性を適用して、未知の配列変異体をスキャンするかまたは再配列決定して、新規にDNA配列を決定し、2つのDNA配列を比較し、そして大規模に遺伝子発現プロファイリングを監視することも可能である。これらの方法においては、Pアレイが可能である。すなわち、Pの各々を個々のドットまたは固体支持体上に固定し、こうして、すべてのPAP反応が平行にプロセシングされるのを可能にする。
[0033]したがって、1つの側面において、以下の工程を連続して行うことによって、あらかじめ決定された配列内の未知の配列変異体をスキャンするかまたは再配列決定するため、PAP法を用いる。
[0034](a)ハイブリダイズするテンプレート鎖に十分に相補的な4つの活性化可能オリゴヌクレオチドPの多数のセットと、核酸のテンプレート鎖を、ハイブリダイゼーション条件下で混合する工程。各セット内で、テンプレート鎖が伸長不能3’末端に相補的な場合、伸長不能3’末端がテンプレート鎖にハイブリダイズするように、異なる伸長不能3’末端を有する点で、オリゴヌクレオチドPは互いに異なる。セットの番号は、配列中のヌクレオチド番号に対応する。伸長不能3’末端は、例えば伸長不能3’−デオキシヌクレオチドまたはアシクロヌクレオチドであることも可能である。
[0035](b)生じた二重鎖Pを、ピロホスフェート、および加ピロリン酸分解活性を有する酵素で処理し、テンプレート鎖にハイブリダイズした伸長不能3’末端を有するオリゴヌクレオチドPのみを、加ピロリン酸分解によって活性化する工程。
[0036](c)4種のヌクレオシド三リン酸またはその類似体および核酸ポリメラーゼの存在下、テンプレート鎖上の活性化されたオリゴヌクレオチドPを伸長することによって重合させる工程。
[0037](d)テンプレート鎖から工程(c)で合成された核酸鎖を分離する工程。
[0038](e)所望の増幅レベルが達成されるまで、工程(a)〜(d)を反復する工程、および
[0039](f)増幅を生じるオリゴヌクレオチドPの重複を解析することによって、核酸配列を順序正しく配置する工程。
[0040]第二の側面において、以下の工程を連続して行うことによって、核酸の配列を新規に決定するため、PAP法を用いる。
[0041](a)多数の活性化可能オリゴヌクレオチドPと、核酸のテンプレート鎖を、ハイブリダイゼーション条件下で混合する工程。すべてのオリゴヌクレオチドPは、テンプレートと同じ数nのヌクレオチドを有し、そして集合的に、nヌクレオチドを有するすべてのありうる配列を構成する。すべてのオリゴヌクレオチドPは、伸長不能3’末端を有する。伸長不能3’末端は、例えば伸長不能3’−デオキシヌクレオチドまたはアシクロヌクレオチドであることも可能である。十分に相補的なオリゴヌクレオチドPは、いずれも、テンプレート鎖にハイブリダイズするであろう。伸長不能3’末端は、テンプレート鎖が3’末端に対応する位で相補的である場合にのみ、テンプレート鎖にハイブリダイズするであろう。
[0042](b)生じた二重鎖Pを、ピロホスフェート、および加ピロリン酸分解活性を有する酵素で処理し、ハイブリダイズした伸長不能3’末端の加ピロリン酸分解によって、テンプレート鎖にハイブリダイズした伸長不能3’末端を有するオリゴヌクレオチドPのみを活性化する工程。
[0043](c)4種のヌクレオシド三リン酸またはその類似体および核酸ポリメラーゼの存在下、テンプレート鎖上の活性化されたオリゴヌクレオチドPを伸長することによって重合させる工程。
[0044](d)テンプレート鎖から工程(c)で合成された核酸鎖を分離する工程。
[0045](e)所望の増幅レベルが達成されるまで、工程(a)〜(d)を反復する工程、および
[0046](f)増幅を生じるオリゴヌクレオチドPの配列を決定し、次いでこれらのオリゴヌクレオチドの重複を解析することによって、核酸配列を順序正しく配置する工程。
[0047]PAPはまた、以下の工程を連続して行うことによって、連結仲介PCR(LM−PCR)と同じように、クロマチン構造を研究するのにも使用可能である。LM−PAPは、一次ヌクレオチド配列の決定、シトシンメチル化パターン、DNA損傷形成および修復、並びにin vivoタンパク質−DNAフットプリントに用いられてきている(Daiら、2000;MuellerおよびWold、1989;Pfeiferら、1989;Pfeiferら、1999;BeckerおよびGrossman、1993)。連結仲介PAP(LM−PAP)は、切断、プライマー伸長、リンカー連結、およびPAPを伴い、染色体のメチル化状態などのin vivoクロマチン構造の解析に、そしてLM−PCRと同様の他の核酸解析に適用可能である。
[0048]LM−PAPの性質は、連結反応によるか、またはターミナルトランスフェラーゼを用いた伸長によるなどで、PAP前にテンプレートを合成することである。PAPはいかなる種類のPAPであることも可能であり:1つのPのみを用いても、少なくとも1つがPである2つの相対するオリゴヌクレオチドを用いても、Bi−PAP、マッチPAP、ミスマッチPAPなどであってもよい。したがって、最も単純な場合、LM−PAPは、あらかじめ合成したテンプレートに対するPAPの適用である。LM−PAPは工程(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)によって、工程(i)、(ii)、(iii)および(vi)によって、工程(ii)、(iii)、(iv)および(v)によって、または工程(ii)、(iii)および(vi)によって、実行可能であり、工程は以下のとおりである。
[0049](i)切断が化学的、酵素的、または天然に生じて、核酸鎖を「破壊」する。核酸は、通常、in vivoで産生された損傷またはニックを有することが可能なゲノムDNAである。
[0050](ii)オリゴヌクレオチドP1は遺伝子特異的であり、そしてその伸長には:1)テンプレート鎖に実質的に相補的なオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ;2)ヌクレオシド三リン酸またはその類似体および核酸ポリメラーゼの存在下、テンプレート鎖上でオリゴヌクレオチドを伸長し、この伸長がテンプレート鎖上の切断部位で「脱線する(run off)」ことが含まれる。工程1)および2)を反復することも可能である。
[0051]プライマー伸長の代わりにP伸長を行うことも可能であり、ここで1つのみの活性化可能オリゴヌクレオチドPを用いて、上記PAPを行う。
[0052](iii)リンカー連結工程には、合成された核酸鎖の3’末端へのリンカーの連結が含まれる。テンプレート非依存性重合であり、そして合成された核酸鎖の3’末端に余分な核酸配列が付加されるターミナルトランスフェラーゼ伸長を、リンカー連結工程の代わりに行うことも可能である。
[0053](iv)第二の遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(P2)を、リンカーに特異的な、またはターミナルトランスフェラーゼによって付加された配列に特異的なオリゴヌクレオチドとともに用いて、PCRを行う。
[0054](v)第三の遺伝子特異的P(P3)を用いて、PCRが生成した断片を検出する。1つの活性化可能オリゴヌクレオチドPのみを用いて、PAP法を適用する。活性化されたオリゴヌクレオチドPの伸長は、IVで生成したテンプレート鎖の端で「脱線する」。PAP法をアレル特異的方式で適用することも可能である。活性化可能オリゴヌクレオチドPは、テンプレート鎖に相補的でない1以上のヌクレオチドを含有することも可能である。Pの非相補的ヌクレオチド(単数または複数)が、Pの3’末端に位置することも可能である。
[0055](vi)工程(iv)および(v)の代わりに、少なくとも1つが活性化可能オリゴヌクレオチドPである2つの相対するオリゴヌクレオチドを用いたPAP法も適用可能である。活性化可能オリゴヌクレオチドP(P3)は遺伝子特異的である。第二のオリゴヌクレオチドは、リンカーに特異的であるか、またはターミナルトランスフェラーゼによって付加された配列に特異的である。第二のオリゴヌクレオチドは、別の活性化可能オリゴヌクレオチドPであることも、または普通のオリゴヌクレオチドであることも可能である。アレル特異的方式でPAP法を適用することも可能である。活性化可能オリゴヌクレオチドP(P3)は、テンプレート鎖に相補的でない、1以上のヌクレオチドを含有することも可能である。Pの非相補的ヌクレオチド(単数または複数)が、P(P3)の3’末端に位置することも可能である。
[0056]次いで、通常、第三の遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(P3)を用いて、PCRで生成された断片を標識し、そしてその視覚化を可能にする。P3は、5’末端で32P標識されるか、またはより最近は、IRD700またはIRD800(Li−Cor Inc.)などの近赤外蛍光色素で標識される(Daiら、2000)。
[0057]PAPを用いて、標的核酸を検出することも可能である。1つの態様において、この方法は以下の工程を伴う:
[0058](a)核酸含有試料にオリゴヌクレオチドPを添加する工程、ここでオリゴヌクレオチドPは伸長不能3’末端を有し、オリゴヌクレオチドPの3’末端残基は加ピロリン酸分解によって除去可能であり、そしてオリゴヌクレオチドPは、試料に存在する標的核酸の実質的な相補鎖にアニーリングする;
[0059](b)標的核酸の実質的な相補鎖にアニーリングしたオリゴヌクレオチドPの3’伸長不能末端を、加ピロリン酸分解によって除去して、オリゴヌクレオチドPを非ブロッキング化し、ブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを産生する工程;および
[0060](c)標的核酸の存在を検出する工程、ここで標的核酸の配列は、オリゴヌクレオチドPの配列と実質的に相補的である。
[0061]第一の態様の方法は、検出工程の前に:(b1)核酸ポリメラーゼを用いて、ブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを伸長して、伸長されたオリゴヌクレオチドを産生する工程をさらに含むことも可能である。該方法はまた、3’伸長不能末端を持ってもまたは持たなくてもよい第二のオリゴヌクレオチドの添加も含むことも可能である。第二のオリゴヌクレオチドは、標的核酸の実質的な相補鎖にアニーリングすることも可能であるし、または標的核酸の実質的な相補鎖の相補体にアニーリングすることも可能である。
[0062]核酸を検出するための第二の態様において、方法は以下の工程を伴う:
[0063](a)核酸含有試料に2つのオリゴヌクレオチドPを添加する工程、ここで各オリゴヌクレオチドPは伸長不能3’末端を有し、オリゴヌクレオチドPの3’末端残基は加ピロリン酸分解によって除去可能であり、一方のオリゴヌクレオチドPともう一方のオリゴヌクレオチドPは、それぞれの3’端で、少なくとも1ヌクレオチド重複し、そして一方のオリゴヌクレオチドPは、試料に存在する標的核酸の実質的な相補鎖にアニーリングし、そしてもう一方のオリゴヌクレオチドPは、標的核酸の実質的な相補鎖の相補体にアニーリングする;
[0064](b)標的核酸にアニーリングしたオリゴヌクレオチドPの3’伸長不能末端を、加ピロリン酸分解によって除去して、オリゴヌクレオチドPを非ブロッキング化し、ブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを産生する工程;および
[0065](c)標的核酸の存在を検出する工程、ここで標的核酸の配列は、オリゴヌクレオチドPの配列に実質的に相補的である。
[0066]第二の態様の方法は、検出工程の前に:(b1)核酸ポリメラーゼを用いて、ブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを伸長して、伸長されたオリゴヌクレオチドを産生する工程をさらに含むことも可能である。
[0067]1つの態様において、オリゴヌクレオチドPの非ブロッキング化を検出することによって、工程(c)の核酸の検出を行う。1つの側面において、オリゴヌクレオチドPの3’末端残基に含有される標識の欠失によって、非ブロッキング化を検出する。第二の側面において、伸長または連結が可能な3’末端残基上の3’OHの存在を検出することによって、非ブロッキング化を検出する。この側面において、ブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを伸長することによって、またはブロッキングされていないオリゴヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに連結することによって、検出する。第二の態様において、伸長されたオリゴヌクレオチドを検出することによって、工程(c)の核酸の検出を行う。1つの側面において、伸長されたオリゴヌクレオチド中の標識の存在によって、伸長されたオリゴヌクレオチドを検出する。標識は、伸長工程に用いるヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の一部である。第二の側面において、伸長されたオリゴヌクレオチドをゲル電気泳動によって検出する。第三の側面において、色素またはスペクトル物質の結合または取り込みによって、伸長されたオリゴヌクレオチドを検出する。
[0068]Pオリゴヌクレオチドは、増幅しようとする特異的配列各々の異なる鎖に「実質的に相補的」であるように選択する。したがって、Pオリゴヌクレオチド配列は、テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチドセグメントをPオリゴヌクレオチドの5’端に付着させ、残りのPオリゴヌクレオチド配列を鎖に相補的にすることも可能である。あるいは、Pオリゴヌクレオチド配列が、増幅しようとする鎖の配列にハイブリダイズし、そして他のPオリゴヌクレオチドの伸長産物を合成するためのテンプレートを形成するのに十分な相補性を有するならば、非相補的塩基またはより長い配列をPオリゴヌクレオチド内に散らばせることも可能である。オリゴヌクレオチドPに実質的に相補的である核酸配列を検出する能力は、高いウイルス負荷で見られるものなど、多数の突然変異の検出に特に有用であり、この場合、ウイルスの存在を検出することが重要であり、そして必ずしもウイルスの正確な核酸配列を得ることは必要でない。この方法はまた、完全に相補的な核酸を検出することも可能である。
[0069]本発明はまた、PAPの他の修飾も含む。
[0070]・活性化可能オリゴヌクレオチドPは、3’末端に加えて、他の位でも、ブロッキングされたヌクレオチドを含有可能である。
[0071]・内部をブロッキングするヌクレオチドの導入は、増幅およびPAP間にインターフェイスを生じ、これによってPAPがより高い忠実度で非指数関数的方式(例えば二次または幾何学的方式)で増幅することが可能になり、すなわちポリメラーゼが作るエラーが増殖不能になるであろう。
[0072]・活性化可能オリゴヌクレオチドPは、3’ブロッキングされたヌクレオチドとともに、伸長可能な修飾ヌクレオチドを含有することも可能である。したがって、5’末端から3’末端のどこででも、ブロッキングされたまたはブロッキングされていない修飾ヌクレオチドがあることも可能である。
[0073]・マッチしたプライマーよりもミスマッチしたプライマーを加ピロリン酸分解するポリメラーゼを用いて、稀な突然変異を検出することも可能であり、この場合、3’末端でミスマッチしたPが活性化され、そして伸長される。
[0074]・ミスマッチはPの活性化を阻害するため、稀な突然変異の検出は、オリゴヌクレオチドに沿って、どこにもミスマッチがないことに基づく。
[0075]・活性化は、3’エキソヌクレアーゼなどの別の機構によって起こることも可能である。3’エキソヌクレアーゼは、3’端にミスマッチがあるかどうかを弁別するため、マッチしたプライマーまたはミスマッチしたプライマーに特異性を有する可能性もある。3’エキソヌクレアーゼはどちらの方式でも使用可能である。該酵素がミスマッチを好む場合、上述のように使用可能であるが、一般的でない突然変異を検出する能力は、活性化に関するある程度の特異性に依存するだろうし、とはいえ、特異性は、部分的に、内部のミスマッチに由来する可能性もある。
[0076]・DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素によって伸長反応を実行可能であり、テンプレートはDNAまたはRNAであることも可能であり、そしてオリゴヌクレオチドPはDNA、RNA、またはDNA/RNAヘテロマーであることも可能である。
[0077]・異なるポリメラーゼによって加ピロリン酸分解および伸長を行うことも可能である。例えば、Pは、加ピロリン酸分解ポリメラーゼによって伸長不能であるが、別のポリメラーゼによって伸長可能である、末端直前(penultimate)が修飾されたオリゴヌクレオチドを含むことも可能である。1つの例は、3’ジデオキシであり、これはDNAポリメラーゼによって加ピロリン酸分解可能であるが、末端直前の位にリボヌクレオチドが存在すると、RNAポリメラーゼによる伸長を必要とするであろう。
[0078]・ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、テロメラーゼ、RNAHまたは制限酵素などの核酸代謝酵素によって活性化される不活性オリゴヌクレオチドとして、PAPを一般化することも可能である。
[0079]・メチラーゼは、ゲノムDNA中のメチル基の存在または非存在を検出するであろう。メチラーゼは、ポリメラーゼをテンプレートに押し戻す一部切除(truncating)増幅とカップリングさせることも可能である。
[0080]・3’端がジデオキシであり、そして末端直前のいくつかのヌクレオチドがリボであるPを、所望の特定の突然変異由来のタンパク質産物を差別的に作成するツールとして、または発現が特定の配列の存在に関連するタンパク質産物を作成するツールとして、使用可能である。3’端で突然変異に正確にマッチすれば、加ピロリン酸分解は、Pを活性化するであろう。次いで、活性化されたオリゴヌクレオチドが、RNAポリメラーゼによるRNA生成の基質となる。次いで、RNAをin vitroで翻訳して、タンパク質産物を産生することも可能である。
[0081]・PAP(PAP、Bi−PAP、マッチまたはミスマッチPAP、単一PAP、多重PAP等)を定量化に使用可能である。増幅産物の収量は、投入テンプレートの量と、定量的に関連する。関連は、比例的または別の形式である可能性もある。
[0082]・PAPでは、産物は、線形、指数関数的、または別の方式で集積可能である。
発明の詳細な説明
[0111]本明細書において、以下の用語を用いる。
[0112]加ピロリン酸分解:ピロホスフェート(PP)の存在下で、DNAポリメラーゼによって、ヌクレオチド鎖から3’ヌクレオチドを除去して、ヌクレオチド三リン酸を生成すること。これは重合反応の逆である。
[0113]PAP:加ピロリン酸分解活性化重合。PAPは、1つのPを用いることも可能であり、または少なくとも1つがPである2つの相対するオリゴヌクレオチドを用いることも可能である。
[0114]P:加ピロリン酸分解によって活性化可能な伸長不能3’末端(または端)を持つオリゴヌクレオチド。
[0115]PAP−A:稀な突然変異の検出に使用可能な、PAPに基づくアレル特異的増幅(図1)。
[0116]Bi−PAP−A:3’末端に少なくとも1ヌクレオチド重複を持つ、相対するPの対を用いて行う、すなわち双方向性のPAP−A(図2)。
[0117]PAP−R:既知の配列内の未知の突然変異の検出のための、PAPに基づく再配列決定(図3および4)。
[0118]LM−PAP:連結仲介PAP。LM−PAPの性質は、連結反応によるか、またはターミナルトランスフェラーゼを用いた伸長によるなどで、PAP前にテンプレートを合成することである。
[0119]LM−PCR:連結仲介PCR(図5)。
[0120]GまたはAアレル:本明細書において、モデル系として用いた、ドーパミンD受容体遺伝子の一般的な多型のアレル(本明細書において、GまたはAアレルとも称する)。
[0121]線形PAP:線形産物集積のための1つのPのみを用いるPAP。
[0122]指数関数的PAP:指数関数的産物集積のためであり、そして少なくとも1つがPである、2つの相対するオリゴヌクレオチドを用いたPAP。
[0123]ノイズ比(%):マッチ産物に対するミスマッチ産物の相対収量。PAPの特異的シグナルは、10%未満のノイズ比と定義される。
[0124]PASA:特異的アレルのPCR増幅(アレル特異的PCRまたはARMSとしても知られる)。
[0125]再配列決定:未知の突然変異のスキャンおよび既知の配列内の正確な配列変化の決定。再配列決定は、新規(de novo)配列決定とは区別される。
[0126]突然変異負荷:組織内の体細胞突然変異の頻度およびパターン。
[0127]微小残存病変:例えばリンパ節および他の隣接組織における稀な残存癌細胞または寛解後の早期再発。
[0128]伸長不能3’末端(または端):伸長不能であるが、加ピロリン酸分解によって活性化可能である、オリゴヌクレオチドPの3’末端(または端)のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体。伸長不能3’末端(または端)の例には、限定されるわけではないが、2’3’−ジデオキシヌクレオチド、アシクロヌクレオチド、3’−デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)および2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)が含まれる。
[0129]単一PAP:1つの反応試験管中または固体支持体上の1つのPAP(PAP、Bi−PAP、マッチまたはミスマッチPAP等)。
[0130]多重PAP:1つの反応試験管中または固体支持体、例えばマイクロアレイ上の、1より多いPAP(PAP、Bi−PAP、マッチまたはミスマッチPAP等)。
[0131]マッチPAP:Pおよびテンプレート間にマッチを有するPAP。
[0132]ミスマッチPAP:Pおよびテンプレート間にミスマッチを有するPAP。
[0133]入れ子(nested)PAP:テンプレート核酸上で、1つの対が第二の対の内部に位置する、2以上の対のPを用いるPAP。
[0134]ホットスタートPAP:変性温度に近づくまで、本質的な反応構成要素が引き留められている(withheld)PAP(Charoら、1992;Kelloggら、1994;Mullis、1991;D’Aquilaら、1991)。本質的な反応構成要素は、例えば中和抗体をポリメラーゼに結合させるか、ワックス中で、ポリマーまたはMgClのような構成要素を隔離するか、ポリメラーゼを化学的に修飾して高温でインキュベーションされるまで活性化を妨げるか、あるいはワックスによって構成要素を分離することによって、引き留め可能である。
[0135]一部切除増幅:非指数関数的方式、例えば二次または幾何学的方式で、2つのキメラオリゴヌクレオチドに渡って増幅し、そして元来のテンプレートから3周期以下の複製である、一部切除末端産物を生じる増幅法(Liuら、2002)。
[0136]反応性3’OH:は、核酸ポリメラーゼによって伸長されるかまたはオリゴヌクレオチドに連結されることが可能な3’OHである。
