JP4497519B2 - 磁気テープ - Google Patents

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Description

本発明は、高記録密度特性と耐久性にすぐれた塗布型の磁気テープに関する。
磁気テープは、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータテープなど種々の用途があるが、とくにデータバックアップ用テープの分野では、バックアップの対象となるハードディスクの大容量化にともない、1巻当たり200GB以上の記録容量を持つ磁気テープが商品化されている。また、今後、1TBを超える大容量バックアップテープが提案されており、その高記録密度化は不可欠である。
このような高記録密度化に対応した磁気テープを製造するにあたっては、記録信号の短波長化に対応するため、磁性粉末の微粒子化と塗膜中への高密度充填化、塗膜の平滑化、磁性層の薄層化などに関する高度な技術が用いられている。

また、記録密度を大きくするために、記録信号の短波長化とともに、トラックピッチの狭幅化も行われており、再生ヘッドがトラックを正確にトレースできるようにサーボトラックも併用されるシステムが登場している。
磁性層の薄層化とトラックピッチの狭幅化により、磁気ヘッドの感度は高いものが要求されるようになり、最近では再生ヘッドに磁気抵抗効果(MR)型のものが用いられている。この種のヘッドは最近のコンピュータ用ドライブに多く用いられ、通常、記録用ヘッド(磁気誘導型)とコンビネーションで用いられる。そのため、従来ヘッドとは、材質、形状の違いから、磁性塗膜層の設計もそれに合わせることが好ましくなっている。

磁性粉末の微粒子化にともない、磁性粉末製造時の焼結防止と磁性塗膜の耐久性向上がさらに検討されている。また、磁性層の薄層化にともない、磁性層に添加する無機、有機粉末粒子についても、検討が必要になってきている。
磁性粉末については、高保磁力および高磁化量が得られる金属磁性粉末が使用されているが、焼結防止、耐食性向上のために、AlやSiに加えて、希土類元素が用いられている(たとえば、特許文献1〜4)。

磁性塗膜の耐久性向上のためには、モース硬度4以上の無機粒子を添加することが行われているが、近年では、微粒子磁性粉を分散させるための分散媒体である、ジルコニアビーズからの磨耗粉を耐久性向上のために利用することや、Zr含有微粉末を添加することが提案されている(たとえば、特許文献5〜8)。
特開平8−102046号公報 特開2000−11354号公報 特開2003−119503号公報 特開2003−296915号公報 特許第2628186号公報 特開2000−215439号公報 特開2001−222812号公報 特開2003−59031号公報
しかし、これらの従来技術では、平均粒子径が60nm未満の超微粒子磁性粉末を使用する磁気テープに対しては、十分な耐久性が得られなかった。

本発明は、このような事情に照らし、超微粒子磁性粉末を用い、高記録密度特性にすぐれ、かつ耐久性の良好な磁気テープを提供することを目的としている。
本発明者らは、上記の目的を達成するため、鋭意検討した結果、非磁性支持体の一方の面に下塗り層を介して磁性層を形成し、他方の面にバックコート層を形成した磁気テープにおいて、磁性層中に含ませる磁性粉末として、鉄を主たる構成元素とするものを用い、この磁性粉末の粒子径を60nm未満の超微粒子とする一方、この磁性粉末を含む磁性層中に希土類元素であるYとともに、ジルコニアビーズの摩耗粉に由来するZrを含ませ、さらにこれら元素の磁性層表面部での含有量が、磁性粉末を構成する鉄に対して特定範囲となるようにしたときに、高記録密度特性にすぐれて、かつ耐久性の良好な磁気テープが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、非磁性支持体の一方の面に、非磁性粉末を含む下塗り層を介して、鉄を主たる構成元素とする磁性粉末を含む磁性層が形成され、他方の面に、非磁性粉末を含むバックコート層が形成されてなるMR型ヘッド用の磁気テープにおいて、上記の鉄を主たる構成元素とする磁性粉末の平均粒子径が20nm以上、45nm以下であり、かつ上記磁性層中にYおよびZrが含まれ、これら元素のESCA分析による含有量が、Y/Fe=40〜140at%、Zr/Fe=2〜15at%であることを特徴とするMR型ヘッド用の磁気テープに係るものである。

また、本発明は、鉄を主たる構成元素とする磁性粉末が鉄以外の構成元素のひとつとしてYを含む上記構成のMR型ヘッド用の磁気テープ、鉄を主たる構成元素とする磁性粉末が強磁性鉄系金属磁性粉末または窒化鉄系磁性粉末である上記構成のMR型ヘッド用の磁気テープ、磁性層中にジルコニアビーズの摩耗粉として、Zr含有粉末が粒子径50nm未満の粒子として含まれている上記構成のMR型ヘッド用の磁気テープ、磁性層中にLaが含まれ、この元素のESCA分析による含有量が、La/Fe=1〜30at%である上記構成のMR型ヘッド用の磁気テープに係るものである。
このように、本発明は、磁性層表面部のY、Zrの含有量を、Y/Fe=40〜140at%、Zr/Fe=2〜15at%としたことにより、平均粒子径が60nm未満の鉄を主たる構成元素とする超微粒子磁性粉末を使用した磁気テープでも、高記録密度特性にすぐれ、かつ耐久性の良好な磁気テープを提供できる。
近年の高記録密度化に対応するため、既述のとおり、磁性層には超微粒子磁性粉末が、再生ヘッドにはMR型ヘッドが、用いられるようになってきている。

鉄を主たる構成元素とする磁性粉末には、焼成、還元時の焼結を防止したり、耐食性を付与するため、Yを代表とする希土類元素を表面に被着させることが行われている。このときの希土類元素の被着量、被着膜の膜厚の均一性が、焼結性、耐食性に影響するだけではなく、磁性塗膜の耐久性、ヘッド磨耗性に影響する。

とくに、MR型ヘッドは、従来の誘導型ヘッドに比べて、使用されるMR素子が軟らかい材料であるため、ヘッド寿命を考慮して、MR素子の部分がわずかに凹んだ特異な設計になっている。このことが逆に、使用時に磁気テープから粉落ち成分が付着し出力の低下の原因になったりする問題を抱えている。
本発明者らは、このMR素子部へのテープ付着物を詳細に分析した結果、鉄(Fe)のほかに、希土類元素やZrが含まれていることを見出した。そこで、磁気テープの表面の元素構成を種々変えて検討してみた結果、下記のような態様としたときに、ヘッド汚れが小さくなり、走行耐久性が向上することを見出した。

ここで、磁気テープの表面の元素構成は、必ずしも、磁性層全体の元素組成とは一致しない。本発明者らは、磁性層表面の元素組成が、ヘッド汚れと相関があることをはじめて見出した。テープ表面の元素構成を定量するのは、表面から数10Åの深さの元素構成を知ることができるESCAによる元素分析が好ましい。

すなわち、このESCA分析によるYおよびZrの含有量が、Y/Fe=40〜140at%であるのが好ましく、Y/Fe=60〜110at%であるのがより好ましく、Y/Fe=70〜100at%であるのが最も好ましい。また、Zr/Fe=2〜15at%であるのが好ましく、Zr/Fe=3〜13at%であるのがより好ましく、Zr/Fe=4〜11at%であるのが最も好ましい。
ESCA分析によるY/Feの値が40at%未満であると、磁性塗膜表面の研磨性が小さくなるためか、ヘッド汚れ量が増加して、走行耐久性が低下する。また、Y/Feの値が140at%を超えると、磁性塗膜表面の研磨性が大きくなりすぎて、ヘッド寿命が短くなったり、磁性粉末の飽和磁化量が小さくなって出力が低下したりする。

