防災用シャッター装置は、全閉状態となったシャッターカーテンによって防災上求められる防火や遮煙等の遮断機能を発揮するものであるため、床に当接した座板の床に対する充分な密閉性も求められる。したがって、防災用シャッター装置のシャッターカーテンが火災の発生によって全閉状態となったときに、火災の発生に基づく風圧をシャッターカーテンが受けてこのシャッターカーテンが風圧方向に撓むと、座板に持ち上がり力が作用し、床から座板が離れることによって床に対する座板の密閉性が損ねられるおそれがあるため、このような事態の発生を防止できる方策が求められる。
特に、このような事態は、シャッターカーテンの少なくとも一部が耐火性等を有するクロスからなるスクリーン式となっている場合に、このスクリーンの部分が火災に基づく風圧で大きく撓みやすいため、顕著に生じやすくなる。
また、シャッターカーテンによって出入口や窓等の開口部を開閉する開口部用シャッター装置においても、シャッターカーテンが全閉となったときの密閉性が求められるため、シャッターカーテンが風圧等を受けても、エンド物品が、このエンド物品が当接している相手部材から離れるのを防止できる方策が求められる。
本発明の目的は、シャッターカーテンが全閉状態となったときに座板等のエンド物品が相手部材から離れるのを解消でき、エンド物品と相手部材による密閉性を確保できるようになるシャッター装置のシャッターカーテン閉じ側先端構造を提供するところにある。
本発明に係るシャッター装置のシャッターカーテン閉じ側先端構造は、下方に向って閉じ移動するシャッターカーテンの閉じ側先端部に、相手部材への当接によって前記シャッターカーテンを全閉状態とするエンド物品が設けられたシャッター装置のシャッターカーテン閉じ側先端構造において、前記シャッターカーテンの少なくとも一部がスクリーン式となっているとともに、前記エンド物品は、前記相手部材に当接する当接部材と、前記相手部材に当接したこの当接部材に対して斜め上方を含む上方への移動が可能であって、前記シャッターカーテンの下端部に連結されている移動部材とを含んで構成され、前記当接部材と前記移動部材には、前記当接部材に対する前記移動部材の上方への所定値以上の移動によって前記移動部材と前記当接部材とを連結し、これらの移動部材と当接部材とを一体として上方へ移動させるための連結部が設けられていることを特徴とするものである。
本発明によると、シャッターカーテンの閉じ側先端部に設けられ、相手部材への当接によってシャッターカーテンを全閉状態とするためのエンド物品は、相手部材に当接する当接部材と、相手部材に当接したこの当接部材に対して斜め上方を含む上方への移動が可能であって、シャッターカーテンの下端部に連結されている移動部材とを含んで構成されているため、少なくとも一部がスクリーン式となっているシャッターカーテンが全閉状態時において風圧等を受け、これによってエンド物品に持ち上がり力が作用しても、当接部材に対して移動部材が斜め上方を含む上方へ移動することにより、当接部材は相手部材との当接を維持する。これにより、シャッターカーテンが全閉状態となっているときに、エンド物品が相手部材から離れるのを解消でき、エンド物品と相手部材による密閉性を確保することができることになる。
また、シャッターカーテンを開き移動させるためにシャッターカーテンを上方へ移動させたときには、当接部材を移動部材と一体に上方へ移動させなければならないが、本発明では、当接部材と移動部材には、当接部材に対する移動部材の上方への所定値以上の移動によって移動部材と当接部材とを連結し、これらの移動部材と当接部材とを一体として上方へ移動させるための連結部が設けられているため、シャッターカーテンの開き移動時に、移動部材が当接部材に対して上方へ所定値以上移動した後は、当接部材と移動部材を一体として上方へ移動させることができる。
以上において、当接部材と移動部材との間には、これらの当接部材と移動部材との間の隙間を狭窄又は閉塞するための隙間対処部材を配置することが好ましい。
これによると、相手部材に当接した当接部材に対して移動部材が斜め上方を含む上方へ移動可能となっていても、当接部材と移動部材との間の隙間を隙間対処部材によって狭窄又は閉塞できるため、当接部材と移動部材との間の高度の密閉性も確保することができる。
また、この隙間対処部材は金属や硬質プラスチック等による硬質材からなるものでもよいが、ゴム等の弾性材からなるものでもよく、あるいは、硬質材と弾性材との複合材からなるものでもよい。
