JP4479100B2 - 金属ストリップの連続熱処理炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として輻射加熱により金属ストリップを連続加熱するようにした金属ストリップの連続熱処理炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より金属ストリップの連続熱処理炉として輻射加熱炉を用いると金属ストリップをより高温で熱処理することが容易になることは知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし金属ストリップを輻射式加熱炉を用いて均等加熱をしながら連続熱処理をすると、金属ストリップの断面形状の性質上、受熱形態に違いが有ることから、幅方向において中央部の昇温速度に比較して両側のエッジ部の昇温速度が早く、エッジ部が高温化する問題点があった。エッジ部が中央部に比較して高温化すると金属ストリップの幅方向の機械的特性にばらつき要因が発生し、製品の品質低下を招く問題点が発生する。
このような問題点を解決するためには、帯状材の幅方向の温度分布を調整する機構を付設すると良い。しかし高温域の加熱装置に帯状材幅方向温度分布調整機構を付設すると、輻射式加熱炉の設備費が高額となる問題点が発生する。また運転に際しては、帯状材幅方向温度分布調整機構を操作して金属ストリップの幅方向の温度調節をしなければならない。この温度調節のための制御の設備費もさらに加算され、製品のコスト高になる要因が多々発生する。
【0004】
本件出願の金属ストリップの連続熱処理炉は、上記従来技術の問題点を解決する為に提供するものである。
本件出願の目的は、金属ストリップを高温処理するに適する輻射加熱炉を備える金属ストリップの連続熱処理炉を提供しようとするものである。
他の目的は、上記輻射加熱炉に帯状材幅方向温度分布調整機構が付設されていなくても、ストリップの幅方向の中央部も、幅方向の端部も共に均等に加熱処理できるようにしてある金属ストリップの連続熱処理炉を提供しようとするものである。
他の目的及び利点は図面及びそれに関連した以下の説明により容易に明らかになるであろう。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明における金属ストリップの連続熱処理炉は、金属ストリップの装入口と抽出口とを備え、内部には上記装入口から装入されて抽出口に向けて移動させる金属ストリップを通過させるための通路を備え、その通路を通過させる金属ストリップを加熱するようにしてある輻射加熱炉を備えている金属ストリップの連続熱処理炉において、
上記輻射加熱炉における装入口には、金属ストリップの導入口と上記輻射加熱炉の装入口に連通する送出口とを備えていて、上記導入口から導入して送出口に向けて移動させる金属ストリップの幅方向の中央部を、それの両端に比較して高い温度となるように昇温させるようにしてある補助昇温炉を連結し、
上記輻射加熱炉においては、補助昇温炉から、幅方向の中央部が両端に比較して高い温度となった状態で入来する上記金属ストリップの全域をほぼ均等に加熱することにより、金属ストリップの幅方向の中央部の温度上昇速度に比較して両端部の温度上昇速度が早くなる性質を利用して幅方向の中央部の温度と両端部の温度との温度差を減少させながら金属ストリップの幅方向の全体を昇温させるように、上記装入口と抽出口との間の金属ストリップの通路の周囲にマッフルを配設してある。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本願発明の実施の形態を示す図面について説明する。金属ストリップの連続熱処理炉Aを示す図1において、1は輻射加熱炉2や、補助昇温炉10の炉体等を支える為の基枠を示し、通常鉄骨などの構造材で形成してある。
【0007】
2は周知の構成部材から成る輻射加熱式帯状材熱処理炉(輻射加熱炉ともいう)を示し、3は加熱空間3aを形成する為の断熱材形成による炉壁、5は金属ストリップ7を通過させる為の装入口5aを備える断熱材形成による装入部、6は金属ストリップ7を通過させる為の抽出口6aを備える断熱材形成による抽出部を示す。
この輻射加熱炉2の内部3aには輻射式加熱装置を備えさせて上記装入口5aから装入されて抽出口6aに向けて移動させる金属ストリップ7を加熱処理するようにしてある。
