JP4486558B2 - 走行不能車用台車 - Google Patents
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Description
事故や故障等によって走行不能となった車両は、不具合の発生場所における応急処置が全く不可能か、応急処置によっても安全走行が確保できなくなると、牽引または車載型のレッカー車やキャリアカー等を用いて修理工場や自動車販売店等に輸送せざるを得ないこととなるが、特に事故によって前後車輪の何れか一方か、その懸架装置等に大きな損傷を受けてしまった車体を輸送しなければならない場合には、少なくともクレーンおよび被移動車両の前後何れか一方の左右二輪を搭載して走行可能とするレッカー車がどうしても必要となり、また、駆動系を解除できず四輪がロック状態となってしまった四輪駆動や、自走不可能な被移動車両を輸送するような場合には、キャリアカーや輸送用トラックの車体にクレーンを装備した輸送車両が不可欠となり、被移動車両の車体底部もしくはルーフ(車室内)下面に前後複数本の角材やベルト等を通し、クレーンを用いて輸送車両の荷台上に吊上げ、搭載して輸送する必要があった。
そうした中にも、その打開策となるようなものとして、例えば実開平6−68979号公報「自動車移動装置」発明として提案されているもののように、フレームの下に左右の走行用車輪を取り付け、該フレームの走行用車輪よりも手前側に牽引アームを取付け、同フレームに油圧ジャッキと、被牽引車の下部に差し込み可能で且つ油圧ジャッキによって昇降でき、上昇時に被牽引車を持ち上げ可能とするリフトアームとを装備したものとなし、車輪やその懸架、駆動系等が破損して自走不可能となった被牽引車両の車体下部に、前方もしくは後方から当該リフトアームを差し込み、ジャッキアップしてキャリアカーの荷台上まで牽引可能としたもの、あるいは実開平5-49485号公報に開示された「自動車牽引運搬車における補助装置」考案のように、前後左右に車輪を配置した枠状のタイヤハウスを設けると共に、該タイヤハウス内にスライド可能な車輪固定プレートを組み込んでなるものとしてあって、複数の当該補助装置に対して被牽引車両の車輪を個々別々に搭載し、各車輪固定プレートによって挟着状とした上、チェーンやロープなどで固定して走行、運搬可能とするもの等が散見される。
上記において見てきたとおり、従前までに提案のある車両移動用の装置類やそれらに関連する技術であって、車体をジャッキアップして移動する機能を有するものにあっては、何れもその機能を優先させんがために装置自体が大型化してしまい、例えば被移動車両1台分の搭載スペースしか備えていないキャリアカーに対しては、移動装置それ自体の移動空間が確保できず、被移動車両を牽引、搭載不能になってしまうことから装置自体の使用すらできないという大きな課題を残すものとなっており、また、十分に小型化されていてキャリアカーの荷台スペース占拠という問題を無くしたものであっても、それらは、例えば被移動車両の各車輪を個々、別々に搭載するものとなっていて、車輪やその懸架装置等が大きく変形、破損してしまった被移動車両には全く使用することができないという新たな課題を抱えてしまっており、結局はレッカー車やクレーン装備の特殊輸送車両等に頼らなければならず、こうした事態が発生したときには、どうしてもレスキューサービスのできる会社やそれら手段の用意された修理工場への依頼が不可欠となり、円滑な処理ができないばかりか、輸送依頼者が相当の経費を費やさざるを得なくなるという切実な問題は依然解消されていなかった。
そこで、この発明は、牽引装置類に要する搭載スペースを不要としてキャリアカーの積載能力に相当する被移動車両を支障無く搭載可能にした上、車輪やその懸架装置が大きく変形、破損した場合であっても一切支障なく被移動車両の下に潜ることができて迅速にジャッキアップし、キャリアカー荷台上への移動を円滑に実現可能とする新たな牽引技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の走行不能車用台車を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の走行不能車用台車は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、被移動車両の