JP4499765B2 - 無線端末用のハンドオーバ閾値決定装置及びその方法 - Google Patents

無線端末用のハンドオーバ閾値決定装置及びその方法 Download PDF

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Description

本発明は、無線端末用のハンドオーバ閾値を決定する技術に関する。
セル単位でサービスを提供する無線LANシステムにおいて、無線端末がセル間を移動する場合、無線端末は、無線リンクが確立されているアクセスポイント(AP)から、より通信状態の良いAPに接続先を切り換えるハンドオーバ (Hand Over)を行う。
従来、ハンドオーバ技術は、例えば、特許文献1、2、3、及び4のように、各種検討はされている。これら検討では、無線端末は、通信状態が劣化したときにハンドオーバ処理を実施するが、その通信状態の劣化は無線リンクが確立されているAPからの受信信号レベルをハンドオーバ閾値(HO閾値)と比較参照することにより検知することが、一般的には前提とされている。
特開平08−191305号公報 特開2002−271345号公報 特開2004−207922号公報 特開2006−93945号公報
従来において、HO閾値を決定する具体的な方法は検討されておらず、HO閾値は、無線端末の使用環境(APの配置や出力性能など)に関係なく、予めアドホックな値に固定的に設定されている場合が多かった。そのため、無線端末の使用環境によっては、必ずしも適切にハンドオーバできない場合がある。
すなわち、HO閾値が必要以上に低い場合、なかなかAP探索処理が行われない(現在の接続APが手放さない)ので、本来であればもっと良いAPがあるにもかかわらず、そちらに接続されないという問題が生じる。
逆に、HO閾値が必要以上に高い場合、AP探索処理が行われる頻度は上昇するが、探索時点での最良APが現在の接続APである可能性も高くなり、その場合、結局ハンドオーバは行われない。つまり、本来、ハンドオーバの必要がない場合でも、頻繁にAP探索処理が行われてしまうという問題が生じる。
ここで、HO閾値と無線端末の使用環境を整合させて適切なハンドオーバが行われるようにすべく、使用環境側、すなわち、APの配置や出力性能自体を調整することも考えられる。しかし、そのような調整は試行錯誤とならざるをえず、通常の運用において常にAPの位置等を変更できるとは限らないため、現実的な対応策とは言えない。
また、従来の無線端末の中にはユーザがHO閾値を設定できるものものもあるが、HO閾値の設定に関する具体的な指針までは示されていないため、そのような無線端末を利用する場合、ユーザは結局、試行錯誤によってHO閾値を調整しなければならない。このような試行錯誤によるHO閾値の設定は、ユーザに大きな負担を強いるものであることに加え、設定したHO閾値が適切であることも何ら保証されない点でやはり現実的ではない。
そこで、本発明は、無線端末の使用環境に応じて適切なタイミングでAP探索処理が行われるようにHO閾値を設定することができる新しい枠組みを提供することを目的とする。
本発明の閾値決定装置は、無線リンクが確立されているアクセスポイント(以下、「AP」という)からの受信信号レベルがハンドオーバ閾値(以下、「HO閾値」という)以下となった場合に接続可能なAPを探索する処理を実行する無線端末用の、HO閾値を決定する装置であって、AP1〜APKの(K≧3)中から複数選択されたAPペアを構成する各APについて、APペアの相手方からの受信信号レベル(以下、「APペア信号レベル」という)を取得し、APペア識別情報に対応づけて受信信号レベル記憶手段に記憶するAPペア信号レベル取得手段と、前記受信信号レベル記憶手段を参照してAPペア(APX、APY)に対応するAPペア信号レベルSYX、SXYを読み出し、2AP間の距離dを記憶するAP間距離記憶手段を参照してAPXAPY間距離dXYを読み出し、以下の式に基づいて、APXとAPYとを結ぶ直線上で両APからの受信信号レベルが同等となる平衡地点Zを求める平衡地点決定手段と、
X=dXY×10^((SXY−SYX)/N)/(1+10^((SXY−SYX)/N));ただし、dXは地点ZのAPXからの距離、Nは伝播損失係数
APペア(APX、APY)について、前記求めた平衡地点ZにおけるAPX又はAPYからの受信信号レベルSZを算出する手段と、各APペアについてそれぞれ算出した受信信号レベルSZの最小値を求め、これをHO閾値に決定する閾値決定手段と、を備えることを特徴とする。なお、上記式において「A^B」とは、AのB乗を示す表記である。
