〔第1の実施の形態〕
本発明の第1の実施の形態による反射型液晶表示装置用基板およびそれを用いた反射型液晶表示装置について図1乃至図20を用いて説明する。まず、図1を用いて、本実施の形態による反射型液晶表示装置の概略構成と共に動作原理について説明する。図1は、反射型液晶表示装置1を表示面に対し垂直に切断した断面を示すと共に、図1(a)は明状態(白表示)を示し、図1(b)は暗状態(黒表示)を示している。不図示の基板上には、凹凸反射面を有する拡散反射板2が形成されている。不図示の対向基板上には、拡散反射板2の反射面と所定のギャップを介して位相差板(λ/4板)6が対向配置されている。位相差板6の外光入射側には偏光板8が配置されている。液晶層4は、所定のセルギャップ内に封止されており、両基板の液晶層4との界面には垂直配向膜(不図示)が形成されている。
液晶層4には、負の誘電率異方性を有し、両基板間に電圧を印加しない状態で垂直配向膜界面の液晶分子がほぼ垂直配向するVA型の液晶が用いられている。1枚偏光板方式の反射型液晶表示装置1は、電圧無印加時に暗状態を表示するノーマリブラック型の表示を行う。
さて、図1(a)において、偏光板8は紙面に平行な偏光軸(光透過軸)10を有するものとする。外光(偏光軸10と平行な偏光方位を有する直線偏光の光L1とそれに直交する紙面に垂直な偏光方位を有する直線偏光の光L2とで表している)が表示面から偏光板8に入射すると、光L2は偏光板8で吸収されてしまい、光L1だけが偏光板8を透過する。次に、光L1はλ/4板6に入射して円偏光(例えば進行方向に正対する方向から見て右回りとする)の光L3となって液晶層4に入射する。液晶層4に対して電圧が印加されている状態で液晶分子4aは傾斜しており、光L3は、液晶分子4aの傾斜で生じたリタデーションにより紙面に平行な偏光方位を有する直線偏光の光L4となって拡散反射板2で反射して再び液晶層4に入射する。光L4は、液晶層4のリタデーションにより再び右回りの円偏光の光L5になる。次いで光L5はλ/4板6に入射し、紙面に平行な直線偏光の光L6となってλ/4板6を射出する。光L6の偏光方位は偏光板8の偏光軸と平行なので偏光板8を透過して表示面外に射出されて白表示がなされる。
一方、図1(b)において、外光が表示面から偏光板8に入射すると、光L2は偏光板8で吸収されてしまい、光L1だけが偏光板8を透過する。次に、光L1はλ/4板6に入射して右回りの円偏光の光L3となって液晶層4に入射する。液晶層4に対して電圧が印加されていない状態で液晶分子4aはほぼ垂直に立っておりリタデーションは生じない。これにより光L3は右回りの円偏光状態を保ったまま拡散反射板2に入射する。光L3は、拡散反射板2で反射される際に、進行方向が180°変換されるため、実効的に円偏光の回転方向が逆になり、左回りの円偏光の光L7となって再び液晶層4に入射する。液晶層4ではリタデーションの影響を受けないので光L7は、左回りの円偏光状態を保ったままλ/4板6に入射し、紙面に垂直な直線偏光の光L8となってλ/4板6を射出する。光L8の偏光方位は偏光板8の偏光軸に直交するので偏光板8で吸収されてしまい、光が表示面外に射出されず黒表示がなされる。従って、暗状態を得るためには、拡散反射板2において入射光が円偏光になっている必要がある。
しかしながら、表示面に斜めに入射する斜め入射光については、λ/4板6および液晶層4のリタデーションが変化してしまうのでリタデーションが発生してしまい、斜め入射光は拡散反射板2において楕円偏光になってしまう。このような反射光を表示面の観察方向に反射させないようにすれば良好な暗状態を実現することが可能になる。
すなわち、図1に示す拡散反射板2の表面構造を方位方向の反射指向性を有する凹凸構造とすることで、コントラストの低下を抑えることができるようになる。特に、拡散反射板2の表面の凹凸構造を複数の微小な鏡面と仮定した場合、各鏡面の法線ベクトルの方向が方位角φnからφn+1°の角度範囲に存在する確率分布の標準偏差を0.1より大きくすることでコントラスト低下を著しく抑えることが可能になる。
以下、本実施の形態による反射型液晶表示装置について実施例を用いてより具体的に説明する。
[実施例1−1]
図2は、本実施例における反射型液晶表示装置を模式的に示す図である。図2(a)は、各光学素子の積層状態を示す斜視図であり、図2(b)は、それらの光学軸(optic axis)の配置関係を示している。図2(b)については後程説明する。
図2(a)に示すように、位相差板6は、広帯域λ/4板を実現するため図中上から順に、第1の位相差板(ノルボルネン構造を持つ樹脂からなるλ/2板)12と、第2の位相差板(同λ/4板)14とを有している。位相差板6は、さらに、広帯域λ/4板と液晶層4との間に、斜め入射によるリタデーションを補償する第3の位相差板(住友化学社製の負の位相差フィルムVAC75を使用)16を挿入して構成されている。
液晶層4は、負の誘電率異方性を有し、屈折率差がΔn=0.1の液晶材料(メルク・ジャパン社製)を用いている。
また、偏光板8は、偏光フィルム(日東電工社製G1220DU)20およびそれを保護および支持するTAC(Triacetyl Cellulose)フィルム18とを有している。TACフィルム18にもリタデーションが存在しておりこれも考慮する必要がある。
図3は、図1および図2に示した構成のVAモードの反射型液晶表示装置1の表示面から光L10を入射させ、拡散反射板2上での入射光L11の偏光状態(位相差δ)を調べている状態を示している。本例では、画像を表示する表示面の中心に座標系の原点oをとり、原点oを通って表示面に平行な横方向にx軸(図中右方が正)をとり、表示面に平行でx軸に直交する方向にy軸(図中右上方が正)をとり、表示面法線方向にz軸(図中下方が正)をとる座標系を用いて説明する。また、当該座標系で示される3次元空間の任意点Siは、座標原点oと当該任意点Siとを結ぶ直線のx−y面への射影とx軸とのなす角を方位角φi(x軸の正側から反時計回りに計った角度)とし、当該直線とz軸とのなす角を極角θi(z軸の負側から計った角度)とする。
任意点Siから原点oに向かう光L10(波長λ=550nm)が偏光板8に入射し、さらに位相差板6および液晶層4を通過して光L11として拡散反射板2に向かうときの光L11の位相差δを図4に示す。図4において横軸は光L10の進路の極角θi(deg.)を表し、縦軸は光L11の位相差δ(deg.;絶対値で示している)を表している。グラフ内は、方位角φiを方位角φ0=0°〜φ17=170°まで10°刻みで計算した18本の同方位角曲線φ0〜φ17がプロットされている。このときの液晶層4の厚さ(z方向;セルギャップ)は、3μmである。
図4より、極角θi=0°付近では方位角φiに依存せずに位相差δがほぼ90°となり、円偏光が得られていることが分かる。極角θiの絶対値が大きくなると位相差δは90°から大きくずれ、特に方位角φ11=110°〜φ15=150°方向において位相差δが90°から大きく外れることが分かる。
また、拡散反射板2を用いた反射型液晶表示装置1を顕微鏡観察した結果を図5に示す。凹凸を有する拡散反射板2を使用する場合、凹凸の振幅が1μm程度存在するため、図5の幅G1、G2に示すように場所によってセルギャップが変化する。図5に示すように、拡散反射板2の反射表面の凹凸の谷にセルギャップ制御用の球状スペーサ22が存在していることがわかった。なお、図5中の番号24は対向基板側を示している。
従って、セルギャップが3μm、3.5μmあるいは4μmの液晶パネルを製造しようとしても、それぞれセルギャップが2〜3μm、2.5〜3.5μmあるいは3〜4μmの間でセルギャップが変化してしまうことになる。これらを踏まえてセルギャップが2〜4μmにおける位相差δのセルギャップ依存性を調べた。結果を図6乃至図9に示す。
図6乃至図9において横軸は光L10の進路の極角θi(deg.)を表し、縦軸は光L11の位相差δ(deg.)を表している。グラフ内は、方位角φiを方位角φ0=0°〜φ17=170°まで10°刻みで測定した18本の同方位角曲線φ0〜φ17がプロットされている。図6乃至図9から明らかなように、液晶層4のセルギャップが変化すると斜め入射のリタデーションが変化し、視角特性が大きく変化することが分かる。
図10は、図6乃至図9に基づいて得られたセルギャップの変化と位相差δとの関係をまとめて示している。位相差δが90°から25°以上外れると暗状態の光漏れが大きくなることが観察の結果わかっているので、図10は、セルギャップが2〜4μmであって位相差δが90°から25°以上外れるときの方位角φiの範囲を示している。図10に示すように、セルギャップが2μmでは方位角φ=10〜50°で位相差δが90°から25°以上外れる。さらに、セルギャップが2.5μmでは方位角φ=30°で、セルギャップが3μmでは方位角φ=120〜140°で、セルギャップが3.5μmでは方位角φ=100〜160°で、セルギャップが4μmでは方位角φ=0〜10°およびφ=50〜180°で位相差δが90°から25°以上外れる。
従って、例えばセルギャップの設計値が3μmの場合は、図10における2〜3μmのセルギャップにおける位相差δが90°から25°以上外れる条件を適用して、方位角φ=10〜50°および方位角φ=120〜140°から入射する光L10が、光L11として拡散反射板2に到達したときに位相差δが90°から大きくずれて光漏れとなってしまうことが分かる。同様に、セルギャップの設計値が3.5μmの場合は、2.5〜3.5μmの範囲でセルギャップの変動が有り得るので、図10から、方位角φ=30°および方位角φ=100〜160°から入射する光L10が、光L11として拡散反射板2に到達したときに位相差δが90°から大きくずれて光漏れとなってしまうことが分かる。さらに、セルギャップ4μmで設計する場合は、3〜4μmの範囲でセルギャップの変動が有り得るので、方位角φ=0〜10°、方位角φ=50〜180°から入射する光L10が、光L11として拡散反射板2に到達したときに位相差δが90°から大きくずれて光漏れとなってしまうことが分かる。
このような光漏れの原因となる光を反射型液晶表示装置の観察方向(例えばパネル面の法線方向)に反射させないようにするには、光漏れの原因となる入射方位角φの光がパネル面法線方向に反射しないような凹凸を拡散反射板2の反射面に形成すればよい。すなわち光漏れの原因となる入射方位角φiからの入射光をパネル面法線方向に反射させるのに最も寄与する方位(方位角(φi+90°))に傾斜面が延在しないようにすればよい。従って、設計値のセルギャップが3μmの場合は、方位角φ=10〜50°および方位角φ=120〜140°に対応する傾斜をなるべく小さくするような反射面形状を形成する。このような反射面形状として図11に示すランダムな皺状凹凸形状で構成された反射面を有する拡散反射板2をTFT(薄膜トランジスタ;Thin Film Transistor)基板上の画素毎に形成した。拡散反射板2は画素毎に形成される画素電極を兼ねており、不図示のTFTのソース電極と電気的に接続されている。拡散反射板2は、以下の方法により作製した。
(1)スピンコータ等を用いて、TFT基板上にレジストAFP750(クラリアント・ジャパン社製)を塗布して3μmの厚さのレジスト層を形成する。
(2)TFT基板上のレジスト層に対して、ホットプレートを用いて温度110℃で2分間のプリベークを行う。
(3)TFT基板上のレジスト層に対して、クリーンオーブンを用いて温度135℃で80分間のポストベークを行う。
(4)TFT基板上のレジスト層に対して、UV(紫外光)を照射エネルギー2600mJ/cm2で照射する。
(5)TFT基板上のレジスト層に対して、クリーンオーブンを用いて温度215℃で60分間のファイナルベークを行う。これにより、レジスト層表面に皺状パターンが形成される。
(6)レジスト層上に、スパッタリングによりAl(アルミニウム)を200nmの厚さに成膜する。これにより、Al層は拡散反射膜(板)として機能すると共に、当該反射面形状は、下層のレジスト層の皺状パターンが反映された皺状凹凸形状(皺状凹凸構造(物))となる。
図11に示すように、TFT基板面上の拡散反射板2にはゲートバスラインやドレインバスラインが方位角φ=0°および方位角φ=90°方向に延びている。このため、これらのバスライン形状を反映した皺状凹凸形状が形成されている。この表面形状をAFM(原子間力顕微鏡)で測定し、図12に示すように、拡散反射板2の表面が微小鏡面26で構成されていると仮定し、微小鏡面26の法線ベクトルInの存在確率分布を法線ベクトルInの方位角φnについて求めた。なお、図12のx−y−z3次元座標系は図3に示す座標系と同一である。
