JP4499987B2 - 非−標準塩基を使用する固体支持体アッセイ系及び方法 - Google Patents
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Description
(発明の背景)
DNA又はRNAの断片を含むオリゴヌクレオチドをアッセイするための多種多様な方法が開発されている。このようなアッセイは典型的には、試料が特定の標的オリゴヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含んでいるかどうかの決定に向けられている。一部の例において、オリゴヌクレオチド配列は、多くのアレル配列の場合のように、わずかに数個のヌクレオチドが異なっているだけである。一塩基多型(SNP)は、単一のヌクレオチドが異なるアレルを意味する。例えこの単一ヌクレオチドの差異であっても、少なくとも一部の例において、関連した遺伝的反応又は形質を変化することができる。従って、どのアレルが試料中に存在するかを決定するためのアッセイ技術は、密に関連した配列を識別するのに十分な感度がなければならない。
【0002】
多くのアッセイ技術は、複数の成分を含み、その各々はこのアッセイにおいて別の成分(複数)にハイブリダイズする。成分間の非-特異的ハイブリダイゼーション(すなわち、2種の非-相補配列のハイブリダイゼーション)は、このアッセイにおいてバックグラウンドノイズを生じる。例えば、密に関連しているが同じではない配列は、塩基対形成が2本の一本鎖が相補的でない位置で中断されているような不完全な二重鎖を形成し得る。非-特異的ハイブリダイゼーションは、例えば、多くのアレル及び特にSNPアレルにとってそうであるように、ハイブリダイゼーション成分が類似配列を有する場合に増大する。従って、例えば、どのアレルが試料中に存在するかを決定するためのハイブリダイゼーションアッセイは、非-特異的ハイブリダイゼーションを低下させる方法又は非-特異的ハイブリダイゼーションのこのアッセイに対する影響を低下する方法により恩恵を受けるであろう。
【0003】
(発明の簡単な概要)
一般に本発明は、オリゴヌクレオチドをアッセイする方法、キット及び組成物に関する。加えて本発明は、非-標準塩基を使用し、オリゴヌクレオチドをアッセイする方法、キット及び組成物に関する。ひとつの態様は、検体-特異的配列をアッセイする方法を提供する。支持体(例えば、単一の固体支持体、例えばチップもしくはウェファー、又は粒子支持体)に結合(カップリング)した少なくとも1個の非-標準塩基を有する分子認識配列を含む捕獲オリゴヌクレオチドは、適切なハイブリダイゼーション条件下で試料と接触され、試料中の標的オリゴヌクレオチドが存在する場合にはこれとハイブリダイズする。この標的オリゴヌクレオチドは、捕獲オリゴヌクレオチドの分子認識配列に相補的なタグ付け配列及び検体-特異的配列又は検体-特異的配列の相補配列を含む。標的オリゴヌクレオチドの捕獲オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが検出される。
【0004】
別の態様は、検体-特異的配列をアッセイする別法を提供する。支持体にカップリングしており検体-特異的配列の少なくとも一部と同じ又は相補的である分子認識配列を含む捕獲オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション条件下で、試料と接触され、標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。この標的オリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の非-標準塩基を含むタグ付け配列並びに検体-特異的配列又は検体-特異的配列の相補配列を含む。この捕獲オリゴヌクレオチドは、鋳型として標的オリゴヌクレオチドを用い酵素的に伸長され、相補的非-標準塩基はタグ配列の非-標準塩基の対向側に取込まれる。レポーター基も、捕獲オリゴヌクレオチドの伸長された部分に取込まれる。標的オリゴヌクレオチドの捕獲オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが検出される。
【0005】
更に別の態様は、検体-特異的配列をアッセイする別法を提供する。検体-特異的配列を有する検体は、第一のプライマー及び第二のプライマーと接触される。第一のプライマーは、タグ配列及び検体の第一の配列に相補的な配列を含む。第二のプライマーは、検体の第二の配列に相補的な配列及び非-標準塩基を含む。これらの第一及び第二のプライマーは、酵素的に伸長され、各々、標的オリゴヌクレオチド及び第二のオリゴヌクレオチドを形成する。標的オリゴヌクレオチド及び第二のオリゴヌクレオチドの一方は、検体-特異的配列を含み、他方は、検体-特異的配列に相補的な配列を含む。第一のプライマーの伸長は、第二のプライマーの非-標準塩基に遭遇した場合に、実質的に中断される。第二のプライマーの非-標準塩基に相補的な非-標準塩基は、伸長された第一のプライマー中で第二のプライマーの非-標準塩基の対向側に取込まれる。支持体に結合(カップリング)した検体-特異的配列の少なくとも一部と同じ又は相補的である捕獲オリゴヌクレオチド分子認識配列は、標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするハイブリダイゼーション条件下で接触され、タグ配列及び検体-特異的配列又はそれらの相補配列を含む標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする。標的オリゴヌクレオチドの捕獲オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが検出される。
【0006】
別の態様は、前述の方法を適用するためのキットを含む。このキットは、支持体(複数)及び捕獲オリゴヌクレオチドを含む。これらのキットは、標的オリゴヌクレオチド又は検体から標的オリゴヌクレオチドを作成する成分も含む。このような成分は、例えば、ポリメラーゼ並びに検体の配列に相補的である第一及び第二のプライマーを含み、ここで第一又は第二のプライマーのいずれかは、タグ配列を含む。一部の方法に関して、キットは、取込みのための非-標準塩基又は非-標準塩基のヌクレオチド三リン酸も含む。
【0007】
前述の本発明の概要は、本発明の明らかにされた各態様又は全ての履行を説明することを意図するものではない。下記の図面及び詳細な説明は、これらの態様をより詳細に例証するものである。
【0008】
本発明は、様々な修飾型及び変更型に合わせることができるが、それらの詳細は、図面の例により示されかつ詳細に説明されるであろう。しかし、本発明は、説明された特定の態様に限定されるものではないことは理解されなければならない。対して、本発明は、本発明の精神及び範囲内にある全ての修飾、同等物及び変更に及ぶ。
【0009】
(好ましい態様の詳細な説明)
本出願は、2000年10月14日に出願された米国特許仮出願第60/240,397号、2001年4月10日に出願された米国特許仮出願第60/282,831号、及び2001年5月18日に出願された米国特許出願第09/861,292号、及び2001年5月22日に出願された米国特許仮出願第60/293,259号に関し、これらは全て本願明細書に参照として組入れられている。
【0010】
本発明は、オリゴヌクレオチドのアッセイ及びアッセイする方法に関する。特に本発明は、1種又は複数の非-標準塩基を用いるオリゴヌクレオチドのアッセイ及びアッセイする方法に関する。本発明はそのように限定されるものではないが、本願明細書に説明された本発明の様々な局面の理解は、下記に示された議論を通じて得られるであろう。非-標準塩基の使用に関する他の関連アッセイ法は、2000年10月14日に出願された米国特許仮出願第60/240,397号に開示されている。
【0011】
本明細書において使用される「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)のような高分子、又は塩基が塩基対を形成する能力もしくは相補的化学構造とハイブリダイズする能力を有するような化学骨格により接続された塩基として通常称されるいずれかの配列を含む。適当な非-ヌクレオチド性化学骨格は、例えば、ポリアミド骨格及びポリモルホリノ骨格を含む。用語「核酸」は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、又はポリヌクレオチドの配列、及びそれらの断片又は一部を含む。この核酸は、例えば、天然の供給源から単離され、組換えにより作出され、または人工的に合成された、どのような適当な形で提供することもでき、一本鎖又は二本鎖であってよく、及びセンス又はアンチセンス鎖を表し得る。
【0012】
用語「オリゴヌクレオチド」は、当該技術分野において現在利用可能な技術、例えば、固体支持体核酸合成、DNA複製、逆転写、制限酵素切断、ランオフ転写などを用いて調製されるような、一般に短鎖(例えば、長さが約100ヌクレオチド未満、及び典型的には長さが6〜50ヌクレオチド)の核酸配列である。このオリゴヌクレオチドの正確なサイズは、典型的には様々な要因によって決まり、これは次に該オリゴヌクレオチドの最終的な機能又は用途によって決まるであろう。
【0013】
「配列」は、ヌクレオチドの方向づけられた配置を意味する。
用語「試料」は、標本又は培養物(例えば、微生物学的培養物)に加え、生物試料、生物学的液体由来の試料、及び非-生物学的給源からの試料を含む。
【0014】
用語「検体」は、試料中に存在することが疑われる核酸を意味する。この検体は、アッセイの対象である(例えば、アッセイは、試料中の検体の存在、非存在、濃度又は量を決定する)。この検体は、直接的又は間接的にアッセイされる。間接アッセイに関連する少なくとも一部の態様において、試料中に検体が存在するならば、これは鋳型として使用され、例えばPCR技術を使用し、標的オリゴヌクレオチドを形成する。その後この標的オリゴヌクレオチドは、試料中の検体の存在、非存在、濃度又は量を示すためにアッセイされる。
【0015】
用語「標的オリゴヌクレオチド」は、アッセイ手順時に実際にアッセイされるオリゴヌクレオチドを意味する。この標的オリゴヌクレオチドは、例えば、検体であることができ、もしくは検体の配列と同じ又は相補的である検体-特異的配列を含むオリゴヌクレオチドであることができる。例えば、標的オリゴヌクレオチドは、検体又は検体の一部のPCR増幅産物であることができる。
【0016】
用語「捕獲オリゴヌクレオチド」は、分子認識配列を有し、かつタグ配列又は分子認識配列と相補的な検体特異的配列を有する標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように固体表面に結合(カップリング)したオリゴヌクレオチドを意味し、これにより固体表面上の標的オリゴヌクレオチドが捕獲される。
本願明細書において使用される「分子認識配列」は、タグ配列又は標的オリゴヌクレオチドの検体-特異的配列に相補的なオリゴヌクレオチド配列である。
【0017】
本願明細書において使用される用語「相補的」又は「相補性」は、核酸(すなわち、オリゴヌクレオチド又は標的核酸のようなヌクレオチド配列)に関して使用される場合は、塩基対形成則により関連付けられた配列を意味する。天然の塩基に関して、塩基対形成則は、ワトソン(Watson)及びクリック(Crick)により明らかにされたものである。非-標準塩基に関して、本願明細書に説明されたように、塩基対形成則は、Watson-Crick塩基対形成則に類似した方法での水素結合の形成、又は疎水性、エントロピー、又はファンデルワールス力による特異的塩基対形成を意味する。例えば、配列「T-G-A」に関して、相補的配列は「A-C-T」である。相補性は、核酸の塩基の一部のみが塩基対形成則に従いマッチするような「部分」であることができる。あるいは、核酸間の「完全な」又は「全体の」相補性であることができる。核酸鎖間の相補性の程度は、それらの核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に影響を及ぼす。
【0018】
用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸の対形成に関して使用される。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、関連したハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシー、形成されたハイブリッドの融解温度(Tm)、及び核酸内のG:C比のような要因により影響される。
【0019】
アッセイは、試料が、特定の核酸配列(又はその相補配列)を有する検体を含むかどうかを決定するために行われる。この核酸配列は、「検体-特異的配列」と称されるであろう。少なくとも一部の例において、元々の試料は直接的にはアッセイされない。代わりに、検体が存在するならば、 (例えばPCR技術により)クローニング又は増幅され、検出可能量の検体-特異的配列を含む標的オリゴヌクレオチドを伴うアッセイ試料が提供される。増幅のための他の技術は、例えば、核酸配列ベースの増幅(NASBA、例えば、Guatelliら、Proc. Natl. Acad. Sci.、87:1874(1990)、これは本願明細書に参照として組入れられている)、鎖置換増幅(SDA、例えばWalkerら、Proc. Natl. Acad. Sci.、89:392-96(1992)、本明細書に参照として組入れられている)、リガーゼ連鎖反応(LCR、例えばKalinら、Mutat. Res.、283:119-23(1992)、本明細書に参照として組入れられている)、転写媒介型増幅(TMA、例えば、La Roccoら、Eur. J. Chin. Microbiol. Infect. Dis.、13:726-31(1994)、本明細書に参照として組入れられている)、及びローリングサークル増幅(RCA、例えばLizardiら、Nat. Genet.、19:225-32(1998)、本明細書に参照として組入れられている)がある。少なくとも標的オリゴヌクレオチドの一部は、典型的には、a)検体、b)検体の一部、c)検体の相補物、又はd)検体の一部の相補物のいずれかに相当している。このアッセイによる標的オリゴヌクレオチドの検出は、当初の試料中の検体の存在を示している。
【0020】
一般に、1種又は複数の検体-特異的配列を検出するためのアッセイシステムは、固体支持体(例えば、チップ、ウェファー、又は固体粒子の集合体)を含む。捕獲オリゴヌクレオチドは、固体支持体上に、捕獲オリゴヌクレオチドの同定を(例えば、チップ又はウェファー上の位置により、もしくは特定の捕獲オリゴヌクレオチドが付着した粒子の固有の特性により)可能にする方法で配置されている。この捕獲オリゴヌクレオチドは、分子認識配列を含む。異なる分子認識配列を伴う異なる捕獲オリゴヌクレオチドを使用し、異なる検体-特異的配列が検出される。これらの異なる捕獲オリゴヌクレオチドを使用し、単独のアッセイシステムが試料を複数の検体-特異的配列について分析するように設計することができる。
【0021】
検体-特異的配列を含む標的オリゴヌクレオチドは、捕獲オリゴヌクレオチドと接触させられる。検体-特異的配列に加え、標的オリゴヌクレオチドは、更に各々タグ配列を含む。特定のタグ配列は、各検体-特異的配列に会合されている。一般にこのタグ配列は、分子認識配列のひとつと相補的である。従ってハイブリダイゼーション条件下で、この標的オリゴヌクレオチドは、適当な捕獲オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。あるいは、本発明のある方法において、この検体-特異的配列は、分子認識配列のひとつに相補的であることができる。
【0022】
標的オリゴヌクレオチド又はその相補物は、典型的にはレポーター又はレポーターの付着のためのカップリング剤を含む。特定の捕獲オリゴヌクレオチドと関連したレポーターの存在又は非存在を決定するための固体支持体の観察は、特定の検体-特異的配列が試料中に存在するかどうかの指標である。適当なレポーターは、ビオチン、蛍光色素、化学発光体、ジゴキシゲニン、スピン標識、放射性標識、DNA切断部分、発色団又は発蛍光団を含むが、これらに限定されるものではない。適当なカップリング部分の例は、アミン、チオール、ヒドロシン(hydrosine)、アルコール又はアルキル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0023】
