(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図8に基づいて説明する。図1は、本実施形態の水滴生成装置の断面構成を示す概念図である。図1に示すように、水滴生成装置は、土壌Sの上方に配置された容器10を備えている。容器10は、略円筒形であり、上部には内部空間を大気とを連通させるための開口部10aが形成されている。容器10には、開口部10aを開閉するための開閉弁11が設けられている。
開閉弁11は、開口部10aに当接可能な弁体11aと、弁体11aを開口部10aに当接する方向と開口部10aから離れる方向に移動させる駆動部11bを備えている。本実施形態の開閉弁11は周知のサーモ弁である。駆動部11bには温度変化により体積変化するワックス(酸化ワックスエステル材料)が封入され、ワックスの体積変化により弁体11aが変位する。つまり、本実施形態の開閉弁11は、温度変化によるワックスの体積変化を利用して開口部10aを開閉させるように構成されている。なお、温度変化により作動する駆動部11bとして、ワックスの他に熱膨張する樹脂材料や形状記憶合金などを用いることができる。
このため、開閉弁11によって、外気温が所定開閉温度より高温になると開口部10aが閉鎖され、外気温が所定開閉温度より低温になると開口部10aが開放される。開閉弁11により開口部10aを開閉する所定開閉温度は、水滴生成装置を用いる環境における外気温の最高温度と最低温度の間に設定すればよく、一般的に25〜50℃の範囲内で適宜選択すればよい。開閉弁11の所定開閉温度は、ワックスの種類により適宜選択できる。本実施形態では、所定開閉温度を33℃程度に設定している。
容器10の内部には、水分を吸着および脱離可能な吸湿部材12が充填されている。吸湿部材12は、容器10内に取り込まれた空気に含まれる水蒸気を吸収するとともに、吸着した水分を水蒸気として空気中に放出可能となっている。吸湿部材12については、後で詳細に説明する。
また、容器10の内部には、容器10本体の熱を吸湿部材12に伝えるための伝熱フィン10bが一体的に設けられている。容器10および伝熱フィン10bは、伝熱性が高い材料(例えばアルミニウム、銅など)から構成されており、容器10の温度は外気温や日射により変動し、この温度変化が吸湿部材12に伝えられる。
容器10は、一般的なアルミニウム合金の鋳物を好適に用いることができ、さらに真鍮、ステンレス、鉄、カーボン材料、セラミックス材料(SiC、SiN、AlN、TiCなど)、金属繊維・金属粉末を混合した樹脂材料などの伝熱性が高い材料を用いることができる。また、容器10の外表面は日射による昇温効果を高めるために黒化処理を施してあることが望ましい。さらに、容器10を金属材料から構成した場合には、内表面および外表面に腐食防止のめっきや塗装を施してあることが望ましい。
容器10の下方は開口しており、連結部13を介して凝縮部14が接続されている。連結部13および凝縮部14は、ともに中空のパイプ状部材であって、容器10の内部と連通しており、容器10内で吸湿部材12から放出された水蒸気が通過可能となっている。凝縮部14は、伝熱性が高い材料(例えばアルミニウム、銅など)から構成されている。凝縮部14の外表面には、内部を通過する水蒸気に土壌Sの熱を効率よく伝えるための伝熱フィン14aが設けられている。
凝縮部14は、吸湿部材12から放出された水蒸気が露点以下となる場所に配置される。本実施形態では、凝縮部14を土壌S中に配置している。地中の温度は外気温の変化に関わらず安定しており、一般的に地表から15〜20cmの深さでは20〜35℃程度となっている。本実施形態では、凝縮部14を地表から20cmの深さに配置している。また、本実施形態では、凝縮部14を例えば植物を育成する場所のように水分を必要とする場所に設置している。
凝縮部14は、容器10の温度変化の影響を受けないことが望ましい。このため、連結部13は、容器10と凝縮部14との間における熱の授受を極力少なくするために、伝熱性が低い材料から構成される。連結部13として、例えば樹脂材料を好適に用いることができるが、容器10と凝縮部14との断熱性が確保されるなら、ステンレスやアルミニウム、アルミニウム合金などを用いることが好ましい。また、連結部13として蛇腹状のパイプを用いた場合には、水蒸気との接触面積を大きくでき、水蒸気の冷却効率を高めることができる。
容器10と地表との間には、日射を容器10に反射させるための反射板15が設けられている。反射板15は、例えば金属板からなる凹面鏡を用いることができる。反射板15を構成する凹面鏡の焦点位置に容器10を配置することで、容器10に集光させることができる。
次に、吸湿部材12について説明する。吸湿部材12としては、水分の吸収量が出来るだけ大きく、かつ、相対湿度の変化に対して急峻な吸収・放出特性を有している材料が好ましい。さらに、耐久性が良い材料が好ましい。本実施形態では、吸湿部材12としてメソポーラスシリカを用いている。
図2は、吸湿部材12を構成するメソポーラスシリカ(FSM:Folded Sheets Mesoporous Material)の分子構造を示した拡大図である。図2に示すように、メソポーラスシリカ100は、無数の細孔101が形成された蜂の巣状の三次元構造体として構成されている。本実施形態では、各細孔101の直径が1〜7nmのメソポーラスシリカ100を用いている。このような構造のメソポーラスシリカ100は、細孔101によって表面積を稼いでいるため、非常に大きな吸収水分量を得ることができる。
このようなメソポーラスシリカ100は、例えば、特開平10−87319号公報に示される手法によって形成される。まず、粘土鉱物に酸を作用させて層状珪酸としたのち、層状珪酸に対してアルカリ金属化合物を作用させることで層状珪酸塩を形成する。次に、層状珪酸塩に対して界面活性剤(テンプレート材料)を作用させることで、無数の細孔101が形成されたハニカム状の珪酸塩三次元構造体からなるメソポーラスシリカ100が生成される。
メソポーラスシリカ100の細孔径は、作用させる界面活性剤の炭素数により変化させることができる。具体的には、界面活性剤の炭素数が多いほど細孔径を大きくでき、界面活性剤の炭素数が少ないほど細孔径を小さくできる。また、界面活性剤の炭素数のバラツキが小さいほど、メソポーラスシリカの細孔径のバラツキを小さくすることができる。
さらに、メソポーラスシリカの細孔壁にアルミニウムイオンを添加することで、メソポーラスシリカの耐久性を向上させることができる。このような構成のメソポーラスシリカは、約1万サイクル使用後に吸収・放出特性を初期の80%以上に維持することができる。
細孔壁にアルミニウムイオンが添加されたメソポーラスシリカは、以下の手順で作成できる。まず、メソポーラスシリカを焼成(500〜700℃)した後、塩化アルミニウム水溶液(塩化アルミニウム約0.1モルを添加)に含浸させて、再度焼成(500〜700℃)する。次に、層状珪酸に対してアルカリ金属化合物を作用させて層状珪酸塩を形成するときに、溶液中に塩化アルミニウム、又は硝酸アルミニウムを約0.1モルを添加すると、結晶壁中にアルミニウムが混入する。これを焼成(500〜700℃)すると、耐久性が良いメソポーラスシリカを作成することができる。
次に、吸湿部材12として用いているメソポーラスシリカの水分吸収・放出特性について説明する。図3は、相対湿度を変化させた場合におけるメソポーラスシリカの水分吸収・放出特性を示している。図3では、細孔径が異なる3種類のメソポーラスシリカと比較のためにシリカゲルの水分吸収・放出特性を示している。図3では、細孔径が1.6nmの第1のメソポーラスシリカ、細孔径が2.45nmの第2のメソポーラスシリカ、細孔径が4nmの第3のメソポーラスシリカについて示している。第1のメソポーラスシリカは炭素数が10の界面活性剤を用いて作成し、第2のメソポーラスシリカは炭素数が16の界面活性剤を用いて作成し、第3のメソポーラスシリカは炭素数が20〜40の界面活性剤を用いて作成している。
図3に示すように、メソポーラスシリカはシリカゲルに比較して、水分の吸収量が大きく、かつ、相対湿度の変化に対して急峻な吸収・放出特性を有していることがわかる。つまり、メソポーラスシリカは、相対湿度のわずかな変化で多量の水分を吸収および放出することができる。以下、メソポーラスシリカの水分吸収量が急激に変化する相対湿度範囲を「水分吸収量変化領域」という。
メソポーラスシリカの細孔径は、メソポーラスシリカの水分の吸収・放出特性と相関関係がある。第1のメソポーラスシリカは、図中のA〜B点の範囲内で水分吸収量が急激に変化しており、水分吸収量変化領域は相対湿度50〜60%である。第2のメソポーラスシリカは、図中のC〜D点の範囲内で水分吸収量が急激に変化しており、水分吸収量変化領域は相対湿度22〜33%である。第3のメソポーラスシリカは、図中のE〜F点の範囲内で水分吸収量が急激に変化しており、水分吸収量変化領域は相対湿度70〜85%である。このように、メソポーラスシリカの水分吸収量変化領域は、細孔径が小さいほど相対湿度が低い側にシフトし、細孔径が大きいほど相対湿度が高い側にシフトする。また、メソポーラスシリカは細孔径が大きいほど水分吸収量が大きくなっている。さらにメソポーラスシリカは、細孔径の分布が狭い範囲であるほど、水分吸収量変化領域が狭くなる。
メソポーラスシリカの水分吸収・放出特性は、水滴生成装置を用いる環境によって適宜選択することができる。具体的には、一日の湿度変化がメソポーラスシリカの水分吸収量変化領域をまたがるようすればよい。例えば、砂漠では大気中が乾燥し相対湿度が低いので、メソポーラスシリカの水分吸収量変化領域が相対湿度20〜60%の範囲内に収まっていることが好ましく、温度が高く湿度が高い環境ではメソポーラスシリカの水分吸収量変化領域が相対湿度40〜90%の範囲内に収まっていることが好ましく、温帯地方ではメソポーラスシリカの水分吸収量変化領域が相対湿度20〜80%の範囲内に収まっていることが好ましく、寒冷地方では相対湿度が低いので、メソポーラスシリカの水分吸収量変化領域が相対湿度10〜60%の範囲内に収まっていることが好ましい。
図4は、温度と相対湿度とメソポーラスシリカの水分吸収・放出特性の関係を示している。図4における第1・第2・第3のメソポーラスシリカおよびA〜F点は、それぞれ図3と対応している。
図4に示すように、温度が上昇すると相対湿度が低下し、温度が低下すると相対湿度が上昇する。このように温度変化により相対湿度が変化することで、メソポーラスシリカは水分を吸収または放出することができる。