好適には、APペア信号レベル取得手段が、APペアを構成する各APに対して、APペア信号レベルを通知するように指示し、該指示の応答としてAPペア信号レベルを受け付けることを特徴とする。
また好適には、更に、各APと無線リンクが確立されている無線端末に前記決定したHO閾値が設定されるように、該APを制御する閾値制御手段を備える。
また好適には、更に、AP1〜APKの位置を母点としてボロノイ分割を行った場合の、隣接するボロノイ領域に対応する2つのAPをAPペアとして選択するAPペア選択手段を備える。又は、更に、AP間の距離dが一定値以下となる組み合わせをAPペアとして選択するAPペア選択手段を備える。
本発明の無線LANコントローラは、本発明の閾値決定装置を備えることを特徴とする。
本発明のアクセスポイントは、本発明の閾値決定装置を備えることを特徴とする。
本発明の閾値決定方法は、無線リンクが確立されているアクセスポイント(AP)からの受信信号レベルがハンドオーバ閾値(HO閾値)以下となった場合に接続可能なAPを探索する処理を実行する無線端末のために、HO閾値を決定する方法であって、AP1〜APKの中から複数選択されたAPペアを構成する各APについて、APペアの相手方からの受信信号レベル(APペア信号レベル)を取得する工程と、2AP間の距離dを記憶するAP間距離記憶手段を参照して、APペアを構成するAP間の距離dを読み出す工程と、APペア(APX、APY)について取得したAPペア信号レベルSYX、SXY及び読み出した距離dXYに基づいて、以下の式に従って、APXとAPYとを結ぶ直線上で両APからの受信信号レベルが同等となる平衡地点Zを求める工程と、
X=dXY×10^((SXY−SYX)/N)/(1+10^((SXY−SYX)/N));ただし、dXは地点ZのAPXからの距離、Nは伝播損失係数
APペア(APX、APY)について、平衡地点ZにおけるAPX又はAPYからの受信信号レベルSZを算出する工程と、各APペアについてそれぞれ算出した受信信号レベルSZの最小値を求め、これをHO閾値に決定する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明のプログラムは、本発明の閾値決定方法の各工程を情報処理装置(無線LANコントローラやアクセスポイントを含む)上で実行させることを特徴とする。本発明のプログラムは、CD−ROM、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークを介してダウンロードすることにより、情報処理装置にインストールまたはロードすることができる。
なお、本明細書において、手段とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段が有する機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されても良い。
本発明によれば、無線端末の使用環境に応じてAP探索処理が行われるようにHO閾値を設定することができる新しい枠組みを提供することができる。
(第1実施形態)
以下に本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態である無線LANシステム1の概略構成を表す図である。このシステムには、無線端末10、無線端末10と通信可能に構成される複数のAP20、AP20と通信可能に構成される無線LANコントローラ30が構成要素として含まれる。図1には無線端末10及び無線LANコントローラ30を1台ずつ、AP20を3台記載しているが、設計に応じて図1に示すのと異なる台数を備えるように無線LANシステム1を構成してもよい。
無線LANシステム1では、IEEE802.11シリーズ(Wi−Fi)、IEEE802.16シリーズ(WiMAX)、第3世代携帯電話システムなどの、既存の無線LANや無線MANの方式を採用することができる。IEEE802.11シリーズ(Wi−Fi)などの無線LANやIEEE802.16シリーズ(WiMAX)や第3世代携帯電話システムなどの無線MANの方式は周知であり、また本発明の枠組みは無線LANや無線MANの方式自体には依存しないため、ここでは、無線LANシステム1で採用する無線LANの方式の説明、例えばフレーム構成や通信プロトコルなどの説明については省略する。