輻射式加熱装置の例としてはマッフル4を用いたものを図1に例示する。マッフル4は炉内3aを矢印8方向に通過させる金属ストリップ7をほぼ均等に加熱昇温させる為に設けられたもので、これを電気ヒータ、バーナー等任意の熱源で加熱することにより放射熱を発生させて、図1に表れているように上記装入口5aと抽出口6aとの間の金属ストリップ7の通路を矢印8方向に通過させる金属ストリップ7をほぼ均等に加熱昇温させる。
【0008】
上記輻射加熱炉2における装入口5aには、断熱材形成による連繋部材16を介して補助昇温炉10が連結されている。
この補助昇温炉10は対流式温度調節機構14を設けた炉であって、それにおいて、11は加熱空間11aを形成する為の断熱材形成による炉壁、12は金属ストリップ7を通過させる為の断熱材形成による導入口、13は金属ストリップ7を通過させる為の断熱材形成による送出口を示す。補助昇温炉10の 内部加熱空間11aには対流式の加熱装置14を備える。その対流式の加熱装置14としては上記導入口12から導入して送出口13に向けて移動させる金属ストリップ7の幅方向の中央部を、それの両端に比較して高い温度となるように昇温させるように構成してあればよい。具体的には特開平4−254529号公報等において広く知られているように、夫々は金属ストリップの幅方向に向けて複数に区分された加熱用熱風の吹出口を備えるチャンバ14、14を金属ストリップの移動軌跡を中心にして対向状に配設し、熱風循環装置(熱風ファン)15によって送られる熱風を金属ストリップにおける幅方向の中央部に対しては大量の熱風を(または比較的高温の熱風を)、両端部には比較的少量の熱風を(または比較的低温の熱風を)送風して金属ストリップにおける幅方向の中央部の温度を両端のエッジ部に比較して早く昇温させるようにしてある。
【0009】
上記構成のものにあって運転時には、補助昇温炉10におけるチャンバ14、14から金属ストリップ7に向けてそれぞれ加熱用の熱風が吹き出している。
また上記輻射加熱炉2にあっては、マッフル4が任意の加熱手段によって加熱されてマッフル内を通過する金属ストリップ7に向けて輻射熱を放出している。そのような作業状態において金属ストリップ7を図1における上方の導入部18、導入部材17を通して下方に向けて連続的に移動させることによりストリップ7には所定の熱処理がなされる。例えば図2に示されるように、低温加熱域で用いられる補助昇温炉10においては、ストリップの幅方向の中央部は300〜450℃に加熱され、ストリップの幅方向の端部は100〜300℃に加熱される。
【0010】
また高温加熱域であるところの輻射加熱炉2においては、補助昇温炉10での昇温に加えてストリップの幅方向の中央部も、幅方向の端部も共に均等に加熱して加熱最終点において800〜900℃近くに加熱昇温させる。上記輻射加熱炉2においては金属ストリップ7は、全域均等に加熱昇温させるため補助昇温炉10の送出口13においてはストリップの幅方向の中央部に比較して低温であったエッジ部が、金属ストリップの断面形状の性質上、それの中央部に比較して速やかな上昇カーブを描いて中央部の温度に近づいてゆき、加熱最終点においては全域均一温度化できる。
なお補助昇温炉10の送出口13におけるストリップの幅方向の中央部とエッジ部との温度差を設定するにあたっては、ストリップの板厚、材質、輻射加熱炉2の長さ(炉長)、加熱能力、ストリップの移動速度等を考慮して定めなければならない為一律化することはできない。しかし、輻射加熱炉2におけるストリップの幅方向の中央部とエッジ部との夫々の最終点での熱処理温度が定まれば(中央部とエッジ部の温度差をなくするように仕上げる場合と、或は中央部とエッジ部との間にプラス又はマイナスの温度差をもたせたまま仕上げる場合のいずれかに定まれば)、それをも要因に加え、補助昇温炉10の送出口13におけるストリップの幅方向の中央部とエッジ部との温度差を設定するとよい。対流式の加熱装置14を用いてのストリップの幅方向の中央部とエッジ部との温度差を付すための設定は、補助昇温炉10の温度領域が低温であるためと、単純に中央部と両端部との温度差をつけるという簡単な手段で良いから、高温域での設定とは異なり極めて容易となる。更にストリップにおける中央部と両端部との間に温度差を付すものであっても温度領域が低温であるためストリップの幅方向の機械的特性に悪影響を及ぼさない利点もある。また対流式の加熱装置等、補助昇温炉10に係わる設備費も低温域用であるが為全てが安価に調達できる。