図13は、横軸に法線ベクトルInの方向を方位角φnで表し、縦軸は、法線ベクトルInの存在確率を表している。図13に示すように、法線ベクトルInの方向は、方位角φn=0°および方位角φn=90°となる傾斜が多く存在している。このように本例では、確率分布の極大が任意方位および、それとほぼ直交する方位に存在しているが、確率分布の極大が任意方位だけに存在していてもよい。この拡散反射板2を用いてVAモードの反射型液晶表示装置を作製した。ただし、垂直配向膜を使用し、球状スペーサは積水ファインケミカル社製3μm径ミクロパールを使用した。この反射型セルに図2(a)を用いて説明した偏光板8、位相差板6を貼り付けて暗状態の反射率の測定(積分球使用)を試みた。図2(b)は、図3に示したx−y−z座標系についてx−y面を−z方向から見た状態を示している。図2(b)に示すように、偏光板8の偏光フィルム20の光吸収軸(偏光軸と垂直方向)およびTACフィルム18の遅相軸は平行で方位角φ=15°に固定されている。ここで遅相軸とは、フィルム面内方向の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnzとしたとき、フィルム面内方向屈折率nx、nyのうち大きい方の軸を指している。
図2(b)に戻り、位相差板6の第1の位相差板12の遅相軸は方位角φ=25°にあり、第2の位相差板と第3の位相差板16の遅相軸は平行で方位角φ=80°にある。以上説明した図2(b)の光学軸の構成と共に、図2(a)に示す光学フィルムの積層構造中の拡散反射板2として図11に示す皺状凹凸形状を備えた拡散反射板2を用い、当該積層構造を座標原点を中心に方位角φ方向に回転させて反射率を測定した。測定では、液晶層4に電圧を印加しない暗状態における拡散反射板2の反射率と、液晶層4間に5Vの駆動電圧を印加して明状態の反射率とを求めた。また、これら測定データからコントラストを計算した。
結果を図14に示す。図14の横軸は拡散反射板2の方位角(deg.)を表し、左側の縦軸は暗状態反射率(%)を表し、右側の縦軸は、明状態反射率(%)およびコントラストを表している。図14に示すように、方位角φ=0°(=180°)、φ=90°で暗状態の反射率が著しく低下し、高いコントラストが得られていることが分かる。図11からも分かるとおり拡散反射板2は、方位角φ=0°およびφ=90°方向に多くの傾斜が存在し、方位角φ=45°およびφ=135°方向の傾斜の存在が非常に少なくなっている。そのため、方位角φ=0°およびφ=90°方向から入射する光は多く利用するが、一方で方位角φ=45°およびφ=135°方向から入射する光の利用率が小さくなる。また偏光板8および位相差板6とを組合せた場合の液晶層4は、図10に示したように方位角φ=10〜50°および方位角φ=120〜140°方向の光は円偏光にならないため、これらの光の利用率を下げていることに相当する。従って、暗状態の反射率を著しく低下させて高コントラストが得られている。
[実施例1−2]
拡散反射板2の表面形状の方位依存性を変えた場合の特性を調べた。使用した拡散反射板2の表面形状における微小鏡面26の法線ベクトルInの方位依存性を図15に示す。図15は、横軸に法線ベクトルInの方向を方位角φnで表し、縦軸は、法線ベクトルInの存在確率を表している。図中のサンプル1は実施例1−1の拡散反射板2であり、サンプル3は方位依存の無い円形パターンからなる従来の拡散反射板である。サンプル2はこれらの中間の方位依存を有する拡散反射板2である。
サンプル2の拡散反射板2は次のような方法で作製した。
(1)スピンコータ等を用いて、TFT基板にレジストAFP750を塗布して3μmの厚さのレジスト層を形成する。
(2)TFT基板を減圧乾燥する。
(3)TFT基板上のレジスト層に対して、ホットプレートを用いて温度110℃で2分間のプリベークを行う。
(4)TFT基板上のレジスト層に対して、クリーンオーブンを用いて温度135℃で80分間のポストベークを行う。
(5)TFT基板上のレジスト層に対して、UV光を照射エネルギー2600mJ/cm2で照射する。
(6)TFT基板上のレジスト層に対して、クリーンオーブンを用いて温度215℃で60分間のファイナルベークを行う。これにより、レジスト層表面に皺状パターンが形成される。
(7)レジスト層上に、スパッタリングによりAlを200nmの厚さに成膜する。これにより、Al層は拡散反射膜(板)として機能すると共に、当該光反射面形状は、下層のレジスト層の皺状パターンが反映された皺状凹凸形状となる。
また、サンプル3の拡散反射板は次のような方法で作製した。
(1)スピンコータ等を用いて、TFT基板にレジストAFP750を塗布して3μmの厚さのレジスト層を形成する。
(2)TFT基板上のレジスト層に対して、クリーンオーブンを用いて温度90℃で20分間のプリベークを行う。
(3)直径10μmの円形パターンがランダムに配置されたマスクパターンを用いてレジスト層を露光する。
(4)TFT基板上のレジスト層に対して、現像液MF319(Shipley社製)を用いて1分間の現像を行う。
(5)TFT基板上のレジスト層に対して、クリーンオーブンを用いて温度125℃で40分間のポストベークを行う。
(6)TFT基板上のレジスト層に対して、UV光を照射エネルギー1300mJ/cm2で照射する。
(7)TFT基板上のレジスト層に対して、クリーンオーブンを用いて温度215℃で60分間のファイナルベークを行う。
(8)レジスト層上に、スパッタリングによりAlを200nmの厚さに成膜する。
図15に示した方位角依存の存在確率分布から求めた、サンプル1乃至3の拡散反射板の方位依存における存在確率の標準偏差を図16に示す。図16において、左項はサンプル番号を示し、中項は標準偏差を示し、右項は備考(説明)である。従来から使用されているサンプル3のような拡散反射板ではほとんど方位依存がなく極めて小さい標準偏差(=0.10)を示している。それに対し、サンプル2では比較的大きい標準偏差(=0.32)を示し、サンプル1の実施例1−1の凹凸形状では大きな標準偏差(=0.56)が示されている。
これらの拡散反射板を用いて反射型液晶表示装置を形成し、図2に示す偏光板8および位相差板6を組合せたVAモードの液晶パネルを作製した。これらのパネルの反射率を積分球下で測定した。拡散反射板の方位を変化させた場合のコントラストの最大値および最小値を図17に示す。図17より、サンプル3(従来例)ではコントラストの最大値と最小値とがほとんど変わらない。サンプル2及びサンプル1では、拡散反射板形状に方位依存を持たせて図16に示した方位依存における存在確率の標準偏差(=0.32〜0.56;好ましくは0.5以上)が大きくなることにより、最大コントラストが従来モード(標準偏差=0.10)よりも高くなることが分かる。
[実施例1−3]
図10の結果より、セル厚3.5μmおよび4μmで設計した場合、拡散反射板2に必要とされない方位はそれぞれ方位角φ=30°とφ=100〜160°(中心方位φ=130°)およびφ=50〜190°(中心方位φ=120°)である。従って、それぞれφ=30°とφ=130°およびφ=120°の方位に傾斜面が延在する形状が多く存在すればよい。φ=30°とφ=130°又はφ=145°の関係はほぼ直交した皺状パターンで実現でき、φ=120°はストライプ状の皺状パターンで実現できる。
[実施例1−4]
拡散反射板2表面の傾斜の極角θ方向依存性を調べた。図18は、拡散反射板2の傾斜が正規分布に従う場合を仮定し、極角θ方向の平均傾斜角と反射率の関係を示している。図18に示すように、平行光線束をある入射角で偏光板8から入射させた場合、拡散反射板2を挟む面の表面での入射角が大きくなるほど最大の反射率が得られる極角θ方向の平均傾斜角が大きくなることが分かる。図18から、入射角が30°、45°および60°における最大反射率を得る極角θ方向の平均傾斜角がそれぞれ7°、10°および13°となることが分かる。反射型液晶表示装置1を使用する実環境では様々な方向から光が入射する。従って極角θ方向の平均傾斜角が7〜15°付近になるように拡散反射板2を設計することで明るい反射型液晶表示装置を得ることができる。
そこで平均傾斜角が異なる拡散反射板2を用いてVAモードの反射型液晶表示装置(負の誘電率異方性を有するΔn=0.1の液晶材料を用い、セルギャップは3μmである)を作製した。拡散反射板2は次のような方法で作製した。
(1)スピンコータ等を用いて、0.7mm厚のガラス基板上にレジストAFP750を塗布してレジスト層を形成する。
(2)基板上のレジスト層に対して、クリーンオーブンを用いて温度90℃で20分間のプリベークを行う。
(3)基板上のレジスト層に対して、UV光を照射エネルギー2600mJ/cm2で照射する。
(4)基板上のレジスト層に対して、クリーンオーブンを用いて温度215℃で60分間のファイナルベークを行う。これにより、レジスト層表面に皺状パターンが形成される。
(5)レジスト層上に、スパッタリングによりAlを200nmの厚さに成膜する。これにより、Al層は拡散反射膜(板)として機能すると共に、当該光反射面形状は、下層のレジスト層の皺状パターンが反映された皺状凹凸形状となる。
極角θ方向の平均傾斜を変化させるために、レジスト層の膜厚を調整した。図19は、レジスト層の膜厚をそれぞれ変化させて形成した皺状パターンの顕微鏡画像(倍率20倍)を示している。図19(a)は、レジスト層の膜厚が4μmでの皺状パターンの例を示している。以下同様に図19(b)は、レジスト層の膜厚が3.5μm、図19(c)は、レジスト層の膜厚が3μm、図19(d)は、レジスト層の膜厚が2.5μm、図19(e)は、レジスト層の膜厚が2μm、図19(f)は、レジスト層の膜厚が1.5μmでの皺状パターンの例を示している。図19(g)は、レジスト層の膜厚が1μm、図19(h)は、レジスト層の膜厚が0.7μmでの皺状パターンの例を示している。
図19から分かるように、レジスト層の膜厚を変えることにより皺状パターンの振幅を大きく変化させることができる。このような方法で作製した拡散反射板2の表面をAFMで測定し、平均傾斜角を求めた。
積分球を用いて測定した、極角方向の平均傾斜各に対する反射率およびコントラストの結果を図20に示す。ただし、偏光板8および位相差板6は図2に示す構成を用いた。図20から、反射率は13°付近の平均傾斜の時にピークが得られ、一方でコントラストは平均傾斜が大きくなると著しく低下することが分かる。反射率の傾向が図18に示してある拡散光のシミュレーション結果と異なるのは、用いた拡散反射板2の傾斜分布が正規分布に従っていないためであると考えられる。平均傾斜が大きくなるとコントラストが著しく低下するのは、平均傾斜が大きくなるほど大きな極角θ方向から入射した光をパネル法線方向に反射させてしまうためである。すなわち、位相差板6によって十分な補償がされない光を表示に使用してしまうため、コントラストが大きく低下する。従って、平均傾斜を大きくすることは好ましくなく、反射率およびコントラストの点から7〜15°程度の平均傾斜を用いる必要があることがわかった。
以上説明したように、本実施の形態によれば、リタデーションによるコントラスト低下を抑制し、且つ低コストで高反射率の反射型液晶表示装置を実現できる。本実施の形態では凹凸形状として皺状パターンについて検討を行ったが、楕円、長方形、三角形等の方位方向で異方性を有する凹凸形状を用いる場合にも同様の効果を得ることができる。
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態による反射型液晶表示装置について図24乃至図53を用いて説明する。なお、本実施の形態による構成要素が、第1の実施の構成要素と作用機能において同一である場合には同一の符号を付してその説明は省略する。拡散反射板に関する先行技術として上掲の特開平5−232465号公報に開示されている製造方法があるが、当該製造方法は、フォトリソグラフィ技術を用いて反射画素電極に凹凸を形成するものである。この方法においては、拡散反射板に任意凹凸形状を形成することにより、高い反射率を得ることができる。しかし、この方法は、フォトリソグラフィ技術を用いて拡散反射板の反射面形状を制御しているので製造プロセスが煩雑になってしまう。さらに、露光条件により形成される凹凸形状が変化して光反射特性が大きく変化してしまうため、製造プロセスのマージンが狭いという問題を有している。