適当なアッセイシステムの例は、図2A及び2Bに概略的に示されている。これらのアッセイにおいて、捕獲オリゴヌクレオチド100a、100bは、例えば、単独の固形基体120a(例えばチップ又はウェファー)、又は多くの固体粒子120bのような固体支持体120にカップリングしている。典型的には、少なくとも1種の捕獲オリゴヌクレオチド(例えば、捕獲オリゴヌクレオチド100a)は、標的オリゴヌクレオチド110のタグ配列112と相補的である分子認識配列102を有し、その結果ハイブリダイゼーション条件下で、標的オリゴヌクレオチド110は捕獲オリゴヌクレオチド100aにハイブリダイズする。
【0024】
アッセイは、全体的に(global)同じ分子認識配列を有する捕獲オリゴヌクレオチドの全てにより調製することができるが、典型的には捕獲オリゴヌクレオチド100a、100bの2種以上の異なる群が使用される。捕獲オリゴヌクレオチドの各群は、異なる分子認識配列を有する。単独の固形基体上で、捕獲オリゴヌクレオチドの各群は、典型的には基体の特定の1個又は複数の領域上に配置され、その結果、この領域(複数)は、特定の分子認識配列に会合される。粒子支持体が使用される場合、捕獲オリゴヌクレオチド100a、100bの各群は、固有の特性を有する粒子120b、120cの少なくともひとつの群に配置され、その結果、特定の粒子の捕獲オリゴヌクレオチドは、それが付着された粒子の特性から決定される。このようなアッセイを使用し、例えば、a)異なる捕獲オリゴヌクレオチド(及び基体の異なる領域又は粒子の異なる群)の各アレルとの会合による、どのアレルが試料中に存在するかの決定、b)複数の関連した又は関連していないオリゴヌクレオチドのアッセイ、もしくはc)両方を行うことができる。図2A及び2Bに例示されたように、標的オリゴヌクレオチドは、優先的に対応する捕獲オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、単独の支持体の特定の空間的位置での(図2A)又は粒子の特定の群への付着(図2B)により、標的オリゴヌクレオチドの存在又は非存在を観察することにより、検体-特異的配列の存在又は非存在の決定を可能にする。
【0025】
アッセイシステムの追加の成分は、以下に説明したような、標的オリゴヌクレオチド110(又はその相補物120)に連結しているレポーター130である。このレポーター130は、標的オリゴヌクレオチドの存在又は濃度を示すために検出技術(例えば、比色、蛍光発光、電気泳動、電気化学、分光光度、クロマトグラフィー、デンシトメトリー又は放射線技術)によりその後検出されるアッセイの成分である。レポーターは、典型的には検出技術(例えば、蛍光技術のための発蛍光レポーター及び放射線技術のための放射性標識)により決定されるであろう。
【0026】
一部のアッセイにおいて、捕獲オリゴヌクレオチド及び標的オリゴヌクレオチドの一方又は両方が、少なくとも1種の非-標準塩基を含む。非-標準塩基(複数)の使用は、ハイブリダイゼーションを含むアッセイの特異性を向上することができ、その理由は、非-標準塩基は優先的に他の相補的非-標準塩基とハイブリダイズするからである。より長いオリゴヌクレオチドの使用も、特異的ハイブリダイゼーション速度を増大することができる。核酸のハイブリダイゼーションは、一般に、完全な相補性のための約3〜4個の塩基のサンプリングを含む。これらは核形成部位(nucleation site)を形成する。核形成部位が認められる場合は、ハイブリダイゼーションが鎖の下流へと進む。鎖の下流の塩基が相補的でないならば、その結果これらの2本の鎖は離れる。この核形成プロセスは時間がかかるので、非-標準塩基が使用される場合の核形成部位を発見する可能性は低下し、これにより完全な相補配列を発見するのに必要なサンプリング工程の数が減少する。
【0027】
あるいは、非-標準塩基は、他の非-標準塩基の配列への追加(例えば、PCR技術の使用)を指示するために使用される。追加された非-標準塩基は、レポーター、又はレポーターが付着することができ、これにより標的オリゴヌクレオチドの検出のためのレポーター基の高度に選択的な取込みを可能にするカップリング剤を含み得る。
【0028】
オリゴヌクレオチド及び塩基
DNA及びRNAは、各々、デオキシリボース又はリボースを含むオリゴヌクレオチドであり、ホスホジエステル結合により結合している。デオキシリボース及びリボースの各々は、糖に結合した塩基を含む。天然のDNA及びRNAに取込まれた塩基は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、チミジン(T)、シチジン(C)、及びウリジン(U)である。これらの5種の塩基は「天然塩基」である。Watson及びCrickにより精巧に作り出された塩基対形成則に従い、これらの天然塩基はハイブリダイズし、プリン-ピリミジン塩基対を形成することができ、ここでGはCと対形成し、かつAはT又はUと対形成する。これらの対形成法則は、オリゴヌクレオチドの相補的オリゴヌクレオチドとの特異的ハイブリダイゼーションを促進する。
【0029】
天然塩基によるこれらの塩基対の形成は、各塩基対の2個の塩基の間の2又は3個の水素結合の形成により促進される。これらの塩基の各々は、2又は3個の水素結合ドナー(複数)及び水素結合アクセプター(複数)を含む。塩基対の水素結合は、各々、ひとつの塩基上の少なくとも1個の水素結合ドナーの他方の塩基上の水素結合アクセプターとの相互作用により形成される。水素結合ドナーは、例えば、付着した水素を少なくとも1個有するヘテロ原子(例えば、酸素、窒素)を含む。水素結合アクセプターは、例えば、孤立電子対を有するヘテロ原子(例えば、酸素又は窒素)を含む。
【0030】
天然塩基A、G、C、T及びUは、非水素結合部位での置換により誘導体化され、修飾された天然塩基を形成することができる。例えば、天然塩基は、反応性官能基(例えば、チオール、ヒドラジン、アルコール又はアミン)の塩基の非-水素結合原子へのカップリングによる、支持体への付着のために誘導体化される。別の可能性のある置換基は、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光基、及びアルキル基(例えば、メチル又はエチル)である。
【0031】
水素-結合塩基対を形成する非-標準塩基は、例えば、米国特許第5,432,272号、第5,965,364号、第6,001,983号、及び第6,037,120号、並びに米国特許出願第08/775,401号に開示されているように構築することもでき、これらは全て本願明細書に参照として組入れられている。「非-標準塩基」は、オリゴヌクレオチドへ組込まれやすく、かつ水素結合、又は相補的塩基と塩基対を形成する疎水性、エントロピー性、もしくはファンデルワールス相互作用による塩基対形成が可能である、A、G、C、T又はU以外の塩基を意味する。図1は、適当な塩基及びそれが対応する塩基対のいくつかの例を例示している。これらの塩基対の具体的例は、塩基対組合せ(イソ-C/イソ-G、K/X、H/J、及びM/N)中の下記の塩基を含む:
【0032】
【化1】
(式中、Aは、糖又はポリマー骨格の他の部分が結合した点であり、Rは、H又は置換もしくは未置換のアルキル基である。)。
【0033】
水素結合を利用する他の非-標準塩基を使用することができ、更には先に定義された非-標準塩基をこれらの塩基の非-水素結合原子での官能基取込みにより修飾することができることも認められるであろう。図の3から9においてこれらの非-標準塩基を示すために、下記の記号を使用する:Xはイソ-Cを表し、Yはイソ-Gを表す。
【0034】
これらの非-標準塩基対の水素結合は、天然塩基のものに類似しており、2又は3個の水素結合が、対形成している非-標準塩基の水素結合アクセプター及び水素結合ドナーの間に形成される。天然塩基とこれらの非-標準塩基との間の差異のひとつは、水素結合アクセプター及び水素結合ドナーの数及び位置である。例えば、シトシンはドナー/アクセプター/アクセプター塩基であり、グアニンは相補的アクセプター/ドナー/ドナー塩基であると考えることができる。本願明細書に参照として組入れられている米国特許第6,037,120号に開示されたように、イソ-Cは、アクセプター/アクセプター/ドナー塩基であり、かつイソ-Gは相補的ドナー/ドナー/アクセプター塩基である。
【0035】
オリゴヌクレオチドにおける使用のための他の非-標準塩基は、例えば、ナフタレン、フェナントレン及びピレンの誘導体を含み、これらは例としてRenらの論文(J. Am. Chem. Soc.、118:1671(1996))及びMcMinnらの論文(J. Am. Chem. Soc.、121:11585(1999))に記載され、これらは本願明細書に参照として組入れられている。これらの塩基は、安定化のためには水素結合を利用しないが、代わりに疎水性、エントロピー性、又はファンデルワールス相互作用に頼って、塩基対を形成する。
【0036】
固体支持体
このアッセイは、少なくとも一部は、固体支持体を用いて行われる。一般に、捕獲オリゴヌクレオチドは、支持体の表面に結合されるか、さもなければその上に配置される。多種多様な支持体を使用することができる。一部の態様において、固体支持体は、チップもしくはウェファーのような単独の固体支持体、又はチューブ、円錐もしくは他の商品の内面もしくは外面である。固体支持体は、適当な材料から二次加工し、安定性、寸法、形状、及び表面の平滑度などの望ましい特性の最適な組合せを提供することができる。好ましい材料は、核酸ハイブリダイゼーションとは干渉せず、かつ多量の核酸の非-特異的結合を受けない。適当な材料は、生物的又は非生物的、有機又は無機の材料である。例えば、マスターアレイは、いずれか適当なプラスチック又はポリマー、シリコーン、ガラス、セラミック、又は金属から二次加工することができ、かつ固体、樹脂、ゲル、硬質フィルム、又は柔軟な膜の形状で提供することができる。適当なポリマーは、例えば、ポリスチレン、ポリ(アルキル)メタクリレート、ポリ(ビニルベンゾフェノン)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデンなどである。好ましい材料は、ポリスチレン、ガラス及びシリコーンを含む。
【0037】
一部の態様において、図3に示されたように、単独固体支持体300は、各領域内の支持体上に配置された捕獲オリゴヌクレオチドを伴う個別の領域310に分割されている。各領域又は各粒子支持体において、捕獲オリゴヌクレオチドは、優先的に(例えば、少なくとも75%)同じ分子認識配列を有する。好ましくは、捕獲オリゴヌクレオチドの実質的に全て(例えば、少なくとも90%及びより好ましくは、少なくとも99%)は、各領域内又は各粒子支持体上に同じ分子認識配列を有する。異なる領域の捕獲オリゴヌクレオチドは、典型的には異なる配列を有するが、一部の例においては、同じ捕獲オリゴヌクレオチドが、例えば対照又は結果の検証として、2個以上の領域において使用することができる。
【0038】
異なる領域を備えた固体支持体は、試料を試験しかつ多くの異なる検体-特異的配列の存在又は非存在を決定するために規則的又は不規則的アレイを形成することができる。例えば、アレイは、10、100、1000種又はそれ以上の異なる検体-特異的配列を試験するために形成することができる。
【0039】
固体支持体の寸法は、領域の所望の数及びアッセイされるべき検体-特異的配列の数のような要因を基に決定される。例として、固体支持体は、長さ約0.5cm〜約7.5cm及び幅約0.5cm〜約7.5cmの平面寸法で供することができる。固体支持体は、顕微鏡スライド(例えば、約7.5cm x 約2.5cmの寸法)のような、他の支持体上に単独又は複数で位置することもできる。固体支持体の寸法は、具体的用途に容易に適合することができる。
【0040】
他の種類の固体支持体を使用することができる。一部の態様において、固体支持体は粒状支持体である。これらの態様において、捕獲オリゴヌクレオチドは、粒子に結合(カップリング)している。典型的には、これらの粒子は、各群内の粒子が、これらの粒子を他の群の粒子から識別又は分離するために使用することができる、例えば、色、蛍光度数(fluorescene frequency)、密度、サイズ又は形状のような、特定の特性を有する群を形成している。好ましくは、これらの粒子は、例えばフローサイトメトリーのような技術を用い分離することができる。
【0041】
本発明において考案されるように、これらの粒子は、実質的に不溶性又は固体材料から二次加工される。例えば、これらの粒子は、シリカゲル、ガラス、ナイロン、樹脂、セファデックス(Sephadex)(登録商標)、セファロース(Sepharose)(登録商標)、セルロース、磁気材料、金属(例えば、鋼鉄、金、銀、アルミニウム、銅もしくは合金)又は金属-塗装された材料、プラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など、並びにそれらの組合せから二次加工することができる。適当なミクロ-ビーズの例は、例えば、米国特許第5,736,330号、第6,046,807号、及び第6,057,107号などに開示されており、これらは全て本願明細書に参照として組入れられている。適当な粒子の例は、例えば、Luminex社(オースチン、TX)から入手可能である。
【0042】
ひとつの態様において、会合された捕獲オリゴヌクレオチドを備えた特定の支持体は、例えば、バイアル、チューブ又はウェルのようなホルダー内に配置される。標的オリゴヌクレオチドは、このホルダーに添加され、アッセイがハイブリダイゼーション条件下で実行される。その後特定の支持体は、支持体各群の固有の特徴を基に分離される。その後支持体の群が、どの支持体(複数)が、付着された標的オリゴヌクレオチドを有するかを決定するために研究される。場合により、支持体は、クロス-ハイブリダイゼーションの作用を低下するために洗滌することができる。1回又は複数回の洗滌を、以下に説明されるようにストリンジェンシーの同じ又は異なるレベルで行うことができる。別の選択肢として、支持体(複数)及び捕獲オリゴヌクレオチドの接触前に、標的オリゴヌクレオチドを含有する溶液には、増幅されないプライマーを除去するため又は標的オリゴヌクレオチドと同じサイズでない他の材料を除去するために、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、示差沈殿、スピンカラム、又はフィルターカラムが施される。
【0043】
一部の態様において、マルチホルダー(例えば、バイアル、チューブなど)は、複数の試料をアッセイするため又は各ホルダー内に捕獲オリゴヌクレオチド(及び会合された支持体)の異なる組合せを有するために使用される。別の選択肢として、各ホルダーが捕獲オリゴヌクレオチド(及び会合された支持体)の単一の型を含んでもよい。
【0044】
別の例として、支持体は、場合により、互いに結合している個別の支持体表面の群であることができる。例えば、この支持体は、個別の光ファイバー又は異なる捕獲オリゴヌクレオチドに個別に結合された他の支持体メンバーを含むことができ、その後互いに結合され、単独の商品、例えばマトリックスを形成する。
【0045】
典型的には、支持体(単独又は粒状支持体)は、本願明細書に記された目的を実現するのに十分に安定した方法で、捕獲オリゴヌクレオチドの支持体表面への結合又はさもなければ保持することが可能である。このような結合は、例えば支持体と捕獲オリゴヌクレオチドの間の共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合、又はファンデルワールス結合、又は正もしくは負に帯電した支持体への誘引を含む。捕獲オリゴヌクレオチドは、固体支持体表面へ直接又はリンカーを介して付着される。ある態様において、捕獲オリゴヌクレオチドは、、表面、オリゴヌクレオチドのいずれか、又は両方に1種又は複数の反応基を提供する、又は誘導体化することにより、支持体表面に直接付着される。例えば、Luminex(登録商標)粒子の表面は、例えばカルボキシレート、マレイミド、又はヒドラジド官能性により修飾することができ、又はアビジン及びガラス表面は、例えばシラン又はアルデヒド(DNAとのシッフ塩基アルデヒド-アミンの連結を形成)により処理することができる。一部の態様において、支持体又は支持体上に付着された材料(例えば、支持体上のコーティングなど)は、捕獲オリゴヌクレオチド上の反応性官能基と連結することができる反応官能基を含む。例として、支持体は、官能基化することができる(例えば、反応性に官能基化された金属又はポリマー表面)か又は官能基を含む(例えばペンダント官能基を伴うポリマー)ことができ、捕獲オリゴヌクレオチドを連結する部位を提供する。
【0046】
