JP4484469B2 - cmサイズのコロイド結晶の製法 - Google Patents
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コロイド結晶の結晶面間隔は、原子・分子系結晶の場合よりはるかに大きく、しばしば用いられる実験条件(イオン性粒子系の場合、粒径0.1〜1μm、粒子の体積分率10−3〜10−1)において、可視光の波長のオーダーとなる。このため、コロイド結晶は可視光のBragg回折により、イリデセンスと呼ばれる虹色の光を発し、また、可視光に対する特異的な吸収帯(フォトニックバンドギャップ)を持つ。これらの特性に基づき、コロイド結晶を用いて新規な特性を持つ光学素子を作製する試みが近年盛んに行われている。
また、本発明者らは、このような課題を解決するために、既にイオン性コロイドの分散液に、温度変化と共に解離度が変化する弱電離物質を加えて温度を変化させることにより、このコロイドを結晶化することができることを見出している(特許文献1)。
pH勾配を設け、pHを徐々に上げるために、このコロイド溶液中に塩基又は塩基の弱酸塩を含有させた高分子ゲルを静置してもよいし、このコロイド溶液に塩基若しくは塩基の弱酸塩又はこれらを含む溶液を添加してもよいし、このコロイド溶液を高分子ゲルを介して塩基又は塩基の弱酸塩の溶液に接触させてもよい。
このようにpHを徐々に上げることにより、その結果、結晶化領域が空間的に移動し、大きなコロイド単結晶の生成を促すこととなる。
イオン濃度勾配を設け、イオン濃度を徐々に下げるために、このコロイド溶液中にイオン交換樹脂を静置してもよい。
このようにイオン濃度を徐々に下げることにより、その結果、結晶化領域が空間的に移動し、大きなコロイド単結晶の生成を促すこととなる。
本発明で得られる単結晶は、単結晶としたのち、結晶を高分子ゲルで固定し、媒体の蒸発を避けるために容器内に密閉して光学素子として使用できる。コロイド結晶には、回折波長を容易に制御できる(粒子濃度を変えることによる)こと、材料が安価であること、リソグラフィー法とくらべ、コロイドの自己組織化を利用しているため、周期構造が短時間で形成されること、などのメリットがあり、光フィルター、フォトニック素子として幅広く応用可能である。
イオン性コロイド系においては粒子間静電的相互作用の増加に伴って結晶化が起こり、ここで、静電的相互作用の大きさは、粒子の有効表面電荷密度(σe)の増加、粒子の体積分率(φ)の増加、または添加塩濃度(Cs)の減少により増加することが本発明者らにより見出されている(Phys. Rev. E. 53, R4314 (1996)、Phys.Rev.Lett.vol.80,no.26,5806-5809 (1998))。
例えば、図3に示すように系の底部に塩基を含むゲルを置いたり、又は高濃度の塩基を含む溶液を分散しないようにそのままコロイド分散液に添加すると、ここから塩基が除放されることにより、pH勾配が形成され、結晶化条件を満たしたゲル近傍から結晶化が始まり、時間とともに塩基は拡散してゆき、結晶化条件を満たす点が空間的に移動するに従って、単結晶が柱状に成長する。
結晶を形成することのできるコロイド粒子の粒径は約50nm〜数μmであり、粒径分布は標準偏差で10%以下である。コロイド粒子の粒径が大きすぎると、粒子の沈降が著しいため結晶が形成されず、また粒径分布が広い試料は結晶を生じにくく不適である。
媒体に関しては、コロイド粒子表面の解離基(電荷付与基)、及び添加した弱電離物質(弱酸、弱塩基、塩)が解離できるような高い誘電率を呈することができれば、水以外の液体も使用可能である。例えば、フォルムアミド類(例えば、ジメチルフォルムアミド)やアルコール類(例えば、エチレングリコール類)を使用することができる。これらはそのまま使用することもできるが、一般的には水との混合物として使用するのが好ましい。
即ち、例えば、シリカではこのpH範囲で結晶化が起こるため、このような結晶化の起こるpHを含んだpH勾配を設ける必要がある。このようなpH勾配は、pHをに上げることにより、空間的に徐々に移動し、それと共に結晶化に適した領域も徐々に移動する。この移動に伴って単結晶が形成されるものと考えられる。