このような問題を改善する方法として、光反射面に皺状凹凸形状(マイクログルーブ)を設けた拡散反射板を有する反射型液晶表示装置が本願出願人により提案されている。皺状凹凸形状は、基板上に形成したレジスト(感光性樹脂)層の厚さ方向、面内方向において熱的変形特性(Tg点、融解温度等)に分布を持たせた後、熱処理によって形成する。図24は、光反射面に皺状凹凸形状を設けた拡散反射板2を例示する斜視図である。図24(a)は、レジスト膜厚1.7μmの上面に皺状凹凸形状を形成した後にAlをスパッタリングにより厚さ200nm堆積して形成された皺状凹凸形状を示している。凹凸の高低差は1.3μmであり、凹凸の平均傾斜角度k=13°である。図24(b)は、レジスト膜厚1.4μmの上面に皺状凹凸形状を形成した後にAlをスパッタリングにより厚さ200nm堆積して形成された皺状凹凸形状を示している。凹凸の高低差は1.1μmであり、凹凸の平均傾斜角度k=11°である。図24(c)は、レジスト膜厚1μmの上面に皺状凹凸形状を形成した後にAlをスパッタリングにより厚さ200nm堆積して形成された皺状凹凸形状を示している。凹凸の高低差は0.5μmであり、凹凸の平均傾斜角度k=8°である。
図24に示した拡散反射板2によれば、製造プロセスを簡略化できるとともに製造歩留まりが向上される。さらに製造コストを削減できるとともに安定した高反射特性を得ることができるようになる。ところが、この拡散反射板2は、反射特性が極めて優れているものの、従来のTNモードの液晶表示装置に用いても十分な反射性能を発揮することができないという問題を有している。
従来のTNモードと本実施形態で用いるVAモードの反射型液晶表示装置の動作原理を図25および図26に示す。図25および図26に示す構成は図21及び図22に示したものと同様であるが、対向する一組の基板112、114及び前方散乱板110の図示を付加している。図25に示すTNモードの反射型液晶表示装置においては、図25(a)に示す電圧無印加状態において、液晶分子104aは60°程度ツイストしており、この状態において、液晶層104のリタデーションをλ/4位相差板と同等にすることにより白表示を実現しており、皺状パターンが反射面に形成された拡散反射板2と組合せることにより、非常に広い反射特性を得ることができる。
一方、図25(b)に示すように電圧印加状態においては、リタデーションをできるだけ小さくして、理想的には0に近づけることにより黒表示を行う。しかし、完全に液晶分子104aを垂直に立てるには非常に高い印加電圧が必要となり実用的ではない。このため、4〜5Vの印加電圧においても積分球評価におけるコントラスト比で15程度のコントラスト比しか得られない。
これに対して、図26に示すVAモードの反射型液晶表示装置においては、図26(a)に示す電圧無印加状態において、液晶分子105aが略垂直に立っており、理想的な黒表示が実現できる。また、図26(b)に示す電圧印加状態において、実質的な液晶層105のリタデーションがλ/4になったときに白表示となる。従って、液晶層105のリタデーション(=Δn・d;Δnは屈折率異方性;dはセルギャップ)を最適にすれば、より低い電圧で白表示が実現できる。これにより、VAモードに皺状凹凸形状の拡散反射板2を組合せた反射型液晶表示装置で、視野角の広い白反射特性と、より黒い表示(高いコントラスト比、広い視野角)を4V以下の駆動電圧で実現できるようになる。
本実施の形態による反射型液晶表示装置の光学特性のシミュレーション結果を図27乃至図51に示す。シミュレーションにおいて、液晶材料としては負の誘電率異方性を有するn型液晶A(Δn=0.1、Δε=−7)を用いている。また、反射率特性は、反射光の波長がλ1=450nm、λ2=550nm、λ3=650nmの3つについて調べた。
図27乃至図31は、セルギャップが1.5μmでリタデーションΔn・d=150nmにおいて、カイラルピッチpをp=∞(無限大;カイラル剤無添加)、p=d(セルギャップ)×5=7.5μm、p=d×4=6μm、p=d×3=4.5μm、p=d×2=3μmと変化させた場合の各印加電圧に対する反射率を順に表している。
図32乃至図36は、セルギャップが2μmでリタデーションΔn・d=200nmにおいて、カイラルピッチpをp=∞、p=d×5=10μm、p=d×4=8μm、p=d×3=6μm、p=d×2=4μmと変化させた場合の各印加電圧に対する反射率を順に表している。
図37乃至図41は、セルギャップが3μmでリタデーションΔn・d=300nmにおいて、カイラルピッチpをp=∞、p=d×5=15μm、p=d×4=12μm、p=d×3=9μm、p=d×2=6μmと変化させた場合の各印加電圧に対する反射率を順に表している。
図42乃至図46は、セルギャップが4μmでリタデーションΔn・d=400nmにおいて、カイラルピッチpをp=∞、p=d×5=20μm、p=d×4=16μm、p=d×3=12μm、p=d×2=8μmと変化させた場合の各印加電圧に対する反射率を順に表している。
図47乃至図51は、セルギャップが5μmでリタデーションΔn・d=500nmにおいて、カイラルピッチpをp=∞、p=d×5=25μm、p=d×4=20μm、p=d×3=15μm、p=d×2=10μmと変化させた場合の各印加電圧に対する反射率を順に表している。
図27、図32、図37、図42及び図47は、カイラル剤無添加でカイラルピッチp=∞において、液晶層105のリタデーションΔn・dを図番順に徐々に大きくしたときの変化を示している。これらの図に示すように、液晶層105のリタデーションΔn・dを増加させることにより、反射率のピーク値(最大値)が低電圧化することが分かる。例えば、図47に示すΔn・d=500nmの場合、反射率のピーク値が印加電圧2V程度という極めて低い電圧で得られるようになる。但し、反射率のピーク値の電圧幅が狭くなり、温度特性を含め、回路設計のマージンが狭くなる。一方、図27に示すΔn・d=150nmの場合に関しては、反射率ピークを得るには4V程度の印加電圧が必要となる。このように、白表示となる反射率のピーク値の得られる電圧幅と、印加電圧の低電圧化とはトレードオフの関係であることが分かる。
これに対し、本実施形態では、液晶に一定のカイラル剤を添加することにより上記トレードオフの関係を改善できることを見出した。図27乃至図51全体を見渡してみると、セルギャップdの3乃至4倍のカイラルピッチpを持つ液晶を用いることにより、白表示となる反射率のピーク値の得られる電圧幅の拡大と、印加電圧の低電圧化とを両立することに成功した。
本実施形態に関しては、液晶の屈折率異方性Δnが0.05以上、誘電率異方性Δεが−3.8以下であれば上記のn型液晶A以外の液晶材料であっても本実施形態の効果を得ることができる。また、配向膜面に特に配向処理をしなくても、拡散反射板2の皺状凹凸形状により配向制御が可能である。さらに、対向する透明電極側にラビング処理やUV配向処理等の配向規制処理を施せば、より表示特性と応答特性に優れた反射型液晶表示装置を実現できる。
正または負の誘電率異方性を有する液晶を垂直配向させた液晶素子はヴァーティカル・アライメント(VA)モードと呼ばれており、TNモードのように基板界面にアンカリングした液晶層がスイチングしないで残ることがなく、原理的にコントラスト比を高くできる。
しかし、表面に凸凹が形成された反射板を適用すると基板法線方向に反射される光は斜め入射となり、液晶も傾斜角ζだけ傾斜する。このため電圧無印加で黒表示となっても液晶層はリタデーションをもち、このままでは完全な黒表示が得られない。電圧無印加における液晶層のリタデーションは凸凹の傾斜角ζの関数として表され、傾斜角ζとその存在割合γが求まれば上記リタデーションを求めることができる。従って、基板面と垂直な方向に負の屈折率異方性を有し、そのリタデーションが上記で求めたリタデーションと概ね同じ位相差板で補償すれば完全な黒表示を得ることができる。
基板面に垂直な方向に負の屈折率異方性を有する位相差板を用いて垂直配向した液晶層のリタデーションを補償する手段はすでに公知の技術(英国特許第1,462,978号や特願平9−266889号の明細書参照)であり、位相差板のリタデーションdf・{(nx+ny)/2−nz}を複屈折より求まる液晶層のリタデーションdlc・Δnと概ね同じにして、斜め方向の光抜けを抑えるものである。しかし、いずれの技術も透過型液晶表示装置の視角改善に用いるものであり、このリタデーションでは反射型液晶表示装置の黒表示を完全に補償することはできない。
図52は、表面に凹凸が形成された拡散反射板2の反射特性について説明する図である。拡散反射板2は環境光を多く取り込んで観測者側に反射するよう設計されている。環境光の取り込み角θ1を大きくすれば取り込める環境光の光量は多くなるが、取り込み角θ1が大き過ぎると界面で反射されたり、光強度が減じたりするため好ましくない。観測者側(基板法線方向)に反射する光の取り込み角θ1は拡散反射板2の凸凹部の傾斜角ζによって規定され、本願発明者らは最適な傾斜角分布をもつ反射板を提案している。
図52において、空気の屈折率N=1.0、位相差板(TACフィルム)の屈折率N≒1.5、液晶の屈折率N≒1.5とする。また、基板面法線方向のTACフィルムの厚さをdvとし、取り込み角(入射角)θ1に対する屈折角をθ2とし、さらに、TACフィルムと液晶との界面における入射角θ2に対する屈折角をθ3とする。TACフィルムと液晶の屈折率はほぼ等しいので、これらの間には、dv/cosθ2≒dv/cosθ3が成り立つ。
光路長は、拡散反射板2の凹凸部に入射する往路において、TACフィルムでdv/cosθ2≒dv/cos2ζであり、液晶中でdlc/cosθ3≒dlc/cos2ζとなる。一方、凹凸部で反射した復路において、液晶中でdlcであり、TACフィルムでdvとなる
本願発明者らが提案した拡散反射板2を適用した場合の電圧無印加時における液晶層のリタデーションを表1に示す。
図53(a)に示すように、TACフィルムは基板面に垂直な方向に負の誘電率異方性を有する屈折率楕円体と仮定している。また、図53(b)に示すように、液晶は基板面に垂直な方向に正の誘電率異方性を有する屈折率楕円体と仮定している。そして、環境光が図中Z軸方向からθだけ傾いて入射したときの屈折率異方性を求めた。
図53(a)および図53(b)に示すように、X−Y平面に対し、入射角θで入射した光の常光No’、異常光Ne’はX軸を軸にしてX−Y平面を−θ回転させた平面で、図53(c)および図53(d)に示すように、屈折率楕円体を切断した切り口の楕円の短軸と長軸(もしくは長軸と短軸)に相当する。
ここで入射光が法線(Z軸)方向から角度θだけ傾いて入射すると、Ny’、Nz’のY−Z座標は図53(c)および図53(d)に示すように、θの関数として表すことができる。Y−Z平面の楕円方程式にY−Z座標値を代入してNy’は、以下の(数1)に示すようにして求められる。
同様にしてNz’は以下の(数2)に示すようにして求められる。
このようにして求めたθとNx’、Ny’、Nz’の関係式から凸凹の傾斜角分布に応じた液晶層のリタデーションおよび位相差板のリタデーションを求めた。液晶の厚さdlcは3μm、異常光と常光の屈折率差Δnは0.1とし、液晶は上基板から下基板(反射板側)に進むに従って傾斜角ζだけ傾斜している。これにより環境光の液晶への入射角θ3は往路では上基板から下基板にいくに従って傾斜角ζだけ小さくなり、復路では下基板から上基板にいくに従って傾斜角ζだけ小さくなる。
凹凸部の傾斜角分布(傾斜角ζとその存在割合)から求めた電圧無印加における液晶層のリタデーションは皺形状の場合17nmであり、このリタデーションを基板面と垂直な方向に負の屈折率異方性を有する位相差板で補償すればよい。位相差板は基板面に垂直な方向に負の屈折率異方性を有する屈折率楕円体と仮定し、液晶同様に環境光がZ軸方向からθだけ傾いて入射したときの屈折率異方性を求めた。位相差板の厚さdfは(1)79μm、(2)83μm、(3)87μm、(4)84μm、(5)88μm、(6)89μm、基板面に平行な方向と垂直な方向の屈折率の差{(nx+ny)/2−nz}は(1)0.0006、(2)0.0013、(3)0.0015、(4)0.0018、(5)0.0020、(6)0.0022とし、基板面に平行な方向の屈折率異方性はないものとした(nx=ny)。
表1に同一光路をとった場合に位相差板(1)〜(6)で発生するリタデーションを示した。位相差板としては(4)が電圧無印加時における液晶層のリタデーションと同程度になるため、最適な補償が行える。
ここで計算した電圧無印加における液晶層のリタデーションはdlcとΔnによって変動し、この値とほぼ比例関係にある。従って、これを補償する位相差板のリタデーションを規定するには値そのものよりもdlc・Δnとの比を用いる方が好ましい。また、リタデーションは基板面に平行もしくは垂直な方向の値で表されるため、位相差板のリタデーションは上記で求めた実効的な値ではなく、基板面に平行もしくは垂直な方向の値で表す方が好ましい。このようにして位相差板のリタデーションを規定すると、
0.5≦〔df・{(nx+ny)/2−nz}〕/(dlc・Δn)≦0.7
の範囲となる。ここで最適な位相差板のリタデーションにある程度の範囲を持たせているのは、位相差板のリタデーションが最適値から10%程度ずれても、黒表示の補償としては著しい効果が期待できるからである。