また、ESCA分析によるZr/Feの値が2at%未満であると、ジルコニアビーズからの磨耗粉であるZr含有粉末による磁性塗膜の補強効果が小さくなるためか、ヘッド汚れ量が増加し、走行耐久性が低下する。また、Zr/Feの値が15at%を超えると、相対的に塗膜中の磁性粉末の割合が小さくなり、出力が低下する。

ジルコニアビーズからの磨耗粉であるZr含有粉末の粒子径は、50nm未満であるのが好ましく、5〜30nmであるのがさらに好ましい。粒子径がこの範囲であるのが好ましいのは、50nm以上になると磁性粉末の軸比が2以上の針状磁性体粒子の磁性塗膜中での配向性が乱れやすく、磁性粉末の軸比が2未満の粒状磁性体である場合には、磁性粒子の充填性が低下する傾向があるためである。
また、本発明者らは、鉄を主たる構成元素とする磁性粉末の粒子径が小さい場合には、磁性層中にさらにLaを含ませるのが望ましく、とくにESCA分析による上記元素の含有量が、La/Fe=1〜30at%であるとき、より好ましくはLa/Fe=5〜20at%であるとき、ヘッド汚れ量が一層小さくなることを見出した。

ESCA分析によるLa/Feの値が、1at%未満ではこのようなLaの効果が得られず、30at%を超えると磁性塗膜表面の研磨性が大きくなりすぎて、ヘッド寿命が短くなる。Laの効果は、とくに磁性粉末が微粒子になるほど大きくなる。
なお、上記のESCA分析によるY/Feの値は、磁性粉末に被着(含有)させるYの量、磁性塗料の分散方法、分散条件などの選択により、またY2 3 微粉末の添加の有無や添加量の選択などにより、制御することができる。

また、上記のESCA分析によるZr/Feの値、Zr含有粉末の粒子径は、ジルコニアビーズを用いた磁性塗料の分散方法、分散条件(とくにジルコニアビーズの粒子径)の選択などにより、制御することができる。

さらに、上記のESCA分析によるLa/Feの値は、磁性粉末に被着(含有)させるLaの量、磁性塗料の分散方法、分散条件などの選択により、またLa2 3 微粉末の添加の有無や添加量の選択などにより、制御することができる。
ここで、本発明者らの上記の知見に関し、従来技術である特許文献1〜7と対比して、さらに詳しく説明する。

まず、特許文献1〜4には、Yなどの希土類元素を含む磁性粉末を用いた磁気記録媒体が開示されている。希土類元素を磁性粉末に含ませる目的は、磁性粉末の形状制御、焼成・還元時の焼結防止、薄くて緻密な酸化被膜の形成などであり、磁気記録媒体のSFDの向上、低ノイズ化、耐食性付与をはかっている。これらの特許文献には、磁性粉末に含ませる希土類元素の好ましい添加量範囲がそれぞれ開示されており、記録特性、耐食性にすぐれた磁性粉末が提案されている。しかし、得られる磁気記録媒体の磁性層表面の希土類元素成分の量については、なんら示されていない。

本発明は、上記の特許文献1〜4と同様に、希土類元素を含む磁性粉末を使用するが、MRヘッドを用いる記録再生装置で走行させた際のMRヘッド表面に付着する磁気テープからの粉落ち成分量を減少させるため、磁性層表面のY/Fe量を規定したものであり、この点で、特許文献1〜4とは明らかに異なっている。
また、特許文献5には、表面粗さが最大高さRmaxで1.5S以下のジルコニアビーズを用いて、磁性塗料を製造する方法が開示されている。しかし、上記製造時にビーズの磨耗粉としてZr含有粉末が磁性層に混入し、これに由来する磁性層表面のZr/Fe量がMRヘッド表面の汚れに影響を与えることは、なんら触れられていない。

さらに、特許文献6には、磁性層の蛍光X線測定でZr/Fe重量比が0.01〜2%である磁気記録媒体が開示されている。この測定方法による値は、塗膜全体の元素組成を示すもので、本発明の磁性層表面の元素組成とは異なっている。また、この文献に示されるZr/Fe重量比を原子比に換算すると、Zr/Fe=0.006〜1.2at%となり、本発明のZr/Fe=2〜15at%の範囲と異なっている。

また、特許文献7には、磁性層中に平均一次粒径が0.005〜0.2μmであるジルコニア粉末を含有させることが開示されている。しかし、ジルコニアビーズからの磨耗粉ではなく、ジルコニア粉末を別添加するものであり、また磁性層表面のZr/Fe量についての記載はなく、これらの点で本発明と異なっている。
また、特許文献8には、磁性層を蛍光X線で測定したときのFeに対するZrの強度比が0.001〜0.1である磁気記録媒体が示されており、指標は異なるが、Zr/Feの値として本発明と重複する部分があるものと推定される。しかし、上記測定は磁性層全体の元素組成であり、必ずしも磁性層表面の元素組成を示していない。

また、摩耗粉として含まれるZr含有粉末の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲が好ましく、0.1〜0.8μmの範囲がより好ましいとされているが、実施例で得られた磁気記録媒体の磁性層中に含まれるZr含有粉末の粒子サイズについての記載はなく、上記好ましい範囲に入っているのか明らかでない。しかも、実施例ではバリウムフェライト磁性粉末を用いた磁気記録媒体のデータしかなく、鉄を主たる構成元素とする磁性粉末を用いた磁気テープについては、なんら示されていない。

また、この文献では、磁性塗料の分散時に用いるジルコニアビーズは、粒子径が1mmのもので、本発明者らの検討によると、このようなジルコニアビーズでは、後述のとおり、摩耗粉のサイズが大きくなりすぎて、好ましい結果が得られない。
つぎに、上記特徴を有する本発明の磁気テープに関して、その磁性層を形成するための磁性塗料の調製方法について、詳しく説明する。

磁性塗料の調製方法においては、分散工程の前に、混合工程、混練工程おらび希釈工程を設けるのが望ましい。これらの工程のうち、混合工程では、混練工程の前工程として、磁性粉末の顆粒を高速攪拌混合機にて解砕し、その後、引き続き、高速攪拌混合機にてリン酸系やスルホン酸系の有機酸などやバインダ樹脂と混合して、磁性粉末の表面処理やバインダ樹脂との混合を行うものである。

上記の高速攪拌混合機としては、ホソカワミクロン社製のアグロマスタのような転動流動効果を利用したガス吹上げ式攪拌機、同社製のサイクロミックスやメカノフュージョンシステム、松山重工業社製のアキシャルミキサのような回転式混合機、三井鉱山社製のヘンシェルミキサなどを用いることができる。
つぎに、混練工程では、連続式2軸混練機により、通常、固形分濃度が80〜85重量%、磁性粉末に対するバインダ樹脂の割合が17〜30重量%となる状態で、混練を行うものである。また、希釈工程では、上記した混練工程の後工程として、連続式2軸混練機または他の希釈装置を用いて、少なくとも1回以上のバインダ樹脂溶液および/または溶媒を加えて、混練希釈するものである。