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法とした溝型材で、その溝部を上向き配置としてなる本体フレームと、該本体フレームの左右各端部において、夫々当該本体フレーム軸心に水平面内直交状に一体化してなる左右の走行体とを有し、これら左右の走行体には、夫々の前後箇所であって同走行体を軸支部として水平面内での回動自在とし、何れも直進方向から所望する左右何れか方向までの選択した方向への操舵可能にしてなる前後一対のキャスターが組み込まれると共に、それらキャスターの中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒を配して連動させ、全てのキャスターの向きを統一操作し得るものとする一方、本体フレームの溝部に、被移動車両車体のジャッキポイントに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキが左右に適宜間隔を置いて組み込まれてなるものとした構成を要旨とする走行不能車用台車である。
本体フレームは、左右の走行体によって地上から僅かに浮いた状態に支持され、その左右側の夫々に一対のジャッキを組み込み可能とするものであって、被移動車両をジャッキアップする左右のジャッキを支持すると共に、走行体による移動を可能とする程度の十分な強度で支持可能とする機能を果たし、被移動車両の車輪巾を含む程度の左右長さ寸法に設定し、ジャッキをできるだけ低い位置に支持した上に高い強度を確保できるよう、溝部を上向き配置とした溝型材からなるものとしなければならず、その溝部は、左右一対のジャッキのベース部を組み込み、夫々を左右方向の所定範囲に渡って移動可能とするような寸法、形状に設定されたものとすべきであり、高い強度を確保可能なC型材(チャンネル材などとして総称されている型鋼材。)とするのが望ましい。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
以上のとおりの構成からなる実施例1の走行不能車用台車1は、図1および図2中に示した状態のままキャリアカーTの荷台T1等に常時搭載して置き、必要なときに素早く取り出して使用することが可能であり、例えば前輪およびその懸架装置が大破してしまった被移動車両Vを、事故現場から修理工場まで輸送するような場合には、左右のジャッキ7,7を十分に縮小させた当該走行不能車用台車1を、被移動車両Vの下側に移動させ、前輪寄りとなる左右のジャッキポイントP,Pに、左右のジャッキ7,7の各サドル部74,74が対応するよう、夫々のジャッキ7,7を本体フレーム2の溝部21に沿って左右へスライドさせて位置決めした上、各ジャッキ7,7の左右方向外側に露出している昇降操作入力部71,71を回動操作し、キャリアカーTの荷台T1に移動可能となる程度の高さまで前輪を浮上させた上、図3中に示すように、本体フレーム2の左右一方端側に露出する操舵入力機構6の回転入力端68に、図示しないクランクハンドル等を連結して適宜正逆回転操作する。
以上のような構成からなる実施例1の走行不能車用台車1は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、図1および図8中に示したように、その全高(ジャッキ7,7を最も縮小させた場合の)寸法を100mm以下に設定してあることから、軽自動車やミニバン等を含むファミリーカーから車高を低く抑えたスポーツカーまでの幅広い乗用車両の最低地上高寸法内に収まるものとすることができ、しかも本体フレーム2に対して牽引用掛着部23を一体化したことにより、走行不能車用台車1に前側もしくは後ろ側を搭載した被移動車両Vを牽引する際に、被移動車両V車体の牽引フックを使用せずに、走行不能車用台車1自体を牽引することができるので、被移動車両Vの好適な位置に牽引フックが装備されていない場合にも、支障なく迅速且つ安全に移動させることができるものとなり、さらに被移動車両Vが、四輪とも破損してしまったものであっても、2基の当該走行不能車用台車1,1を前後のジャッキポイントP,P,……に対応させて、ジャッキアップすることによって簡便、且つ円滑に移動させることが可能となるという利点がある。