隙間対処部材の少なくとも一部が弾性材で形成されている場合には、相手部材に当接した当接部材に対して移動部材が斜め上方を含む上方へ移動する前と移動したときとの両方において、隙間対処部材の弾性変形によって当接部材と移動部材との間の隙間を閉塞することができ、移動部材の移動量が弾性部材の弾性変形量を超えた量となっても、当接部材と移動部材との間の隙間を隙間対処部材によって狭窄することができる。
本発明において、相手部材に当接した当接部材に対して移動部材が斜め上方を含む上方への移動が可能であって、当接部材に対する移動部材の上方への所定値以上の移動によって移動部材と当接部材とを連結するための連結部が当接部材と移動部材とに設けられていれば、当接部材と移動部材は、任意な形状、構造とすることができる。その第1番目の例は、当接部材を、上面に開口部が設けられていて、内部がこの開口部と連通した内部空間となっている中空形状とし、移動部材を、少なくとも一部が当接部材の開口部から当接部材の内部空間に挿入されたものとすることである。第2番目の例は、移動部材を、下面に開口部が設けられていて、内部がこの開口部と連通した内部空間となっている中空形状とし、当接部材を、上部が移動部材の開口部から移動部材の内部空間に挿入されたものとすることである。また、第3番目の例は、当接部材と移動部材の両方を互いに重ね合わされた板状のものとすることである。
これらの例のうち、当接部材と相手部材との大きな当接面積を確保し、高度の密閉性を確保できるようにするためには、第1番目の例を採用することが好ましい。
また、第1番目の例において、当接部材と移動部材に、当接部材に対する移動部材の上方への所定値以上の移動によって移動部材と当接部材とを連結するための前記連結部を設けるための構造も任意である。その一例は、当接部材には、シャッターカーテンの厚さ方向両側からこのシャッターカーテンの厚さ方向内側へ延出した内側延出部を設け、移動部材には、これらの内側延出部の下側において、シャッターカーテンの厚さ方向両側からこのシャッターカーテンの厚さ方向外側へ延出した外側延出部を設け、当接部材に対する移動部材の上方への所定値以上の移動によって互いに当接するこれらの内側延出部と外側延出部とを、当接部材と移動部材とに設けられている前記連結部とすることである。また、他の例は、当接部材と移動部材とのうちの一方にピン等のストッパ部材を設け、他方にこのストッパ部材が挿入された上下に長い長孔を形成し、ストッパ部材と、当接部材に対する移動部材の上方への移動によってストッパ部材が当接した長孔の端部とを、前記連結部とすることである。
当接部材に上記内側延出部を設けるとともに、移動部材に上記外側延出部を設け、これらの内側延出部と外側延出部を前記連結部とする構造を採用すると、部品点数の削減と、当接部材と移動部材の連結構造の簡単化を達成できる。
また、当接部材が、移動部材の少なくとも一部が挿入された中空形状となっていて、当接部材に対する移動部材の下降が一定高さまでとなっていても、当接部材に内側延出部を設けるとともに、移動部材に外側延出部を設けることにより、この当接部材の内部を通る流通路を迷路化することができ、これにより、当接部材と移動部材を含んで構成されるエンド物品自体を充分な密閉性を備えたものとすることができる。
また、前述した第1番目の例において、当接部材の底部と、この底部と上下に対向する移動部材の下面とのうちの少なくとも一方には、弾性部材を配置することが好ましい。
これによると、シャッターカーテンが閉じ移動して全閉状態となり、相手部材に当接した当接部材に対して移動部材が下降すると、弾性部材が移動部材で圧縮されるため、中空形状となっている当接部材の内部を通る流通路が弾性部材で遮断されることになり、これにより、エンド物品自体についての一層確実な密閉性を確保することができる。また、シャッターカーテンが風圧等を受けたために、当接部材に対して移動部材が斜め上方を含む上方へ移動しても、この移動量が弾性部材の弾性復元変形量の範囲内であれば、上記流通路の遮断状態は維持され、このときもエンド物品自体についての一層確実な密閉性を確保することができる。
また、当接部材の内側延出部の下面と、移動部材の外側延出部の上面とのうちの少なくとも一方に、弾性部材を配置してもよい。
これによると、当接部材に対して移動部材が斜め上方を含む上方へ移動した場合に、弾性部材は当接部材の内側延出部と移動部材の外側延出部とで圧縮されることになり、これにより、中空形状となっている当接部材の内部を通る流通路が遮断されることになるため、これによっても、エンド物品自体についての一層確実な密閉性を確保することができる。
このように、当接部材の底部と、この底部と上下に対向する移動部材の下面とのうちの少なくとも一方に配置する弾性部材や、当接部材の内側延出部の下面と、移動部材の外側延出部の上面とのうちの少なくとも一方に配置する弾性部材は、全体が弾性材からなるものでもよく、硬質材と弾性材の複合で形成されたものでもよい。