無線端末10は、従来の無線端末と同様に、アンテナ送受信回路、RF回路、信号変換器、比較器、CPU、ROM、RAM等のハードウェアを備えており、これらによって、AP20と無線通信を行う無線通信手段11、AP20からの受信信号強度を測定する信号強度測定手段12、HO閾値を記憶するハンドオーバ閾値記憶手段13、AP20からの受信信号強度がHO閾値以下となった場合に、接続可能なAP20の探索(スキャン)を開始するAP探索手段14、接続可能なAP20が見つかった場合に、認証、IP取得、登録、呼制御等からなる一連のハンドオーバ処理を行うハンドオーバ処理手段15などの機能手段を実現している(図2(a)参照)。
更に、本実施形態の無線端末10は、図2(a)に示すように、AP20から閾値設定指示を受け付けた場合、該指示で指定されたHO閾値をハンドオーバ閾値記憶手段13に記憶する閾値設定手段16を備えている。
AP20は、従来のアクセスポイントと同様に、アンテナ送受信回路、RF回路、信号変換器、比較器、CPU、ROM、RAM、LANインタフェース等のハードウェアを備えており、これらによって、無線端末10や他のAP20等の通信機器と無線通信を行う無線通信手段21、例えばイーサーネット(登録商標)等に基づく有線LANを介して無線LANコントローラ30等の他の通信機器と有線通信を行う有線通信手段22などを実現している(図2(b)参照)。
更に、本実施形態のAP20は、図2(b)に示すように、無線LANコントローラ30によって指定されたAPからの受信信号強度を測定し、その測定結果を無線LANコントローラ30に対して送信する信号強度測定手段23、自装置と無線リンクが確立されている無線端末10に対してHO閾値設定指示を送信する閾値設定指示手段24などを備えている。
無線LANコントローラ30は、従来の無線LANコントローラ(無線LANスイッチ)と同様に、CPU、ROM、RAM、LANインタフェース等のハードウェアを備えており、これらによって、各AP20等と有線通信を行う有線通信手段31、各AP20の制御・管理を行うAP管理手段32などを実現している(図2(c)参照)。
ただし、本実施形態の無線LANコントローラ30は、図2(c)に示すように、HO閾値の自動決定を行うための機能手段として、AP間距離記憶手段41、APペア記憶手段42、信号強度記憶手段43、信号強度取得手段44、平衡地点決定手段45、平衡信号強度算出手段46、閾値決定手段47、閾値制御手段48を備える点で、従来の無線LANコントローラとは異なっている。
AP間距離記憶手段41は、無線LANコントローラ30が管理するAP201〜AP20K(K≧3)に関して、2AP間の距離dij(1≦i、j≦K)を記憶している。図3に、K=3の場合のAP間距離記憶手段41のデータ構造の例を模式的に示す。AP間の距離dは、AP201〜AP20Kを設置した後に無線LANシステム1の管理者等によって測定され、AP間距離記憶手段41に予め登録されているものとする。
APペア記憶手段42は、APペア識別情報に対応づけて、APペアを構成する各AP20の識別情報(装置名、IPアドレス、MACアドレスなど)を記憶している。図4に、K=3の場合のAPペア記憶手段42のデータ構造の例を模式的に示す。
APペアとは、HO閾値の自動決定に際して受信信号強度が参照されるAPのペアであり、AP201〜AP20Kの中の任意の2つのAPの組み合わせから複数のAPペアが選択される。
APペアの理想的な選択方法は、AP201〜AP20Kの各位置を母点としてボロノイ分割を行い、隣接するボロノイ領域に対応する2つのAPをAPペアとして選択することである。このようにAPペアを選択した場合、後述するように、AP間を結ぶ直線上を移動する場合において適切なAP探索処理を行うことができる。
APペアの選択は自動的に行われてもマニュアルで行われてもよい。すなわち、無線LANコントローラ30が、上記のような選択方法に従って自動的にAPペアを選択し、APペア記憶手段42に登録するAPペア選択手段を備えるように構成してもよいし、無線LANシステム1の管理者等が、上記のような選択方法にしたがって予めAPペアを選択し、APペア記憶手段42に登録する構成としてもよい。なお、ボロノイ分割は周知技術であるため、当業者であれば、上記のような選択方法によりAPペアを選択するAPペア選択手段を実現することが可能である。
信号強度記憶手段43は、APペア識別情報に対応づけて、APペア信号強度を記憶している。図5に、K=3の場合の信号強度記憶手段43のデータ構造の例を模式的に示す。
APペア信号強度とは、APペアの一方のAPで測定した他方のAPからの受信信号強度である。例えばAPペア(APX、APY)の場合、APYにおいて検出したAPXからの受信信号強度SXYと、APXにおいて検出したAPYからの受信信号強度SYXとの2つの受信信号強度が、APペア(APX、APY)のAPペア信号強度となる。