【0011】
このように本願実施例に示される金属ストリップの連続熱処理炉においては、上記輻射加熱炉において、中央部が両端に比較して高い温度となった状態で入来する上記金属ストリップの全域をほぼ均等に加熱することにより、金属ストリップの中央部の温度上昇速度に比較して両端エッジ分の温度上昇速度が早くなる性質を利用して中央部の温度とエッジ部分の温度との差を減少させながら金属ストリップの幅方向の全体を昇温させるようにしてある。なお図1においては輻射加熱炉2と補助昇温炉10とを直立型として図示したが、金属ストリップの連続熱処理炉としては広く知られているように補助昇温炉(対流型加熱炉)と、輻射加熱炉とを横設状態に並置し、水平状態に連続させたものであってもよい。
【0012】
図1において、19と、24は図示の如く炉Aにおける上下位置に配設された金属ストリップ案内用のロール、21は上記輻射加熱炉2において加熱された金属ストリップを必要に応じて冷却させるための任意構成による冷却部を示し、一例として冷却槽22でもって構成されたものを示す。23は冷却水、25は上記輻射加熱炉2と冷却部21とを連結するための連繋部材を示し、内部に金属ストリップを通過させるための通路を形成している。
【0013】
【発明の効果】
以上のように本発明は、輻射加熱炉2における装入口5aに対して、補助昇温炉10における送出口13を連結し、輻射加熱炉2における装入口5aに入る前の、比較的低温域にある金属ストリップに対して、幅方向の中央部を、それの両端に比較して高い温度となるように昇温させ、輻射加熱炉2においては、上記装入口と抽出口との間の金属ストリップの通路の周囲にマッフル4を配設し、金属ストリップの全域をほぼ均等に加熱することによって、ストリップ7の幅方向の中央部も、幅方向の端部も共に均等に加熱昇温するものであるから、ストリップ7の幅方向の温度分布を調整するための手段として、「高温域」において帯状材幅方向温度分布の調整機構等の、設備費が高額となるストリップ7の幅方向の温度分布調整手段を設ける必要性がなくなり、連続熱処理炉の設備費を大幅に低減化できる画期的効果がある。
しかも本発明にあっては、ストリップ7の中央部をそれの両端に比較して高い温度となるように昇温させるための補助昇温炉10は、輻射加熱炉2の装入口5aに対して連結するものであるから、この補助昇温炉10は、ストリップを輻射加熱炉2で高温加熱する前の「低温の領域」で用いることになり、その諸設備は低温用の機材で足り、極めて安価に設備できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 連続熱処理炉の断面図。
【図2】 温度曲線図。
【符号の説明】
1・・・基枠、2・・・輻射加熱炉、3・・・炉壁、4・・・マッフル、5・・・装入部、6・・・抽出部、7・・・金属ストリップ、8・・・移動方向を示す矢印、10・・・補助昇温炉、11・・・炉壁、12・・・導入口、13・・・送出口、14・・・チャンバ、21・・・冷却部、22・・・冷却槽。
Claims (1)
- 金属ストリップの装入口と抽出口とを備え、内部には上記装入口から装入されて抽出口に向けて移動させる金属ストリップを通過させるための通路を備え、その通路を通過させる金属ストリップを加熱するようにしてある輻射加熱炉を備えている金属ストリップの連続熱処理炉において、
上記輻射加熱炉における装入口には、金属ストリップの導入口と上記輻射加熱炉の装入口に連通する送出口とを備えていて、上記導入口から導入して送出口に向けて移動させる金属ストリップの幅方向の中央部を、それの両端に比較して高い温度となるように昇温させるようにしてある補助昇温炉を連結し、
上記輻射加熱炉においては、補助昇温炉から、幅方向の中央部が両端に比較して高い温度となった状態で入来する上記金属ストリップの全域をほぼ均等に加熱することにより、金属ストリップの幅方向の中央部の温度上昇速度に比較して両端部の温度上昇速度が早くなる性質を利用して幅方向の中央部の温度と両端部の温度との温度差を減少させながら金属ストリップの幅方向の全体を昇温させるように、上記装入口と抽出口との間の金属ストリップの通路の周囲にマッフルを配設したことを特徴とする金属ストリップの連続熱処理炉。
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