上記の連続式2軸混練機には、栗本鐵工所製のKEX−30、KEX−40、KEX−50、KEX−65、KEX−80、日本製鋼所製のTEX30α、TEX44α、TEX65α、TEX77α、TEX90αなどを用いることができる。
このような前工程を経たのち、分散工程に供する。この分散工程は、先に触れたとおりであるが、分散前の固形分濃度は30〜50重量%、塗料粘度は0.5〜5.0Pa・s(500〜5,000cP)であるのが好ましい。また、この分散工程では、いわゆる、サンドミルに代表されるようなメディア攪拌型分散機が使用され、分散メディアとして、比重が大きく緻密で硬質なジルコニアビーズが用いられる。
ジルコニアビーズは、常温等方圧成形(CIP法)、高温等方圧成形(HIP法)により得られるものが好ましい。中でも、理論密度に近くサンドミルなどで強分散を行つてもビーズが割れにくく、磨耗が均一に起こるHIP法によるジルコニアビーズがとくに好ましい。また、ジルコニアビーズの圧壊強度は、粒径の小さなビーズを均一に磨耗する必要があるため、高強度であるのが望ましく、この観点より、通常15〜60kgf、とくに20〜50kgfの圧壊強度を有しているのが好ましい。

ジルコニア材料としては、Y2 3 −ZrO2 系、CaO−ZrO2 系、MgO−ZrO2 系の安定化ジルコニア(FSZ)、ジルコニアの立方晶中に微細な正方晶を析出させて両晶を混在させた部分安定化ジルコニア(PSZ:Partially Stabilized Zirconia)、正方晶ジルコニアをアルミナや窒化珪素などで分散させたジルコニア強化セラミックス(ZTC)が効果的である。

このようなジルコニアビーズの市販品としては、東レ(株)製の「トレセラム」、日本化学陶業(株)製の「ジルコニアボール」などがある。
また、ジルコニアビーズは、粒子径が0.05〜0.5mmであるのが好ましく、0.3mm以下であるのがより好ましい。ジルコニアビーズの粒子径が小さいほど、ビーズ表面積が大きくなるため、超微粒子磁性粉末に対する分散が効率良く行われ、かつジルコニアビーズからの摩耗粉の粒子サイズも小さくなるので、好ましい。

また、ジルコニアビーズの粒子径が0.5mmを超えると、摩耗粉のサイズが大きくなる傾向があるので、本発明の好ましい範囲を超えないように適宜調節するのが好ましい。分散効率を向上させるため、サンドミルによる分散は、それぞれ粒子径の異なるジルコニアビーズを充填したサンドミルを組み合わせて行ってもよい。
このような分散工程において、前記したESCA分析による磁性層表面のZr/Fe原子比(at%)を好ましい範囲の値とするため、上記ジルコニアビーズを分散メデイアとした一次分散工程でのサンドミルの攪拌軸の周速を7〜10m/秒の範囲、また磁性塗料の滞留時間を20〜90分の範囲、ビーズ充填率を60〜85vol%(見かけ体積比)の範囲で、適宜調整するのが望ましい。

また、上記の分散工程では、分散条件が前記したESCA分析による磁性層表面のY/Fe原子比(at%)の値にも影響し、分散条件をハードにすると、この値が小さくなる傾向があるので、適宜調製するのが好ましい。

さらに、サンドミル分散工程の工程中または/および工程後、超音波分散工程を設けてもよい。超音波分散工程を設けることにより、塗料の流動性が改善され、塗膜の厚さの均一性が向上するので、好ましい。超音波分散機は、滞留時間を0.1〜10秒とするのが好ましい。超音波分散機には、従来公知のものを使用できる。
本発明において、上記の磁性塗料の調製に用いられる磁性粉末は、鉄を主たる構成とする磁性粉末であり、とくに代表的なものとして、強磁性鉄系金属磁性粉末または窒化鉄系磁性粉末が好ましく用いられる。

このような磁性粉末の平均粒子径は、5nm以上、60nm未満の範囲にあるのが好ましく、10〜40nmの範囲がより好ましい。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が5nm未満では、粒子の表面エネルギーが大きくなって分散が困難になり、平均粒子径が60nm以上になるとノイズが大きくなるためである。

上記の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影した写真から各粒子の最大径(針状粉では長軸径)を実測し、100個の平均値により求めたものである。
強磁性鉄系金属磁性粉末には、Mn、Zn、Ni、Cu、Coなどの遷移金属を合金として含ませてもよい。中でも、Co、Niが好ましく、とくにCoは飽和磁化を最も向上できるので、好ましい。上記の遷移金属元素の量としては、鉄に対して、5〜50at%とするのが好ましく、10〜30at%とするのがより好ましい。

また、焼結防止のため、イツトリウム、セリウム、イツテルビウム、セシウム、プラセオジウム、サマリウム、ランタン、ユーロピウム、ネオジム、テルビウムなどから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含ませてもよい。中でも、イツトリウム、セリウム、ネオジム、サマリウム、テルビウムを用いたときに、形状が良好に保持され、磁性粉末表面に均一なセラミック層が形成されるので、好ましい。

これら希土類元素の量は、鉄に対して、0.2〜25原子%、好ましくは0.3〜20原子%、より好ましくは0.5〜15原子%であるのがよい。本発明では、磁性層中にY(イツトリウム)を含ませるため、上記磁性粉末にイツトリウムを上記範囲内で含有させるのが望ましい。しかし、磁性粉末にYを含ませる代わりに、または含ませるとともに、イツトリウムの酸化物などからなる粉末を、磁性層に添加してもよい。
窒化鉄磁性粉末は,公知のものを使用できる。形状は、針状のほかに球状や立方体形状などの不定形のものを用いることができる。粒子径や比表面積については、磁気記録用の磁性粉末としての要求特性をクリアするには,限定した磁性粉末の製造条件とすることが必要である

このような強磁性鉄系金属磁性粉末や窒化鉄系磁性粉末は、Al,Si,P,Y,Zrまたはこれらの酸化物で表面処理して使用してもかまわない。

これらの磁性粉末の保磁力は、80〜320kA/mが好ましく、飽和磁化量は、80〜200A・m2 /kg(80〜200emu/g)が好ましく、100〜180A・m2 /kg(100〜180emu/g)がより好ましい。これらの磁気特性は、試料振動形磁束計で外部磁場1,273.3kA/m(16kOe)での測定値である。

また、これらの磁性粉末のBET比表面積は、35m2 /g以上が好ましく、40m2 /g以上がより好ましく、50m2 /g以上が最も好ましい。通常は100m2 /g以下であるのがよい。
本発明において、上記の磁性塗料の調製に用いられるバインダ樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂とを組み合わせたものなどが挙げられる。

これらのバインダ樹脂の中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。

ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン樹脂などがある。
このようなバインダ樹脂は、官能基として、−COOH、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)3 、−O−P=O(OM)2 〔これらの式中、Mは水素原子、アルカリ金属塩基またはアミン塩を示す〕、−OH、−NR1 2 、−N+ 3 4 5 〔これらの式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R5 は水素または炭化水素基を示す〕、エポキシ基などを有してものが好ましく用いられる。