他の機能手段(信号強度取得手段44〜閾値制御手段48)については、HO閾値自動設定処理の説明において詳述する。
なお、無線端末10、AP20、無線LANコントローラ30は、図2に示した機能手段以外にも、通常の無線端末、アクセスポイント、無線LANコントローラが備える機能手段と同等の構成を備えている。
以下、図6に示すフローチャートに基づいて、無線LANシステム1において実行されるHO閾値自動設定処理について説明する。なお、各工程(符号が付与されていない部分的な工程を含む)は処理内容に矛盾を生じない範囲で、任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
(HO閾値自動設定処理)
無線LANコントローラ30の信号強度取得手段44は、所定のタイミングで(例えば定期的に)、APペア記憶手段42を参照してAPペアを構成する各APの識別情報を読み出し、該識別情報で特定されるAP20に対して、APペア識別情報、APペアの相手方APの識別情報を指定して、APペア信号強度の通知指示を送信する(S101)。
AP20の信号強度測定手段23は、有線通信手段22を介してAPペア信号強度通知指示を受け付けた場合、該指示においてAPペアの相手方として指定されたAPからの受信信号強度(すなわち、APペア信号強度)を測定する。そして、その測定結果を、APペア識別情報とともに、無線LANコントローラ30に対して送信する(S102)。
信号強度取得手段44は、APペア信号強度通知指示の応答として、有線通信手段31を介してAPペア信号強度を取得した場合、該APペア信号強度を、該APペア信号強度とともに取得したAPペア識別情報に対応づけて、信号強度記憶手段43に記憶する(S103)。
無線LANコントローラ30の平衡地点決定手段45は、APペア記憶手段42に記憶される複数のAPペアについてAPペア信号強度を取得できた場合、各APペアについて以下の平衡地点決定処理を実行する(S104〜S106)。
すなわち、APペア(APX、APY)を例に説明すると、平衡地点決定手段45は、信号強度記憶手段43を参照してAPペア(APX、APY)に対応するAPペア信号強度SYX、SXYを読み出し、またAP間距離記憶手段41を参照して、APXAPY間距離dXYを読み出す(S104)。
次に、平衡地点決定手段45は、以下の式(1)に基づいて、APXとAPYとを結ぶ直線上で両APからの受信信号強度が同等となる平衡地点Zを求める(S105)。
X=dXY・10^((SXY−SYX)/N)/(1+10^((SXY−SYX)/N)) (1)
ただし、式(1)において、dXは平衡地点ZのAPXからの距離、Nは伝播損失係数である。
伝播損失係数Nは、典型的にはN=20であるが、無線LANシステム1の使用環境において受信信号強度を測定し、その測定結果に基づいて推定した値を用いてもよい。
ここで、今APX、APYの受信アンテナ利得がともにGa[dBi]であり、無線端末10の受信アンテナ利得がGc[dBi]であると仮定して、式(1)の導出方法を説明する。
自由空間伝播損失L[dB]は、一般に、以下のように表すことができる。
L=20log(4πd・f/c)
=20log(d)+20log(f/c)+C (2)
式(2)において、logは常用対数であり、dは伝播距離、fは無線通信に用いる周波数、cは光速、Cは20・log(4π)である。
APXと平衡地点Zとの距離をdX、APYと平衡地点Zとの距離をdYとすると、平衡地点ZにおけるAPXからの受信信号強度SXZ[dBm]、及び、平衡地点ZにおけるAPYからの受信信号強度SYZ[dBm]は、式(2)を用いて以下のように表すことができる。
XZ=SXY+20log(dY)+20log(f/c)+C−Ga+Gc(3)
YZ=SYX+20log(dX)+20log(f/c)+C−Ga+Gc(4)
そして、平衡地点ZではSXZ=SYZであるから、式(3)及び(4)より、以下の式(5)を導くことができる。
XY−SYX=20log(dX)−20log(dY)=20(log(dX)−log(dY))=20log(dX/dY) (5)
更に、式(5)を変形して、以下の式(6)を得ることができる。
Y/dX=10^((SXY−SYX)/20) (6)
そして、dXY=dX+dYであるから、式(6)を次のように変形することができ、その結果、N=20の場合における上述の式(1)を導出することができる。
X/(dXY−dX)=10^((SXY−SYX)/20)
X=(dXY−dX)・10^((SXY−SYX)/20)
X・(1+10^((SXY−SYX)/20))=dXY・10^((SXY−SYX)/20)