別法として、捕獲オリゴヌクレオチドは、捕獲オリゴヌクレオチドの架橋により表面上に維持することができる。好ましくは、架橋された捕獲オリゴヌクレオチドは、架橋部分及び捕獲部分を含み、ここで捕獲部分は、標的オリゴヌクレオチドのタグ配列にハイブリダイズする分子認識配列を含む。
【0047】
更に別の選択肢として、本支持体は、ストレプトアビジン、抗体、抗原、酵素、補酵素又はインヒビター、ホルモン又はホルモン受容体などのカップリング(結合)剤により、部分的に又は完全に被覆することができる。このカップリング剤は、典型的には共有結合又は非-共有結合を介して、別の分子又は巨大分子との高い親和性を有する生体分子又は合成分子である。捕獲オリゴヌクレオチドは、カップリング剤の相補物(例えば、ビオチン、抗原、抗体、補酵素又はインヒビター、酵素、ホルモン受容体、又はホルモン)に結合している。その後捕獲オリゴヌクレオチドはカップリング剤と接触され、支持体上に捕獲オリゴヌクレオチドを保持する。他の公知のカップリング技術を、本願明細書において説明されたシステム及び方法において容易に適合及び使用することができる。
【0048】
捕獲及び標的オリゴヌクレオチド
捕獲オリゴヌクレオチドは、相補的タグ配列を有する標的オリゴヌクレオチドを、ハイブリダイゼーションにより、捕獲することができる分子認識配列を含む。捕獲オリゴヌクレオチドの分子認識配列及び標的オリゴヌクレオチドのタグ配列のハイブリダイゼーションは、標的オリゴヌクレオチドの固体支持体への連結を生じる。分子認識配列及びタグ配列は、特定の検体-特異的配列(同じく標的オリゴヌクレオチドの一部)と会合され、従って、ハイブリダイゼーションが生じる場合は、検体-特異的配列(又はその相補物)による元々の試料中の検体の存在又は濃度の指標となる。
【0049】
コード配列及びタグ配列は、典型的には、少なくとも6個のヌクレオチドを含み、場合によっては、少なくとも8、10、15、もしくは20個又はそれ以上のヌクレオチドを含む。一部のアッセイにおいて、以下に説明されるように、分子認識配列及びタグ配列は、1種又は複数の非-標準塩基を含む。別のアッセイにおいて、分子認識配列及びタグ配列は、非-標準塩基を含まない。
【0050】
捕獲オリゴヌクレオチドは更に、典型的には捕獲オリゴヌクレオチドの固体支持体への結合を可能にする官能基、又は固体支持体上のもしくはそこから伸びた官能基を含む。この官能基は、直接ポリマー骨格に付着することができるか、又はヌクレオチド配列の塩基に付着することができる。別法として、捕獲オリゴヌクレオチドは、前述のように、架橋を促進するために、架橋部分を含むことができるか、又は静電気的にその表面上に保持することができる。この捕獲オリゴヌクレオチドは、例えば、固相合成、DNA複製、逆転写、制限消化、ランオフ転写などを含む、様々な技術により形成することができる。
【0051】
タグ配列に加え、標的オリゴヌクレオチドは、検体中の関心のある配列に相当する又は配列に対し相補的である検体-特異的配列を含む。この検体-特異的配列は、タグ配列から独立であってよいが、タグ配列の一部もしくは全てが、体-特異的配列の一部であってもよい。
【0052】
この捕獲オリゴヌクレオチドの長さは、望ましいハイブリダイゼーション強度及び速度論のために最適化することができる。通常分子認識配列の長さは、6〜20(好ましくは、8〜12)個のヌクレオチド範囲である。好ましい態様において、捕獲オリゴヌクレオチドの異なる分子認識配列は、互いに相補的ではなく、より好ましくは、試験される試料中に実質的量で存在する可能性が顕著であるいかなる公知の天然の遺伝子配列又は遺伝子断片に対して相補的ではない。結果的に、捕獲オリゴヌクレオチドの捕獲分子認識配列は、標的オリゴヌクレオチドの各相補的タグ配列に対し主にハイブリダイズするであろう。
【0053】
この標的オリゴヌクレオチド(又は、標的オリゴヌクレオチドの少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチド)は、レポーター又はレポーターの付着のためのカップリング剤を含む。このレポーター又はカップリング剤は、ポリマー骨格又は標的もしくは相補的オリゴヌクレオチドのいずれかの塩基に付着することができる。レポーター基をヌクレオチド塩基(天然塩基及び非-標準塩基の両方)に付着させる技術は、公知である。レポーター基の例は、ビオチン、ジゴキシゲニン、スピン標識基、放射性標識基、DNA-切断部分、発色団、及びフルオレセインのような発蛍光団を含む。カップリング剤の例は、ビオチン又は反応性官能基を含む置換基である。その後レポーター基は、ストレプトアビジンに付着するように提供されるか、又はレポーター基を標的又は相補的オリゴヌクレオチドへ結合するために、カップリング剤と相互作用する反応性官能基を含む。
【0054】
ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 技術
様々なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術が公知であり、かつ以下に説明されたアッセイにおいて使用することができる。PCR技術は、典型的には、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部の増幅に使用される。検体-特異的配列の存在について試験される試料は、第一及び第二のオリゴヌクレオチドプライマー;核酸ポリメラーゼ;及び、PCR時に添加されるヌクレオチドに対応するヌクレオチド三リン酸と接触される。天然塩基のヌクレオチド三リン酸は、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、及びdUTPを含む。非-標準塩基のヌクレオシド三リン酸も、望ましい又は必要な場合は添加することができる。PCRに適したポリメラーゼは公知であり、例えば、Thermus aquaticus(Taq)、Thermus flavus(Tfl)、及びThermus thermophilus (Tth)を含むが、これらに限定されるものではないThermus種の未変性及び変性したポリメラーゼのような耐熱性ポリメラーゼ、更にはDNAポリメラーゼI及びHIV-1ポリメラーゼのクレノウ断片を含む。
【0055】
前述の第一及び第二のプライマーは、増幅されるべき二本鎖オリゴヌクレオチドの異なる鎖の異なる部分に相補的である。この増幅されるオリゴヌクレオチドの配列は、検体にハイブリダイズする2種のプライマー配列及びこれら2種のプライマー間の領域を含む。これらのプライマーは、例えば、固相合成、DNA複製、逆転写、制限酵素消化、ラン-オフ転写などを含む、様々な技術により形成することができる。
【0056】
PCRは、(i)第一のオリゴヌクレオチドプライマー及び第二のオリゴヌクレオチドプライマーを、増幅される二本鎖オリゴヌクレオチド又は先にサイクリングにより形成された伸長産物にアニーリングする工程;(ii)核酸ポリメラーゼによりアニーリングされた第一及び第二のオリゴヌクレオチドプライマーを伸長し、プライマー伸長産物を合成する工程;及び、(iii)これらの産物を変性し、一本鎖核酸を得る工程である繰り返し工程を含む。様々なPCRが、これらの工程の修飾又は条件(例えば、時間及び温度)の変更により開発されている。概して、これらの様々なPCRのいずれかを、以下に説明したアッセイにおいて使用することができるが、一部は、特定のアッセイについて他のものよりもより有用であろう。
【0057】
以下に説明されたいくつかのアッセイについて開発された様々なPCRのひとつは、「ファストショット(fast-shot)PCR」であり、これはプライマー伸長時間が短縮又は排除される。本願明細書において使用されるように、用語「ファストショットポリメラーゼ連鎖反応」又は「ファストショットPCR」は、伸長滞留、ぷおよび、アニーリング工程及び融解工程のための停滞が非常に短時間であるか又は排除されるPCRを意味する。この方法のためには、典型的には、2種のプライマーの3'末端は鋳型核酸上で10を超えない塩基により隔てられる。
【0058】
増強された特異性は、伸長滞留、および、アニーリング工程及び融解工程のための停滞が非常に短時間であるか又は排除されるようなファストショットPCRサイクルを用いて達成される。一つの態様において、PCR溶液は、約90〜100℃で、及び約55〜65℃で迅速にサイクリングされ、各温度で最大約1秒間維持され、その結果、ポリメラーゼがミスマッチプライマーを伸長するにはほとんど時間がない。ある態様において、この反応は、約95℃〜約58℃で、各温度で約1秒維持し、サイクリングされる。
【0059】
この迅速なサイクリングは、一般に、第一及び第二のプライマーの3'塩基間の鋳型核酸上に約0〜10塩基ギャップを残すことによる、短いPCR産物の作成により容易となる。好ましくは、これらのプライマーは、およそ55〜60℃のTmを有するように設計される。一部の態様について、30と少ない標的オリゴヌクレオチドを検出するためには、典型的には合計約37サイクルが適している。
【0060】
アレル特異的PCRプライマーは、SNP(一塩基多型)と他のアレルを識別するために使用することができる。SNP検出のためには、これらのプライマーは、関心のある多型塩基は、第一又は第二のプライマーの3'末端に、又はその近傍(典型的には、3〜5塩基以内)に位置するように、各アレルに対して相補的であるように設計される。高レベルのアレル識別は、一部、標的DNAとの、すなわちプライマーが特異的でない対応するアレルとのその3'末端にヌクレオチドミスマッチを有するプライマーを伸長するTaqポリメラーゼの能力の制限により実現される。その他のポリメラーゼも使用することができる。
【0061】
さらに、アレル識別はアレル特異的プライマーの別の位置にミスマッチを配置することにより得ることができる。これらのプライマー内のヌクレオチドミスマッチの別の位置を使用し、2種の基本的方法で選択的増幅を実現することができる:1) サーマルサイクリング時に鋳型DNAとハイブリダイズしないように単にプライマーのTm(融解温度)を低下させ、このポリメラーゼはプライマーを伸長することができないようにすることにより、もしくは、2)このポリメラーゼが伸長しないような好ましくないプライマー/鋳型構造を作成することによる。
【0062】
アッセイ例
コード配列及びタグ配列中の非 - 標準塩基によるアッセイ
図4に示されたあるアッセイにおいて、捕獲オリゴヌクレオチド202の2種以上の群が調製される。各群の捕獲オリゴヌクレオチド202は、固有の分子認識配列204を含む。各群の分子認識配列は、少なくとも1種(及び、典型的には、2種又はそれ以上)の非-標準塩基(図中では破線を用いて示した)を含む。非-標準塩基の使用は、捕獲オリゴヌクレオチドが天然塩基のみを含む配列とハイブリダイズする可能性を実質的に低下させる。これは、典型的には、天然塩基のみを伴うオリゴヌクレオチドを用いる同様のアッセイと比較した場合に、より少ない非-特異的ハイブリダイゼーションを生じる。また、この捕獲オリゴヌクレオチドは、典型的には固体支持体206への付着のための反応性官能基も含むが、前述のように、他の付着法を使用することもできる。
【0063】
このアッセイのための支持体は、例えば、単独の固体支持体、例えばガラス、金属、プラスチック、又は無機チップなどであることができる。捕獲オリゴヌクレオチドは、この支持体上に配置され、かつ典型的には前述の方法(例えば、捕獲オリゴヌクレオチド及び支持体上の反応基を介した連結、支持体上に配置された結合剤の使用、又は捕獲オリゴヌクレオチドの架橋)のひとつにより保持される。これらの基の各々は、固体支持体の1種又は複数の固有の領域に配置され、その結果これらの領域(複数)は、特定の捕獲オリゴヌクレオチドと会合することができる。
【0064】
別の態様(示さず)において、アッセイのための支持体は、粒状支持体(例えば、ビーズ)である。本願明細書において説明されたアッセイのいずれかは、単独の固体支持体上、粒状支持体上、又はいずれか他の支持体上で行うことができることは理解されるであろう。粒状支持体は、粒子の群に分割され、各粒子群は、その粒子群を他の群から識別する特徴(例えば、色、形状、サイズ、密度、又は他の化学的もしくは物理的特性)を有する。捕獲オリゴヌクレオチドの各群は、1種又は複数の粒子群に連結される。これは、特定粒子群の特定捕獲オリゴヌクレオチド群との会合を生じ、固有の粒子支持体特性を観察することにより捕獲オリゴヌクレオチドの決定を可能にする。
【0065】
図4に戻り、標的オリゴヌクレオチド208が、アッセイされる試料中に存在する場合は、これは、検体-特異的配列210及び捕獲オリゴヌクレオチド202の1群の分子認識配列204と相補的なタグ付け配列212を含む。タグ配列212は、少なくとも1個の非-標準塩基を含み;さもなければ、タグ配列は、捕獲オリゴヌクレオチドの分子認識配列とは相補的ではないであろう。標的オリゴヌクレオチド208の一部と相補的なオリゴヌクレオチド214は、レポーター216又はレポーターの付着のためのカップリング剤(図示せず)を含む。
【0066】
標的オリゴヌクレオチド208及び相補的オリゴヌクレオチド214は、例えば、検体-特異的配列又はその相補配列を含む検体のPCR増幅により形成することができる。PCR増幅において、2種の異なるプライマーが使用される(図4のBに図示されたように)。第一のプライマー218は、検体220の第一鎖上の第一の配列に相補的な配列を含む。第二のプライマー222は、第一の配列の上流又は下流である検体220の第二鎖上の第二の配列に相補的な配列を含む。検体-特異的配列は、典型的には、これらのプライマーがハイブリダイズする配列(又は相補配列)の間に伸長し、及びこれらを含む検体の配列を含む。第一のプライマー218は、タグ配列212を含み、及び第二のプライマー222は、レポーター216(又は、レポーターのカップリング剤)を含む。第一及び第二のプライマーの伸長並びに増幅は、公知のPCR増幅技術又は前述のファストショットPCR技術を使用し進行し、標的オリゴヌクレオチド208及び相補的オリゴヌクレオチド214(図4のCに図示されたように)を生成する。例えば、固相合成、DNA複製、逆転写などのようなその他の公知の合成法を使用し、標的及び相補的オリゴヌクレオチドを形成することができる。
【0067】
前記アッセイに戻り、標的オリゴヌクレオチド208は、典型的には、捕獲オリゴヌクレオチド202が結合した支持体206(又は粒状支持体を保持する容器)と接触させられる。適当な捕獲オリゴヌクレオチドが支持体上に存在する場合、標的オリゴヌクレオチドのタグ配列と捕獲オリゴヌクレオチドの相補的分子認識配列との選択的ハイブリダイゼーションが促進されるように条件が制御される(図4のDに図示されたように)。レポーターも、相補的オリゴヌクレオチド214への連結のために添加される(相補的オリゴヌクレオチド214が既にレポーターを含まない限り)。場合により、取込まれていないプライマーは、ハイブリダイゼーション前に、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、示差沈殿、スピンカラム、又はフィルターカラムなどのような技術により、ハイブリダイゼーション後に、洗滌により、除去することができる。
【0068】
平板固体支持体上でのアッセイについて、アッセイは、レポーター基が、支持体上の個別の領域の各々に存在するかどうかを決定することにより、判定することができる。レポーター基の存在は、当初の試料が、支持体のその領域に関する特定のタグ付け配列及び分子認識配列と会合された検体-特異的配列を有する検体を含有することの指標である。レポーター基が存在しないこと、試料が、特定の検体-特異的配列を有する検体を含まないことを示唆している。
【0069】
粒子の支持体についてのアッセイのためには、これらの粒子は、固有の特性に従い分離され、その後どの粒子が、捕獲オリゴヌクレオチド及び標的オリゴヌクレオチドを介して粒子へ連結されたレポーターを有するかが決定される。分離を実現する技術は、例えば、フローサイトメトリーを含む。レポーター基の存在は、試料が、特定のタグ配列及び、特定の捕獲オリゴヌクレオチドの分子認識配列と会合した検体-特異的配列を有する標的オリゴヌクレオチドを含むことを示している。
【0070】