このようなバインダ樹脂を使用すると、磁性粉末などの分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも、−SO3 M基同士の組み合わせが好ましい。
これらのバインダ樹脂は、磁性粉末100重量部に対して、通常は、7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で使用するのがよい。とくに、塩化ビニル系樹脂とポリウレタン樹脂を併用する場合は、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部とポリウレタン樹脂2〜20重量部とを併用するのが好ましい。

また、これらのバインダ樹脂とともに、バインダ樹脂中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが好ましい。
このような架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましく用いられる。

これらの架橋剤は、バインダ樹脂100重量部に対して、通常1〜30重量部の割合で用いられる。より好ましくは5〜20重量部である。
なお、下塗り層の上に、ウエット・オン・ウエットで磁性層を塗布形成する場合には、下塗り塗料からある程度のポリイソシアネートが拡散供給されるので、ポリイソシアネートを併用しなくても、磁性層はある程度架橋される。

また、上記した熱硬化性のバインダ樹脂に代えて、放射線硬化性樹脂を用いてもよい。放射線硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂をアクリル変性し放射線感応性二重結合を持たせたものや、アクリルモノマー、アクリルオリゴマーが用いられる。
本発明において、磁性塗料の調製に使用される有機溶剤としては、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは混合して使用され、さらにトルエンなどと混合して使用される。
本発明において、磁性塗料の調製に使用される添加剤には、後述する潤滑剤や分散剤のほか、必要により、従来公知の研磨剤を使用できる。

この研磨剤としては、α−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など、主としてモース硬度6以上のものが単独でまたは組み合わせで使用される。これらの研磨剤の粒子サイズとしては、通常、平均粒子径で10〜200nmであるのが好ましい。
また、磁性塗料には、必要により、導電性と表面潤滑性の向上を目的に、従来公知のカーボンブラックを添加してもよい。カーボンブラックには、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを使用できる。平均粒子径が10〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が10nm未満になると、カーボンブラックの分散が難しく、100nmを超えると、多量のカーボンブラックを添加する必要があり、いずれも表面が粗くなり、出力低下の原因になるためである。また、必要により、平均粒子径の異なるカーボンブラックを2種以上用いてもよい。
本発明においては、上記した磁性粉末およびバインダ樹脂とともに、有機溶剤や上記の添加剤成分などを使用して、これらを前記方法で分散処理して磁性塗料を調製したのち、この磁性塗料を、常法に準じて、非磁性支持体の一方の面に、非磁性粉末を含む下塗り層を介して、塗布し、乾燥して、磁性層を形成し、他方の面に、非磁性粉末を含むバックコート層を形成し、所要の処理工程を経て、磁気テープを製造する。
ここで、磁性層の厚さは、0.01μm以上、0.15μm以下が好ましい。この範囲が好ましいのは、0.01μm未満では得られる出力が小さいのと、均一な磁性層を塗布するのが困難であり、0.15μmを超えると、短波長信号の解像度が悪くなるからである。短波長記録特性をさらに向上させるには、磁性層の厚さは0.01〜0.1μmであるのがより好ましく、0.02〜0.06μmが最も好ましい。

磁性層の保磁力は、80〜320kA/mが好ましく、100〜300kA/mがより好ましく、120〜280kA/mがさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、80kA/m未満では、記録波長を短くすると反磁界減磁で出力低下が起こり、320kA/mを超えると、磁気ヘッドによる記録が困難になるためである。
つぎに、上記本発明の構成要素として、(1)非磁性支持体、(2)下塗り層につき、説明する。また、前記の磁性層や下塗り層には、(3)潤滑剤、(4)分散剤を含ませるのが普通であり、これらの添加剤についても、説明する。さらに、(5)バックコート層の構成についても、説明する。
(1)非磁性支持体
非磁性支持体の厚さは、用途によって異なるが、通常は、1.5〜11μmであるのが好ましく、2〜7μmであるのがより好ましく、2〜5μmであるのが最も好ましい。この範囲の厚さが好ましいのは、1.5μm未満となると、製膜が難しくなり、またテープ強度が小さくなり、また11μmを超えると、テープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。

非磁性支持体の長手方向のヤング率としては、5.8GPa(590kg/mm2 )以上が好ましく、7.1GPa(720kg/mm2 )以上がより好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.8GPa以上がよいのは、長手方向のヤング率が5.8GPa未満では、テープ走行が不安定になるためである。
ヘリキャルスキャンタイプでは、長手方向のヤング率(MD)/幅方向のヤング率(TD)は、0.6〜0.8の範囲が好ましく、0.65〜0.75の範囲がより好ましい。長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が、上記範囲がよいのは、0.6未満または0.8を超えると、メカニズムは現在のところ不明であるが、磁気ヘッドのトラックの入り側から出側間の出力のばらつき(フラットネス)が大きくなるためである。このばらつきは長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が0.7付近で最小になる。

また、リニアレコーディングタイプでは、長手方向のヤング率/幅方向のヤング率は、理由は明らかではないが、0.7〜1.3が好ましい。
非磁性支持体の幅方向の温度膨張係数は、−10〜10×10-6、湿度膨張係数は、0〜10×10-6が好ましい。この範囲が好ましいのは、この範囲をはずれると、温度・湿度の変化によりオフトラックが生じエラーレートが大きくなるからである。

以上のような特性を満足する非磁性支持体としては、たとえば、二軸延伸のポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、芳香族ポリアミドフィルム、芳香族ポリイミドフィルムなどが挙げられる。
(2)下塗り層
下塗り層の厚さは、0.2μm以上、1.5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.8μm以下がさらに好ましい。この範囲が好ましい理由は、0.2μm未満では、磁性層の厚さむら低減効果や、耐久性の向上効果が小さくなり、また1.5μmを超えると、磁気テープの全厚が厚くなりすぎて、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。この下塗り層に使用するバインダ樹脂(ないし架橋剤)や下塗り層形成のための塗料溶剤には、磁性層の場合と同様のものが用いられる。
下塗り層に使用する非磁性粉末には、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムなどがあるが、酸化鉄単独または酸化鉄と酸化アルミニウムの混合系が好ましい。非磁性粉末の粒子形状は、球状、板状、針状、紡錘状のいずれでもよいが、針状、紡錘状の場合は、通常、長軸長が20〜200nm、短軸長が5〜200nmのものが好ましい。

非磁性粉末を主成分とし、これに必要により粒子径が0.01〜0.1μmのカーボンブラック、粒子径が0.05〜0.5μmの酸化アルミニウムを補助的に含有させることが多い。下塗り層を平滑にかつ厚みムラを少なく塗布するには、上記の非磁性粒子およびカーボンブラックは、とくに粒度分布がシャープなものを用いるのが好ましい。
下塗り層には、平均粒子径が10〜100nmの非磁性板状粉末を添加するのが好ましい。非磁性板状粉末の成分としては、セリウムなどの希土類元素、ジルコニウム、珪素、チタン、マンガン、鉄などの元素の酸化物または複合酸化物が用いられる。

導電性改良の目的で、平均粒子径が10〜100nmのグラファイトのような板状炭素性粉末や平均粒子径が10〜100nmの板状ITO(インジウム・スズ複合酸化物)粉末などを添加してもよい。上記の非磁性板状粉末を添加することにより、膜厚の均一性、表面平滑性、剛性、寸法安定性が改善される。
(3)潤滑剤
下塗り層の潤滑剤と磁性層の潤滑剤の相互移動を排除するものではないが、一般に、下塗り層に、磁性層と下塗り層に含まれる全粉体に対して、0.5〜5重量%の高級脂肪酸を含有させ、0.2〜3重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、ヘッドとの摩擦係数が小さくなるので、好ましい。上記範囲の高級脂肪酸の添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、5重量%を超えると、下塗り層が可塑化してしまい、強靭性が失われるおそれがあるからである。

