図1は、本発明の一実施形態に係るインパクト型の圧電アクチュエータの構成を概略的に示すブロック図である。この図において、圧電アクチュエータ10は、駆動部12と、駆動部12を駆動する駆動回路14と、駆動部12に取り付けられている被駆動部材の位置を検出する部材センサ16と、駆動部12の基端に配設された基端センサ18と、駆動部12の先端に配設された先端センサ20と、全体の動作を制御する制御部22とを備えている。
図2は、駆動部12の構成例を示す斜視図である。この図において、駆動部12は、支持部材24、圧電部材26、駆動部材28及び被駆動部材30から構成されている。支持部材24は、圧電部材26及び駆動部材28を保持するものであり、円柱体の軸方向両端部241,242及び略中央の仕切壁243を残して内部を刳り貫くことにより形成された第1収容空間244及び第2収容空間245を有している。この第1収容空間244には、圧電部材26がその積層方向を支持部材24の軸方向と一致させて収容されている。また、第2収容空間245には、駆動部材28と被駆動部材30の一部とが収容されている。
圧電部材26は、所要の厚さを有する複数枚の板状の圧電素子を各圧電素子間に図略の薄膜の電極を挾み込んで接着してなる積層型の圧電体で構成されている。この複数枚の圧電素子は隣接する圧電素子の分極方向が互いに逆向きとなるように積層されている。このように圧電素子を積層するのは、各電極には隣接する電極間で互いに正負の極性が逆になるように駆動電圧が並列に印加されることから、各圧電素子が同一の方向に伸縮して圧電部材全体として大きい伸縮量が得られるようにするためである。
この圧電部材26は、積層方向である長手方向の一方端面が第1収容空間244の仕切壁243とは反対側の端面に固定されている。支持部材24の一方端部242(支持部材24の先端部)及び仕切壁243には中心位置に丸孔が穿設されると共に、この両丸孔を貫通して断面丸形状の棒状の駆動部材28が第2収容空間245に軸方向に沿って移動可能に収容されている。なお、駆動部材28の断面は丸形状に限定されるものではなく、楕円形状、矩形形状等の任意の形状にすることができる。
駆動部材28の第1収容空間244内に突出した端部は圧電部材26の他方端面に固着され、駆動部材28の第2収容空間245の外部に突出した端部は板ばね32により所要のばね圧で圧電部材26側に付勢されている。この板ばね32による駆動部材28への付勢は、圧電部材26の伸縮動作に基づく駆動部材28の軸方向変位を安定化させるためである。
図3は、被駆動部材30の構成例を示す断面図である。この図において、被駆動部材30は、両側に耳部302を有する基部301と、両耳部302の間に嵌合される挾み込み部材303とを備えている。基部301の両耳部302の付け根部分には駆動部材28よりも僅かに径の大きい丸孔304が穿設されている。被駆動部材30は、丸孔304に駆動部材28を遊嵌状態で貫通させ、その駆動部材28を基部301と挾み込み部材303とで挾み込むことにより駆動部材28の軸方向に沿って移動可能に取り付けられている。挾み込み部材303の上部には両耳部302の上面より突出する突起303aが形成される一方、両耳部302の上面に突起部303aに圧接されるように板ばね305が固設されており、これにより挾み込み部材303が所要のばね圧で駆動部材28側に付勢されるようになっている。
この板ばね305によるばね圧は、圧電部材26の伸縮動作に基づく駆動部材28の軸方向における往復動において、駆動部材28と基部301及び挾み込み部材303との間に生じる往動時の摩擦力と復動時の摩擦力とに差を生じさせ、被駆動部材30を駆動部材28の軸方向に沿って移動可能にするためのものである。すなわち、板ばね305のばね圧により、駆動部材28が高速で移動(伸長又は縮小)するときは、駆動部材28に対して被駆動部材30が相対的に移動し得る程度に駆動部材28と被駆動部材30との間に低い摩擦力が発生し、駆動部材28が低速で移動(伸張又は縮小)するときは、駆動部材28と共に被駆動部材30が移動し得るように駆動部材28と被駆動部材30との間に高い摩擦力が発生するようになっている。
なお、本実施形態では、挾み込み部材303を駆動部材28に圧接させるための付勢手段として板ばね305を用いているが、付勢力が生じるものであればこれに限定されるものではなく、例えばコイルばねやゴム等の他の弾性部材を用いることもできる。また、被駆動部材30には駆動対象物であるレンズLが取り付けられている。
図4は、駆動回路14の構成例を示す図である。この図において、駆動回路14は、駆動電源PSから駆動電圧+Vpが供給される接続点aと接地される接続点bとの間に、MOS型FETであるスイッチ素子Q1からなる第1スイッチ回路141及びMOS型FETであるスイッチ素子Q2からなる第2スイッチ回路142の直列回路が接続されると共に、MOS型FETであるスイッチ素子Q3からなる第3スイッチ回路143及びMOS型FETであるスイッチ素子Q4からなる第4スイッチ回路144の直列回路が接続され、各スイッチ回路141乃至144に駆動制御信号を供給する制御信号供給手段としての駆動パルス発生回路145が接続されて構成されている。
