JP4481843B2 - ボス部材の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ワークに被締結物を取り付けるのに際し、ワークと被締結物との間に介在させ、ねじあるいはナット等の締結部品で被締結物を固定するためのボス部材の製造において、この製造コストの低減とワークとの強固な圧入固定を可能にするボス部材の製造方法に関する。
製品の薄型化のために電子基板を積層し、この前面にカバーや表示ユニットを取り付ける場合、これら被締結物を取り付けるワークは比較的薄いものが採用されている。このようなワークにカバーや表示ユニット等の被締結物を取り付けるに際しては通常、ねじが使用されているが、このねじを直接ワークに螺合するにはワークに十分な厚みがなく、固定強度の減少を招いていた。これを防止することからねじを螺合して取り付けるのに十分な強度を有するボス部材をワークに圧入固定し、このボス部材にねじを螺合して被締結物を取り付けているのが現状である。
このようなボス部材として、最近では多くの種類のものが使用されており、例えば、ワークに形成されている取付穴(図示せず)よりも若干径の大きい頭部とこの頭部に立設され前記穴部に嵌入し得る径となっている軸部とが金属材料で一体に形成されてなり、軸部の外周面には、頭部との境界部分に、全周にわたって断面四角形の溝部が形成されている。また、頭部の外周面には回り止め用のローレットあるいはセレーションが形成され、軸部にねじを螺合可能な有底円筒形状あるいは軸部から頭部にかけて貫通する貫通穴形状の下穴が形成されているものがある。そして、これを製造する場合は、最初に別工程で有底あるいは貫通円筒穴形状の下穴を有する素材を受け駒に軸部を挿入すると同時に加圧パンチで加圧して軸部より大径で所定の厚みの頭部を有する一次加工素材を形成する。
次に、この一次加工素材を次工程のトリミング工程に移し、図8に示すように、この工程の受け駒131の支持穴132に軸部102を先にして挿入される。この後、一次加工素材111がトリミングパンチ141に向かってダイスピン133により押し出されてトリミングパンチ141との間で加圧され、図9に示すように、セレーション部107が頭部103の外周に形成されて、二次加工素材113が得られるようになっている。このような工程で二次加工素材113を製造した場合、頭部103のセレーション部107の軸部側には図10に示すように、頭部が規定された所定厚みより厚くなったり、かえり115が発生したり、角が丸くなったりすることから、図10の二点鎖線で示されたように、首部の凹部105は通常、切削加工により形成されてボス部材を製品化している。このように、ボス部材には切削により凹部を形成していることからその製造における作業性が悪く、加工に時間がかかっているとともにこれの大量生産においてコストの低減に限界があり、この限界を解消してこれの生産効率を上げることが急務となっている。
このことを解決するために最近では多段パーツホーマにより製造する方法が採用されつつある。これは、軸部202に外周軸線に沿い、係止突起207を四ヶ所に形成したものであり、材料の加圧直前の状態を示す図11のように、あらかじめダイス231の孔232の前に前工程により得られた材料を位置させてパンチ235をダイス側に移動させる。これにより、前記材料の端部がダイス231の孔232の底に到達し、このとき、突起形成用突状237の端部に対応する位置まで図12に示すように、前記材料の側部の一部が押し上げられて係止突起207が形成されるようになっている。この突起は軸部外周面から半径方向に所定量突出した形状となっており、これを樹脂製品にインサートすることによって軸方向及び回転方向への動きをなくするようになっている。そして、従来の切削による凹溝の形成に代えてこの多段パ−ツホーマでの圧造作業を利用して凹溝を形成することが可能となっている。
特許第3045397号公報