[0137]核酸増幅に必須のDNAポリメラーゼは、以下の反応のいくつかまたはすべてを触媒する:i)デオキシヌクレオチド三リン酸またはその類似体の重合;ii)ピロホスフェート(PP)の存在下での二重鎖DNAの加ピロリン酸分解、[dNMP]+x[PPi]...[dNMP]n−x+x[dNTP];iii)3’−5’エキソヌクレアーゼ活性(PPiを必要としない)、およびiv)5’−3’エキソヌクレアーゼ活性(DuetcherおよびKornberg、1969;KornbergおよびBaker、1992)。TaqおよびTfl DNAポリメラーゼに関しては、重合活性および5’−3’エキソヌクレアーゼ活性が報告されている(Chienら、1976;Kaledinら、1981;Longleyら、1990)。T7 SequenaseTMおよびThermoSequenaseTM DNAポリメラーゼに関しては、加ピロリン酸分解は、サンガー配列決定反応において、特定のジデオキシヌクレオチド末端セグメントの分解を導く可能性もある(TaborおよびRichardson、1990;Vander Hornら、1997)。
[0138]PPは、通常の生理学的条件下で、ピロホスファターゼによって分解されるため、加ピロリン酸分解は、一般的に、非常に重要でない。しかし、PPがin vitroで高濃度に存在する場合、加ピロリン酸分解は重要である可能性もある。3’末端ジデオキシヌクレオチドを持つオリゴヌクレオチドでは、加ピロリン酸分解のみが可能である。ジデオキシヌクレオチドがひとたび除去されたら、活性化されたオリゴヌクレオチドを、重合によって伸長することが可能である。
[0139]加ピロリン酸分解活性化重合(PAP)は、核酸から多様な情報を取り出す新規アプローチを提供する。PAPの非常に優れた特異性は、2つの反応を連続してカップリングすることによる。PAPは、3’末端ブロッキングされたオリゴヌクレオチド(P)の加ピロリン酸分解による活性化、その後、活性化されたオリゴヌクレオチドのDNA重合による伸長を伴う。操作上、PAPは、直接伸長可能な通常のオリゴヌクレオチドの代わりに、活性化可能オリゴヌクレオチド(P)の使用を伴う。Pの例には、不活性ジデオキシ末端オリゴヌクレオチドP、またはアシクロヌクレオチドなどの、3’ヒドロキシル基を欠く不活性化学的修飾ヌクレオチド、または伸長不能ヌクレオチド末端オリゴヌクレオチドPを有するものが含まれる。糖の環が欠けているアシクロヌクレオチド(アシクロNTP)は、DNA配列決定中、鎖ターミネーターとして作用することが知られる(Sangerら、1977;Trainor、1996;GardnerおよびJack、2002)。Pの活性化は、オリゴヌクレオチド全長に渡って、ミスマッチによって阻害される。5’末端から2ヌクレオチドのミスマッチであっても、PAP増幅を阻害する。
[0140]加ピロリン酸分解によるPの活性化は、Pの全長に渡って、非常な特異性を提供する。増進した特異性を用いて、稀な既知の突然変異を検出し、再配列決定によって未知の突然変異を解明し、新規配列決定によって未知の配列を決定し、遺伝子発現レベルを測定し、2つの配列を比較し、そしてクロマチン構造のin vivo解析の特異性を増加させることも可能である。マイクロアレイに基づくプログラム可能光化学オリゴヌクレオチド合成およびPAPは、相乗的な技術である。したがって、マイクロアレイに基づく迅速な再配列決定、新規配列決定、遺伝子発現プロファイリングおよびSNP検出のため、増進した特異性を使用することが可能である。
[0141]in vitroでの酵素的核酸増幅のいくつかの方法が開発されてきており、そしてこうした方法を適応させて、既知の配列変異体を検出することも可能である。これらには、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saikiら、1985;Saikiら、1988)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Landegren、1998;Barany、1991)および回転周期増幅(rolling circle amplification)(RCA)(Banerら、1998;Lizardiら、1998)が含まれる。本明細書において、我々は、加ピロリン酸分解活性化重合(PAP)を記載し、このアプローチは、PCRアレル特異的増幅の特異性を劇的に増進する潜在能力を有する(Sommerら、1989)。PAPは、多くの点で、PCRを用いた修正と異なる:i)Pオリゴヌクレオチドは3’末端でブロッキングされており、そして加ピロリン酸分解によって活性化されなければならず、ii)加ピロリン酸分解および重合は、各増幅に関して、連続してカップリングされており、iii)線形増幅では1つのPを、または指数関数的増幅では2つのオリゴヌクレオチドを用いて、PAPを行うことも可能であり、iv)増幅にはPPが必要であり、v)有意な非特異的増幅は、ミスマッチ加ピロリン酸分解および誤った取り込みのエラーを連続してカップリングすることを必要とするであろう。
[0142]PASAに比較したPAPの特異性増進は、加ピロリン酸分解および重合を連続してカップリングすることによって、提供される。有意な非特異的増幅は、DNAポリメラーゼによるミスマッチ加ピロリン酸分解および誤った取り込みを必要とする、非常に稀な事象である。例えば、本明細書に記載するように、DNAポリメラーゼを利用して、Dドーパミン受容体遺伝子のヌクレオチド229のGアレルを検出した。3’末端にddA、ddT、ddGまたはddCいずれかを持つPを合成した。3’末端ジデオキシヌクレオチドは、重合による直接伸長を阻害するが、PがGアレルの相補鎖に特異的にハイブリダイズした際、ピロホスフェート(PP)の存在下で、加ピロリン酸分解によって除去可能である。活性化されたオリゴヌクレオチドを、5’−3’方向で、重合によって伸長することが可能である。
[0143]加ピロリン酸分解後の重合を用いて、PASAの特異性を増加させることも可能であるという証拠が存在する。PAPを用いた有意な非特異的増幅は、2種類のエラー、すなわちミスマッチ加ピロリン酸分解および誤った取り込みの連続したカップリングを必要とする(図1)。ミスマッチ加ピロリン酸分解の率は、正しい3’デオキシヌクレオチドに比較した3’ミスマッチデオキシヌクレオチドの相対除去率として表される。ミスマッチ加ピロリン酸分解の率は、T7 DNAポリメラーゼでは10−5未満である(KornbergおよびBaker、1992;Wongら、1991)。重合によって置換突然変異を生成する、誤った取り込みの率を、正しいdNMPに対する誤ったdNMPの取り込み率として表すと、T7 DNAポリメラーゼでは10−5、そして大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼIでは10−4と報告された(KornbergおよびBaker、1992;Wongら、1991;Bebenekら、1990)。Taq DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ欠損突然変異体および大腸菌DNAポリメラーゼIで、同様の結果が報告された(KornbergおよびBaker、1992;Wongら、1991;Bebenekら、1990;EckertおよびKunkel、1990)。
[0144]PAPは、核酸テンプレート鎖上で所望の核酸鎖を合成する方法である。PAPでは、加ピロリン酸分解活性化可能オリゴヌクレオチド(P)を用いて、核酸増幅に関して、加ピロリン酸分解および重合を連続してカップリングする。Pは、Nヌクレオチドまたはその類似体で構成されるオリゴヌクレオチドであり、そして3’末端に3’,5’ジデオキシヌクレオチドなどの伸長不能ヌクレオチドまたはその類似体を有する。テンプレート鎖上に実質的にハイブリダイズした際、Pは、DNAポリメラーゼによって、3’末端ヌクレオチドまたはその類似体から直接は伸長不能であり、加ピロリン酸分解によって、Pの3’末端ヌクレオチドまたはその類似体を除去して、そして次いで、活性化されたオリゴヌクレオチド(<N)をテンプレート上で伸長することが可能である。
[0145]該方法は、連続して行われる以下の工程を含んでなる。
[0146]テンプレート鎖に、実質的に相補的な活性化可能オリゴヌクレオチドPをアニーリングさせる工程。この活性化可能オリゴヌクレオチドPは、3’末端に、伸長不能ヌクレオチドまたはその類似体を有する。
[0147](b)ピロホスフェート、および加ピロリン酸分解活性を有する酵素を用いて、アニーリングした活性化可能オリゴヌクレオチドPを加ピロリン酸分解する工程。これは、3’末端伸長不能ヌクレオチドまたはその類似体の除去によってオリゴヌクレオチドPを活性化する。
[0148](c)ヌクレオシド三リン酸またはその類似体および核酸ポリメラーゼの存在下で、テンプレート鎖上、活性化されたオリゴヌクレオチドPを伸長することによって重合させ、所望の核酸鎖を合成する工程。
[0149]PAP法を適用して、以下のさらなる工程によって所望の核酸鎖を増幅することも可能である。
[0150](d)テンプレート鎖から工程(C)の所望の核酸鎖を分離する工程、および
[0151](e)所望の核酸鎖の所望の増幅レベルが達成されるまで、工程(A)〜(D)を反復する工程。
[0152]上記のPAP法をアレル特異的増幅に適用可能である。活性化可能オリゴヌクレオチドPは、テンプレート鎖に相補的でない1以上のヌクレオチドを有する。Pの非相補的ヌクレオチド(単数または複数)が、Pの3’末端に位置することも可能である。上記工程(A)、(B)または(C)は実質的には起こりえない。その結果、所望の核酸鎖は、実質的に少なくしか合成されない。
[0153]上記PAP法を1つの活性化可能オリゴヌクレオチドPのみを用いても適用可能である。(e)工程(a)〜(d)を反復して、所望の核酸鎖の所望の増幅レベルを線形に達成しうる。アニーリング領域外の標的とされる核酸領域は、異なるサイズまたは異なる配列背景のものであることも可能であり、したがって合成される核酸鎖は、異なるサイズまたは異なる配列背景のものである。
[0154]上記PAP法は、少なくとも1つが活性化可能オリゴヌクレオチドPである2つの相対するオリゴヌクレオチドを用いても適用可能である。活性化可能オリゴヌクレオチドPおよび第二のオリゴヌクレオチドは、核酸領域の増幅のため、標的とされる。工程(a)〜(c)は、活性化可能オリゴヌクレオチドPに起こる。第二のオリゴヌクレオチドは、もう一方のテンプレート鎖に実質的に相補的である。第二のオリゴヌクレオチドが別の活性化可能オリゴヌクレオチドPである場合、工程(a)〜(c)が起こる。第二のオリゴヌクレオチドが普通の伸長可能オリゴヌクレオチドである場合、工程(a)および(c)が起こる:(修正a)テンプレート鎖にアニーリングさせる工程、次いで(修正c)ヌクレオシド三リン酸またはその類似体および核酸ポリメラーゼの存在下で、テンプレート鎖上、オリゴヌクレオチドを伸長することによって重合させ、所望の核酸鎖を合成する工程。(e)所望の核酸鎖の所望の増幅レベルが、例えば指数関数的に、達成されうるまで、工程(a)〜(d)、または工程(a)、(c)および(d)を反復する工程。2つの相対するオリゴヌクレオチドの2つのアニーリング領域間にある標的とされる核酸領域は、異なるサイズまたは異なる配列背景のものであることも可能であり、したがって合成される核酸鎖は、異なるサイズまたは異なる配列背景のものである。
[0155]LM−PAPは、切断、プライマー伸長、リンカー連結、およびPAPを伴い、染色体のメチル化状態などのin vivoクロマチン構造の解析に適用可能である。
[0156]LM−PAPは工程(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)によって、工程(i)、(ii)、(iii)および(vi)によって、工程(ii)、(iii)、(iv)および(v)によって、または工程(ii)、(iii)および(vi)によって、実行可能であり、工程は以下のとおりである。
[0157]切断が化学的、酵素的、または天然に生じて、核酸鎖を「破壊」する。核酸は、通常、in vivoで産生された損傷またはニックを有することも可能なゲノムDNAである。
[0158](ii)プライマーP1は遺伝子特異的であり、そしてその伸長には:1)テンプレート鎖に実質的に相補的なプライマーをアニーリングさせ;2)ヌクレオシド三リン酸またはその類似体および核酸ポリメラーゼの存在下、テンプレート鎖上でプライマーを伸長し、この伸長がテンプレート鎖上の切断部位で「脱線する」ことが含まれる。工程1)および2)を反復することも可能である。
[0159]プライマー伸長の代わりにP伸長を行うことも可能である(1つのみの活性化可能オリゴヌクレオチドPを用いた上記PAP)。
[0160](iii)リンカー連結工程には、合成された核酸鎖の3’末端へのリンカーの連結が含まれる。テンプレート非依存性重合であり、そして合成された核酸鎖の3’末端に余分な核酸配列が付加されるターミナルトランスフェラーゼ伸長を、リンカー連結工程の代わりに行うことも可能である。
[0161](iv)第二の遺伝子特異的プライマー(P2)を、リンカーに特異的な、またはターミナルトランスフェラーゼによって付加された配列に特異的なプライマーとともに用いて、PCRを行う。
[0162](v)第三の遺伝子特異的P(P3)を用いて、PCRが生成した断片を検出する。1つの活性化可能オリゴヌクレオチドPのみを用いて、PAP法を適用する。活性化されたオリゴヌクレオチドPの伸長は、工程(iv)で生成したテンプレート鎖の端で「脱線する(run off)」。PAP法をアレル特異的方式で適用することも可能である。活性化可能オリゴヌクレオチドPは、テンプレート鎖に相補的でない1以上のヌクレオチドを含有することも可能である。Pの非相補的ヌクレオチド(単数または複数)が、Pの3’末端に位置することも可能である。
[0163](vi)工程(iv)および(v)の代わりに、少なくとも1つが活性化可能オリゴヌクレオチドPである2つの相対するオリゴヌクレオチドを用いたPAP法も適用可能である。活性化可能オリゴヌクレオチドP(P3)は遺伝子特異的である。第二のオリゴヌクレオチドは、リンカーに特異的であるか、またはターミナルトランスフェラーゼによって付加された配列に特異的である。第二のオリゴヌクレオチドは、別の活性化可能オリゴヌクレオチドPであることも、または普通のプライマーであることも可能である。アレル特異的方式でPAP法を適用することも可能である。活性化可能オリゴヌクレオチドP(P3)は、テンプレート鎖に相補的でない、1以上のヌクレオチドを含有することも可能である。Pの非相補的ヌクレオチド(単数または複数)は、P(P3)の3’末端に位置することも可能である。
[0164]図1は、アレル特異的PAP(PAP−A)による、稀な突然変異の検出を示す。PAP−Aは、3’ジデオキシ末端(P)を持つアレル特異的オリゴヌクレオチドが、加ピロリン酸分解および重合の連続したカップリングを可能にするため、非常に高い特異性で稀なアレルを検出可能である。例えば、アレル特異的オリゴヌクレオチドが、稀な「T」アレルにマッチする3’ジデオキシ末端(P)を有する場合、ジデオキシヌクレオチドの加ピロリン酸分解的除去によって活性化が起こり、そして続いて重合が起こる(状況A)。加ピロリン酸分解による活性化は、野生型「C」アレルとのように、3’末端でミスマッチがある場合、通常、起こらない(状況B)。稀に、加ピロリン酸分解は、ミスマッチ部位で起こる(概算頻度10−5)が、活性化されたオリゴヌクレオチドが伸長されて、野生型配列が生じる(状況C)。ミスマッチ加ピロリン酸分解が起こり、テンプレートDNA中、Cに相対してAを挿入するポリメラーゼエラーが起こる場合、効率的な増幅を支持する産物が生成される(状況D)。ポリメラーゼ突然変異とカップリングしたミスマッチ加ピロリン酸分解の頻度は、10−5x3x10−6=3x10−11と概算される。
[0165]PAPは、3x10−11の特異性を有しうる。この潜在能力に近づくには、混乱させるエラー原因を排除する設計が必要である。例えば、ブロッキングされていない上流オリゴヌクレオチドからの伸長エラーは、目的の突然変異を持つ産物を生成しうる。TaqFSの誤った取り込みの率がヌクレオチドあたり約10−5であり、そして3つの誤った取り込みのうち1つのみが目的の突然変異を生じる場合、エラー率は約3.3x10−6である。校正機能を含有するポリメラーゼは、特定の突然変異あたり3x10−7のエラー率を有する可能性がある。エラー率がより低いポリメラーゼまたはポリメラーゼ複合体は特異性をさらに改善するであろう。
[0166]1つのアプローチは線形PAPを利用する。線形PAP−Aは、蛍光または放射標識ddNTPの存在下で、Pのみを用いて、40周期行うことも可能である。Pが活性化されると、定義されたサイズの標識末端産物が生成されるであろう。線形PAP−Aは、元来のゲノムDNAのみを利用し、そしてブロッキングされていない上流プライマーの伸長からの誤った取り込みによるエラーを排除する利点を有する。しかし、増幅レベルが周期数より大きくないため、検出の感度は限定される。ラムダファージなどの単純なゲノムでは、10−6の検出特異性が可能である。線形PAP−Aの特異性は、ブロッキングされていない伸長可能オリゴヌクレオチドが存在しないことに、決定的に依存する。10−6の堅固な特異性を達成するためには、ブロッキングされていない伸長可能オリゴヌクレオチドは、10−7で存在しなければならない。これは、ゲル精製したP(我々の現在のプロトコルでは、約99.99%純粋)を3’−5’エキソヌクレアーゼで処理して、ブロッキングされていない分子を分解して、その後、ゲル電気泳動によって再精製することによって、達成可能である。
[0167]第二のアプローチは、双方向性PAP−A(Bi−PAP−A;図2)である。Bi−PAP−Aでは、下流および上流両方のオリゴヌクレオチドが、目的のヌクレオチドに特異的なPである。Pは、3’末端で1ヌクレオチド重複する。この設計は、ブロッキングされていない上流オリゴヌクレオチドからの伸長エラーを排除する。この設計は、ジデオキシ末端が付加されていない少量の活性混入オリゴヌクレオチド(我々の現在のプロトコルでは、約0.01%)によって、限定されないはずであり、これは、生成される産物が対照のものであり、そして続く周期で効率的な増幅の基質でないためである。
[0168]Bi−PAP−Aは、プライマー二量体のサイズの産物を生成する。しかし、これは、続く周期において、目的の突然変異を持つテンプレートDNAが、増幅の効率的な基質となる産物を生成するのに必要な中間体である点で、慣用的な意味でのプライマー二量体ではない。双方向性PAP−Aは、特異性の重要な障壁を排除し、そして10−9の特異性に達する潜在能力を有する。
[0169]図2に示すように、下流および上流両方のPは、3’末端で目的のヌクレオチドに特異的である(この例ではA:T塩基対)。ゲノムDNAからの増幅の最初の周期において、定義されないサイズのセグメントが生成されるであろう。続く周期において、オリゴヌクレオチドを合わせた長さから1引いた長さに等しいセグメントが指数関数的に増幅されるであろう。この設計によって、3x10−6のエラー率で、G:C野生型テンプレートからA:Tテンプレートを生成可能な、ブロッキングされていない上流オリゴヌクレオチドからの誤った取り込みのエラーが排除されるため、非特異的増幅は、より低い頻度で起きる。Pは、最も効率的な増幅のため、30〜60ヌクレオチドであることも可能である。状況Aは、稀なA:Tアレルを持つテンプレートが効率的に増幅されるであろうことを示す。上流および下流両方のPは効率的に増幅される。状況Bは、DNAテンプレートが野生型G:C配列を含有する場合、下流または上流いずれのPも実質的に活性化されないであろうことを示す。
[0170]迅速再配列決定は、癌および他の複雑な疾患に罹りやすくする遺伝子の解明を促進するであろう。PAPの特異性は、再配列決定に役立つ。Pは、柔軟なデジタルマイクロミラーアレイを用いて、マイクロアレイ上で光化学合成されることも可能である。
[0171]固定DNAまたはオリゴヌクレオチドのマイクロアレイは、in situ光駆動(light−directed)コンビナトリアル合成または慣用的合成いずれで製造することも可能である(Ramsay、1998;MarshallおよびHodgson、1998に概説)。大規模な平行解析を行うことも可能である。オリゴヌクレオチドの光化学合成は、アドレス可能オリゴヌクレオチドマイクロアレイのコンビナトリアル平行合成のための強力な手段である(Singh−Gassonら、1999;LeProustら、2000)。各チップに対する多数のフォトリソグラフマスクに対する、この柔軟な代替法は、マスクがないアレイの合成装置を利用し、コンピュータ上でバーチャルマスクが生成される。これらのバーチャルマスクはデジタルマイクロミラーアレイにリレーされる。1:1反射画像系によって、バーチャルマスクの紫外画像がガラス支持体の活性表面上に産生される。このガラス支持体を、DNA合成装置に連結されたフローセル反応チャンバーにマウントする。光曝露後、プログラムされた化学カップリング周期が起こる。さらなるバーチャルマスクを用いて該方法を反復することによって、所望の配列を持つオリゴヌクレオチドマイクロアレイを合成することが可能である。Singh−Gassonらに開発された原型は、16平方ミクロンに76,000を越えるフィーチャーを含有するオリゴヌクレオチドマイクロアレイを合成した。
[0172]プログラム可能光化学オリゴヌクレオチド合成とデジタルミラーおよびPのオリゴヌクレオチド伸長を組み合わせることによって、高スループットで、そして自動化された再配列決定法が可能になる。PAP−Rは、冗長性(redundancy)が高いため、実質的に100%の一塩基置換および他の小さい配列変異体も検出可能である;いくつかの重複Pオリゴヌクレオチドに渡るミスマッチは、重複Pのクラスターの活性化を妨げるであろう。再配列決定のための1つの戦略を図3および4に示す。図3は、プログラム可能光化学オリゴヌクレオチドを用いて、マイクロアレイ上で行うPAP−Rの概略図を示す:PAPは、未知の突然変異を検出する再配列決定に使用可能である。このマイクロアレイ上で、野生型テンプレートを示す。野生型テンプレートにしたがってPを設計する。突然変異と重複するPは、ほとんどまたはまったくシグナルを生じず、「低」PAPシグナルと示した。
[0173]図4は、GからAへの突然変異を検出するための、固体支持体に基づく、例えばマイクロアレイに基づく再配列決定の例を示す。一塩基伸長の基質として、4種の異なる色素で標識したddNTPを用いて、線形PAPを行う。Pは、オリゴヌクレオチドの3’領域内の16ヌクレオチドの特異的領域を有する。例では、ホモ接合体またはヘミ接合体DNAテンプレートを利用する。野生型配列のセンス鎖上の各ヌクレオチド位で、3’末端の4種のddNMP以外は同一の配列を持つ、4つのPのセットを合成する。3’末端にddAを持つPは、G−A突然変異の部位でPAPシグナルを生成する。突然変異はまた、続く重複するPの15セットに対して、PAPシグナルを持たない15塩基「ギャップ」も生成する。ヘテロ接合体突然変異では、ddAおよびddGを持つPがPAPシグナルを提供する。ヘテロ接合体突然変異はまた、50%シグナル強度の15塩基「ギャップ」も生成する(これに100%強度のシグナルが隣接する)。ヘテロ接合体試料に冗長性を付加するには、アンチセンスPが利用可能である(未提示)。2セットのPを組み合わせることによって、未知の一塩基置換を決定することも可能である。小さい欠失および挿入を検出し、そして位置決定することも可能である。