第1のメソポーラスシリカを例えば15℃〜60℃の温度範囲で用いる場合には、図中のA点以上の温度で吸収した水蒸気を放出し、B点以下の温度で水蒸気を吸収する。A点とB点の間の温度は、水分の吸収と放出が切り替わる遷移領域である。第2のメソポーラスシリカを例えば25℃〜60℃の温度範囲で用いる場合には、図中のC点以上の温度で吸収した水蒸気を放出し、D点以下の温度で水蒸気を吸収する。C点とD点の間の温度は、水分の吸収と放出が切り替わる遷移領域である。第3のメソポーラスシリカを例えば32℃〜60℃の温度範囲で用いる場合には、図中のE点以上の温度で吸収した水蒸気を放出し、F点以下の温度で水蒸気を吸収する。E点とF点の間の温度は、水分の吸収と放出が切り替わる遷移領域である。なお、図4において、相対湿度100%に対応する温度が液滴化温度(露点)であり、液滴化温度より低温になると、空気中に含まれている水蒸気が凝縮する。
次に、メソポーラスシリカの水分吸収量および放出量について説明する。ここでは、第1のメソポーラスシリカと第2のメソポーラスシリカを例に挙げて説明する。
上述のように、第1のメソポーラスシリカは、湿度が33%以上になると大気中の水蒸気を吸収し湿度が22%以下になると大気中の水蒸気を放出する。図3に示すように、第1のメソポーラスシリカは、相対湿度33%以上では、相対湿度22%以下に比較して、1g当たり0.3g以上の水蒸気を吸収することができる。第1のメソポーラスシリカは、相対湿度が100%のときの飽和吸水量は1g当たり約0.48gであり、相対湿度が33%のときの飽和吸水量は約0.41gである。これに対し、相対湿度が23%のときの飽和吸水量は1g当たり約0.10gであり、更に低湿度の相対湿度10%のときの飽和吸水量は1g当たり約0.03gである。
このため、相対湿度が100%から10%に変化した場合の水分放出量は、1g当たり0.45g(=0.48g−0.03g)となり、相対湿度が33%から23%に変化した場合の水分放出量は、1g当たり0.31g(=0.41g−0.10g)となる。このように、第1のメソポーラスシリカは、相対湿度22〜33%をまたがる湿度範囲で用いた場合に、優れた水分吸収・放出性能を発揮できる。
上述のように、第2のメソポーラスシリカは、湿度が60%以上になると大気中の水蒸気を吸収し湿度が50%以下になると大気中の水蒸気を放出する。図3に示すように、第2のメソポーラスシリカは、相対湿度60%以上では、相対湿度50%以下に比較して、1g当たり0.35g以上の水蒸気を吸収することができる。第2のメソポーラスシリカは、相対湿度が100%のときの飽和吸水量は約0.72gであり、相対湿度が60%のときの飽和吸水量は1g当たり約0.63gである。これに対し、相対湿度が50%のときの飽和吸水量は1g当たり約0.27gであり、相対湿度20%のときの飽和吸水量は1g当たり約0.09gである。
このため、相対湿度が100%から20%に変化した場合の水分放出量は、1g当たり0.68g(=0.72g−0.09g)となり、相対湿度が60%から50%に変化した場合の水分放出量は、1g当たり0.36g(=0.63g−0.27g)となる。このように、第2のメソポーラスシリカは、相対湿度50〜60%をまたがる湿度範囲で用いた場合に、優れた水分吸収・放出性能を発揮できる。
次に、吸湿部材12を図5、図6に基づいて説明する。図5、図6は、異なる形態の吸湿部材12を示している。吸湿部材12には、細孔径が同一のメソポーラスシリカを用いてもよく、あるいは細孔径が異なる複数種類のメソポーラスシリカを用いてもよい。細孔径が複数種類のメソポーラスシリカを用いる場合には、吸湿部材12に複数の水分吸収・放出特性を持たせることができる。本実施形態では、上述の第2のメソポーラスシリカ(細孔径2.45nm)を用いている。また、メソポーラスシリカに伝熱性向上および水分吸着のためのカーボン粉末や伝熱性向上のための金属粉末(銅やアルミニウム)を混合して用いてもよい。
図5(a)に示す例では、伝熱フィン10bの表面にメソポーラスシリカ100を付着させている。このように伝熱フィン10bの表面にメソポーラスシリカ100を付着させる場合、図5(b)に示すように比較的大きいメソポーラスシリカ100の粒子を隙間を持たせて伝熱フィン10bの表面に配置した状態で焼結させることができ、あるいは図5(c)に示すように、比較的小さいメソポーラスシリカ100の粒子を隙間なく伝熱フィン10bの表面に配置した状態で焼結させることができる。
図6(a)に示す例では、粉末状のメソポーラスシリカ100にアルミニウム粉末を混合してブロック状に成形して吸湿部材12を構成している。ブロック状の吸湿部材12には、空気が通過可能な貫通孔12aが形成されているとともに、複数の伝熱フィン10bが貫通するように構成されている。
図6(b)に示す例では、メソポーラスシリカ100の粉末にカーボン粉末を混合してモノリス状(ハニカム状)に成形して吸湿部材12を構成している。モノリス状の吸湿部材12は、多数の貫通孔12aが形成されているので、表面積を大きくすることができ、水分の吸着効率を向上させることができる。
次に、本実施形態の水滴生成装置の作動について説明する。本実施形態の水滴生成装置は、一日の気温の温度差により発生する湿度変化を利用して大気中の水分を吸収するとともに、大気の温度と地中の温度差を利用して水蒸気を凝縮させるように構成されている。
次に、本実施形態の水滴生成装置の作動について説明する。ここでは、吸湿部材12に第2のメソポーラスシリカ(細孔径2.45nm)を用いた場合について説明する。図7は、水滴生成装置の状態変化を示している。図7(a)は外気温が30℃の場合を示し、図7(b)は外気温が60℃の場合を示している。図8は、温度と湿度と吸湿部材12による水分の吸収・放出の関係を時系列的に示している。図8では、実線が外気温を示し、一点鎖線が相対湿度を示し、二点鎖線が凝縮部14が設置された地中20cmの温度を示している。
まず、夕方から夜間にかけて外気温が開閉弁11の開閉温度である33℃を下回ると、図7(a)に示すように、開閉弁11が開放する。これにより、容器10の内部は大気と連通し、容器10の外部と内部の相対湿度は同一になる。そして、図8に示すように、外気温の低下に伴い相対湿度が上昇し、相対湿度が60%を超えると、吸湿部材12が容器10の内部に導入された空気中の水蒸気を吸収する。なお、外気温が30℃の場合、地表温度は25℃程度、地中20cmの温度は20℃程度となっているものとする。
次に、昼間など、容器10が加熱される外気温が開閉弁11の開閉温度である33℃を上回ると、図7(b)に示すように、開閉弁11が閉鎖する。これにより、容器10の内部は外部と遮断される。そして、図8に示すように、外気温の上昇に伴い容器10の内部の温度が上昇して容器10の内部の相対湿度が低下し、相対湿度が50%を下回ると、吸湿部材12が吸収していた水分を水蒸気として空気中に放出する。このとき、開閉弁11が閉鎖しているので、容器10の内部は吸湿部材12から放出された水蒸気で飽和状態となる。そして、容器10内部の水蒸気を含んだ空気は連結部13を介して凝縮部14に供給される。
地中は外気温より低温になっており、外気温が60℃の場合、地表温度は40℃程度、地中20cmの温度は25℃程度となっている。このため、凝縮部14に移動した水蒸気は露点以下に冷却され、水蒸気が凝縮して水滴となる。このようにして生成された水滴は清浄な淡水である。凝縮部14で生成された水滴は土壌Sに拡散され、植物の育成に用いられる。
以上の水分の吸収および放出を繰り返し行うことで、水滴生成装置では継続的に水分を生成することができる。これにより、継続的に植物に水分を供給することができ、植物に水分を与えるという人的労力を削減することができる。
以上のように、本実施形態の水滴生成装置によれば、一日の気温変化により開閉弁11を開閉することができ、外気温変化に基づく湿度変化により吸湿部材12に水分の吸収・放出を行うことができる。このため、外部の動力を必要とすることなく、自然界の温度変化を利用して大気中の水蒸気を回収して水滴を得ることができる。
本実施形態の水滴生成装置は、一日の気温変化が大きい場所で用いた場合に、吸湿部材12で吸収できる水分量と放出できる水分量の差が大きくなるので、より多くの水滴を生成することができ、大きな効果を得ることができる。このため、水滴生成装置は日射を得ることができる場所で用いることが望ましいが、日射を得ることができなくても、一日の気温変化が得られ、かつ、地中の温度が吸湿部材12から放出された水蒸気の露点以下となる場所であれば用いることができる。
また、容器10の下方に設けた反射板15により、太陽光線を容器10の外表面に集光することができ、容器10を効率よく昇温させることができる。これにより、容器10内部の相対湿度を効率よく低下させることができ、吸湿部材12からの水分放出を効率よく行うことができる。
本実施形態の水滴生成装置は、地球上で水を得ることが困難な場所で用いることで、大きな効果を得ることができる。例えば、降水量が少ない砂漠でも、本実施形態の水滴生成装置を用いることで、水滴を安定的に供給できる。このため、植物を植えても枯れることが無く、順調に育成することができ、砂漠の緑化に有効である。
また、地下水をくみ上げて農作物(トウモロコシ・小麦・綿花など)を育成している場所(例えばアメリカの中央部や中国内陸部など)では、本実施形態の水滴生成装置を用いることで、地下水をくみ上げることなく農作物に与える水分を確保できるので、農作物を収穫量を多くすることができる。さらに、水を地下深くからくみ上げた場合に、塩分濃度が高くなって農作物に与えることができなくなるといった問題を解決することができる。
また、ジャングルのように湿度が多い環境では、一般的に乾季と雨季とが存在し、乾季は降水量が減少して植物の生育が鈍る場合がある。このため、本実施形態の水滴生成装置を用いることで、水滴を安定して供給できるので、多くの植物の生育を加速することが出来る。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図9は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図9に示すように、本実施形態の水滴生成装置には、水分を植物16に輸送する水分伝達部材17が設けられている。水分伝達部材17は、土壌S中に水平に配置され、凝縮部14の下端と接続されている。水分伝達部材17は、水分を供給したい植物17の根の近傍に到達するようにすればよい。
水分伝達部材17は、水分を移動させる親水性材料18と水分を保持する吸水性材料19とから構成することができる。図9では、水分伝達部材17を、紐状の親水性材料18の表面に吸水性材料19を付着させて構成している。親水性材料18および吸水性材料19は長期間放置した場合に、分解して土壌Sに吸収されるものが好ましい。なお、土壌S中には、雨が降ったときに雨水を保持できるように、水分伝達部材17の周囲に吸水性材料19を配置することが好ましい。