叙述の如く、この発明の走行不能車用台車は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの自動車移動装置等に比較して十分に小型、軽量化を実現しており、キャリアカー等の輸送車両荷台スペースを不必要に占拠することがなくなり、荷台スペースに常時搭載しておいても決して邪魔になるようなこともなくなる上、車輪やその懸架装置を大破してしまい、車輪がハの字型に開いてしまったり、あるいは完全に脱落してしまっているような被移動車両であっても、一人の作業者によって迅速且つ安全に路面上を移動させて輸送車両の荷台上まで簡単、確実に牽引、移動でき、レッカー車やクレーン搭載車両等の専用車両抜きでも十分に対応可能にしてキャリアカーの実用範囲を実質的に拡大し得るものとなることから、故障車両の回収経費を大幅に削減して遥かに経済的なものになって自動車販売店やその顧客に大いに歓迎され、その高い実用性によって自動車販売業は固よりのこと各方面からも高く評価されて広範に利用、普及していくものになると予想される。
2 本体フレーム
21 同 溝部
22 同 上側縁部
23 同 牽引用掛着部
24 同 掛着孔
25 同 フェンダー部
3 走行体
31 同 キャスター
32 同 軸支部
4 橇型滑走板
41 同 車輪接地孔
5 連結棒
51 同 操舵杆
6 操舵入力機構
61 同 螺合ブロック
62 同 雌ネジ孔
63 同 操舵用中間シャフト
64 同 雄ネジ部
65 同 自在継ぎ手従動部
66 同 操舵入力シャフト
67 同 自在継ぎ手主動部
68 同 回転入力端
7 ジャッキ
71 同 昇降操作入力部
72 同 昇降ネジ
73 同 ベース部
74 同 サドル部
75 同 伸縮連結機構
76 同 六角棒
77 同 六角筒
8 ジャッキ用仮固定機構
81 同 スライドベース部
82 同 固定側舌片
83 同 可動側舌片
84 同 ボルト・ナット
9 車両用仮固定機構
91 同 固定側挾持片
92 同 可動側挾持片
93 同 ボルト・ナット
V 被移動車両
P ジャッキアップポイント
T キャリアカー
T1 同 荷台
W ウインチ
R 同 ワイヤ
F 同 フック
Claims (9)
- 被移動車両の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法とした溝型材で、その溝部を上向き配置としてなる本体フレームと、該本体フレームの左右各端部において、夫々当該本体フレーム軸心に平面配置上で直交状に一体化してなる左右の走行体とを有し、これら左右の走行体には、夫々の前後箇所であって同走行体を軸支部としてその鉛直軸回りに回動自在となし、何れも直進方向から所望する左右何れか方向までの選択した方向への操舵可能にしてなる前後一対のキャスターが組み込まれると共に、それらキャスターの中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒を配して連動させ、全てのキャスターの向きを統合的に制御し得るものとする一方、本体フレームの溝部に、被移動車両車体のジャッキポイントに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキが左右に適宜間隔を置いて組み込まれてなるものとしたことを特徴とする走行不能車用台車。
- 被移動車両の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法としたC型材で、その溝部を上向き配置としてなる本体フレームと、該本体フレームの左右各端部において、夫々当該本体フレーム軸心に平面配置上で直交状に一体化してなる左右の走行体とを有し、これら左右の走行体には、夫々の前後箇所であって同走行体を軸支部としてその鉛直軸回りに回動自在となし、何れも直進方向から所望する左右何れか方向までの選択した方向への操舵可能にしてなる前後一対のキャスターが組み込まれると共に、それらキャスターの中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒を配して連動させ、全てのキャスターの向きを統合的に制御し得るものとすると共に、本体フレームの底面左右中央付近に中途適所を軸着して左右揺動自在とした操舵杆の前後端を、先の前後に配してある連結棒夫々の左右中央付近に連結、連動するようにした上、当該操舵杆を本体フレームの前後側何れか一方側、あるいは同本体フレームの左右端側の何れか一方側から操舵可能とする操舵入力機構を設けたものとする一方、本体フレームの溝部に、被移動車両車体のジャッキポイントに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキが左右に適宜間隔を置いて組み込まれてなるものとしたことを特徴とする走行不能車用台車。