[0174]マイクロアレイあたり100,000オリゴヌクレオチドを用いて、下流方向および上流方向から、約12kbを再配列決定可能である。実質的にすべての突然変異を検出するには、標準的なGeniom(登録商標)装置ソフトウェアを追加する必要がある。野生型配列では、シグナル強度は多様でありうる。特定のオリゴヌクレオチドは、二次構造および他の要因のため、より弱いシグナルを生じるであろう。野生型試料からのシグナルのパターンは、既定の配列変化によって生成されるパターンからは、確実に区別されるはずである。予備的データによって、ほぼすべてのミスマッチが活性化を劇的に阻害するであろうことが示唆される。一塩基ミスマッチが有意に少量であり、活性化が実質的に阻害されないとしても、冗長性のため、突然変異は野生型から確実に区別可能である。
[0175]in vivoクロマチン構造が哺乳動物遺伝子制御および発生に非常に重要であることがますます明らかになってきている。クロマチン構造の安定した変化は、しばしば、メチル化の変化および/またはヒストンアセチル化の変化を伴う。クロマチン構造における体細胞遺伝可能変化は、一般的にエピジェネティック変化と呼ばれ(RussoおよびRiggs、1996)、そしてエピジェネティック「ミス」またはエピミューテーションは、しばしば、癌の発生に寄与する重要な要因であることが現在明らかである(JonesおよびLaird、1999)。
[0176]in vivoクロマチン構造をアッセイするいくつかの方法の1つであり、そして単一ヌクレオチドレベルでの解像度を持つ唯一の方法は、連結仲介PCR(LM−PCR)(MuellerおよびWold、1989;Pfeiferら、1989)である。LM−PCRは、クロマチン構造、メチル化、およびDNA損傷を評価するのに用いられてきている。図5はLM−PCRの概略図を示し、ここで出発DNA中のDNA損傷を小さいひし形で示す。LM−PCRは、切断、プライマー伸長、リンカー連結およびPCR増幅を伴う。LM−PAPは、活性化可能オリゴヌクレオチドPを用いることを除いて、LM−PCRと同様である。
[0177]LM−PCRは、重要な技術であることが立証されており、現在までに100を越える公表された研究に用いられてきている(Pfeiferら、1999)。メチル化シトシン残基、結合している転写因子、または配置されているヌクレオソームの位置などの、クロマチン構造の多くの側面が、LM−PCRによって決定可能である。重要なことに、損なわれておらず、そして最小限しか撹乱されていない細胞において、構造が決定される。例えば、UV光−フットプリンティングは、ペトリ皿中で組織培養細胞をUV照射し、DNAを直ちに抽出し、そしてLM−PCRを行って、その形成が転写因子の結合に影響を受けるチミジン二量体の位置を決定することによって行われる。
[0178]アレル特異的LM−PAPを適用して、in vivoメチル化のレベルを定量的に決定することも可能である。現在、LM−PCRのバックグラウンドのため、メチル化レベルの確実な概算が限定されている。一般的に、0%、50%および100%のメチル化が決定可能であるとみなされるが、より細かい段階的変化の区別は信頼性がない。LM−PAPのバックグラウンドが顕著に減少すると、0%、20%、40%、60%、80%、および100%のメチル化標準を確実に区別することも可能になる。アレル特異的LM−PAPを利用して、インプリンティングされた領域のメチル化レベルを調べるか、または雌において、不活性X染色体遺伝子に対する活性X染色体遺伝子のメチル化レベルを調べることが特に興味深いだろう。LM−PAPが、クロマチン構造を調べるのに必要な技術および経験を減少させ、それによって、より多くの実験室で、クロマチン構造解析が容易になるであろうと予期される。
[0179]LM−PAPは多様な適用を有する。アレル特異的PAPを利用して、インプリンティングされた遺伝子の示差的メチル化およびクロマチン構造を調べるか、または雌において、不活性X染色体遺伝子に対する活性X染色体遺伝子の示差的メチル化およびクロマチン構造を調べることが特に興味深いだろう。さらに、突然変異誘発物質、DNA損傷、および突然変異誘発間の関係を調べることも可能である。
[0180]PAPにおいて、上述し、そして本明細書に例示するように、加ピロリン酸分解活性化可能オリゴヌクレオチドを用いることによって、DNAポリメラーゼによる加ピロリン酸分解および重合を連続してカップリングする。PAP配列決定において、原理は、PAPの特異性に、そして次に3’特異的下位配列の塩基対形成特異性に基づく。3’特異的下位配列のこの特性を適用して、未知の配列変異体をスキャンし、新規にDNA配列を決定し、2つのDNA配列を比較し、そして遺伝子発現プロファイリングを監視することも可能である。
[0181]PAPは、1つのPおよび1つの相対するブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを用いたPAPにおいて、Pに沿ったミスマッチに非常に感受性である。PAPの特異性はまた、Pの長さおよびミスマッチによっても影響を受ける。Pのアレル特異的ヌクレオチドが3’末端にある場合、特異的アレルのみが増幅され、そして特異性はPの長さには関連しない。アレル特異的ヌクレオチドがPの3’末端にない場合、特異性はPの長さに関連する。26量体のPは、3ヌクレオチドの3’特異的下位配列を有し、この領域内で、いかなるミスマッチも増幅を阻害する。18量体は、16ヌクレオチドの3’特異的下位配列を有する。
[0182]Bi−PAPは、PAPの1つの型である。2つの相対するPを持つBi−PAPにおいて、各Pは、それ自体の3’下位配列を有し、すなわちこの領域内で、いかなるミスマッチもBi−PAPの増幅を阻害する。例えば、P対のアレル特異的ヌクレオチドが3’末端にある場合、たとえPの長さが40、35または30ヌクレオチドであっても、特異的アレルのみが増幅された。対の特異的下位配列の長さは、P対を加算して1引いたものである。
[0183]対の特異的下位配列の長さは、各Pの配列背景およびサイズ、3’末端伸長不能ヌクレオチドの種類、テンプレート配列、DNAポリメラーゼ、イオンなどの他の構成要素、並びに周期条件によって影響を受ける可能性もある。テンプレートが反復配列を含有するか、または均一のポリマーがP対の長さより長く続く場合、Pは係留のための特異性を失う可能性もある。
[0184]再配列決定は、未知の突然変異を検出するための既知の領域の配列決定である。Bi−PAPの対の特異的下位配列の特性を適用して、未知の配列変異体をスキャンするか、または平行方式で、あらかじめ決定された配列を再配列決定することも可能である。
[0185]Bi−PAP再配列決定を、図22、23A、23B、24Aおよび23Bに示す。簡潔には、野生型配列を決定し、そして種類および位置を含めて、いかなる一塩基置換も決定することが可能である。未知の小さい欠失および挿入を検出し、そして位置決定することも可能である。特定の種類の欠失または挿入を同定するため、対応するBi−PAPを追加することが可能である。突然変異位置に関する情報を提供しうるフィンガープリンティングでは、より少ない数のBi−PAPを使用することも可能である。
[0186]Bi−PAP新規DNA配列決定の概念は、P対の完全なセットの対の特異的下位配列を使用して、新規配列における対の特異的下位配列の存在を同定する。
[0187]マイクロアレイ上のBi−PAP新規DNA配列決定を図25に示す。簡潔には、該方法はまず、P対を用いたBi−PAP増幅物をすべて収集し、そして次いで、対の特異的下位配列を順序付けることによって、この収集物から未知のDNA配列を再構築する。
[0188]2つのDNA配列が同一であるかまたは異なるかを知るために、これらを比較するため、P対の特異的下位配列の不完全なセットを用いることによって、P対の数を減少させる単純な方法がある。これらを特定の順序に配置することによって、染色体位置とともに配列を同定することが可能である。
[0189]遺伝子発現プロファイリングを監視するため、6x10〜10までの転写物が発現され、そして正確な配列の詳細が不要な場合、Bi−PAPを適用可能である。遺伝子中の特有のモチーフを特異的に増幅可能なP対のセットを、Bi−PAP用に設計可能である。
[0190]Bi−PAPの塩基対形成特異性のこの特性を適用して、未知の配列変異体をスキャンし、新規にDNA配列を決定し、2つのDNA配列を比較し、そして遺伝子発現プロファイリングを監視することも可能である。Bi−PAPアレイが可能である。2つの相対するPの各対を固体支持体、例えばマイクロアレイ上の個々の点に固定し、こうしてBi−PAP反応がすべて平行してプロセシングされることを可能にしてもよい。
[0191]PAPでは、活性化可能オリゴヌクレオチドは、加ピロリン酸分解によって活性化可能な伸長不能3’末端(以後、伸長不能3’末端と称する)を有する。テンプレート鎖とハイブリダイズ可能であり、3’末端ヌクレオチドが加ピロリン酸分解によって除去可能であり、そして活性化されたオリゴヌクレオチドが伸長可能であるならば、いかなる3’末端伸長不能オリゴヌクレオチドも使用可能である。伸長不能3’末端の例には、限定されるわけではないが、ジデオキシヌクレオチドなどの伸長不能3’デオキシヌクレオチド、またはアシクロヌクレオチドなどの、3’ヒドロキシル基を欠く化学的に修飾されたヌクレオチドが含まれる。アシクロヌクレオチドでは、通常dNMPに存在する2’−デオキシリボフラノシル糖が、2−ヒドロキシエトキシメチル基で置換されている。
[0192]別のブロッキング剤は、完全なマッチに対する加ピロリン酸分解の選択度を増加させ、それによって稀な突然変異を検出するPAPの選択度をさらに増進させることも可能である。最後に、別のブロッキング剤は、より安価であるかまたはより容易に自動化可能であり、それによってPAPの費用効率を改善し、そしてPAPマイクロアレイに基づく再配列決定を促進することも可能である。
[0193]さらに、ジデオキシヌクレオチドでブロッキングされていないPは、PAPに使用可能なDNAポリメラーゼの選択を拡張する。本明細書に立証するように、3’末端伸長不能オリゴヌクレオチドがジデオキシヌクレオチドまたはアシクロヌクレオチドを含有する場合、ファミリーIのポリメラーゼをPAPに使用することも可能である。3’末端伸長不能オリゴヌクレオチドがアシクロヌクレオチドを含有する場合、ファミリーIIのポリメラーゼをPAPに使用することも可能である。
実施例
[0194]本発明は、PAPを用いてヒトDドーパミン受容体遺伝子内の多型部位における既知の突然変異を同定可能であることを例示する、以下の実施例から理解されるであろう。ジデオキシオリゴヌクレオチド配列、アシクロヌクレオチド配列、DNAポリメラーゼ、PP濃度、アレル特異的テンプレート、pH、およびdNTP濃度の影響を調べた。原理を立証するため、実施例に報告する実験を行った。以下の実施例は、例示のため提供され、そしていかなる方式でも本発明を限定することを意図しない。当該技術分野に周知の標準技術またはそれらの文書に具体的に記載される技術を利用した。
(実施例1)
PCRによるテンプレートの調製
[0195]2つのプライマー(T=5’GAC CTG CAG CAA GGG AGT CAG AAG3’(配列番号1)およびU=5’TCA TAC CGG AAA GGG CTG GAG ATA3’(配列番号2))を用いたPCRによって、ヒトDドーパミン受容体遺伝子の640bp領域を増幅した(図6A)。TU:UT二重鎖産物はGenBank X55760のヌクレオチド33〜672に渡り、そしてG+C含量は55.3%である。よく生じるAからGへの多型は、ヌクレオチド229に位置し、G/G、A/AおよびG/Aの3つの遺伝子型を生じる(Liuら、1995)。PCR混合物は、50μlの体積を含有する:50mM KCl、10mM Tris/HCl、pH8.3、1.5mM MgCl、各200μMの4種のdNTP(Boehringer Mannheim)、各0.1μMのプライマー、2%DMSO、1UのTaq DNAポリメラーゼ(Boehringer Mannheim)およびG/Gホモ接合体、A/Aホモ接合体またはG/Aヘテロ接合体由来の250ngのゲノムDNA。周期条件には:95℃15秒間の変性、55℃30秒間のアニーリング、および72℃1分間の伸長で、全部で35周期が含まれた(Perkin−Elmer GeneAmp PCR系9600)。Centricon(登録商標)100微量濃縮装置(Amicon)上で3回保持することによって、プライマーおよび他の小分子から、PCR産物をおよそ10,000倍精製した。260nmのUV吸光度によって、回収されたPCR産物の量を測定した。
3’−ジデオキシヌクレオチドを付加することによるP の合成
[0196]ホープ市DNA/RNA化学研究室において、Perseptive Biosystems 8909合成装置(Framinsham)によってデオキシヌクレオチドオリゴヌクレオチドを合成し、そしてoligopureカートリッジ(Hamilton)によって精製した。ターミナルトランスフェラーゼによって3’末端ジデオキシヌクレオチドを付加した。混合物は、40μlの総体積を含有した:200mMカコジル酸カリウム、25mM Tris/HCl(25℃でpH6.6)、2.5mM CoCl、0.25mg/mlのBSA、4000pMのオリゴヌクレオチド、2.5mM 2’3’−ddNTP(ddNTPに対する3’−OH末端のモル比は1:25であった)(Boehringer Mannheim)、125Uのターミナルトランスフェラーゼ(Boehringer Mannheim)。反応を37℃で1時間インキュベーションし、そして次いで、最終濃度5mMでEDTAを添加することによって停止した。ブタノールを用いることによって脱塩した後、TBE緩衝液(90mM Tris/ホウ酸、1mM EDTA、pH8.3)中の分離用7M尿素/20%ポリアクリルアミドゲル電気泳動によってジデオキシオリゴヌクレオチドを精製した(Maniatisら、1982)。260nmのUV吸光度によって、回収されたPの量を測定した。
[0197]少量の末端処理されていないオリゴヌクレオチドが、加ピロリン酸分解の非特異性を生じるであろうため、T4ポリヌクレオチドキナーゼによって、5’末端で各ジデオキシオリゴヌクレオチドを32P標識し、そして次いで、7M尿素/20%ポリアクリルアミドゲルを通じて電気泳動した。ゲルを過剰曝露しても、P産物のみが可視であった(データ未提示)。99.99%より多いPが3’末端にジデオキシヌクレオチドを含有したと概算される。
加ピロリン酸分解活性化重合
[0198]オリゴヌクレオチドPおよびUを用いるPAP、または1つのPのみを用いるPAPによって、TU:UT二重鎖テンプレート内の469bp領域を増幅した(表1および図6A)。PU:UP二重鎖産物は、GenBank X55760のヌクレオチド204〜672に対応し、そしてG+C含量は55.6%である。言及しない限り、PAP反応混合物は、Tfl DNAポリメラーゼでは、25μlの総体積を含有した:75mM KCl、20mM Tris/HCl(pH7.4)、1.5mM MgCl、各40μMの4種のdNTP(dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP)、0.2μM P、0.05μM Uオリゴヌクレオチド、300μM NaPP(20MMストック溶液をHClでpH8.0に調整した)、1μCiの[α−32P]−dCTP(3000Ci/nmol、Amersham)、1UのTfl DNAポリメラーゼ(Promega)および2ngのTU:UT。Taq DNAポリメラーゼでは、50mM KCl、10mM Tris/HCl(pH7.4)、2.0mM MgClおよび1UのTaq DNAポリメラーゼ(Boehringer Mannheim)を除いて、反応混合物は同じであった。PCRおよび他の対照の混合物は、添加するプライマーを除いて、同じであった。周期条件には:94℃15秒間、55℃1分間、および1分間で傾斜をつけて72℃に上昇させ、そして72℃2分間、全部で15周期が含まれた。
表1
PAPに用いたオリゴヌクレオチド
Figure 0004500673
の3’末端にGジデオキシヌクレオチドを付加することによって、Dを産生した。=3’末端のジデオキシヌクレオチド。
Tは3’末端がTデオキシヌクレオチドであることを意味し、そしてGは3’末端がGジデオキシヌクレオチドであることを意味する。太い大文字GおよびAは、それぞれ、GアレルおよびAアレルに対応するG塩基およびA塩基である。5’末端の第一の塩基は、GenBank X55760のヌクレオチド208に対応する。
3’末端塩基はデオキシヌクレオチドまたはジデオキシヌクレオチドであり、そしてテンプレートの相補鎖上の対応する塩基と、マッチ(する)またはミスマッチ(しない)を生成する。
アレル特異的ヌクレオチドはGまたはAであり、そして3’末端までの距離を:0=3’末端、+1=3’末端から1塩基下流、−1=3’末端から1塩基上流、−2=3’末端から2塩基上流、および−3=3’末端から3塩基上流と指定する。
オリゴヌクレオチドのTは、1M NaClで、4℃x(G+C)+2℃x(T+A)と概算された(MiyadaおよびWallace、1987)。
Uおよび1つのPを用いた増幅または1つのPのみを用いた増幅。
[0199]標準的な2%アガロースゲルを通じて反応を電気泳動した。CCDカメラ(Bio−Rad Gel Doc 1000)によるUV写真のため、ゲルをエチジウムブロミドで染色し、乾燥させ、そしてオートラジオグラフィーのため、Kodak X−OMATTM ARフィルムに供した。
制限消化
[0200]3つの制限エンドヌクレアーゼ、AciI(5’C▼CGC3’/3’GGC▲G5’)、EaeI(5’Py▼GGCCPu3’/3’PuCCGG▲Py5’)およびEco0109I(5’PuG▼GNCCPy3’/3’PyCCNG▲GPu5’)は各々、PU:UP二重鎖内に制限部位を有する。DおよびUを用いたPAPによって、G/Gアレルを増幅し;DおよびUを用いたPCR増幅を対照として用いた。40μlのPAP反応および2μlのPCR反応をCentricon(登録商標)100微量濃縮装置で精製し、そして濃縮し、そして制限エンドヌクレアーゼ:1xNE緩衝液3中、2.5UのAciI;または1xNE緩衝液1中、3UのEaeI;またはBSAを含むNE緩衝液4中の30UのEco0109I(上記の酵素および緩衝液はすべてNew England BioLabsからのもの)によって産物を消化した。10μlの反応物を、37℃で2時間インキュベーションした。消化反応物を、上述のように、標準的2%アガロースゲルを通じて電気泳動した。
PAPの原理
[0201]TflおよびTaq DNAポリメラーゼは、加ピロリン酸分解活性を含有することが示された。Tfl DNAポリメラーゼを利用して、Dドーパミン受容体遺伝子のヌクレオチド229でGアレルを検出した(Liuら、1995)(図6A)。ddGまたはddAいずれかを用いて、3’末端でPを合成した(表1を参照されたい)。3’末端ジデオキシヌクレオチドは、重合による直接伸長を阻害するが、PがGアレルの相補鎖と特異的にハイブリダイズする場合、ピロホスフェート(PP)の存在下で、加ピロリン酸分解によって除去可能である。分解されたオリゴヌクレオチドは、5’−3’方向の重合によって伸長可能である(図6Bおよび6C)。
[0202]PASAに比較したPAPの特異性増進は、加ピロリン酸分解および重合を連続してカップリングすることによって、提供される。有意な非特異的増幅は、DNAポリメラーゼによるミスマッチ加ピロリン酸分解および誤った取り込みを必要とし、非常に稀な事象である(図7)。
およびD を用いた特異的増幅
[0203]2つのオリゴヌクレオチド(PおよびU)、Tfl DNAポリメラーゼ、並びにG/GおよびA/AアレルのDNAテンプレートを用いてPAPを行った。多数のPを試験した(表1)。D(アレル特異的ヌクレオチドおよびジデオキシヌクレオチドが3’末端に同時局在する)およびD(アレル特異的ヌクレオチドは、3’末端から2塩基である)は、PPの存在下で、Gアレルを特異的に増幅した(図8A)。PPを添加しないと、Dで特異的な産物はまったく観察されず、添加したPPがPAPに必須の構成要素であることが示された(図8B、レーン6および15)。Dを用いるレーン4中、およびDを用いるレーン5中に、かすかな産物が観察された(図8B)(以下を参照されたい)。
pH、[PP ]および[dNTP]および酵素の影響
[0204]上記パラメータ各々を調べた。PAPは、7.4〜7.7の間のpH、200μM〜400μMの間の[PP]、および25μM〜50μMの間の[dNTP]で最も効率的であった(表2)。Taq DNAポリメラーゼをTflの代わりに用いることが可能であり、効率は同様であった(表2)。
表2
PAPに影響を及ぼすパラメータ
Figure 0004500673
示した因子を除いて、材料および方法に記載する条件下で、Tfl DNAポリメラーゼを用いて、G/Gアレルを増幅した。
PAP効率は:−、特異的産物(単数または複数)なし;±、非常に弱い特異的産物(単数または複数);+、弱い特異的産物(単数または複数);++、中程度の特異的産物(単数または複数);+++、強い特異的産物(単数または複数);++++、非常に強い特異的産物(単数または複数)と示される。
示した濃度を変化させたが、他のものは200μMで維持した。
特異的産物の同一性
[0205]特異的産物の同一性を確認するため、制限エンドヌクレアーゼ消化を行った(図9)。3つの制限エンドヌクレアーゼAciI、EaeIおよびEco0109は各々、PU:UP二重鎖に制限部位を有する。期待される制限断片が見出された。DおよびUを用いても、同様の結果が観察された。
[0206]DおよびUを用いたPAPの特異的産物は、アガロースゲル上に2つの特異的バンド、すなわちPU:UPおよびUPを明らかにし;これは、我々の増幅条件下では、UがDより効率的であるためであった。これを確認するため、先のように、DおよびUとともにTfl DNAポリメラーゼを用いたPAPによって、G/Gアレルを増幅した。産物を変性し、そして変性ポリアクリルアミドゲルを通じて電気泳動した。一本鎖型で1つの特異的バンドのみが観察され、特異的PAP産物が二重鎖および一本鎖セグメントを含有することが示される。DおよびUを用いても同じ結果が観察された。
線形PAP
[0207]PPの存在下、G/GおよびA/Aアレルから、1つのPのみを用いた線形増幅のため、PAPを行った。DおよびDで、PAPの特異的産物が得られたが、他のPでは得られなかった(図10、レーン4および6)。Pの効率は、オリゴヌクレオチドのサイズ、3’末端ジデオキシヌクレオチド、およびアレル特異的ヌクレオチドの位置によって影響を受けた。