また、コロイド分散液の初期pHを(等電点+2)以下とするが、例えば、シリカの場合には等電点はpH=2であるので、コロイド分散液の初期pHを4以下とすればよい。
塩基は、アンモニア、NaOHをはじめとする無機塩基、有機アンモニウムなど、いかなる有機塩基を用いることができる。弱塩基、強塩基いずれでもよい。また、塩基の弱酸塩を用いることもできる。粒子としてシリカを用いたとき、シリカのpKaの最小値は約6.4であり(R.K.Iler, "The chemistry of silica", Weiley, N.Y.,1979)、これとpKaが同等若しくはこれより大きい酸からなる塩が対象となる。このような弱酸として、例えば、炭酸H2CO3(pKa = 6.35)が挙げられる。
高分子ゲルは適当な時間内で塩基を放出することのできるものであればよく、媒体中で溶解しない、すべての合成・天然ゲルが該当する。
上記塩基や塩基の弱酸塩を含有させた高分子ゲル中の塩基の含有量は0.1〜10mMが好ましく、上記塩基を含む溶液中の塩基濃度は同じく0.1〜10mMが好ましい。
イオン濃度勾配を設けるために用いるイオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂及びこれらの混合物(mixbed)のいずれを用いてもよく、コロイド分散液に共存することによって、系のイオン濃度を減少させ得るものならいかなるものを用いてもよい。
イオンは価数、符号(プラスまたはマイナス)によらず、系のイオン強度をとおして、コロイド粒子間の静電相互作用を減少させうるものならいかなるイオンを用いてもよい。
単結晶成長の最適イオン濃度として、上限はコロイドが凝集しない10mM、下限は常法で媒体を精製しうる限界の1μMが好ましい。
この場合、コロイド粒子として、特にシリカ粒子や高分子ラテックス粒子が好ましい。
結晶が形成するための時間は、後述の実施例では、1cmのものが約30時間で形成しているが、pH、塩濃度、コロイド濃度により大きく変化し、これ以上を要することもあると考えられる。
コロイド分散液の温度は、コロイド結晶化についてあまり大きな影響を与えない。溶媒の凝固点から、沸点近くまで可能である。粘性の温度変化を通して、結晶化速度に影響するものと考えられる。
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
モノマーとして、アクリルアミド1.33M、架橋剤として、N,N’−メチレンビスアクリルアミド10mM、光重合開始剤(和光純薬社製VA−086)0.4mg/mlを含む水溶液5mlを調製しアルゴンを10分間バブリングして脱酸素して反応液とした。本反応液を、石英窓を備えた分解型反応セルに入れ、厚さ1mm、断面9×9mmの正方形のゲルを得た。
なお、ゲル合成の際、厚さ1mm、断面9×9mmの正方形で、表面にビニル基を導入した石英板を共存させることにより、石英板と強く付着したゲルとした。これにより、その後のゲルの体積変化を軽減することができ、また石英板が重しとなって、ゲルを結晶成長セル(後述)の底部に保つことができた。石英板へのビニル基の導入は次のようにした。まず、エタノール30ml、アンモニア水2ml、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(TPM)1mlを1時間混合した。次に石英板をこの溶液中に入れて、数時間保った。これにより、シランカップリング剤であるTPMが石英と反応し、表面にビニル基(メタクリル酸残基)が導入された。
1×1×4cmのポリスチレンセルに透析法及びイオン交換法により十分精製した3vol%のシリカコロイド分散液(日本触媒社KE−P10W、粒子直径120nm)3mlを加えた。この時点の条件は、CS=2μM、φ=0.03(3vol%)、σe=0.07μC/cm2)(NaOH未添加)、pHは約5であった。
次に、上記石英板に付着したゲルを1mM NaOH水溶液中に1日保つことによりゲル中にNaOHを含ませたものを、この容器の底部に置き、セル上部をフィルムで密閉した後、室温にて約30時間静置したところ、サイズが約1cmの柱状の結晶成長が観察された。柱状結晶の成長のようすを図5に示す。