図4に図示したアッセイは、試料中のアレルの存在の決定において使用するために適合させることができる。例えば、このアッセイは、2種又はそれ以上のアレルに対応するアレル-特異的プライマー(第一もしくは第二のプライマー218、222のいずれか又は両方)を含む。各アレル-特異的プライマーは、ただひとつのアレルへ特異的にハイブリダイズする配列を含む。アレル-特異的プライマーに付着したタグ配列又はレポーター(又はカップリング剤)も、アレルに特異的である。アレルが試料中に存在する場合、そのアレルに会合されたアレル-特異的プライマー(複数)は伸長し、かつ支持体上の相補的アレル-特異的捕獲オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーション、又はアレル-特異的レポーター基の観察のいずれかにより、検出されるであろう。このアッセイは、検体中の非-アレル性検体-特異的配列の存在又は非存在の決定にも使用することができることは認められるであろう。
【0071】
本方法は、SNP(一塩基多型)アレルを検出するために使用することができる。第一又は第二のプライマーのいずれかは、SNP-特異的であろう。典型的には、2種(又はそれ以上)の異なるSNP-特異的プライマーが、このアッセイにおいて使用される。好ましくは、SNP-特異的プライマーは、プライマーの伸長可能な末端に位置した又はその近傍(例えば、3又は5塩基以内)であるSNP部位を有するであろう。「ファストショットPCR」技術は、このSNPアッセイにおいて有用であることができ、その理由は短い伸長時間は、非-相補的プライマーが伸長する見込みを実質的に低下するからである。
【0072】
捕獲オリゴヌクレオチド及び標的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、本願明細書に記したアッセイの特徴である。このハイブリダイゼーションは、多くの従来型ハイブリダイゼーション法において使用されるような、塩(例えば、ナトリウム塩又はマグネシウム塩)、緩衝液(例えば、TRIS、TAPS、BICINE、又はMOP)、非-特異的阻害剤(例えば、SDS、BSA、又は剪断したゲノムDNA)、及び保護剤(例えば、EDTA又はアザイド)を含有するハイブリダイゼーション混合液中で行われる。典型的には、このハイブリダイゼーションは、ナトリウムイオン(又は他のカチオン)濃度が少なくとも0.01〜1.0M及びpHが7.0〜8.3で行われる。一般に、このハイブリダイゼーション及びいずれかの洗浄工程は、ハイブリダイゼーションを維持するための所望のストリンジェンシー条件に合致する温度及び塩濃度で実行される。ストリンジェンシー条件は、配列依存性である。望ましいならば、ストリンジェンシー条件の段階的増加を数回の洗滌工程にわたって使用することができる。
【0073】
「低ストリンジェンシー条件」は、ハイブリダイゼーション溶液のイオン強度及びpHにおける特定の配列の熱融解温度(Tm)よりも約10〜15℃低く選択される。Tmは、タグ配列の約50%が平衡状態で相補的分子認識配列にハイブリダイズするような温度(イオン強度、pH及び核酸濃度)である。
「中ストリンジェンシー条件」は、ハイブリダイゼーション溶液のイオン強度及びpHにおける特定の配列の熱融解温度(Tm)よりも約5〜10℃低く選択される。
「高ストリンジェンシー条件」は、ハイブリダイゼーション溶液のイオン強度及びpHでの特異的配列の熱融解温度(Tm)よりも約5℃低く選択される。
【0074】
図5に図示した別のアッセイにおいて、2種又はそれ以上の捕獲オリゴヌクレオチド252の群が調製され、かつ図5のAに図示されたように、支持体256上に配置される。捕獲オリゴヌクレオチド252の各群は、固有の分子認識配列254を含む。各群の分子認識配列は、少なくとも1個(及び、典型的には、2個又はそれ以上)の非-標準塩基を含む。標的オリゴヌクレオチド258及び相補的オリゴヌクレオチド264は、例えば、検体-特異的配列又はその相補配列を含む検体のPCR増幅により形成することができる。PCR増幅において、2種の異なるプライマーが使用される(図5のB及びCに図示されたように)。第一のプライマー268は、検体270の第一鎖の上の第一の配列に相補的な配列を含む。第二のプライマー272は、第一の配列の上流又は下流である、検体270の第二鎖の上の第二の配列に相補的な配列を含む。検体-特異的配列は、典型的には、プライマーがハイブリダイズする配列(又は相補配列)の間に伸びる、又はこれを含む、検体の配列を含む。第一のプライマー268は、タグ付け配列262を含み、第二のプライマー272はレポーター266(又は、レポーターへのカップリング剤)を含む。
【0075】
標的オリゴヌクレオチド258は、典型的には、捕獲オリゴヌクレオチド252が結合した支持体256(又は粒状支持体を保持する容器)と接触させられる。適当な捕獲オリゴヌクレオチドが支持体上に存在する場合には、標的オリゴヌクレオチドのタグ配列と、捕獲オリゴヌクレオチドの相補的分子認識配列との選択的ハイブリダイゼーションを促進するように条件が制御される(図5のDに示されたように)。相補的オリゴヌクレオチド264への連結に関して、レポーターも、添加される(相補的オリゴヌクレオチド264が既にレポーターを含まない限りは)。場合により、取込まれていないプライマーを、ハイブリダイゼーション前に、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーなどの技術により、もしくはハイブリダイゼーション後に、例えば洗滌により、除去することができる。
【0076】
次に酵素280が、相補的オリゴヌクレオチド264の捕獲オリゴヌクレオチド252への共有結合のために提供される。適当な酵素にはリガーゼが含まれる。場合により、標的オリゴヌクレオチド258は、相補的オリゴヌクレオチド264から変性され、かつ標的オリゴヌクレオチド及びアッセイの他の成分は洗滌除去され、図5のEに図示したように、支持体256に結合した相補的オリゴヌクレオチド264が残留する。その後レポーター266を検出することができる。
【0077】
更に図6に図示された別のアッセイにおいて、標的オリゴヌクレオチド314は、ヘアピン又はステム-ループ構造321、323(又は典型的二重らせん以外の構造)を形成する。このアッセイにおいて、第一及び第二の各プライマー318、322は、タグ配列312bの一部又はタグ配列の一部の相補配列312aを含む。加えて、プライマー322のひとつは、タグ配列312bの一部に付着したレポーター316(又はレポーターへのカップリング剤)を含む。例えばPCR技術を用い、第一及び第二のプライマー318、322は、検体320を増幅し、標的オリゴヌクレオチド314及びその相補物308を生成する。標的オリゴヌクレオチド314のタグ配列312b、313aは、標的オリゴヌクレオチドの両端に配分される。
【0078】
標的オリゴヌクレオチド314は、その相補物308から変性され、分子認識配列304を伴う捕獲オリゴヌクレオチド302を有する固体支持体306に接触させられる。ひとつの捕獲オリゴヌクレオチドの分子認識配列304が、標的オリゴヌクレオチド314のタグ配列312b、313aと相補的であるならば、標的オリゴヌクレオチド314は、その捕獲オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするであろう。一部の態様において、捕獲オリゴヌクレオチドは、ふたつの部分に分割され、各部分は、タグ配列312b、313aの部分のひとつと相補的である。これらふたつの部分は、リンカーにより連結される。このリンカーは、追加のヌクレオチドであっても他のいかなる化学連結部分であってもよい。標的オリゴヌクレオチド314の標的配列は、ステム-ループ構造321、323(又は二重らせん以外の構造)の少なくとも一部を形成する。その後検出が、先の例において考察されたように行われる。
【0079】
図7に図示した別のアッセイにおいて、検体420は、初期プライマー440、442により接触され、この各々は、図7のAに図示されたように、検体420の配列に相補的である配列を有する。初期プライマー440のひとつは、基質450への付着のためのカップリング基444(例えば、ビオチン又は反応官能性を含む置換基)も含む。初期プライマー440、442は、例えば、図7のBに図示されたように、PCR技術を用いて伸長される。伸長された初期プライマー446、448は、各々、検体-特異的配列又はその相補配列を含む。
【0080】
伸長された初期プライマー446、448は、次に、図7のCに図示されたように、伸長された初期プライマー446のカップリング基444と相互作用する基質450と接触され、伸長された初期プライマー446を基質450へ付着する。例えばこの基質は、ストレプトアビジンで被覆し、伸長された初期プライマーはビオチンを含むことができる。
【0081】
次に、第一及び第二のプライマー418、422は、図7のCに図示されたように、伸長された初期プライマー446、448と接触される。第一のプライマー418は、タグ付け配列412を有し、及び第二のプライマー422はレポーター416(又はレポーターのカップリング剤)を有する。両プライマーは、伸長された初期プライマー446、448の断片(section)に相補的な配列も含む。図7に図示したアッセイは、その他のプライマー422aを追加することができることも示している。これは、本アッセイの必要な特徴ではないが、アレルを検出するアッセイのひとつの態様を例証するために使用される。アレル特異的プライマーの使用は、本願明細書に例証した他のいかなるアッセイにおいても使用することができる。
【0082】
図示されたアッセイにおいて、プライマー422、422aは、アレル-特異的レポーター416、416aを伴うアレル-特異的プライマーである。図示された例において、これらのアレルは1個のヌクレオチドが異なるが、1個よりも多いヌクレオチド差異を伴う別のアレル-特異的アッセイを、これらの技術を用いて行うことができることは理解されるであろう。プライマー422は、伸長された初期プライマー446上の配列と相補的であるので、伸長される。プライマー422aは、伸長された初期プライマー446と相補的でないので、伸長されない。別のアッセイは、(アレル-特異的レポーターとは異なって)アレル-特異的タグ配列を有するいくつかの異なるアレル-特異的プライマーを含むことは認められるであろう。検体中に非-アレル性の検体-特異的配列が存在する又はしないことを決定するために非-アレル的プライマーを含むことは、認められるであろう。
【0083】
これらのプライマー418、422は、タグ配列412を伴う標的オリゴヌクレオチド408及びレポーター416(又はレポーターのカップリング剤)を伴う相補的オリゴヌクレオチド414を形成するために伸長される。標的オリゴヌクレオチド408及び相補的オリゴヌクレオチド414は、伸長された初期プライマー446、448から変性され、かつ固体支持体406(例えば、チップ、ウェファー、又は粒子)上の捕獲オリゴヌクレオチド402と接触させられる。標的オリゴヌクレオチド414は、タグ配列412に相補的な分子認識配列404を有する捕獲オリゴヌクレオチド402へハイブリダイズする。検体中の特定の検体-特異的配列の存在又は非存在は、捕獲オリゴヌクレオチドの各固有の基と関連したレポーターの存在又は非存在の観察により決定される。
【0084】
別のアッセイの例において、第一のプライマー468及び第二のプライマー472は、検体470と接触させられ、伸長され、標的オリゴヌクレオチド458及び相補的オリゴヌクレオチド464を形成する。図示した例において、第一及び第二のプライマー468、472は、両方ともアレル-特異的であるが、異なるアレルに対して特異的である。第一及び第二のプライマー468、472に加え、他の第一及び第二のプライマー469、473が、他のアレルが試料中に存在する場合にはこれを増幅するために含まれる。
【0085】
第一のプライマー468は、タグ配列の第一の部分462aを含み、かつ第二のプライマー472は、タグ配列の第二の部分462bを含む。これらの部分462a、462bのひとつは、レポーター466(又はレポーターのカップリング剤)を含む。典型的には、タグ配列の部分462a、462bは、プライマー468、472の伸長が、タグ配列を介して進行しないように、構成されるであろう。例えば、部分462a、462bは、タグ配列部分をプライマー468、472の伸長可能な部分に連結する塩基として、非-標準塩基を含むことができる。この態様において、非-標準塩基の相補物であるヌクレオチド三リン酸は、PCR増幅過程には含まれない。あるいは、化学リンカーを用い、タグ配列部分を、このプライマーの伸長可能な部分に連結することができる。適当なリンカーの例は、n-プロピル、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、1',2'ジデオキシリボース、2'-O-メチルリボヌクレオチド、デオキシイソシチジン、又はポリメラーゼを中断するいずれかの連結を含むが、これらに限定されるものではない。
【0086】
連結オリゴヌクレオチド452は、支持体456上に提供される。この連結オリゴヌクレオチド452は、タグ配列の部分462a、462bに相補的な部分453a、453bを含む。これらの部分453a、453bは、2種のヌクレオチド配列の5'(又は3')末端への連結が可能な化学的又はヌクレオチド性リンカー454により連結される。
【0087】
標的オリゴヌクレオチド458及び相補的オリゴヌクレオチド464は、支持体456と接触させられ、かつ捕獲オリゴヌクレオチド452は、タグ配列の各部分462a、462bを有する捕獲オリゴヌクレオチドの対応する部分453a、453bにハイブリダイズする。標的オリゴヌクレオチド458及び相補的オリゴヌクレオチド464の残余は、典型的には図8に図示されたような構造を形成するであろう。
【0088】
非 - 標準塩基が PCR 技術により追加されるアッセイ
標識された天然のヌクレオチド塩基は多くの用途を有するが、標識された天然のヌクレオチドに関連した欠点がある。例えば、標識された天然のヌクレオチド塩基の位置特異的取込みは、実現が困難である。一般に、アデニンを含むオリゴヌクレオチド中のある位置を標識するためには、標識されたアデノシン三リン酸(dATP*)が、オリゴヌクレオチド鋳型dGTP、dCTP及びdTTP、並びにポリメラーゼ酵素を含有する反応混合液に基質として添加される。反応混合液中の全てのdATPが標識されている場合は、そのオリゴヌクレオチド配列中の全てのアデニン残基が標識されるであろう。反応混合液中の一部のdATPが標識されている場合は、その配列中の無作為な位置のアデニン残基が標識される。従って、オリゴヌクレオチド中の単独のヌクレオチド残基を標識することは、極めて難しい。
【0089】
複数の標識ヌクレオチド残基の取込みに関連した問題を克服するために、標識されたジデオキシリボ核酸が使用される。ジデオキシリボ核酸は、3'のヒドロキシル基を欠いているので、このオリゴヌクレオチドは、標識されたジデオキシリボ核酸が導入された位置で終結している。標識されたヌクレオチドの位置を決定するために、このオリゴヌクレオチドを配列決定するためにラダー(ladder)が泳動される。このオリゴヌクレオチドは、ジデオキシリボ核酸が導入された位置で終結しているので、ジデオキシリボ核酸は一般にはオリゴヌクレオチド鎖の増幅による連結には使用されない。
【0090】
図9は、非-標準塩基のPCRによる取込みを含む、本発明のアッセイのひとつの型を図示している。第一及び第二のプライマー518、522は、検体520とハイブリダイズされ、伸長される。プライマー522のひとつは、伸長された場合に標的オリゴヌクレオチド508となる非-標準塩基550を含む。場合により、追加の塩基は、非-標準塩基550の後に提供され得る。非-標準塩基550を有する標的オリゴヌクレオチド508は、その後捕獲オリゴヌクレオチド502a、502bを含む固体支持体506a、506bと接触させられる。図9に図示された固体支持体は、前述の粒状支持体であるが、単独の固体支持体(例えばチップ又はウェファー)を使用することもできることは認められるであろう。
【0091】
捕獲オリゴヌクレオチド502a、502bは異なり、かつ各々、異なる支持体506a、506bに付着され、その結果この捕獲オリゴヌクレオチドは、それが付着された支持体の固有の特性を観察することにより認識され得る。ひとつの捕獲オリゴヌクレオチド502aは、標的オリゴヌクレオチド508とハイブリダイズしている。この態様の捕獲オリゴヌクレオチド502aは、標的オリゴヌクレオチド508の検体-特異的配列の少なくとも一部と相補的である配列を有する。
【0092】
標的オリゴヌクレオチド508のハイブリダイゼーション後、捕獲オリゴヌクレオチド502aは、dATP、dUTP、dGTP、dCTP、及び標的オリゴヌクレオチド508上の非-標準塩基550に相補的な第二の非-標準塩基(例えば、dイソ-GTP)552のヌクレオチド三リン酸を含有するPCR溶液中で伸長される。第二の非-標準塩基552は、レポーター516(又はレポーターのカップリング剤)で標識される。捕獲オリゴヌクレオチドは伸長されるので、レポーター516を伴う第二の非-標準塩基552は、非-標準塩基550に対向して伸長された捕獲オリゴヌクレオチドに取込まれる。従って、粒状支持体の特定の群上のレポーターの存在又は非存在は、捕獲オリゴヌクレオチドと会合した特定の標的オリゴヌクレオチドの存在又は非存在を示している。
