JP4491864B2 - ポンプの圧力容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、封水用のOリングを用いたポンプの圧力容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にポンプにおいては、封水用のOリングを用いた圧力容器を備えている。以下、従来の封水用のOリングを用いた圧力容器に関して、マグネットポンプを例にして説明する。
【0003】
マグネットポンプは、給湯暖房用の循環ポンプとして幅広く使用されている。特に、長時間運転を必要とする暖房用ポンプとしては、メカニカルシール方式のポンプと異なり、ライフエンドになっても水漏れの発生がないことから必要不可欠のポンプとなっている。
【0004】
図5は従来のマグネットポンプの横断面図、図6は同マグネットポンプの正面図である。
【0005】
図5および図6において1はポンプ部、2は電動機である。前記ポンプ部1は、ポンプケーシング3とブラケット4を備えている。前記のポンプケーシング3には、機器本体に組込んだ際に配管と接続される吸込側継手3aと吐出側継手3bが設けられている。前記ポンプケーシング3とブラケット4との間には、封水用のOリング6を介して分離板5を設け、ねじ9をポンプケーシング3および分離板5を貫通し、かつ、ブラケット4へねじ込んで3者を締結し、これによって圧力容器を構成している。
【0006】
前記圧力容器における分離板5で仕切られたポンプ室には羽根7cをもつ羽根車7を内蔵しており、また、分離板5で仕切られた駆動室にはハウジング10を内蔵している。この羽根車7の中央部には軸8を貫通してあり、軸8にはハウジング10の回転に追従して回転する羽根車7が軸受7aを介して取り付けられている。前記羽根車7の中心に固定された軸受7aは、軸8を中心に回転摺動するようになっている。また、羽根車7は従動用マグネット7bを備えており、この従動用マグネット7bとハウジング10に組込まれた駆動用マグネット10aとが、分離板5を介した互いに対をなす磁気結合状態となっている。
【0007】
電動機2はシャフト11を備えており、このシャフト11の端部にシャフト11と同期回転するハウジング10がナット12によって取り付けられている。
【0008】
このように構成されたマグネットポンプの動作原理を説明する。電動機2のシャフト11の回転に伴ない、ハウジング10とともに駆動用マグネット10aが回転する。これに伴い駆動側マグネット10aと磁気結合状態にある従動用マグネット7bをもつ羽根車8が軸8を中心に回転する。これにより、ポンプ室内に満たされた循環水は、羽根車8に設けられた羽根7cが回転することによる遠心力により圧力差を生じ、吸込側継手3aより矢印Aの方向に吸込まれる。そして吸込まれた循環水は、羽根7a部を通ってポンプケーシング3内周に向かってかき出され、吐出側継手3bより矢印B方向へ吐出される。以上の動作により、ポンプ作用が生じている。
【0009】
図7は従来の別例のマグネットポンプの横断面図、図8は同マグネットポンプの圧力容器におけるOリングによる封水部の断面図である。
【0010】
この図7および図8に示すものは筒面封水構造を採用したものであって、雄側圧力容器13はその周壁を筒部とし、雌側圧力容器14も同じく周壁を筒部とし、前雄側圧力容器13の筒部に、雌側圧力容器14の筒部を挿入して印篭状に嵌合させる構成とし、そして、前雄側圧力容器13の筒部の内側面と雌側圧力容器14の筒部の外側面に封水用のOリング6を設けた構成としている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで図5および図6に示す従来のマグネットポンプにおいては、前述の封水用のOリング6の配置構造として、フランジ面3cと5aの間にOリング6を挟み込んで封水する構造としており、この場合、フランジ面3cの平面度が、組立後のOリング6の反力負荷時や水圧負荷時も、しっかりと保たれていることが条件となる。このため圧力容器のフランジ面3cの剛性が必要になり、この剛性を確保するため樹脂製のポンプケーシング3においては肉厚を厚くし、かつ、リブにて充分に補強しなければならないため、必然的にポンプケーシング重量が増えてしまう。また、これらを固定するねじ9も、フランジ面3cの平面度が確保できるよう本数も多めに配置しなければならない。以上でもわかる通り、従来の圧力容器の構成では、多くの材料費を要してしまうといった問題点があった。