また、上記範囲の高級脂肪酸のエステルの添加が好ましいのは、0.2重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3重量%を超えると、磁性層への移入量が多すぎるため、テープとヘッドが貼り付くなどの副作用を生じるおそれがあるためである。
高級脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸を用いるのが好ましく、高級脂肪酸エステルとしては、上記高級脂肪酸のエステルを用いるのが好ましい。炭素数10以上の脂肪酸は、直鎖、分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能にすぐれる直鎖型が好ましい。この脂肪酸には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸などがある。これらの中でも、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが好ましい。

磁性層への脂肪酸の添加量は、下塗り層と磁性層の間で脂肪酸が転移するので、とくに限定されず、磁性層と下塗り層を合わせた脂肪酸の添加量を上記の量とすればよい。下塗り層に脂肪酸を添加すれば、必ずしも磁性層に脂肪酸を添加しなくてもよい。
磁性層には、通常、磁性粉末に対して、0.5〜3重量%の脂肪酸アミドを含有させ、0.2〜3重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープ走行時の摩擦係数が小さくなるので、好ましい。上記の脂肪酸アミドとしては、パルミチン酸、ステアリン酸などの炭素数が10以上の脂肪酸アミドが使用可能である。

上記範囲の脂肪酸アミドの添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、ヘッド/磁性層界面での直接接触が起こりやすく、焼付き防止効果が小さくなり、また3重量%を超えると、ブリードアウトしてしまい、ドロップアウトなどの欠陥が発生するおそれがあるからである。また、上記範囲の高級脂肪酸のエステルの添加が好ましいのは、0.2重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さくなり、また3重量%を超えると、ヘッドに貼り付くなどの副作用を生じるおそれがあるためである。
(4)分散剤
下塗り層や磁性層に含ませる非磁性粉末、カーボンブラックまたは磁性粉末は、分散剤で表面処理したり、分散剤とともに各層用塗料を製造してもよい。これらは、単独でも組み合わせて使用してもよい。分散剤は、いずれの層においても、バインダ樹脂100重量部に対し、通常、0.5〜20重量部の範囲で添加される。

分散剤としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸などの炭素数12〜18個の脂肪酸〔RCOOH(Rは炭素数11〜17個のアルキル基またはアルケニル基)〕、上記脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる金属石けん、上記脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、上記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンはエチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、スルホン酸塩、りん酸塩、銅フタロシアニンなどの従来公知の各種の分散剤を、いずれも使用することができる。

(5)バックコート層
非磁性支持体の他方の面(磁性層が形成される面とは反対側の面)には、走行性の向上などを目的として、バックコート層が設けられる。バックコート層に磁性があると磁性層の磁気信号が乱れる場合があり、通常、バックコート層は非磁性である。

バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmであるのが好ましい。この範囲が好ましいのは、0.2μm未満では、走行性向上効果が不十分であり、0.8μmを超えると、テープ全厚が厚くなり、1巻当たりの記録容量が小さくなるためである。バックコート層の中心線平均表面粗さRaは、3〜8nmが好ましく、4〜7nmがより好ましい。
バックコート層には、非磁性粉末の1種として、カーボンブラックを含ませる。このカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを使用できる。通常は、小粒子径カーボンブラックと大粒子径カーボンブラックを使用するのが望ましい。この小粒子径カーボンブラックと大粒子径カーボンブラック合計の添加量としては、無機粉体重量を基準にして、60〜100重量%とするのが好ましく、70〜100重量%とするのがより好ましい。

小粒子径カーボンブラックには、平均粒子径が5〜200nmのものが使用されるが、平均粒子径が10〜100nmのものがより好ましい。この範囲がより好ましいのは、平均粒子径が10nm未満では、カーボンブラックの分散が難しくなり、平均粒子径が100nmを超えると、多量のカーボンブラックを添加する必要がなり、いずれの場合も表面が粗くなり、磁性層への裏移り(エンボス)原因になるためである。

大粒子径カーボンブラックとして、小粒子径カーボンブラックの5〜15重量%、平均粒子径が200〜400nmの大粒子径カーボンブラックを使用すると、表面も粗くならず、走行性向上効果も大きくなる。
バックコート層には、強度、温度・湿度寸法安定性などの向上を目的に、平均粒子径が10〜100nmの非磁性板状粉末を添加することができる。非磁性板状粉末の成分は、酸化アルミニウムのほか、セリウムなどの希土類元素、ジルコニウム、珪素、チタン、マンガン、鉄などの元素の酸化物または複合酸化物が用いられる。

導電性改良の目的で、平均粒子径が10〜100nmの板状炭素性粉末や平均粒子径が10〜100nmの板状ITO粉末などを添加してもよい。また、必要に応じて、平均粒子径が0.1〜0.6μmの粒状酸化鉄粉末を添加してもよい。添加量としては、バックコート層中の全無機粉体の重量を基準にして、2〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。また、平均粒子径が0.1〜0.6μmのアルミナを添加すると、耐久性がさらに向上するので、好ましい。
バックコート層には、バインダ樹脂として、磁性層の場合と同様の樹脂を使用できる。これらの中でも、摩擦係数を低減し走行性を向上させるため、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂とを複合して併用するのが好ましい。

バインダ樹脂の含有量は、通常、カーボンブラックと無機非磁性粉末との合計量100重量部に対して、40〜150重量部、好ましくは50〜120重量部、より好ましくは60〜110重量部、さらに好ましくは70〜110重量部である。上記範囲が好ましいのは、50重量部未満では、バックコート層の強度が不十分であり、120重量部を超えると、摩擦係数が高くなりやすいためである。セルロース系樹脂を30〜70重量部、ポリウレタン系樹脂を20〜50重量部使用するのが好ましい。
バックコート層には、バインダ樹脂を硬化するために、ポリイソシアネート化合物などの架橋剤を用いるのが好ましい。架橋剤には、磁性層の場合と同様のものを使用できる。架橋剤の量は、バインダ樹脂100重量部に対して、通常10〜50重量部、好ましくは10〜35重量部、より好ましくは10〜30重量部である。上記範囲が好ましいのは、10重量部未満では、バックコート層の塗膜強度が弱くなりやすく、35重量部を超えると、SUSに対する動摩擦係数が大きくなるためである。
以下、実施例によって、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部は重量部を示す。また、実施例および比較例における粒子径(平均粒子径)は、数平均粒子径を示す。
<下塗り塗料成分>
(1)成分
針状酸化鉄粉末(平均粒子径:110nm) 64部

カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 24部

アルミナ(平均粒子径:80nm) 12部

ステアリン酸 2.0部

塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 8.8部
(含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g)

ポリエステルポリウレタン樹脂 4.4部
(Tg:40℃、含有−SO3 Na基:1×10-4当量/g)