【0093】
図10は別のアッセイを図示している。このアッセイにおいて、第一のプライマー618はタグ配列612を含み、かつ第二のプライマー622はその5'末端に非-標準塩基621(又は非-標準塩基を含む配列)を有する。プライマー618、622は、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、及び非-標準塩基621と相補的な非-標準塩基のヌクレオチド三リン酸の存在下で、検体620を増幅する。この非-標準塩基ヌクレオチド三リン酸は、レポーター616(又はレポーターのカップリング基)で標識され、かつ非-標準塩基621に対向して取込まれ、標的オリゴヌクレオチド608を形成する。
【0094】
標的オリゴヌクレオチド608は、分子認識配列を有する捕獲オリゴヌクレオチド602を有する固体支持体606と接触させられる。この分子認識配列のひとつが標的オリゴヌクレオチド608のタグ配列612と相補的であるならば、標的オリゴヌクレオチド608は、捕獲オリゴヌクレオチド602とハイブリダイズするであろう。その後前述の例に説明したように検出が行われる。
【0095】
図11は更に別のアッセイを図示している。このアッセイにおいて、第一のプライマー718はタグ配列712を含み、及び第二のプライマー722は非-標準塩基721、それに続けてその5'末端に天然塩基723(又は天然の塩基配列)を有する。プライマー718、722は、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTPの存在下において、検体720を増幅し、部分的に伸長された標的オリゴヌクレオチド707及びその相補物714のみを形成する。部分的に伸長された標的オリゴヌクレオチドの伸長は、非-標準塩基721により制限される。この最初の増幅の後、増幅産物707、714は洗滌され、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTPが除去される。
【0096】
その後、第二の伸長工程が、非-標準塩基721に相補的な非-標準塩基の三リン酸及び少なくとも天然塩基723に相補的な天然の塩基の三リン酸の存在下で実行される。この天然塩基の三リン酸は、レポーター716(又はレポーターのカップリング基)により標識されており、かつ天然塩基723に対向して取込まれ、標的オリゴヌクレオチド708を形成する。
【0097】
標的オリゴヌクレオチド708は、分子認識配列を備えた捕獲オリゴヌクレオチド702を有する固体支持体706と接触させられる。分子認識配列の一つが標的オリゴヌクレオチド708のタグ付け配列712と相補的であるならば、その標的オリゴヌクレオチド708は捕獲オリゴヌクレオチド702とハイブリダイズするであろう。その後後前述の例に説明したように検出が行われる。
【0098】
一つの態様において、アレル-特異的第二のプライマーが第一のプライマーと同様に使用される。アレル-特異的第二のプライマーは、検体にアニーリングする第二のプライマーの一部において差別化される。異なる天然塩基723が各アレルについて選択される。第二の伸長工程時に、塩基が非-標準塩基721及び天然塩基723に対向して追加される場合、2種又はそれ以上の天然塩基のヌクレオチド三リン酸が伸長混合物に添加される。異なるヌクレオチド三リン酸は、異なるレポーターで標識される。従って、天然塩基723がA又はCである場合、そのアレルに応じて、伸長工程において使用されるdTTP及びdGTPは異なるレポーターで標識される。レポーターの固有の性質は、特定の、会合されたアレルの存在を決定するために使用され得る。従って、例えば、4種の異なるアレルを、本方法を用いて同時に試験し、レポーターを適切に選択して、異なる4色を用いて表示することができる。
【0099】
その他のアッセイ
図16に図示したひとつのアッセイにおいて、捕獲オリゴヌクレオチド902の2種又はそれ以上の群が調製される。捕獲オリゴヌクレオチド902の各群は、固有の分子認識配列904を含む。場合により、各群の分子認識配列は少なくとも1個又は複数の非-標準塩基を含む。捕獲オリゴヌクレオチドも、典型的には固体支持体906への付着のための反応性官能基を含むが、前述のような他の付着法も使用することができる。
【0100】
ある態様において、アッセイのための支持体は、粒状支持体(例えば、ビーズ)である。本願明細書において説明されたアッセイのいずれかは、単独の固体支持体上、粒状支持体上、又はいずれか他の支持体上で行うことができることは理解されるであろう。粒状支持体は、粒子群に分割され、各粒子群は、その粒子群を他の群から識別する特徴(例えば、色、形状、サイズ、密度、又は他の化学的もしくは物理的特徴)を有する。捕獲オリゴヌクレオチドの各群は、1種又は複数の粒子の群に連結される。これは、捕獲オリゴヌクレオチドの特定群と特定粒子群との会合を生じ、固有の粒子支持体特性の観察による捕獲オリゴヌクレオチドの決定を可能にする。
【0101】
別の態様(示さず)において、アッセイのための支持体は、例として単独の固体支持体、例えば、ガラス、金属、プラスチック、又は無機チップなどであることができる。捕獲オリゴヌクレオチドは、支持体上に配置され、典型的には前述の方法(例えば、捕獲オリゴヌクレオチド及び支持体上の反応基を介した連結、支持体上に配置された結合剤の使用、又は捕獲オリゴヌクレオチドの架橋)のひとつにより保持される。これらの基の各々は、固体支持体の1種又は複数の固有の領域に配置され、その結果この領域(複数)は、特定の捕獲オリゴヌクレオチドと会合することができる。
【0102】
図16に戻り、標的オリゴヌクレオチド908は、アッセイされた試料中に存在する場合は、第一のプライマー909及び第二のプライマー911と接触させられる。第一及び第二のプライマー909、911は、アレル-特異的であるか、もしくは好ましくは、標的オリゴヌクレオチドのアレル特異的部分に相補的でない(すなわち、関心のあるアレル特異的部分は、これら2種のプライマーにハイブリダイズする領域の間の標的オリゴヌクレオチド内に位置している)。第二のプライマー911は、非-相補的付着領域905も含む。この非-相補的レポーター付着領域905は、場合により1個又は複数の非-標準塩基を含む。標的オリゴヌクレオチド908は、第一及び第二のプライマー909、911並びにPCR技術を用い増幅され、レポーター付着領域905を含む増幅産物907を得る。
【0103】
その後、増幅産物907は、伸長されるアレル特異的プライマー920a、920bと接触され、これは次に特定のアレルが存在する場合には、PCRに類似した反応条件及び反応成分を用い、アレル特異的伸長産物922を産生する。各アレル特異的プライマー920a、920bは、異なる分子認識配列904及び捕獲オリゴヌクレオチド902に対して相補的であるアレル-特異的タグ配列912a、912bを有する。アレル特異的プライマー920a、920bが伸長される場合、付着領域905の1個又は複数の塩基に対し相補的である標識されたヌクレオチド925(又はオリゴヌクレオチド)が提供される。標識されたヌクレオチド925又はオリゴヌクレオチドは、レポーター又はビオチンのようなレポーターの付着のためのカップリング剤を含むことができる。
【0104】
伸長産物922の形成後、捕獲オリゴヌクレオチド902及びレポーター930(レポーターが既に付着されていない限りは)が接触される。捕獲オリゴヌクレオチド902及び支持体906は、どのアレル(複数)が試料中に存在するかを同定し、かつレポーターは、伸長産物922の検出を提供する。粒子支持体のアッセイに関しては、粒子は、固有の特性に従い分離され、その後、どの粒子906が捕獲オリゴヌクレオチド902及び伸長産物922を介して粒子に連結されたレポーターを有するかが決定される。分離を達成する技術は、例えば、フローサイトメトリーを含む。レポーター基の存在は、試料が特定のアレル-特異的タグ配列と会合したアレルを含むことの指標である。
【0105】
分子認識配列の選択
複数の分子認識配列が、単一の試料の適用により1種よりも多い検体-特異的配列を検出することができるアッセイシステムの構築において使用される場合、典型的には異なる分子認識配列の集団が必要である。これらの分子認識配列は、ストリンジェンシー条件の望ましいセットの下で検体-特異的配列の信頼できる検出を可能にするのに十分な程に異なることが好ましい。様々な異なる方法を用い、分子認識配列の収集を選択することができる。いくつかの使用することができる方法及び判定基準を以下に説明する。これらの方法及び判定基準は、個別に又は組合せて使用することができる。
【0106】
以下は、分子認識配列集団の作成において使用することができる判定基準の例である:配列中の塩基の数、配列中の非-標準塩基の数、配列中の連続した天然の塩基の数、任意の2個の配列中で同一の連続した塩基の数(前向き又は後向きのいずれか)、特異的に必要な配列(例えば、3'もしくは5'末端又は両方のGCクランプ)及び見積もった融解温度又は実際の融解温度。Tmを決定する方法の一例は、Peyretらの論文(Biochemistry、38:3468-77(1999))に説明されており、これは本願明細書に参照として組入れられている。非-標準塩基は、例えば他の塩基の値を用い(例えば、イソ-G/イソ-CはG/Cを用いて推定される)、もしくは以下に説明したような実験データを用いて、推定又は説明することができる。
【0107】
下記は、分子認識配列の収集を形成するために使用することができる一連の工程である:
1)天然の塩基及び望ましい非-標準塩基(例えば、イソ-C、イソ-G、又は両方)を使用する、長さn1(例えば、8、9、又は10個のヌクレオチド)を有するあらゆる可能性のあるオリゴヌクレオチドのセットの作成。
2)場合により、オリゴヌクレオチドは特定のサブ配列(例えば、3'もしくは5'末端又は両末端のGCクランプ)を有することが必要。
3)少なくともn2個の非-標準塩基を伴わない(例えば、少なくとも2個のイソ-C塩基を伴わない)オリゴヌクレオチド、もしくはn3個より多い非-標準塩基を伴う(例えば、2個より多いイソ-C塩基を伴う)オリゴヌクレオチド、又は両方(例えば、正確に2個のイソ-C塩基を伴うオリゴヌクレオチドのみを許容)のオリゴヌクレオチドの除去。
4)場合により、続けてn4個(例えば、4又は5個)の天然塩基を伴うオリゴヌクレオチドの除去。
【0108】
5)残余オリゴヌクレオチドのひとつの選択およびオリゴヌクレオチド配列のいずれかの場所に同じ順でn5個の塩基(例えば、5又は6個の塩基)を有する残余のオリゴヌクレオチドの排除。排除されなかったオリゴヌクレオチドの各々についての繰り返し。
6)場合により、残余オリゴヌクレオチドのひとつの選択およびその逆相補物(例えば、「ACT」の逆相補物は「AGT」である)の決定、続いて、逆相補物の配列の一部と同じであるn6個の連続する塩基(例えば、4又は5個の塩基)を有する他のオリゴヌクレオチドの排除。排除されなかったオリゴヌクレオチドの各々についての繰り返し。
7)場合により、望ましい温度範囲内、望ましい温度限界を上回る、又は望ましい温度限界を下回る、推定される又は実際の融解温度(Tm)を有する残余オリゴヌクレオチドのみの選択。例えば、室温(約22℃)を下回る融解温度を有するオリゴヌクレオチドを排除することができる。
【0109】
本発明は、添付図面と共に、上記の本発明の様々な態様の詳細な説明を考慮し、より完全に理解することができる。
【0110】
(実施例)
実施例 1
コード配列及びタグ配列のクロス - ハイブリダイゼーション分析
この分析に使用される装置には、Luminex(登録商標)100及びLuminex(登録商標)ミクロビーズ、DNA合成装置(Northwestern Engineering社)、スポットチェック合成の収量のための分光光度計、オリゴヌクレオチド品質管理のための薄層クロマトグラフィー(TLC)(S1250F TLCプレート-シリカゲル、JTBaker社)、遠心分離機、音波処理装置(Ney Dental社)、Vortex Genie(Vortex社)、及び様々なピペット(2、20、200、及び1000μL)が含まれる。
【0111】
100を超えるオリゴヌクレオチド(分子認識配列)及びそれらの相補物(タグ配列)のセットを設計して合成した。これらオリゴヌクレオチドのふたつのセットは、非-標準ヌクレオチド(イソC及びイソG)(EraGen Biosciences社、マジソン、WI)及び天然ヌクレオチド(A、G、C、及びT)(Perkin-Elmer/ABI社)を含み、かつ長さは9〜10塩基とした。オリゴヌクレオチドの第一のセットは、分子認識配列に割り当て、これをアミノ修飾剤(C6-TFA、Glen Research社)で5'末端を標識した。オリゴヌクレオチドの相補物セットは、タグ配列として割り当て、Cy3(Glen Research社)で5'末端を標識した。
【0112】
以下の試薬は、分子認識配列の固有のLuminexビーズへの連結に使用した:0.1mM pH4.5、2-[N-モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)(Sigma社)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-HCl(EDC)(Pierce社)、0.02%(v/v)Tween(Sigma社)、0.1%(w/v)SDS(Sigma社)。
ハイブリダイゼーション工程は、10mM Tris(Sigma社)、1mM EDTA(Sigma社)、200mM NaCl(Aldrich社)、10mM MgCl2(Aldrich社)、及び1%(w/v)PEG8000(Sigma社)を含有するハイブリダイゼーション緩衝液Sourav 0.5を含ませた。
【0113】
分子認識配列の98種は、MES中に1nmol/μLとなるように希釈した。Luminex(登録商標)ビーズの98種の固有セットを連結のために調製した。これらのビーズを20秒間音波処理し、10秒間ボルテックスした後、小分けした。ストックビーズ(1.25x107ビーズ/mL)から、5,000,000個のビーズを選択し、1.5mL微量遠心管に入れた。ビーズを、10,000rcfで1分間遠心した。その後ビーズをデカントし、ビーズを撹乱しないように注意した。最後に、ビーズを50μL のMESに入れ、音波処理し、ボルテックスした。分子認識配列を個別のビーズに連結するために、各分子認識配列1nmolを、独自のビーズセットのひとつに添加した。次に、この混合物へ新鮮なEDC(20mg EDC/1mL ddH2O)1.75μLを添加し、音波処理し、ボルテックスした。その後この混合物を、室温暗所で30分間インキュベーションし、10分毎にボルテックスした。30分後、更に新鮮なEDCを1.75μLを添加し、30分間インキュベーションし、10分毎にボルテックスした。
【0114】
連結後、Tween-20 400μLを添加し、ボルテックスし、遠心し(10,000rcf/1分)かつデカントすることによりビーズを洗滌した。次にSDSを400μL添加し、遠心し、デカントし、最後にMES中に100μLとし、計数した。
相補的オリゴヌクレオチド(タグ配列)を、TLC及びポリアクリルアミドゲルを用いて定量及び定性し、MOPS中50fmol/μLの最終作業濃度に希釈した。
【0115】
計数後、分析のために、Luminex(登録商標)ビーズ/分子認識配列を、98種ビーズセット(1000ビーズ/ビーズ領域/ウェル)と一緒にした。98種ビーズセットから、50種ビーズセット(2500ビーズ/ビーズ領域/ウェル)を作成した。表1は、50種ビーズセット用の分子認識配列を含み、かつ表2は、98種ビーズセット用の分子認識配列を含む。
【0116】
クロスハイブリダイゼーション実験を設定するために、50フェムトモルのタグ配列(1->98)を、ふたつの96ウェルプレート中のウェルにピペッティングした(ウェル1及び2は対照に使用した)。Luminex(登録商標)100の現在の制限により、バックグラウンドの差し引きのための2個の対照(タグ配列なし)と共に、データセットは98種のタグ配列へと刈り込まれる。
【0117】
ビーズのマスターミックス(98mix)10μL/ウェルを、その後、各ウェルへ、2X Sourav 0.5ハイブリダイゼーション緩衝液31μL及びddH2Oの十分量と共に添加し、最終容量62μL/ウェルとした。これらの試薬をよく混合し、室温でおよそ10分間インキュベーションした。試料は、Luminex(登録商標)100上でフローサイトメトリーにより直ぐに分析した。