X=dXY・10^((SXY−SYX)/20)/(1+10^((SXY−SYX)/20))
次に、無線LANコントローラ30の平衡信号強度算出手段46は、前記求めた平衡地点ZにおけるAPX又はAPYからの受信信号強度SZ(=SXY=SYX)を算出する(S106)。
受信信号強度SZは、例えば式(1)により得られたdXを式(4)に代入することで算出することができる。この際、式(4)における20log(f/c)、C、Ga、Gcの各項は、いずれもAP20の設置状況に依存しない値であるため、HO閾値自動設定処理に先だって求めておくことができる。なお、dXに代えてdYを求め、式(3)に代入して受信信号強度SZを求めてもよい。
次に、無線LANコントローラ30の閾値決定手段47は、APペア記憶手段42に記憶される複数のAPペアについてそれぞれ算出した受信信号強度SZの中から最小値を求め、これをHO閾値Shに決定する(S107)。
次に、無線LANコントローラ30の閾値制御手段48は、AP20と無線リンクが確立されている無線端末10に前記決定したHO閾値Shが設定されるように、AP20を制御する(S108)。具体的には、各AP20に対して、HO閾値Shを指定したHO閾値制御指示を送信する。
AP20のHO閾値設定指示手段24は、有線通信手段22を介してHO閾値制御指示を受け付けた場合、自装置と無線リンクが確立されている無線端末10に対して、HO閾値制御指示で指定されたHO閾値Shを設定するように指示する(S109)。具体的には、各無線端末10に対して、HO閾値Shを指定したHO閾値設定指示を送信する。
無線端末10のHO閾値設定手段16は、無線通信手段11を介してHO閾値設定指示を受け付けた場合、該指示で指定されたHO閾値Shをハンドオーバ閾値記憶手段13に記憶する(S110)。これにより、以降において、無線端末10のAP探索手段14は、現在、無線リンクが確立されているAP20からの受信信号強度がHO閾値Sh以下となった場合に、接続可能なAP20の探索処理を開始することになる。
なお、探索により見つかったAP20に接続を切り替えるか否かの基準は設計に応じて定めることができるが、例えば、探索により見つかったAP20からの受信信号強度がHO閾値より大きい場合に接続を切り替えるように構成することが考えられる。
以下、上記のように決定したHO閾値Shを用いることで、無線端末の使用環境に応じて適切なタイミングでAP探索処理を行うことができる原理を説明する。
“HO閾値が必要以上に低く、AP探索処理が行われないために、本来であればもっと良いAPがあるにもかかわらず、そちらに接続されないという問題”に鑑みれば、HO閾値はなるべく大きい方が良いことになる。
しかし、課題において説明したように、HO閾値を高く設定しすぎると、本来、ハンドオーバの必要がない場合でも、頻繁にAP探索処理が行われてしまうという問題が生じる。
ここで、AP20からの受信信号強度がHO閾値となる円領域Xを考える。本実施形態のようにHO閾値Shを決定した場合、上述した理想的な選択方法でAPペアを選択したならば、各APの円領域Xは必ず他のAPの円領域Xと重複又は接することになる。図7(a)に、APペア(AP1、AP3)について求めた受信信号強度SZが最小値であり、かかるSZがHO閾値Shに決定された場合の、各AP20の円領域Xを概念的に示す。
このことは、無線端末10がAP間を結ぶ直線上を移動することを前提として、HO閾値Sh以下となった時点でAP探索処理を行った場合に、受信信号強度がHO閾値Shと等しい(接する場合)か、より強い(重複)他のAPが存在することを保証する。換言すれば、HO閾値Sh以下となるタイミングでAP探索処理を行えば、HO閾値Sh以上の受信信号強度となる他のAPを見つけることができる。またAP間を結ぶ直線上以外を移動する場合においても、APの配置が適切であれば、HO閾値Sh以上の受信信号強度となる他のAPを見つけられる可能性が高い。
逆に、HO閾値Shより大きい閾値を設定した場合、円領域Xが重複しないAPペアが必ず存在する。図7(b)に、APペア(AP1、AP3)について求めた受信信号強度SZが最小値であり、かかるSZより大きいHO閾値Shが設定された場合の、各AP20の円領域Xを概念的に示す。この場合、円領域Xが重複しないAPペア間を結ぶ直線上を移動する無線端末10は、受信信号強度がHO閾値Sh以下となるタイミングでAP探索処理を行っても、原則としてHO閾値Sh以上の受信信号強度となる他のAPを見つけることはできない。