[0208]図6A〜6CはPAPの概略図を示す。図6A。2つのオリゴヌクレオチドPおよびU、Tfl DNAポリメラーゼ、dNTP、ピロホスフェートおよび[α−32P]−dCTPを用いて、二重鎖DNAテンプレートTU:UTを増幅する。P=加ピロリン酸分解活性化可能オリゴヌクレオチド。この例では、PはDであり、そしてTU:UTはドーパミンD受容体遺伝子の640bpセグメントである。図6B。Dは、3’末端にGジデオキシヌクレオチドを有し、そして3’末端のGアレルの相補鎖に特異的であるが、Aアレルにはミスマッチする(表1)。加ピロリン酸分解によってジデオキシGを除去し、その後、各増幅のため重合する。図6C。G/G、A/AおよびG/A遺伝子型由来のPAPのオートラジオグラム。Gアレルが存在するとき、469塩基(二重鎖PU:UPおよび過剰なアンチセンス鎖UP)の放射標識特異的産物が産生され、これは、Tflポリメラーゼによる加ピロリン酸分解率が低いことによって、オリゴヌクレオチドUがオリゴヌクレオチドPよりはるかに効率が高いことが暗示されるためである。より長い期間電気泳動を行うと、UPからPU:UPが分離される。UTおよびUT:TUの他の産物を示す。TU:UTが、非放射標識TUの元来のテンプレートと放射標識された過剰なUTのアニーリングから得られることに注目されたい。DおよびUを用いた、G/G、A/AおよびG/A遺伝子型からのPAPもまた行って、そして同様の結果を得た。
[0209]図7A〜7Bは、Dを用いたPAPの特異性増進を示す。PAPが、GアレルおよびAアレルのテンプレートプールを指数関数的に増幅する特異性を、PASAのものに比較する。図7A。PASAの特異的増幅は、プライマーがGアレルにマッチする際、プライマー伸長の効率が高いことに由来する。非特異的増幅は、Aアレルからのミスマッチ伸長から生じる。これが起こると、さらなる増幅のために効率的な基質が生じる。矢印の太さおよび位置は、各周期での増幅効率を表す。図7B。GアレルからのPAPの特異的増幅が高い効率で起こる。2種類の非特異的増幅がAアレルから生じる:(i)続く増幅のための効率的なテンプレートではないA:Tホモ二重鎖PU:UP産物を生じるミスマッチ加ピロリン酸分解によって、低い効率で非特異的増幅が生じうる:(ii)G:Tヘテロ−二重鎖PU:UP産物を生じる、ミスマッチ加ピロリン酸分解および誤った取り込み両方によって、非常に低い効率で非特異的増幅が生じうるが、ひとたびこれが起こると、続く増幅のための効率的なテンプレートを提供する。Dのみを用いたPAPによる線形増幅に関して、非特異的増幅の同様の傾向が示唆される。Dのように、Pのアレル特異的ヌクレオチドが、3’末端近傍にあるが、3’末端になくてもよいことに注目すべきである。その場合、PAPの非特異的増幅は、ミスマッチ加ピロリン酸分解およびミスマッチ伸長両方を必要とする。PAPのどちらの変型もPASAより高い特異性を有するはずであるが、3’末端ジデオキシヌクレオチドがまた、アレル特異的ヌクレオチドでもある場合、最高の特異性が予測される。
[0210]図8A〜8Bは、DおよびDを用いた特異的増幅を示す。指数関数的増幅のため、2つのオリゴヌクレオチドとともに添加されたPPの存在下(図8A)または非存在下(図8B)で、PAPを行った。オリゴヌクレオチドを表1に列挙する。Uのみを用いた伸長対照は、TU:UTおよびUTの位置を同定する。Dを用いた伸長対照は、PUの位置を同定する。DおよびUのPCR対照は、PU:UPおよびPU:UTの位置を同定する。他のレーンに比較して、Dを用いた伸長反応およびPCR反応の場合、20%のみを装填する。
[0211]図9は、制限エンドヌクレアーゼ消化を示す。PAPの特異性を示すため、図8に示す実験由来の試料を、AciI、EaeIおよびEco0109I制限エンドヌクレアーゼで消化した。各酵素は、PU:UP内に制限部位を有する。DおよびUを用いたPAPはG/Gアレルを増幅し、そしてDおよびUを用いたPCR反応の5%を対照として使用した。AciIはPU:UPから236bpおよび233bp断片を生じ、そしてTU:UTから407bpおよび233bp断片を生じる。EaeIはPU:UPから289bpおよび180bp断片を生じ、そしてTU:UTから460bpおよび180bp断片を生じる。Eco0109IはPU:UPから348bpおよび121bp断片を生じ、そしてTU:UTから107bp、412bpおよび121bp断片を生じる。矢印は、PU:UPから期待される消化産物を示す。
[0212]図10は線形PAPを示す。添加されたPPの存在下で、1つのPのみを用いてPAPを行った。他のレーンに比較して、Dを用いた反応の場合、20%を装填した(レーン1および10)。なし=添加したオリゴヌクレオチドなし。
を用いたPAPの特異性増進
[0213]実施例1は、加ピロリン酸分解後の重合を用いて、PASAの特異性を増加させうる証拠を提供する。有意な非特異的増幅は、2種類のエラーの連続したカップリングを必要とする(図7)。3’末端でミスマッチデオキシヌクレオチドを除去する、ミスマッチ加ピロリン酸分解の率は、正しいdNMPに対する誤ったdNMPの除去率として表すと、T7 DNAポリメラーゼでは10−5未満であると報告された(KornbergおよびBaker、1992;Wongら、1991)。重合によって置換突然変異を生成する、誤った取り込みの率は、正しいdNMPに対する誤ったdNMPの取り込み率として表すと、T7 DNAポリメラーゼでは10−5、そして大腸菌DNAポリメラーゼIでは10−4であると報告された(KornbergおよびBaker、1992;Wongら、1991;Bebenekら、1990)。Taq DNAポリメラーゼ、およびT7 DNAポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ欠損突然変異体、および大腸菌DNAポリメラーゼIでも、同様の結果が報告された(KornbergおよびBaker、1992;Wongら、1991;EckertおよびKunkel、1990)。(i)Dを用いたPAPにおける非特異的増幅による特異性は、ddNMPのミスマッチ加ピロリン酸分解の率がdNMPと同じであるならば、周期あたり10−5と概算される。(ii)非特異的増幅による特異性は、ミスマッチ加ピロリン酸分解および誤った取り込みが連続してカップリングされている場合、3.3x10−11と概算される。
PAPの本質的な構成要素
[0214]TflまたはTaq DNAポリメラーゼを利用してG/GおよびA/Aアレルを増幅することによって、各Pを試験した。特異的増幅には、PPおよびアレル特異的テンプレートの存在が必要である。さらに、増幅効率は、オリゴヌクレオチドのサイズ、3’末端ジデオキシヌクレオチド、Pの3’末端に比較したアレル特異的ヌクレオチドの位置に影響を受ける。
[0215]DおよびDがなぜ特異的シグナルを生じないかは明らかでないが、これはPおよびテンプレート間の二重鎖の閾値安定性に関連する可能性がある。3’末端にAジデオキシヌクレオチドを含有するDは、特異的シグナルを生じず、これは重合によるddNTPの異なる取り込み効率と関連している可能性もある。大腸菌DNA ポリメラーゼIのクレノウ断片、Taq DNAポリメラーゼ、およびΔTaq DNAポリメラーゼは、他のddNTPよりもddGTPをより効率的に取り込む(Sangerら、1977;TaborおよびRichardson、1995;Vander Hornら、1997)。ddNTP取り込み率はまた、テンプレート配列に応じて多様でもあり、そしてある塩基では他のものに比較して10倍高い可能性もある(Sangerら、1977)。別の可能性は、Dが、より短いサイズであり、より低いTmを持つことである。
[0216]添加されるPPがないPAPにおいて、DおよびDを用いて、非常にかすかな偽シグナルが生成された(図8B)。1つの可能性は、オリゴヌクレオチド二量体が形成され、そして副重合(by−polymerization)によって「エンド−」PPが放出されてUTを生成した後の周期で、Pの非特異的加ピロリン酸分解を誘発しうることである。3’末端の分解されたDおよびDは、偽シグナルとしてハイブリダイズし、そして伸長することが可能である。DおよびDを用いると、オリゴヌクレオチド二量体が観察された。Dでの別の可能性は、「エンド−」PPが放出された後の周期で、特異的加ピロリン酸分解が生じうることである。第三の可能性は、3’末端にGジデオキシヌクレオチドが完全に付加されていない、最小のDおよびDが、DおよびDに混入したことである。
他の技術との比較
[0217]in vitroで酵素的に核酸を増幅するいくつかの方法が開発されてきており、そして既知の配列変異体を検出するのに適応させることも可能である。これらには、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saikiら、1985;Saikiら、1988)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Landegrenら、1988;Barany、1991)および回転周期増幅(RCA)(Lizardiら、1998;Banerら、1998)が含まれる。PAPは多くの点で異なる:i)各増幅で、加ピロリン酸分解および重合を連続してカップリングし、ii)PAPのためのジデオキシオリゴヌクレオチドが少なくとも1つある。アシクロヌクレオチドなど、3’末端で3’−ヒドロキシル基を欠く、他の化学的に修飾されたヌクレオチドが同じ機能を果たしうる(以下の実施例12を参照されたい)、iii)一方の形式は線形増幅用であり、そして他方は指数関数増幅用であり、iv)増幅にはPPが必要であり、v)有意な非特異的増幅は、ミスマッチ加ピロリン酸分解および誤った取り込み両方を必要とし、vi)PAPは既知の点突然変異を検出可能であり、そして野生型アレルから、非常に稀な突然変異アレルを検出する特異性を、非常に増加させることが可能である。
[0218]機構の基礎は、特異性が増加した増幅のため、2以上の反応を連続してカップリングすることである。PAPの重要な構成要素は、加ピロリン酸分解活性化可能オリゴヌクレオチドである。これらの実験において、ブロッキングされた3’末端はジデオキシヌクレオチドであるが、加ピロリン酸分解に感受性である、いかなる伸長不能ヌクレオチドでも、原理的には代用可能である。実際、ミスマッチより5’でオリゴヌクレオチドを切断する酵素はいずれも、加ピロリン酸分解活性化と同じ機能を果たしうる。例えば、メチル化認識配列を含むブロッキングされたオリゴヌクレオチド(GATCなど)を、非メチル化認識配列を持つ標的にアニーリングさせると、制限エンドヌクレアーゼ(DpnIなど)は、メチル化部位のみを切断可能であり、そしてしたがって伸長のため、オリゴヌクレオチドを活性化することが可能である。ミスマッチが切断部位より5’に位置する場合、有意な非特異的増幅は、ミスマッチ切断および誤った取り込みの連続したカップリングを必要とし、これは稀な事象である。活性化可能オリゴヌクレオチドはまた、「ミニ配列決定」プライマー伸長とも組み合わせ可能である。これは、一塩基変化の検出のためのより特異的なアッセイを提供する可能性があり、特異性が問題になりうるチップ技術に特に受け入れられる可能性がある(Syvanen、1999)。PAPが線形形式で起こりうることの立証(図10)は、このアプローチの実現可能性を支持する。
[0219]ヌクレオシド三リン酸および2’−デオキシヌクレオシド三リン酸またはその化学的修飾型を、PAPによる多数のヌクレオチドの伸長の基質として使用可能であり、すなわち1つのヌクレオチドが取り込まれるとき、伸長中の鎖をさらに伸長することが可能である。さらなる伸長のターミネーターである、2’,3’−ジデオキシヌクレオシド三リン酸またはその化学的修飾型は、一ヌクレオチド伸長に使用可能である。オリゴヌクレオチドPの3’末端ジデオキシヌクレオチドから区別するため、2’,3’−ジデオキシヌクレオシド三リン酸を放射能または蛍光色素で標識することも可能である。ヌクレオシド三リン酸または2’−デオキシヌクレオチド三リン酸および2’,3’−ジデオキシヌクレオシド三リン酸の混合物もまた、使用可能である。
[0220]PAPでは、特定の核酸配列を含有する核酸をテンプレートとして用いることによって、その核酸配列を産生する。核酸が2つの鎖を含有する場合、テンプレートとして用いる前に、別個の工程として、または同時に、核酸の鎖を分離することが必要である。鎖分離はまた、物理的、化学的または酵素的手段を含む他の適切な方法いずれかによっても達成可能である。
[0221]元来の核酸または核酸の混合物から、1つより多い特異的産物を産生することが望ましい場合、適切な数の異なるオリゴヌクレオチドを利用する。例えば、2つの異なる特異的産物を指数関数的に産生しようとする場合、4つのオリゴヌクレオチドを利用する。オリゴヌクレオチドのうち2つ(Pは1以上)は、特定の核酸配列の1つに特異的であり、そして他方の2つのオリゴヌクレオチド(Pは1以上)は、第二の特定の核酸配列に特異的である。この方式で、本方法によって、2つの異なる特異的配列各々を指数関数的に産生することも可能である。
[0222]DNAまたはRNAは、一本鎖または二本鎖であることも可能であり、比較的純粋な種であることも、または核酸混合物の構成要素であることも可能であり、そして直鎖または環状であることも可能である。単数または複数の核酸を、いかなる供給源から得ることも可能であり、例えばプラスミド、クローニングしたDNAまたはRNA、あるいは細菌、酵母、ウイルス、および植物または動物などのより高次の生物を含む、いかなる供給源由来の天然DNAまたはRNAから得ることも可能である。DNAまたはRNAは、Maniatisら(1982)に記載されるものなどの多様な技術によって、血液、絨毛膜絨毛または羊膜細胞などの組織材料から抽出可能である。
[0223]Pオリゴヌクレオチドは、増幅しようとする特定の配列各々の異なる鎖に「実質的に相補的」であるように選択される。したがって、Pオリゴヌクレオチド配列は、テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチドセグメントをPオリゴヌクレオチドの5’端に付着させ、残りのPオリゴヌクレオチド配列を鎖に相補的にすることも可能である。あるいは、Pオリゴヌクレオチド配列が、増幅しようとする鎖の配列にハイブリダイズし、そして他のPオリゴヌクレオチドの伸長産物を合成するためのテンプレートを形成するのに十分な相補性を有するならば、非相補的塩基またはより長い配列をPオリゴヌクレオチドに散らばせることも可能である。請求項において、本明細書に論じるように、用語「相補的」は「実質的に相補的」を意味すると理解すべきである。
[0224]本方法によって、いかなる特定の核酸配列も産生可能である。2つのオリゴヌクレオチドが、配列に沿って相対的な位置で所望の配列の異なる鎖にハイブリダイズ可能であるように、十分に詳細に、配列両端の十分な数の塩基がわかってさえいればよい。配列両端の塩基に関してわかっていることが多ければ、標的核酸配列に対するオリゴヌクレオチドの特異性が高くなり、そしてしたがって、プロセスの効率がよりよくなる。用語、オリゴヌクレオチドは、以後、増幅しようとするセグメントの末端配列(単数または複数)に関する情報にある程度あいまいさがある場合は特に、1より多いオリゴヌクレオチドを指すと理解されるであろう。
[0225]各工程後に新たな試薬を添加する場合、本発明を段階的な方式で行うことも可能であり、またはすべての試薬を最初の工程で添加する場合、同時に行うことが可能であり、または既定の工程数の後に新鮮な試薬を添加する場合、部分的に段階的に、そして部分的に同時に、行うことも可能である。鎖分離工程に酵素的手段を用いる場合、同時法を利用可能である。同時法では、反応混合物は、鎖分離酵素(例えばヘリカーゼ)、ATPなどの、鎖を分離する酵素に適したエネルギー供給源を含有することも可能である。さらなる物質を必要に応じて添加することも可能である。
[0226]核酸ポリメラーゼは、増幅を達成するよう機能するいかなる化合物または系であることも可能である。この目的に適した酵素には、例えばTfl DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、他の入手可能なDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたはその変異体、逆転写酵素またはその変異体、および他の遺伝子操作型が含まれる。逆反応および順反応間の関係に基づいて、DNAポリメラーゼは、ddNTPを効率的に(dNTPに比較して)、そして均一に(4種のddNTP間を比較して)取り込む場合、P活性化可能オリゴヌクレオチドに対して、高い、そして均質な加ピロリン酸分解活性を有すると予測される。すべてのDNAポリメラーゼのうち、ThermoSequenaseなどの遺伝子操作型が、将来、最高となる可能性もある(Vander Hornら、1997)。一般的に、合成は、各オリゴヌクレオチドの3’端で開始され、そしてテンプレート鎖上を5’方向に進行するであろう。しかし、5’端で合成を開始し、そしてもう一方の方向に進行する誘導剤もまた、上述のようなPAP法に用いることも可能である。
(実施例2)
PCRによるテンプレートの調製
[0227]2つのプライマー(T=5’GAC CTG CAG CAA GGG AGT CAG AAG3’(配列番号1)およびU=5’TCA TAC CGG AAA GGG CTG GAG ATA3’(配列番号2))を用いたPCRによって、ヒトDドーパミン受容体遺伝子の640bp領域を増幅した。TU:UT二重鎖産物はGenBank X55760のヌクレオチド33〜672に渡り、そして産物のG+C含量は55%である。よく生じるAからGの多型は、ヌクレオチド229に位置し、G/G、A/AおよびG/Aの3つの遺伝子型を生じる。PCR体積は50μlである:50mM KCl、10mM Tris/HCl、pH8.3、1.5mM MgCl、各200μMの4種のdNTP、各0.1μMのプライマー、2%DMSO、1UのTaq DNAポリメラーゼ(Boehringer Mannheim)およびG/Gホモ接合体、A/Aホモ接合体またはG/Aヘテロ接合体由来の250ngのゲノムDNA。周期条件には:GeneAmp PCR系9600(Perkin−Elmer Applied Biosystems)を用いた、94℃15秒間の変性、55℃30秒間のアニーリング、および72℃1分間の伸長で、全部で35周期が含まれた。Centricons 100微量濃縮装置(Amicon)上で3回保持することによって、プライマーおよび他の小分子から、PCR産物をおよそ10,000倍精製した。260nmのUV吸光度によって、回収されたPCR産物の量を測定した。
3’ジデオキシヌクレオチドを付加することによるP の合成
[0228]ホープ市DNA/RNA化学研究室において、Perseptive Biosystems 8909合成装置(Framinsham)によってデオキシヌクレオチドオリゴヌクレオチドを合成し、そしてoligopureカートリッジ(Hamilton)によって精製した。ターミナルトランスフェラーゼによって3’末端ジデオキシヌクレオチドを付加した。混合物は、30μlの総体積を含有した:100mMカコジル酸カリウム(pH7.2)、2.0mM CoCl、0.2mM DTT、2500pMのオリゴヌクレオチド、2mM 2’,3’−ddNTP(ddNTPに対する3’−OH末端のモル比は1:24であった)(Boehringer Mannheim)、100Uのターミナルトランスフェラーゼ(GIBCO BRL)。反応を37℃で4時間インキュベーションし、そして次いで、最終濃度5mMでEDTAを添加することによって停止した。Centri−spinTMカラム(Princeton Separations)を用いて脱塩した後、TBE緩衝液(90mM Tris/ホウ酸、1mM EDTA、pH8.3)中の分離用7M尿素/20%ポリアクリルアミドゲル電気泳動によってPを精製した(Maniatisら、1982)。260nmのUV吸光度によって、回収されたPの量を測定した。
[0229]少量の末端処理されていないオリゴヌクレオチドが、加ピロリン酸分解の非特異性を生じるであろうため、T4ポリヌクレオチドキナーゼによって、5’末端で各P32P標識し、そして次いで、7M尿素/20%ポリアクリルアミドゲルを通じて電気泳動した。ゲルを過剰曝露しても、P産物のみが可視であった。99.99%より多いPが3’末端にジデオキシヌクレオチドを含有したと概算される。Pの純度は、pH8.3で、PCR産物またはPAP産物が存在しないことによって支持された。
加ピロリン酸分解活性化重合
[0230]オリゴヌクレオチドPおよびUを用いるPAP、またはPのみを用いるPAPによって、TU:UT二重鎖テンプレート内の445〜469bpの領域を増幅した。PU:UP二重鎖産物は、GenBank X55760のヌクレオチド204〜228から672に対応し、そしてG+C含量は56%である。PAP反応混合物は、25μlの総体積を含有した:50mM KCl、10mM Tris/HCl(pH7.6)、1.5mM MgCl、各100μMの4種のdNTP(dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP)、0.1μM P、0.1μM Uオリゴヌクレオチド(TCATACCGGAAAGGGCTGGAGATA(配列番号2))、300μM NaPP、2%DMSO、1μCiの[α−32P]dCTP(3000Ci/mmol、Amersham)、1UのAmpliTaqFS DNAポリメラーゼ(PE Applied Biosystems)または各0.5UのAmpliTaqFSおよびTaq DNAポリメラーゼ、および10ngのTU:UT。8U ThermoSequenase(Amersham Pharmacia)または4U ThermoSequenaseに、0.5U Taqおよび2.5mM MgClを加えた以外は同一の条件下で、ThermoSequenaseもまた試験した。周期条件には:94℃10秒間の変性、60℃1分間(ThermoSequenaseでは55℃)のアニーリング、および72℃2分間の伸長、全部で15周期が含まれた。
[0231]標準的な2%アガロースゲルを通じて反応を電気泳動した。CCDカメラ(Bio−Rad Gel Doc 1000)およびMulti−Analyst(登録商標)ソフトウェアによるUV写真のため、ゲルをエチジウムブロミドで染色し、乾燥させ、そしてオートラジオグラフィーのため、Kodak X−OMATTM ARフィルムに供した。ImageQuantソフトウェア(Molecular Dynamics)とともにPhosphoImagerを用いて、PCRバンドのピクセル総数から、ランダムユニットとして示されるバックグラウンドを引いたものとして、PAP収量を定量化した。
PAP効率増進
[0232]実施例1において、天然TflまたはTaq DNAポリメラーゼを用いて、3’末端にddGを持つPのみが増幅された。AmpliTaqFSおよびThermoSequenase DNAポリメラーゼは、Pの3’末端のいかなる種類のジデオキシヌクレオチド(ddAMP、ddTMP、ddGMPまたはddCMP)もはるかに少なくしか区別せず、はるかにより高いPAP効率を達成することが見出された。例えば、ドーパミンD受容体遺伝子の18量体であるが、3’末端にddGMPおよびddAMPを有する、P(212)18GおよびP(212)18A(表3)は、それぞれ、GアレルおよびAアレルを特異的に増幅した。その収量比は1.4(図11Bのレーン9と11を比較されたい)であり、そしてしたがって、P(212)18Gは、P(212)18Aより、周期あたり4%、より効率的であると概算される。別のP(228)26A−24=5’TAGGAACTTGGGGGGTGTCAGAGCCC3’(配列番号12)は、3’末端にddCMPを持つ26量体であるが、3’末端にddCMPを持たないプライマーと同程度に効率的に増幅され、そして収量は、TflまたはTaqを用いたものと比較して、1,000倍増加すると概算された。さらに、PAPは、ヒトゲノムDNAから直接、セグメントを増幅した。