【0118】
50種ビーズのマスターミックスも、その相補的分子認識配列及びタグ付け配列と共に試行したが、タグ配列は1ウェル当り500fmolとした。
【0119】
得られたデータは、両方のセットに関するビーズ1個当りの蛍光強度中央値(MFI)として報告した。図12は、98種ビーズマスターミックス実験において収集されたデータの3D表面図のグラフを描いた結果を示す。Y軸は、分子認識配列を表し、X軸は、タグ配列を表す。図13は、50種ビーズマスターミックス実験において収集されたデータの3D表面図のグラフを描いた結果を示す。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
表2.つづき
【0123】
実施例 2
核酸二重鎖安定性の予測に関する最隣接パラメータに対する非 - 標準塩基分布寄与の予備的決定
温度コントローラ及び試料キャリッジを備えたBeckman DU-7500分光計を利用した。6個の試料を、正確に温度制御しながら同時に測定した。試料濃度について100倍濃度範囲をカバーするために、路長0.1cm、0.2cm、0.5cm及び1.0cmの石英キュベットをHellma社(USA)から入手した。DNAはPerkin-Elmer/ABI社のModel 392 DNA合成装置上で合成した。TLC Chromatography Tank(Fisher社)、及びTLCプレート(Si250F、JTBaker社)。Savant SpeedVacおよびSep-pak C-18精製カートリッジ(Waters社)、UVランプ、ボルテックス、10ccシリンジ、及び様々なピペッター(2、20、200、1000μL)をDNA調製に使用した。
【0124】
オリゴヌクレオチドは、天然の(A、G、C、及びT)ヌクレオチド(Perkin-Elmer/ABI)並びにイソC、及びイソG(EraGen Biosciences社、マジソン、WI)から合成した。この合成した自己相補的配列及び非-自己相補的配列を、表3及び4に示した。
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】
【0127】
下記試薬を、オリゴヌクレオチドの精製及び融解実験に使用した:TLC精製を、5〜6時間、n-プロパノール/アンモニア/水(容積比55:35:10)による溶離により行った(Chou, S.-H.、Flynn, P.、及びReid, B.、Biochemistry、28:2422-2435 (1989)、これは本願明細書に参照として組入れられている)。ハイブリダイゼーション実験は、脱気した1x SL緩衝液(1.0M NaCl(Fisher社)、10mMカコジル酸ナトリウム(Fisher社)、0.5mM Na2EDTA(Fisher社)、pH7)中で行った(SantaLucia, J.、Allawi, H.、及びSeneviratne, P.A.、Biochemistry、35:3555-3562 (1996)、これは本願明細書に参照として組入れられている)。
【0128】
熱力学的パラメータの決定は、Meltwin(登録商標)v3 .0を、Petersheim, M.及びTurner, D. H.の論文(Biochemistry、22:253-263 (1983)、これは本願明細書に参照として組入れられている)に説明されたように使用し、融解曲線データから得た。
【0129】
オリゴヌクレオチドは、合成後に、アンモニア中50℃で一晩脱保護した後、凍結乾燥し、各試料を175μL ddH2O中に溶解し、かつ5〜6時間溶離することによりTLCで精製した。ほとんどの場合、最少の移動バンドが可視化され、これをプレートから掻出し、3mL ddH2Oで3回溶離した。これらのオリゴヌクレオチドは、更に脱塩し、Sep-pak(登録商標)カラムにより、30%アセトニトリル、10mM炭酸水素アンモニウム、pH7で溶離することにより、精製し(SantaLucia, J.、Allawi, H.、及びSeneviratne, P.A.、Biochemistry、35:3555-3562 (1996))、かつ最終的にSpeedVac(登録商標)において乾燥した。
【0130】
自己相補的オリゴヌクレオチドを定量し、各々2.0 OD260を収集し、SpeedVac(登録商標)において再度乾燥した。その後オリゴヌクレオチドを連続希釈し、1x SL緩衝液中の100倍希釈シリーズを得た。吸光度対温度のプロフィールを、様々な注文生産したミクロ-キュベット、試料キャリッジ及び温度制御装置を用い、Beckman DU-7500分光光度計で測定した。試料の希釈シリーズに関しては、表5及び6を参照のこと。この希釈シリーズは、表3及び4の各試料について調製した。
【0131】
【表6】
表5.Aシリーズ
【0132】
試料A1-A5を試行した後、第二シリーズの希釈液を集めた。Bシリーズに関しては、最後の試料の残りの24.7μLを、キュベットA-3、A-4及びA-5(合計〜172.5μL)中の希釈液及び追加の1xSL緩衝液345μLを一緒にした。
【表7】
表6.Bシリーズ
【0133】
キュベット中に入れた体積は、融解時の試料の熱膨張のために、各キュベット中において、およそ4%の上部空間を残すようにした。
各試行に関して、試料は、更に脱気し、その後温度を85℃に5分間上昇し、次に10℃で5分間以上冷却することによりアニーリングした。凝縮を制限するために、乾燥アルゴンのブランケットを低温で使用した。A及びBシリーズについて、260nm及び280nmで同時に測定した。試料は、10℃から90℃へ1.0℃/分の一定速度で加熱した。
【0134】
融解実験から収集したデータは、その後、Tm-1対ln(CT)のカーブフィット分析によりMeltwin(登録商標)ソフトウェアを用い解析した。CTは総鎖濃度であり、及びTm-1は融解温度逆数である(Borer, P. N.、Dengler, B.、Tinoco, I,. Jr.、及びUhlenbeck, 0. C.、J. Mol. Bid.、86:843-853 (1974)、本願明細書に参照として組入れられている)。
【0135】
非-自己相補的オリゴヌクレオチドは、2.0 OD260(260nmでの光学密度)になるように等モル量で一緒にし、表5及び6の自己-相補的オリゴヌクレオチド希釈シリーズと同じ方法で希釈した。同様の融解データを収集し、Meltwin(登録商標)で非-自己-相補的オリゴヌクレオチドについて解析した。
自己-相補的及び非-自己相補的オリゴヌクレオチドについてMeltwin(登録商標)で決定された得られた熱力学的パラメータを、表7及び8に要約した。
【0136】
【表8】
【0137】
【表9】
【0138】
全ての試料は、濃度依存型TM及び単相性の融解相転移を有する。二重鎖形成に対するイソC及びイソGの寄与はかなり大きいように見え、天然のワトソン-クリックオリゴヌクレオチド(A、G、C、及びT)に対し、イソC/イソG対当りさ5℃(試料3B及び4C)〜10℃ (試料3C及び4E)まで増大した。
表7及び8は、AEGIS塩基が天然のDNAと混合された場合の、最近接効果の程度をいくつか示している。
【0139】
実施例3及び比較例
位置ゲート(Site Gated)取込み
第一のプライマー 5'AGAACCCTTTCCTCTTCC (配列番号:154)
標的 5' AAGAACCCTTTCCTCTTCCGATGCAGGATACTTAACAATAAATATTT(配列番号:155)
第二プライマー CTACGTCCTATGAATTGTTATTTATAAAXAGGACAGACG 5'(配列番号:156)
X=イソCTP
第一のプライマー、標的、及び第二のプライマーの配列を、各々、配列番号:154、配列番号:155、及び配列番号:156に示した。
【0140】
PCRは、下記の混合物を用いて行った:20μl反応容量中に、0.2μM第一のプライマー、0.2μM第二のプライマー、50fM標的、各50μMのdGTP、dATP、cTTP及びdCTP、10mM Tris、pH8、0.1%BSA、0.1%Triton X-100、0.1μg/μl分解したニシン精子DNA、40mM KAc、2mM MgCl2、1U Amplitaq Stoffel(Perkin Elmer Biosciences社、フォスターシティ、CA)。混合物は、95℃で2分間維持した。その後、95℃で30回サイクルリングし、1秒維持し、58℃で1秒維持した。最後に、混合物を、58℃で2分間維持した。
【0141】
ふたつのPCR反応混合物を調製した。取込まれなかったdNTPを除去するために、各PCR反応混合物を、AutoSeq(登録商標)G-50ミクロスピンカラム(Amersham Pharmacia Biotech社、ピスカタウェイ、NJ)を用い脱塩し、このカラム緩衝液を、ddH2Oと交換し、その後試料を脱塩した。脱塩した試料を、下記の反応成分についてそれらの最終濃度に調節した:25μl反応容量中に、10mM Tris、pH8、0.1%BSA、0.1%Triton X-100、0.1μg/μl分解したニシン精子DNA、40mM KAc、2mM MgCl2、1U/反応Amplitaq Stoffel(Perkin Elmer Biosciences社、フォスターシティ、CA)及び10μM Cy3-dTTP(NEN Life Science Proceeds社、ボストン、MA)。加えて、dイソGTPを、下記の濃度で添加した:0μM(比較例)又は40μM(実施例3)。反応混合液を、68℃で15分間インキュベーションし、得られた反応液5μlを、10%変性ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により試験した。このゲルを、595 フルオロイメージャー(Fluorimager) (Molecular Dynamics社、サニーベール、CA)を用い、Cy3含有伸長産物について画像化した。
【0142】
結果(データは示さず)は、dイソGTPが存在しない場合は、最終PCR工程時には、第一のプライマーの更なる伸長がないことを示した(すなわち、第二のプライマーのイソ-Cに対する塩基の誤取込みはほとんど又は全くない)。
【0143】
実施例 4
標識されたデオキシイソグアノシン 5'- 三リン酸の合成
下記の化学反応に関して、ピロリン酸トリブチルアンモニウムは、Sigma社から購入し;ビオチンN-ヒドロキシスクシンイミドエステルは、Pierce Chemical社から購入し;他の化学物質は全て、Aldrich Chemical社又はFisher Chemical社から購入し、更に精製することなく使用した。溶媒は、4Å分子篩上で乾燥した。反応は、乾燥炉で乾燥したガラス製品中、乾燥アルゴン下で行った。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル(230〜425mesh)で行った。
【0144】
略号:
Ac2O:無水酢酸
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMAP:4,4'-ジメチルアミノピリジン
DMT:4,4'-ジメトキシトリチル
Et3N:トリエチルアミン
MeCN:アセトニトリル
MeOH:メチルアルコール
Tol:p-トルイル
【0145】
1-(p,p'- ジメトキシトリチル )- ヘキサメチレンジアミン (2)
ヘキサメチレンジアミン(10eq., 375mmol, 43.5g)を、ピリジンから2回共蒸発させ、100mlピリジンに溶解した。DMAP(0.1eq., 3.75mmol, 457mg)を添加し、反応フラスコを氷浴に入れた。100mlピリジン中に溶解したDMT-クロリド(1eq., 37.5mmol, 12.69g)を、2時間かけて滴下した。これを、室温で4時間攪拌し、MeOH(5ml)を添加し、この反応混合液を濃縮し、残留した残渣を、水性NaHCO3/酢酸エチルで抽出した。有機層を、NaHCO3で水溶液で2回洗滌し、乾燥し、かつ溶媒を蒸発させた。得られた生成物を、更に精製することなく、次工程で使用した。
収量:14.895g(35.634mmol, 95%)、粘着性の油状物。
【0146】
2- クロロ -6-(6-p,p'- ジメトキシトリチルアミノヘキシル )- アミノプリン -2'- デオキシ -3',5'- ジトルイルリボシド (3)
化合物2(1.3eq., 31.916mmol, 13.34g)を、DMFと共蒸発させ、100ml DMF中に溶解した。100ml DMF中に溶解したジイソプロピルエチルアミン(3.9eq., 95.748mmol, 16.65ml)及び化合物1(1eq., 24.551mmol, 13.282g)を添加し、これを室温で3時間攪拌した。これを濃縮し、残渣を水性NaHCO3/酢酸エチルで抽出し、有機層を乾燥し、かつ溶媒を蒸発させた。残渣を、エーテルで2回粉砕し、得られた固形生成物を、真空乾燥後に、更に精製することなく、使用した。
【0147】
2- ベンジルオキシ -6-(6-p,p'- ジメトキシトリチルアミノヘキシル )- アミノプリン -2'- デオキシリボシド (4)
化合物3(1eq., 19.23mmol, 17.74g)を、DMF(25ml)中に溶解し、かつベンジルアルコール(128mL)中のNaH溶液(10eq., 192.3mmol, 鉱油の60%分散体7.69g)に添加した。この反応混合液を加熱し(120℃, 6時間)、その後室温で攪拌し(15時間)、その後セライト上で濾過し、濾液を蒸発させ、残渣を抽出し(酢酸エチル/水)、有機層を洗浄し(NaHCO3-溶液)、乾燥し、溶媒を蒸発させ、残渣をエーテル/ヘキサン1:10で5回粉砕した。
TLC:CHCl3/10% MeOH、Rf=0.26
収量:10.280g(13.562mmol, 2工程について70.5%)、泡状物。
【0148】
2- ベンジルオキシ -6-(6-p,p'- ジメトキシトリチルアミノヘキシル )- アミノプリン -2'- デオキシ -5'-O-p,p'- ジメトキシトリチルリボシド (5)
化合物4(14.7388mmol, 11.172g)を、ピリジンと共沸し、ピリジン150ml中に溶解し、及び pyridine and DMAP(0.25eq., 3.6847mmol, 450mg)を添加した。フラスコを氷浴中に入れ、DMTCl(1.5eq., 22.108mmol, 7.484g)を2時間かけてゆっくり添加した。これを、室温で22時間攪拌し、その後MeOH(1ml)を添加し、この反応混合液を濃縮し、残渣を抽出した(クロロホルム/水性NaHCO3)。有機層を乾燥し、溶媒を蒸発し、残渣をエーテル/ヘキサン1:1で粉砕し、過剰なDMTを除去し、不溶性固形生成物を乾燥し、更に追加の精製を行うことなく使用した。
収量:14.890g(14.047mmol, 95%)、明褐色の泡状物。
【0149】
2- ベンジルオキシ -6-(6-p,p'- ジメトキシトリチルアミノヘキシル )- アミノプリン -3'-O- アセチル -2'- デオキシ -5'-O-p,p'- ジメトキシトリチルリボシド (6)
化合物5(14.047mmol, 14.89g)を、ピリジンと共沸し、ピリジン200mlに溶解し、DMAP(0.25eq., 3.5117mmol, 428mg)、Et3N(5eq.,70.235mmol, 9.7ml)及びAc2O(2.5eq., 35.1175mmol, 3.582g)を添加した。これを室温で4.5時間攪拌し、その後MeOH(2ml)を添加し、この反応混合液を濃縮し、かつ残渣を抽出した(酢酸エチル/水性NaHCO3)。有機層を乾燥し、溶媒を蒸発し、かつ残渣を酢酸エチル/ヘキサン/Et3Nの30:60:1、その後65:35:3の一段階勾配を用いカラムクロマトグラフィーにより精製した。収量:5.93g(5.385mmol, 38%)、黄色泡状物。
【0150】
2- ベンジルオキシ -6-(6- アミノヘキシル )- アミノプリン -3'-O- アセチル -2'- デオキシリボシド (7)
化合物6(2.471mmol, 2.723g)を、アセトニトリル50ml/水2ml中に溶解し、Ce(NH4)2(NO3)3 (0.3eq., 0.74mmol, 406mg)を添加した。これを45分間還流し、その後更に0.15eq.のCe(NH4)2(NO3)3 (0.37mmol, 205mg)を添加し、かつ還流を1時間続けた。次にこれを蒸発し、残渣をエーテルで粉砕し、DMTを除去し、不溶性生成物を乾燥し、更に精製することなく使用した。
【0151】