この位相差板のリタデーションは本願発明者らが提案した反射板に最適化されたものであるが、他の反射板についても同様の手法により位相差板のリタデーションを求めることができる。表1に本発明者らが試作した様々な反射板について傾斜角分布を測定し、電圧無印加における液晶層のリタデーションを求めた結果を示す。平均傾斜角が7〜13度の範囲にある反射板を適用した場合に電圧無印加における液晶層のリタデーションは概ね14〜47nmの範囲になり、位相差板としては(4)から(6)が最適となる。同様に上記で求めた位相差板のリタデーションを規定すると、
0.4≦〔df・{(nx+ny)/2−nz}〕/(dlc・Δn)≦0.7
の範囲となる。従って表面に凹凸を有する反射板を適用したVAモードの反射型液晶表示装置において黒表示を完全に補償する位相差板のリタデーションは概ね、
0.4≦〔df・{(nx+ny)/2−nz}〕/(dlc・Δn)≦0.7
の範囲に規定される。
前述のように液晶よりも波長分散性の少ない第2の位相差板を偏光板と液晶セルの間に挟み、位相差板で直線偏光の方位を90°回転させて偏光板にそれを吸収させれば、波長分散性の少ない(一部の可視光波長がもれない)黒表示を得ることができる。ここで第2の位相差板は偏光板と第1の位相差板の間に配置するのが好ましく、第1の位相差板と液晶素子の間では好ましくない。
偏光板で直線偏光となった環境光は第2の位相差板で円偏光となる。第2の位相差板を偏光板と第1の位相差板の間に配置すれば、第1の位相差板は液晶素子に入射する光とほぼ同じ(厳密には補償するリタデーション分だけ異なる)偏光状態の光を隣接する位置で補償すればよく、偏光が乱れ難い。しかし、第2の位相差板を第1の位相差板と液晶素子の間に配置すると、第1の位相差板は液晶素子に入射する光と異なる偏光状態の光を第2の位相差板を挟んで補償しなければならず、偏光が乱れ易い。このため第2の位相差板は偏光板と第1の位相差板の間に配置するのが好ましい。
本実施形態により、低消費電力、低コスト、高歩留まりで、表示品質(コントラスト比、反射率)の極めて高い反射型液晶表示装置が実現可能となる。
以下、本実施の形態による反射型液晶表示装置を実施例を用いてより具体的に説明する。
[実施例2−1]
一方の基板に透明電極を形成し、他方の基板に皺状凹凸パターンの形成された拡散反射板(画素電極を兼ねる)を形成した。次いで、両基板の液晶層と接する面に垂直配向膜を形成した。次に、直径3μm、4μm、及び5μmのスペーサをそれぞれ用いて両基板を貼り合せ、3種類のセルギャップの空セルを作製した。各空セルにn型液晶Aの液晶材料を注入して封止し3種類の液晶パネルを作製した。偏光板およびλ/4板(帝人社製逆分散λ/4、またはJSR社製アートンフィルムを用いたλ/4位相差板)を組合せた円偏光板と、負の位相差フィルムを持つ位相差板(住友化学製VACフィルム)とを積層した光学補償板をこれらの液晶パネルに貼り合わせて3種類の液晶表示パネルを作製した。これらの液晶表示パネルは、2.5V駆動の低電圧で従来のTNモードの表示装置に比して2倍以上のコントラスト比40を実現できた。
[実施例2−2]
一方の基板に透明電極を形成し、他方の基板に皺状凹凸パターンの形成された拡散反射板(画素電極を兼ねる)を形成した。次いで、両基板の液晶層と接する面に垂直配向膜を形成した。次に、直径3μm、4μm、及び5μmのスペーサをそれぞれ用いて両基板を貼り合せ、3種類のセルギャップの空セルを作製した。各空セルにn型液晶Aにカイラル剤CNを添加してカイラルピッチp=12μmとした混合液晶を注入して封止し3種類の液晶パネルを作製した。偏光板およびλ/4板(帝人社製逆分散λ/4、またはJSR社製アートンフィルムを用いたλ/4位相差板)を組合せた円偏光板と、負の位相差フィルムを持つ位相差板(住友化学製VACフィルム)とを積層した光学補償板をこれらの液晶パネルに貼り合わせて液晶表示パネルを作製した。これらの液晶表示パネルは、2.5V駆動の低電圧で従来のTNモードの表示装置に比して2倍以上のコントラスト比40を実現できた。
[実施例2−3]
一方の基板にカラーフィルタ(CF)及び透明電極を形成し、他方の基板にTFT及び皺状凹凸形状の形成された拡散反射板(TFTに接続される画素電極を兼ねる)を形成した。次いで、両基板の液晶層と接する面に垂直配向能を有する配向膜を形成した。次に、直径3μmのスペーサをそれぞれ用いて両基板を貼り合せて2つの空セルを作製し、一方の空セルには、n型液晶Aの液晶材料(カイラル剤無添加)を注入し、他方の空セルには、メルク社製MJ2194の液晶材料にカイラル剤添加(カイラルピッチp=12μm)した液晶を注入して封止し2種対の液晶パネルを作製した。偏光板およびλ/4板(帝人社製逆分散λ/4、またはJSR社製アートンフィルムを用いたλ/4位相差板)を組合せた円偏光板と、負の位相差フィルムを持つ位相差板(住友化学製VACフィルム)とを積層した光学補償板をこれらの液晶パネルに貼り合わせて2種類の液晶表示パネルを作製した。これらの液晶表示パネルは、2.5V駆動の低電圧で従来のTNモードの表示装置に比して2倍以上のコントラスト比40を実現できた。
[実施例2−4]
表面に反射能を有する凸凹は次のようにして基板表面に形成した。まずTFT基板上にレジスト(シプレーファーイースト社製)を約1μmの厚さでスピンコートした。次に90℃で30分のプリベーク後、凸凹パターンのマスクを用いて紫外線照射を行った。次に現像液(シプレーファーイースト社製)を用いて現像を行い、レジストよりなる凸凹を形成した。次に135℃で40分のポストベーク、基板全面への紫外線照射、200℃で60分のファイナルベークを行い、平均傾斜角が7.7°の凸凹を形成した。なお、凸凹の傾斜角を変えるにはベーク温度および時間を変えればよく、任意に設定することができる。その後凸凹上にAlを200nmの膜厚で蒸着して反射板を作成した。
次にTFT基板およびCF基板の表面に垂直配向膜(JSR社製)を塗布し、3μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布して貼り合せを行った。この空パネルに負の誘電異方性(Δε=−7.0)を有し、異常光と常光の屈折率差Δnが0.1である液晶(メルク・ジャパン社製)を注入してVAモードの液晶素子を得た。
本実施例では偏光板および位相差板を反射型液晶素子のCF側に以下に示すように配置した。
(1)偏光板:吸収軸は15°である(住友化学社製)。
(2)λ/2板:基板面に平行な方向のリタデーションが275nmである一軸フィルム。(JSR社製)遅相軸は25°である。
(3)λ/4板:基板面に平行な方向のリタデーションが135nmである一軸フィルム。(JSR社製)遅相軸は80°である。
(4)VAC70:基板面に平行な方向のリタデーションが2nm、基板面に垂直な方向のリタデーションが154nmである2軸フィルム。(住友化学社製)基板面に平行な方向の遅相軸は80°である。
(5)液晶素子:VAモード
ここで(2)および(3)は積層型のλ/4板であり、ある角度を持って積層することにより全体として波長分散性の少ないλ/4板を形成している。(2)と(4)は基板面に平行な方向の遅相軸を一致させており、リタデーションの和を視感度の高い緑波長(540nm)の1/2になるよう(2)のリタデーションを(4)のリタデーション分だけ減じている。(4)は電圧印加における液晶層のリタデーションを補償するために配置された負の屈折率異方性を有する位相差板であり、(1)のリタデーションdf・{(nx+ny)/2−nz}は
〔df・{(nx+ny)/2−nz}〕/(dlc・Δn)=0.51
となる。
比較例ではVAC70の配置を比較するため、偏光板および位相差板を反射型液晶素子のCF側に以下に示すように配置した。
(1)偏光板:実施例2−4に同じ。
(2)VAC70:実施例2−4に同じ。
(3)λ/2板:実施例2−4に同じ。
(4)λ/4板:実施例2−4に同じ。
(5)液晶素子:実施例2−4に同じ。
従来例1では本発明の手段を適用しない場合と比較するため、偏光板および位相差板を反射型液晶素子のCF側に以下に示すように配置した。
(1)偏光板:実施例に同じ。
(2)λ/2板:実施例2−4に同じ。
(3)λ/4板:実施例2−4に同じ。
(4)液晶素子:実施例2−4に同じ。
従来例2では提案されているTNモードと比較するため、偏光板および位相差板を反射型液晶素子のCF側に以下に示すように配置した。
(1)偏光板:実施例2−4に同じ。
(2)λ/2板:基板面に平行な方向のリタデーションが260nmである一軸フィルム。(JSR社製)遅相軸は25°である。
(3)λ/4板:基板面に平行な方向のリタデーションが115nmである一軸フィルム。(JSR社製)遅相軸は80°である。
(4)液晶素子:TNモード
ここで(2)のλ/4板は電圧印加における液晶層の残留リタデーションを補償するため、遅相軸を液晶層のアンカリング(ラビング)方位の合成ベクトルと一致させ、基板面に平行な方向のリタデーションを実施例のλ/4板より23nm減じている。なお、減じるリタデーションを大きくすれば補償できる液晶層の残留リタデーションも大きくなるため、黒表示における反射率を低くすることができる。しかし、白表示において位相差板のリタデーションが不足して反射率が減少したり、白表示が色付いたりする問題が起きる。
また、(4)の液晶表示素子は基板表面に水平配向膜(JSR製)を塗布し、3μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布して貼り合せを行った。この空パネルに正の誘電異方性(Δε=6.0)を有し、異常光と常光の屈折率差Δnが0.067である液晶(チッソ社製)を注入した。
実施例2−4、比較例、従来例1および2の反射型液晶表示装置は同一電圧を印加し、積分球光源およびスポット光源を用いた分光輝度計で白表示および黒表示の反射率を測定した。ここで積分球光源はあらゆる角度、方位に光が出射される拡散光であり、スポット光源は特定の角度、方位に光が出射される平行光である。積分球光源は室内照明や太陽光のような環境光に近く、見た目の印象に近い反射率が測定できる。一方スポット光源は特定の角度や方位における反射率を測定するものであり、入射光の角度や方位の依存性を測定できる。(スポット光源を用いて測定した特定の角度、方位における反射率の積算値が積分球光源で測定した反射率となる。)
表2に積分球光源を用いた場合の測定結果を示した。黒表示の反射率は実施例で0.29(従来例2との相対比で55%減)となり、コントラスト比は37(同じく116%増)に改善している。従来例2ではλ/4板のリタデーションを減らして液晶層の残留リタデーションを補償しているが、コントラスト比は従来例1(何も補償していない垂直配向の反射型液晶表示装置)と同程度である。これはλ/4板を用いたVAモードの反射型液晶表示装置が電圧無印加で黒表示となるため、原理的にコントラスト比が高くなることを示している。また、比較例の測定結果は実施例のそれを上回っておらず、VAC70は実施例に示すように偏光板と液晶層の間に配置するのが好ましいと言える。
表3にスポット光源を用いた場合の測定結果を示した。入射光の角度θは実施例に用いた反射板の傾斜角を考慮して30°とし、上方位から測定した。黒表示の反射率は実施例で0.56(従来例2との相対比で比48%減)となり、コントラスト比は45(従来比92%増)に改善している。
本実施の形態は、前記光反射板が一部形成されていない光透過領域を有する反射透過型液晶表示装置にももちろん適用可能である。反射透過型液晶表示装置は、拡散反射板の形成されたTFT基板側に例えば偏光板を配置し、CF基板側には例えば基板面から順に位相差板と偏光板を配置している。光透過領域に例えばバックライトユニットからの光を導光することにより、暗い場所でも明るい画像を表示させることができる。
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態による反射型液晶表示装置について図54乃至図59を用いて説明する。反射型液晶表示装置は室内照明や太陽光のような環境光を取り込み、反射板で観測者側に反射させて表示を行っている。反射型液晶表示装置はバックライトユニットを必要としないため低消費電力であり、携帯端末等に広く用いられている。反射型液晶表示装置で明るく、鮮明な表示を得るには白表示では環境光を多く取り込んで観測者側に反射させ、黒表示では取り込んだ光を観測者側に反射させない工夫が必要になる。
そこで反射型液晶表示装置に用いられる表示モードとして相転移型ゲスト・ホスト(GH)モード(D.L.White and G.N.Taylar:J.Appl.Phys.45 4718 1974)が提案されている。GHモードは偏光板を必要としないため明るい白表示を得られるが、黒表示も明るくなってしまいコントラスト比は5〜6程度である。