以上から、HO閾値Shは、“閾値が必要以上に低く、AP探索処理が行われないために、本来であればもっと良いAPがあるにもかかわらず、そちらに接続されないという問題”を最大限に抑制しつつ、上記保証が得られる閾値となっており、かかる点で、無線端末の使用環境に応じてAP探索処理を行うことができる閾値となっている。
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。
例えば、上記実施形態では、受信信号レベルを表す指標としての受信信号強度を受信電力としているが、受信電界強度などの種々の指標を受信信号レベルとして用いてもよい。
また例えば、上記実施形態では、周知の無線LAN方式としてIEEE802.11シリーズなどを例示しているが、本発明の枠組みは、無線リンクが確立されているアクセスポイントからの受信信号レベルがHO閾値以下となった場合に接続可能アクセスポイントを探索する処理を実行する無線端末を使用する無線LANシステムであれば、他の無線LAN方式、無線MANを採用する無線システムに対しても適用可能である。
また例えば、上記実施形態では、無線LANコントローラ30がHO閾値の自動決定を行うための機能手段を備える構成としているが、該機能手段を無線LANコントローラ30とは別体に設けたHO閾値自動決定装置が備えるように構成してもよい。また、該機能手段をAP20が備える構成としてもよい。
また例えば、上記実施形態では、APペアの理想的な選択方法としてボロノイ分割を用いる方法を説明したが、本発明はこのような構成に限られるものではない。例えば、上述の理想的な選択方法を近似するものとして、AP間の距離dが一定値以下となる組み合わせをAPペアとして選択する方法が考えられる。このような選択方法によっても、ほぼ上記保証が得られるように、HO閾値Shを決定することができる。なお、このような選択方法を採用する場合、例えば、無線LANコントローラ30が、AP間距離記憶手段41を参照してAP間の距離dが一定値以下となる組み合わせを自動的にAPペアとして選択する構成としてもよいし、無線LANシステム1の管理者等が予めAPの設置状況に応じてAP間の距離dが一定値以下となる2つのAPをAPペアとして選択する構成としてもよい。
また例えば、上記実施形態では、APペア記憶手段42に記憶される複数のAPペアについてAPペア信号強度を取得できた場合に、平衡地点決定手段45がS104以降の処理を実行する構成としているが、例えばAPペア信号強度の通知指示を送信してから一定時間経過した場合に、平衡地点決定手段45がS104以降の工程を実行する構成としてもよい。この場合、一定時間内に一方又は両方のAPペア信号強度を取得できなかったAPペアについては、S104以降の工程の処理対象から外すことが考えられる。
また例えば、上記実施形態では、HO閾値自動設定処理においてAPペアを選択する構成としているが、HO閾値自動設定処理に先だってAPペアを選択し、各AP20に対してAPペアの相手方となる他のAPの識別情報を通知しておく構成としてもよい。この場合、AP20の信号強度測定手段23は、例えば定期的にAPペアの相手方APからの受信信号強度を測定してRAM等に記憶しておき、無線LANコントローラ30からAPペア信号強度通知指示を受け付けた場合に、RAM等に記憶したAPペア信号強度を読み出して無線LANコントローラ30に対して送信すればよい。
また例えば、上記実施形態では、式(2)で表される伝播損失モデルを用いて式(1)を導出しているが、他の伝播損失モデルを用いても同様に式(1)を導出することができる。例えば、ITU−R勧告P.1238−4のAnnex1項目3.1では、L=N・log(d)+20・log(f)+Lf(n)−28という伝播損失モデルが示されている(Lfはfloor penetration loss factor、nは送信装置と受信装置との間のフロア数)。この伝播損失モデルにおいて(20・log(f)+Lf(n)−28)を定数項として取り扱えるため、上記実施形態と同様にして式(1)を導出することができる。この場合、同Annex1項目3.1のTABLE2を参照して、伝播損失係数Nについて、2.4GHz帯の無線通信の場合、N=30、5GHz帯の無線通信の場合、N=31を採用してもよい。
また例えば、上記実施形態では、AP探索手段14、ハンドオーバ処理手段15によって、AP20からの受信信号強度がHO閾値以下となった場合に、接続可能なAP20の探索(スキャン)を開始し、接続可能なAP20が見つかった場合に、認証、IP取得、登録、呼制御等からなる一連のハンドオーバ処理を行うように構成しているが、AP20からの受信信号強度がHO閾値以下となる前に、接続可能なAP20の探索を開始し、接続可能なAP20が見つかった場合に、予め接続候補としてその情報を無線端末10内に記憶し、AP20からの受信信号強度がHO閾値以下となった場合に、接続候補の中から接続先を選択するように構成してもよい。