2- ベンジルオキシ -6-(6- トリフルオロアセトアミドヘキシル )- アミノプリン -3'-O- アセチル -2'- デオキシリボシド (8)
先に得た化合物7(最大5.385mmol)を、MeOH 30ml/トリフルオロ酢酸エチル5Oml/Et3N 5mlに溶解し、この反応混合液を室温で21.5時間攪拌した。TLC(クロロホルム/17.5% MeOH:Rf=0.72)は、完全な転換を示した。これを蒸発させ、残渣を抽出し(ブライン/酢酸エチル)、有機層を乾燥し、溶媒を蒸発させ、かつ残渣を、クロロホルム/1.5% MeOH、その後17.5%MeOHの一段階勾配を用い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。収量:2.80g (4.714mmol, 87%)泡状物。
【0152】
2- ベンジルオキシ -6-(6- トリフルオロアセトアミドヘキシル )- アミノプリン -3'-O- アセチル -5'- トリホスホリル -2'- デオキシリボシド (9)
イミダゾール(61eq., 306mg, 4.5mmol, 再結晶)を、アセトニトリル(3.6mL)中に溶解し、急冷した(0℃)。その後POCl3(19eq., 0.128mL)及びトリエチルアミン(61eq., 0.633mL)を添加し、この混合液を攪拌し(0℃, 0.5時間)、その後一部(0.309mL)を、化合物8(1eq., 0.074mmol, 44mg)へ添加した。この混合液を攪拌し(室温、0.5時間)、その後ピロリン酸トリブチルアンモニウム (2eq., 0.16mmol, 73mg)を含有するDMF(1.5mL)を添加した。その後反応を24時間後に停止し(2mL, 10%NH4COO)、凍結乾燥した。生成物を、アニオン-交換クロマトグラフィー(Dionex ProPac SAX-10)により20%MeCN及び(NH4)2CO3/20%MeCN勾配を用い精製した。収集した生成物を繰り返し凍結乾燥し、過剰な塩を除去した。収量0.007mmol(10%)、白色固形物。
【0153】
6-(6- アミノヘキシル )- アミノプリン -5'- トリホスホリル -2'- デオキシリボシド (10)
化合物9(0.007mmol)は、メタノール(2.5mL)に溶解し、その後Pd/C(10%, 5mg)及びNH4COO(0.05mmol, 31mg)に添加した。懸濁液を還流し(1時間)、その後触媒を濾過除去し、溶媒を蒸発した。その後残基を28%水酸化アンモニウム(1.5mL, 3時間, 室温)で処理し、その後反応液を乾燥し、生成物をアニオン-交換クロマトグラフィー(Dionex ProPac SAX-10)により20%MeCN及び(NH4)2CO3/20%MeCN勾配を用い精製した。収集した生成物を繰り返し凍結乾燥し、過剰な塩を除去した。収量0.0063mmol(90%)、白色固形物。
【0154】
6-(6- ビオチニルアミドヘキシル )- アミノプリン -5'- トリホスホリル -2'- デオキシリボシド (11)
H2O(40μL)を溶媒とする化合物10(0.88μmol, トリエチルアンモニウム塩)に、ホウ酸ナトリウム(10.5μL, 1M, pH8.5)を添加し、その後ビオチンN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(2.6μmol, 3eq.)を含有するDMF(216μL)を添加した。この反応を進行させ(3時間、55℃)、その後20%MeCNで希釈し、生成物を、アニオン-交換クロマトグラフィー(Dionex ProPac SAX-10)によりH2O及びNH4HCO3溶液の勾配を用い精製した。収率はおよそ70%であった。
【0155】
【化2】
【0156】
実施例 5
標識された塩基の取込み及び固体支持体微小球上の捕獲を利用する、ゲノム DNA のマルチプレックス遺伝子型タイピング
ゲノムDNA試料由来の標的化された核酸配列の増幅、クエリー(query)、及び捕獲の後、9種類の多型性座位の遺伝子型を決定した。第一の工程であるマルチプレックスPCR反応は、対形成したPCRプライマーのマルチプレックス化されたセットを含んだ。PCRプライマーの各対は、公知の多型性部位を包含しているマウスのゲノムDNAの領域とハイブリダイズし、かつ増幅するように設計された第一のプライマーA及び第二のプライマーBを含ませた。第二の工程であるマルチプレックスアレル-特異的プライマー伸長(ASPE)反応は、タグを付けたアレル-特異的プライマーのマルチプレックス化されたセットを含ませた。各タグ付けしたアレル-特異的プライマーは、非-標準ヌクレオチド(イソ-G)を含む5'タグ配列、それに続くc3(n-プロピレン)スペーサー、それに続く先のマルチプレックスPCR工程において増幅されたDNA鎖のひとつにハイブリダイズするように設計された3'配列を含む。アレル特異性は、各々タグ付けしたアレル-特異的プライマーの3'ヌクレオチドにより決定した。タグ付けしたアレル-特異的プライマーのマルチプレックス化したセットは、マルチプレックスPCR増幅した配列のセット中に包埋された(embedded)公知の多型性部位のセットをクエリーするように設計した。標識された三リン酸(dATP-ビオチン)は、ASPE反応に添加し、その結果タグ付けしたアレル-特異的プライマーのアレル-特異的伸長は、dATP-ビオチンの取込みを生じさせた。取込まれていないdATP-ビオチンは、引き続きの捕獲工程の前に除去した。
【0157】
第三の工程であるマルチプレックスASPE反応生成物の捕獲は、独自のLuminex(登録商標)微小球ID(microsphere identity)に各々共有結合された非-標準ヌクレオチド(イソ-C)を含む捕獲配列を使用した。これらの捕獲配列は、ASPE反応を進行する際にタグ付けしたアレル-特異的プライマーのセットにおいて使用したタグ付け配列に相補的であった。フィコエリトリンを添加し、伸長されたタグ付けしたアレル-特異的プライマー鎖上のビオチン標識に結合し、かつ蛍光シグナルを発した。捕獲配列とタグ配列間のハイブリダイゼーションの後、微小球を、Luminex100(登録商標)装置に注入し、各々固有の微小球IDと関連したシグナルを検出した。
マウスゲノムの9種の多型性領域を、この実施例において標的化した:
【0158】
【表10】
【0159】
下記核酸を、本実施例のマルチプレックスPCR工程において使用した:
【0160】
【表11】
【0161】
【表12】
【0162】
PCRプライマーを合成し、1mM MOPS、pH7.5、0.1mM EDTA中に希釈した。PCRプライマーの一部の上にある6FAM又はCy3フルオロ(fluor)は、ポリアクリルアミドゲル上のマルチプレックスPCR反応を調べることが可能であるように追加した。
【0163】
マウスのゲノムDNA試料は、Jackson Laboratory社(バーハーバー、ME)から購入した。全てのゲノムDNA試料を、1mM MOPS、pH7.5、0.1mM EDTA中に5ng/μLで希釈した。PCR反応成分は以下のようであった:
【0164】
【表13】
【0165】
列記した成分の全てのマスターミックスは、最終反応容量25μLに対して1.09X濃度で調製した。23μLのマスターミックスを個々のPCRチューブ内のゲノムDNA鋳型(5ng/μL)2μLと一緒にした。陰性対照は、ゲノムDNA鋳型の代わりに水を含ませた。PCR反応は下記のようにサイクリングした:
【0166】
【表14】
【0167】
PCRサイクリング後、各PCR反応液2μLを、マルチプレックスASPE反応において鋳型として作用するために移した。下記の合成核酸は、マルチプレックスASPE反応のタグ付けしたアレル-特異的(TAS)プライマーとして使用した:
【0168】
【表15】
【0169】
ASPE反応の成分は以下のようにした:
【0170】
【表16】
【0171】
TASプライマー以外の前記成分全てを含有するマスターミックスは、1.36Xで調製した。各ASPE反応液は、11μLのマスターミックス、2μLのマルチプレックスTASプライマー混合物(各0.5μM)、2μLのPCR反応物(先の工程より)からなる。ASPE反応は、下記のようにサイクリングした:
【0172】
【表17】
【0173】
ASPEサイクリングの後、10μLの反応物を、40mM Tris、40mM EDTAを含有する溶液5μLと一緒にし、ポリメラーゼ活性を停止した。この反応液を、G-50カラム上で精製し、取込まれていないdATP-ビオチンを除去した。その後精製したマルチプレックスASPE反応液をLuminex(登録商標)微小球(Luminex社、ヒューストン、TX)に連結された捕獲配列によりデコンボリューション(deconvolute)した。連結微小球は下記の通りである:
【0174】
【表18】
【0175】
連結された微小球は、保存用緩衝液(10mM MOPS、pH7.5、200mM NaCl、1mM EDTA、1%PEG8000、0.05%SDS)中で各微小球IDを同数含有する混合物となるように合わせた。捕獲ハイブリダイゼーション反応の成分は以下の通りである:
【0176】
【表19】
【0177】
列記した成分全てのマスターミックスは、60μLの最終反応体積に対して1.2X濃度で調製した。50μLのマスターミックスを精製したマルチプレックスASPE反応液10μLと一緒にし、室温で10分間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション用緩衝液(10mM MOPS、pH7.5、200mM NaCl、50mM MgCl2、1mM EDTA、1%PEG8000、0.05%SDS)中のストレプトアビジンフィコエリトリン(Molecular Probes社、ユージン、OR)の0.01mg/mL溶液10μLを各捕獲ハイブリダイゼーション反応液に添加し、その後Luminex100(登録商標)装置に注入した。
【0178】
各捕獲ハイブリダイゼーション反応に関して、55μLをLuminex100(登録商標)に60μL/分の速度で注入し、各微小球IDの50個を計測するまで読取りを継続した。蛍光強度の中央値を、各微小球IDに関連した蛍光シグナルの測定値として使用した。この結果は図14に示した。
【0179】
実施例 6
標識された非 - 標準塩基の部位 - 特異的取込み及び固体支持体微小球上の捕獲を使用する、ゲノム DNA のマルチプレックス化された遺伝子型タイピング
ゲノムDNA試料由来の標的化された核酸配列の増幅、クエリー、及び捕獲の後、9種類の多型性座位の遺伝子型を決定した。第一の工程であるマルチプレックスPCR反応は、対形成したPCRプライマーのマルチプレックス化されたセットを含んだ。PCRプライマーの各対は、第一のプライマーA及び第二のプライマーBを含み、第二のプライマーBは、その5'末端近傍に非-標準ヌクレオチド(イソ-C)を含んだ。各プライマー対は、公知の多型性部位を包含しているマウスゲノムDNAの領域とハイブリダイズし、増幅するように設計した。次工程であるマルチプレックスアレル-特異的プライマー伸長(ASPE)反応は、タグを付けたアレル-特異的プライマーのマルチプレックス化されたセットを含ませた。各タグ付けしたアレル-特異的プライマーは、非-標準ヌクレオチド(イソ-G)を含む5'タグ配列、それに続くc3(n-プロピレン)スペーサー、それに続く先のマルチプレックスPCR工程において増幅されたDNA鎖のひとつにハイブリダイズするように設計した3'配列を含ませた。アレル特異性は各々タグ付けしたアレル-特異的プライマーの3'ヌクレオチドにより決定した。タグ付けしたアレル-特異的プライマーのマルチプレックス化したセットは、マルチプレックスPCR増幅した配列のセット中に包埋された公知の多型性部位のセットをクエリーするように設計した。標識された非-標準三リン酸(イソGTP-ビオチン)をASPE反応に添加し、その結果タグ付けしたアレル-特異的プライマーのアレル-特異的伸長は、マルチプレックスPCR反応を進行する際に作成された鋳型鎖の非-標準ヌクレオチド(イソ-C)の対向側の標識された非-標準三リン酸(イソGTP-ビオチン)の取込みを生じさせた。取込まれなかったイソGTP-ビオチンは、その後の捕獲工程の前に除去した。
【0180】
第三の工程であるマルチプレックスASPE反応生成物の捕獲は、固有のLuminex(登録商標)微小球IDに各々共有結合された非-標準ヌクレオチド(イソ-C)を含む捕獲配列を使用した。これらの捕獲配列は、前に行ったASPE反応の際にタグ付けしたアレル-特異的プライマーのセットにおいて使用したタグ配列に相補的である。フィコエリトリンを添加して伸長されたタグ付けしたアレル-特異的プライマー鎖上のビオチン標識に結合させ、蛍光シグナルを生じさせた。捕獲配列とタグ配列間のハイブリダイゼーションの後、微小球を、Luminex100(登録商標)装置に注入し、各々固有の微小球IDと関連するシグナルを検出した。
この実施例においてマウスゲノムの9種の多型性領域を標的化した:
【0181】
【表20】
【0182】
下記核酸を本実施例のマルチプレックスPCR工程において使用した:
【0183】
【表21】
【0184】
【表22】
【0185】
PCRプライマーを合成し、1mM MOPS、pH7.5、0.1mM EDTA中に希釈した。マウスのゲノムDNA試料は、Jackson Laboratory社(バーハーバー、ME)から購入した。全てのゲノムDNA試料を、1mM MOPS、pH7.5、0.1mM EDTA中に5ng/μLで希釈した。PCR反応成分は以下の通りである:
【0186】
【表23】
【0187】
列記した成分の全てのマスターミックスは、最終反応体積25μLに対して1.09X濃度で調製した。23μLのマスターミックスを個々のPCRチューブ内のゲノムDNA鋳型(5ng/μL)の2μLと一緒にした。陰性対照は、ゲノムDNA鋳型の代わりに水を含ませた。PCR反応は下記のようにサイクリングした:
【0188】
【表24】
【0189】
PCRサイクリング後、2μLの各PCR反応物を、マルチプレックスASPE反応において鋳型として機能させるために移した。下記の合成核酸は、マルチプレックスASPE反応におけるタグ付けアレル-特異的(TAS)プライマーとして使用した:
【0190】
【表25】
【0191】
ASPE反応の成分は以下の通りである:
【0192】
【表26】
【0193】
前記成分全てを含有するマスターミックスは、1.15Xで調製した。各ASPE反応液は、13μL マスターミックス及び2μL PCR反応(先の工程より)からなる。ASPE反応は、下記のようにサイクリングした:
【0194】
【表27】
【0195】
ASPEサイクリングの後、40mM Tris、40mM EDTAを含有する溶液5μLを、マルチプレックスASPE反応液へ添加し、ポリメラーゼ活性を停止した。この反応液を、G-50カラム上で精製し、取込まれていないd-イソGTP-ビオチンを除去した。その後精製したマルチプレックスASPE反応液を、Luminex(登録商標)微小球(Luminex社、ヒューストン、TX)に連結された捕獲配列によりデコンボリューションした。連結微小球は下記の通りである:
【0196】
【表28】
【0197】
連結微小球は、保存用緩衝液(10mM MOPS、pH7.5、200mM NaCl、1mM EDTA、1%PEG8000、0.05%SDS)中で、各微小球IDを同数含有する混合物となるように合わせた。捕獲ハイブリダイゼーション反応の成分は以下の通りである:
【0198】
【表29】
【0199】
列記した成分全てのマスターミックスは、60μLの最終反応体積に対して1.2X濃度で調製した。50μLのマスターミックスを精製したマルチプレックスASPE反応液10μLと一緒にし、室温で10分間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション用緩衝液(10mM MOPS、pH7.5、200mM NaCl、50mM MgCl2、1mM EDTA、1%PEG8000、0.05%SDS)中のストレプトアビジンフィコエリトリン(Molecular Probes社、ユージン、OR)の0.01mg/mL溶液の10μLを、各捕獲ハイブリダイゼーション反応液に添加し、その後Luminex100(登録商標)装置に注入した。
【0200】
各捕獲ハイブリダイゼーション反応のために、55μLをLuminex100(登録商標)に60μL/分の速度で注入し、各微小球IDの50個を計測するまで読取りを継続した。蛍光強度の中央値を各微小球IDに関連した蛍光シグナルの測定値として使用した。この結果は図15に示した。
【0201】