一方、それ以外に偏光板を1枚用いたツイステッド・ネマティック(TN)モード(特願平1−319261号の明細書や特開平06−011711号公報参照)が提案されている。原理的には正の誘電率異方性を有する液晶をツイストさせた水平配向型液晶素子であり、入射した環境光(外光)を偏光板で直線偏光に変え、可視光波長のほぼ1/4のリタデーションを有する液晶層もしくは位相差板で偏光方位を90°回転させ、偏光板で当該直線偏光光を吸収させて黒表示を行っている。このモードは偏光板を用いるため白表示の明るさはGHモードの40%程度であるが、黒表示をより暗くできるため、コントラスト比は12〜14程度である。
また、TNモードのコントラスト比を改善する手段として位相差板の遅相軸を液晶層のアンカリング方位と概ね一致させ、位相差板のリタデーションを残留した液晶層のリタデーション分だけ減ずることにより黒表示を補償する技術(上掲の特開平11−311784号公報参照)が提案されている。この技術を用いるとコントラスト比は16〜18程度まで改善する。
反射型液晶表示装置における表示の見やすさは明るさとコントラスト比で規定され、明るければ低いコントラスト比でも見やすく、暗くければ高いコントラストが要求される(テレビジョン学会誌Vol.50,No.8,pp1091〜1095,1996)。GHモードの表示の見やすさを、明るさで40%程度である偏光板1枚方式で実現するにはコントラスト比で12程度必要であるが、上記技術を用いればTNモードのコントラスト比は16〜18程度となり、GHモードより表示は見やすくなる。このため、反射型液晶表示装置では偏光板を1枚用いたTNモードが主流となっている。
偏光板を1枚用いたTNモードでは液晶層をツイスト構造にするためラビング処理を上下基板で異なる方位に行っており、液晶層のアンカリング方位は上下基板で一致していない。上掲の特開平11−311784号公報の技術では位相差板の遅相軸を上下基板のアンカリング方位のほぼ中心軸に合わせることとなるが、これはアンカリング方位の合成ベクトルを補償するものであり、上下基板に残留した液晶層のリタデーションを個別に補償するものではない。従って、黒表示の補償としては不十分である。
そこで偏光板を1枚用いたVAモードが提案されている(上掲の特願平1−319261号の明細書参照)。VAモードは液晶のスイッチング状態(オン又はオフ)がTNモードと逆であるが、入射した環境光を偏光板で直線偏光に変え、可視光波長のほぼ1/4のリタデーションを有する液晶層もしくは位相差板で方位を90°回転させ、偏光板に当該光を吸収させて黒表示を行う点は同じである。しかし、位相差板で方位を90°回転させる場合、電圧無印加で黒表示となるため、TNモードのように基板界面にアンカリングした液晶層がスイッチングせずに残ってしまうことはなく、原理的にコントラスト比を高くできる。しかし、VAモードでは垂直配向膜を用いるため、ラビング処理を行うと部分的に垂直配向性が低下し、それが輝度むらとなって筋状の表示欠陥(ラビング筋)が発生する。また、反射能を有する凹凸形状が形成された基板をラビング処理すると液晶が傾斜配向してしまい、コントラスト比が低下してしまう。
このため特開2000−29030号公報ではラビング処理に対する段差が少ない基板のみにラビング処理を施すことによりラビング筋を見え難くし、コントラスト比の低下を抑える技術が提案されている。しかし、この技術でもラビング処理を行う点は同じであり、ラビング筋は発生する。
そこで特願平1−319261号の明細書に記載された技術では対向基板側に反射電極を斜めに横切るスリットを配置し、電圧印加時に上下の基板間で発生する斜め電界により配向制御を行う技術が提案されている。しかし、この技術ではスリット上の液晶層はスイッチングしないため画素全体では反射率が低下し、たとえコントラスト比が高くなっても表示の見やすさはさほど改善しない。従って、VAモードを偏光板1枚方式の反射型液晶表示装置に適用するには反射率を犠牲にしない配向制御手段が求められている。
そこで本実施の形態では第1の基板と、表面に反射能を有する凹凸が形成された第2の基板との間に負の誘電率異方性を有する液晶を挟持してなる液晶表示装置において、反射率を犠牲しないで配向制御を行う手段を提供するものである。
(第1の解決手段)
第1の基板と、第1の基板と対向配置され、反射面が凹凸形状の反射板が形成された第2の基板と、第1および第2の基板間に封止された負の誘電率異方性を有する液晶とを備えた反射型液晶表示装置において、第2の基板上の隣接画素電極(上記反射板が兼ねている)間の間隙部と対向する第1の基板上の対応領域に形成された配向制御構造(線状突起や電極抜きのスリット等)をさらに有し、画素電極内の液晶配向を概ねモノドメイン配向にする。
図54は、第1の解決手段を説明する模式図である。図54は、液晶表示パネルをパネル面に垂直方向に切断した状態を示している。図中横方向は基板112の基準位置からの位置(μm)を表し、図中左側の縦スケールは基板112から基板114までの高さ(μm)を示している。また、図中右側の縦スケールは透過率(a.u.)を表しており、図中の実線の曲線は各印加電圧毎の透過率変化を示している。また、図中の微細線分はある電圧印加時の液晶分子4aのダイレクタを表している。基板112上には画素電極30が形成されており、図54の円S2、S3、S4で囲まれた領域に間隙部が形成されている。また、基板114には、円S3で囲まれた間隙部直上に配向制御構造物(突起)36が形成されている。図中の矢印に示すように、電圧印加時には矢印32、34の方向に液晶分子4aが傾斜する。
図54に示したように、隣接画素電極30間の間隙部には反射膜がないため、間隙部と対向する領域に配向制御構造36を形成して配向制御を行えば反射率は犠牲にならない。すなわち、画素電極30間の間隙部と対向する領域に形成した配向制御構造物36により画素電極30内にドメイン境界が発生しないよう斜め電界を制御してやれば、画素電極30内の液晶分子4aの配向を概ねモノドメイン配向にすることができる。具体的な斜め電界の制御方法については第2の解決手段以下に示す。
(第2の解決手段)
第1の解決手段において、画素電極長辺の間隙部と対向する第1の基板上の対応領域に、基板面法線方向に見て、隣接する2つの画素電極長辺に接するか又は重複する配向制御構造を1画素電極おきに形成する。本解決手段による構成を図55に示す。図55は、配向制御構造36を基板面法線方向に見た状態を示している。図55は液晶層4に電圧を印加している状態を示しており、画素電極30間の間隙上方に位置する配向制御構造36に向かう矢印32、34の方向に画素電極30上の液晶分子4a、4bが傾斜している状態を示している。図55に示すように、画素電極30間の間隙幅はW2であり、画素電極30長辺側の配向制御構造物36のパターン幅はW1である。
第2の解決手段では、電圧印加時に各画素電極30間の間隙部で発生する斜め電界を利用して液晶を画素電極30長辺と概ね90°異なる方位に配向させ、隣接画素電極間の間隙部で発生する斜め電界を第1の基板上の対応領域に形成した配向制御構造物36で打ち消す。好ましくは電界の傾斜方位を変えることにより画素電極内の液晶配向をモノドメイン配向とし、ドメイン境界を画素電極30間の間隙部に固定する。
ちなみに画素電極間の間隙部に配向制御構造を形成しない場合、画素電極内側に液晶が傾斜配向するため画素電極内で逆チルトによるドメイン境界が発生する。可視光波長のほぼ1/4のリタデーションを有する位相差板を用いて液晶に入射する光を円偏光とすればドメイン境界は目立たなくなるが、その領域は周囲の液晶と屈折率が異なるため光が散乱もしくは屈折し、斜め視角でざらつき感を与えてしまう。
配向制御構造36を画素電極30長辺の間隙部に形成するのは、配向制御構造36と隣接する間隙部までの距離をなるべく短くして応答性を良くするためである。すなわち、斜め電界による配向制御では斜め電界が発生した領域からそうでない領域に液晶配向が伝播してゆくが、伝播距離が長くなると液晶配向が概ね均一に揃うまでの応答時間が長くなってしまう。画素電極はR(赤)、G(緑)、B(青)の三色のサブピクセルで1ピクセル(絵素)を構成するため縦横比が概ね3:1の長方形であり、画素電極30長辺の間隙部に発生する斜め電界を利用して配向制御を行えば伝播距離を画素電極30短辺の場合の1/3にすることができる。
また、基板面法線方向に見て、第1の基板の対応領域に形成した配向制御構造36を隣接する2つの画素電極30長辺に接するか、好ましくは重複させるのは、画素電極30間の間隙部で発生する斜め電界を当該配向制御構造36で打ち消すか、好ましくは電界の傾斜方位を変えるためである。また、当該配向制御構造36を1画素電極30おきに形成するのは、隣接する画素電極30間で液晶を概ね180°異なる方位に配向させるためである。すなわち、画素電極30間の間隙部と対向する第1の基板の対応領域には共通電極が形成されているが、基板面法線方向に見て、配向制御構造36を隣接する2つの画素電極30長辺に接するようにさせるか、好ましくは重複させれば液晶分子は画素電極30内側には傾斜配向せずに画素電極30外側に傾斜配向するようになるため、画素電極30内の液晶はモノドメイン配向となる。しかし、モノドメイン配向の方位を全画素電極30領域で概ね同じにすると、液晶分子の傾斜方位とその逆方位でリタデーションの増減が大きくなり、視角依存性が大きくなる。そこで隣接する画素電極30の液晶を180°異なる方位に配向させ、隣接する2つの画素電極30領域で2ドメイン配向とすれば、該当方位におけるリタデーションの増減は平均化され、全方位で見やすい表示が実現できる。
(第3の解決手段)
第2の解決手段において配向制御構造の幅W1を概ね1≦(W1/W2)≦3の範囲とする。画素電極30間の間隙部で発生する斜め電界を対向領域に形成した配向制御構造36で打ち消すか、好ましくは電界の傾斜方位を変えるには、配向制御構造36の幅W1を画素電極30長辺の間隙幅W2以上にして、基板面法線方向に見て、配向制御構造36を画素電極30長辺に接しさせるか、好ましくは重複させる必要がある。
図55に示すように、幅W1をあまり大きくし過ぎると画素電極30内に配向制御構造物36が張り出すため反射率が低下する。重複量を変化させて反射率の低下を調べたところ、画素電極30間の間隙幅W2を6μmとし、その対向領域に配向制御構造36を形成した場合、重複量2μmで2%、4μmで3%、6μmで4%の反射率低下が認められた。反射率の低下が5%未満であれば視覚的に差が判別できない程度の低下となるため、配向制御構造36を隣接する2つの画素電極30長辺に重複させる場合は幅W1を概ね上記の範囲に設定するのが好ましい。ここで幅W1の範囲を間隙幅W2との比で規定したのは、画素電極30間の間隙幅W2の大きさにより斜め電界が発生する領域が異なるためであり、それに伴って配向制御構造物36の幅W1を変える必要があるからである。
(第4の解決手段)
第1の解決手段において、画素電極長辺の間隙部と対向する第1の基板上の対応領域に、基板面法線方向に見て、隣接する2つの画素電極長辺に接するか又は重複する配向制御構造を画素電極毎に形成する。本解決手段による構成を図56に示す。図56は、配向制御構造物36を基板面法線方向に見た状態を示している。図56は液晶層4に電圧を印加している状態を示しており、画素電極30間の間隙上方に位置する配向制御構造36に向かう矢印34の方向に画素電極30上の液晶分子4bが傾斜している状態を示している。図56に示すように、画素電極30間の間隙幅はW2であり、画素電極30長辺側の配向制御構造36のパターン幅はW1である。
配向制御構造36を隣接する一方の画素電極30長辺に接するか、好ましくは重複させると、一方の画素電極30長辺の間隙部のみ斜め電界の傾斜方位が逆転する。これを画素電極30毎に同じように形成すれば全ての画素電極30間の間隙部で斜め電界の傾斜方位が概ね揃うため、全領域でドメイン境界のないモノドメイン配向が実現できる。モノドメイン配向は傾斜方位とその逆方位で視角依存性が大きくなるが、傾斜する方位と90°異なる方位ではリタデーションの増減は少なく、視角依存性が少ない。ノート型パーソナルコンピュータ(ノートパソコン)用途のように特定方位(傾斜方位)で表示が見難くなってもそれと異なる方位で視角依存性が少なければ実用上問題とならない場合には、このようなモノドメイン配向を選択することも可能である。
(第5の解決手段)
第4の解決手段において配向制御構造の幅W1を概ね1/2≦(W1/W2)≦3/2の範囲とする。第2の解決手段と異なる点は、基板面法線方向に見て、配向制御構造36を隣接する一方の画素電極30長辺に接するようにさせるか、好ましくは重複させる点である。このため、画素電極30間の間隙部の中心線を境にして半分だけ配向制御構造36が形成されていればよく、幅W1の範囲は第2の解決手段の概ね半分となる。
(第6の解決手段)