表3
の長さおよびミスマッチに影響を受けるPAP特異性
Figure 0004500673
(204)26Gは、3’末端にGジデオキシヌクレオチドを持つPである。「0」は、アレル特異的塩基が3’末端にあることを意味する。5’末端の第一の塩基は、GenBank X55760のヌクレオチド204に対応する。その長さは26塩基である。
太字のGまたはAは、GアレルまたはAアレル特異的塩基であり、そして下線の塩基は、設計されたミスマッチである。
アレル特異的塩基までの3’末端からの距離:「0」=3’末端、−3=3’末端から3塩基。
オリゴヌクレオチドのTmは、1M NaClで、4℃x(G+C)+2℃x(T+A)と概算された。各Pの長さは18塩基である。
PAPのノイズ比(%)は、同一のPによる特異的アレル産物に対する非特異的アレル産物の相対収量、または同一テンプレートを用いることによる、天然型に対する、指定された突然変異Pの相対収量と定義される。特異的シグナルを<10%ノイズ比とする。
[0233]AmpliTaqFSは、天然Taqに比較して、2つの突然変異を有する。5’ヌクレアーゼドメイン中の1つの突然変異は、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を排除し、そして第二の突然変異F667Yは、活性部位中にある(InnisおよびGelfand、1999)。ThermoSequenaseは、活性部位に同じ突然変異F667Yを有するが、5’−3’エキソヌクレアーゼドメインに欠失がある(TaborおよびRichardson、1995;Van der Hornら、1997)。これらは取り込みに関してdNTPおよびddNTPを区別しない。逆反応であるddNMPの加ピロリン酸分解は、はるかにより高く、そしてこれらの酵素によってより区別されないと推定される。用いるAmpliTaqFSまたはThermoSequenase DNAポリメラーゼはいずれも、PAP効率を減少させるように、反応において、PPを加水分解可能である、熱安定性ピロホスファターゼを含有するように配合された(製造者の取扱説明書)が、我々の条件下では、PAPはなお増幅された。AmpliTaqFSおよびThermoSequenase DNAポリメラーゼは、混入ピロホスファターゼを含まない純粋な型でよりよく働くであろう。
の3’特異的下位配列
[0234]AmpliTaqFSを用いて、異なる長さおよびミスマッチを持つ、多様なPを調べた(表3)。PAP効率に対する長さおよびミスマッチの影響を、同一テンプレート由来の異なる長さの2つのP間の相対収量(%)として表し(図12)、これは、長さが各々2〜4塩基少ないと、0.0%〜201.5%で多様であった。PAPの特異性もまた、Pの長さおよびミスマッチに影響を受ける(表3)。ノイズ比(%)は、マッチ産物に対するミスマッチ産物の相対収量と定義され、そして特異的シグナルは、<10%ノイズ比でスコアされる。Pのアレル特異的塩基が3’末端にある場合、特異的アレルのみが増幅され、そして特異性はPの長さには関連しなかった(図12A)。アレル特異的塩基がPの3’末端にない場合、特異性はPの長さに関連した。3’末端から15塩基までの、18量体Pにおける非3’末端ミスマッチはいずれも、増幅を引き起こさなかった(図12B〜12E)が、26量体Pにおける2つのこうしたミスマッチであっても、非特異的増幅を引き起こした。
[0235]異なる位のアレル特異的塩基に渡る、「スタック化」Pを用いて、18量体をさらに調べた(図13および表4)。ノイズ比(%)は0.0%〜7.1%で多様であった。3’特異的下位配列の長さは、13塩基以上であった。
表4
異なって配置されたP のPAP特異性
Figure 0004500673
2つのオリゴヌクレオチドを用いたPAP、または1つのPを用いた線形PAPによる、GテンプレートおよびAテンプレートからの増幅。PAPのノイズ比(%)は、特異的アレル産物に対する、非特異的アレル産物の相対収量である。
[0236]異なる位でGアレルとマッチするPおよびミスマッチするPを用いることによって、同様の結果を得た(表5)。1つのミスマッチを含むノイズ比は、0.8%〜5.6%の間で多様であった。3’特異的下位配列の長さは、16塩基以上であった。2つのミスマッチを用いたノイズ比は0%であった(図14のレーン2とレーン10〜15を比較されたい)。
表5
異なってミスマッチするP を用いたPAPの特異性
Figure 0004500673
Gアレルとのマッチまたはミスマッチ。
ノイズ比(%)は、ミスマッチPおよびP(212)18GとGアレル特異的テンプレートの間の相対収量である。
[0237]18量体Pのみを用いて線形PAPを調べ、そしてより高い特異性が観察され、ノイズ比はより低かった(表4および5)。線形PAPは、すべての非特異的産物が、出発テンプレートから生じる、異なる機構経路を取り、3’末端ミスマッチPを用いるミスマッチ加ピロリン酸分解、または非3’末端ミスマッチPを用いるミスマッチ加ピロリン酸分解およびミスマッチ伸長両方を必要とする。
[0238]3’末端にddNMPを付加することなく、17量体プライマーを用いて、PASAを行った(表4および5を参照されたい)。ミスマッチ17量体プライマーは、ミスマッチが3’末端から6塩基と同程度に近い場合、30%ノイズ比で非特異的産物を強く増幅し、より短い3’特異的下位配列を示した。別の研究で、先に、同様の結果が報告された(Sarkarら、1990)。
[0239]要約すると、P(1つの長さ)は2つの下位配列を有する:3’特異的下位配列(n=3’特異的下位配列の塩基数、1以下)は特異性を決定し、すなわちこの領域内で、テンプレートの相補鎖に対するいかなるミスマッチも、実質的な増幅を生じない;そして5’エンハンサー下位配列(m=5’エンハンサー下位配列の塩基数、0以上)は増幅効率を増進する。PAP特異性は、3’特異的下位配列の塩基対形成特異性、加ピロリン酸分解特異性および重合特異性とともに決定される。したがって、3’特異的下位配列の塩基対形成特異性は、PAP特異性の最低必要条件である。
[0240]Pの3’特異的下位配列の長さは、Pの配列背景およびサイズ、3’末端ジデオキシヌクレオチドの種類、テンプレート配列、DNAポリメラーゼ、イオンなどの他の構成要素、および周期条件によって、影響を受ける可能性もある。テンプレートが、1より多い反復配列または1より長い均一ポリマー走行を含有する場合、Pは係留のための特異性を失う。Pの3’特異的下位配列の長さは、Pの配列背景およびサイズ、3’末端ジデオキシヌクレオチドの種類、テンプレート配列、DNAポリメラーゼ、イオンなどの他の構成要素、および周期条件によって、影響を受ける可能性もある。テンプレートが、1より多い反復配列または1より長い均一ポリマー走行を含有する場合、Pは係留のための特異性を失う。
未知の配列変異体のスキャンまたは再配列決定
[0241]Pの3’特異的下位配列の特性を適用して、平行した方式で、未知の配列変異体のスキャンまたはあらかじめ決定された配列の再配列決定を行うことも可能である。あらかじめ決定された配列の相補鎖上の各ヌクレオチドに、18量体などの4つの下流Pによってクエリーを行い(図11)、この下流Pは、3’末端で、ddAMP、ddTMP、ddGMPまたはddCMPいずれかが野生型配列および3つのありうる一塩基置換に対応することを除いて、同一の配列を有する。X塩基の相補鎖をスキャンするPの数は、4およびXの乗算であり、これは指数関数的PAPまたは線形PAPいずれにも適している。4つの下流Pは、3’末端のddAMP、ddTMP、ddGMPおよびddCMPが、4つの蛍光色素によるなど、区別のため異なって標識されている場合、単一の点上に固定することさえ可能である。こうして、増幅シグナルは、加ピロリン酸分解によって、ddNMPがPから除去される際、各色素の強度減少によって表されうる。線形PAPの1つの利点は、区別のため異なる色素で標識された4種のddNTPを一塩基伸長の基質として使用可能であることである。
[0242]簡潔には、野生型配列に対応するすべてのPのみが特異的に増幅される場合、重複を解析することによって、野生型配列を順序正しく配置することも可能である。3’末端で一塩基置換を持つPは、ヘミ点突然変異またはホモ点突然変異の位置で増幅される。突然変異はまた、PAPシグナルがない「ギャップ」も生成し、これはいくつかの連続するヌクレオチドの領域に渡る。一塩基置換では、ギャップサイズ(塩基)+1=3’特異的下位配列の長さである。
[0243]さらに、我々はまた、上流Pの第二のセットを設計することによって、センス鎖をスキャンすることも可能である。2セットのPの組み合わせによって、ヘテロ接合体においてさえ、未知の一塩基置換を決定可能である。未知の小さい欠失および挿入を検出し、そして位置決定することも可能である。特定の種類の欠失または挿入を同定するため、対応するPを付加することも可能である。突然変異位の情報を提供することが可能なフィンガープリンティングには、n倍まで、Pの数を減少させるため、2つの連続するPのスタックする領域が、アレイ上の3’特異的下位配列より短い単純なスタッキング方式がある。
新規DNA配列決定
[0244]PAPによる新規DNA配列決定の概念は、Pのすべてのありうる3’特異的下位配列を用いて、新規配列の3’特異的下位配列の存在を同定することである。Pの3’特異的下位配列の完全なセットは4である。3’特異的下位配列は各々、4の5’エンハンサー下位配列の完全なサブセットを有する。例えば、3’特異的下位配列としての16量体および5’エンハンサー下位配列としての2量体の完全なセットは、(A、T、G、C)(A、T、G、C)N16=418と示すことも可能である。
[0245]簡潔には、方法はまず、特異的PAP増幅のすべてのリストを決定し、そして次いで、ワトソン−クリック塩基対形成規則を用いることにより、既定の長さを持つ、3’特異的下位配列を順序付けることによって、このリストから未知のDNA相補配列を再構築する。
[0246]どこであっても、Pの既定の3’特異的下位配列が2回以上遭遇されると、アセンブリプロセスは中断される。最大配列決定の長さに影響を及ぼす要因の1つは、3’特異的下位配列の長さである。既定の長さを持つ3’特異的下位配列の完全なセットによって、明確に再構築可能な無作為配列の長さは、おおよそ、完全なセット中の3’特異的配列の数の平方根であり、既定の3’特異的下位配列が、いずれも2回以上遭遇されない可能性は50%以上である。65,536種ある、3’特異的下位配列の8量体は、200塩基までの範囲で有用であるようである。100万種より多い10量体は、1キロ塩基までの新規配列を解析可能である。3’特異的下位配列としての16量体を含有する18量体Pは、その完全なセットがPの418であり、最大77,332塩基を配列決定可能である。
[0247]隣接する既知の配列がある場合、2つのオリゴヌクレオチドを用いたPAPのため、相対するオリゴヌクレオチドを設計する。最大配列決定の長さは、主に、相対するオリゴヌクレオチドに限定されるが、Pの3’特異的下位配列の長さに限定されず、条件的新規DNA配列決定と称される。
PAPの他の適用
[0248]同一かまたは異なっているかを調べるため、2つのDNA配列を比較するフィンガープリンティングでは、3’特異的下位配列の不完全なセットを用いることによってPの数を減少させる、単純な方法がある。これらを特定の順序に配置することによって、染色体位置とともに配列を同定することが可能である。ヒトゲノムには3x10bp DNAがあることを考慮すると、特異性を増加させるために、1つのPのみを用いるPAPより、2つのオリゴヌクレオチドを用いるPAPが好ましい。
[0249]遺伝子発現プロファイリングを監視するため、6x10〜10転写物が発現され、そして正確な配列の詳細が不要である場合、1つのPのみを用いるPAPが適用可能であり、そして遺伝子中でユニークなモチーフを同定する、全長22量体までのPのセットを設計することも可能である。2つの各P間で、3’末端で少なくとも1つの配列相異があるか、または非3’末端で2以上の配列相異がある。
ハイブリダイゼーションによる、配列との比較
[0250]オリゴヌクレオチドを用いることによるSBHにおいて、ハイブリダイゼーション、および重複部分を通じて陽性にハイブリダイズするプローブのアセンブリによってDNA配列を決定する。固定試料上の単一オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションは、最適ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で、非常に特異的になりうることがずっと以前から知られており(Wallaceら、1979)、したがって、単一内部ミスマッチを含有するものから、完全なハイブリッドを区別することが可能である。アレイ中のオリゴヌクレオチドは、長さ11〜20ヌクレオチドであり、そして中央に7〜9塩基の特異的領域を有し、ミスマッチハイブリダイゼーションによって、非特異的シグナルが生成される。標準的ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で、マッチおよびミスマッチ間の二重鎖安定性はまた、末端ミスマッチおよび隣接配列によって影響を受ける(Drmanacら、1989;Khrapkoら、1989;Ginot、1997)。
[0251]いくつかの方法でSHBを酵素で修飾することも可能である(MiyadaおよびWallace、1987;Southern、1996)。DNAポリメラーゼによるプライマー伸長は、相補鎖にマッチする場合のみ、塩基を1つずつ取り込む。リガーゼは同様の必要条件を有する:2つのオリゴヌクレオチドは、連結位でどちらもテンプレートに相補的であるならば、酵素的に連結可能である。
[0252]図11A〜11Bは、PAP効率の増進を示す。図11A。二重鎖TU:UTテンプレートから2つのオリゴヌクレオチドPおよびUを用いて、PAPが増幅される。4つのPは各々、3’末端に、ddA、ddT、ddGおよびddCを有する。3’末端塩基は、GアレルまたはAアレルの相補鎖に特異的であるか、またはマッチしないかいずれかである。図11B。ヒト・ドーパミン受容体遺伝子のG/G、A/AおよびG/A遺伝子型由来のPAPのオートラジオグラム。461bpの放射標識特異的産物(二重鎖PU:UPおよび過剰なアンチセンス鎖UP)が産生される。他の副産物UTおよびUT:TUを示す。TU:UTが、元来の非放射標識TUテンプレートと過剰な放射標識UTのアニーリングに由来することに注目されたい。
[0253]図12A〜12Eは、PAP効率に対するPの長さおよびミスマッチの影響を示す。PおよびUオリゴヌクレオチドを用いてPAPを増幅した(表3を参照されたい)。図12A〜12Eの各々で、Pはサンプルの3’末端を有するが、異なる長さである。図12A。レーン1〜4で、Pはマッチし、そしてGアレルを増幅した。レーン5〜8で、Pは3’末端でミスマッチしたが、Aアレルを増幅した。図12B。レーン9〜12で、Pはマッチし、そしてGアレルを増幅した。レーン13〜16で、Pは3’末端から−12塩基でミスマッチしたが、Aアレルを増幅した。図12C。レーン17〜20で、Pはマッチし、そしてAアレルを増幅した。レーン21〜24で、Pは3’末端から−2塩基でミスマッチしたが、Gアレルを増幅した。図12D。レーン25〜28で、Pは3’末端から−9塩基でミスマッチしたが、Aアレルを増幅した。図12E。レーン29〜32で、Pは3’末端から−15塩基でミスマッチしたが、Aアレルを増幅した。1つのレーン(L)の前のレーン(Ln−1)に対する収量比として、長さの影響を示す。シグナルがバックグラウンドと同じかまたはそれに近いため、レーン5〜8では、長さの影響を示さなかった。
[0254]図13は、異なる配置のPでのPAP特異性を示す。PAPは、PおよびUオリゴヌクレオチドで増幅された(表4を参照されたい)。Pは、レーン2〜7で、Gアレルにマッチし、そして該アレルを増幅したが、レーン9〜15で、Aアレルにミスマッチし、そして該アレルを増幅した。レーン1および9は、D(212)17量体およびUを用いたPCR対照であった。レーン8および16は、Uのみを用いた伸長対照であった。
[0255]図14は、異なってミスマッチするPのPAP特異性を示す。PAPは、PおよびUオリゴヌクレオチドで増幅された(表5を参照されたい)。レーン2〜7において、Pは、マッチまたは1ミスマッチで、Gアレルを増幅した。レーン9〜15において、Pは、1または2ミスマッチで、Aを増幅した。レーン1および9は、D(212)17量体およびUを用いたPCR対照であった。レーン8および16は、Uのみを用いた伸長対照であった。
(実施例3)
ゲノムDNAからのPAP増幅
[0256]本実施例は、ゲノムDNAからのPAP直接増幅を例示する。本実施例に用いるオリゴヌクレオチドを以下に列挙する。レーン番号は、図15のレーンを指す。
[0257]0.1μM濃度中の下流オリゴヌクレオチドは:
Figure 0004500673
である。
[0258]0.1μM濃度中の相対する上流オリゴヌクレオチドは:D(420)24U 5’ACGGCAGCACAGACCAGCGTGTTC3’(配列番号48)であり、各下流オリゴヌクレオチドと対形成した。詳細に関しては、表3の脚注を参照されたい。
[0259]他の構成要素は、以下を除いて、実施例2と同じであった:30周期を用いることによって、25μl反応あたり、各0.5UのAmpliTaqFSおよびTaq DNAポリメラーゼ、および100ngのヘテロ接合体G/Aアレル・ゲノムDNAを用いた。
[0260]PAP産物サイズは193bp〜218bpの範囲である。ゲル上に1つの二重鎖産物および1つの一本鎖産物が観察され、混入熱安定性ピロホスファターゼによって加水分解されたPPの排出が示された。
(実施例4)
LM−PCRおよびLM−PAPの特異性の比較
[0261]LM−PCRプロトコルには、ヒト・ドーパミンD受容体遺伝子モデル系における、プライマー伸長、リンカー連結、PCR増幅、および指示された標識が含まれる(図16)。プライマー伸長(P1プライマー=5’TTGCCACTCAAGCGGTCCTCTCAT3’(配列番号49))の最初の10周期でVent(エキソ−)DNAポリメラーゼを用いたことを除いて、本質的に記載されるように(Pfeiferら、1999)、UV処理したゲノムDNA試料に対して、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を添加して、LM−PCRを行った(このプロトコルは、TD−PCRとして知られる)。温度周期は、95℃1分間、63℃3分間、および72℃3分間であった。シグナルを増進するため、ターミナルトランスフェラーゼをプロトコルに添加し、そしてLM−PCRのこの変型をTD−PCRと呼ぶ。ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)テール付加の前に、Dynabeadを用いて、標的DNA分子を濃縮した。製造者に記載されるように、Expand Long Template PCR系3(BMB)を用いて、PCRを行った(P2プライマー=5’GAAGCAATCTGGCTGTGCAAAGTC3’(配列番号50))。直接標識を行う前に、QIAquick PCR精製キット(QIAGEN)を用いて、PCR産物を精製した。32P標識プライマー:
Figure 0004500673
とともに、AmpliTaq DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer)を用いた直接標識に、清浄化したPCR産物の一部を用いた。
[0262]PAPによる直接標識工程をのぞいて、アレル特異的PCRとして、LM−PAPを行った(図16A)。32P標識プライマー:
Figure 0004500673
とともに、10μl体積中(50mM KCl、10mM Tris/HCl(pH7.6)、1.5mM MgCl、各100μMのdNTP、0.1μM P、300μM NaPP、2%DMSO、各0.25UのAmpliTaqFSおよびAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer))のPAP反応条件を用いた直接標識に、精製PCR産物を用いた。周期条件は、総数8周期または16周期で、94℃10秒間;60℃1分間、および72℃2分間であった。LM−PAPは、LM−PCRより、劇的により特異的であった。ドーパミンD1遺伝子を用いた最初のデータによって、LM−PCRとともに同一のブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを用いた場合より、LM−PAPではバックグラウンドがより低いことが示される。また、非常に高いGCリッチ領域(70%)を持つ遺伝子、PGK遺伝子を用いて、LM−PAPを行うことも可能である(図16B)。
[0263]図16Aは、アレル特異的LM−PAPおよびアレル特異的LM−PCRの比較を用いたドーパミンD受容体遺伝子のUVフットプリンティングを示す。Pを用いたLM−PAPと、同一の配列でブロッキングされていないプライマーを用いたLM−PCRの直接比較によって、2つのアレルがLM−PAPでは区別可能であるが、LM−PCRでは区別不能であることが示される。どちらの方法も、UVで処理されない(C)か、in vitro処理された(T)か、またはin vivo処理された(V)、HF−16 DNAを用いて行った。32P標識プライマーP3A(レーン7〜9および13〜15)およびP3G(レーン10〜12および16〜18)を伴うPAP条件を用いた直接標識反応(レーン7〜18)を、AmpliTaqFSおよびAmpliTaqで8周期および16周期行った。LM−PCRでは、AmpliTaq(レーン1〜6)および32P標識プライマーP3A(レーン1〜3)およびP3G(レーン4〜6)を用いて、直接標識反応を8周期行った。LM−PAPのアレルプライマーP、P3AおよびP3Gは明らかに2つのアレルを区別し、一方、同一配列のブロッキングされていないアレルプライマーP3AおよびP3Gは、LM−PCRによってアレルを区別することが不能であった。
[0264]図16Bは、pgK遺伝子のUVフットプリンティングを示す。PGKに対するLM−PAP法は、Pfu Turbo DNAポリメラーゼをプライマー伸長に用いるとともに、7−デアザ−dGTP/dGTPが3:1の比であったことを除いて、ドーパミンD1受容体に対するものと、本質的に同一であった。温度周期は95℃1分間、60℃2分間、および76℃3分間であった。やはりデアザdGTPを用いて、97℃1分間、60℃2分間、76℃3分間で、Vent(エキソ−)DNAポリメラーゼを用いて、PCR工程を行った。25μl体積中(50mM KCl、20mM Hepes、pH6.95、10mM (NHSO、1.5mM MgCl、40μM dNTP、150μM NaPPi、4%DMSO、および1単位のAmpliTaq FS DNAポリメラーゼ)のPAP反応条件を用いて、32P P3GおよびP3Cプライマーでの直接標識に、精製PCR産物を用いた。周期条件は、94℃15秒間、60℃30秒間、および72℃1分間を10周期であった。