本発明は、先に説明した具体例に限定されると考えてはならず、添付の「特許請求の範囲」において明瞭に記載された本発明の全ての側面を包含すると解するべきである。、本明細書を参照すれば、様々な修飾、同等の方法、更には本発明を利用可能な多くの構造は本発明が対象としている当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0202】
実施例 7
レポーターオリゴヌクレオチドのアレル特異的伸長産物に対する位置 - 特異的ライゲーション及び固体支持体微小球上の捕獲を利用するゲノム DNA の遺伝子型タイピング
ゲノムDNA試料由来の標的核酸配列の増幅、クエリー、及び捕獲の後、多型性座位の遺伝子型を決定した。第一の工程であるPCR反応は、以下のPCRプライマーのセットを含ませた:第一のプライマーA及び第二のプライマーB。第二のプライマーBは、検体特異的及び非相補的部分の接合点にイソ-Cを有する標的と相補的でない5'配列を含んだ。このプライマー対は、公知の多型性部位を包含しているマウスゲノムDNAの領域とハイブリダイズし、かつ増幅するように設計した。第二の工程であるアレル-特異的プライマー伸長(ASPE)反応は、タグを付けたアレル-特異的プライマーのセットを含ませた。各タグ付けしたアレル-特異的プライマーは、非-標準ヌクレオチド(イソ-G)を含む5'タグ配列、それに続くc3スペーサー、それに続く先のPCR工程において増幅されたDNA鎖のひとつにハイブリダイズするように設計した3'配列を含ませた。アレル特異性は、各々タグ付けしたアレル-特異的プライマーの3'ヌクレオチドにより決定した。タグ付けしたアレル-特異的プライマーのセットは、増幅した配列に包埋された公知の多型性部位をクエリーするように設計した。ASPE反応にはDNAリガーゼ並びに5'リン酸及び3'ビオチン修飾を含むレポーターオリゴヌクレオチドを含ませた。このレポーターオリゴヌクレオチドは、クエリーされるアンプリコンの作製に使用したプライマーBの5'領域に相補的である。この非-標準塩基含有領域を含む増幅産物の鎖をASPE反応の鋳型として利用した。アレル特異的プライマーの伸長の間に、DNAポリメラーゼは、鋳型鎖のイソ-Cの前の塩基で停止し、その結果、レポーターオリゴヌクレオチドがハイブリダイズしている一本鎖領域を残した。伸長されたASPEプライマー、鋳型、及びレポーターオリゴヌクレオチドの間の複合体は、DNAリガーゼのライゲーションに適したニック構造を生じる。
【0203】
第三の工程であるマルチプレックスASPE反応生成物の捕獲は、固有のLuminex(登録商標)微小球IDに各々共有結合された非-標準ヌクレオチド(イソ-C)を含む捕獲配列を使用した。これらの捕獲配列は、前に行ったASPE反応の際にタグ付けアレル-特異的プライマーセットにおいて使用したタグ配列に相補的である。ストレプトアビジン-フィコエリトリンを添加し、伸長されかつライゲーションされたアレル-特異的プライマー鎖上のビオチン標識に結合させ、蛍光シグナルを生じさせた。捕獲配列とタグ配列の間のハイブリダイゼーションの後、微小球をLuminex100(登録商標)装置に注入し、各々固有の微小球IDと関連したシグナルを検出した。
マウスゲノムの単独の多型性領域を、この実施例において標的化した:
【0204】
【表30】
【0205】
マウスのゲノムDNA試料は、Jackson Laboratory社(バーハーバー、ME)から購入した。全てのゲノムDNA試料を、1mM MOPS、pH7.5、0.1mM EDTA中に10ng/μLで希釈した。PCR反応成分は以下の通りである:
【0206】
【表31】
【0207】
列記した成分の全てのマスターミックスは、最終反応体積30μLに対して1.07X濃度で調製した。23μLのマスターミックスを個々のPCRチューブ内のゲノムDNA鋳型(5ng/μL)の2μLと一緒にした。陰性対照は、ゲノムDNA鋳型の代わりに水を含ませた。PCR反応は下記のようにサイクリングした:
【0208】
【表32】
【0209】
PCRサイクリング後、5U/μlラムダエキソヌクレアーゼ(New England Biolabs社、ビバリー、MA)3μlを各反応液に添加し、PCRプライマーAにより作製されたアンプリコンの非-鋳型鎖を除去した。ラムダエキソヌクレアーゼの添加後、この反応チューブを37℃で5分間加熱し、その後95℃で2分間加熱した。この消化の後、各PCR反応液1μlをASPE反応の鋳型として作用するために移した。下記核酸配列、ASPE反応においてタグ付けしたアレル-特異的(TAS)プライマーとして使用した:
【0210】
【表33】
【0211】
ASPE反応の成分は以下の通りである:
【0212】
【表34】
【0213】
前記成分全てを含有するマスターミックスは、1.11Xで調製した。各ASPE反応液は、9μL マスターミックス及び1μL PCR反応(先の工程より)からなる。ASPE反応は、下記のようにサイクリングした:
【0214】
【表35】
【0215】
ASPEサイクリングの後、この反応液を、Luminex(登録商標)微小球(Luminex社、ヒューストン、TX)に連結された捕獲配列によりデコンボリューションした。この連結微小球は下記の通りである:
【0216】
【表36】
【0217】
この連結された微小球は、保存用緩衝液(10mM MOPS、pH7.5、200mM NaCl、1mM EDTA、1%PEG8000、0.05%SDS)中で各微小球IDを同数含有するように混合した。捕獲ハイブリダイゼーション反応の成分は以下の通りである:
【0218】
【表37】
【0219】
前記成分全てを含むマスターミックスは、60μLの最終反応体積に対して1.2X濃度で調製した。50μLのマスターミックスを各ASPE反応液に添加し、室温で10分間ハイブリダイズさせた。ストレプトアビジンフィコエリトリン(0.075mg/mL、10mM MOPS、pH7.5、200mM NaCl、50mM MgCl2、1mM EDTA、1%PEG8000、0.05%SDS) (Molecular Probes社、ユージン、OR)の溶液10μLを各捕獲ハイブリダイゼーション反応液に添加し、その後Luminex100(登録商標)装置に注入した。
【0220】
各捕獲ハイブリダイゼーション反応のために、反応混合液45μLを、Luminex100(登録商標)に60μL/分の速度で注入し、各微小球IDの100個を計測するまで読取りを継続した。蛍光強度の中央値(MFI)を各IDに関連した蛍光シグナルの測定値として使用した。この結果は図17に示した。
【0221】
前記例において、5'側非-相補的配列及び検体-特異的配列の接合部におけるプライマーBの非-標準塩基は、タグ配列及び検体特異的配列の接合部でのポリメラーゼによる伸長を妨害するように設計した。例えば、2'-O-メチルリボヌクレオチドのような2'-O-メチル塩基を含む、他の適当なリンカーを使用し、ポリメラーゼを停止することができることが特に想定されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、多くの非-標準塩基の化学構造を示す(式中、Aは高分子骨格への結合点であり、XはN又はC-Zであり、YはN又はC-Hであり、及びZはH又は置換もしくは未置換のアルキル基である。)。
【図2】 図2A及び2Bは、本発明の固体支持体へのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションのふたつの例を概略的に説明している。
【図3】 図3は、本発明の、検体-特異的配列の第一のアッセイにおける工程を図示している。
【図4】 図4は、本発明の、検体-特異的配列の第二のアッセイにおける工程を図示している。
【図5】 図5は、本発明の、検体-特異的配列の第三のアッセイにおける工程を図示している。
【図6】 図6は、本発明の、検体-特異的配列の第四のアッセイにおける工程を図示している。
【図7】 図7は、本発明の、検体-特異的配列の第五のアッセイにおける工程を図示している。
【図8】 図8は、本発明の、検体-特異的配列の第六のアッセイにおける工程を図示している。
【図9】 図9は、本発明の、検体-特異的配列の第七のアッセイにおける工程を図示している。
【図10】 図10は、本発明の、検体-特異的配列の第八のアッセイにおける工程を図示している。
【図11】 図11は、本発明の、検体-特異的配列の第九のアッセイにおける工程を図示している。
【図12】 図12は、98種の分子認識配列(y-軸)に関する、100種の分子認識配列の各々についての相補的タグ配列(x-軸)のハイブリダイゼーションを説明する、3D表面図である。
【図13】 図13は、50種の分子認識配列(y-軸)に関する、50種の分子認識配列の各々についての相補的タグ配列(x-軸)のハイブリダイズを説明する、3D表面図である。
【図14】 図14は、本発明のアレルアッセイ結果を説明するグラフである。
【図15】 図15は、本発明の別のアレルアッセイ結果を説明するグラフである。
【図16】 図16は、本発明の、検体-特異的配列の第十のアッセイにおける工程を図示している。
【図17】 図17は、本発明のアレルアッセイ結果を説明するグラフである。
Claims (4)
- 標的オリゴヌクレオチドのアッセイ方法であって:
(a)検体-特異的配列を含む検体を第一のプライマー及び第二のプライマーと接触させる工程であって、前記第一のプライマーが5’タグ配列及び検体の第一の配列に相補的な3’配列を含み、前記第二のプライマーが検体の第二の配列に相補的な配列及び非-標準塩基を含み、前記非-標準塩基がオリゴヌクレオチド中に取り込まれることができ、かつ水素結合または疎水性相互作用、エントロピー相互作用もしくはファンデルワールス相互作用によって相補的な非-標準塩基と塩基対を形成することができるA、C、G、TもしくはU以外の塩基である、前記工程;
(b)前記第一及び前記第二のプライマーを酵素的に伸長し、標的オリゴヌクレオチド及び第二のオリゴヌクレオチドを形成する工程であって、前記標的オリゴヌクレオチド及び第二のオリゴヌクレオチドの一方は前記検体-特異的配列を含み、他方は前記検体-特異的配列に相補的な配列を含む、前記工程;
(c)前記第二のプライマーの非-標準塩基に対向させて、標識された相補的非-標準塩基を伸長させた第一のプライマーに取込む工程;
(d)支持体に結合した捕獲オリゴヌクレオチドを、標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするに適切な条件下で標的オリゴヌクレオチドと接触させる工程であって、前記標的オリゴヌクレオチドは前記タグ配列及び前記検体-特異的配列又は前記検体-特異的配列の相補配列を含み、前記捕獲オリゴヌクレオチドは前記標的オリゴヌクレオチドの前記タグ配列に相補的である分子認識配列を含む、前記工程;及び
(e)標識された相補的非-標準塩基を検出することによって、前記標的オリゴヌクレオチドの前記捕獲オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを検出する前記工程、
を含む、前記アッセイ方法。 - 少なくとも一つの標的オリゴヌクレオチドを検出するための、以下の工程を含む方法:
(a)試料と、第一のプライマー及び第二のプライマーを含む少なくとも一対のプライマーとを、前記プライマー対の前記第一及び前記第二のプライマーが、標的オリゴヌクレオチドが存在するのであれば前記標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする条件下で、接触させる工程であって、少なくとも一つのプライマーが非-標準塩基を含んでいる前記工程;
(b)前記標的オリゴヌクレオチドが存在するのであれば、前記標的オリゴヌクレオチドを増幅する工程;
(c)工程(b)において増幅されたいずれかの標的オリゴヌクレオチドを、少なくとも1つのタグ付けられたプライマーとハイブリダイズさせる工程であって、前記プライマーが、5'から3'方向へ順に、少なくとも1個の非-標準塩基を含む5'タグ配列、及び工程(b)で増幅された標的ヌクレオチドとハイブリダイズすることが可能な3'配列を含むプライマーであり、前記非-標準塩基がオリゴヌクレオチド中に取り込まれることができ、かつ水素結合または疎水性相互作用、エントロピー相互作用もしくはファンデルワールス相互作用によって相補的な非-標準塩基と塩基対を形成することができるA、C、G、TもしくはU以外のヌクレオチドである、前記工程;
(d)工程(a)のプライマーの非-標準塩基に相補的な標識された非-標準三リン酸塩基の存在下で工程(c)の少なくとも1つのプライマーを酵素的に伸長し、標識された伸長産物を形成させる工程であって、前記標識された伸長産物は少なくとも1つの非-標準塩基を含む前記タグ配列を含む、前記工程;
(e)工程(d)の標識された伸長産物を、支持体に結合した、前記標識された伸長産物のタグ配列に相補的な分子認識配列を含む少なくとも1つの捕獲オリゴヌクレオチドと、前記標識された伸長産物にハイブリダイズするに適切なハイブリダイゼーション条件下で接触させる工程;及び
(f)工程(e)のハイブリダイゼーションを検出する工程。 - 以下の工程を含む、少なくとも2つの標的オリゴヌクレオチドのアッイ方法:
(a)検体-特異的配列を含有する検体を第一のプライマー及び第二のプライマーと接触させる工程であって、前記第二のプライマーが、5'から3'方向へ順に、前記検体-特異的配列に相補的でない配列、非-標準塩基、及び前記検体-特異的配列を含み、前記非-標準塩基がオリゴヌクレオチド中に取り込まれることができ、かつ水素結合または疎水性相互作用、エントロピー相互作用もしくはファンデルワールス相互作用によって相補的な非-標準塩基と塩基対を形成することができるA、C、G、TもしくはU以外の塩基である、前記工程;
(b)工程(a)のプライマーを酵素的に伸長して伸長産物を形成させる工程;
(c)工程(b)の第二のプライマーの伸長産物に、5'から3'方向へ順に、少なくとも一つの非-標準塩基を含む5'タグ配列、及び前記第二のプライマーの伸長産物に相補的な3'配列を含むタグ付けした少なくとも1つのプライマーをハイブリダイズさせる工程;
(d)工程(c)のタグ付けしたプライマーを酵素的に伸長する工程;
(e)工程(a)の第二のプライマーの前記検体-特異的配列に相補的でない配列に相補的なレポーターオリゴヌクレオチドを、工程(b)の伸長産物にハイブリダイズさせる工程;
(f)工程(e)のハイブリダイゼーション産物を、少なくとも一つの非-標準塩基を含み支持体に結合した少なくとも一つの捕獲オリゴヌクレオチドに、前記ハイブリダイゼーション産物が前記少なくとも一つの捕獲オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする条件下で接触させる工程;および
(g)工程(f)のハイブリダイゼーションを検出する工程。 - 以下の工程を含む、標的ヌクレオチドをアッセイする方法:
(a)検体-特異的配列を含む検体を第1のプライマーおよび第2のプライマーと接触させる工程であって、前記第2のプライマーは、5’から3’の順に、前記検体特異的配列と相補的でない配列、非-標準塩基および前記検体-特異的配列を含み、前記非-標準塩基がオリゴヌクレオチド中に取り込まれることができ、かつ水素結合または疎水性相互作用、エントロピー相互作用もしくはファンデルワールス相互作用によって相補的な非-標準塩基と塩基対を形成することができるA、C、G、TもしくはU以外の塩基である、前記工程;
(b)プライマーを酵素的に伸長して標的オリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドを形成する工程であって、前記標的オリゴヌクレオチドおよび前記第2のオリゴヌクレオチドの一方が前記検体-特異的配列を含み、他方が前記検体-特異的配列に相補的な配列を含む、前記工程;
(c)工程(b)の第2のプライマーの伸長産物に、5’から3’方向へ順に、非-標準塩基を含む5’タグ配列、リンカー、前記第2のプライマーの伸長産物に相補的な3’配列を含む、タグ付けしたアレル-特異的プライマーをハイブリダイズさせる工程;
(d)工程(c)のアレル-特異的プライマーを酵素的に伸長する工程;
(e)工程(a)の第2のプライマーの検体-特異的配列に相補的でない配列に相補的な標識されたレポーターオリゴヌクレオチドを工程(d)の伸長産物にハイブリダイズさせる工程;
(f)支持体に結合した捕獲オリゴヌクレオチドを工程(f)の産物と接触させる工程;および
(g)前記捕獲オリゴヌクレオチドへの前記レポーターオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する工程。
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