本発明は任意な用途のシャッター装置に適用でき、その一例は、全閉状態となったシャッターカーテンによって防災区画を形成するための防災用シャッター装置であり、他の例は、シャッターカーテンによって出入口や窓等の開口部を開閉するための開口部用シャッター装置であり、さらに他の例は、車庫用シャッター装置や、トラック等の車両の荷台やコンテナに設置されるシャッター装置等である。
また、シャッターカーテンが全閉状態となるためにエンド物品の当接部材が当接する相手部材は、エンド物品と対向し、このエンド物品が当接するためにシャッターカーテンの下方に配設された部材であり、例えば、室内の床でもよく、窓用サッシの下枠でもよく、出入口の底面でもよく、トラックの荷台等でもよく、そのシャッター装置が設置される場所に応じた任意な部材でよい。
なお、防災用シャッター装置には、シャッターカーテンがエレベータとエレベータホールとの間で閉じ移動するエレベータ用防災シャッター装置が含まれる。
また、シャッターカーテンは、少なくとも一部がスクリーン式となっていれば任意な材料で形成されたものでよく、もちろん全部がクロス等で形成されたスクリーン式となっていてもよく、一部がクロス等で形成されたスクリーン式となっている場合には、他の部分は、スラットで形成してもよく、パネルで形成してもよく、ネットで形成してもよく、リンクで連結されたパイプで形成してもよく、これらのうちの少なくとも2つの複合等で形成してもよい。
そして、エンド物品と連結されているシャッターカーテンの箇所がクロス等で形成されたスクリーン式となっている場合には、このスクリーン部分が風圧等を受けて撓んだとき、持ち上がり力に抵抗する重量の大部分はエンド物品の重量だけとなり、それだけエンド物品が持ち上がりやすくなるため、エンド物品が、相手部材に当接する当接部材と、相手部材に当接したこの当接部材に対して斜め上方を含む上方への移動が可能であって、シャッターカーテンの下端部に連結されている移動部材とを含んで構成されていることが特徴となっている本発明は、シャッターカーテンがこのように形成されている場合に、特にその効果を発揮する。
さらに、エンド物品の構成部材である前記当接部材と前記移動部材は任意な材料で形成されたものでよく、例えば、金属製でもよく、クロス製でもよく、プラスチック製等でもよい。
また、開き移動したシャッターカーテンを格納する方式も任意であり、巻取軸でシャッターカーテンを巻き取る方式でもよく、オーバーヘッドドアのように、全閉状態のシャッターカーテンをそのままの状態又は湾曲させた状態で格納スペースへ送り込み移動させる方式のものでもよく、折り畳んで格納する方式のものでもよい。
また、シャッターカーテンの閉じ移動がなされる方式は、自重式でもよく、手動式でもよく、自重と手動との併用式でもよく、電動モータ等を用いた自動式でもよい。
さらに、シャッターカーテンの開き移動は、電動モータ等を用いた自動式でもよく、手動式でもよく、シャッターカーテンの閉じ移動時に蓄圧されるばね等の弾性部材による蓄圧力と電動モータ等の駆動力との併用式でもよく、この蓄圧力と手動力との併用式でもよい。
本発明によると、シャッターカーテンが全閉状態となったときに座板等のエンド物品が相手部材から離れるのを解消でき、エンド物品と相手部材による密閉性を確保できるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係るシャッター装置は、全閉となったときのシャッターカーテンで防災区画を形成するための防災用シャッター装置であって、しかも、火災発生時にシャッターカーテンがエレベータとエレベータホールとの間で閉じ移動するエレベータ用防災シャッター装置である。以下、このエレベータ用防災シャッター装置を説明する。図1は、そのエレベータ用防災シャッター装置の全体を示す正面図で、図2は図1のS2−S2線断面図、図3は、図1のエレベータ用防災シャッター装置の縦断面図である。
初めにエレベータの全体構造を説明する。図2及び図3に示すように、エレベータの昇降箱1が上下動する建物内の縦穴2とエレベータホール3とを区画する建物躯体となっているコンクリート製の壁4には、下面がエレベータホール3から続く床5となっている開口部6が形成され、エレベータ用出入口であるこの開口部6には、縦穴2側の奥において、エレベータ用扉7が配置されている。壁4の厚さ内から縦穴2側に外れた位置に配置されているこのエレベータ用扉7を開閉移動させるために、図3で示されているように、上部レール8と下部レール9がエレベータ用扉7の上下に設けられている。