(実施例5)
10 〜10 テンプレート中の1つの突然変異を検出するためのPAP−Aの最適化
[265]1μgのラムダファージDNAは、2x1010コピーのテンプレートを含有する。1部分の突然変異体lacIテンプレートを10〜10部分の対照DNAテンプレート、例えば野生型lacIと混合することによって、PAPの特異性を決定する。PAP−Aの特異性は、ポリメラーゼのエラー率、Pの純度(現在の精製プロトコルでは<2x10−4)および抽出プロセスにおけるDNAテンプレート損傷の可能性の関数である。酵素種および濃度、並びにdNTP、PP、Mg++またはMn++などの他の構成要素の濃度を試験することによって、PAPの収量および特異性を最適化する。DNAポリメラーゼなどの抗体が活性化する酵素を用いた、室温でのホットスタートPAPを用いて、誤った増幅を排除することも可能である。
[0266]哺乳動物における自発的突然変異を研究するモデル系として、実験室で用いられる、野生型および突然変異体ラムダファージDNAを、感染した大腸菌SCS−8細胞(Nishinoら、1996)から調製する。高忠実性条件下でラムダファージを増殖させ、そしてDNA損傷が低率である条件下で、注意しながらDNAを単離する(Stratageneマニュアル)(Nishinoら、1996;Hillら、1999)。
[267]突然変異体には、2種のトランジション、4種のトランスバージョン、および一塩基ヌクレオチド欠失の各々の1例が含まれる。各突然変異に特異的なPを合成する。これらのDNAテンプレートを再構築実験に用いて、この中で、突然変異DNAを野生型DNA中に連続希釈する。スパイク処理した試料を用いて、PAP−Aを最適化する。TaqFS、ThermoSequenase、およびSequiTherm Excel II(Epicentre)を用いた収量および特異性に基づいて、最も堅固なポリメラーゼを選択する。熱周期パラメータ、オリゴヌクレオチドの長さ、およびPP、dNTPおよびMg++またはMn++の試薬濃度を含む、反応の他の構成要素を体系的に最適化する。SSCPゲル上のオートラジオグラフィーまたは蛍光を用いて、PAP産物収量の定量的検出を達成する。これらのデータは、PAP−RおよびLM−PAPの最適化に役立つ(以下)。これらの多様なパラメータの最適化は、10〜10中1部分の特異性を生じる。
[0268]ヒト突然変異体ゲノムDNAテンプレートと10までの野生型テンプレートを混合することによって、ヒト因子IX遺伝子中の突然変異検出に関してもまた、最適化条件を試験する。ラムダ実験でのように、適切に設計したオリゴヌクレオチド(Oligo5ソフトウェアを用いる)を40周期用いて指数関数的PAPを行い、そしてオートラジオグラフィーによって、または蛍光検出によって、強いシグナルを獲得する。
(実施例6)
PAP−Rの最適化
[0269]モデル系において、Pに沿ってミスマッチがあると活性化が阻害され、ミスマッチが5’端から2ヌクレオチドであった場合でさえも、活性化が阻害された(図14)。5’末端が2、6、9、および12ヌクレオチド下流に移動している、Pの18量体のさらなるセットもまた、活性化の阻害を示した(図13)。さらに、20量体および22量体もまた、一ヌクレオチドミスマッチでの阻害を示す(図12)。これらの知見を拡大適用し、そして再配列決定の堅固な方法の基礎を築くため、一塩基ミスマッチの位置およびPの活性化の関係をさらに解析する。
[0270]ヒトにおける生殖細胞系列突然変異の分子疫学に関する先の研究から、血友病患者および家族由来の1,000を越えるDNA試料が確かめられているため、因子IX遺伝子をモデル系として用いる(Sommer、1995;Ketterlingら、1999)。ヒト因子IX遺伝子のエクソンBおよびエクソンHの2つの20ヌクレオチド領域をモデル系として用いる。8つの異なる一塩基突然変異が利用可能な、ヌクレオチド6460〜6479(5’CGAGAAGTTTTTGAAAACAC3’(配列番号55;Yoshitakeら、1985))のエクソンBの領域を設計する。エクソンHの領域は、異なる位での7つの突然変異が利用可能な、ヌクレオチド30845〜30864(5’GAACATACAGAGCAAAAGCG3’(配列番号56))である。野生型領域BおよびHと同一のPが合成されるであろう。一ヌクレオチドミスマッチを除いて、同一のPを合成する。
[0271]野生型因子IX配列を最初の研究に用いる。野生型配列にマッチするか、またはオリゴヌクレオチド配列の5’に近い3分の1内の選択される部位でミスマッチする、いくつかのPは、オリゴヌクレオチドの最適な長さを評価するパイロット実験を行うのに有用である。ポリメラーゼおよび反応条件の影響が評価可能である。
[0272]予備的データから、18量体以上が最適なサイズであるようである。また、25量体または30量体であっても最適である可能性もある。本実施例には、20量体が最適なサイズであると仮定される。野生型P、およびエクソンBの位置領域の各ヌクレオチドで、ありうる一塩基ミスマッチの1つを持つ20のPを合成する。これらのPのうち8つは、血友病B患者の突然変異に完全にマッチする。陽性対照として、適切な突然変異DNA試料を用いた際に、これらのPが効率的に活性化することが示される。指数関数的PAPおよび線形PAPを行って、そしてノイズ比を決定する。線形PAPのノイズ比は一般的により低く、そしてこれを用いる。
[0273]別の配列背景において、予備的データを確認するため、エクソンHで同様の実験を行う。エクソンHの領域において7つの突然変異を盲検方式で解析し、正確なマッチを検出するかどうかを決定する。P活性化に対するミスマッチの位置またはミスマッチの種類の影響を決定する。異なるポリメラーゼ、反応温度、および他の反応条件の影響もまた決定可能である。別のセットの20のPは、3’末端から12〜20ヌクレオチドのミスマッチ由来の、さらなるデータを提供する。
(実施例7)
LM−PAPの最適化
[0274]ヒト・ドーパミンD受容体遺伝子およびマウスPgkl遺伝子をモデル系として用いて、LM−PAPまたはLM−PCRを利用する場合のクロマチン構造の解析を比較する。ドーパミンD受容体遺伝子は上述されている。X染色体不活性化は、初期胚発生段階で起こる。雌性細胞中の2つのアレルが異なる発現状態を維持するため、これは、遺伝子制御の研究に好適な系である。Pgklは、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)をコードするX染色体連鎖ハウスキーピング遺伝子である。PGKは、解糖に重要な酵素であり、そして該遺伝子は、雌性体細胞の不活性X染色体(Xi)および雄性生殖細胞における以外は、いつでも活性であると期待される。
[0275]予備的データによって、クロマチン構造が先に解析されていない遺伝子であるドーパミンD受容体遺伝子において、LM−PCRに比較してLM−PAPを用いると特異性に劇的な増進が示される(図16A)。本実施例では、LM−PAPおよびLM−PCRを行う。LM−PCRプロフィールを生じる3つのオリゴヌクレオチドセットおよびPgkl(および他のX染色体遺伝子)において許容しえないバックグラウンドを持つLM−PCRプロフィールを生じる7つのプライマーセットを用いて、LM−PAPとLM−PCRを比較する。同一配列のデオキシ末端およびジデオキシ末端オリゴヌクレオチドを利用して、それぞれ、LM−PAPおよびLM−PCRを行う。PhoshoImagerによって、バックグラウンドに比較したシグナルレベルもまた定量化する。平均シグナル対ノイズ比を決定する。PAP−AおよびPAP−Rを用いた解析からの最適化データはまた、LM−PAPプロトコルにおいても、有用である。シグナル対ノイズ比がさらに減少可能であるかどうかを決定するため、2つの領域に関してLM−PAPを最適化する。
(実施例8)
アレル特異的LM−PAPの最適化
[0276]コード領域および非コード領域両方のpgklaおよび1b遺伝子の多型部位が報告されている(Boerら、1990)。これらを用いて、アレル特異的Pを設計する。1つのアレル特異的オリゴヌクレオチドを、Pgk1遺伝子から前向きに選択し、そして1つを、ドーパミンD受容体遺伝子から前向きに選択する。同一配列のブロッキングされたオリゴヌクレオチドおよびブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを合成し、そしてそれぞれ、アレル特異的LM−PAPおよびLM−PCRを行う。シグナル対ノイズ比を定量化し、そして比較する。
(実施例9)
マイクロアレイ上のPAP−R
[0277]最初の実験は、上述のように、エクソンBおよびHの2つの20ヌクレオチド領域に重点を置くであろう。PAP−Rの実験設計は、例えばGeniom(登録商標)装置を用いたマイクロアレイ上のPオリゴヌクレオチドのデジタル光指示合成を用いたことを除いて、上述の実験と類似である。因子IX遺伝子のエクソンBおよびHの20bp領域の野生型に、そしてすべての一塩基ミスマッチに相補的な、総数160のオリゴヌクレオチドを合成する。陽性対照として、因子IX遺伝子の隣接する160bp領域に正確にマッチする、登録されたものから各々1ヌクレオチドずれていく160オリゴヌクレオチドを合成する。野生型および突然変異体試料から、ゲノムDNAを増幅し、オリゴヌクレオチドにアニーリングさせ、そして蛍光ジデオキシターミネーターを用いて、プライマー伸長を行う。固体支持体に関してプロトコルを最適化する。因子IXの2つの20bpヌクレオチド領域にミスマッチするオリゴヌクレオチドの、すべてでないとしてもほとんどが、あるとしてもわずかなシグナルしか生じず、一方、160の対照オリゴヌクレオチドの大部分が強いシグナルを生じるように、プライマーの長さ、利用する酵素および反応条件の調整を行う。
[0278]再配列決定のための1つの戦略を図3および4に示す。あらかじめ決定した配列の相補鎖の各ヌクレオチドに、20量体などの4つの下流Pによってクエリーを行い、この下流Pは、3’末端が、ddA、ddT、ddGまたはddCいずれかであることを除いて、同一の配列を有する。1kbセグメントでは、下流方向に、4,000のPが必要である。第二のセットの実験では、因子IX遺伝子のエクソンBおよびHを再配列決定する。これらの領域内に異なる突然変異を持つ、200を越える患者由来の試料が、解析のため利用可能である。盲検解析によって、偽陽性および偽陰性を評価する。多くの突然変異に関して、ヘテロ接合体女性試料が利用可能である。残りの男性患者試料では、野生型または第二の突然変異試料を用いた1対1の混合実験は、それぞれ、同等のヘテロ接合体または合成ヘテロ接合体を生じる。続いて、機能的に重要な可能性があるすべての領域(推定上のプロモーター領域、コード領域、およびスプライシング接合部)を再配列決定する(2.2kb)。600を越える独立の突然変異が利用可能であるため、すべての配列変化の99%より多くが同定されるかどうかを決定することが可能である(十年に渡って、直接配列決定によって、これらの試料の配列変化が決定されている)。
[0279]3’末端に一塩基置換を持つPは、ヘミ接合体またはホモ接合体点突然変異の位でシグナルを生成する。突然変異はまた、いくつかの連続するヌクレオチドの領域に渡る、PAPシグナルがない「ギャップ」も生成する。一塩基置換が生じる場合、ギャップサイズ(ヌクレオチド)+1=3’特異的下位配列の長さ(図3および4)である。
[0280]より高いG+C含量(55%)を持つ試料を解析するため、lacI遺伝子中の突然変異を利用する。Big Blue(登録商標)トランスジェニックマウス突然変異検出系由来のこれらの突然変異は、この系では6,000を越える突然変異が利用可能であるため、突然変異の99.9%以上を検出する戦略の定義を容易にする能力を有する。ロボット装置の補助で、相当する領域を解析する。さらに、30〜75%のG+C含量を持つ他の遺伝子において、数百の突然変異または多型が、解析のために利用可能である。配列のメガ塩基をスキャンする必要がある条件下で、性能を試験するため、ジストロフィン遺伝子が特に受け入れられる。90のセグメントがロボット装置で増幅されるこの遺伝子では,実質的にすべての配列変異体が、DOVAM−S後のDNA配列決定によって、定義されている。多くの分子疫学的適用および分子診断適用が、実質的に100%の突然変異を検出する再配列決定から利益を得るため、これは好都合である。
(実施例10)
ヒトおよびマウスゲノムDNAからのPAP直接増幅
[0281]2つのP、P1(配列番号45、Gアレル特異的)またはP2(配列番号47、Aアレル特異的)および上流のブロッキングされていないプライマー(U;配列番号48)各々を用いてPAPを行い、Dドーパミン遺伝子の180bpセグメントを増幅した。Pは3’末端にddCおよびddGを含む26量体である。100ngのヒトゲノムDNAを35周期増幅し、その後、2%ゲル電気泳動した。PAP反応混合物は、総体積25μlを含有した:50mM KCl、20mM HEPES/NaOH(25℃でpH6.9)、10mM (NHSO、1.5mM MgCl、各40μMの4種のdNTP(dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP)、0.1μM U、150μM NaPP、2%DMSO、0.5UのAmpliTaqFSポリメラーゼ(PE Applied Biosystems)、0.5UのTaqポリメラーゼ、および100ngのヒトゲノムDNA。周期条件は、94℃15秒間、65℃30秒間、および72℃1分間であった。図17Aは、Dドーパミン遺伝子のPAP増幅の結果を示す。レーン2および5において、P1は、3’末端から24ヌクレオチドでAアレルテンプレートに特異的であり、したがってG/GおよびA/A遺伝子型間にはほとんどまたはまったく区別がない。レーン3および6において、P2は、3’末端から2ヌクレオチドでAアレルテンプレートに特異的であり、したがって、A/A遺伝子型の特異的増幅がある。レーン1および5はPCR対照である。レーン4および8は、Pを含まない陰性対照である。レーンMはcpx DNA/HAEIVマーカー120ngである。
[0282]マウスゲノムDNAから直接の、3つのBi−PAPアッセイを試験した。3’末端でジデオキシヌクレオチドブロッカーを含有する2つのPを用いて、Bi−PAPを行い、lacI遺伝子の80bpセグメントを増幅した。Pは野生型テンプレートに特異的であり、そして長さ40〜42ヌクレオチドである。3つのBi−PAPアッセイ各々で、1ヌクレオチド重複する2つの相対するPを用い、35周期を用いて、lacI遺伝子の400コピーを増幅した。Pの配列は以下のとおりである:
Figure 0004500673
[0283]PAP反応混合物は、総体積25μlを含有した:50mM KCl、20mM HEPES/NaOH(25℃でpH6.9)、10mM (NHSO、1.5mM MgCl、各40μMの4種のdNTP(dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP)、0.1μM U、150μM NaPP、4%DMSO、1.0UのAmpliTaqFSポリメラーゼ(PE Applied Biosystems)および400コピーのマウスゲノムDNA。周期条件は、94℃15秒間、65℃30秒間、および72℃1分間であった。2%アガロースゲル上で、取り込まれなかったPを、Bi−PAP産物からよく分離した。二量体はまったく見られなかった。図17Bは、これらのBi−PAPアッセイからの結果を示す。レーン1、3および5では、野生型テンプレートが増幅される。レーン2、4および6は、マウスゲノムDNAを含まない陰性対照である。
[0248]3つのPAPアッセイは、ヒトゲノムDNAからD1受容体遺伝子の180bpセグメントを直接増幅し、PAP産物の強いシグナルを生じた。26量体Pのアレル特異性は、ミスマッチが3’末端から2ヌクレオチドにある場合、維持されるが、ミスマッチが3’末端から24ヌクレオチドであると、アレル特異性が失われる。3つのBi−PAPアッセイは、マウスゲノムDNAからlacI遺伝子の400コピーと同程度に少ないものも直接増幅した。Pオリゴヌクレオチドは、3’末端でブロッキングされた、異なるデオキシヌクレオチドを有し、そしてすべて効率的に活性化可能である。過剰なヒトDNAの添加は、マウスゲノムDNAにおいて、lacI遺伝子の増幅に影響を及ぼさなかった。Bi−PAPの産物は、取り込まれていないPから容易に区別された。Pは活性化のため、3’末端に、長く、そして完全にマッチした領域を必要とするため、二量体を形成しない。
(実施例11)
アシクロヌクレオチドおよび多様なポリメラーゼを用いたPAP
λファージDNAテンプレート
[0285]挿入された大腸菌の野生型lacI遺伝子を含有する野生型λファージDNAテンプレート(Kohlerら、1991)をStratageneから購入した。Maniatisら(1982)にしたがって、SCS−8大腸菌細胞に形質転換したλファージプラークから、突然変異体λファージDNAテンプレートを調製した。該テンプレートは、lacI遺伝子のヌクレオチド369にTからGの突然変異を含有した。260nmのUV吸光度によって、λファージDNAの量を測定した。
3’末端にアシクロヌクレオチドまたはジデオキシヌクレオチドを付加することによるP の合成
[0286]ターミナルトランスフェラーゼによって、3’末端アシクロヌクレオチドまたは3’末端ジデオキシヌクレオチドをデオキシヌクレオチドオリゴヌクレオチドに付加した。混合物は、総体積25μlを含有した:100mMカコジル酸カリウム(pH7.2)、2.0mM CoCl、0.2mM DTT、2nMのオリゴヌクレオチド、2.4mMアシクロNTP(アシクロNTPに対する3’−OH末端のモル比は1:30であった)(New England BioLabs)、または2.4mM 2’,3’−ddNTP(ddNTPに対する3’−OH末端のモル比は1:30であった)(Roche)、100Uのターミナルトランスフェラーゼ(Invitrogen)。反応を37℃で6時間インキュベーションし、そして次いで、最終濃度5mMでEDTAを添加することによって停止した。Centri−spin−20カラム(Princeton Separations)を用いて脱塩した後、30mMトリエタノールアミン/トリシン緩衝液(25℃でpH7.9)を用いて分離用7M尿素/18%ポリアクリルアミドゲル電気泳動によってPを精製した(Maniatisら、1982;Liuら、1999b)。260nmのUV吸光度によって、回収されたPの量を測定した。
[0287]少量の末端処理されていないオリゴヌクレオチドが、予期されぬPCR増幅を生じるであろうため、加ピロリン酸分解が阻害されるpH8.3で、PCR産物が存在しないことによって、Pの純度を試験した。99.99%より多いPが3’末端にアシクロヌクレオチドまたはジデオキシヌクレオチドを含有したと概算される。
PAP増幅
[0288]それぞれ、P1およびO1,P2およびO2、並びにP1およびP2を用いたPAPを調べた(図18Aおよび表6)。Pは長さ30または35ヌクレオチドであり、そして3’末端にアシクロヌクレオチドまたはジデオキシヌクレオチドを含有した。
表6
オリゴヌクレオチドのリスト
Figure 0004500673
大腸菌のlacI遺伝子における転写物の第一のヌクレオチドの位置をヌクレオチド1位と指定する(Farabaugh、1978)。P1、P=加ピロリン酸分解活性化可能オリゴヌクレオチドの例として、3’末端アシクロヌクレオチドでブロッキングされたPまたは3’末端ジデオキシヌクレオチドでブロッキングされたPであることが可能である。(340)30D=Pの5’端が340で始まり、長さが30ヌクレオチドであり、そして方向が下流である(すなわち転写方向である)。増幅される断片の正確なサイズおよび位置は、説明的な名前から知ることが可能である。30量体Pを上に示す。35量体Pは30量体Pと3’末端が共通であり、そして5’末端が5ヌクレオチド長い。
[0289]AmpliTaqFS DNAポリメラーゼを含むPAP反応混合物は、総体積25μlを含有した:50mM KCl、20mM HEPES/NaOH(25℃でpH6.9)、10mM (NHSO、1.5mM MgCl、各50μMの4種のdNTP(dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP)、各0.1μMのオリゴヌクレオチド、150μM NaPP、4%DMSO、1UのAmpliTaqFS DNAポリメラーゼ(PE Applied Biosystems)、0.1ngのλファージDNAテンプレート。周期条件は、92℃10秒間、65℃30秒間、および72℃1分間で、全部で30周期であった。第一の周期前に、92℃1分間の変性工程を追加した。
[0290]Vent(エキソ−)またはPfu(エキソ−)を用いたPAP反応混合物は、総体積25μlを含有した:10mM KCl、20mM HEPES/NaOH(25℃でpH7.19)、10mM (NHSO、1.2mM MgCl、各50μMの4種のdNTP(dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP)、各0.1μMのオリゴヌクレオチド、150μM NaPP、4%DMSO、1UのVent(エキソ−)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)またはPfu(エキソ−)DNAポリメラーゼ(Stratagene)、0.1ngのλファージDNAテンプレート。周期条件は、94℃15秒間、60℃30秒間、および72℃1分間で、全部で30周期であった。第一の周期前に、94℃1分間の変性工程を追加した。
[0291]標準的2%アガロースゲルを通じて、産物を電気泳動した。CCDカメラ(Bio−Rad Gel Doc 1000)によるUV写真のため、エチジウムブロミドでゲルを染色した。
[0292]上述のように、遺伝子操作されたDNAポリメラーゼであるTaqFS(InnisおよびGelfand、1999)は、PAPの効率を非常に改善した。3’末端ジデオキシヌクレオチドでブロッキングされたPは、ピロホスフェート(PP)およびアレルテンプレートの相補鎖の存在下で、3’末端ジデオキシヌクレオチドを除去する加ピロリン酸分解によって活性化可能である。次いで、活性化されたPをDNA重合によって伸長可能である。
[0293]lacI遺伝子を含有するλファージDNAをモデル系として用いることによって、3’アシクロヌクレオチドでブロッキングされたPを用いてPAPを行った。P1およびP2は、それぞれ、同じ突然変異に対して下流および上流のブロッキングされたオリゴヌクレオチドである(図18Aおよび表6)。P1およびP2は、それぞれ、その3’末端にアシクロGMPおよびアシクロCMPを有する。加ピロリン酸分解が阻害されている場合、pH8.3で添加するピロホスフェートがないと、増幅産物は存在せず、P1およびP2が直接伸長可能でなかったことが示される。