また例えば、上記実施形態では、信号強度測定手段23について、無線LANコントローラ30によって指定されたAPからの受信信号強度を測定し、その測定結果を無線LANコントローラ30に対して送信する構成としているが、無線LANコントローラ30から指定されたAPに限られずに、受信可能な全てのAPからの受信信号強度を測定し、その測定結果を無線LANコントローラ30に対して送信する構成としてもよい。
また例えば、APペアの各APのアンテナ利得が異なるときは、即ち、APXのアンテナ利得がGaX、APYアンテナ利得がGaY、のときは、式(1)は、次のように導出することができる。
X=dXY・10^(((SXY−SYX)+(GaX−GaY))/N)/(1+10^(((SXY−SYX)+(GaX−GaY))/N))
また例えば、上記実施形態では、AP20が有線通信手段22を介して無線LANコントローラ30から各指示を受け付ける構成としているが、AP20が無線通信手段21を介して無線LANコントローラ30や他のAP20などから各指示を受け付ける構成とすることもできる。この場合、AP20は必ずしも有線通信手段22を備えていなくてもよい。
無線LANシステム1の概略構成を表わす図である。 無線端末10、AP20、無線LANコントローラ30の機能構成を示すブロック図である。 AP間距離記憶手段41のデータ構造の例を示す図である。 APペア記憶手段42のデータ構造の例を示す図である。 信号強度記憶手段43のデータ構造の例を示す図である。 無線LANシステム1におけるHO閾値自動設定処理を説明するためのフローチャートである。 HO閾値Shを用いた場合に、無線端末の使用環境に応じて適切なタイミングでAP探索処理を行うことができる原理を説明する図である。
符号の説明
1 無線LANシステム
10 無線端末
11 無線通信手段
12 信号強度測定手段
13 ハンドオーバ閾値記憶手段
14 AP探索手段
15 ハンドオーバ処理手段
16 閾値設定手段
20 アクセスポイント
21 無線通信手段
22 有線通信手段
23 信号強度測定手段
24 閾値設定指示手段
30 無線LANコントローラ
31 有線通信手段
32 AP管理手段
41 AP間距離記憶手段
42 APペア記憶手段
43 信号強度記憶手段
44 信号強度取得手段
45 平衡地点決定手段
46 平衡信号強度算出手段
47 閾値決定手段
48 閾値制御手段

Claims (9)

  1. 3台以上のアクセスポイント(以下、「AP」という)と、無線リンクが確立されているAPからの受信信号レベルがハンドオーバ閾値(以下、「HO閾値」という)以下となった場合に接続可能なAPを探索する処理を実行する無線端末とを含む無線LANシステムを対象として、HO閾値を決定する装置であって、
    前記3台以上のAP1〜APK (K≧3;KはAPの台数)の中から複数選択されたAPペアを構成する各APについて、APペアの相手方からの受信信号レベル(以下、「APペア信号レベル」という)を取得し、APペア識別情報に対応づけて受信信号レベル記憶手段に記憶するAPペア信号レベル取得手段と、
    前記受信信号レベル記憶手段を参照してAPペアを構成する2台のAP X 、AP Y (1≦X、Y≦K)に対応するAPペア信号レベルSYX、SXY (ここで、S YX は、AP X において検出したAP Y からの受信信号強度であり、S XY は、AP Y において検出したAP X からの受信信号強度である)を読み出し、2台のAP間の距離dを記憶するAP間距離記憶手段を参照してAPXAPY間距離dXYを読み出し、以下の式に基づいて X を求め、AP X とAP Y とを結ぶ直線上においてAP X からの距離がd X となる地点Zを求めることで、APXとAPYとを結ぶ直線上で両APからの受信信号レベルが同等となる平衡地点Zを求める平衡地点決定手段と、
    X=dXY×10^((SXY−SYX)/N)/(1+10^((SXY−SYX)/N));ただし、dXは地点ZのAPXからの距離、Nは伝播損失係数
    APペアを構成する2台のAP X 、AP Y について、前記求めた平衡地点ZにおけるAPX又はAPYからの受信信号レベルSZ、以下の式、又は以下の式と同等な式に基づいて算出する手段と、
    Z =S YX +20log(d X )+20log(f/c)+C−Ga+Gc