上部レール8には、エレベータ用扉7の上部ブラケット7Aに取り付けられた上下のローラ10,11が転動自在に係合し、床5に設けられた下部レール9にはエレベータ用扉7の下面に取り付けられた係合部材12がスライド自在に係合し、上のローラ10で吊り下げられた上吊り式となっているエレベータ用扉7は、これらのローラ10,11と係合部材12の案内作用により図示しない駆動手段の駆動力で開閉移動する。
図1に示すとおり、開口部6の上部内面と左右の側部内面には、上枠部材13と側枠部材14が配設され、開口部6の上部内面を形成する上部内面部材となっている上枠部材13と、側部内面を形成する側部内面部材となっている側枠部材14により、開口部6の内面には三方枠となった開口部用外枠組み15が設けられている。これらの上枠部材13と側枠部材14は、ステンレス等の金属板製であり、開口部6の化粧材となっている。
図3で示すように、上枠部材13は、エレベータホール3側の立上り部13Aと、この立上り部13Aの下端からエレベータ扉7側へ水平に延びる延出部13Bとからなる。立上り部13Aは、壁4における開口部6の上部の下がり壁4Aのエレベータホール3側の表面に設けられた取付部材18に取り付けられ、延出部13Bは、下がり壁4Aの縦穴2側の表面に結合具19とブラケット20を介して結合された保持部材21に結合されている。この保持部材21に前記上部レール8が取り付けられている。
また、上枠部材13の立上り部13Aよりも上の取付部材18は、天井部材16でエレベータホール3と上下に仕切られた天井裏空間17に配置されている。この立上り部13Aには、図1に示すように、エレベータ用インジケータ23が配置されている。
本実施形態に係るエレベータ用防災シャッター装置は、図1に示すように、開閉移動することにより、言い換えると、上下動することにより、開口部6を開放、閉鎖するシャッターカーテン30を備えている。図2に示すように、このシャッターカーテン30の左右両端部、言い換えると、シャッターカーテン30の開閉移動方向と直交するカーテン幅方向の両端部は、抜け止め部材30Aで抜け止めされながらガイド部材であるガイドレール31にスライド自在に挿入されている。シャッターカーテン30の上下の開閉移動を案内するためのガイド部材となっているこれらの左右一対のガイドレール31は、壁4における開口部6の左右両側に設けられている側壁4Bのエレベータホール3側の表面の化粧材32に配置されている。これらのガイドレール31の配置位置は、開口部6の化粧材となっていて上枠部材13と側枠部材14からなる前記三方枠の外枠組み15よりもエレベータホール3側の位置となっている。
図3に示すように、シャッターカーテン30を開閉移動させるための開閉移動手段33は、天井部材16よりも上の空間、すなわち天井裏空間17に配置されている。開閉移動手段33は、シャッターカーテン30の上端部が結合された水平な巻取軸34と、この巻取軸34にスプロケット、チェーン等による連結手段35を介して連結された開閉機36と、この開閉機36の回転軸36Aに設けられているブレーキを起動及び解除させるためのブレーキ駆動装置37とを有する。ブレーキ駆動装置37には手動操作部が設けられ、この手動操作部を手動操作することによりブレーキの起動及び解除がなされる。また、ブレーキ駆動装置37には、エレベータが設置されている建物又は地下街等の構築物の適所に設置されている火災センサが接続されており、この火災センサが煙又は炎又は熱を検出してその信号がブレーキ駆動装置37に入力することにより、ブレーキが解除されるようになっている。
以上のブレーキ駆動装置37は開閉機36に取り付けられ、また、巻取軸34と開閉機36は、前記取付部材18に結合されたブラケット38に取り付けられている。また、図3に示すとおり、シャッターカーテン30は、上述のように構成された開閉移動手段33の巻取軸34から、天井部材16に配置されているまぐさ39のスリットを通って下方へ垂下されている。
シャッターカーテン30は、全部又は主要部がスクリーン形式で形成されたスクリーン式のカーテンであり、下方に向って閉じ移動するこのシャッターカーテン30の閉じ側先端部である下端部にエンド物品である座板51が設けられている。この座板51は、シャッターカーテン30の幅方向の全長又は略全長の長さ、言い換えると、左右のガイドレール31間の間隔と対応する長さを有しており、座板51が相手部材である前記開口部6の床5に当接してシャッターカーテン30が全閉状態となっているときであって、上記ブレーキが解除されているために開閉機36の回転軸36A及び巻取軸34を回転させることができる状態になっているときに、開閉機36の回転軸36Aをハンドル等の手動工具又はモータ等からなる電動工具で正回転させ、この正回転が連結手段35を介して巻取軸34に伝達されることにより、シャッターカーテン30を巻取軸34に巻き取らせて開き移動させることができ、これにより、シャッターカーテン30を巻取軸34に格納させて開口部6を開放させることができる。