シクロヘキサノン 25部

メチルエチルケトン 40部

トルエン 10部

(2)成分
ステアリン酸ブチル 1部

シクロヘキサノン 70部

メチルエチルケトン 50部

トルエン 20部

(3)成分
ポリイソシアネート 1.4部

シクロヘキサノン 10部

メチルエチルケトン 15部

トルエン 10部
<磁性塗料成分>
(1)混練工程成分
磁性粉末(Co−Fe−Al−Y) 100部
〔Co/Fe:24at%、Al/(Fe+Co):4.7wt%、
Y/(Fe+Co):7.9at%、
σs:127A・m2 /kg(127emu/g)、
Hc:177.1kA/m(2,225Oe)、
平均粒子径:45nm、軸比:4〕

塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 13部
(含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g)

ポリエステルポリウレタン樹脂 4.5部
(含有−SO3 Na基:1.0×10-4当量/g)

アルミナ粉末(平均粒子径:80nm) 8部

カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 5部

メチルアシッドホスフェート 2部

テトラヒドロフラン 20部

メチルエチルケトン 4.5部

シクロヘキサノン 4.5部

(2)希釈工程成分
パルミチン酸アミド 1.5部

ステアリン酸n−ブチル 1部

メチルエチルケトン 125部

シクロヘキサノン 125部

(3)配合工程成分
ポリイソシアネート 1.5部

メチルエチルケトン 65部

シクロヘキサノン 64部
上記の下塗り塗料成分のうち、(1)成分を回分式ニーダで混練し、つぎに、(2)成分を加えて攪拌したのち、サンドミル〔ジルコニアビーズ(粒子径0.5mm)、見掛け体積80%充填、周速8m/s〕で滞留時間を60分として分散処理を行い、これにさらに(3)成分を加えて攪拌し、ろ過して、下塗り塗料(下塗り層用塗料)とした。

これとは別に、上記の磁性塗料成分のうち、(1)混練工程成分をあらかじめ高速混合しておき、その混合粉末を連続式2軸混練機で混練し、つぎに、(2)希釈工程成分を加えて、連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、一次分散用塗料とした。この塗料を、ジルコニアビーズ(粒子径0.5mm)を見掛け体積で80%充填したサンドミル(周速8m/s)で分散処理した(滞留時間50分)。この一次分散済み塗料に、さらに(3)配合工程成分を加えて攪拌し、ろ過して、磁性塗料とした。
上記の下塗り塗料を、芳香族ポリアミドフィルム(厚さ3.9μm、MD=11GPa、MD/TD=0.7、東レ社製の商品名「ミクトロン」)からなる非磁性支持体上に、乾燥、カレンダ後の厚さが0.9μmとなるように塗布し、この下塗り層上に、上記の磁性塗料を、磁場配向処理、乾燥、カレンダ処理後の磁性層の厚さが0.06μmとなるようにエクストルージョン型コータにてウエット・オン・ウエットで塗布し、磁場配向処理後、ドライヤおよび遠赤外線を用いて乾燥し、磁気シートを作製した。
<バックコート層用塗料成分>
カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 80部

カーボンブラック(平均粒子径:350nm) 10部

非磁性板状酸化鉄粉末(平均粒子径:50nm) 10部

ニトロセルロース 45部

ポリウレタン樹脂(−SO3 Na基含有) 30部

シクロヘキサノン 260部

トルエン 260部

メチルエチルケトン 525部
上記バックコート層用塗料成分を、サンドミル〔ジルコニアビース(粒子径0.5mm)、見掛け体積80%充填、周速8m/s〕で滞留時間45分として分散したのち、ポリイソシアネート15部を加えて撹拌し、ろ過して、バックコート層用塗料を調製した。

このバックコート層用塗料を、前記方法で作製した磁気シートの磁性層の反対面側に、乾燥、カレンダ後の厚さが0.5μmとなるように塗布し、乾燥した。
このようにして得た磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダで、温度100℃、線圧196kN/mの条件で鏡面化処理し、磁気シートをコアに巻いた状態で70℃にて72時間エージングしたのち、1/2インチ幅に裁断した。

スリットマシン(磁気テープ原反を所定幅の磁気テープに裁断する装置)は、構成している各種要素を下記のように改良したものを用いた。巻き出し原反からスリット刃物群に至るウェブ経路中にテンションカットローラを設け、このテンションカットローラをサクションタイプとし、吸引部は多孔質金属を埋め込んだメッシュサクションとした。刃物駆動部に動力を伝達する機構を持たないモータ直結のダイレクトドライブとした。
裁断後のテープを200m/分で走行させながら磁性層表面に対しラッピングテープ研磨、ブレード研磨および表面拭き取りの後処理を行い、磁気テープを作製した。この際、ラッピングテープにはK10000、ブレードには超硬刃、表面拭き取りには東レ社製の商品名「トレシー」を用い、走行テンション0.294Nで処理を行った

このようにして得られた磁気テープを用い、S−DLT用のサーボーライタにてバックコート層にサーボ信号を書き込んだのち、バックコート層に短繊維径が4μmの綿4本を撚り合わせた長さ2.5mmの繊維を植毛したベルベットを接触させながらテープを走行させて、サーボ信号書込み時の燃焼カスを除去して、カートリッジに組み込み、コンピュータ用テープを作製した。
磁性塗料成分において、磁性粉末を、Co−Fe−Al−Y〔Co/Fe:24at%、Al/(Fe+Co):9.7wt%、Y/(Fe+Co):12.8at%、La/(Fe+Co):0.2at%、σs:92A・m2 /kg(92emu/g)、Hc:111.0kA/m(1,395Oe)、平均粒子径:30nm、軸比:3〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、コンピュータ用テープを作製した。
磁性塗料成分において、磁性粉末を、下記のように合成した窒化鉄系磁性粉末(Y−Fe−N)〔σs:135.2Am2 /kg(135.2emu/g)、Hc:226.9kA/m(2,850Oe)、平均粒子径:20nm、軸比:1.1〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、コンピュータ用テープを作製した。
<窒化鉄系磁性粉末の合成>
41.9モルの硫酸鉄(II)七水塩と97.4モルの硝酸鉄(III )九水塩を、150kgの水に溶解した。つぎに、376モルの水酸化ナトリウムを150kgの水に溶解した。上記2種類の鉄塩の水溶液に、上記水酸化ナトリウムの水溶液を添加し、20分間攪拌し、マグネタイト粒子を生成させた。このマグネタイト粒子をオートクレーブに入れ、200℃で4時間加熱し、水熱処理後、水洗した。得られたマグネタイト粒子は、粒子サイズが25nmの球状ないし楕円形状であった。

このマグネタイト粒子1kgを、50リットルの水に、超音波分散機を用いて30分間分散させた。この分散液に、250gの硝酸イットリウムを加えて溶解し、30分間攪拌した。これとは別に、80gの水酸化ナトリウムを10リットルの水に溶解した。この水酸化ナトリウム水溶液を、上記の分散液に約30分間かけて滴下し、滴下終了後、さらに1時間攪拌した。この処理により、マグネタイト粒子表面にイットリウムの水酸化物を被着析出させた。これを水洗し、ろ過後、90℃で乾燥して、マグネタイト粒子の表面にイットリウムの水酸化物を被着形成した粉末を得た。
このようにマグネタイト粒子の表面にイットリウムの水酸化物を被着形成した粉末を、水蒸気流中、450℃で2時間加熱還元して、イットリウム−鉄系磁性粉末を得た。つぎに、水素ガスを流した状態で、約1時間かけて150℃まで降温した。150℃に到達した状態で、ガスをアンモニアガスに切り替え、温度を150℃に保った状態で、30時間窒化処理を行った。その後、アンモニアガスを流した状態で、150℃から90℃まで降温し、90℃でアンモニアガスから酸素と窒素の混合ガスに切り替え、2時間安定化処理を行った。ついで、混合ガスを流した状態で、90℃から40℃まで降温し、40℃で約10時間保持したのち、空気中に取り出した。
このようにして得られたイットリウム−窒化鉄系磁性粉末は、イットリウムと窒素の含有量を蛍光X線により測定したところ、それぞれ、5.3原子%と10.8原子%であった。また、X線回折パターンによりFe162 相を示すプロファイルを得た。このプロファイルにより、Fe162 に基づく回折ピークとα−Feに基づく回折ピークとが観察され、このイットリウム−窒化鉄系磁性粉末がFe162 相とα−Fe相との混合相からなり立っていることがわかった。