第1スイッチ回路141を構成するスイッチ素子Q1及び第2スイッチ回路142を構成するスイッチ素子Q2はPチャンネルFETであり、第3スイッチ回路143を構成するスイッチ素子Q3及び第4スイッチ回路144を構成するスイッチ素子Q4はNチャンネルFETである。
なお、第1スイッチ回路141及び第3スイッチ回路143の接続点cと、第2スイッチ回路142及び第4スイッチ回路144の接続点dとの間に圧電部材26が接続(接続点cが圧電部材26の矢印Pで示す分極方向を基準にして+側の電極261に接続され、接続点dが圧電部材26の−側の電極262に接続される。)されてブリッジ回路146が構成され、第2スイッチ回路142及び第4スイッチ回路144の各FETのゲートには駆動パルス発生回路145がそのまま接続され、第1スイッチ回路141及び第3スイッチ回路143の各FETのゲートには駆動パルス発生回路145が反転回路147を介して接続されている。
この駆動回路14において、接続点a,b間に接続される駆動電圧の極性及び接続点c,d間に接続される圧電部材26の分極方向は任意に設定することができるが、例えば図4に示すように、接続点aを駆動電圧の正極とし、圧電部材26が矢印Pの方向に分極され、その+分極側が接続点cに接続(−分極側が接続点dに接続)されているとすると、第1スイッチ回路141及び第4スイッチ回路144は圧電部材26に対し分極方向と同方向(分極を強める方向)に駆動電圧+Vpを印加して端子間電圧Vsが+Vpとなるまで充電する第1の駆動回路(第1の駆動手段)を構成し、第2スイッチ回路142及び第3スイッチ回路143は圧電部材26に対し分極方向と逆方向に駆動電圧+Vpを印加して第1の駆動回路による充電電荷を放電し、かつ、端子間電圧Vsが−Vpとなるまで充電する第2の駆動回路(第2の駆動手段)を構成することになる。圧電部材26が第2の駆動回路により−Vpに充電されると、第1の駆動回路はその充電電荷を放電し、その後に+Vpに充電する。
なお、圧電部材26を図4とは逆方向に接続すると、第2スイッチ回路142及び第3スイッチ回路143が圧電部材26を分極方向と同方向に充電する第1の駆動回路となり、第1スイッチ回路141及び第4スイッチ回路144が圧電部材26を分極方向と逆方向に充電する第2の駆動回路となる。
このように駆動回路14と圧電部材26とでブリッジ回路146を構成した場合、圧電部材26には−Vp〜+Vpの電圧が印加されるので、等価的に圧電部材26の駆動電圧が2Vpとなる結果、駆動電源は低電圧であっても変位量の大きい圧電アクチュエータを得ることができるという利点がある。
図5は、駆動パルス発生回路145の構成例を示すブロック図である。この図において、駆動パルス発生回路145は、125nsのクロックパルスを出力する水晶発振子等の発振素子150と、発振素子150から出力されるパルス信号をカウントアップすると共に、そのカウント値を出力するカウンタ151と、駆動パルスの周期を設定するための第1メモリ152と、圧電部材26に対する充電時間を設定するための第2メモリ153と、これら第1メモリ152及び第2メモリ153に所定の数値(時間)をセットすることにより駆動パルスのON/OFFタイミングを制御するパルス幅制御部154とを備えている。なお、カウンタ151は、後述する第1比較器155からリセット信号が入力されたとき、そのカウント値をゼロにリセットする。
また、駆動パルス発生回路145は、更に、第1メモリ152のセット値(TM)とカウンタ151から出力されるカウント値(TC)とを比較すると共に、カウント値(TC)がセット値(TM)に達したとき(TC≧TM)にリセット信号をカウンタ151に出力する第1比較器155と、第2メモリ153のセット値(TN)とカウンタ151から出力されたカウント値(TC)とを比較すると共に、カウント値(TC)がセット値(TN)よりも小さいとき(TC<TN)にハイ信号“H”を出力する一方、カウント値(TC)がセット値(TN)に達したとき(TC≧TN)にロー信号“L”を出力する第2比較器156と、制御部22からの出力制御信号に基づいて動作するものであって、駆動パルス出力時に第2比較器156からの出力を駆動パルスとして出力し、駆動パルス出力停止時は駆動パルスをハイ状態に固定する出力制御回路157とを備えている。
このように構成された駆動パルス発生回路145は、図6に示すように、カウンタ151のカウント値(TC)が第2メモリ153のセット値(TN)に達すると、出力制御回路156から出力されていたハイ信号がロー信号に切り替わり、さらに時間が経過してカウンタ151のカウント値(TC)が第1メモリ152のセット値(TM)に達すると、出力制御回路156から出力されていたロー信号がハイ信号に切り替わる。このとき、同時に第1比較器155からリセット信号がカウンタ151に出力され、これによりカウンタ151のカウント値(TC)がゼロにリセットされる。このようにして上記の動作が繰り返し実行されることにより駆動パルス発生回路145から所定の周期で駆動パルスが連続的に出力されることになる。ここで、駆動パルスの周期を設定するための第1メモリ152と圧電部材26に対する充電時間を設定するための第2メモリ153及びパルス幅制御部154は、第1の駆動回路及び第2の駆動回路の駆動時間の周期を設定するか、又は駆動周期が一定になるように充電時間を設定するための設定変更手段159を構成する。