親水性材料18としては、例えば麻や綿のような植物繊維からなる紐を好適に用いることができる。植物繊維を主成分とした紐は、細かい繊維が寄り集まっているので、細かい隙間を有しており、毛管現象により水分を吸い上げて移動させることができる。吸水性材料19は、所定温度より低温で水分を吸収し、所定温度より高温で水分を放出できる材料を好適に用いることができる。吸水性材料19は中性であることが好ましく、例えばサーモゲル(株式会社興人の商品名)を用いることができる。所定温度は、植物が水分を必要とする温度(例えば30℃)に設定すればよい。つまり、植物が水分を必要とする温度以上となった場合に吸水性材料から水分を放出するようにすればよい。
このような構成の水分伝達部材17を設けることで、凝縮部14から離れた位置にある植物17の根元まで確実に輸送することができる。例えば凝縮部14は地下20cm程度に設けられるが、根が浅い植物16に対しては、水分伝達部材17を地表面の近くに設けることで、凝縮部14で生成した水分を地表近くにまで供給することができる。
なお、本実施形態では、紐状の親水性材料18の表面に吸水性材料19を付着させて水分伝達部材17を構成したが、他の態様として、親水性材料18と吸水性材料19を混合した状態で紐状としてもよい。例えば、紐状の親水性材料18に粉末状または液体状の吸水性材料19を染みこませればよい。あるいは吸水性材料19を主成分として紐状として水分伝達部材17を構成してもよい。
また、本第2実施形態の構成において、親水性材料18に代えて壁面に親水処理が施されたパイプ状部材を用いてもよい。このようなパイプ状部材によっても水分を輸送することができる。パイプ状部材は、壁面に水分が通過可能な貫通孔を多数設け、外表面に吸水性材料19を付着させればよい。これにより、凝縮部14にて生成した水滴がパイプ状部材の内部を移動して吸水性材料19にて保持される。さらに、パイプ状部材を伝熱性が高い材料から構成した場合には、凝縮部14に蓄積する熱をパイプ状部材によって土壌Sに拡散させることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態に比較して、開閉弁11の構成が異なっている。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図10は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図10に示すように、本実施形態の水滴生成装置では、駆動部11bが弁体11aを作動させるモータから構成されている。さらに水滴生成装置は、駆動部11bを作動させるためのタイマ回路20、2次電池21、太陽電池22を備えている。太陽電池22で発電した電力は2次電池21に充電される。2次電池21からの駆動部11bへの電力供給は、タイマ回路20により制御される。つまり、開閉弁11が開閉するタイミングは、タイマ回路20により制御される。
本実施形態では、開閉弁11を開放する所定開放時間と開閉弁11を閉鎖する所定閉鎖時間を予め設定しておき、毎日決まった時間に開閉弁11が開閉するように構成されている。所定開放時間は、一日のうち温度上昇する時間帯で任意に設定でき、本実施形態では10時(午前10時)に設定している。所定閉鎖時間は、一日のうち温度低下する時間帯で任意に設定でき、本実施形態では19時(午後7時)に設定している。
図11は、温度と湿度と吸湿部材12による水分の吸収・放出の関係を時系列的に示している。図11では、実線が外気温を示し、一点鎖線が相対湿度を示し、二点鎖線が凝縮部14が設置された地中20cmの温度を示している。
以上の本第3実施形態の構成によっても、外気温の変化に連動して開閉弁11を開閉させることができ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本第3実施形態の構成において、タイマ回路20と2次電池21を省略し、太陽電池22で発電した電力を直接駆動部11bに供給するように構成することができる。外気温の温度変化と太陽電池22の出力は比例関係にあるので、外気温変化により開閉弁11を開閉することができる。この場合には、日射が得られる時間帯にのみ駆動部11bに電力供給されるので、駆動部11bに電力供給された場合に開閉弁11が閉鎖するように構成すればよい。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図12は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図12に示すように、本実施形態の水滴生成装置では、上記第3実施形態のタイマ回路20に代えて制御部23が設けられている。制御部23は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成されるものである。
また、本実施形態の水滴生成装置では、外気温を検出する第1温度センサ24、大気中の湿度を検出する第1湿度センサ25、容器10内の温度を検出する第2温度センサ26、容器10内の湿度を検出する第2湿度センサ27、凝縮部14内の温度を検出する第3温度センサ28、凝縮部14内の湿度を検出する第3湿度センサ29、凝縮部14における水滴の発生を検出する水滴センサ30が設けられている。
温度センサ24、26、28、湿度センサ25、27、29、水滴センサ30の検出信号は制御部23に入力する。制御部23は、ROMに格納された制御プログラムにしたがって演算処理を行い、駆動部11bに制御信号を出力する。
このような構成により、制御部23は、第1温度センサ24により検出した外気温に基づいて開閉弁11の開閉制御を行うことができる。また、開閉弁11の開閉は、外気温に限らず、大気の湿度変化に基づいて行うことができ、制御部23は、第1湿度センサ25により検出した湿度に基づいて開閉制御を行うことができる。具体的には、第1湿度センサ25により検出した湿度が所定湿度より高いときに、開閉弁11により容器10の開口部10aを開放し、第1湿度センサ25により検出した湿度が所定湿度より低いときに、開閉弁11により容器10の開口部10aを閉鎖するように構成すればよい。
さらに、制御部23は、第1温度センサ24と第1湿度センサ25の検出値から大気中の露点を算出でき、第2温度センサ26と第2湿度センサ27の検出値から容器10内の露点を算出でき、第3温度センサ28と第3湿度センサ29の検出値から凝縮部14での露点を算出できる。例えば容器10内の露点と凝縮部14における露点とを比較して開閉弁11の開閉を制御することで、最適な制御を行うことができる。さらに、水滴センサ30の検出値により実際に水滴が生成されているかどうかを把握でき、水滴センサ30の検出値に基づいて開閉弁11の開閉を制御することで、確実に水滴を生成することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本第5実施形態は、上記各実施形態に比較して、開閉弁11の構成が異なっている。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図13は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図13に示すように、本実施形態の開閉弁11は、弁体11aが周知の板ドアとして構成されている。板状の弁体11aは、回転軸11cを中心に回動可能となっている。図13では図示を省略しているが、本第5実施形態においても上記第3実施形態と同様のモータからなる駆動部11b、タイマ回路20、2次電池21、太陽電池22が設けられており、弁体11aは駆動部11bにより回転駆動される。開口部10aの周囲における弁体11aが接触する部位には、シール部31が設けられている。
以上の本第5実施形態の構成によっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本第6実施形態は、上記第1実施形態に比較して、開閉弁11の構成が異なっている。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図14は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図14に示すように、本実施形態の開閉弁11は、弁体11aが周知のフィルムスライドドアから構成されている。フィルム状の弁体11aの両端には、弁体11aを巻き取るための巻き取り軸11dが設けられている。図14では図示を省略しているが、本第5実施形態においても上記第3実施形態と同様のモータからなる駆動部11b、タイマ回路20、2次電池21、太陽電池22が設けられており、巻き取り軸11dは駆動部11bにより回転駆動され、フィルム状の弁体11aが作動する。開口部10aの周囲における弁体11aが接触する部位には、シール部31が設けられている。
以上の本第6実施形態の構成によっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図15は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図15に示すように、本実施形態の容器10は、下端に第1開口部10aが設けられ、上端に第2開口部10cが設けられている。第1開口部10aは第1開閉弁11により開閉され、第2開口部10cは第2開閉弁32により開閉される。本実施形態の2つの開閉弁11、32は、上記第5実施形態と同様、図示しない駆動部により作動する板ドアとして構成されている。第1開口部10aの近傍には、第1開口部10aに向けて送風する送風ファン33が設けられている。第1開閉弁11と第2開閉弁32は、同時に開閉するように構成されている。
送風ファン33は、第1開閉弁11と第2開閉弁32が開放しているときに作動する。これにより、容器10の下方に設けられた第1開口部10aから容器10内に大気が導入され、吸湿部材12を通過した後、容器10の上方に設けられた第2開口部10cから容器10外に排出される。
以上の構成によれば、送風ファン33により容器10の内部に大気を強制的に導入することができ、吸湿部材12を多量の空気を通過させることができる。この結果、自然循環により容器10内に大気を導入する上記各実施形態に比較して、吸湿部材12で吸収する水分量を増加させることができる。また、地表の近くでは、外気温が低く、相対湿度が高いと考えられる。このため、本実施形態のように、容器10の下方から大気を導入することで、相対湿度が高い空気を導入でき、吸湿部材12における水分吸収効率を向上させることができる。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図16は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図16に示すように、本実施形態の水滴生成装置では、容器10の水平方向における一端側(図16の左側)に第1開口部10aが設けられ、容器10の水平方向における他端側(図16の右側)に第2開口部10cが設けられている。容器10内における吸湿部材12の空気流れ上流側には第1送風ファン33が設けられ、容器10内における吸湿部材12の空気流れ下流側には第2送風ファン34が設けられている。第1開口部10aは、第1開閉弁11により開閉され、第2開口部10cは、第2開閉弁32により開閉される。これらの開閉弁11、32は、板ドアやフィルムスライドドアなどを用いることができる。容器10内における吸湿部材12より空気流れ下流側の空間が、連通部材13および凝縮部14と接続されている。このような構成により、本実施形態の容器10は、上記第7実施形態と異なり、容器10内に導入された空気は、水平方向に容器10内を通過する。
