JP4482705B2 - 眼内挿入用レンズの挿入器具 - Google Patents

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Description

本発明は、白内障治療用、近視、遠視および乱視治療用等として用いられる眼内挿入用レンズを眼内に挿入するための挿入器具に関する。
白内障の治療法として、濁った眼内水晶体を取り除き、その代わりに支持部と光学部とからなる人工のレンズ(intraocular lens:以下、IOLと称す)を水晶体の存在していた位置に挿入する手術方法が主流となっている。特に近年においては、この手術方法を実施するにあたり、軟質のIOLを折りたたむなど変形させて、数mm以下の切開創から眼内に挿入する方法が多く用いられている。この方法によれば、切開創が小さくて済み、また挿入後のレンズは変形前の形状に戻るためレンズの機能は失われず、さらに手術後の乱視等の不具合も解決できる。
折りたたみ可能なレンズの素材としては、シリコーンエラストマー、軟質のアクリル酸系樹脂等が主として使用されている。そして、これらを光学部のみに使用し、支持部に他の物質を用いた3ピースタイプのIOLや、光学部と支持部とを同質の素材で形成した1ピースタイプのIOLが知られている。
また、上記IOLの挿入器具としては、一般的に、挿入器具本体の先端側に設けられた先細り筒形状のカートリッジと、該カートリッジの先端に設けられたレンズ射出部としてのノズルと、挿入器具本体に設けられたIOL設置部と、該設置部に設置されたIOLをカートリッジとノズルとを通して眼内に押し出す押出し軸とで構成される(特許文献1参照)。カートリッジおよびノズルは、硬質又は半硬質の合成樹脂或いは金属で形成されている。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂、或いは鉄、ステンレススチール、アルミニウム、チタン等の金属が一般的である。
特開平5−103803号公報 特表平10−512172号公報 特表2001−504740号公報 特表2000−514333号公報 特開平6−304243号公報
しかしながら、IOLが挿入器具のカートリッジおよびノズル内を通過する際に、該カートリッジおよびノズルの内面とIOLとの間の摩擦抵抗が生じる。この場合、押出し軸によってIOLに対してある程度強い押し出し力を加えなければならないが、押し出し力が強すぎると、突発的なIOLの射出やIOLの破損又は詰りなどの不都合が考えられる。したがって、このような不都合を避けるために、押し出し力に対して微妙な調整を必要とし、眼内へのIOLの挿入操作に熟練を必要としている。
これを解決するために、カートリッジやノズルの内面に、プラズマ処理や化学反応によって種々の高分子材料を強固な結合力でコーティングする手法が用いられているが(上記特許文献2〜5参照)、IOLの挿入をスムーズに行うための十分な滑り性が得られるには至っていない。
本発明は、複雑な処理工程を必要とすることなく眼内挿入用レンズをスムーズに眼内に押し出すことができるようにした挿入器具を提供することを目的の1つとしている。
上記の目的を達成するために、1つの観点としての本発明の挿入器具は、レンズを保持するレンズ設置部と、該レンズ設置部にて保持されていた眼内挿入用レンズが眼内に挿入される際に内部を移動するレンズ移動部を有する。そして、該レンズ移動部は、合成樹脂に滑剤および界面活性剤のうち少なくとも一方を分散混入した材料により形成され、さらに該レンズ移動部の内面には、乾燥状態の水溶性高分子層が設けられている。
この水溶性高分子層は、レンズ移動部の内面からの滑剤および界面活性剤のうち少なくとも一方の、ブルームおよびブリードのうち少なくとも一方を抑制する作用を有し、レンズの挿入時には粘弾性物質又は生理食塩水に溶解してレンズ移動部から剥離する。
また、水溶性高分子は、多糖類であってもよく、この場合、該多糖類として、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸ナトリウムのうち少なくとも一方を用いることができる。
また、上記滑剤および界面活性剤のうち少なくとも一方として、グリセリンモノステアレートおよびグリセリンモノパルミネートのうち少なくとも一方を用いることができる。
また、上記水溶性高分子層は、レンズ移動部の内面へのプラズマ処理や化学的結合によって該内面に強固に結合したものではなく、レンズ移動部のディッピング、スプレー、刷毛塗り等により該内面に対して、弱い化学的結合による又は化学的結合によらないコーティングによって付加され、保持されるものとしてもよい。