なお、図6に示すハイ信号の出力期間t1に第1スイッチ回路141と第4スイッチ回路144とからなる第1の駆動回路が駆動され、図6に示すロー信号の出力期間t2に第2スイッチ回路142と第3スイッチ回路143とからなる第2の駆動回路が駆動されることになる。ここで、第1メモリ152のセット値は一定にしておき、第2メモリ153のセット値を変更することによって駆動周期を一定にした状態で第1の駆動回路のオン期間(駆動時間)t1と第2の駆動回路のオン期間(駆動時間)t2とを調節(デューティ比を調節)することができる。また、第1メモリ152のセット値を変更することによって第1の駆動回路のオン期間t1と第2の駆動回路のオン期間t2からなる駆動周期を調節することができる。
図1に戻り、部材センサ16は、被駆動部材30の移動可能範囲内に配設されており、MRE(Magneto Resistive Effect)素子やPSD(Position Sensitive Device)等のセンサにより構成されている。また、基端センサ18及び先端センサ20は、フォトインタラプタ等のセンサにより構成されている。
制御部22は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、処理プログラム及びデータが記憶されたROM(Read-Only Memory)及びデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)から構成されており、部材センサ16等から入力される信号に基づいて駆動パルス発生回路145から所定のデューティ比のパルス信号を出力させ、この駆動パルスにより第1の駆動回路及び第2の駆動回路を交互に駆動する。すなわち、制御部22は、第1スイッチ回路141及び第4スイッチ回路144からなる第1の駆動回路と、第2スイッチ回路142及び第3スイッチ回路143からなる第2の駆動回路とを交互に駆動する駆動制御手段を構成する。なお、制御部22には、被駆動部材30の移動を指示する移動指示スイッチ34と、被駆動部材30の移動速度を検出するためのタイマー36とが接続されている。
上記のように構成された圧電アクチュエータ10は、従来のように充放電回路に電流を制限するためのトランジスタ、ツェナーダイオード、抵抗等の複数の回路素子からなる定電流回路を設けていないので、駆動回路14は可能な限り簡単な回路構成とすることができる。これにより駆動回路14の簡素化及び小型化が図られ、圧電アクチュエータ10の小型化も可能となる。また、従来のように充放電回路に定電流回路を設けていないので、圧電部材26に対して分極方向と同方向の駆動電圧が印加されたときの充電速度と圧電部材26に対して分極方向と逆方向の駆動電圧が印加されたときの放電速度とが略同一(すなわち、圧電部材26に対する充放電速度が略同一)となるようになっている。
図7は、図4に示す駆動回路14の駆動パルス発生回路145から出力される駆動パルスと、各スイッチ素子Q1〜Q4のON/OFF状態と、圧電部材26に印加される駆動電圧の波形とを示す図である。この図に示すように、圧電アクチュエータ10の駆動時には、駆動パルス発生回路145から出力された駆動パルスがそのままの状態で駆動制御信号としてスイッチ素子Q2,Q4に入力される一方、駆動パルス発生回路145から出力された駆動パルスが反転回路147を介することにより反転された状態で駆動制御信号としてスイッチ素子Q1,Q3に入力される。これによってスイッチ素子Q1,Q4及びスイッチ素子Q2,Q3が交互にオンになり、そのオン期間に圧電部材26に対して駆動電圧Vpが印加されることになる。
そして、被駆動部材30を支持部材24の先端側に移動させる場合(以下、この方向の駆動を「正方向駆動」という。)では、第1の駆動回路のオン期間t1と第2の駆動回路のオン期間t2との比D(D=t1/(t1+t2)、以下、デューティ比Dという。)が、0.5以下の比較的小さい値に設定されるようになっている。また、被駆動部材30を支持部材24の基端側に移動させる場合(以下、この方向の駆動を「逆方向駆動」という。)では、第1の駆動回路のオン期間t1と第2の駆動回路のオン期間t2とのデューティ比Dが、0.5以上の比較的大きい値に設定されるようになっている。すなわち、本発明では、圧電部材26に対する充放電速度を略同一にし、充放電時間のデューティ比Dを異ならせることにより圧電アクチュエータ10の駆動方向(正方向駆動又は逆方向駆動)を制御するようにしている。なお、スイッチ素子Q1,Q2はPチャンネルFETであるので、駆動制御信号がローレベルのときにオンになり、スイッチ素子Q3,Q4はNチャンネルFETであるので、駆動制御信号がハイレベルのときにオンになる。
このように、圧電部材26に対する充放電速度を略同一にし、充放電時間のデューティ比Dのみで圧電アクチュエータ10の駆動方向を制御しているのは、分極方向と同方向への充電時間と分極方向と逆方向への充電時間とに比較的大きい差を設けることによって一定の条件下で被駆動部材30が駆動部材28に対して相対移動することになるという実験結果に基づくものである。
図8は、圧電部材26に対する充放電速度が略同一で、圧電部材26に対する充放電時間のデューティ比Dのみが異なる駆動電圧を印加したときの圧電部材の変位の過渡応答を示す図である。この図に基づき、充放電時間のデューティ比Dを変更することにより被駆動部材30が駆動部材28に対し正方向と逆方向とに移動することになる理由を説明する。