しかしながら、切削で前記凹部を形成するようにした場合、最初に圧造作業でセレーション部を形成した二次加工素材を製造してからそれらに二次加工としての切削作業を一本宛施さねばならず、このため、コストの低減が不可能となっていた。また、これを解消するために多段パーツホーマにより行うことも可能であるが、この機械が高価であることから、かなり大量のボス部材を製造せねばならず、最近の多種少量生産においてはその製造原価が必然的に高価になり、機械の採算性も悪いので、これの導入に支障を来している。一方、このようなボス部材に対するコストの引き下げ要求も増加する傾向から、早急にこれを解決する必要がある。その上、この凹部形成を切削加工で行っていることから、頭部のセレーション部の下面に切削によるかえりが発生し、これがワークの取付穴への圧入において、障害となり、ワークとボス部材との完全な圧入固定が得られていない等の課題が生じている。
本発明の目的は、このような課題を解消するとともに圧造加工と転造加工を用いた塑性加工により製造するだけで鋭いセレーション部を有するボス部材が得られる製造方法の提供である。
本発明の目的は、軸部2に締結部品を螺合する締結部を有し、一端に軸部2より大径のセレーション部7を有する頭部3と、この頭部3と軸部2との間の首部外周に溝形状の凹部5を設けてなるボス部材の製造において、素材10を頭部圧造工程30により圧造加工して頭部3の座面側外周に前記セレーション部7を形成するとともに頭部3の端面側に前記セレーション部7より大径で頭部厚み(T)の半分の厚さの余肉部12を形成して一次加工素材11を得、次にトリミング工程40において、前記一次加工素材11の余肉部12にトリミングパンチ41を前記セレーション部7の外周形状に一致するように配置し且つこの一次加工素材11の前記余肉部12をトリミングパンチ41で加工して頭部外周全体にセレーション部7を有する二次加工素材13を形成し、更に、ローリング工程50において、この二次加工素材13の首部の外周に軸部外周に沿う外周溝形状であって、軸線に沿う断面において底面側が狭く開放側が広くなるように少なくとも一方が傾斜した側壁6を有する凹部5を転造加工で形成してボス部材1を得る構成にしたボス部材の製造方法を提供することで達成される。
また、この目的の達成ために前記構成に加えて、セレーション部は軸部2の直径より大径の頭部3の中心から放射方向に且つ円周上等間隔をおいて鋭い山形形状の複数の突部7aが突出した形状となっている。
本発明によれば、圧造加工成形した後、二次加工としての切削加工が不要になるので、自動化が容易になり、より多くの製造コストの低減が可能になるとともに形状誤差も殆ど発生しない。また、高価な製造機械としての多段パーツホーマを使用する必要がないので、これによりボス部材を製造する場合に比べてその製造原価を低減することができる。更に、本発明によりボス部材を製造した場合、製造コストが低減されるので、コストの引き下げ要求に対しても十分に対応することができ、しかも、最近需要が多い多種少量生産への対応も容易になる。その上、頭部外周のセレーション部にかえりが発生したり、角に丸みが生じたりすることなく鋭く形成されるので、ワークにボス部材を圧入したときにセレーション部の山形形状の突部でワークの肉が滑らかに押し退けられてワークにこのセレーション部が確実に圧入されるとともに突部間に前記肉が嵌って強固な回り止め作用が得られる。更に、頭部セレーション部の半分を圧造加工により形成し、その後に残り半分をトリミングパンチで加工する構成であることから、従来のように頭部下面にかえりが生じることがなくなり、これを除くための仕上げ加工が不要になる。一方、頭部座面側の角も丸みが減少するので、ボス部材のワークへの圧入時における圧入力が低減できる等の特有の効果がある。
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図7に基づき説明する。図5及び図6において、1は本発明により製造されるボス部材であり、これは軸部2とこの軸部2より大径の頭部3とから構成されている。このボス部材1の軸部2には締結部の一例として中心線上に有底円筒穴形状に明けられた下穴4が設けられている。この下穴4は軸部2の軸端から頭部3に向かって有底円筒穴形状に形成されているが、この他に軸端から頭部端にかけて貫通した貫通穴形状(図示せず)であってもよい。この下穴4にはねじ(図示せず)が螺合されて組み合わされるようになっているので、この径はねじの脚部に形成されるねじ山の有効径とほぼ同径かそれ以下となっている。