【0012】
また、図7および図8に示す別例のものは、フランジ面の封水構造に比べ圧力容器の筒面の変位量が小さいため、雄側圧力容器13や雌側圧力容器14の剛性を落すことができ、これら部品の肉厚を薄くできるという長所があるが、その反面、組立時に雄側圧力容器13に取付けたOリング6を雌側圧力容器14へ潰しながら挿入するため、挿入時の抵抗が大きく、これを緩和するためのOリング6へのグリス塗布作業が追加されるといった問題点と、もう一つは、挿入時に多少ポンプケーシング3をこねながら押込むようなコツを要するといった理由により、機械による自動化が難しいという短所があった。
【0013】
この理由としては、雄側圧力容器13に取付けたOリング6が雌側圧力容器14に挿入される際、Oリング6は雌側圧力容器14の入口に設けられた誘い面取り15に案内されながら潰されていくため、ポンプのように外径が大きいものでは一度に全長の長いOリング6を潰さなければならず、挿入荷重が集中的に増大することが原因に挙げられる。また、これらの集中的な荷重の発生は人手による組立の場合、雄側圧力容器13と雌側圧力容器14を互いに若干傾けることにより、Oリング6の一部分から挿入が始まり挿入が伝波することにより、ある程度低減はできる。しかし、機械により自動組立を行なう場合、このような変則的な動きをさせることが難しいため、結果的にこの方式自体が使えなかった。
【0014】
本発明は前記従来の問題に留意し、雄側圧力容器の周壁筒部と雌側圧力容器の周壁筒部を嵌め合わせ、前記雄側圧力容器の周壁筒部の外側面と雌側圧力容器の周壁筒部の内側面間に封水用のOリングを介在させて構成した圧力容器であって、その組立時の挿入荷重を低減させることができ、薄肉軽量でも組立性が良いポンプの圧力容器を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、雄側圧力容器と、雌側圧力容器と、封水用Oリングとを備え、前記雌側圧力容器の入口部に、変則形状の封水用Oリング挿入用の面取り部を設けたポンプの圧力容器とする。
【0016】
この発明によれば、Oリングの誘い面取り部を変則形状にしているので、組立時の挿入荷重を低減させることができ、薄肉軽量の圧力容器構造を持ちながらも組立性が良い圧力容器を提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、雄側圧力容器の周壁筒部と雌側圧力容器の周壁筒部を嵌め合わせ、前記雄側圧力容器の周壁筒部の外側面と雌側圧力容器の周壁筒部の内側面間に封水用のOリングを介在させて構成した圧力容器であって、前記雌側圧力容器の入口部に、雌側圧力容器の周方向に間隔をおいた複数の深い面取り部と、前記各深い面取り部間で前記深い面取り部より浅い面取り深さで形成された浅い面取り部とを有する封水用Oリング挿入用の面取り部を設けたポンプの圧力容器であり、組立時の挿入荷重を低減させることができるという作用を有する。
【0018】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポンプの圧力容器において、前記深い面取り部は雄側圧力容器と雌側圧力容器を締結したねじの固定点に対応し、浅い面取り部が前記ねじ固定点から遠い部位に位置している構成としたものであり、圧力負荷時に変形が大きいねじ固定点から遠い部位でも、面取りが浅いため円筒シール面を広く設けることができ、Oリングを正常に機能させることが可能となるという作用を有する。