容器10と地表との間には、日射を容器10に反射させるための反射板15が設けられている。また、容器10の外表面の下側には断熱材35が設けられている。断熱材35は、伝熱性の低い材料であればよく、例えば樹脂材料を用いることができる。
以上の構成により、上記第7実施形態と同様、送風ファン33により容器10の内部に大気を強制的に導入することができ、吸湿部材12を多量の空気を通過させることができる。これにより、吸湿部材12で吸収する水分量を増加させることができる。また、地表の近くでは外気温が低くなっていると考えられるので、容器10の下面に断熱材35を設けることで、容器10からの放熱を防ぐことができ、容器10に熱を閉じこめておくことができる。
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図17は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図17に示すように、本実施形態の水滴生成装置は、図16で示した上記第8実施形態に比較して、第1放熱部36、第2放熱部37、第3送風ファン38が設けられている点が異なっている。
第1放熱部36は、容器10と地表との間において、連結部13に設けられている。第1放熱部36は、外部に向かって延びる伝熱フィンが設けられ、大気と連結部13を通過する水蒸気との間で熱交換できるように構成されている。第1放熱部36は、容器10と熱的に遮断されるように配置されている。
第2放熱部37は、凝縮部14の近傍に配置されている。第2放熱部37は、ヒートパイプとして構成され、大気と凝縮部14近傍の土壌Sとに延びる伝熱フィンが設けられており、凝縮部14近傍の土壌Sと大気との間で熱交換できるように構成されている。
第3送風ファン38は、容器10と地表との間において、第1放熱部36と第2放熱部37の伝熱フィンに送風するように構成されている。第3送風ファン38は、水蒸気を含む空気が凝縮部14に供給され、土壌Sの温度が上昇する時間帯に作動させればよい。つまり、外気温が上昇し、第1開閉弁11と第2開閉弁32が閉鎖している時間帯に第3送風ファン38を作動させればよい。
以上の構成により、上記第8実施形態と同様の効果を得ることができる。本第9実施形態の構成では、第1放熱部36を設けることで、連結部13を通過する水蒸気を冷却できる。これにより、水蒸気の水滴化を促進できるとともに、水蒸気による土壌Sの温度上昇を抑制することができる。また、第2放熱部37により、凝縮部14近傍の土壌Sに蓄積された熱を大気に放出することができ、凝縮部14近傍の土壌Sの温度上昇を抑制することができる。さらに、第3送風ファン38により、第1放熱部36と第2放熱部37を冷却でき、土壌Sの温度上昇を効果的に抑制することができる。
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図18は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図18に示すように、本実施形態の水滴生成装置は、容器10における吸湿部材12の空気流れ上流側と空気流れ下流側とを連結する循環通路39が設けられている。循環通路39は、例えば樹脂製のパイプ状部材から構成することができる。循環通路39は、容器10における吸湿部材12の空気流れ下流側との接続部が入口部39aとなっており、容器10における吸湿部材12の空気流れ上流側との接続部が出口部39bとなっている。循環通路39は、入口部39aと出口部39bを除いて土壌S中に設けられている。
第1開閉弁11と第2開閉弁32は、板ドアとして構成されている。第1開閉弁11は、水平状態となった場合に第1開口部10aを開放するとともに、循環通路39の出口部39bを閉鎖し、垂直状態となった場合に第1開口部10aを閉鎖するとともに、循環通路39の出口部39bを開放する。同様に、第2開閉弁32は、水平状態となった場合に第2開口部10cを開放するとともに、循環通路39の入口部39aを閉鎖し、垂直状態となった場合に第2開口部10cを閉鎖するとともに、循環通路39の入口部39aを開放する。
本実施形態の凝縮部14はヒートパイプとして構成されている。凝縮部14には、土壌Sに第1伝熱フィン14aが設けられ、循環通路39に第2伝熱フィン14bが設けられており、土壌Sと循環通路39を流れる水蒸気との間で熱交換するように構成されている。また、循環通路39における凝縮部14が設けられた下方部位には、貯水部40が形成されている。貯水部40は、循環通路39の一部を下方に突出させることで構成されている。
次に、上記構成の水滴生成装置の作動について説明する。送風ファン33、34は常時作動させておくことができる。
まず、吸湿部材12に水分を吸収させる場合には、第1開閉弁11が第1開口部10aを開放するとともに循環通路39の出口部39bを閉鎖し、第2開閉弁32が第2開口部10cを開放するとともに循環通路39の入口部39aを閉鎖する。これにより、容器10の内部に大気を導入して吸湿部材12を通過させ、外部に排出することができる。これにより、空気中に含まれる水蒸気を吸湿部材12に吸収させることができる。
そして、吸湿部材12から水分を放出させる場合には、第1開閉弁11が第1開口部10aを閉鎖するとともに循環通路39の出口部39bを開放し、第2開閉弁32が第2開口部10cを閉鎖するとともに循環通路39の入口部39aを開放する。これにより、容器10の内部が外部と遮断されるとともに、容器10の内部が循環通路39と連通する。これにより、容器10と循環通路39で空気が循環する閉ループが形成される。
容器10内では吸湿部材12に吸収された水分が水蒸気として放出され、水蒸気を含む空気が入口部39aから循環通路39に流入する。水蒸気は凝縮部14で露点以下に冷却され、凝縮部14の第2伝熱フィン14bの表面で凝縮する。そして、凝縮部14の第2伝熱フィン14bから水滴が下方に落下し、貯水部40に水滴が貯蔵される。貯水部40に貯められた水は、地上にくみ上げて植物への撒水に利用することができる。さらに、貯水部40に貯められた水は、清浄な淡水であるので、飲料水等に利用することもできる。
凝縮部14を通過した空気は、循環通路39の出口部39bから容器10内に再流入する。容器10内は土壌Sに設けられた循環通路39内より高温となっているので、容器10内に再流入した空気は温度上昇して相対湿度が低下して、除湿されることとなる。このため、吸湿部材12からの水蒸気を放出を促進することができる。
以上のように、容器10と循環通路39からなる閉ループを形成することで、除湿された空気を容器10に供給することができ、吸湿部材12からの水分放出を促進でき、効果的に水滴を生成することができる。
また、貯水部40で貯水された水を飲料水として用いる場合には、水滴生成装置を地球上で飲料水を得ることが困難な場所で用いることで、大きな効果を得ることができる。例えば、海洋に囲まれた地域では、一般に飲料水の確保に多くのエネルギーを要するが、本実施形態の水滴生成装置を用いることで、飲料水が安定して確保でき、安価に生活用水が確保できる。
また、河川の水を浄化して生活用水を得ている場合には、水の浄化および河川から離れた場所への水の供給に多くのコストが掛かる。このため、本実施形態の水滴生成装置を用いることで、浄化が不要となり、各家庭に配置できるので離れた場所から水を運ぶ必要がなくなり、比較的安価な生活用水が得られる。これは、河川の水から生活用水を得ている都市部においても有効である。都市部において、吸湿部材12から放出された水蒸気が露点以下となる場所が得られにくい可能性があるが、このような場合には地中深くに凝縮部14を配置すればよい。
また、高地の場合では、一般に雨水をためて生活用水にしているが、常に安定して雨が降るわけではない。このため、本実施形態の水滴生成装置を用いることで、高地においても飲料水を安定的に得ることができる。
また、地下水の塩分濃度が高く、飲料水等の確保が困難な地方においても、本実施形態の水滴生成装置を用いることで、塩分を含まない清浄な飲料水を得ることができる。
(第11実施形態)
次に、本発明の第11実施形態について説明する。
図19は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図19に示すように、本実施形態の水滴生成装置は、上記第10実施形態の水滴生成装置に比較して、第1送風ファン33、第1開閉弁11、第2開閉弁32の構成が異なっている。
第1送風ファン33は、容器10における循環通路39の出口部39bより上流側に設けられている。第1開閉弁11は、循環通路39の出口部39bを開放し、容器10の吸湿部材12の上流側を閉鎖する状態と、循環通路39の出口部39bを閉鎖し、容器10の吸湿部材12の上流側を開放する状態と、循環通路39の出口部39bと容器10の吸湿部材12の上流側の双方を開放する状態に変化させることができる。第2開閉弁32は、循環通路39の入口部39aを開放し、容器10の第2開口部10cを閉鎖する状態と、循環通路39の入口部39aを閉鎖し、容器10の第2開口部10cを開放する状態と、循環通路39の入口部39aと容器10の第2開口部10cの双方を開放する状態に変化させることができる。
図20(a)〜(c)は、それぞれ空気流れ経路が異なる状態を示している。図20(a)は、大気中の水蒸気を吸湿部材12に吸収させる場合の空気流れ経路を示している。図20(a)に示す状態では、第1送風ファン33および第2送風ファン34は作動している。また、第1開閉弁11は、循環通路39の出口部39bを閉鎖し、容器10の吸湿部材12の上流側を開放する状態となっており、第2開閉弁32は、循環通路39の入口部39aを閉鎖し、容器10の第2開口部10cを開放する状態になっている。この状態では、大気は容器10内のみを通過する。これにより、大気に含まれる水蒸気を吸湿部材12に吸収させることができる。