また、この軸部2と頭部3との間の首部には軸部2より小径で頭部3の厚さの約1/2程度の幅を有するとともに軸部外周に沿う外周溝形状の凹部5が形成してあり、この凹部5は軸線に沿う断面において、底面側が狭く開放側が広くなるよう少なくとも一方が、あるいは両側が傾斜した側壁6を有している。この凹部5は金属板等のワーク(図示せず)の取付穴(図示せず)にボス部材1が加圧入固定された時、ワークの肉が嵌り込む溝であり、これにより、ワークに対して抜け止め構造となっている。
この首部には軸部2の直径より大径の前記頭部3が連続して一体的に設けてあり、この頭部3にはその中心から放射方向に且つ円周上に等間隔をおいて鋭い山形形状の複数の突部7aが突出した形状のセレーション部7が形成されている。このセレーション部7は外周を鋸歯状の山形形状としているが、この形状に限定されるものではなく、ワークに加圧固定されたときに回り止め作用が生じる構造であれば、例えば、花びら形状であってもよい。
次にこのボス部材1の製造方法について図1乃至図4により説明すると、あらかじめ所定寸法に設定された素材10に対して、図1に示すように、所定の下穴4が穴明け工程20で形成される。この穴明け工程20に続いて、頭部圧造工程30が配置してあり、この工程により図2に示すように、圧造加工が加えられて頭部3には一次加工素材11の軸部側外周にセレーション部7が形成される。この工程の受け駒31はボス部材1の軸部外径に相当する支持穴32を有しており、この支持穴32には押出ピン33が軸方向に摺動自在に内挿されている。この支持穴32の先端にはこれより大きい外径で前記ボス部材1の頭部外周に形成されるセレーション部7に対応する山形形状の成形穴34が形成してあり、この深さは前記ボス部材1の頭部3の厚み(T)(図7参照)に応じて適宜変更されるものである。そして、この深さは通常、前記頭部厚みの略半分程度であって、具体的には頭部3の厚み(T)の丁度半分を境に±20%の寸法の深さにするのが好ましい。
一方、支持穴32の中心線上には加圧パンチ35が配置してあり、この加圧パンチ35の先端には前記ボス部材1の頭部端面側に前記セレーション部7の外径より大径で図7に示す頭部厚み(T)の略半分の厚さの余肉部12を形成する余肉形成穴36を有している。この穴36の深さは前記ボス部材1の頭部3の厚みから前記成形穴34の深さを引いた寸法になっており、これら両方の穴34、36の深さを合わせたものが前記頭部3の厚みとなるように設定されている。
この頭部圧造工程30に続いて、トリミング工程40が配置されている。このトリミング工程40では図3に示すように、前記受け駒31の支持穴32の中心線上にトリミングパンチ41が移動して位置するようになっており、この移動により互いの中心が一致し、前記工程により得られた一次加工素材11の頭部3の余肉部12の端面に当接するようになっている。このトリミング工程40ではあらかじめ前記頭部圧造工程30により形成されているセレーション部7の外周形状とトリミングパンチ41の内形状が一致するように調整配置してあり、押出ピン33が前方のトリミングパンチ側へ移動して一次加工素材11を押し出して前記余肉部12にトリミングパンチ41が食い込むことで、頭部3の外周面全体には図4に示すように、セレーション部7が加工形成された二次加工素材13が得られるようになっている。
次にはローリング工程50が設けてあり、この工程では前記セレーション部7を有する二次加工素材13が頭部3を上にして転造ダイス(図示せず)により頭部3と軸部2との間の首部を転造加工することで首部の外周には凹部5が形成されるようになっている。これにより、軸部2の外周に環状の凹部5が形成されたボス部材1が得られる構成である。
このような構成において、あらかじめ軸部2より大きい頭部3が得られるような所定長さ寸法に設定された素材10に対して穴明け工程20で下穴4をあけ、この素材10を頭部圧造工程30に供給する。この頭部圧造工程30では図2に示されたように、受け駒31の支持穴32に素材10が加圧パンチ35で圧入されると同時にこの素材10の挿入先端が所定位置にある押出ピン33の端部に当接するが、更に加圧パンチ35が移動するので、素材10が成形穴34に充満する。一方、加圧パンチ側の素材10も余肉形成穴36に充満することになり、この加圧作用により軸部側にセレーション部7を有し、頭部側の端部に余肉部12を有する頭部3が形成された一次加工素材11が得られる。この一次加工素材11が得られると、加圧パンチ35は後退し、続いて、この受け駒31の中心線上にトリミングパンチ41が移動して位置決めされる。