本発明によれば、レンズ移動部を滑剤や界面活性剤を混入した合成樹脂により形成することにより、それらが混入されていない場合に比べて良好なレンズの滑り性を得ることができる。但し、実験結果によれば、該レンズ移動部の内面において、過度に滑剤や界面活性剤が経時的にブルーム(粉体が析出すること)したりブリード(液体が滲出すること)したりすると、却ってレンズの滑り性が悪化することが分かった。このため、レンズ移動部の内面に水溶性高分子の層(被膜)を設けることによって、該挿入器具の使用時までの滑剤や界面活性剤のブルームやブリード(これらのうち少なくとも一方)を抑制する(減少させる又は防止する)ことができる。しかも、該挿入器具の使用時には、粘弾性物質や生理食塩水等の水溶液体により水溶性高分子被膜を溶解させ、該被膜をレンズ移動部内面から剥離させることで、合成樹脂に分散混入されている滑剤や界面活性剤との相乗効果により、優れたレンズの滑り性を得ることができる。
したがって、レンズを眼内に挿入する際に強い押し出し力やその微妙な調整を必要とせず、熟練した操作者でなくても最適な速度でのレンズの挿入を容易に行うことが可能な挿入器具を実現することができる。
さらに、従来のようにノズル先端やレンズを挿入器具に設置する設置部等からヒアルロン酸水溶液等の粘弾性物質を注入するのではなく、粘性の低い生理食塩水を注入することにより、比較的高価な粘弾性物質の使用量を減らしたり使用を不要としたりすることも可能である。
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。但し、その前に、本発明の基本的思想について説明する。
本発明では、挿入器具の先端(レンズ移動部の先端)やレンズ(IOL)の設置部に形成した注入穴等からヒアルロン酸水溶液等の粘弾性物質又は粘性の低い生理食塩水等の水性液体を注入することにより、予めレンズ移動部の内面に乾燥状態で形成されたヒアルロン酸被膜又はヒアルロン酸ナトリウム被膜といった水溶性高分子層(以下、単に被膜という)を溶解させて該内面から剥離させるとともにヒアルロン酸溶液とし、レンズを眼内へとスムーズに送り出すことができる挿入器具を提供する。本発明では、レンズ移動部内に形成された被膜の溶解が不十分であるために、被膜の破片が眼内に混入したりレンズに長期的に付着したりすることを防ぐため、被膜の剥離成分を積極的に水溶性化する。
ところで、レンズ移動部内面からの被膜の剥離性を良くするために、レンズ移動部を形成する材料を選択する必要がある。この点について、本発明者の検討により、滑剤および界面活性剤のうち少なくとも一方を分散させた合成樹脂をレンズ移動部の材料とすることが適切であることが判った。しかしながら、滑剤や界面活性剤がレンズ移動部の内部から内面に経時的に過度にブルームしたりブリードしたりすることにより、かえってレンズの滑り性が損なわれることも判った。
このため、本発明者は、レンズ移動部の材料とレンズ移動部の内面へのコーティング物質を検討した。その結果、被膜の剥離性が良く、かつヒアルロン酸等の粘弾性物質や特に生理食塩水などの水性液体に溶解し易い成分として、多糖類や合成高分子を含む水溶性高分子、好ましくはヒアルロン酸やヒアルロン酸ナトリウムの乾燥被膜を、滑剤および界面活性剤のうち少なくとも一方を分散混入した合成樹脂で形成したレンズ移動部の内面に配置することによって、レンズ移動部内面における経時的な滑剤や界面活性剤のブルームやブリードを抑えられることが判った。
単にブルームやブリードを防ぐためであれば、種々の被膜が考えられるが、本発明では、体内に注入されても害の少ないものであり、且つレンズの滑り性を向上させるのに適した物質として、粘弾性物質や水溶液体に瞬時に溶解する水溶性高分子が良いことが判った。
そして、レンズ挿入時にレンズ移動部の先端やレンズ設置部等から粘弾性物質や水溶液体を注入することにより、この被膜が容易に溶解し(すなわち、被膜の固形分が眼内へ挿入されることなく)、レンズ移動部内をレンズが通過するときには、滑剤や界面活性剤のブルームやブリードが少ない状態で、これら滑剤や界面活性剤と溶解した水溶性高分子との相乗効果によりレンズをきわめてスムーズに眼内へ送り出すことができる。このとき、高分子の濃度が溶解して約1重量%になるように、高分子被膜の厚みを設定するとよい。