第1の解決手段において、第1の基板上の対応領域のうち、画素電極短辺の間隙部と対向する対応領域に、間隙幅程度の配向制御構造を画素電極毎に形成する。
画素電極30短辺の間隙部にも斜め電界が発生するため、図55及び図56に示すように、これと対向する対応領域にも配向制御構造38を形成して斜め電界を打ち消すのが好ましい。画素電極30長辺の間隙部には逆方位の斜め電界が発生する程度に配向制御構造36の幅W1を大きくして、ドメイン境界を画素電極30間の間隙部に安定化する方が好ましいが、画素電極30短辺のそれは対向する間隙部の斜め電界を打ち消せればよく、画素電極30短辺に重複する程度に幅を大きくすると逆方位の傾斜方位が発生してドメイン境界ができるため好ましくない。
(第7の解決手段)
第1の解決手段において、配向制御構造は、少なくとも一部が液晶層の層厚相当の高さを有するか、もしくはその上に液晶層の層厚相当となるような突起を形成することにより、第1及び第2の基板間を支持する。図56に柱状スペーサ40として例示している。
配向制御構造36、38を利用して基板を支持できれば、スペーサ散布の必要がなくなるため、画素電極30内からスペーサが排除され、反射率が改善する。また、表面に凹凸や配向制御構造36、38が形成された基板に一様にスペーサ散布すると液晶層4の厚さを所望の厚さに制御するのが難しいが、配向制御構造36、38を用いれば基準面をほぼ一様にできるため、液晶層4の厚さを制御し易くなる。
(第8の解決手段)
第1の解決手段において、画素電極と対向する第1の基板上の第2対応領域に、画素電極短辺に概ね平行且つ幅4μm以下の第2の配向制御構造物を画素電極長辺の間隙部上方の対応領域の配向制御構造に隣接して形成する。
画素電極30長辺の間隙部の斜め電界を利用して配向制御を行う場合、画素電極30短辺の距離分だけ液晶配向を伝播させる必要があり、ラビング処理のような全面配向処理と比較すると応答速度が遅くなってしまう。そこで、図57に示すように、第1の基板の画素電極30と対向する第2対向領域に、画素電極30短辺と概ね平行かつ4μm以下の幅を有する第2の配向制御構造物39を画素電極30長辺の間隙部上方の対応領域の配向制御構造物36に隣接して形成すれば、画素電極30上にも画素電極30短辺と概ね平行な方位に液晶を配向させる規制力が発生するため、応答速度を改善することができる。すなわち、画素電極30長辺間隙部上方の配向制御構造物36は、上下基板間に発生する斜め電界で液晶が傾斜配向する程度に幅W1が大きいが、第2の配向制御構造39は幅が4μm以下と狭いため、上下基板間に発生する斜め電界では液晶が傾斜配向せず、第2の配向制御構造39と平行な方位に生じた電界の歪みで液晶が傾斜配向する。第2の配向制御構造39を画素電極30長辺間隙部上方の配向制御構造36に隣接して形成するのは、画素電極30短辺と概ね平行な方位のうち、どちらか一方の方位に液晶の傾斜配向を固定してモノドメイン配向を実現するためである。
また、第2の配向制御構造39は液晶分子がそれと平行な方位に配向するため、第2の配向制御構造39上も反射率に寄与する。すなわち、上下基板間に発生する斜め電界を利用した傾斜配向では斜め電界の中心部の液晶分子4a、4bが傾斜配向し難いため、反射率は低下する。しかし、基板面内に発生する電界の歪みを利用した傾斜配向では液晶の傾斜方位のみ規定できれば、第2の配向制御構造39上の液晶はほぼ一様な方位に傾斜配向するため、反射率は低下しない。液晶分子4a、4bが配向制御構造物36、39に対して走査方位に配向するか、90°異なる方位に配向するかは配向制御構造36、39の幅に依存し、4μm以下であれば液晶は概ね走査方位に配向する。
(第9の解決手段)
第1の解決手段において、画素電極上に、画素電極短辺と概ね平行かつ幅4μm以下の第2の配向制御構造(例えばスリット)を、画素電極長辺に隣接して形成する。
第8の解決手段と同様の第2の配向制御構造物29を画素電極30上に形成することにより同様の効果が期待できる。特に、配向制御スリットを画素電極30上に形成した場合、その領域は反射膜がなくなるため反射率に寄与しなくなるが、当該領域を光透過領域として利用すれば反射透過型液晶表示装置が実現できる。反射透過型液晶表示装置は反射電極上に透過窓を形成して透過型の表示を行うものであるが、第2の配向制御スリットを透過窓に用いれば透過領域に透明電極を形成しなくても液晶のスイッチングが可能である。また反射領域との境界部で液晶を傾斜配向させる斜め電界が発生しないため、画素電極内で液晶配向を概ねモノドメイン配向とすることができる。
(第10の解決手段)
第8および第9の解決手段において、第2の配向制御構造(線状突起又はスリット)は、基板面法線方向に見て略三角形又は略四角形の形状を有し、概ね同間隔で連続形成されている。
第2の配向制御構造の平面形状を略三角形もしくは略四角形にすれば、液晶が傾斜配向する方位は画素電極間の間隙部と画素電極内で概ね同一方位に揃うことになる。略三角形では基板面内方向の電界の歪みに指向性が発生するため、液晶は略三角形の先細り方位に傾斜配向する。従って、画素電極内の液晶を概ね同一方位に配向させるには平面形状を略三角形にするのが好ましい。しかしながら、略三角形ではパターニングが困難な場合や、反射透過型液晶表示装置のように配向制御スリットを透過窓に用いる場合は略四角形としてももちろんよい。
また、概ね同間隔をおいて第2の配向制御構造を連続形成すれば、第2の配向制御構造物を画素電極内に密に形成できるため、応答速度を効率的に改善することができる。
(第11の解決手段)
第1の解決手段において、液晶は、光重合性物質を分散させて電圧を印加しながら当該物質を光重合させることにより形成された液晶配向に準じた高分子鎖を有している。液晶が傾斜配向する方位に液晶と親和性の高い高分子鎖を形成しておけば、液晶の応答性は高分子鎖との親和力により速められるため、応答速度が改善する。
また、電界を利用した配向制御では電圧をある程度印加しないと液晶が傾斜配向するだけの電界が発生しないため、印加電圧に対する反射率の変化が急峻になり、階調表示の制御が難しくなる。しかし、この構成を用いれば液晶は高分子鎖との親和力により傾斜配向しやすい状態になっているため、印加電圧に対する反射率の変化は緩やかになり、階調表示の制御が容易になる。
(第12の解決手段)
第1の基板上にのみ設けられ、第2の基板上の隣接画素電極間の間隙部に発生する斜め電界以上の配向規制力を有する配向制御手段を備え、画素電極内の液晶配向を概ねモノドメイン配向にする。
画素電極間の間隙部で発生する斜め電界以上の配向規制力を有する配向制御手段を全面に施せば、斜め電界を打ち消して画素電極内の液晶配向を概ねモノドメイン配向にすることができる。ところが、第2の基板は表面に反射能を有する凹凸が形成されているため全面に概ね均一な配向処理を施すのが難しい。すなわち、斜め電界以上の配向規制力を有する配向制御手段は主に配向膜界面とのアンカリングエネルギーを増大させる作用があり、液晶のプレチルト角は減少する。第1の基板では問題とならない程度の減少であるが、表面に反射能を有する凹凸が形成された第2の基板では液晶が凹凸の傾斜角分だけ予め傾斜しているため液晶が傾斜配向しやすく、プレチルト角の低下が大きくなる。このため黒表示でリタデーションが発生し、コントラスト比が低下する。
そこで第1の基板のみに画素電極間の間隙部で発生する斜め電界以上の配向規制力を有する配向制御手段を施し、第2の基板には何も施さないで第1の基板の配向規制力に追随させる。第2の基板で液晶が傾斜配向しやすい状態になっているため、第1の基板の配向規制力に容易に追随する。
(第13の解決手段)
第1の基板のみ配向膜を光改質して任意の方位に液晶を配向させる。第1の基板のみ配向膜を光改質するのは、上記の理由の他光改質の制御が難しいためである。すなわち、この技術では配向膜に任意の方位から光照射してランダムな方位に傾いた配向膜のアルキル側鎖を任意の方位に揃え、液晶がその方位に傾斜配向するようにしている。しかし、表面に反射能を有する凹凸が形成された基板では、反射光や表面形状により配向膜のアルキル側鎖を任意の方位に揃えるのが難しく、均一なモノドメイン配向を得るのが難しい。
一方、第1の基板の表面にはCF層が形成されているだけで、反射膜も凹凸も形成されていない。このため、配向膜のアルキル側鎖を任意の方位に揃えるのは容易である。
(第14の解決手段)
第1および第2の基板間に封止されて負の誘電率異方性を有する液晶に対し、凹凸の平面形状により反射強度に方位角依存性を持たせ、反射強度極大となる方位に液晶の配向方位を概ね直交させる。
表面に反射能を有する凹凸が形成された反射型液晶表示装置では、より多くの環境光を観測者側に反射させるため、斜め入射した光が垂直出射するように設計されている。VAモードでは液晶が垂直配向した状態で黒表示となるが、斜め入射で発生したリタデーションが垂直方向に抜けてしまうため、完全な黒表示を得るには負のリタデーションを有する位相差板でそれを打ち消す必要がある。
パネル面に対して垂直方向でなく、斜め方向から観測すると光路は逆となり、垂直入射した光が斜め出射する。ここで液晶が傾斜配向している場合、傾斜配向している方位から観測すると、傾斜角度と光学的に概ね一致する角度(傾斜角度と液晶および空気の屈折率から求められる出射角度)から観測すると、斜め出射で発生するリタデーションは概ねゼロとなり、負のリタデーションがその分大きくなって黒輝度の浮きが目立ってしまう。この場合、垂直入射でリタデーションが発生するが、斜め出射の光路長より短いために負のリタデーションの方が大きくなる。また、垂直方向から観測すると傾斜方位と逆方位からの斜め入射成分によって傾斜角度によるリタデーションの増減が相殺されるため黒輝度の浮きは発生しない。従ってモノドメイン配向において傾斜配向方位に反射強度の極大値を持ってくると黒輝度の浮きを目立たせるため好ましくない。
そこで、液晶が傾斜配向する方位と90°異なる方位に反射強度の極大値を持ってくれば、視角依存性の少ない方位を明るく、大きい部分を暗くできるため、黒輝度を目立たなくすることができる。また、凹凸形状による反射強度の指向性が上下左右方位となるような場合、液晶が傾斜配向する方位と90°異なる方位に反射強度の極大値を持ってくると、一方の反射強度の極大値が液晶の傾斜配向方位と一致してしまうが、その方位をなるべく斜め方向から観測しない側(例えばキーボード側)に配置すればよい。
本実施の形態によれば、偏光板を1枚用いた垂直配向モードの反射型液晶表示装置において、反射率を犠牲にしないで配向制御できるようになる。この結果、コントラスト比が高く、表示の見やすい反射型液晶表示装置が歩留まりよく製造できるようになる。
以下、本実施の形態による反射型液晶表示装置を実施例を用いてより具体的に説明する。
[実施例3−1]
表面に反射能を有する凸凹形状は次のようにして基板表面に形成した。まずTFT基板上にポジ型レジスト(シプレーファーイースト社製)を約3μmの厚さでスピンコートしてレジスト層を形成した。次に90℃で30分のプリベーク後、レジスト層をハーフ露光し、135℃で40分のポストベーク、200℃で60分のファイナルベークを行って、凸凹形状を形成した。その後、基板全面にAl膜を蒸着し、フォトリソグラフィ技術により画素電極以外のAl膜を剥離して反射電極(画素電極であって且つ拡散反射板となる)を形成した。
配向制御構造を次のようにして基板表面に形成した。まず対向基板上に上記ポジ型レジストを約3μmの厚さでスピンコートしてレジスト層を形成した。次に90℃で30分のプリベーク後、画素電極長辺の間隙部と対向する対応領域に、基板面法線方向に見て、2つの画素電極長辺と接するか又は重複する配向制御構造パターンが1画素電極おきに形成され、且つ画素電極短辺の間隙部と対向する領域に間隙幅と同寸法の配向制御構造パターンが画素電極毎に形成されたマスクを用いて露光を行った。
図55を再び用いて本実施例の構造について説明する。図55は液晶層4に電圧を印加している状態を示しており、画素電極30間の間隙上方に位置する配向制御構造36に向かう矢印32、34の方向に画素電極30上の液晶分子4a、4bが傾斜している状態を示している。図55に示すように、画素電極30間の間隙幅W2は画素電極30長辺、短辺共に6μmであり、画素電極30長辺側の配向制御構造36のパターン幅W1は6〜18μmとし、画素電極30長辺と配向制御構造36の重複量は0〜6μmとした。次に配向制御構造36のパターン上となる領域に基板を支持するためのドット状パターンが形成されたマスクを用いてハーフ露光を行った。ここでハーフ露光を行うのは基板を支持する領域以外の配向制御構造36の高さを液晶層相当の厚さ未満とするためであり、全体を液晶層相当の厚さにしてしまうと配向制御構造36が液晶注入の妨げとなるためである。但し、滴下注入のように基板貼り合せと液晶注入を一括して行う場合はこの限りでなく、配向制御構造36全体を液晶層相当の厚さにしても液晶注入の妨げとはならない。