この図8の下段に示す波形は、圧電部材26に分極方向と同方向の駆動電圧が印加されるときの充電時間が、分極方向と逆方向の駆動電圧が印加されるときの放電時間よりも長い所定のデューティ比を有する駆動電圧の1周期分を示し、上段に示す波形は、その駆動電圧が印加されたときの圧電部材26及び駆動部材28の過渡的な伸縮動作を示す図である。なお、この図8に示す圧電部材26及び駆動部材28の伸縮動作の過渡波形は、説明の便宜上、共振周波数の基本波の波形で表している。
いま、圧電部材26に分極方向と同方向の駆動電圧+Vpを印加して充電すると圧電部材26は伸長し、その圧電部材26に分極方向と逆方向の駆動電圧−Vpを印加して蓄積された電荷を放電すると共に逆方向に充電すると、圧電部材26は縮小する。しかし、圧電部材26及び駆動部材28には弾性があるため、例えば伸長動作を過渡的にみると、圧電部材26は、圧電部材26自体、駆動部材28、被駆動部材30等により決定される所定の共振周波数で振動しながら所定の長さに伸長する。すなわち、図8に示すように、例えばa点で圧電部材26に駆動電圧+Vpが印加されると、圧電部材26は高速で大きく伸長した後、b点で縮小に転じ、その後は振動的に伸長と縮小とを繰り返してc点近傍の伸長量に落ち着いていく(図8のc点から仮想線で示す波形を参照)。このような過渡的な変位動作の事情は縮小動作についても同様で、+Vpが印加された後に−Vpが印加されると、高速で大きく縮小した後、ある変位量で伸長に転じ、その後は振動的に縮小と伸長とを繰り返して所定の縮小量に落ち着いていく(図8のd点から仮想線で示す波形を参照)。
すなわち、圧電部材26に対して、図8に示すような波形の駆動電圧が繰り返し印加された場合、−Vpで充電された状態からa点で圧電部材26に電圧+Vpが印加されて充電が行われると、圧電部材26は高速でb点まで伸長するが、その後は伸長速度よりも遅い速度でc点まで縮小する(図8でa−b間の傾斜よりもb−c間の傾斜が緩やかになる)。これは略同一の時間で伸長と縮小とが行われるとすると、圧電部材26や駆動部材28等の粘性により縮小量が伸長量より小さくなるためである。
次に、縮小動作がほぼ終了するc点のタイミング(このタイミングは分極方向と同方向へ充電した際の圧電部材26の共振周波数の約1周期分のタイミングに相当する。)で圧電部材26に−Vpが印加されて放電が行われると共に−Vpで充電されると、圧電部材26はその変位位置から更にd点まで縮小動作を行なう。このとき、圧電部材26の伸長量は定常的に放電を行なったときの縮小量に近いので、その縮小速度はa−b間の伸長速度よりも低速となる。すなわち、c−d間の傾斜はa−b間の傾斜よりも緩やかになる。
そして、その縮小動作がほぼ終了するタイミング(このタイミングは分極方向と逆方向に充電した際の圧電部材26の共振周波数の約1/2周期分のタイミングに相当する。)d点で再び、圧電部材26に電圧+Vpが印加されて充電が行われると、圧電部材26は再度、高速で伸長動作を行ない、以下、図9に示すように駆動電圧の波形に応じて上述の圧電部材26の伸縮動作が繰り返される。
上述の圧電部材26の伸縮動作において、伸長動作は高速で行われ、縮小動作はそれよりも低速で行われるので、圧電部材の伸縮動作によって駆動部材28が往復動を繰り返すと、高速の往動時では駆動部材28と被駆動部材30との間の摩擦力は低く、低速の復動時では駆動部材28と被駆動部材30との間の摩擦力は高くなることから被駆動部材30は復動時にのみ駆動部材28と共に移動することとなる。従って、図9に示すように、被駆動部材30は駆動部材28の往復動に応じて停止と移動とを繰り返し、全体として逆方向駆動を行なうことになる。
図9は、充電時間が放電時間より長い所定のデューティ比Dを有する駆動電圧を圧電部材26に印加した場合の例であるが、圧電部材26に充電時間が放電時間より短い所定のデューティ比Dを有する駆動電圧を印加した場合は、上述の充放電速度の関係が逆になり、圧電部材26は−Vpの充電時に高速で縮小し、+Vpの充電時に低速で伸長を行なうことになるから、被駆動部材30は駆動部材28の往復動に応じて移動と停止とを繰り返し、全体として正方向駆動を行なうことになる。
従って、図4において、駆動パルス発生回路145からデューティ比Dが0.5よりも大きい所定の値を有する駆動パルスが出力されるときは、圧電部材26が高速伸長と低速縮小とを交互に繰り返すので、被駆動部材30は支持部材24の基端側に移動する(逆方向駆動)。また、駆動パルス発生回路145からデューティ比Dが0.5よりも小さい所定の値を有する駆動制御信号が出力されるときは、圧電部材26が低速伸長と高速縮小とを交互に繰り返すので、被駆動部材30は支持部材24の先端側に移動する(正方向駆動)。
被駆動部材30を安定して所望の方向に移動させるには、上述のように充電時間(図8のa−cの時間を参照)は分極方向と同方向へ充電した際の圧電部材26の共振周波数の約1周期分の期間に、また、放電時間(図8のc−dの時間を参照)は分極方向と逆方向に充電した際の圧電部材26の共振周波数の約1/2周期分の期間に設定するのが好ましいが、実際には圧電部材26の支持部材24への取付構造や駆動部材28等の要因により、圧電部材26及び駆動部材28の変位波形が図8に示すような波形とならず、他の周波数成分が重畳された歪んだ波形となる。従って、適切な圧電部材26に対する駆動電圧は、圧電アクチュエータ毎に調整して設定されることになる。