【0019】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のポンプの圧力容器において、雌側圧力容器の封水用Oリング挿入用の面取り部は、前記面取り深さが円周上を余弦曲線にて変化している形状のものであり、本発明の請求項4に記載の発明は、雄側圧力容器の周壁筒部と雌側圧力容器の周壁筒部を嵌め合わせ、前記雄側圧力容器の周壁筒部の外側面と雌側圧力容器の周壁筒部の内側面間に封水用のOリングを介在させて構成した圧力容器であって、前記雌側圧力容器の入口部に、封水用Oリング挿入用の面取り部を設け、前記面取り部は面取り深さが円周上を余弦曲線にて変化している形状のものであり、雄側圧力容器に取付けたOリングを雌型圧力容器に挿入する際、浅い面取り部から始まったOリングの挿入を、途中引っかかることがないよう円周上を滑らかに伝波させることができるという作用を有する。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1のポンプの横断面図、図2は同ポンプの正面図、図3は同ポンプにおけるポンプケーシングの斜視図、図4(a)は同ポンプケーシングのOリング用誘い面取り部の解説用摸式図、図4(b)は同Oリング用誘い面取り部の断面変化図である。なお、各図において前記従来のポンプと同じ構成部には同じ符号を使用し、その説明は重複するので省略する。
【0022】
図1において、1はポンプ部、2は電動機、3はポンプケーシング、3aは吸込側継手、3bは吐出側継手、4はブラケット、5は分離板、6は封水用のOリング、7は羽根車、7bは従動用マグネット、8は軸、9はねじ、10はハウジング10、10aは駆動用マグネット、11はシャフトである。
【0023】
本実施の形態1の特徴とする圧力容器部は、雌側圧力容器であるポンプケーシング3と雄側圧力容器である分離板5の間に封水用のOリング6を介することにより構成されている。さらに詳しくは、前記ポンプケーシング3は周壁が筒部として形成され、分離板5はその周壁が前記ポンプケーシング3の筒部内に嵌まり合う関係をもつ筒部となっており、前記Oリング6は、ポンプケーシング3の筒部内面と分離板5の筒部外面の間に配置され、互いに嵌め合わされたポンプケーシング3の筒部と分離板5の筒部間を封水する構造となっている。
【0024】
このため、ポンプケーシング3と分離板5は、それぞれ耐水圧のみを考慮した厚みにて設計されており、ポンプケーシング3に形成する補強用リブも、水圧負荷に耐えうる最低限の形状に止めることができている。また、ポンプケーシング3と分離板5を締結するねじ9は、耐水圧のみの荷重しか受けないため、3本で充分である。
【0025】
図3に示すように、前記ポンプケーシング3の筒部の入口部の内側には、Oリング用誘い面取り部15を形成している。このOリング用誘い面取り部15は変則的な形状を成しており、すなわち、図4(a)に示すように、Oリング用誘い面取り部15の周方向に間隔をもって3箇所に形成された深い面取り部15aと、前記各深い面取り部15a間に形成された浅い面取り部15bを有している。
【0026】
さらに、図4(a)の局部断面を拡大した図4(b)に示すように、断面変化は図のように余弦曲線状の変化をしている。また、3箇所の深い面取り部15aは、それぞれ3箇所のねじ9の固定点と一致しており、浅い面取り部15bも3箇所のねじ9の固定点の中間にそれぞれ配されている。
【0027】
これら変則的な面取り深さ形状をねじ固定点を基準に配置した目的は、圧力負荷時に耐圧容器が変形した場合を考慮してのことである。すなわち、圧力負荷時に変位の大きくなるねじ固定点から遠い箇所(浅い面取り部15bに相当)においては、面取りを浅くすることによりOリング6を受ける筒封水面15cを広く設けることができるため、変形時でもOリング6を正常に機能させることが可能となる。
【0028】
つぎに、上記構成のポンプの圧力容器部を組立てる際のOリング6の挙動について、以下に詳しく説明する。
【0029】