また、実施例では配向制御構造の一部を用いて基板を支持するが、その上に合計の高さが液晶層の層厚相当の突起を形成して基板支持を行ってもよい。
続いて、現像処理、ポスト露光、130℃で2分のポストベーク、220℃で60分のファイナルベークを行い、配向制御構造および支持柱を形成した。
また、対向基板上に配向制御構造を作成せずにラビング処理を施したもの(従来例)を作成した。
次にTFT基板および対向基板の表面に垂直配向膜(JSR社製)を塗布し、ラビング処理を施した従来例にはTFT基板に3μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布して基板貼り合せを行った。空パネルには負の誘電異方性(Δε=−7.0)を有し、異常光と常光の屈折率差(屈折率異方性)Δnが0.1である液晶(メルク・ジャパン社製)を注入して反射型液晶表示装置を得た。
この反射型液晶表示装置の対向基板側に厚さ方向のリタデーションが150nm程度である負の位相差フィルム、可視光波長のほぼ1/4のリタデーションを有する位相差板、偏光板を順次積層した。全白表示および全黒表示における反射率は積分球光源を用いて基板法線方向より測定し、コントラスト比を求めた。また、直線偏光子および円偏光子を用いて配向観察を行った。
その結果を表4及び図58に示す。
図58は、配向観察を行った際に観察された画像を示している。図58において、(a)と(b)はw1/w2=1.0である実施例1Aの場合、(c)と(d)はw1/w2=1.7である実施例1Bの場合、(e)と(f)はw1/w2=2.3である実施例1Cの場合の画像である。また、(a)、(c)及び(e)は、直線偏光子を用いた観察結果であり、(b)、(d)及び(f)は円偏光子を用いた観察結果である。
配向制御構造の幅W1が間隙幅W2と同じ場合(実施例1A)、全白反射率は、スペーサが画素電極内にない分だけラビング処理した従来例より高くなるが、配向制御構造の幅を大きくしていくと徐々に低下して同程度になる(実施例1B〜1D)。また、全黒反射率はそれに伴って若干大きくなるのでコントラスト比は徐々に低下してゆく。これは配向制御構造物と画素電極長辺との重複量が大きくなるためであり、画素電極長辺近傍のリタデーションが配向制御構造の厚み分だけ減ずるため全白反射率は若干低下し、画素電極長辺近傍の液晶が配向制御構造により傾斜配向するため全黒反射率は若干増加する。
また、直線偏光子は画素電極短辺に対して45°傾けて配置し、画素電極短辺方位に液晶が一様に配置していれば均一な黒表示となるようにした。ここで大部分の領域で液晶の配向方位が画素電極短辺方位とずれて光抜けしている場合は×、半分程度の領域で液晶の配向方位が画素電極短辺方位とずれて光抜けしている場合は△、大部分の領域で液晶の配向方位が画素電極短辺方位と一致して光抜けが少ない場合は○と表記した。円偏光子は方位角依存性がないため任意の方位に配置し、ドメイン境界による暗線や、斜め視角でざらつき感がある場合は×、ない場合は○と表記した。
配向制御構造の幅を大きくしていくと、直線偏光子でみた配向状態は光抜けが少なくなり、液晶の配向方位が画素電極短辺方位と一致するようになる。円偏光子でみた配向状態は配向制御構造の幅に関係なく良好であり、配向制御構造が画素電極間の間隙部と対応する領域に形成されていれば液晶の配向方位はばらついても、逆チルトとなるような大きなばらつきは発生しない。しかし、配向制御構造の幅が間隙幅以上であれば円偏光子との組合せによりドメイン境界は発生しないが、液晶の配向方位はかなりばらついており、基板貼り合せで位置ずれが発生すれば逆チルトとなるような大きなばらつきが発生する。従って実際の工程では位置ずれ分だけ配向制御構造の幅を大きくする方が好ましく、W1/W2が3以下であれば反射率の低下はラビング処理と同程度に抑えられるため、配向制御構造物の幅W1は概ね1≦W1/W2≦3の範囲にするのが好ましい。
一方、従来例ではラビング筋が発生しており、その分全黒反射によりコントラスト比が低下している。
[実施例3−2]
実施例3−1と同様の手法によりTFT基板上に反射能を有する凸凹を形成した。配向制御スリットは次のようにして基板表面に形成した。まず対向基板上に上記ポジ型レジストを約1.5μmの厚さでスピンコートしてレジスト層を形成した。次に90℃で30分のプリベーク後、画素電極長辺の間隙部と対向する領域に、隣接する一方の画素電極長辺に接合もしくは重複する配向制御スリットパターンが画素電極毎に形成され、かつ画素電極短辺の間隙部と対向する領域に、間隙幅と同寸法の配向制御スリットパターンが各画素電極毎に形成されたマスクを用いて露光を行った。画素電極間の間隙幅W2は画素電極長辺、短辺共に6μm、画素電極長辺側の配向制御構造のパターン幅W1は3〜9μmとし、画素電極長辺と配向制御構造の重複量は0〜6μmとした。ここで配向制御構造の端辺は画素電極間の間隙部の中心線に合わせた。続けて現像処理、ポスト露光、130℃で2分のポストベーク、ITO膜の剥離、レジスト層の剥離を順次行い、配向制御スリットを形成した。
次にTFT基板および対向基板の表面に垂直配向膜を塗布し、TFT基板に3μm径のスペーサを散布して貼り合せを行った。以下は第1の解決手段と同様にして反射型液晶表示装置を作成し、同様の測定および観察を行った。
その結果を表5に示す。配向制御構造の幅が間隙幅の半分である場合(実施例2A)、全白反射率は、ラビング処理した従来例と同じであるが、配向制御構造の幅を大きくしていくと徐々に低下していく(実施例2B〜2D)。また、それに伴って全黒反射率は変化しないため、コントラスト比の低下は少ない。これは配向制御構造と画素電極長辺の重複量が大きくなるためであり、画素電極長辺近傍で斜め電界が発生する領域が広がるため全白反射率は若干低下し、画素電極長辺近傍の液晶は電圧無印加で傾斜配向しないため全黒反射率は変化しない。配向状態は実施例3−1と同じであり、配向制御構造の幅を大きくしていくと、直線偏光子でみた配向状態は光抜けが少なくなり、液晶の配向方位が画素電極短辺方位と一致するようになる。実際の工程では位置ずれ分だけ配向制御構造の幅を大きくする方が好ましく、W1/W2が1.5以下であれば反射率の低下は5%未満と視覚的に差が判別できない程度になるため、配向制御構造の幅W1は概ね0.5≦W1/W2≦1.5の範囲にするのが好ましい。
[実施例3−3]
実施例3−1と同様の手法によりTFT基板上に反射能を有する凸凹を形成した。配向制御スリットは次のようにして基板表面に形成した。まず対向基板上に上記ポジ型レジストを約1.5μmの厚さでスピンコートしてレジスト層を形成した。次に90℃で30分のプリベーク後、画素電極長辺の間隙部と対向する領域に、隣接する2つの画素電極長辺と重複する配向制御スリットが1画素電極おきに形成され、かつ画素電極短辺の間隙部と対向する領域に、間隙幅と同寸法の配向制御スリットパターンが画素電極毎に形成され、かつ画素電極と対向する領域に、画素電極短辺と概ね平行かつパターン幅が4μm以下の略四角形からなる第2の配向制御スリットパターンが配向制御スリットパターンに隣接して櫛型に形成されたマスクを用いて露光を行った。画素電極間の間隙幅W2は画素電極長辺、短辺共に6μm、画素電極長辺側の配向制御スリットのパターン幅W1は10μmとし、画素電極長辺と配向制御スリットの重複量は2μmとした。続けて現像処理、ポスト露光、130℃で2分のポストベーク、ITO膜の剥離、レジスト層の剥離を順次行い、配向制御スリットを形成した(実施例3A;図59(a)参照)。また、比較のため第2の配向制御スリットパターンが形成されていないマスクを用いて露光を行い、第2の配向制御スリットが形成されていないものを作成した(実施例3B;図59(a)参照)。
以下は実施例3−1と同様にして反射型液晶表示装置を作成し、同様の測定および観察に加えて黒表示から白表示にする場合の応答速度を測定した。その結果を表6に示す。全白反射率、全黒反射率、CRに関しては実施例3−2と同様であるが、直線偏光子でみた配向状態は異なり、図59に示すように第2の配向制御スリットを形成した実施例3A(図59(a))では光抜けが少なくなり、液晶の配向方位が画素電極短辺方位と一致するようになった。これは櫛型に配置した第2の配向制御スリットにより画素電極内の液晶が画素電極短辺方向に配向しやすくなったためであり、全黒から全白への応答速度もラビング処理した従来例並に改善している。
[実施例3−4]
実施例3−1と同様の手法によりTFT基板上に反射能を有する凸凹を形成した。配向制御構造および第2の配向制御スリットは次のようにして基板表面に形成した。まず対向基板上に前記ポジ型レジストを約3μmの厚さでスピンコートしてレジスト層を形成した。次に90℃で30分のプリベーク後、画素電極長辺の間隙部と対向する領域に、隣接する2つの画素電極長辺と重複する配向制御構造物パターンが1画素電極おきに形成され、かつ画素電極短辺の間隙部と対向する領域に間隙幅と同寸法の配向制御構造パターンが画素電極毎に形成されたマスクを用いて露光を行った。次に配向制御構造のパターン上となる領域に基板を支持するためのドット状パターン形成されたマスクを用いてハーフ露光を行った。続けて現像処理、ポスト露光、130℃で2分のポストベーク、220℃で60分のファイナルベークを行い、配向制御構造および支持柱を形成した。
またTFT基板上に前記ポジ型レジストを約1.5μmの厚さでスピンコートしてレジスト層を形成した。次に90℃で30分のプリベーク後、画素電極上に画素電極短辺と概ね平行かつパターン幅が4μm以下の略四角形からなる第2の配向制御スリットパターンが、対向領域に前記配向制御構造パターンが形成されていない画素電極長辺の間隙部に隣接して櫛型に形成されたマスクを用いて露光を行った。画素電極間の間隙幅W2は画素電極長辺、短辺共に6μm、画素電極長辺側の配向制御構造の幅W1は10μmとし、画素電極長辺と配向制御構造の重複量は2μmとした。続けて現像処理、ポスト露光、130℃で2分のポストベーク、第2の配向制御スリットとなる領域のAl膜および凹凸層の剥離、レジスト層の剥離を順次行い、第2の配向制御スリットを形成した。
以下は実施例3−1と同様にして反射透過型液晶表示装置を作成し、実施例3−3と同様の測定および観察を行った。その結果を表7に示す。本実施例(表7中の実施例4)での全白反射率は画素電極上の反射膜(Al膜)を剥離した分低下するが、全黒反射率は変わらないため、コントラスト比は従来例と同程度である。全白反射率が低下してもコントラスト比が高いために、表示の見易さはさほど低下しない。また、直線偏光子でみた配向状態は実施例3Aと同様に光抜けが少なくなり、それに伴って全黒から全白への応答速度もラビング処理(従来例)並に改善している。第2の配向制御スリットを画素電極上に形成して反射透過型液晶表示装置を作成する場合、透過率と反射率の関係はトレードオフの関係にあり、実施例で用いた櫛形パターン以外にも所望する透過率および反射率によって第2の配向制御スリットの長さや形成間隔を変えてもよい。
[実施例3−5]
実施例3−1と同様の手法によりTFT基板上に反射能を有する凸凹を、対向基板上に配向制御構造を形成した。次にTFT基板および対向基板の表面に垂直配向膜を塗布し、貼り合せを行った。空パネルには光重合性を有する液晶性モノマー(メルク・ジャパン製)を0.3wt%量含有した前記液晶を注入した。以下は実施例3−1と同様にして反射型液晶表示装置を作成し、DC10V印加しながら当該物質を光重合させ、液晶配向に準じた高分子鎖を形成した。反射率が10%となる閾値電圧および応答速度以外は実施例3−1と同様の測定、観察を行った。その結果を表8に示す。
液晶中に液晶と親和性の高い高分子鎖を形成した実施例3−5(表8中の実施例5)では、閾値電圧が実施例1Bに比較して0.3V低下し、直線偏光子でみた配向状態は光抜けが少なくなって、全黒から全白への応答速度もラビング処理(従来例)並に改善している。但し、全黒反射率は液晶が傾斜配向しやすくなるために若干増加し、コントラスト比は低下する。また、閾値電圧は高分子鎖が抵抗となり、従来例程は低下しない。しかし、コントラスト比は従来例並みであり、飽和電圧2.3Vに対して0.3Vの閾値低下は大きいため、多階調表示を必要とする場合には有効な手段となる。
[実施例3−6]
実施例3−1と同様の手法によりTFT基板上に反射能を有する凸凹を形成し、TFT基板および対向基板の表面に垂直配向膜を塗布した。次に対向基板のみに画素電極短辺に概ね平行な方位から基板面に対して45°傾いた紫外光を2000mJ/cm2照射し、垂直配向膜の光改質を行った。対向基板にスペーサを散布する以外は実施例3−1と同様にして反射型液晶表示装置を作成し、実施例3−5と同様の測定および観察を行った。その結果を表9に示す。