また、従来技術に見られるように、レンズ移動部の内面に被膜を共有結合させたり、レンズ移動部の内面をプラズマ処理して被膜を結合させたりして、被膜が架橋又は重合によりレンズ移動部に強固に結合していると、該被膜の迅速な溶解が妨げられることになる。このため、本発明では、被膜が、溶解し易い状態でレンズ移動部に付加され、保持されるようにして、水溶液体の注入に対して瞬時に溶解するようにしている。この場合、被膜はレンズ移動部の内面に対して、従来のような強固な化学的結合ではない弱い化学的結合によって保持されていてもよいし、化学的結合によらずに保持されるようにしてもよい。
ここで、従来の眼内挿入用レンズの挿入器具におけるレンズ移動部の材料としては、合成樹脂、金属など硬質の素材が使用されている。例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン等の塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタアクリレート等のアクリル酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂のほか、熱硬化型樹脂、UV硬化型樹脂等の硬化性樹脂も使用可能である。また、鉄、ステンレススチール、錫、チタン等の金属の使用も可能である。
本発明では、レンズ移動部の内面に形成された水溶性高分子被膜が剥離し易い材質であることが重要である。このため、レンズ移動部は、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂で形成されることが好ましい。
次に、本発明の実施例について説明する。図1(a),(b)および図2(a),(b)には、本実施例の眼内挿入用レンズの挿入器具を示している。該挿入器具は、眼内挿入用レンズ(IOL)20を保持する、カートリッジ等とも称されるレンズ保持部材10と、該レンズ保持部材10に装着される挿入器具本体30とを有する。なお、図1(a),(b)は、挿入器具にレンズが設置された状態を示し、図2(a),(b)は該挿入器具に設置されたレンズが変形した状態であって、押し出し前の状態を示す。
挿入器具本体30は、透明又は半透明製のプラスチックなどで成型され、軸方向(レンズ挿入方向)の後端部31a側が太径に形成され、かつ先端(前端)部31b側が後端部31a側よりも小径に形成された中空の筒体31と、該筒体31に対して軸方向の前後に移動可能に設けられた押出軸33とを有する。押出軸33の後端部には、該押出軸33を軸方向前後方向に移動操作するための操作部34が設けられている。
レンズ保持部材10は、筒体31の先端部31aに装着される。レンズ保持部材10の後端側にはベース部11が設けられており、該ベース部11の内側の開口11c(図2(b)参照)内に形成されたレンズ設置部としての係合部11aには、レンズ20の光学部21の外周部下面が係合する。また、ベース部材11の上記開口11cには、レンズ押さえ枠14がはめ込まれる。このレンズ押さえ枠14には、レンズ20の光学部21の外周部上面が係合する係合部14aが形成されており、レンズ20は、両係合部11a,14aによって光学部21が挟まれることにより、両レンズ面が図1(a),図2(a)において上下を向いた状態で保持される。なお、このとき、レンズ20の光学部21は実質的に変形していない。
ここで、レンズ20の光学部21の前後には、ループ状の弾性部材からなる支持部22が設けられており、該支持部22は、図2(a)に示すように、ベース部材11とレンズ押さえ部材14における係合部11a,14aの前後に形成された傾斜角度θを有する面により挟まれて、上方に曲げ変形した状態で保持される。
また、レンズ押さえ枠14に形成された開口14c内には、軸方向に対して直交する方向(図1(a),図2(a)における上下方向)に移動可能なトップ部材12が取り付けられている。このトップ部材12は、上位置と下位置との2ポジションに移動可能であり、レンズ20が係合部11a,14aにより保持されている状態では、レンズ押さえ枠14の開口14cの側面に形成された凹部(図示せず)に対してトップ部材12の側面に形成された凸部との係合により該上位置に保持されている。なお、この凹凸関係は逆でもよい。
また、レンズ保持部材10の下側の開口は、該レンズ保持部材10に取り付けられた挿入部材35の後側部分(半円筒状に形成されている)35aにより覆われており、さらに該挿入部材35の前側部分には、先細り筒形状の挿入筒(ノズル)32が形成されている。
このように構成された挿入器具において、図1(a),図2(a)および図3に示すように、レンズ20が係合部11a,14aにより保持された状態では、該レンズ20は一点鎖線で表す押出軸33の移動ラインL上から外れた上方に位置する(以下、この状態をレンズ設置状態という)。このレンズ設置状態で、レンズ20を、レンズ保持部材10とともに保管することができる。なお、図3は図1におけるIII−III線での断面図である。