このトリミング工程40においては、あらかじめトリミングパンチ41の内形状が受け駒31の成形穴34の形状と一致しており、図3に示すように、トリミングパンチ41が受け駒31側へ移動して前記一次加工素材11の余肉部12に当接すると、前記押出ピン33がトリミングパンチ41の方向へ移動し、この一次加工素材11を受け駒31の支持穴32から押し出す。これにより、図4に示すように、余肉部12には外周の抜きカス14が除かれてトリミングパンチ41で前記セレーション部7と同様の形状が形成される。この工程において、余肉部12がトリミングされる際に加圧力が加わるので、前記圧造工程において得られたセレーション部7の突部7aに残っている僅かな丸みはより先鋭化されることになる。このようにして、頭部3の全外周に夫々の角部の鋭いセレーション部7が形成された二次加工素材13は次にローリング工程50に供給される。
このローリング工程50では、セレーション部7を有する頭部3を上に軸部2を垂下した状態で転造ダイス(図示せず)間に供給され、二次加工素材13には頭部座面側の軸部2に凹部5が転造加工により形成される。以上により図5及び図6に示すようなボス部材1が完成する。尚、この実施の形態では、締結部として雌ねじが形成される下穴4を有するボス部材の製造方法について説明したが、何もこれに限定されるものではなく、例えば、軸部2の外周にナットを螺合するようにしたボス部材にも適用できる製造方法である。
本発明を示すフロー図である。 頭部圧造工程の要部断面図である。 トリミング工程の要部断面図である。 セレーション部が形成された状態を示す要部断面図である。 ボス部材の要部断面図である。 図5の右側面図である。 圧造加工時におけるボス部材の頭部拡大図である。 本発明の従来例を示す要部断面図である。 図8の従来例で形成されたセレーション部を示す要部断面図である。 図9に示す従来例の頭部の拡大要部断面図である。 他の従来例による加工直前を示す要部断面図である。 他の従来例による加工後を示す要部断面図である。
符号の説明
1 ボス部材
2 軸部
3 頭部
4 下穴
5 凹部
6 側壁
7 セレーション部
7a 突部
10 素材
11 一次加工素材
12 余肉部
13 二次加工素材
14 抜きカス
20 穴明け工程
30 頭部圧造工程
31 受け駒
32 支持穴
33 押出ピン
34 成形穴
35 加圧パンチ
36 余肉形成穴
40 トリミング工程
41 トリミングパンチ
50 ローリング工程

Claims (2)

  1. 軸部(2)に締結部品を螺合する締結部を有し、一端に軸部より大径のセレーション部(7)を有する頭部(3)と、この頭部と軸部との間の首部外周に溝形状の凹部(5)を設けてなるボス部材の製造において、素材(10)を頭部圧造工程(30)により圧造加工して頭部の座面側外周に前記セレーション部を形成するとともに頭部の端面側に前記セレーション部より大径で頭部厚み(T)の半分の厚さの余肉部(12)を形成して一次加工素材(11)を得、次にトリミング工程(40)において、前記一次加工素材の余肉部にトリミングパンチ(41)を前記セレーション部の外周形状に一致するように配置し且つこの一次加工素材の前記余肉部をトリミングパンチで加工して頭部外周全体にセレーション部を有する二次加工素材(13)を形成し、更に、ローリング工程(50)において、この二次加工素材の首部の外周に軸部外周に沿う外周溝形状であって、軸線に沿う断面において底面側が狭く開放側が広くなるように少なくとも一方が傾斜した側壁(6)を有する凹部を転造加工で形成してボス部材(1)を得る構成にしたことを特徴とするボス部材の製造方法。
  2. セレーション部は軸部の直径より大径の頭部の中心から放射方向に且つ円周上等間隔をおいて鋭い山形形状の複数の突部(7a)が突出した形状であることを特徴とする請求項1記載のボス部材の製造方法。
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