また、高分解能分析透過電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、ほぼ球状の粒子で、平均粒子サイズは20nmであった。さらに、BET法により求めた比表面積は53.2m2 /gであった。また、1,270kA/m(16kОe)の磁界を印加して測定した飽和磁化は135.2Am2 /kg(135.2emu/g)、保磁力は226.9kA/m(2,850Оe)であった。さらに、60℃、90%RH下で1週間保存したのち、上記と同様に飽和磁化を測定した結果、118.2A/m2 (118.2emu/g)となり、保存前後の飽和磁化の維持率が87.4%であった。
磁性塗料の分散処理において、ジルコニアビーズの粒子径を0.5mmから0.7mmに、ビーズの充填量を見掛け体積で80%から85%に、それぞれ、変更した以外は、実施例1と同様にして、コンピュータ用テープを作製した。
比較例1
磁性塗料成分において、磁性粉末を、Co−Fe−Al−Y〔Co/Fe:24at%、Al/(Fe+Co):4.7wt%、Y/(Fe+Co):7.9at%、σs:112A・m2 /kg(112emu/g)、Hc:181.4kA/m(2,280Oe)、平均粒子径:60nm、軸比:5〕に変更し、また磁性塗料の分散処理において、ジルコニアビーズの粒子径を0.5mmから0.7mmに、ビーズの充填量を見掛け体積で80%から85%に、サンドミル分散の滞留時間を50分から80分に、それぞれ、変更した以外は、実施例1と同様にして、コンピュータ用テープを作製した。
比較例2
磁性塗料の分散処理において、ビーズの充填量を見掛け体積で80%から75%に、サンドミル分散の滞留時間を50分から40分に、それぞれ、変更した以外は、実施例1と同様にして、コンピュータ用テープを作製した。
比較例3
磁性塗料成分において、磁性粉末を、Co−Fe−Al−Y〔Co/Fe:24at%、Al/(Fe+Co):4.7wt%、Y/(Fe+Co):15.8at%、σs:121A・m2 /kg(121emu/g)、Hc:178.3kA/m(2,240Oe)、平均粒子径:45nm、軸比:4〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、コンピュータ用テープを作製した。
比較例4
磁性塗料の分散処理において、ジルコニアビーズをチタニアビーズに変更した以外は、実施例1と同様にして、コンピュータ用テープを作製した。
比較例5
磁性塗料の分散処理において、サンドミル分散の滞留時間を80分から120分に変更した以外は、比較例2と同様にして、コンピュータ用テープを作製した。
上記の実施例1〜4および比較例1〜5の各コンピュータ用テープについて、下記の方法により、磁性層表面の元素分析およびジルコニア摩耗粉の粒子径を測定し、さらに、電磁変換特性(C,C/N)、スチル耐久性、耐久走行性およびヘッド摩耗を、測定した。これらの結果を、磁性層に用いた磁性粉末の特性(サイズ、Hc、σs)とともに、表1(実施例1〜4)および表2(比較例1〜5)に示した。
<元素分析>
VG社製の「ESCA LAB mark」を用い、励起用X線源はMgKαを用い、加速電圧12kV、電流値10mAの条件で、磁性層表面のY/Fe、Zr/Fe、La/Fe(at%)の測定を行った。
<ジルコニア摩耗粉の粒子径>
集束イオンビーム加工装置(FIB:日立製作所製の「FB−2000A」,加速電圧:30kv,加工イオン:Ga)を用いて、試料テープの長手方向の厚さ1〜1.5μmの薄膜サンプルを作成し、STEM−EDS(STEM=使用装置:日立製作所製の「HF−2210」、撮影方法:TEMモード、EDS=使用装置:Noran Instruments製の「X線微小分析システム Vantage」)にて、元素マッピングを行い、Zr粒子の所在を確認し、その部分を、TEM(日立製試作所製の「HF−2200」、加速電圧:200kv,撮影方法:明視野)にて100万倍にて透過像を撮影し、得られた粒子像10個から各粒子の最大径を測定したものを平均し、粒子径とした。
<電磁変換特性(C,C/N)>
磁気テープの電磁変換特性の測定には、ドラムテスターを用いた。ドラムテスターには電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.2ミクロン)とMRヘッド(トラック幅8μm)を装着し、誘導型ヘッドで記録を行い、MRヘッドで再生を行った。これら電磁誘導型ヘッドとMRヘッドは回転ドラムに対して異なる場所に設置されており、両ヘッドを上下方向に操作することで、トラッキングを合わせることができるようにした。磁気テープはカートリッジに巻き込んだ状態から適切な量を引き出して廃棄し、さらに60cmを切り出し、さらに4mm幅に加工して、回転ドラムの外周に巻き付けた。

出力およびノイズは、ファンクションジェネレータにより矩形波を記録電流電流発生器に入力制御し、波長0.2μmの信号を書き込み、MRヘッドの出力をプリアンプで増幅後、スペクトラムアナライザーに読み込んだ。0.2μmのキャリア値を媒体出力Cとした。また、0.2μmの矩形波を書き込んだときに、記録波長0.2μm以上に相当するスペクトルの成分から、出力およびシステムノイズを差し引いた値の積分値をノイズ値Nとして用いた。さらに両者の比をとってC/Nとした。CおよびC/Nともに、比較例1のコンピュータ用テープの値との相対値を求めた。
<スチル耐久性>
スチル耐久性は、上記と同様にドラムテスターを用いて評価した。上記のように磁気テープを装着し同様の書き込み方法で0.9μmのキャリア信号を書き込み、両ヘッドを当てたまま出力を測定し続ける。その後、初期の出力値から95%にまで落ち込んだ時間をもって、スチル寿命と定義した。
<耐久走行性>
薄手テープも測定できるように改良したS−DLTドライブを用いてテストモードにて記録(記録波長0.37μm)・再生することにより、走行前のエラーレートを求めた。また、25℃、55%RH環境下で、全長、全トラックを300時間走行させたのちのエラーレートを求め、走行後のエラーレートとした。
<ヘッド摩耗>
ヘッドの摩耗量は、フェライト角柱のエッジに磁気テープを摺接させて往復走行させたときの摩耗幅で評価した。この摩耗幅は、MR−headの摩耗量と相関があることを確認しており、10μm以下であれば実用上問題ないことがわかっている。