そして、上記第1の状態からトップ部材12がその上部12aを押されることで下動すると、該レンズ20(光学部21)はトップ部材12の底面12bによって下方に押され、図1(b)および図2(b)に示すとともに図3に二点鎖線で示すように、押出軸33の移動ラインL上に移動する(以下、この状態をレンズ変形状態という)。このとき、レンズ20の光学部21は、係合部11a,14bよりも下側であって挿入部材35の後側部分35aにより閉じられた空間内に、下側に向かって凸形状となるように変形する。このレンズ変形状態では、レンズ20の光学部21の下側レンズ面は、挿入部材35の後側部分35aの内面に沿って接触する。
そして、このレンズ変形状態において押出軸33を前方に移動させることで、該押出軸33の先端がレンズ20に係合してこれを前方に押す。これにより、該レンズ20は上記空間から挿入筒32の内側を通って小さく折りたたまれるように変形しながら、該挿入筒32の先端開口32aから眼内に押し出される。
このようなレンズ20の移動による変形をスムーズに行わせるために、レンズ移動部を構成する挿入部材35のうち、挿入筒32の内面は、図2(b)に示すようにテーパ形状を有する。具体的には、挿入筒32において係合部11a,14aに近い後端側部分のテーパは大きく、これに比して先端開口32aに近い先端側部分のテーパは小さく設定されている。
ここで、本実施例においては、挿入部材32内でのレンズ20の滑りを良くするため、挿入部材35を、滑剤又は界面活性剤を分散混入した合成樹脂により形成している。滑剤又は界面活性剤としては、通常の合成樹脂に添加するものであれば特に制限はないが、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノオレエート、グリセリントリステアレート、グリセリントリパルミテートなどのグリセリン脂肪酸エステルや、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ジステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミドや、スパンなどの脂肪酸ソルビトールや、ステアリルアルコール、ヘキサデカノールなどの脂肪酸アルコールや、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸およびその金属塩類が挙げられる。
例えば、グリセリンモノステアレートは本実施例において特に好適である。なお、これらの添加剤は2種以上を混合して使用することも可能である。例えば、グリセリンモノステアレートとグリセンモノパルミテートの混合物に、ステアリン酸アミドとパルミチン酸アミドの混合物を更に混合することにより、長期における安定した滑性効果が得られる。また、その他の酸化防止剤等の添加剤を混合することも可能である。
また、滑剤又は界面活性剤の樹脂に対する添加量はそれぞれ、合成樹脂100重量部に対し、0.01重量部〜10重量部が、滑剤又は界面活性剤のブルームやブリードによる不具合が顕著に生じず好適である。
さらに、本実施例では、図4(図1におけるIV−IV線での断面図)に示すように、挿入部材35の内面(挿入部材35の半円筒状の後側部分35aおよび挿入筒32の内面)に、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸ナトリウム等の水溶性高分子の乾燥した被膜(層)40が形成されている。これにより、レンズ保管状態若しくは眼内への挿入前(後述するように、挿入筒の先端開口32aからヒアルロン酸水溶液や生理食塩水等の水溶液体を注入する前)における滑剤又は界面活性剤の経時的なブルームやブリードを確実に抑えることができる。
使用可能な水溶性高分子としては、合成高分子では、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA)、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンイミン(PEI)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デキストラン硫酸ナトリウム、ヒドロキシエチル化澱粉(HEPES)、ポリ燐酸が挙げられる。