図20(b)は、吸湿部材12から水分を放出する場合の空気流れ経路を示している。図20(b)に示す状態では、第1送風ファン33は停止し、第2送風ファン34は作動している。また、第1開閉弁11は、循環通路39の出口部39bおよび容器10の吸湿部材12の上流側を開放する状態となっており、第2開閉弁32は、循環通路39の入口部39aを開放し、容器10の第2開口部10cを閉鎖する状態になっている。この状態では、容器10と循環経路30で空気が通過する閉ループが形成され、吸湿部材12から放出された水蒸気が凝縮部14で凝縮し、水滴が生成される。
図20(c)は、大気が高湿度となっている場合の空気流れ経路を示している。例えば夜露が発生するような高湿度状態であり、吸湿部材12の吸水量が上限に達し、それ以上水分を吸収できなくなるような状況である。図20(c)に示す状態では、第1送風ファン33は作動し、第2送風ファン34は停止している。また、第1開閉弁11は、循環通路39の出口部39bを開放し、容器10の吸湿部材12の上流側を閉鎖する状態となっており、第2開閉弁32は、循環通路39の入口部39aおよび容器10の第2開口部10cを開放する状態になっている。この状態では、容器10内に流入した大気は吸湿部材12に供給されることなく循環通路39に供給される。このとき、循環通路39における空気流れ方向は図20(b)と逆になり、出口部39bから流入し、入口部39aから流入する。循環通路39に供給された高湿度の大気に含まれる水蒸気は、凝縮部14で凝縮し、水滴が生成される。
以上の本第11実施形態の構成によれば、吸湿部材12による水分の吸収および放出を利用して水滴を生成することに加え、高湿度状態で吸湿部材12の吸水量が上限に達したような場合に、大気に含まれる水蒸気を凝縮させ、吸湿部材12を介することなく大気から直接水滴を生成することができる。
(第12実施形態)
次に、本発明の第12実施形態について説明する。
図21は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。本実施形態の容器10は、扁平状の直方体であり、上面と下面の面積が大きくなっている。容器10の上面には、透光性を有する上側部材41が設けられている。容器10の内部には、上側部材41に対して若干傾斜して吸湿部材12が設けられている。容器10は、地面に対して傾斜して配置されている。容器10は、上側部材41に太陽光を効率よく受けることができるように配置することが望ましい。傾斜配置された容器10の下方側に開口部10aが設けられている。本実施形態では、開口部10aから容器10の内部に導入される大気が吸湿部材12を下方から上方に向かって通過可能となっている。地表面付近は地表面より上方に比較して湿度が高くなっていると考えられるので、容器10の開口部10aは地表面付近に設けることが望ましい。また、植物の近傍は湿度が比較的高くなっていると考えられるので、開口部10aは植物の近傍に設けることが好ましい。
上面部材41は、隙間を設けて平行に配置された2枚の板状部材41a、41bを有している。板状部材41a、41bは透明材料から構成されており、太陽光が上側部材41を介して吸湿部材12に供給可能となっている。板状部材41a、41bを構成する透明材料としては、ガラス、石英、サファイヤ、アクリル、ポリカーボネート、ナイロンなどを用いることができる、
図22は、板状部材41a、41bの断面図である。図22に示すように、板状部材41a、41bには、太陽光を容器10の内部に効率よく取り入れるための表面加工が施されている。具体的には、板状部材41a、41bの表面には断面三角形状の凹凸が多数形成され、それぞれの凹凸は入射した太陽光を容器10の内部に反射させることができる角度に形成されている。さらに、容器10は断熱材から構成されているとともに、板状部材41a、41bの間は密閉された空気断熱層となっている。このため、吸湿部材12が太陽エネルギーにより効率よく温度上昇することができ、夜間などの湿度が高いときに吸湿部材12が吸収した水分を効率よく放出することができる。
また、吸湿部材12の表面に太陽光の吸収を助けるカーボン粒子を付着させることで、太陽光を効率的に吸収し、吸収した水蒸気を効率的に放出することができる。吸湿部材12の表面に付着させるカーボン粒子として、グラファイト、アモルファスカーボン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン、炭、コークスなどを用いることができる。吸湿部材12の粒子表面にカーボン粒子を付着させる方法として、吸湿部材12の粒子の表面にカーボン粒子を機械的に押し付けて付着させるメカノフュージョンを用いることができる。その他に、吸湿部材12の粒子をカーボン粒子を含有する液体中に浮遊させた後、乾燥することによっても、吸湿部材12の粒子表面にカーボン粒子を付着させることができる。なお、カーボン粒子は、太陽光を吸収する特性を備えていればよく、粉末微粒子状やファイバー状など、どのような形状でも用いることができる。本実施形態では、カーボン粒子の粒子径を0.0001〜0.5mm程度としている。
吸湿部材12の粒子同士は、点結着で結合され空気が通過し易い構造となっている。吸湿部材12の粒子同士を点結着させるための結着材は、エポキシの粉末を融点付近で融解した接着剤やこれにカーボンを混入したものを用いている。吸湿部材12の通気抵抗は結着材の粒子の大きさで決定される。結着材の粒子が大きいと、吸湿部材12の粒子間距離が大きくなり通気抵抗が小さくなる。結着材の粒子が小さいと、吸湿部材12の粒子間距離が小さくなり空気抵抗が大きくなる。
吸湿部材12の粒子同士が近接していると、吸湿部材12の通風抵抗が大きくなり、吸湿部材12の水分吸着特性を均一の保つことが難しくなるとともに、吸湿部材12に大気を導入するために必要となる動力が大きくなる。一方、吸湿部材12の粒子間距離が大きいと、通気抵抗は小さくなるが、吸湿部材12と空気との接触時間が短くなり、吸湿部材12が充分に水蒸気を吸収できなくなる。このため、吸湿部材12の粒子間距離を適切にすることが重要である。本実施形態では、吸湿部材12の粒子径を0.1〜5mm程度とし、結着材の粒子径を0.01〜1mm程度としている。
図21に戻り、本実施形態の凝縮部14は、地上に設けられ、大気と吸湿部材12から放出された水蒸気とを熱交換可能な熱交換器として構成されている。凝縮部14は、できるだけ気温が低くなる場所に配置することが望ましく、本実施形態では凝縮部14を容器10の下方に配置している。
凝縮部14と容器10の間には、空気を凝縮部14に導入するための空気導入路42が設けられている。空気導入路42は、露が発生する場合や雨天時などの大気が高湿度(例えば相対湿度90〜95%以上)となっている場合に、高湿度の大気を凝縮部14に供給するために設けられている。このため、空気導入路42は、湿度が比較的高くなる位置(地表面付近、日陰、植物の近傍など)に設けることが望ましい。
空気導入路42には開閉弁43が設けられており、制御部23により開閉制御される。制御部23は、空気導入路42の近傍の湿度を測定する第1湿度センサ25により検出した湿度に基づいて開閉弁43の開閉制御を行う。具体的には、第1湿度センサ25により検出した湿度が所定湿度(例えば相対湿度95%)より高いときに、開閉弁43を開放し、第1湿度センサ25により検出した湿度が所定湿度(例えば相対湿度95%)より低いときに、開閉弁43を閉鎖するように構成すればよい。さらに、外気温が露点温度を下回った場合に開閉弁43を開放し、外気温が露点温度を上回った場合に開閉弁43を閉鎖してもよい。露点温度は、第1温度センサ24により検出した外気温と第1湿度センサ25により検出した湿度とから水蒸気圧を算出し、その水蒸気圧を飽和水蒸気圧とする温度として求めることができる。
凝縮部14に供給された空気中の水分は凝縮部14で冷却されて水滴となり、貯水部40に蓄えられる。高湿度の空気が凝縮部14で冷却される際に、水蒸気の過冷却が起こり易い。このため、凝縮部14の空気流通面に、過冷却状態の水蒸気を水滴にするための起点を設けることで、効率的に水滴を生成することができる。
起点は、疎水性の機能を持ったナノレベルの突起として構成することができる。突起の先端に過冷却状態の水蒸気が接触すると、水滴が生成しやすい。このような突起は、以下のように、ブルーサイト型水酸化コバルト膜の表面にラウリン酸を被覆して形成することができる。まず、塩化コバルトに尿素を入れて60℃に保持した溶液中に、凝縮部14の空気流通面を構成するチューブを24時間浸漬させ、表面にブルーサイト型水酸化コバルトの膜を析出させる。その後、60℃のラウリン酸ナトリウム水溶液に5時間浸漬し、表面にラウリン酸を被覆させることで、凝縮部14の空気流通面に突起を形成することができる。さらに、凝縮部14の空気流通面をカーボンナノチューブで被覆することによっても突起を形成することができる。カーボンナノチューブは、アーク法やCVD法により生成することができる。
また、凝縮部14の空気流通面に形成された疎水性の皮膜を起点とすることもできる。疎水性の被膜としては、過冷却の状態の水蒸気を水滴を加速的に生成する能力を有するヨウ化銀の皮膜を用いることができる。ヨウ化銀の被膜は、突起の先端に設けることが望ましい。
凝縮部14と貯水部40との間には、凝縮部14を通過した空気を吸引するためのポンプ44が設けられている。容器10の開口部10aを開放した状態でポンプ44を作動させることで、大気を容器10内に導入でき、空気導入路42を開放した状態でポンプ44を作動させることで、大気を空気導入路42を介して凝縮部14に導入できる。また、ポンプ44は、制御部23により流量制御が行われる。夜間に雨天などの高湿度時には、できるだけ多くの大気を水滴生成装置内に導入する必要があるので、ポンプ44による空気流量を多くし、昼間などの低湿度時に吸湿部材12から水分を放出させる場合には、大気を水滴生成装置内に導入する必要がないので、ポンプ44による空気流量を少なくする。
また、貯水部40には、貯水部40に貯められた水を植物に供給するための水供給路45が設けられている。水供給路45には、貯水部40の水を送出するためのポンプ46と流路を開閉するための開閉弁46が設けられている。貯水部40に貯られた水は、植物の根元に供給され、植物の育成に活用される。
以上説明した本実施形態によれば、容器10の上面に透明な上側部材41を設けることで、太陽光により効率よく吸湿部材12を温度上昇させることができ、吸湿部材12から水分を効率よく放出させることができる。また、吸湿部材12にカーボン粒子を付着させることで、太陽光を効率よく吸収させることができる。さらに、上側部材41に断熱層を設け、容器10を断熱材により構成することで、外気温の影響をできるだけ小さくすることができ、太陽光により効率よく吸湿部材12を温度上昇させることができる。
また、外部から高湿度の空気を凝縮部14に直接導入する空気導入路42を設けることで、高湿度の空気から直接水滴を生成することができる。
(第13実施形態)