測定は、1/2インチ−2リールテスターにAlFeSil角柱(ECMA−288/AnnexH/H2に規定されている角柱)を専用ジグを用いて装着し、巻き付き角度164°、走行速度2.54m/s、走行時テンション1Nとして、180m区間往復させた。測定環境は、23℃,50%RHとした。走行後、角柱を光学顕微鏡で観察し、エッジの幅を持って、角柱摩耗量とした。
Figure 0004497519
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上記の表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4の各コンピュータ用テープは、C/Nが良好で、初期エラーレートが小さく、また走行後のエラーレートの増加が少なく、スチル耐久性が良好であることがわかる。

これに対し、上記の表2の結果から明らかなように、比較例1〜5の各コンピュータ用テープは、本発明の構成を満たさないことから、C/N、初期エラーレート、走行後のエラーレート、スチル耐久性のいずれかが不良であったり、ヘッド摩耗(角柱摩耗量)が大きすぎて、実用に適さないものであることがわかる。
つぎに、本発明の構成における各数値の臨界的意義について、図1〜図5を使用して、さらに詳しく説明する。図1は、実施例1を基本形態として、磁性粉末の粒子径を変化させ(ただし、粒子径が20nmのものは実施例3の球状粉を使用)、この磁性粉末の粒子径とC/Nおよびスチル耐久性との関係を示したものである。

この図1から、スチル耐久性は、磁性粉サイズが45nmの針状形状の磁性粉末を使用した場合に若干小さい値を示すことと、磁性粉サイズが20nmの球状形状の磁性粉末を使用した場合に若干高い値を示すことを除き、磁性粉サイズによらず良好な値を示すことがわかる。また、C/Nは、磁性粉サイズが小さくなるほど高くなる傾向にあり、とくに60nm以上になると低い値となることがわかる。

上記の傾向より、磁性粉末の平均粒子径は60nm未満であるのが好ましいことがわかる。加えて、平均粒子径が5nm未満では、粒子の表面エネルギーが大きくなって分散が困難になることを勘案すると、本発明における磁性粉末の平均粒子径の好適な数値範囲とは5nm以上、60nm未満であると考えられる。
図2は、実施例1を基本形態として、磁性層表面のY/Fe量を塗料分散条件を変えることにより変化させ(ただし、Y/Fe量が144at%のものは比較例3に示す磁性粉末のY/Fe量を多くすることにより変化させ)、この磁性層表面のY/Fe量と、走行後のエラーレートおよび角柱摩耗量との関係を示したものである。

この図2から、角柱摩耗量は、磁性層表面のY/Feの値が大きくなるとともに、大きくなる傾向があり、とくにY/Feの値が140at%を超えると、角柱摩耗量が10μmを超え、実用上もヘッド摩耗が問題となる。また、走行後のエラーレートは、Y/Feの値が60at%より小さくなると、大きくなる傾向がみられ、40at%未満になると、急激に大きくなる。以上のことを勘案すると、本発明におけるY/Feの値の好ましい範囲は40〜140at%であると考えられる。
図3は、実施例1を基本形態として、磁性層表面のZr/Fe量を塗料分散条件を変えることにより変化させ(ただし、Zr/Fe値が0のものは粒子径が0.5mmのチタニアビーズを用いて実施例1と同様の条件で塗料分散を行って得た)、この磁性層表面のZr/Fe量とCおよびスチル耐久性との関係を示したのである。

この図3から、スチル耐久性は、磁性層表面のZr/Feの値が大きくなると、良好になる傾向がみられ、2at%未満になると、10分を切り、実用上の問題が出始め、15at%を超えると、効果が飽和する。また、Cは、磁性層表面のZr/Feの値が小さくなるとともに、大きくなる傾向があるが、0のものは、チタニアビーズを用いて磁性塗料の分散を行ったもので、塗料の分散状態が少し悪いため、Cが逆に低下する。以上のことを勘案すると、Zr/Feの値の好ましい範囲は2〜15at%であると考えられる。
図4は、実施例1を基本形態として、磁性層中のジルコニア摩耗粉の粒子径を塗料分散条件を変えることにより変化させ、この磁性層中のジルコニア摩耗粉の粒子径とCとの関係を示したものである。

この図4から、磁性層中のジルコニア摩耗粉の粒子径が20〜30nm程度で最も高いCが得られている。ジルコニア摩耗粉の粒子径が50nm以上になると、磁性粉の配向が悪くなるためか、Cが低下し、またジルコニア摩耗粉の粒子径を小さくしたもの(塗料の分散条件を弱くしたもの)は、分散が不十分になるためか、Cがやや低下する。以上のことを勘案すると、ジルコニア摩耗粉の粒子径の好ましい範囲は50nm未満、より好ましい範囲は5〜30nmであると考えられる。
図5は、実施例2を基本形態として、磁性層表面のLa/Fe量を磁性粉のLa/Fe量を変えることにより変化させ、この磁性層表面のLa/Fe量とスチル耐久性および角柱摩耗量との関係を示したものである。

この図5から、磁性層表面のLa/Feの値が大きくなると、スチル耐久性が大きくなる傾向がみられる。しかし、磁性層表面のLa/Feの値が大きくなると、角柱摩耗量も大きくなり、La/Feの値が30at%を超えると、角柱摩耗量が10μmを超え、実用上のヘッド摩耗量が問題になる。一方、La/Feの値が2at%未満になると、スチル耐久性の低下が大きい。以上のことを勘案すると、La/Feの値の好ましい範囲は1〜30at%であると考えられる。
磁性層中に含ませた磁性粉末の粒子径とC/Nおよびスチル耐久性との関係を示す特性図である。 磁性層表面のY/Feと走行後のエラーレートおよび角柱摩耗量との関係を示す特性図である。 磁性層表面のZr/FeとC(出力)およびスチル耐久性との関係を示す特性図である。 磁性層中のジルコニア摩耗粉の粒子径とC(出力)との関係を示す特性図である。 磁性層表面のLa/Feとスチル耐久性および角柱摩耗量との関係を示す特性図である。

Claims (5)

  1. 非磁性支持体の一方の面に、非磁性粉末を含む下塗り層を介して、鉄を主たる構成元素とする磁性粉末を含む磁性層が形成され、他方の面に、非磁性粉末を含むバックコート層が形成されてなるMR型ヘッド用の磁気テープにおいて、上記の鉄を主たる構成元素とする磁性粉末の平均粒子径が20nm以上、45nm以下であり、かつ上記磁性層中にYおよびZrが含まれ、これら元素のESCA分析による含有量が、Y/Fe=40〜140at%、Zr/Fe=2〜15at%であることを特徴とするMR型ヘッド用の磁気テープ。
  2. 鉄を主たる構成元素とする磁性粉末は、鉄以外の構成元素のひとつとしてYを含む請求項1に記載のMR型ヘッド用の磁気テープ。
  3. 鉄を主たる構成元素とする磁性粉末は、強磁性鉄系金属磁性粉末または窒化鉄系磁性粉末である請求項1または2に記載のMR型ヘッド用の磁気テープ。
  4. 磁性層中に、ジルコニアビーズの摩耗粉として、Zr含有粉末が粒子径50nm未満の粒子として含まれている請求項1〜3のいずれかに記載のMR型ヘッド用の磁気テープ。
  5. 磁性層中にLaが含まれ、この元素のESCA分析による含有量が、La/Fe=1〜30at%である請求項1〜4のいずれかに記載のMR型ヘッド用の磁気テープ。

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