[0294]P1およびP2は、突然変異テンプレートに特異的であるが、3’末端で野生型テンプレートにミスマッチする。1つのアシクロヌクレオチドでブロッキングされたPおよび1つの相対するブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを用いたPAPによって、そして3’末端アシクロヌクレオチドでブロッキングされた2つの相対するPを用いたPAP(図18のレーン1および2)によって、アシクロヌクレオチドでブロッキングされた2つの相対するP(2つの相対するPが3’末端で1ヌクレオチド重複している、PAPの特別な型)を用いて(図18のレーン3)、突然変異テンプレートが効率的に増幅された。しかし、3’末端のミスマッチのため、野生型テンプレートからは産物がまったく生じず、特異性が示された(図18Bのレーン5〜7)。3’ジデオキシヌクレオチドでブロッキングされたPを用いたPAPも同様の結果を示した(図18Bのレーン9〜16)。直接配列決定解析によって、増幅された産物が正しい配列であることが確認された。Pの長さの影響もまた試験した。30量体Pと末端が共通であり、そして5’末端が5ヌクレオチド分長い35量体Pで同様の結果を得た(図18C)。3’末端で野生型配列に特異的な他のP(アシクロTMPおよびddTMPを持つ)もまた試験し、同様の結果を得た。
[0295]上記のモデル系を用いて、ファミリーII DNAポリメラーゼVent(エキソ−)およびPfu(エキソ−)を試験した。アシクロヌクレオチドブロッカーおよび3’末端での完全マッチを用いると、1つのPおよび1つの相対するブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを用いたPAP(図18Dおよび18Eのレーン1および2)によって、そしてP1およびP2の2つの相対するPを用いたPAP(2つの相対するPが3’末端で1ヌクレオチド重複する、PAPの特別な型)(図18Dおよび18Eのレーン3)によって、突然変異テンプレートが効率的に増幅された。しかし、P1およびP2が3’末端で野生型テンプレートにミスマッチするため、野生型テンプレートからは産物がまったく生じず、特異性が示された(図18Dおよび18Eのレーン5〜7)。3’ジデオキシヌクレオチドでブロッキングされたPを用いると、Vent(エキソ−)およびPfu(エキソ−)ポリメラーゼは、増幅不能であった(図18Dおよび18Eのレーン9〜16)。直接配列決定解析によって、P1/O1およびP2/O2産物が正しい配列であることが確認された。遺伝子操作されたファミリーIIの始原菌DNAポリメラーゼであるAcycloPol(Perkin−Elmer)を用いて同様の結果を得た。Vent(エキソ−)およびPfu(エキソ−)DNAポリメラーゼが、なぜ3’ジデオキシリボヌクレオチドブロッカーを区別するのかは明らかでない。
他のブロッカー
[0296]これらの結果は、サンガー配列決定で用いる2つのターミネーターをPAPのブロッカーとして使用可能であることを立証する。ターミネーターはまた、AIDSなどのウイルス疾病の療法、および癌療法としても記載されてきており、例えば3’−デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)および2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)がある。DNAポリメラーゼは、その三リン酸型を合成鎖に取り込むことが可能であり、そして取り込みは伸長の終結を引き起こす(GardnerおよびJack、1999;Chengら、1987;St.Clairら、1987;UenoおよびMitsuya、1997)。3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)および2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)の一リン酸ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3’末端に位置した場合、HIV逆転写酵素またはその変異体による加ピロリン酸分解によって、除去可能である(Arionら、1998;Gotteら、2000;Meyerら、2000;Urbanら、2001)。これらの結果は、多様な種類のブロッカーに対する、そしてRNAテンプレートに対するPAPの適用を示す。
[0297]要約すると、TaqFS DNAポリメラーゼを用いると、3’アシクロヌクレオチドおよび3’ジデオキシヌクレオチドブロッカーで、そしてVent(エキソ−)およびPfu(エキソ−)DNAポリメラーゼを用いると、アシクロヌクレオチドブロッカーでのみ、効率的に、そして特異的に、PAP増幅が起こった。3’末端ヌクレオチドを加ピロリン酸分解によって除去可能であり、そして活性化されたオリゴヌクレオチドが伸長可能であるならば、他の3’末端伸長不能オリゴヌクレオチドおよび他のDNAポリメラーゼも使用可能である。
(実施例12)
Bi−PAPによる非常に稀なアレルの検出
λファージDNAテンプレート
[0298]挿入された大腸菌の野生型lacI遺伝子を含有する野生型λファージDNAテンプレート(Kohlerら、1991)をStratageneから購入した。Maniatisら(1982)にしたがって、SCS−8大腸菌細胞に形質転換したλファージプラークから、3つの突然変異λファージDNAテンプレートを調製した。これらは、それぞれ、lacI遺伝子中、ヌクレオチド190位でAからTの突然変異、ヌクレオチド369でTからGの突然変異、そしてヌクレオチド369でTからCの突然変異を含有する。260nmのUV吸光度によって、λファージDNAの量を測定した。
3’ジデオキシヌクレオチドを付加することによるP の合成
[0299]ターミナルトランスフェラーゼによって、オリゴデオキシヌクレオチドに3’末端ジデオキシヌクレオチドを付加した。混合物は、25μlの総体積を含有した:100mMカコジル酸カリウム(pH7.2)、2.0mM CoCl、0.2mM DTT、2nMのオリゴヌクレオチド、2.4mM 2’,3’−ddNTP(ddNTPに対する3’−OH末端のモル比は1:30であった)(Roche)、100Uのターミナルトランスフェラーゼ(Invitrogen)。反応を37℃で6時間インキュベーションし、そして次いで、最終濃度5mMでEDTAを添加することによって停止した。Centri−spin−20カラム(Princeton Separations)を用いて脱塩した後、30mMトリエタノールアミン/トリシン緩衝液(25℃でpH7.9)を用いて分離用7M尿素/16%ポリアクリルアミドゲル電気泳動によってPを精製した(Maniatisら、1982、Liuら、1999b)。260nmのUV吸光度によって、回収されたPの量を測定した。
[0300]少量の末端処理されていないオリゴヌクレオチドが、予期されぬPCR増幅を生じるであろうため、T4ポリヌクレオチドキナーゼによって、5’末端でP32P標識し、そして次いで、7M尿素/20%ポリアクリルアミドゲルを通じて電気泳動した。ゲルを過剰曝露しても、P産物のみが可視であった。99.99%より多いPが3’末端にジデオキシヌクレオチドを含有したと概算される。Pの純度は、加ピロリン酸分解が阻害されるpH8.3で、PCR産物が存在しないことによって支持された。
PAP増幅
[0301]lacI遺伝子のヌクレオチド190およびヌクレオチド369のBi−PAPアッセイを調べた。369位の上流のPが42ヌクレオチドであることを除いて、Pは40ヌクレオチドであった。各Pは、3’末端に配列特異的ヌクレオチドを含有した。PAP反応混合物は、25μlの総体積を含有した:50mM KCl、20mM HEPES/NaOH(25℃でpH6.9)、10mM (NHSO、1.5mM MgCl、各40μMの4種のdNTP(dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP)、各0.1μMのP、150μM NaPP、4%DMSO、1μCiの[α−32P]−dCTP(3000Ci/mmol、Amersham)、1UのAmpliTaqFS DNAポリメラーゼ(PE Applied Biosystems)、2000コピーのλファージDNAテンプレート、または別の箇所に記載したもの。周期条件は、92℃6秒間、68℃20秒間、および72℃20秒間で、全部で35周期であった。第一の周期前に、92℃1分間の変性工程を追加した。
[0302]標準的2.5%アガロースゲルを通じて、産物を電気泳動し、そしてCCDカメラ(Bio−Rad Gel Doc 1000)によるUV写真のため、エチジウムブロミドでゲルを染色した。
[0303]突然変異産物を、同じサイズの野生型産物から区別するため、非変性SSCPゲル電気泳動を行った(Oritaら、1989)。2倍体積の装填緩衝液(7M尿素および50%ホルムアミド)と反応物を混合し、煮沸し、そして氷上で迅速に冷却した。混合反応物10μl中の産物を、30mMエタノールアミン/Capsco緩衝液(pH9.6)(Liuら、1999b)を用い、8%非変性PAGE−PLUS(Amresco)ゲルを通じて4℃で電気泳動した。ゲルを乾燥させ、そしてオートラジオグラフィーのため、Kodak X−OMATTM ARフィルムに曝露した。各増幅産物から3つまたは4つのバンドがゲル上に見られた。上の1つまたは2つのバンドは、かなりの量の増幅産物が存在した結果、電気泳動中、変性一本鎖セグメントがハイブリダイゼーションしたために二重染色されたDNAであった。増幅産物の濃度が増加すると、上部バンドの強度がさらに増加する。
高効率PAP増幅
[0304]遺伝子操作されたDNAポリメラーゼ、TaqFSは、PAPの効率を非常に改善した。劇的により高い効率のため、PAPの条件をさらに最適化し、数コピーのλファージDNAまたはヒトゲノムDNAテンプレートから、PAPが直接増幅することを可能にした。反応構成要素および熱周期措置を最適化し、最適化には、:i)dNTPに対するPPi比を本質的に一定に維持しながら、PPi濃度を減少させること、ii)低pH HEPES緩衝液(25℃でpH6.9)の使用、iii)(NHSOの添加、iv)TaqFS量の増加、およびv)より高いアニーリング温度が含まれる。
Bi−PAP
[0305]PAPは3.3x1011:1の選択度を有しうる(図19)。この潜在能力に近づくには、混乱させるエラー原因を排除する設計が必要である。λ DNAのlacI遺伝子のA190T突然変異をモデル系として用いる。1つの下流Pおよび1つのブロッキングされていない上流オリゴヌクレオチドを伴うPAPにおいて、ブロッキングされていない上流オリゴヌクレオチドからの伸長エラーは、目的の稀な突然変異を生成する可能性があり、したがって、選択度を減少させる可能性がある。TaqFSの誤った取り込みの率が、取り込まれるヌクレオチドあたり10−4であり、そしてありうる3つの誤った取り込みのうち1つが、新たに合成される上流鎖上にA→Tの突然変異を生成するならば、副次的な悪影響のため、選択度が、3.3x10−5に減少する。この限界を取り除くため、Bi−PAPが開発された(図20A)。Bi−PAPでは、下流および上流オリゴヌクレオチドがどちらも、3’末端で目的のヌクレオチドに特異的なPである。Pは3’末端で1ヌクレオチド重複する。
[0306]Bi−PAPは、テンプレートとしてlacI遺伝子を含有するλファージDNAを用いて、ヌクレオチド190位で効率的にそして特異的に増幅した(図20B)。ヒトゲノムDNAの添加は、増幅に影響を及ぼさなかった。Bi−PAPの79bp産物は、取り込まれていないPから容易に区別された。Pは活性化のため、3’末端に完全にマッチした領域を必要とするため、二量体を形成しなかった。ヌクレオチド369位で同様の結果が観察された。直接配列決定解析によって、増幅された産物が正しい配列であることが確認された。
Bi−PAPの感度および選択度
[0307]Bi−PAPが非常に高い選択度を持つことを立証するため、Bi−PAP反応に、1010コピーより多いDNAテンプレートを用いた。λ DNA 1μgは2x1010ベクターゲノムを含有するが、ヒトゲノムDNA 1μgは3.3x10ゲノムしか含有しないため、大腸菌のlacI遺伝子を含有するλ DNAをモデル系として選択した。この実験室において、野生型λ DNAが混入している可能性を回避するため、突然変異Pを用いた突然変異特異的Bi−PAPアッセイを選択して野生型λ DNAを増幅した。λファージプラークに感染した大腸菌を調べることによって、野生型λ DNAにおけるlacI遺伝子の自発的突然変異の相対頻度は、10−9未満と概算される。
[0308]対応する突然変異λ DNAを用いた3つの突然変異特異的Bi−PAPアッセイを用いて、Bi−PAPの感度および選択度を調べた(定義に関しては表7の脚注を参照されたい)。各突然変異特異的Bi−PAPアッセイに関して、4つの力価測定実験を行った(図21A〜21C)。実験Iは、どのくらい多くの突然変異Pが野生型DNAテンプレートを「許容」しうるかを試験した(すなわち検出可能突然変異産物を生じない野生型テンプレートの最大コピー数)。野生型λ DNAを2x1010コピー〜2x10コピーまで力価決定した。最大許容度は、3つの突然変異特異的Bi−PAPアッセイに関して、それぞれ、2x10〜2x1010、2x10〜2x10、および2x10〜2x10であった(図21A〜21C)。実験IIは、Bi−PAPの感度を試験した。突然変異λ DNAを2x10〜0コピーまで力価決定した。感度に対する最大許容度(実験I)の比が選択度である。多量の野生型テンプレートの存在下(実験III)または多量のヒトゲノムDNAの存在下(実験IV)で実験IIを繰り返したが、影響はなかった(図21A;T369GおよびT369Cに関してはデータ未提示)。テンプレートコピー数とともに、用量反応を観察した。
表7
3つの突然変異特異的Bi−PAPアッセイの要約
Figure 0004500673
3つの突然変異特異的Bi−PAPアッセイの各々において、3’末端で1ヌクレオチド重複した2つの相対するPを用いた。Pは長さ40〜42ヌクレオチドである。これらは
Figure 0004500673
である。
lacI遺伝子において転写物の第一のヌクレオチドの位をヌクレオチド1位と指定する(Farabaugh、1978)。Pの3’ヌクレオチドは、示される位に位置し、そして対応する突然変異に相補的である。
感度は、突然変異特異的Bi−PAPアッセイを用いた際、検出可能な突然変異産物を生成する突然変異テンプレートの最少コピー数と定義される。感度は、実験IIで決定された(図21A〜21C)。
選択度は、突然変異特異的Bi−PAPアッセイを用いた際、産物が検出可能な突然変異テンプレートの最少コピー数に対する、産物が検出不能な野生型テンプレートの最大コピー数の比である。
[0309]ヌクレオチド190位および369位間の選択度のおよそ100倍の相異は:i)野生型λ DNAにおける10−7〜10−8の頻度の360位での自発的突然変異の存在、ii)Pオリゴヌクレオチドの不純物、iii)3’末端での完全なマッチに対する加ピロリン酸分解の特異性、および正しいヌクレオチドを取り込むDNAポリメラーゼの忠実性が配列背景と関連しており、II型非特異的増幅が10−7〜10−8の頻度で起こる可能性もあることに由来しうる。後者の場合、選択度の100倍の相異は、加ピロリン酸分解特異性の10倍の相異、および配列背景でのDNAポリメラーゼ忠実性の10倍の相異から生じうる。
[0310]大腸菌におけるλファージの自発的突然変異率は、遺伝子座間で多様であり、取り込まれるヌクレオチドあたり、平均10−9〜10−11である。実施例Iに見られる、増幅されたシグナルは、稀な自発的突然変異によって引き起こされた可能性がある。
[0311]ブロッキングされていないオリゴヌクレオチドは、Pには検出されなかったが、ジデオキシ末端が付加されていない、ブロッキングされていないオリゴヌクレオチドがPに混入して、不純物により副反応が起こる可能性がある。しかし、生成される産物は、特異的突然変異よりも野生型である可能性がはるかにより高いため(3.3x10:1)、この選択度は、少量のブロッキングされていないオリゴヌクレオチドによって、ひどくは限定されない可能性がある。
[0312]要約すると、Bi−PAPは、非常に高い感度および選択度を有する。Bi−PAPは、野生型アレル2x10までのコピー数から、一塩基置換を持つ稀な突然変異アレル2コピーを選択的に検出することも可能である。Bi−PAPは、目的のいかなる稀なアレルも検出する、単純で迅速な自動化可能な方法である。
(実施例13)
Bi−PAPによるマウス組織における突然変異負荷の測定
材料および方法
[0313]10日齢〜25ヶ月齢のマウスの肝臓、心臓、脂肪組織、大脳および小脳を迅速凍結し、そして使用するまで液体窒素下に保存した。Big Blueプロトコル(Stratagene取り扱い説明書マニュアル)にしたがって、DNAを抽出した。簡潔には、組織をホモジナイズし、そしてプロテイナーゼKで消化した。ゲノムDNAをフェノール/クロロホルムで抽出し、そしてエタノール沈殿した。DNAをTE緩衝液(10mM Tris/HCl、1mM EDTA、pH8.0)に溶解し、そして4℃で保存した。260nmのUV吸光度によって、マウスゲノムDNAの量を測定した。
[0314]lacI遺伝子のT369Gの突然変異特異的Bi−PAPアッセイ(アッセイB:ジデオキシヌクレオチドでブロッキングされ、3’末端で1ヌクレオチド重複した、2つの相対するPが:
Figure 0004500673
である)を、i)別に記載しない限り、反応が、マウスゲノムDNA(サイズ〜20kb)2μgを含有し;ii)他の構成要素を添加する前に、20μl(1.25xHEPES緩衝液、5%DMSO、MgCl不含)中のマウスDNAを100℃で2分間加熱し、そして氷上で迅速に冷却し;iii)第一の周期前に95℃1分間の変性工程を追加し;iv)変性工程が95℃10秒間であったことを除いて、上述のように行った。
[0315]25μl反応物のうち10μlを、10μlの変性装填緩衝液と混合し、煮沸し、そして氷上で迅速に冷却した。室温で、90mM TBE緩衝液を用いて、8% 7M尿素/PAGEゲルを通じて産物を電気泳動した。ゲルを乾燥させ、そしてオートラジオグラフィーのため、Kodak X−OMATTM ARフィルムに曝露した。
結果および考察
[0316]トランスジェニックマウス突然変異検出系によって、in vivoで自発的突然変異または誘導された突然変異の頻度およびパターンを決定することが可能である。Big Blue(登録商標)系は、突然変異標的として、大腸菌lacI遺伝子を含有する、染色体に組み込まれたλファージDNAを宿するトランスジェニックマウスを用いる(GrossenおよびVijg、1993;Gossenら、1989;Kohlerら、1990)。lacI遺伝子は、40のタンデム反復されたλ DNA中、各マウス二倍体ゲノム内に組み込まれている。
[0317]トランスジェニックマウス組織からゲノムDNAを単離し、そしてこれをλパッケージング抽出物と混合することによって、Big Blue(登録商標)突然変異検出系アッセイを行う。パッケージングされたλファージは大腸菌を感染させることが可能である。X−gal基質の存在下で、lacI突然変異体は、無色野生型プラークの背景上に青いプラークを生じさせる。観察された突然変異体は、マウスから圧倒的多数で得られる(Hillら、1999)。円形の青いプラークの数をプラーク総数で割ることによって、突然変異体頻度を決定する。この実験室において、5000の配列決定された突然変異体プラークのうち、多様な年齢、性別、および処置からスクリーニングした、総数149x10プラーク中、31のT369G突然変異体が見出された(頻度=2.1x10−7)。
[0318]哺乳動物細胞において、非常に稀な突然変異を測定するためのBi−PAPの有用性を評価するため、Big Blueマウス由来のゲノムDNAにおいて、T369G突然変異を解析した。lacI遺伝子を総数1.2x10コピー含有する25μl反応物において、2μgのマウスゲノムDNAを増幅した。T369Gに関する突然変異特異的Bi−PAPアッセイ(アッセイB)を18試料に関して二つ組で行った(図26A)。同様の数の試料を用いて、3つのカテゴリーの結果を定義した:1)6つの試料は2回陽性であった(5、11〜15)、2)7つの試料は1回陽性であった(1、3、6、9、16〜18)、そして3)5つの試料は2回陰性であった(2、4、7、8、10)。
[0319]各カテゴリーの2つの試料をさらに調べた(図26B〜26C、表8)。カテゴリー1において、最も強い増幅シグナルを持つ、2つの試料5および12(図26A)に関して、さらなる定量化のため、マウスゲノムDNAの0.5μgへの4倍希釈および0.125μgへの16倍希釈を行った(図26B)。各試料のT369G突然変異体頻度を概算すると、6つの試料間で370倍の範囲で多様であった(表8)。2.9x10−7のT369G突然変異体平均頻度は、Big Blue(登録商標)突然変異検出系を用いて4x10プラークから測定された2.1x10−7のT369G突然変異体平均頻度の50%以内であり、そしてこの突然変異を直接配列決定によって確認した。
表8
Bi−PAPによって測定された体細胞突然変異体頻度
Figure 0004500673
図26Aを参照されたい。
反応総数に比較したT369G突然変異の陽性シグナル数の比。
突然変異体がポワソン分布にしたがって反応物中に分布し、そして1以上の突然変異体が反応物中にある場合、増幅が陽性であり、そして突然変異体が反応物中にない場合、陰性であると仮定する式(反応あたりの突然変異体がゼロである頻度=e−x、xは反応あたりの突然変異体の平均数)を用いて、反応あたりのT369G突然変異体の平均数を概算する。
突然変異体がポワソン分布にしたがってマウスゲノムDNA中に分布し、そして1以上の突然変異体が検出において陽性であると仮定して、反応あたりのマウスゲノム中のlacI遺伝子のT369G突然変異体の頻度を概算する。2μgのlac1マウスゲノムDNAがlacI遺伝子を〜1.2x10コピー含有すると仮定して、試料12および5の各々に関して、総数〜6.0x10コピーのlacI遺伝子を概算に用い、そして試料3、9、7および10の各々に関して、〜2.9x10コピーを用いる。
[0320]25ヶ月齢の5匹のマウスの肝臓において、突然変異体頻度の370倍の変動が観察された。この大きな変動は、テンプレート1コピーを増幅するのが困難なためである可能性もある。この問題に取り組むため、各々の解析を少なくとも2回反復し、同様の結果を得た。例えば、試料9において、2μgのDNAを用いた14反応のうち7つが、1つの実験において陽性であり、4つのこうした反応のうち3つが別の実験で陽性であり、そして4つのこうした反応のうち2つが、第三の実験において陽性であった。試料7に関しては、8つの反応のうち1つが陽性であり、そして14の反応のうち1つが陽性であった。陽性反応から再増幅した後、産物を配列決定して、T369G突然変異を確認した。さらに、陽性対照(〜10コピーのT369Gを含む、2μgのlacIマウスDNA)および陰性対照(lacI標的を含まないマウスゲノムDNA、すなわちlacIマウスDNA)を行った。さらなる陽性対照として、反応あたりの突然変異λ DNAのコピー数が、lac1ゲノムDNAキャリアーの存在下で、2倍連続希釈されている、再構築実験を行った。1コピーと同程度に低いコピー数のテンプレートから、再現可能な増幅が立証された(図26B、26C)。