次に、本発明の第13実施形態について説明する。本実施形態の水滴生成装置は、生成した水滴を飲料水として用いるように構成されている。以下、上記第12実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図23は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図23に示すように、本実施形態では、容器10の開口部10aに大気中の不純物を除去するために微細フィルタ48と臭い成分除去フィルタ49が設けられている。微細フィルタ48は、空気中の塵埃を吸着し、臭い成分除去フィルタ49は不快な臭いを発生させる成分を吸着するように構成されている。貯水部40には、貯水部40内でオゾンを発生させることができるオゾン発生装置50が設けられている。貯水部40の内壁面には抗菌処理が施されている。水供給路45には、水供給路45内でオゾンを発生させることができるオゾン発生装置51と、水供給路45内に紫外線を照射させることができるUV発生装置52が設けられている。これらの装置50、51、52により、貯水部40に貯められた水を殺菌することができる。さらに、貯水部40に貯められた水に不純物が混入することもあり得るので、水に含まれる微細な異物を除去するための微細フィルタ53が水供給路45に設けられている。これにより、飲用に適した浄化された水を供給することができる。微細フィルタ48、臭い成分除去フィルタ49、微細フィルタ53は、必要に応じて交換することが望ましい。
さらに、本実施形態では、容器10の上面に降り注いだ雨水を貯水部40に導入するための第1雨水導入路54、地中に浸透した雨水を貯水部40に導入するための第2雨水導入路55が設けられている。第1雨水導入路54は、容器10の上面に降り注いだ雨水を貯水部40に運搬するためのパイプ状部材として構成できる。この場合、傾斜配置された容器10の下方側に、容器10の上面に降り注いだ雨水を捕集するための樋を設けることが望ましい。第2雨水導入路55は、紐状の親水性材料(例えば麻や綿のような植物繊維)を用いることができる。これにより、雨水を効率よく捕集して貯水部40に水を蓄えることができる。
(第14実施形態)
次に、本発明の第14実施形態について説明する。
図24は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図24に示すように、本実施形態の容器10は、扁平状の直方体であり、上面と下面の面積が大きくなっている。容器10の下面は、開口部10aとして構成されている。
本実施形態では、容器10内における開口部10a付近に吸湿部材12と吸水部材56が設けられている。湿部材12と吸水部材56は、容器10の上下面と平行に配置されている。図24に示す例では、吸湿部材12と吸水部材56は積層されている。本実施形態では、吸水部材56が吸湿部材12の下方に設けられている。吸湿部材12は、上記各実施形態と同様であり、空気中の水蒸気を吸収するように構成されている。吸水部材56は、雨天や曇りなどの高湿度の場合に、空気中に存在する霧状の微細な水滴を吸収するように構成されている。吸水部材56は、温度変化により空気中の水滴を吸収または放出する特性を有しており、所定温度(例えば30℃)より低温で水分を吸収し、所定温度(例えば30℃)より高温で水分を放出することができる。
吸水部材56としては、特開平7−224119号公報で開示されているN―イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよびダイアセトンアクリル酸アミドを重合させたものを用いることができる。この材料は吸水能力が大きく、約100倍の水を吸収して体積膨張する。さらに、吸水部材56として、特開平10−191777号公報で開示されているノニオン性の水溶性エチレン性不飽和単量体とアニオン性の水溶性エチレン性不飽和単量体とを架橋したものを用いることができる。
吸水部材56は、コージェライトのモノリス担体の表面に担持させて用いることができ、あるいは吸水部材56自体をモノリス状に成形して用いてもよい。また、吸水部材56の表面に、上記第12実施形態で説明した、過冷却された水蒸気を液化するための起点を設けることが望ましい。
吸水部材56から水分を放出する際に必要なエネルギーは約10cal/gであり、第1吸水部材56から水分を放出する際に必要なエネルギーは約530cal/gであるため、温度上昇に伴って吸水部材56から先に水分が放出される。その後、さらに温度上昇することで、吸湿部材12から水分が放出される。吸湿部材12は、上面側から水分を放出する。吸湿部材12から放出される水分は、水蒸気として凝縮部14に供給され、凝縮部14で水滴化する。本実施形態の凝縮部14は、上記第12、13実施形態と同様、大気と吸湿部材12から放出された水蒸気とを熱交換可能な熱交換器として構成されている。吸水部材56から放出された水分は、水滴として容器10の下方に落下する。
吸水部材56の下方には、吸水部材56から放出された水滴を捕集するための網状の水滴捕集部材57と、水滴捕集部材57で捕集された水を貯水部40に供給するための水導入路58が設けられている。水導入路58には、容器10の上面に降り注いだ雨水を貯水部40に導入するための第1雨水導入路54が合流している。水滴捕集部材57は、空気中の微細な水滴を通過させることができ、かつ、吸水部材56から放出された水滴を捕集できる大きさの網目を有している。吸水部材56から放出された水滴は水滴捕集部材57で捕集され、水導入路58により貯水部40に送られる。
また、容器10内における吸湿部材12、吸水部材56の空気流れ下流側には、開閉弁32と送風ファン34が設けられている。吸湿部材12、吸水部材56に水分を吸収させる場合には、開閉弁32を開放した状態で送風ファン34を作動させ、吸湿部材12、吸水部材56から水分を放出させる場合には、開閉弁32を閉鎖した状態で送風ファン34の作動を停止させる。貯水部40には空気抜き弁59が設けられている。開閉弁32を閉鎖した状態では空気抜き弁59が開放状態となり、水蒸気とともに貯水部40に導入された空気は空気抜き弁59を介して外部に放出される。
以上の構成により、空気中の水蒸気を吸湿部材12により吸収でき、より高湿度の場合は空気中の水滴を吸水部材56により吸収でき、幅広い湿度領域で空気中に含まれる水分から効率よく水滴を生成することができる。また、容器10の下部全体を開口部10aとすることで、開口部10aの開口面積を大きくすることができ、多量の大気を吸湿部材12と吸水部材56に通過させることができ、空気中の水蒸気や水滴を吸湿部材12と吸水部材56に効率よく吸収させることができる。
(第15実施形態)
次に、本発明の第15実施形態について説明する。
図25は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図25に示すように、本実施形態の上側部材41は、下側の板状部材41bに代えて、板状の太陽電池22が設けられている。太陽電池22には、板状部材41aを透過した太陽光が到達する。太陽電池22は高湿度環境下で用られるので、湿気から保護可能な構成となっていることが望ましい。太陽電池22にて発電した電力は2次電池21に充電され、夜間などに送風ファン34を稼働する電力として用いることができる。
太陽電池22は、単結晶Si太陽電池、多結晶Si太陽電池、アモルファスSi太陽電池、GaAs太陽電池などを用いることができる。さらに、ガラス上に設けられたTiO2太陽電池やフィルム状太陽電池を用いることができる。ガラス上にTiO2太陽電池は、ガラスの表面にITO(透明導電性膜)を設置し、TiO2の粉末を塗布して焼成した後、色素を塗布することで得られる。また、フィルム状太陽電池は、例えばPETフィルムの上にITOを設置し、その表面に酸化亜鉛の鍍金を施した後、エオシンYの有機色素を表面に塗布することで得られる。
図26は、容器10の断面構成を示している。太陽電池22は太陽エネルギーの数%〜25%程度を電力に変換するが、残余のエネルギーは熱として放出される。このため、本実施形態では、太陽電池22から放出される熱エネルギーを吸湿部材12と吸水部材56に伝えるための伝熱部材58、59が設けられている。第1伝熱部材58は、太陽電池12の下面と、吸湿部材12および吸水部材56の側面を熱的に接続するように設けられている。第2伝熱部材59は、吸湿部材12と吸水部材56の間に設けられ、第1伝熱部材58の熱を吸湿部材12および吸水部材56の面全体に伝えるように構成されている。なお、第2伝熱部材59は、吸湿部材12および吸水部材56の空気流通を妨げないように網状に構成されている。
以上の構成により、太陽電池22により太陽エネルギーを電気エネルギーに変換すると同時に、残余の太陽エネルギーを熱エネルギーとして吸湿部材12および吸水部材56の昇温に用いることができる。
(第16実施形態)
次に、本発明の第16実施形態について説明する。
図27は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図27に示すように、本実施形態の水滴生成装置は、家屋の屋根の上に配置されている。家屋の屋根付近は地表面より高い位置にあり、地表面付近に比較して湿度が低いと考えられる。このため、容器10の開口部10aを地表面付近に設け、地表面付近の比較的湿度が高い大気を容器10内に導入できるようにしている。
容器10内は太陽エネルギーにより温度が高くなっており、凝縮部14で凝縮された水滴も温度が高くなっていると考えられる。このため、本実施形態では、凝縮部14で凝縮された水滴を温水のまま貯蔵する温水貯蔵部60が設けられている。温水貯蔵部60は断熱部材から構成されており、凝縮部14にて凝縮された水滴を保温できるようになっている。凝縮部14の下方には三方弁61が設けられており、凝縮部14で凝縮した水滴を温水貯蔵部60または貯水部40に振り分けることができる。温水貯蔵部60に貯蔵された温水は、シャワーや風呂などに利用することができる。貯水部40に貯蔵された水は、オゾン発生装置51とUV発生装置52により殺菌され、微細フィルタ53により水に含まれる微細な異物が除去され、生活用水や飲料水として用いることができる。
(第17実施形態)
次に、本発明の第17実施形態について説明する。本実施形態は、水滴生成装置を用いて室内の除湿を行うように構成されている。
図28は、本実施形態の水滴生成装置の概念図である。図28に示すように、本実施形態の容器10は、容器10内に大気を取り入れるための第1開口部10aに加え、容器10内に家屋の室内空気を取り入れるための第3開口部10dを備えている。第1開口部10aと第3開口部10dは、第1流路切替弁62により切り替えられる。第1流路切替弁62による開口部の10a、10dの切り替えは、制御部23により行われる。