- 被移動車両の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法としたC型材で、その溝部を上向き配置とし、左右中央上部もしくは左右中央前後側適所に牽引用掛着部を固着してなる本体フレームと、該本体フレームの左右各端部において、夫々当該本体フレーム軸心に平面配置上で直交状に一体化してなる左右の走行体とを有し、これら左右の走行体には、夫々の前後箇所であって同走行体を軸支部としてその鉛直軸回りに回動自在となし、何れも直進方向から所望する左右何れか方向までの選択した方向への操舵可能にしてなる前後一対のキャスターが組み込まれると共に、それらキャスターの中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒を配して連動させ、全てのキャスターの向きを統合的に制御し得るものとすると共に、本体フレームの底面左右中央付近に中途適所を軸着して左右揺動自在とした操舵杆の前後端を、先の前後に配してある連結棒夫々の左右中央付近に連結、連動するようにした上、当該操舵杆を本体フレームの前後側何れか一方側、あるいは同本体フレームの左右端側の何れか一方側から操舵可能とする操舵入力機構を設けたものとする一方、本体フレームの溝部に、被移動車両車体のジャッキポイントに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキが左右に適宜間隔を置いて組み込まれ、各ジャッキを短縮させた状態の全高寸法を100mm以下に規制してなるものとしたことを特徴とする走行不能車用台車。
- 操舵入力機構が、左右方向に貫通する雌ネジ孔を有し、操舵杆前後側何れか一方側に設けた螺合ブロックと、中途適所が本体フレームの前後側何れかの該螺合ブロックを設けた側となる左右側何れか適所に水平軸回りに回転自在であって垂直軸回りに揺動自在に軸着され、本体フレーム左右端側何れかに向けられた基端に自在継ぎ手従動部を有し、先端側の所定範囲に螺設した雄ネジ部を、先の螺合ブロック雌ネジ孔に螺合するようにした操舵用中間シャフトと、本体フレームの螺合ブロックを設けた前後側何れか一方側の操舵用中間シャフトを配してある左右側何れかの端部付近において、水平軸回りに回転自在に軸着され、先端に当該操舵用中間シャフト自在継ぎ手従動部に連結させた自在継ぎ手主動部を有し、本体フレーム左右端部何れか側に露出状となるようにして回転入力端を形成した操舵入力シャフトとからなるものとした、前記請求項2または3何れか一項記載の走行不能車用台車。
- 左右一対のジャッキは、全高を極力低く抑える上で有利なパンタグラフ型のものとし、夫々の昇降操作入力部を、本体フレームの左右何れか近接する端部側に向けて露出するよう配置してなるものとした、前記請求項1ないし4何れか一項記載の走行不能車用台車。
- 左右一対のジャッキは、全高を極力低く抑える上で有利なパンタグラフ型のものとし、本体フレームの左右一方側に向けるよう設定した左右ジャッキの各昇降ネジ同士を、左右伸縮自在であって水平軸心回りの回転力を伝達可能とした伸縮連結機構によって連結し、少なくとも左右何れか一方側の昇降操作入力部を、本体フレームの左右何れか近接する端部側に向けて露出するよう配置してなるものとした、請求項1ないし5何れか一項記載の走行不能車用台車。
- 左右一対のジャッキは、本体フレームの左右方向の任意の位置に対し、夫々独立して位置決め固定可能とするジャッキ用仮固定機構が組み込まれてなるものとした、前記請求項1ないし6何れか一項記載の走行不能車用台車。
- 左右一対のジャッキは、被移動車両のジャッキポイント部分に挟着、固定可能とする車両用仮固定機構が組み込まれてなるものとした、前記請求項1ないし7何れか一項記載の走行不能車用台車。
- 左右の走行体の前後一対としたキャスターは、夫々橇型滑走板付きキャスターとしてなるものとした、前記請求項1ないし8何れか一項記載の走行不能車用台車。
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