なお、駆動パルスの充放電時間のデューティ比Dが圧電部材26の共振周波数に正確に関係していない場合であっても被駆動部材30をデューティ比Dに応じて正方向若しくは逆方向に移動させることは可能である。
また、圧電部材26、駆動部材28及び被駆動部材30間の取付構造や条件によっては、図7に示したものと逆の方向に駆動させることも可能である。すなわち、駆動パルスのデューティ比Dを0.5よりも小さい値にすることで被駆動部材30を逆方向に移動させ、デューティ比Dを0.5よりも大きい値にすることで被駆動部材30を正方向に移動させることも可能である。
図10は、圧電部材26に対する充電時間t1(図6に示す第1の駆動回路の駆動時間t1)と放電時間t2(図6に示す第2の駆動回路の駆動時間t2)からなる駆動周期tpを13μs〜16μsの範囲内で125nsずつ変化させると共に、充電時間t1を9.5μs〜(tP−1.5μs)の範囲内で125nsずつ変化させたときの被駆動部材30の駆動部材28に対する移動速度(基端部側への移動速度)を測定し、等高線図として表わしたものである。
この等高線図から明らかなように、被駆動部材30の基端部側への移動速度は、駆動周期14.5μs、充電時間10.25μs近辺において最速となり、所定の範囲内ではその点を中心に駆動周期tP又は充電時間t1が変化するに従って低下する。そして、その移動速度は、駆動周期tPを14.5μsに設定し、充電時間を10.25μsから増加させる場合が最もなだらかに変化する。この図10の等高線図は、被駆動部材30を駆動部材28の基端部側へ移動させた場合のものであるが、逆方向(駆動部材28の先端部側)へ移動させた場合もほとんど同様の測定結果を得ることができた。但し、被駆動部材30の先端部側への移動速度は、駆動周期14.5μs、充電時間3.25μs近辺において最速となり、所定の範囲内ではその点を中心に駆動周期tp(=t1+t2)又は充電時間t1が変化するに従って低下する。そして、その移動速度は、駆動周期tpを14.5μsに設定し、充電時間を3.25μsから減少させる場合が最もなだらかに変化する。
また、この被駆動部材30の基端部側への移動速度は、図11に示すように、駆動周期tpを14.5μsに設定した場合、充電時間t1が10.25μs付近で頂点となり、充電時間t1が長くなるに従ってなだらかに減少する。従って、本実施形態では、駆動周期tpを14.5μsに設定し、充電時間t1を11μs〜12μsの範囲内で変化させることにより被駆動部材30の速度制御を行うようにしている。また、被駆動部材30を駆動部材28の先端部側へ移動させる場合は、駆動周期tpを14.5μsに設定し、充電時間t1を2.5μs〜3.5μsの範囲内で変化させることにより被駆動部材30の速度制御を行うようにしている。なお、これらの数値は、本実施形態における実験結果に基づくものであり、圧電アクチュエータ10の構成に応じて適宜変更されるものであることはいうまでもない。
図12及び図13は、被駆動部材30の速度制御を行う制御部22の動作を説明するためのフローチャートである。まず、圧電アクチュエータ10の図略の電源スイッチがオンされると、初期状態に設定された後に移動指示スイッチ34がオンされたか否かが判別される(ステップ#1)。この判定が肯定されると、先端センサ20がオンされたか否かが判別され(ステップ#3)、この判定が肯定されると駆動パルスの周期(駆動周期)を設定する第1メモリ152に「116」(116×0.125μs=14.5μs)がセットされる(ステップ#5)。なお、ステップ#1で判定が否定されたときは、移動指示スイッチ34がオンされるまで待機する。
次いで、充電時間を設定する第2メモリ153に「92」(92×0.125μs=11.5μs)がセットされ(ステップ#7)、その後に駆動パルス発生回路145から駆動パルスの出力が開始される(ステップ#9)。そして、タイマー36が始動されると共に、被駆動部材30の移動に対応して時間がカウントされ(ステップ#11)、引き続いて基端センサ18がオンされたか否かが判別される(ステップ#13)。ステップ#13で判定が否定されると時間が例えば10msを経過したか否かが判別され(ステップ#15)、判定が肯定されると基端側への移動距離が例えば24μmを超えたか否かが判別される(ステップ#17)。
なお、ステップ#13で判定が肯定されると駆動パルスの出力が停止され(ステップ#19)、ステップ#1に戻り以降の動作が繰り返し実行される。また、ステップ#15で判定が否定されると、ステップ#13に戻って以降の動作が繰り返し実行される。ステップ#15における時間の判別はタイマー36からの出力値に基づいて行われ、ステップ#17における移動距離の判別は部材センサ16からの出力値に基づいて行われる。すなわち、一定時間(例えば、10ms)が経過するまでは、駆動周期14.5μs、充電時間11.5μsの条件で被駆動部材30が移動され、一定時間(例えば、10ms)が経過するまでに基端位置に達するとそれ以上の移動は不能となるため、駆動パルスの出力が停止されることになる。