本実施形態では、吸湿部材12により室内の空気に含まれる水蒸気を吸収するので、吸湿部材12として相対湿度30〜40%程度で水蒸気を放出・吸収する材料を用いることが望ましい。また、吸湿部材12として、相対湿度30〜40%程度で水蒸気を放出・吸収する材料と、より高湿度領域で吸収する材料とを混合して用いてもよい。
また、本実施形態の容器10は、容器10内の空気を外部に排出するための第2開口部10cに加え、容器10内の空気を家屋の室内に排出するための第4開口部10dを備えている。第1開口部10aと第3開口部10eは、第2流路切替弁64により切り替えられる。第2流路切替弁62による開口部の10b、10eの切り替えは、制御部23により行われる。
図28に示すように、容器10の上面側には、容器10の上面を覆うことができる遮蔽部材65が設けられている。遮蔽部材65は遮光性を有するシート状部材として構成されている。容器10の上面の両端には、遮蔽部材65を巻き取ることができる一対のロール66、67が設けられている。これらのロール66、67により、必要に応じて、遮蔽部材64が存在する遮蔽状態と、遮蔽部材64が存在しない非遮蔽状態とを切り替えることができる。ロール66、67は、図示しないモータで回転駆動される。
本実施形態の水滴生成装置は、以下のように作動する。
昼間で室内の湿度が所定値以上の場合には、第1流路切替弁62を第3開口部10d側に切り替え、第2流路切替弁64を第4開口部10e側に切り替える。これにより、室内の空気が容器10内に供給される。このとき、遮蔽部材65を遮蔽状態にして日射を遮り、吸湿部材12、吸水部材56の温度を低くする。これにより、室内の空気中に含まれる水分が吸湿部材12や吸水部材56に吸収され、除湿された空気が室内に供給される。室内の湿度が所定値未満となった場合には、遮蔽部材64を開放状態とし、吸湿部材12に太陽光が照射されるようにして、吸湿部材12が吸収した水分を放出させる。このとき、第2流路切替弁64を第2開口部10c側に切り替え、放出された水分が室内に循環しないようにすればよい。
また、夜間で室内の湿度が所定値以上の場合には、流路切替弁62を第3開口部10d側に切り替え、第2流路切替弁64を第4開口部10e側に切り替える。これにより、室内の空気が容器10内に供給される。遮蔽部材65は、遮蔽状態あるいは開放状態のいずれでもよい。これにより、室内の空気中に含まれる水分が吸湿部材12、吸水部材56に吸収され、室内の除湿を行うことができる。室内の湿度が所定値未満となった場合には、流路切替弁62を第1開口部10a側に切り替え、第2流路切替弁64を第3開口部10c側に切り替え、大気を容器10内に供給する。これにより、大気中の水分を吸湿部材12と吸水部材56により吸収することができる。
以上の構成により、水滴生成装置を用いて室内の除湿を行うことができる。本実施形態の構成によれば、太陽エネルギーを用いて室内の湿度調整を行うので、環境負荷の小さい空調を行うことができる。
(第18実施形態)
次に、本発明の第18実施形態について説明する。本実施形態は、水滴生成装置にて生成した水を緑化装置に適用している。緑化装置は、屋上や駐車場などを緑化するために用いられる。
図29は、緑化装置67の概念図である。緑化装置67は、第1給水シート67a、防根シート67b、第2給水シート67cが下方から順に積層されて構成されている。第2吸水シート67cの上部には、芝生などの植物67dが配置されている。第1給水シート67aは吸水材料から構成されており、水滴生成装置の貯水部40に貯められた水が水供給路45により供給される。防根シート67bは、植物67dの根が下方に移行することを防止し、部分的な植え替え作業性を向上させている。第2吸水シート67cは吸水材料から構成されており、植物67dの直下で水分を保持して植栽初期段階の根付きを促進させている。植物67dの表面に上記第2実施形態で説明した十和田湖軽石を設置することで、植物67d表面からの水分の蒸散を防ぐことができる。第1吸水シート67aと第2吸水シート67cを構成する吸水材料は、不織布をベースとして、上記第14実施形態で説明した吸水部材56と同様の材料を用いて構成することができる。
水滴生成装置は、太陽光が強い昼間に多くの水分を生成することができるので、緑化装置67に水分を適切に供給することができる。さらに、第1給水シート67aなど水分センサ(図示せず)を設置し、水分センサで緑化装置67の水分量を検出することで、緑化装置67への水分供給を適切に行うことができる。
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、土壌S中または地上に凝縮部14を設置したが、これに限らず、吸水部材12から放出された水蒸気が露点以下になる場所であればよい。例えば水中では、地中と同様、温度が外気温の変化に関わらず安定しているので、凝縮部14を水中に設置することができる。水中は、淡水中でも海水中でもよい。例えば海洋上を航海する船の場合には、飲料水を得ることが困難であるが、凝縮部14を海水中に配置した水滴生成装置を用いることで、大気中の水蒸気から飲料水を安定的に得ることができる。
また、上記第3実施形態などでは、太陽電池22にて発電した電力を用いて開閉弁11の駆動部11bを駆動させるように構成したが、これに限らず、例えば家庭用電源などを利用できる場所で水滴生成装置を用いる場合には、家庭用電源を用いて駆動部11bを駆動させるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、水滴生成装置にて生成された水分を、植物の育成、生活用水、飲用水などに用いたが、これらに限らず、他の用途に用いてもよい。例えば、水滴生成装置で生成された水分は蒸留水なので、この蒸留水を基に、UV殺菌、フィルタによる異物の除去などを行い、半導体製造工程に必要な超純水を供給することができる。
また、上記第14実施形態などでは、吸湿部材12の下側に吸水部材56が配置されるようにこれらの部材12、56を積層したが、吸湿部材12が吸水部材56の下方に設けられていてもよい。さらに、吸水部材56を凝縮部14における空気流通面に設けてもよい。
また、吸湿部材12を構成する材料と吸水部材56を構成する材料を混合して用いてもよい。この場合には、吸湿部材12と吸水部材56の混合材料を同一のモノリスに担持させる、あるいは混合材料をモノリス状に成形して用いることができる。吸湿部材12を構成する材料と吸水部材56を構成する材料に加えて、水蒸気の過冷却を防止できるヨウ化銀を混合してもよい。
また、上記各実施形態では、吸水部材12としてメソポーラスシリカを用いたが、これに限らず、吸水部材12として以下の(1)〜(15)に示す材料を用いることができる。
(1)セピオライト
吸水部材12として、セピオライトを用いることができる。セピオライトの化学式は、Mg8Si12O30(OH2)4(OH)4・6〜8H2Oであり、含水マグネシウム珪酸塩を主成分とする粘土鉱物である。セピオライトの一般的な組成は、珪酸(SiO2)52.5%、酸化マグネシウム(MgO)22.8%、酸化アルミニウム(Al2O3)1.7%、酸化鉄(Fe2O3)0.8%、酸化カルシウム(CaO)0.8%、酸化カリウム(K2O)0.4%、酸化ナトリウム(Na2O)0.3%、H2O-(110℃以下で飛散)11.0%、H2O+(110℃以上で飛散)10.5%で示される。
セピオライト110の構造を図30に示す。図30に示すように、セピオライト110は結晶格子の内部に多数の細孔111を有する繊維状に形成され、繊維軸方向に延びる細孔111内で水分を吸収することができる。また、セピオライトは、各繊維間の空隙に形成される細孔においても水分を吸収することができる。結晶格子内部の細孔111の径は10Å程度であり、主に水蒸気を吸収することができ、各繊維間の空隙に形成される細孔の開口径は200Å程度であり、主に水滴を吸収することができる。
図31は、セピオライトの水分の吸収特性を示しており、比較のために上記第1実施形態で説明したメソポーラスシリカとシリカゲルを記載している。図31に示すように、セピオライトは、相対湿度が60%以上で水蒸気を多く吸収する点で上記第1実施形態のメソーポーラスシリカと異なっており、特に相対湿度が80%以上になると水分吸収量が急激に増加する特性を有している。このため、高湿度環境下で好適に用いることができる。セピオライトの結晶構造中に吸収された水蒸気(ガス状)は、結晶構造中に水滴として凝集捕集され、相対湿度100%でも大きな水分吸収量を示す。この場合の水分の捕集は、水蒸気ではなく水滴の形状で、粒子間の空隙や繊維間の空隙にて捕集することができる。
セピオライトの水蒸気の吸収特性は、産地によって若干異なるが、比較的大きな吸収特性を示す。セピオライトの産地は、スペイン、トルコ、アメリカ、中国などであり、日本でも少量が埋蔵されている。
トルコ産のセピオライトは、珪酸(SiO2)57.0%、酸化マグネシウム(MgO)23.0%、酸化アルミニウム(Al2O3)1.0%、酸化鉄(Fe2O3)0.5%、酸化カルシウム(CaO)3.0%、酸化カリウム(K2O)0.3%、酸化ナトリウム(Na2O)0.2%、焼成残分14.5%の合計99.5%で、その他に水15.5%(外割合)を含有している。嵩比重は、0.35g/cc、比表面積は320m2/g(BET法による計測)、細孔分布は0.5nm〜数μmであり、数nmの細孔径が多数を占める。トルコ産セピオライトでは、1gあたり0.3〜約1gの水蒸気(ガス状)を吸収でき、約0.5〜5gの水滴を吸収することができる。
アメリカ産のセピオライトは、珪酸(SiO2)50.8%、酸化マグネシウム(MgO)16.8%、酸化アルミニウム(Al2O3)1.8%、酸化鉄(Fe2O3)1.8%、酸化カルシウム(CaO)10.0%、酸化カリウム(K2O)0.4%、酸化ナトリウム(Na2O)0.4%、焼成残分17.5%、以上の合計99.5%で、その他に水分9.4%(外割合)を含有している。また、嵩比重0.75g/cc、比表面積180m2/g(BET法による計測)、細孔分布0.5nm〜数μmであり、数nmの細孔径が多数を占める。アメリカ産セピオライトでは、1gあたり0.2〜約0.8gの水蒸気を吸収でき、約0.4〜3gの水滴を吸収できる。
中国産のセピオライトは、珪酸(SiO2)49.0%、酸化マグネシウム(MgO)16.7%、酸化アルミニウム(Al2O3)0.7%、酸化鉄(Fe2O3)1.0%、酸化カルシウム(CaO)13.2%、酸化カリウム(K2O)0.1%、酸化ナトリウム(Na2O)0.0%、焼成残分19.0%の合計99.7%で、その他に水分5.5%(外割合)を含有している。また、嵩比重0.20g/cc、比表面積100m2/g(BET法による計測)、細孔分布0.5nm〜数μmであり、数nmの細孔径が多数を占める。中国産セピオライトでは、1gあたり0.15〜約0.6gの水蒸気を吸収でき、約0.3〜2g水滴を吸収できる。