    ここで、logは常用対数、fは無線通信に用いる周波数、cは光速、Cは20・log(4π)、GaはAP X 、AP Y の受信アンテナ利得、Gcは前記無線端末の受信アンテナ利得、
    各APペアについてそれぞれ算出した受信信号レベルSZ中から最小値を求め、これを前記無線LANシステムにおいて用いるHO閾値に決定する閾値決定手段と、
    前記決定したHO閾値を記憶するよう前記無線端末にAPを介して指示する手段と、
    を備えることを特徴とする閾値決定装置。
  2. APペア信号レベル取得手段が、APペアを構成する各APに対して、APペア信号レベルを通知するように指示し、該指示の応答としてAPペア信号レベルを受け付けることを特徴とする請求項1記載の閾値決定装置。
  3. 更に、APと無線リンクが確立されている前記無線端末に前記決定したHO閾値が設定されるように、APを制御する閾値制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の閾値決定装置。
  4. 更に、前記3台以上のAP1〜APKの位置を母点としてボロノイ分割を行った場合の、隣接するボロノイ領域に対応する2つのAPをAPペアとして選択するAPペア選択手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の閾値決定装置。
  5. 更に、AP間の距離dが一定値以下となる組み合わせをAPペアとして選択するAPペア選択手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の閾値決定装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の閾値決定装置を備える無線LANコントローラ。
  7. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の閾値決定装置を備えるアクセスポイント。
  8. 3台以上のアクセスポイント(以下、「AP」という)と、無線リンクが確立されているAPからの受信信号レベルがハンドオーバ閾値(以下、「HO閾値」という)以下となった場合に接続可能なAPを探索する処理を実行する無線端末とを含む無線LANシステムを対象として、HO閾値を決定する方法であって、
    前記3台以上のAP1〜APK (K≧3;KはAPの台数)の中から複数選択されたAPペアを構成する各APについて、APペアの相手方からの受信信号レベル(以下、「APペア信号レベル」という)を取得する工程と、
    2台のAP間の距離dを記憶するAP間距離記憶手段を参照して、各APペアについて、APペアを構成するAP間の距離dを読み出す工程と、
    APペアを構成する2台のAP X 、AP Y (1≦X、Y≦K)について取得したAPペア信号レベルSYX、SXY (ここで、S YX は、AP X において検出したAP Y からの受信信号強度であり、S XY は、AP Y において検出したAP X からの受信信号強度である)、及び、APペアを構成する2台のAP X 、AP Y について読み出したAP X 、AP Y 間の距離d XY に基づいて、以下の式に従って X を求め、AP X とAP Y とを結ぶ直線上においてAP X からの距離がd X となる地点Zを求めることで、APXとAPYとを結ぶ直線上で両APからの受信信号レベルが同等となる平衡地点Zを求める工程と、
    X=dXY×10^((SXY−SYX)/N)/(1+10^((SXY−SYX)/N));ただし、dXは地点ZのAPXからの距離、Nは伝播損失係数
    APペアを構成する2台のAP X 、AP Y について、前記求めた平衡地点ZにおけるAPX又はAPYからの受信信号レベルSZ、以下の式、又は以下の式と同等な式に基づいて算出する工程と、
    Z =S YX +20log(d X )+20log(f/c)+C−Ga+Gc
    ここで、logは常用対数、fは無線通信に用いる周波数、cは光速、Cは20・log(4π)、GaはAP X 、AP Y の受信アンテナ利得、Gcは前記無線端末の受信アンテナ利得、
    各APペアについてそれぞれ算出した受信信号レベルSZ中から最小値を求め、これを前記無線LANシステムにおいて用いるHO閾値に決定する工程と、
    前記決定したHO閾値を記憶するよう前記無線端末にAPを介して指示する工程と、
    を備えることを特徴とする閾値決定方法。
  9. 請求項8記載の閾値決定方法をコンピュータで実行させるための情報処理プログラム。
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