また、天然高分子のうち多糖類では、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム(HA)、アルギン酸ナトリウム、デキストラン、デキストリン、ヘパリン、キトサン、コンドロイチン硫酸ナトリウムが、多糖類以外ではポリペプチド、ポリ核酸などが挙げられる。
これらのうち、生体への適合性や得られる分子量の多様性などの観点から、多糖類を用いるのが好ましい。さらに、多糖類のうちでも眼科領域での使用実績を考慮すると、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸ナトリウムのうち少なくとも一方を用いるのが最も好ましい。なお、使用する水溶性高分子は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
また、本実施例では用いる水溶性高分子の分子量は、特に限定はしないが、被膜形成時の利便性から、多くとも溶液粘性が1万mPsとなるように溶液濃度にあわせて分子量を調節することが好ましい。実際上それ以上の溶液粘性を持っていると、粘性が高すぎて被膜形成操作が煩雑となる。
被膜形成方法としては、水溶液へのディッピングなどのバルク溶液に挿入部材35の内面を接触させる、挿入部材35の内面に水溶液をスプレーする、水溶液或いはゲルを刷毛等で塗布するなどいずれも使用可能である。但し、共有結合といった化学的結合やプラズマ処理等による強固な結合ではなく、これらに比べて弱い化学的結合により又は化学的結合によらずに、溶解および剥離し易い状態で挿入部材35の内面に付加され、保持できる方法が採られる。
使用する溶媒の水溶性高分子中、濃度としては0.1重量%〜60重量%までがディッピングやスプレーにての被膜形成には好ましいが、ゲルを刷毛塗りなどで塗布する場合は50重量%以下のものを使用することが好ましい。なお、ディッピングやスプレーに使用する水溶液は、水溶性高分子を単に溶解させた水溶液が好ましいが、pH調整のために水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、リン酸緩衝溶液などの塩類や乾燥促進や結晶化度制御のためにエタノールなどの有機溶剤を添加してもよい。
また、本実施例では、挿入部材35における半円筒状の後側部分35aの内面と挿入筒32の内面の両方に被膜を形成した場合について説明しているが、本発明においては、特にレンズ20との摩擦が問題となる挿入筒32の内面にのみ被膜を形成してもよい。
次に、具体的な実験例を説明する。ここでは、2.2mmの先端開口32aの挿入部材35をレンズ20が通過するときの荷重を測定した結果を示す。試験方法は、挿入器具を縦(上下)にしてセットし、0.25mm/secの速度で押出軸33を押し下げて、レンズ20が挿入部材35(挿入筒32)内を通過するときの最大抵抗を示す荷重を加重測定器により測定した。
実験例1では、挿入部材35の内面に、水溶性高分子の水溶液へのディッピングにより被膜を形成した場合を示す。
本実験例では、ヒアルロン酸ナトリウム、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリ燐酸、ポリエチレンイミンの0.5%各水溶液に、グリセリンモノステアレートとステアリン酸アミドを混合したポリプロピレン製カートリッジを、25℃、65℃でそれぞれ1時間浸漬した。挿入筒を液から引上げ、液を切った後、50℃のオーブンにて乾燥した。こうして、水溶性高分子被膜を形成した挿入部材35を10種作成した。被膜の形成は、挿入部材35の内面の水に対する接触角およびATRを用いた赤外線吸収スペクトルから確認した(表1)。
その結果、ポリビニルピロリドン被膜以外は25℃で浸漬した場合よりも、65℃で浸漬した場合の方が接触角が低く、被膜を形成する高分子量が多くなったことが示唆されている。
そして、これら10種の挿入部材に対して、シリコーン製のIOL(光学部経は5.5mm)を実際に押し出した際に、押出軸に加わる最大荷重値を測定した結果も表1に示した。
無機系のポリ燐酸では荷重値が高くなったが、その他の高分子では何れも被膜形成前と比較し、荷重値が低下した。特に65℃浸漬により形成したヒアルロン酸ナトリウムおよびデキストランの多糖被膜の場合での荷重値は、150g程度と極めて低く、最も良好な滑り性を示した。
(実験例2)
ここでは、被膜を形成した挿入部材のレンズ押出し抵抗等による滅菌並びに経時安定性についての実験結果を示す。
上記実験例1で作製した10種の挿入部材のうち、65℃浸漬によりヒアルロン酸ナトリウム、デキストラン、ポリビニルピロリドンで被膜を形成した挿入部材の3種を、エチレンオキサイドガスを用いて滅菌後、50℃、2週間熱処理を行った(表2)。