ここで、セピオライトで吸収した水分の放出について説明する。セピオライトに吸収された水蒸気は、主に結晶格子内の表面で凝集された水滴として保持されているのが一般的である。セピオライトに吸収された水蒸気(水滴)を放出するためには、水滴を気化させるエネルギーが必要であり、水分1gあたり約530calの熱量を与えると水蒸気として放出される。また、セピオライトに吸収された水滴は、主に繊維間や粒子間で保持されており、水分1gあたり約530calより低い熱量(水1gあたり数〜50cal程度)で水滴を放出することができる。なお、吸水部材12の周囲の湿度低下によっても水分が放出される。
セピオライトに吸収された水蒸気(水滴)を放出するためのエネルギーは、太陽エネルギーから得ることができる。セピオライトに吸収された水分は、太陽エネルギー(熱エネルギー)に比例して放出されるので、太陽エネルギーが多い場合には、多量の水蒸気(水滴)を放出することができる。例えば赤道付近で太陽光が強い場合は、多量の水蒸気を放出でき、多量の水滴を作ることができる。
(2)アタパルジャイト
吸水部材12として、アタパルジャイト(別名:パリゴスカイト)を用いることができる。アタパルジャイトの化学式は、Mg8Al2Si8O20(OH2)・8H2Oで示される。アタパルジャイトの一般的な組成は、珪酸(SiO2)53.64%、酸化チタン(TiO2)0.60%、酸化マグネシウム(MgO)9.05%、酸化アルミニウム(Al2O3)8.76%、酸化鉄(Fe2O3)3.36%、酸化カルシウム(CaO)2.02%、酸化カリウム(K2O)0.75%、酸化ナトリウム(Na2O)0.83%、酸化鉄(FeO)0.23%、燐酸(P2O5)0.79%、H2O-(110℃以下で飛散)9.12%、H2O+(110℃以上で飛散)10.89%で示される。
アタパルジャイトは、上述のセピオライトと同様、高湿度環境下における水分吸収性に優れている。アタパルジャイトの水分吸収領域は、相対湿度約60%以上で水分吸収量が増大し、約80%以上で更に大きな水分吸収量を示す。湿度100%でも大きな水分吸収量を示す。アタパルジャイトでは、1gあたり0.25〜約1gの水蒸気を吸収でき、1gあたり約0.5〜5gの水滴をできた。
(3)イモゴライト
吸水部材12として、イモゴライトを用いることができる。イモゴライトの化学式は、SiO2・Al2O3・2H2Oであり、ナノチューブ状アルミニウムケイ酸塩として構成されている。イモゴライトは鉱物ではなく、以下のように合成により得られる。オルト珪酸ナトリウム(Na4SiO4)と塩化アルミニウム6水和物を混合し、NaOH水溶液を添加し、pH調整した後、塩酸を添加して、約100℃で約2日間加熱することで、イモゴライトを合成することができる。
イモゴライトは、上述のセピオライトと同様、高湿度環境下における水分吸収性に優れている。イモゴライトは、相対湿度約90%以上で水蒸気を吸収し、相対湿度約90%以下で水蒸気を放出する能力を有し、水蒸気の吸収・放出を安定して行うことができる。イモゴライトは、多量の水蒸気を吸収でき、重量あたり2〜2.5倍の吸水量が得られる。合成後常温乾燥した結晶性のイモゴライトは、相対湿度約40%以上で吸湿性能を示し、1gあたり最大約0.8gの吸湿性能を示す。合成後凍結乾燥した結晶性のイモゴライトは、相対湿度約80%以上で大きな吸湿性能を示し、1gあたり最大約1gの吸湿性能を示す。
(4)鹿沼土
吸水部材12として、鹿沼土を用いることができる。鹿沼土は、農業や園芸に使われる栃木県鹿沼市産出の軽石の総称である。鹿沼土の水分吸収・放出特性は、上述のセピオライトと同様である。鹿沼土は、相対湿度約60%以上で水分吸収量が増大し、約80%以上で更に大きな水分吸収量を示し、相対湿度100%でも大きな水分吸収量を示す。鹿沼土は、1gあたり約0.1〜0.2gの水蒸気を吸収でき、1gあたり約0.3〜0.6gの水滴を吸収できる。
(5)モンモリロナイト
吸水部材12として、モンモリロナイトを用いることができる。ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトは、層状ケイ酸塩鉱物の1種であるスメクタイトに分類される粘土鉱物である。結晶構造はケイ酸四面体層とアルミナ八面体層とケイ酸四面体層の3層が積み重なって構成されている。モンモリロナイトの水分吸収・放出特性は、上述のセピオライトと同様である。モンモリロナイトは、相対湿度約60%以上で水分吸収量が増大し、相対湿度約80%以上で更に大きな水分吸収量を示し、相対湿度100%でも大きな水分吸収量を示す。モンモリロナイトは、1gあたり約0.1〜0.2gの水蒸気を吸収でき、1gあたり約0.3〜0.5gの水滴を吸収できる。
(6)バーミキュライト
吸水部材12として、バーミキュライトを用いることができる。バーミキュライトの化学式は、(Mg,Fe,Al)3(Al,Si)4O10(OH)2・4H2Oであり、原石を粉砕し、加熱炉で急速に加熱して膨張させることで得られる。バーミキュライトは、相対湿度約60%以上で水分吸収量が増大し、約80%以上で更に大きな水分吸収量を示し、湿度100%でも大きな水分吸収量を示す。バーミキュライトは、1gあたり0.05〜約0.1gの水蒸気を吸収でき、1gあたり約0.1〜0.3gの水滴を吸収できる。
(7)十和田湖軽石
吸水部材12として、十和田湖軽石を用いることができる。十和田湖軽石は、十和田湖で産出する軽石であり、組成は、珪酸(SiO2)70%、酸化アルミニウム(Al2O2)15.1%、酸化カルシウム(CaO)3.7%、酸化ナトリウム(Na2O)3.0%、酸化カリウム(K2O)2.1%である。十和田湖軽石の水分吸収・放出特性は、上述のセピオライトと同様である。十和田湖軽石は、相対湿度約60%以上で水分吸収量が増大し、相対湿度約80%以上で更に大きな水分吸収量を示し、相対湿度100%でも大きな水分吸収量を示す。十和田湖軽石は、1gあたり約0.2〜0.7gの水蒸気を吸収でき、1gあたり約0.5〜1gの水滴を吸収できる。
(8)ゼオライト
吸水部材12として、ゼオライトを用いることができる。ゼオライトは、結晶中に微細孔を持つアルミノ珪酸塩の総称である。ゼオライトの水分吸収・放出特性は、上述のセピオライトと同様である。ゼオライトは、相対湿度約5〜10%以上で水分吸収量が増大し、相対湿度約80%以上で更に大きな水分吸収量を示し、相対湿度100%でも大きな吸収量を示す。ゼオライトは、1gあたり約0.3〜0.5gの水蒸気を吸収でき、1gあたり約0.4〜1gの水滴を吸収できる。
(9)アロフェン
吸水部材12として、アロフェンを用いることができる。アロフェンは、中空球状のアルミニウム珪酸塩として構成されており、SiO2/Al2O3が1〜2であり、Si/Alが0.5〜1である。アロフェンの水分吸収・放出特性は、上述のセピオライトと同様である。アロフェンは、相対湿度約60%以上で水分吸収量が増加し、やや大きな吸収量を示す。アロフェンは、1gあたり約0.2〜0.3gの水蒸気を吸収することができる。
(10)有機系吸湿材料
吸水部材12として、特開2001−219063号公報で開示された有機系吸湿材料を用いることができる。この有機系吸湿剤は、ポリオール中で重合形成された吸水樹脂や吸水ゲルが分散された吸水樹脂分散体から構成される。有機系吸湿剤は、セラミックモノリスや不織布の繊維に付着させて用いることができ、あるいは他のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて、ポリウレタン樹脂からなる形状にして用いることもできる。この有機系吸湿材料は、相対湿度が約40〜100%の領域において、1gあたり約1gの水蒸気を吸収することができる。
(11)多孔質粉体
吸水部材12として、特開2006−272295号公報に開示された多孔質粉体を用いることができる。この多孔質粉体は、汚泥焼却灰と酸水溶液とを反応させた後、中和処理することで得られる。この材料では、1gあたり約0.5gの水蒸気を吸収することができる。
(12)炭酸固化体
吸水部材12として、炭酸固化体を用いることができる。炭酸固化体として、特開2006−27999号公報に開示された、消石灰10〜50重量%、無機系廃棄物粉末30〜70重量%と、天然に産する高比表面積を有する無機粉末(鹿沼土、天然ゼオライト、珪藻土の焼成品、珪藻土の乾燥品など)、あるいは水酸化アルミニウムを主成分とする廃棄物を100〜500℃で仮焼した高比表面積を有する無機粉末10〜30重量%との、混合粉末からなる含水生形体を炭酸固化した材料を用いることができる。この炭酸固化体では、1gあたり約0.1g〜0.4gの水蒸気を吸収することができる。
また、炭酸固化体として、特開2006−27998号公報に開示された、消石灰10〜70重量%と、粘土瓦やレンガなどの安価な原料であるせっ器粘土30〜90重量%とを混合粉末とした含水生形体を炭酸固化した材料も用いることでもできる。この炭酸固化体では、1gあたり約0.1g〜0.3gの水蒸気を吸収することができる。
(13)水酸化アルミニウム系材料
吸水部材12として、水酸化アルミニウム系材料を用いることができる。水酸化アルミニウム系材料は、特開平11−11939号公報に開示された水酸化アルミニウムの粉末を減圧化(0.9気圧以下)で300〜800℃で熱処理する方法で得ることができる。
この方法で得られた水酸化アルミニウム系材料では、1gあたり約0.1g〜0.3gの水蒸気を吸収することができる。
また、特開2004−261702号公報に記載された水酸化アルミニウムの熱処理によって多孔質化した水酸化アルミニウム系材料も用いることができる。この多孔質化した水酸化アルミニウム系材料は、相対湿度が30〜40%の領域で用いることができ、1gあたり約0.1g〜0.2gの水蒸気を吸収することができる。
(14)アロフェンまたはイモゴライト含有組成物を利用した調湿材料
吸水部材12として、特開2004−115278号公報に開示されたアロフェンまたはイモゴライト含有組成物を利用した調湿材料を用いることができる。この調湿材料は、アロフェンまたはイモゴライト含有組成物と水酸化カルシウム系の硬化剤を加えて成形した後、ニ酸化炭素含有ガスで炭化処理することで得ることできる。この調湿材料は、1gあたり約0.1〜0.4gの水蒸気を吸収することができる。
(15)多孔質材料の組成物からなる調湿材料
吸水部材12として、特開平9−294931号公報に開示された多孔質材料の組成物からなる調湿材料(例えばヘキサデシルトリメチルアンモニウム系材料)を用いることができる。この調湿材料は、界面活性剤あるいは長鎖アルキル基を有する有機物の周囲を二酸化珪素あるいは繊維金属酸化物で包囲した後に重合させた後、焼成または抽出して有機物を除去することにより得られる。この調湿材料は、細孔直径の平均値が2〜6nmで40〜70%の相対湿度の範囲で水蒸気を吸収・放出する機能を有し、1gあたり約0.1〜0.4gの水蒸気を吸収することができる。