ステップ#17で判定が否定されると基端側への移動距離が例えば22μmに満たないか否かが判別され(ステップ#21)、この判定が否定されるとステップ#11に戻って以降の動作が繰り返し実行される。すなわち、被駆動部材30の移動距離が一定時間(例えば、10ms)を経過しても所定範囲内(例えば、22μm〜24μm)にあるうちは駆動周期14.5μs、充電時間11.5μsの条件で被駆動部材30が移動されることになる。
ステップ#17で判定が肯定されると第2メモリ153に「1」が加算され(0.125μsだけ増加)(ステップ#23)、その後に第2メモリ153のセット値が「96」を超えるか否かが判別される(ステップ#25)。ステップ#25で判定が肯定されると駆動パルスの出力が停止され(ステップ#27)、その後に図略の表示装置に異常警告が表示され(ステップ#29)、動作が終了する。すなわち、被駆動部材30の移動距離が所定値(例えば、24μm)を超えると、充電時間が11.5μsから順次増加されて移動速度が順次減速され、充電時間が12μsに達しても基端センサ18位置に達しないときは異常があったものと判断して駆動パルスの出力が停止され、同時に警告が発せられることになる。
また、ステップ#21で判定が肯定されると、第2メモリ153から「1」が減算され(0.125μsだけ減少)(ステップ#31)、その後に第2メモリ153のセット値が「88」に満たないか否かが判別される(ステップ#33)。ステップ#33で判定が肯定されるとステップ#27に移行され、ステップ#33で判定が否定されるとステップ#11に戻って以降の動作が繰り返し実行される。すなわち、被駆動部材30の移動距離が一定時間(例えば、10ms)を経過しても所定値(例えば、22μm)に達していないときは、充電時間が11.5μsから順次減少されて移動速度が順次加速され、充電時間が11μsに達しても基端センサ18位置に達しないときは異常があったものと判断して駆動パルスの出力が停止され、同時に警告が発せられることになる。
一方、ステップ#3で判定が否定されると、基端センサ18がオンされたか否かが判別され(ステップ#35)、この判定が肯定されると第1メモリ152に「116」(116×0.125μs=14.5μs)がセットされる(ステップ#37)。なお、ステップ#35で判定が否定されると、再度ステップ#3に戻って以降の動作が繰り返し実行される。
次いで、第2メモリ153に「24」(24×0.125μs=3.0μs)がセットされ(ステップ#39)、その後に駆動パルス発生回路145から駆動パルスの出力が開始される(ステップ#41)。すなわち、上述のステップ#33までは被駆動部材30が駆動部材28の先端側から基端側に向けて移動する動作であるのに対し、ステップ#37以降は被駆動部材30が駆動部材28の基端側から先端側に向けて移動する動作である。
次いで、タイマー36が始動されると共に、被駆動部材30の移動に対応して時間がカウントされ(ステップ#43)、引き続いて先端センサ20がオンされたか否かが判別される(ステップ#45)。ステップ#45で判定が否定されると時間が例えば10msを経過したか否かが判別され(ステップ#47)、判定が肯定されると先端側への移動距離が例えば24μmを超えたか否かが判別される(ステップ#49)。
なお、ステップ#45で判定が肯定されると駆動パルスの出力が停止され(ステップ#51)、ステップ#1に戻り以降の動作が繰り返し実行される。また、ステップ#47で判定が否定されると、ステップ#45に戻って以降の動作が繰り返し実行される。ステップ#47における時間の判別はタイマー36からの出力値に基づいて行われ、ステップ#49における移動距離の判別は部材センサ16からの出力値に基づいて行われる。すなわち、一定時間(例えば、10ms)が経過するまでは、駆動周期14.5μs、充電時間3.0μsの条件で被駆動部材30が移動され、一定時間(例えば、10ms)が経過するまでに先端位置に達するとそれ以上の移動は不能となるため、駆動パルスの出力が停止されることになる。
ステップ#49で判定が否定されると先端側への移動距離が例えば22μmに満たないか否かが判別され(ステップ#53)、この判定が否定されるとステップ#43に戻って以降の動作が繰り返し実行される。すなわち、被駆動部材30の移動距離が一定時間(例えば、10ms)を経過しても所定範囲内(例えば、22μm〜24μm)にあるうちは駆動周期14.5μs、充電時間3.0μsの条件で被駆動部材30が移動されることになる。
ステップ#49で判定が肯定されると第2メモリ153から「1」が減算され(0.125μsだけ減少)(ステップ#55)、その後に第2メモリ153のセット値が「20」未満か否かが判別される(ステップ#57)。ステップ#57で判定が肯定されると駆動パルスの出力が停止され(ステップ#59)、その後に図略の表示装置に異常警告が表示され(ステップ#61)、動作が終了する。すなわち、被駆動部材30の移動距離が所定値(例えば、24μm)を超えると、充電時間が3.0μsから順次減少されて移動速度が順次減速され、充電時間が2.5μsに達しても先端センサ20位置に達しないときは異常があったものと判断して駆動パルスの出力が停止され、同時に警告が発せられることになる。