[0321]遡及的にみると、マウス間のT369G突然変異体頻度は、過剰に分散されており、超ポワソン分布(hyper−Poisson distribution)を示す(Nishinoら、1996;Piegorschら、1994)ため、6匹のマウス間で観察されたT369G突然変異体の頻度の370倍の変動は、驚くべきことでない可能性もある。6匹のマウス間で、Big Blue(登録商標)突然変異検出系によってアッセイされる総突然変異体頻度における動物間変動は、3〜4倍である可能性もあり、1または数匹のマウスにおいて、有意な創始者効果(founder effect)があった。変動は、2x10−5〜8x10−5の範囲である可能性もあり、これは1,000を越える、異なる突然変異の合計である。ここで、T369G突然変異のみをアッセイする。シグナルの大部分は、二重鎖突然変異テンプレートから生じると予期される(Hillら、1999)が、DNA複製またはDNA修復から主に得られる、分離されていないミスマッチ中間体もまた、シグナルを生じるであろうことに注目すべきである。したがって、感度の物理的限界は、実際、反応あたりの二重鎖DNA分子の半分である。
[0322]結論として、我々は、Bi−PAPが、アッセイに応じて、10−7〜10−9と同等に低い頻度の非常に稀な突然変異を解析可能であることを立証する。Bi−PAPは、哺乳動物ゲノムDNAから直接、体細胞突然変異1コピーを検出可能であることを示す。アッセイ間変動は、アッセイ感度における遺伝子座特異的多様性、または試料中のアッセイされた突然変異体の頻度を反映しうる。これらの可能性間を区別するのに、より多くの研究が必要である。哺乳動物DNAでは、巨大なゲノムサイズによって、テンプレートのコピー数が限定される。2μgのゲノムDNAは、600,000マウス一倍体ゲノムしか含有しないが、なお反応物は粘性である。Big BlueマウスゲノムDNAの我々の解析は、一倍体ゲノムあたり20コピーのlacI遺伝子によって促進された。ヒトにおける突然変異負荷を測定するため、粘性を減少させる(例えば超音波処理によってDNAを小さいセグメントに剪断する)ことによって、1つの反応あたりのゲノムDNAを少なくとも3倍増加させることも可能であり、そして反応体積を100μlに拡大することによって、さらに4倍増加させうる。ヒトゲノムDNA中の突然変異負荷は、実質的に同一の配列のセグメントを解析することによって、容易になる可能性もあり、例えば血友病Aにおける一般的なインバージョン突然変異(Lakichら、1993)に関与する、99%の配列同一性を持つ、ヒトX染色体上の3つの9.6kbセグメントがある。線虫(C−elegans)、ショウジョウバエ(Drosophila)、およびヒト・ミトコンドリアゲノムまたは慢性ウイルス感染(例えばB型肝炎)を含む、より複雑でないゲノムもまた、このプロトコルで解析可能であるはずである。
[0323]本発明は、本発明の好ましい態様の詳細に言及することによって、本特許出願中に開示されているが、該開示が限定する意味でなく、例示することを意図するのを理解すべきであり、これは、本発明の精神および付随する請求項の範囲内で、当業者には変更が容易に思い浮かぶであろうことを意図するためである。
参考文献一覧
Figure 0004500673
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[0083]図1は、アレル特異的PAP(PAP−A)による、稀な突然変異検出の概略図を示す。 [0084]図2は、双方向性PAP−A(Bi−PAP−A)の概略図を示す。 [0085]図3は、プログラム可能光化学オリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイ上で行った、PAPに基づく再配列決定(PAP−R)の概略図を示す。 [0086]図4は、GからAへの突然変異を検出する、マイクロアレイに基づく再配列決定の概略図を示す。 [0087]図5は、連結仲介PCR(LM−PCR)の概略図を示す。 [0088]図6Aおよび6Bは、Dドーパミン受容体遺伝子のヌクレオチド229でGアレルを検出するためのPAPの使用を例示する概略図である。本明細書の実施例1に詳細に該方法を記載する。 [0089]図6Cは、ヒト・ドーパミン受容体遺伝子のG/G、A/AおよびG/A遺伝子型からのPAPのオートラジオグラムである。 [0090]図7Aおよび7Bは、PASAに比較してPAPの特異性が増進していることを例示する図解である。 [0091]図8Aは、本明細書の実施例1で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 図8Bは、本明細書の実施例1で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 [0092]図9は、本明細書の実施例1で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 [0093]図10は、本明細書の実施例1で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 [0094]図11Aは、PAP効率の増進を例示する概略図である。 [0095]図11Bは、ヒト・ドーパミン受容体遺伝子のG/G、A/AおよびG/A遺伝子型からのPAPのオートラジオグラムである。 [0096]図12Aは、本明細書の実施例2で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 図12Bは、本明細書の実施例2で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 図12Cは、本明細書の実施例2で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 図12Dは、本明細書の実施例2で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 図12Eは、本明細書の実施例2で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 [0097]図13は、本明細書の実施例2で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 [0098]図14は、本明細書の実施例2で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 [0099]図15は、本明細書の実施例3で得た試料の電気泳動結果を示すオートラジオグラムである。 [0100]図16A〜16Bは、LM−PAPによるUVフットプリンティングを示す。図16Aは、ドーパミンD受容体遺伝子に関して、アレル特異的LM−PAP対アレル特異的LM−PCRを示す。図16Bは、pgk遺伝子に関するLM−PAPを示す。 [0101]図17A〜17Bは、それぞれPAPおよびBi−PAPを用いた、ヒト(図17A)およびマウス(図17B)ゲノムDNAからのPAP直接増幅を示す。 [0102]図18Aは、3’末端アシクロヌクレオチドでブロッキングされたPを用いたPAP増幅を示す。図18A:モデル:lacI遺伝子の二重鎖DNAテンプレートを示す。突然変異テンプレートは、lacI遺伝子のヌクレオチド369位でGを含有し、一方、野生型テンプレートは、ヌクレオチド369位でTを含有する。P=加ピロリン酸分解活性化可能オリゴヌクレオチド。Pは、3’末端にアシクロNMPまたはddNMPを有する。Pは、3’末端で、突然変異テンプレートに特異的であるが、野生型テンプレートにミスマッチする(表6)。O=オリゴヌクレオチド。それぞれ、P1およびO1、P2およびO2、またはP1およびP2を用いてPAPを行った。 図18Bは、3’末端アシクロヌクレオチドでブロッキングされたPを用いたPAP増幅を示す。図18B:30量体のPを用いたPAP:Pは、3’末端で、突然変異テンプレートに特異的であるが、野生型テンプレートにミスマッチする。レーン1〜8では、3’末端アシクロヌクレオチドでブロッキングされたPが存在する。レーン9〜16では、比較のため、3’末端ジデオキシヌクレオチドでブロッキングされたPが存在する。レーン1〜4および9〜12では、突然変異テンプレートを用いる。レーン5〜8および13〜16では、野生型テンプレートを用いる。PAP産物およびPを、そのサイズとともに示す。レーンMは、φX174−PUC19/HaeIII DNAマーカー120ngである。 図18Cは、3’末端アシクロヌクレオチドでブロッキングされたPを用いたPAP増幅を示す。図18C:35量体Pを用いたPAP:実験は、3’末端が30量体Pと共通であり、そして5’末端が5ヌクレオチド長い35量体Pを用いたことを除いて、図18Bと同一である。 図18Dは、3’末端アシクロヌクレオチドでブロッキングされたPを用いたPAP増幅を示す。図18D:Vent(エキソ−)ポリメラーゼを用いたPAP。実験は、Vent(エキソ−)を用いたことを除いて、図18Bと同一である。 図18Eは、3’末端アシクロヌクレオチドでブロッキングされたPを用いたPAP増幅を示す。図18E:Pfu(エキソ−)ポリメラーゼを用いたPAP。実験は、Pfu(エキソ−)を用いたことを除いて、図19Bと同一である。 [0103]図19は、PAPが、多量の野生型テンプレート中、稀な突然変異を検出する、高い選択度を有することを示す。ヌクレオチド190位の例において、突然変異特異的Pは、3’末端で、突然変異Aテンプレートにマッチするが、野生型Tテンプレートにミスマッチする。特異的でそして効率的な増幅を太い矢印で示す。突然変異Aテンプレートにハイブリダイズさせた際、Pは3’末端ジデオキシヌクレオチドから直接は伸長不能であり、加ピロリン酸分解によって3’末端ddTMPが除去されなければならず、そして次いで活性化されたオリゴヌクレオチドが効率的に伸長される。Tテンプレート由来の2種の非特異的増幅をI型およびII型と示す。ミスマッチ加ピロリン酸分解が起こって、続く周期のテンプレートとして効率的な増幅を支持しないであろう野生型産物を生成する場合、非特異的増幅はほとんど生じない(I型)(エラーを細い矢印で示し、そしてエラーは10−5と同程度に低い頻度と概算される)。ミスマッチ加ピロリン酸分解および誤った取り込みの両方が非常に稀に起こって、突然変異産物が生じる場合(II型)(エラーを細い矢印で示し、そしてエラーは3.3x10−11と同程度に低いカップリング頻度と概算される)。ひとたびエラーが起これば、続く周期で、突然変異産物は指数関数的に増幅されることが可能であり、そしてしたがって、これは選択度を決定する。 [0104]図20AはBi−PAP増幅を示す。図20A:稀な突然変異を検出するBi−PAPの概略図。ヌクレオチド190に関して2つの突然変異Pを用いた突然変異特異的アッセイを示す。下流および上流Pは、それぞれ、3’末端にジデオキシTおよびジデオキシAを含有する。これらは、3’末端で、ヌクレオチド190のT:Aアレルに特異的である(右側)が、A:T野生型アレルにミスマッチしている(左側)。Pは長さ40ヌクレオチドであり、そして3’末端で1ヌクレオチド重複する。左側では、ミスマッチのため、野生型テンプレートから実質的な産物は生成されない。右側では、突然変異テンプレートから、突然変異産物が効率的に産生される。 図20BはBi−PAP増幅を示す。図20B:λ DNAからのBi−PAP直接増幅。ヌクレオチド190での野生型および突然変異特異的Bi−PAPアッセイ各々を用いて、λ DNAからlacI遺伝子の79bpセグメントを増幅した。レーン1〜3の野生型アッセイでは、2つの野生型Pは、それぞれ、3’末端ddAおよびddTを有する。レーン4〜6およびレーン7〜9の突然変異特異的アッセイでは、2つの突然変異Pは、それぞれ、3’末端に、ddTおよびddAを持つ。レーン1、4、および7では、各反応に2000コピーの野生型テンプレートを添加した。レーン2、5、および8では、各反応に2000コピーの突然変異テンプレートを添加した。レーン3、6、および9では、テンプレートをまったく添加しなかった。レーン7〜9では、200ngのヒトゲノムDNAをキャリアーとして添加した。産物およびPを示す。レーンMは、φX174−PUC19/HaeIII DNAマーカー120ngである。 [0105]図21Aは、Bi−PAPの感度および選択度に関するテンプレートの力価決定を示す。実験Iでは、突然変異Pを用いて、野生型テンプレートを増幅し、突然変異産物を生成した。実験II、IIIおよびIVでは、突然変異テンプレートを増幅して、突然変異産物を生成した。図21A:A190Tに関する突然変異特異的Bi−PAPアッセイ。実験Iにおいて、野生型λ DNAのコピー数をレーン1〜5に示す。レーン6は、DNAを含まない陰性対照である。実験IIにおいて、突然変異λ DNAのコピー数をレーン7〜11に示す。レーン11(0.2コピー)は、コピー数の希釈が正確であることを補助する、陰性対照である。レーン12は、DNAを含まない陰性対照である。実験IIIにおいて、野生型λ DNA 2x10コピーの存在下での突然変異λ DNAのコピー数をレーン13〜17に示す。レーン18は、野生型λ DNAしか含まない陰性対照である。実験IVにおいて、100ngのヒトゲノムDNAの存在下での突然変異λ DNAのコピー数をレーン19〜23に示す。レーン24は、ヒトゲノムDNAしか含まない陰性対照である。レーン「C野生型」は、野生型Pを用いて、2000コピーの野生型λ DNAを増幅した野生型産物対照である。レーン「C突然変異」は、突然変異Pを用いて、2000コピーの突然変異λ DNAを増幅した突然変異産物対照である。ユニークな移動度の野生型および突然変異産物を示す。 図21Bは、Bi−PAPの感度および選択度に関するテンプレートの力価決定を示す。実験Iでは、突然変異Pを用いて、野生型テンプレートを増幅し、突然変異産物を生成した。実験II、IIIおよびIVでは、突然変異テンプレートを増幅して、突然変異産物を生成した。図21B:T369Gに関する突然変異特異的Bi−PAPアッセイ。 図21Cは、Bi−PAPの感度および選択度に関するテンプレートの力価決定を示す。実験Iでは、突然変異Pを用いて、野生型テンプレートを増幅し、突然変異産物を生成した。実験II、IIIおよびIVでは、突然変異テンプレートを増幅して、突然変異産物を生成した。図21C:T369Cに関する突然変異特異的Bi−PAPアッセイ。 [0106]図22は、Bi−PAP再配列決定のためのPマイクロアレイの設計を示す。Bi−PAPを再配列決定に用いて、マイクロアレイ上の既知の領域において、未知の突然変異を検出することも可能である。野生型テンプレートにしたがってPを設計する。各Bi−PAPの2つの相対するPをマイクロアレイスポットに係留する。各対の矢印は、1つのヌクレオチド位に対する4つのBi−PAPに相当する。テンプレート上に突然変異が示され、そしてこれは6つの重複したPに渡る。マイクロアレイ上、多くのBi−PAPを平行してプロセシングすることも可能である。 [0107]図23AはBi−PAP再配列決定の概略図を示す。図23A:野生型配列の検出。これはマイクロアレイを詳しく見たものである。野生型配列にしたがって、Pを設計する。ヌクレオチドAの位で、4対のPを用いて4つのBi−PAPを合成する。4つの下流Pは、3’末端で、ddAMP、ddTMP、ddGMPまたはddCMPいずれかが野生型配列および3つのありうる一塩基置換に対応することを除いて、同一配列を有する。4つの対応する上流Pは、3’末端がddTMP、ddAMP、ddCMPまたはddGMPいずれかであることを除いて、同一配列を有する。各対のPは、3’末端で、1ヌクレオチド重複を有する。次のヌクレオチドC上で、別の4対のPが合成される(未提示)。野生型試料を添加した場合、野生型Bi−PAPのみが、蛍光標識された特異的産物を生成する。この方式で、1kb領域をスキャンするには、8000のPを必要とする。 図23BはBi−PAP再配列決定の概略図を示す。図23B:AからTの突然変異の検出。突然変異ヌクレオチドT上で、突然変異特異的Bi−PAPが突然変異産物を生成する。次のヌクレオチドG上では、Pの各対が1または2のミスマッチを含有するため、Bi−PAPの産物はまったく生成されない(未提示)。 [0108]図24Aは、Bi−PAP再配列決定マイクロアレイを示す。図24A:野生型配列の検出。野生型配列にしたがって、各ヌクレオチド位に関して4対のPを設計する。各対のPは下流方向および上流方向であり、そして3’末端に、重複し、そして相補的な1つのヌクレオチドを有する。野生型P対は、各ヌクレオチド位上で特異的に増幅される。野生型P対のすべてが特異的に増幅される場合、野生型配列を決定可能である。 図24Bは、Bi−PAP再配列決定マイクロアレイを示す。図24B:AからTへの突然変異の検出。突然変異テンプレートを用いると、突然変異特異的Bi−PAPが増幅される。突然変異特異的Bi−PAPによって集中するBi−PAPシグナルがないウィンドウがあり、そして両側に3つの連続するヌクレオチドがある。対の特異的下位配列は、長さ7ヌクレオチドと推測される。ヘテロ接合体突然変異であったとしても、いかなる未知の一塩基置換も決定可能である。また、小さい欠失および挿入を検出し、そして位置決定することも可能である。 [0109]図25は、マイクロアレイ上のPAP新規配列決定を示す。PAPはまた、未知の領域の新規DNA配列決定にも使用可能である。対の特異的下位配列は、長さ15ヌクレオチドと推測される。対の特異的下位配列の完全なセットのP対は、既知のアドレスを持つマイクロアレイ上にある。未知のDNA試料を添加した後、Bi−PAPを行う。すべての増幅されたB−PAP産物を収集し、そして次いで、一ヌクレオチド重複によって、増幅されたP対の対の特異的下位配列をアセンブリする。こうして未知の相補配列を再構築する。 [0110]図26A〜26Cは、体細胞突然変異の検出を示す。図26A:lac1トランスジェニックマウスの18のゲノムDNA試料を選択した。アッセイBを用いて、各試料2μgのゲノムDNAを増幅して、T369G突然変異を2回検出した。試料1〜10は、25ヶ月齢マウスの肝臓由来である。試料11〜14は、6ヶ月齢マウスの心臓(試料11、13および14)および脂肪(試料12)由来である。試料15〜18は10日齢マウスの脳由来である。P=突然変異λ DNAを増幅した陽性対照、N=DNAを含まない陰性対照、+=増幅産物、−=産物なし。図26B:アッセイBを行った。レーン11〜12、13〜16および17〜20では、各反応において、それぞれ、試料12のlac1マウスゲノムDNA 2μg、0.5μgおよび0.125μgを用いた。レーン1〜10は対照であり;2倍連続希釈によって、反応あたりの突然変異λ DNAのコピー数を再構築した。レーン1〜10および13〜20では、各反応はまた、1μgのlac1マウスゲノムDNAキャリアーも含有した。ss=一本鎖、ds=二本鎖。図26C:アッセイBを行った。レーン11〜14では、各反応で、試料3のlac1マウスゲノムDNA 2μgを用いた。レーン15〜18では、各反応で、試料9のlac1マウスゲノムDNA 2μgを用いた。レーン1〜10は対照であり;反応あたりの突然変異λ DNAのコピー数を示す。各対照反応はまた、1μgのlac1マウスゲノムDNAキャリアーも含有した。
配列表
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Claims (9)

  1. 核酸を検出する方法であって:
    (a)核酸に2つのオリゴヌクレオチドPをアニーリングさせ、ここで各オリゴヌクレオチドPは伸長不能3'端を有し、各オリゴヌクレオチドPの3'伸長不能末端は加ピロリン酸分解によって除去可能であり、一方のオリゴヌクレオチドPともう一方のオリゴヌクレオチドPは、それぞれの3'端で、少なくとも1ヌクレオチド重複し、そして一方のオリゴヌクレオチドPは第一の核酸鎖にアニーリングし、そしてもう一方のオリゴヌクレオチドPは、第一の核酸鎖の相補体である核酸鎖にアニーリングする;
    (b)加ピロリン酸分解によって、アニーリングした第一及び第二のオリゴヌクレオチドPの3'伸長不能末端を除去して、ブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを産生し;
    (c)ブロッキングされていないオリゴヌクレオチドを伸長し;そして
    (d)伸長されたオリゴヌクレオチドを検出する;
    ことを含んでなる、前記方法。
  2. 工程(a)、(b)及び(c)を反復する、請求項1に記載の方法。
  3. 核酸を合成する方法であって:
    (a)第一のオリゴヌクレオチドPを、第一の核酸鎖にアニーリングさせ、ここで第一のオリゴヌクレオチドPは、伸長不能な3'末端を有し、かつ、第一のオリゴヌクレオチドPの前記伸長不能3'端は加ピロリン酸分解によって除去可能である;
    (b)第二のオリゴヌクレオチドPを、第一の核酸鎖の相補体である第二の核酸鎖にアニーリングさせ、ここで第二のオリゴヌクレオチドPは、伸長不能な3'末端を有し、第二のオリゴヌクレオチドPの前記伸長不能3'端は加ピロリン酸分解によって除去可能であり、かつ、第一のオリゴヌクレオチドPは第二のオリゴヌクレオチドPと、各々の3'端で、少なくとも1ヌクレオチド重複する;
    (c)加ピロリン酸分解によって、第一の核酸鎖にアニーリングした第一のオリゴヌクレオチドPの3'伸長不能末端及び第二の核酸鎖にアニーリングした第二のオリゴヌクレオチドPの3'伸長不能末端を除去し;そして
    (d)核酸ポリメラーゼを用いて、ブロッキングされていない第一及び第二のオリゴヌクレオチドを伸長する;
    ことを含んでなる、前記方法。
  4. 工程(a)〜(d)を反復する、請求項3に記載の方法。
  5. 第一及び第二のオリゴヌクレオチドPの3'伸長不能末端が、核酸ポリメラーゼによって伸長不能であるが加ピロリン酸分解によって除去可能である、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が、3'デオキシヌクレオチド、2',3'-ジデオキシヌクレオチド、アシクロヌクレオチド、3'-デオキシアデノシン(コルジセピン)、3'-アジド-3'-デオキシチミジン(AZT)、2',3'-ジデオキシイノシン(ddI)、2',3'-ジデオキシ-3'-チアシチジン(3TC)及び2',3'-ジデヒドロ-2',3'-ジデオキシチミジン(d4T)からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
  7. 核酸ポリメラーゼを用いて加ピロリン酸分解を行う、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  8. 核酸ポリメラーゼを用いて伸長を行う、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  9. 伸長工程で存在するヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が標識を含有し、そして伸長されたオリゴヌクレオチド中の標識の存在が検出される、請求項1に記載の方法。
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