Oリング6は、まず、分離板5の筒部の外側面に取付けられた後、ポンプケーシング3の筒部の内側面に、Oリング用誘い面取り部15により押し潰ぶされながら挿入される。この挿入時のOリング6は、3箇所設けられている浅い面取り部15bから押し潰ぶされながら挿入し始め、浅い面取り部15bからそれぞれの両側に位置する深い面取り部15a方向へ、誘い面取り15の円周上を矢印Cのように伝波し、深い面取り部15aで全周の挿入が完了する。
【0030】
この組立時の挿入荷重は、まず、3箇所の浅い面取り部15b、つぎに浅い面取り部15bから深い面取り部15aへの円周上の伝波、最後に深い面取り部15aでの挿入の完了といった具合に、集中的に発生せずに平坦な荷重となる。この挿入荷重の低下によりOリング6へのグリス塗布作業は不要となり、また、ポンプケーシング3と分離板5は互いに平行に配置し、素直に押込み荷重を与えるのみで良いため、挿入時に人為的なコツも不要であり、機械による自動組立にも適した仕様となる。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明は、雌側圧力容器の周壁筒部と雄側圧力容器の周壁筒部を嵌め合わせ、前記雌側圧力容器の周壁筒部の内側面と雄側圧力容器の周壁筒部の外側面間に封水用のOリングを介在させて構成した圧力容器であって、前記雌側圧力容器の周壁筒部の内側面におけるOリングの誘い面取り部を変則形状に形成しているので、雌側圧力容器の筒部と雄側圧力容器の筒部を封水用のOリングをつけて挿入して組み立てるとき、その挿入荷重を低減させることができ、薄肉軽量の構造を持ちながらも組立性が良い圧力容器とすることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1のポンプの横断面図
【図2】同ポンプの正面図
【図3】同ポンプにおけるポンプケーシングの斜視図
【図4】(a)同ポンプケーシングのOリング用誘い面取り部の解説用摸式図
(b)同Oリング用誘い面取り部の断面変化図
【図5】従来のマグネットポンプの横断面図
【図6】同マグネットポンプの正面図
【図7】従来の別例のマグネットポンプの横断面図
【図8】同マグネットポンプの圧力容器におけるOリングによる封水部の断面図
【符号の説明】
1 ポンプ部
2 電動機
3 ポンプケーシング
3a 吸込側継手
3b 吐出側継手
3c フランジ面
4 ブラケット
5 分離板
5a フランジ面
6 Oリング
7 羽根車
7a 軸受
7b 従動用マグネット
7c 羽根
8 軸
9 ねじ
10 ハウジング
10a 駆動用マグネット
11 シャフト
12 ナット
13 雄側圧力容器
14 雌側圧力容器
15 誘い面取り部
15a 深い面取り部
15b 浅い面取り部
15c 筒封水面
Claims (4)
- 雄側圧力容器の周壁筒部と雌側圧力容器の周壁筒部を嵌め合わせ、前記雄側圧力容器の周壁筒部の外側面と雌側圧力容器の周壁筒部の内側面間に封水用のOリングを介在させて構成した圧力容器であって、前記雌側圧力容器の入口部に、雌側圧力容器の周方向に間隔をおいた複数の深い面取り部と、前記各深い面取り部間で前記深い面取り部より浅い面取り深さで形成された浅い面取り部とを有する封水用Oリング挿入用の面取り部を設けたことを特徴とするポンプの圧力容器。
- 前記深い面取り部は雄側圧力容器と雌側圧力容器を締結したねじの固定点に対応し、浅い面取り部が前記ねじ固定点から遠い部位に位置していることを特徴とした請求項1記載のポンプの圧力容器。
- 雌側圧力容器の封水用Oリング挿入用の面取り部は、前記面取り深さが円周上を余弦曲線にて変化している形状ものであることを特徴とした請求項1記載のポンプの圧力容器。
- 雄側圧力容器の周壁筒部と雌側圧力容器の周壁筒部を嵌め合わせ、前記雄側圧力容器の周壁筒部の外側面と雌側圧力容器の周壁筒部の内側面間に封水用のOリングを介在させて構成した圧力容器であって、前記雌側圧力容器の入口部に、封水用Oリング挿入用の面取り部を設け、前記面取り部は面取り深さが円周上を余弦曲線にて変化している形状のものであることを特徴とするポンプの圧力容器。
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