また、ステップ#53で判定が肯定されると、第2メモリ153に「1」が加算され(0.125μsだけ増加)(ステップ#63)、その後に第2メモリ153のセット値が「28」を超えたか否かが判別される(ステップ#65)。ステップ#65で判定が肯定されるとステップ#59に移行され、ステップ#65で判定が否定されるとステップ#43に戻って以降の動作が繰り返し実行される。すなわち、被駆動部材30の移動距離が一定時間(例えば、10ms)を経過しても所定値(例えば、22μm)に達していないときは、充電時間が3.0μsから順次増加されて移動速度が順次加速され、充電時間が3.5μsに達しても先端センサ20位置に達しないときは異常があったものと判断して駆動パルスの出力が停止され、同時に警告が発せられることになる。
図14は、駆動回路14の変形例を示す図である。この図14に示すものは、図4に示すものとはブリッジ回路146における接続点bとアースとの間に抵抗Rを接続するようにした点で相違している。なお、接続点bとアースとの間に抵抗Rが接続されることから、図15に示すように、圧電部材26が+Vp及び−Vpに充電されるまでの波形が緩やかなものになるが、基本的な動作は図4に示すものと同一である。
また、図示は省略するが、図14に示す変形例に代え、第1の駆動回路を構成するスイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q4のいずれか一方又は両方に直列に抵抗Rを接続すると共に、第2の駆動回路を構成するスイッチ素子Q2及びスイッチ素子Q3のいずれか一方又は両方に直列に抵抗Rを接続するようにした回路構成とすることも可能である。この場合でも、図15に示すものと同様に、圧電部材26が+Vp及び−Vpに充電されるまでの波形が緩やかなものになるが、基本的な動作は図4に示すものと同一である。
さらに、第1の駆動回路を構成するスイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q4のいずれか一方又は両方に直列に抵抗Rを接続するか、あるいは、第2の駆動回路を構成するスイッチ素子Q2及びスイッチ素子Q3のいずれか一方又は両方に直列に抵抗Rを接続するようにした回路構成とすることも可能である。この場合、スイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q4のいずれか一方又は両方に直列に抵抗Rを接続したものでは、圧電部材26が+Vpに充電されるまでの波形が緩やかなものになり、スイッチ素子Q2及びスイッチ素子Q3のいずれか一方又は両方に直列に抵抗Rを接続したものでは、圧電部材26が−Vpに充電されるまでの波形が緩やかなものになるが、いずれの場合でも基本的な動作は図4に示すものと同一である。
図16は、駆動回路14の他の構成例を示す図である。この図16に示す駆動回路14′は、図4に示すものが第1の駆動回路を充放電回路を構成する2つのスイッチ回路(第1スイッチ回路141及び第4スイッチ回路144)で構成し、第2の駆動回路を充放電回路を構成する他の2つのスイッチ回路(第2スイッチ回路142及び第3スイッチ回路143)で構成したものであるのに対し、第1の駆動回路を充電回路を構成する1つのスイッチ回路(第1スイッチ回路141′)で構成し、第2の駆動回路を放電回路を構成する1つのスイッチ回路(第2スイッチ回路142′)で構成したものである点で相違している。なお、第1,第2スイッチ回路141′,142′は、図4に示すものと同一の構成になる駆動パルス発生回路145から駆動パルスが供給されて駆動が制御され、圧電部材26には駆動電源PSから駆動電圧Vpが印加されるようになっている。
すなわち、充電回路を構成する第1スイッチ回路141′は、圧電部材26の矢印Pで示す分極方向を基準にして+側の電極261に駆動電圧Vpを印加し、圧電部材26を分極方向と同方向に充電するもので、駆動電源PSと電極261との間に接続されたPチャンネルMOS型FETからなるスイッチ素子Q5で構成されている。また、放電回路を構成する第2スイッチ回路142′は、圧電部材26の電極261を接地して(すなわち、圧電部材26の端子間電圧に対して逆方向の電位を与えて)圧電部材26に蓄積されている電荷を放電するもので、電極261とアースとの間に接続されたNチャンネルMOS型FETからなるスイッチ素子Q6で構成されている。
図17は、図16に示す駆動回路14′の各スイッチ素子のON/OFF状態と、圧電部材に印加される充電電圧の波形とを示す図である。この図に示すように、駆動パルス発生回路145から駆動パルスが供給されてスイッチ素子Q5がオンになったときにはスイッチ素子Q6はオフとなり、圧電部材26は分極方向と同方向の電圧Vpで充電され、スイッチ素子Q6がオンになったときにはスイッチ素子Q5はオフとなり、圧電部材26の充電電荷が放電されることになる。
図4に示す駆動回路14を駆動回路14′のように構成した場合でも、充電時間t1と放電時間t2とのデューティ比Dが0.5よりも小さいときには正方向駆動となり、そのデューティ比Dが0.5よりも大きいときには逆方向駆動となり、図4に示すものと同様に動作することが確認された。