その結果、滅菌後にレンズの押出し抵抗は全て低下し、良好な滑り性を確認できた。しかし、50℃、2週間処理後にポリビニルピロリドンおよびデキストラン被膜を形成した挿入筒では、被膜なしのものと比較すれば押出し抵抗は軽減はされるものの、荷重値の増大が確認されたのに対し、ヒアルロン酸ナトリウム被膜を形成した挿入部材では、荷重値の変化は無かった。なお、ヒアルロン酸ナトリウム被膜を形成したカートリッジでは、50℃、3ヶ月或いは25℃、1年の処理でも荷重値には変化が無く、良好な滅菌および経時安定性が示された。
(実験例3)
ここでは、ヒアルロン酸ナトリウム被膜が形成された挿入部材の材料に対するグリセリンモノステアレートおよびステアリン酸アミドの混合物の混合効果についての実験結果を示す。
ポリプロピレンと、グリセリンモノステアレートおよびステアリン酸アミド(=3/2(w/w))の混合物とを種々の濃度割合(混合比)となるよう、200℃にて混錬した。これを材料として、挿入部材を成形し、各挿入部材に対して実験例1の方法にてヒアルロン酸ナトリウムの被膜を形成した。全ての挿入部材を実験例2と同様に滅菌し、シリコーンレンズの押出し荷重を測定した。
この結果、グリセリンモノステアレートおよびステアリン酸アミドの混合物の混合比が高いほど、低い荷重値を示しており、添加剤による滑り性の向上効果が確認できた(表3)。
なお、どの混合比においても滑り性の経時安定性は高く、50℃、2ヶ月処理後にも押出し荷重の変化は認められなかった。
(実験例3)
ここでは、軟性アクリルレンズの各種挿入筒による押出し試験の結果を示す。グリセリンモノステアレート0.2重量%を含むポリプロピレンにて成形した挿入部材であって、実施例1のヒアルロン酸ナトリウム被膜を形成したもの、プラズマ処理により架橋したポリビニルピロリドンをコートしたもの、成形のみ(コーティングなし)のものの3種類を用意し、実験例2の方法にて滅菌した。その結果、レンズの押出し荷重は、ヒアルロン酸ナトリウム被膜形成品が130gと最も低く、押出し後のレンズ上での付着物も最も少なかった。
なお、上記実施例で説明した挿入器具は本発明の一例にすぎず、本発明を適用できる挿入器具の形状、材質が実施例のものに限定されるわけではない。すなわち、挿入器具にレンズを手術前に所定位置にセットし、手術直前に粘弾性物質又は水性液体を挿入器具の先端又はレンズ設置部に形成した穴などから注入し、レンズを押出し軸によって前進させて押し出す挿入器具であればその形状や方式、材質を問わない。また、レンズが保管ケースなどにセットされたものを手術直前に挿入器具に取り付けて、該レンズを挿入器具から押し出す、いわゆるセミプリロードタイプのものや、工場出荷前からレンズが挿入器具の所定位置に装填されている、いわゆるプリロードタイプの挿入器具にも本発明を適用することができる。
さらに、上記実施例では、レンズ移動部として挿入筒32を備えた挿入部材35について説明したが、本発明では、該挿入部材35に限らず、内側をレンズが移動するすべての部位又は部品がレンズ移動部に相当し、その内面の少なくとも一部に被膜を配置したものを含む。
本発明の実施例1である挿入器具のレンズ設置状態(a)およびレンズ変形状態(b)を示す側面図。 実施例1の挿入器具の先端側を拡大して示す側面図(a)および平面図(b)。 実施例1の挿入器具のレンズ設置状態を示す断面図。 実施例1の挿入器具の挿入筒を示す断面図。
符号の説明
10 レンズ保持部材
11 ベース部材
12 トップ部材
14 レンズ押さえ枠
20 レンズ
30 挿入器具本体
31 筒体
32 挿入筒
33 押出軸
35 挿入部材
37 滑剤又は界面活性剤
40 水溶性高分子被膜

Claims (2)

  1. 眼内挿入用レンズの挿入器具であって、
    前記レンズを保持するレンズ設置部と、
    前記レンズ設置部にて保持されていた前記レンズが眼内に挿入される際に内部を移動するレンズ移動部を有し、
    該レンズ移動部は、合成樹脂に滑剤および界面活性剤のうち少なくとも一方を分散混入した材料により形成され、
    該レンズ移動部の内面に、乾燥状態の水溶性高分子層が設けられていることを特徴とする挿入器具。
  2. 請求項1に記載の挿入器具と、
    前記レンズ設置部にて保持された眼内挿入用レンズとを含むことを特徴とする眼内挿入用レンズ内装型挿入器具。
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