柱状結晶のサイズは、最初に滴下するNaOH濃度により大きく異なった。たとえば、1)5μL及び2)15μLを滴下した場合は、それぞれ最大で、1)幅約1mm、高さ3mm、及び2)幅3mm、長さ5mmの柱状グレインが得られた。
また、同上のポリスチレンラテックス2.0vol%水分散液にNaClを添加して0.1mMとした後、カチオン交換樹脂(Bio−Rad社 AG50W−X8、20〜50mesh)1個を添加し、室温で静置した。幅1.1mmの柱状結晶が樹脂近傍より成長し、その120時間後には0.6cmであった。
1×1×4 cmのPMMA製セルにKE-W10シリカコロイド分散液を3〜4 ml入れた。この時点の分散液のpHは約4であった。次に、表1に示す量の0.01 M水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業製)を静かに滴下し、室温で静置した。
このサンプルにおいては、NaOH溶液を滴下すると微結晶が直ちに上部に生成した。NaOH分散時のpHは約6であった。この微結晶の集合体はまず徐々に底部に沈降し堆積し、やがて、この微結晶の集合体から柱状にグレインが成長した。次の段階では、大きなグレインがレンガ状に生成し、最後の成長段階では、最大サイズのグレインが徐々に生成し1×1×1cmまでに達した。さらに時間が経過すると小さなグレインがcmサイズ単結晶の内部に現れた。
また、pH時間変化を図9に示す。空気中の炭酸ガスが溶け込むためPHが時間とともに下がる。炭酸ナトリウムの拡散によっても結晶は出来るので、このような状況でも問題は無い。
約1時間経過後、数ミリメートル幅の柱状コロイド単結晶がゲル上面から上方に向かって成長を開始した。複数個のコロイド単結晶が高さ1.0センチメートルほど成長した(約21時間経過)後、その上部にセル内全体を占有するセンチメートル角のコロイド単結晶が形成された。このコロイド単結晶は分散液上面(気液界面)まで成長し、高さ約1.5cmとなった。
2 高分子ゲル
3 穴
4 NaOH溶液
Claims (8)
- 表面電荷を有するコロイド粒子が極性溶媒に分散されたコロイド分散液にpH勾配を設け、このpHを徐々に上げることにより、該分散液に該コロイド粒子から成る3次元結晶を製造する方法であって、該コロイド分散液中のコロイド濃度が0.01〜70体積%であり、該コロイド分散液の初期pHを(等電点+2)以下として、該pH勾配を(等電点+2)から(等電点+6)の範囲のpHを含んだものとする方法。
- 前記コロイド粒子がシリカ粒子又は表面をシリカで被覆したコロイド粒子であり、極性溶媒が水である請求項1に記載の方法。
- 前記コロイド溶液中に塩基又は塩基の弱酸塩を含有させた高分子ゲルを静置することにより、pH勾配を設けpHを徐々に上げる請求項1又は2に記載の方法。
- 前記コロイド溶液に塩基若しくは塩基の弱酸塩又はこれらを含む溶液を添加することにより、pH勾配を設けpHを徐々に上げる請求項1又は2に記載の方法。
- 前記コロイド溶液を高分子ゲルを介して塩基又は塩基の弱酸塩の溶液に接触させることにより、pH勾配を設けpHを徐々に上げる請求項1又は2に記載の方法。
- 表面電荷を有するコロイド粒子が極性溶媒に分散されたコロイド分散液にイオン濃度勾配を設け、このイオン濃度を徐々に下げることにより、該分散液に該コロイド粒子から成る3次元結晶を製造する方法であって、該コロイド分散液中のコロイド濃度が0.01〜70体積%であり、該コロイド分散液の初期イオン濃度を10μM以上とし、該イオン濃度勾配を1μM〜10mM範囲のイオン濃度を含んだものとする方法。
- 前記コロイド粒子がシリカ粒子又は高分子ラテックス粒子であり、極性溶媒が水である請求項6に記載の方法。
- 前記コロイド溶液中にイオン交換樹脂を静置することにより、イオン濃度勾配を設け、イオン濃度を徐々に下げる請求項6又は7に記載の方法。
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