図18は、図16に示す駆動回路14′の変形例を示す図である。この図18に示すものは、図16に示すものとはスイッチ素子Q5と駆動電源PSとの間及びスイッチ素子Q6とアースとの間にそれぞれ抵抗Rを接続するようにした点で相違している。なお、上記のように抵抗Rが接続されることから、図19に示すように、圧電部材26がVpに充電されるまでの波形及び充電電荷がゼロレベルに放電されるまでの波形が緩やかなものになるが、基本的な動作は図16に示すものと同一である。
また、スイッチ素子Q5と駆動電源PSとの間、あるいは、スイッチ素子Q6とアースとの間のいずれか一方に抵抗Rを接続するようにすることも可能である。この場合、スイッチ素子Q5と駆動電源PSとの間に抵抗Rを接続したものでは、圧電部材26がVpに充電されるまでの波形が緩やかなものになり、スイッチ素子Q6とアースとの間に抵抗Rを接続したものでは、圧電部材26が放電されるまでの波形が緩やかなものになるが、いずれの場合でも基本的な動作は図16に示すものと同一である。
本実施形態に係る圧電アクチュエータ10は、上記のように、圧電部材に分極方向と同方向の電圧を印加して充放電する第1の駆動回路と、圧電部材に分極方向と逆方向の電圧を印加して第1の駆動回路による充放電速度と略同一の速度で充放電する第2の駆動回路と、駆動部材の駆動時間であって第1の駆動手段による第1の駆動時間及び第2の駆動手段による第2の駆動時間の少なくとも一方を設定変更する設定変更手段と、第1の駆動手段と第2の駆動手段とを交互に駆動する駆動制御手段とを備えているので、従来のような定電流回路が不要になることから小型化が可能となり、駆動回路は連続した駆動パルスで駆動されることから駆動部材の移動速度を円滑に調節することができるようになる。また、小型化できることから圧電アクチュエータ10の低廉化を促進することもできる。
なお、圧電アクチュエータは、上記実施形態のものに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、駆動部12の構成は図2及び図3に示すもの以外の構成とすることも可能であり、駆動回路14、14′を構成しているスイッチ素子として、接合型FET、バイポーラトランジスタ、GTO(Gate Turn-off Thyristor)等のMOS型FET以外の電子スイッチ素子を用いることもできる。また、被駆動部材30の移動速度の調節は、上記実施形態では駆動周期が一定になるようにして充電時間を変更することで行うようにしているが、充電時間又は放電時間を変更して駆動周期を変更することで行うようにしてもよい。
以上説明したように、一態様によれば、圧電体に分極方向と同方向の電圧を印加して充放電する第1の駆動手段と、圧電体に分極方向と逆方向の電圧を印加して圧電体に対し第1の駆動手段による充放電速度と略同一の速度で充放電する第2の駆動手段と、駆動部材の駆動時間であって第1の駆動手段による第1の駆動時間及び第2の駆動手段による第2の駆動時間の少なくとも一方を設定変更する設定変更手段と、第1の駆動手段と第2の駆動手段とを交互に駆動する駆動制御手段とを備えているので、小型化が可能で被駆動部材の移動速度を円滑に調節することができる圧電アクチュエータを実現することができる。
また、他の一態様によれば、第1の駆動手段は、圧電体の分極方向と逆方向に蓄積された電荷を放電すると共に、圧電体を分極方向と同方向に充電する第1の充放電回路からなり、第2の駆動手段は、圧電体の分極方向と同方向に蓄積された電荷を放電すると共に、圧電体を分極方向と逆方向に充電する第2の充放電回路からなっているので、圧電体には見かけ上、印加電圧の2倍の電圧が駆動電圧として供給され、単位電圧当たりの圧電体の伸縮量が増大して圧電アクチュエータの駆動効率が向上する。
また、他の一態様によれば、第1の充放電回路は、一方端が電源に接続され、他方端が圧電体の一方端に接続されてなる第1のスイッチ手段と、一方端が圧電体の他方端に接続され、他方端が接地されてなる第2のスイッチ手段とを備え、第2の充放電回路は、一方端が電源に接続され、他方端が圧電体の他方端に接続されてなる第3のスイッチ手段と、一方端が圧電体の一方端に接続され、他方端が接地されてなる第4のスイッチ手段とを備えているので、駆動回路が少ない回路素子で構成され、圧電アクチュエータの小型化が促進される。
また、他の一態様によれば、第1の駆動手段は圧電体を分極方向と同方向に充電する充電回路からなり、第2の駆動手段は圧電体に蓄積された電荷を放電する放電回路からなっているので、充電時にだけ電力が消費されることになり、電力消費を効果的に抑制することができる。
また、他の一態様によれば、充電回路は、一方端が電源に接続され、他方端が圧電体の一方端に接続されてなる第1のスイッチ手段を備え、放電回路は、一方端が圧電体の一方端に接続され、他方端が接地されてなる第2のスイッチ手段を備えているので、駆動回路が少ない回路素子で構成され、圧電アクチュエータの小型化が促進される。
また、他の一態様によれば、設定変更手段は、駆動周期が一定となるように第1の駆動時間及び第2の駆動時間を変更するものであるので、被駆動部材の移動速度を円滑に調整することができる。
また、他の一態様によれば、設定変更手段は、第1の駆動時間又は第2の駆動時間を変更することにより駆動周期を変更するものであるので、被駆動部材の移動速度を円滑に調整することができる。