実施例3−6(表9では実施例6と表記)では従来例に比較して全黒反射率が低く、コントラスト比が高くなっている。また、閾値電圧、配向性、応答速度は従来例並であり、ラビング筋のような表示欠陥は発生していない。対向基板のみに斜め電界以上の配向規制力を有する配向制御手段を施すには、配向膜の光改質が有効である。
[実施例3−7]
反射強度に方位角依存性のある凸凹は次のようにして基板表面に形成した。まずTFT基板上にポジ型レジストを約1.5μmの厚さでスピンコートしてレジスト層を形成した。次に90℃で30分のプリベーク後、レジスト層をハーフ露光し、135℃で40分のポストベーク、200℃で60分のファイナルベークを行って、凸凹を形成した。ここでレジスト層を実施例3−1の半分の厚さにするのはTFT基板上のバスラインを利用して凹凸の平面形状に上下方位の指向性を持たせるためである。すなわち、画素電極の周辺には上下左右方位にバスラインが形成されているが、レジスト層の膜厚を薄くするとレジスト層はバスラインの形状を残して形成される。このレジスト層をハーフ露光すると凹凸はバスラインの形状に沿って平面的に連続して形成されるため、上下方位に指向性を有するようになる。ここで左右方位より上下方位に指向性が出るのは左右方位に形成されているゲートバスラインより、上下方位に形成されているデータバスラインの方が間隙部の距離が短いためであり、左右方位の間隙部の距離が短くなるようにCsやコンタクトホールを形成すれば左右方位にも指向性を持たせることができる。この場合、前述したように液晶の傾斜配向方位をなるべく斜め方向から観測しない側(例えばキーボード側)に配置すればよい。
次に基板全面にAl膜を蒸着し、フォトリソにより画素電極以外のAl膜を剥離して反射電極を形成した。TFT基板および対向基板の表面に垂直配向膜を塗布し、対向基板のみに画素電極短辺に概ね平行な方位(右方位)から基板面に対して45°傾いた紫外光を2000mJ/cm2照射し、垂直配向膜の光改質を行った。対向基板にスペーサを散布する以外は実施例3−1と同様にして反射型液晶表示装置を作製した。
全黒表示および全白表示における反射率は上下左右方位から点光源を30°傾けて入射し、基板鉛直方向で受光して測定した。その結果を表10に示す。CRは概ね変わらないが、実施例3−7(表10では実施例7と表記)では全黒の反射率が従来例に比較して30%低下している。実施例7では液晶が傾斜配向する方位(右方位)と90°異なる方位に反射強度の極大値を持ってくることにより、CRの高い方位を明るく、CRの低い方位を暗くできるため、モノドメイン配向における液晶の傾斜配向方位の黒浮きを目立たなくすることができる。
以上説明したように本実施の形態によれば、1枚偏光板方式の反射型液晶表示装置においてコントラスト比が高く、より鮮明な表示が得られるようになる。
以上説明した本発明の第1の実施の形態による反射型液晶表示装置用基板およびそれを用いた反射型液晶表示装置は、以下のようにまとめられる。
(付記1)
反射面に凹凸形状が形成された光反射板を備えた反射型液晶表示装置用基板であって、
前記反射面が複数の微小鏡面で構成されていると仮定した場合に、前記微小鏡面の法線ベクトルの方向が方位角φnからφn+1°の角度範囲に存在する確率分布の標準偏差が0.1より大きいこと
を特徴とする反射型液晶表示装置用基板。
(付記2)
付記1記載の反射型液晶表示装置用基板において、
前記標準偏差は、0.5以上であること
を特徴とする反射型液晶表示装置用基板。
(付記3)
付記1又は2に記載の反射型液晶表示装置用基板において、
前記確率分布の極大が任意方位および、それとほぼ直交する方位に存在すること
を特徴とする反射型液晶表示装置用基板。
(付記4)
付記1乃至3のいずれか1項に記載の反射型液晶表示装置用基板において、
前記確率分布の極大が任意方位だけに存在すること
を特徴とする反射型液晶表示装置用基板。
(付記5)
対向する一組の基板間に封止された負の誘電率異方性を有する液晶と、前記基板の一方に形成された光反射板とを備えた反射型液晶表示装置において、
前記一方の基板は、付記1乃至4のいずれか1項に記載の反射型液晶表示装置用基板であること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記6)
付記5記載の反射型液晶表示装置において、
前記凹凸形状は、皺状パターンであること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記7)
付記6記載の反射型液晶表示装置において、
前記皺状パターンは、前記反射面下地の表面形状が反映されていること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
以上説明した本発明の第2の実施の形態による反射型液晶表示装置は、以下のようにまとめられる。
(付記8)
対向配置された第1及び第2の基板と、
前記第1及び第2の基板間に封止され、負の誘電率異方性を有する液晶材料を含みΔn・d(液晶の屈折率異方性Δnとセルギャップdとの積)が150nm以上、500nm以下の液晶層と、
前記第1の基板に形成された光反射板とを有し、
前記液晶材料は、前記セルギャップdの2倍以上のカイラルピッチを持つネマチック液晶(カイラル無添加のネマチック液晶を含む)であること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記9)
付記8記載の反射型液晶表示装置において、
基板面に垂直な方向に負の屈折率異方性を有し、そのリタデーションdf・{(nx+ny)/2−nz}が、概ね
0.4≦〔df・{(nx+ny)/2−nz}〕/(dlc・Δn)≦0.7
の範囲である第1の位相差板を偏光板と液晶素子の間に配置したこと
を特徴とする反射型液晶表示装置。
但し、dfは第1の位相差板の厚さを、nx、ny、nz は第1の位相差板のxyz軸方向の屈折率を、dlcは液晶層の厚さを、Δnは液晶分子の異常光neと常光noとの屈折率差を示している。
(付記10)
付記9記載の反射型液晶表示装置において、
前記第1の位相差板を第2の基板を介して液晶層に隣接するように配置したこと
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記11)
付記8乃至10のいずれか1項に記載の反射型液晶表示装置において、
前記光反射板は、反射面に皺状凹凸形状が形成されていること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記12)
付記8乃至11のいずれか1項に記載の反射型液晶表示装置において、
前記第2の基板に形成された配向膜のみに、配向規制処理が施されていること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記13)
付記8乃至12のいずれか1項に記載の反射型液晶表示装置において、
前記第2の基板の前記液晶層と反対側の面に、負のリタデーション成分を持つ位相差板と、λ/4位相差板と、偏光板とがこの順に積層されていること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記14)
付記8乃至13のいずれか1項に記載の反射型液晶表示装置において、
前記光反射板が一部形成されていない光透過領域を有すること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
以上説明した本発明の第3の実施の形態による反射型液晶表示装置は、以下のようにまとめられる。
(付記15)
第1の基板と、
前記第1の基板と対向配置され、反射面が凹凸形状の光反射板が形成された第2の基板と、
前記第1および第2の基板間に封止された負の誘電率異方性を有する液晶を含む液晶層と、
前記第2の基板上の隣接画素電極間の間隙部と対向する前記第1の基板上の対応領域に形成された配向制御構造物とを備え、
前記画素電極内の液晶配向を概ねモノドメイン配向にすること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記16)
付記15記載の反射型液晶表示装置において、
前記第1の基板上の前記対応領域のうち、前記画素電極長辺の間隙部と対向する対応領域に、基板面法線方向に見て、隣接する2つの前記画素電極長辺に接するか又は重複する配向制御構造物が1画素電極おきに形成されていること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記17)
付記16記載の反射型液晶表示装置において、
前記配向制御構造物の幅W1は、
前記画素電極長辺の間隙幅をW2として、
1≦(W1/W2)≦3
の範囲にあること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記18)
付記15記載の反射型液晶表示装置において、
前記第1の基板上の前記対応領域のうち、前記画素電極長辺の間隙部と対向する対応領域に、基板面法線方向に見て、隣接する2つの前記画素電極長辺に接するか又は重複する配向制御構造物が前記画素電極毎に形成されていること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記19)
付記18記載の反射型液晶表示装置において、
前記配向制御構造物の幅W1は、
前記画素電極長辺の間隙幅をW2として、
1/2≦(W1/W2)≦3/2
の範囲にあること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記20)
付記15記載の反射型液晶表示装置において、
前記第1の基板上の前記対応領域のうち、前記画素電極短辺の間隙部と対向する対応領域に、間隙幅程度の配向制御構造物が前記画素電極毎に形成されていること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記21)
付記15記載の反射型液晶表示装置において、
前記配向制御構造物は、少なくとも一部が前記液晶層の層厚相当の高さを有し、前記第1及び第2の基板間を支持すること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記22)
付記15記載の反射型液晶表示装置において、
前記画素電極と対向する前記第1の基板上の第2対応領域に、前記画素電極短辺に概ね平行且つ幅4μm以下の第2の配向制御構造物が前記配向制御構造物に隣接して形成されていること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記23)
付記15記載の反射型液晶表示装置において、
前記画素電極上に、前記画素電極短辺に概ね平行且つ幅4μm以下の第2の配向制御構造物が、前記画素電極長辺の間隙部に隣接して形成されていること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記24)
付記15記載の反射型液晶表示装置において、
前記液晶は、光重合性物質を分散させて電圧を印加しながら当該物質を光重合させることにより形成された液晶配向に準じた高分子鎖を有していること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記25)
第1の基板と、
前記第1の基板と対向配置され、反射面が凹凸形状の光反射板が形成された第2の基板と、
前記第1および第2の基板間に封止された負の誘電率異方性を有する液晶を含む液晶層と、
前記第1の基板上にのみ設けられ、前記第2の基板上の隣接画素電極間の間隙部に発生する斜め電界以上の配向規制力を有する配向制御構造とを備え、
前記画素電極内の液晶配向を概ねモノドメイン配向にすること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記26)
付記25記載の反射型液晶表示装置において、
前記配向制御構造は、任意の方位から光照射して改質させた配向膜であること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記27)
第1の基板と、
前記第1の基板と対向配置され、反射面が凹凸形状を有する光反射板が形成された第2の基板と、
前記第1および第2の基板間に封止され、負の誘電率異方性を有し、前記凹凸形状により反射強度に方位角依存性を持たせ、配向方位を反射強度極大となる方位に概ね直交させた液晶を含む液晶層と
を有することを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記28)
付記15乃至27のいずれか1項に記載の反射型液晶表示装置において、
前記光反射板は、反射面に皺状凹凸形状が形成されていること
を特徴とする反射型液晶表示装置。
以上の通り、本発明によれば、リタデーションによるコントラスト低下を抑制し、且つ低コストで高反射率の反射型液晶表示装置を実現できる。