また、シャッターカーテン30の上昇で座板51が天井部材16の前記まぐさ39の高さ位置まで達していて、上記ブレーキが起動されているときに、言い換えると、シャッターカーテン30が開口部6を開放しているときに、前記火災センサからの煙又は炎又は熱の検出信号がブレーキ駆動装置37に入力され、これによりブレーキが解除されると、座板51を含むシャッターカーテン30の自重によってシャッターカーテン30は巻取軸34を逆回転させながら下降し、座板51が前記床5に当接することにより、巻取軸34から繰り出されて閉じ移動したシャッターカーテン30によって開口部6が閉鎖されるようになっている。
これにより、火災の発生時に開口部6は、建物内のエレベータと前記エレベータホール3との間の箇所においてシャッターカーテン30で閉鎖され、全閉となったこのシャッターカーテン30で防災区画が形成される。一方、開閉機36の回転軸36Aを前述したハンドル等で正回転させてシャッターカーテン30を開き移動させる作業は、エレベータ用防災シャッター装置の保守点検時等において行われる。
図2に示すとおり、シャッターカーテン30のカーテン幅方向両端部が挿入されているガイドレール31の内部には、煙遮断部材40が収納配置され、これと同様な煙遮断部材は、シャッターカーテン30が上下に挿通する前記まぐさ39のスリットにも収納配置されている。これにより、シャッターカーテン30が閉じ移動して開口部6を閉鎖しているときに、ガイドレール31の内部及びまぐさ39のスリットを通って煙、炎がシャッターカーテン30に対して反対側へ達するのを防止されるようになっている。
また、シャッターカーテン30を形成している前述のスクリーンは、シリカクロスやガラスクロスに耐火塗料を塗布及び/又は含浸させたものであり、このため、シャッターカーテン30は防火性と遮煙性とを有する。
図4は、床5に達する前の座板51の縦断面図であり、図5は、床5に達したときの座板51の縦断面図である。これらの図から分かるとおり、座板51は、シャッターカーテン30の全閉時に床5に当接する当接部材61と、この当接部材61が床5に当接したときに、当接部材61に対して上方へ移動可能となっている移動部材62とからなる。
図4で示されているように、当接部材61は、中空形状のリップ付きチャンネル材で形成されている。このため、この当接部材61は、水平な下面部61Aと、この下面部61Aにおけるシャッターカーテン30の厚さ方向両端部から立ち上がった立上部61B,61Cと、これらの立上部61B、61Cの上端からシャッターカーテン30の厚さ方向内側へ延びているリップ部61D,61Eとからなる。したがって、当接部材61は、リップ部61D,61Eの間において、開口部63が上面に設けられたものになっているとともに、内部には、開口部63と連通した内部空間64が設けられている。
そして、リップ部61D,61Eは、シャッターカーテン30の厚さ方向両側からシャッターカーテン30の厚さ方向内側へ延出した内側延出部となっている。
移動部材62は、互いに厚さ方向に重ねられたフラットバーによる3本のウエイト部材65〜67と、両側のウエイト部材65,67の外側面に当てがわれたアングル材による外側部材68、69とからなり、これらのウエイト部材65〜67と外側部材68,69は、座板51の長手方向に複数設けられているボルト70とナット71で結合されている。シャッターカーテン30の下端部には袋部30Bが形成されており、この袋部30Bの内部に3本のウエイト部材65〜67のうちの中央のウエイト部材66が挿入され、この状態において、ウエイト部材65〜67と外側部材68,69がボルト70とナット71で結合されているため、移動部材62は、シャッターカーテン30の下端部に連結されている。
そして、外側部材68,69の下端水平部68A、69Aは、シャッターカーテン30の厚さ方向両側からシャッターカーテン30の厚さ方向外側へ延出した外側延出部となっている。
移動部材62の下部は、外側延出部68A,69Aが内側延出部61D,61Eの下側となって当接部材61の内部空間64に挿入されているため、座板51が図3のまぐさ39の位置に達しているシャッターカーテン30の全開時や、座板51が床5に達していないシャッターカーテン30の開閉途中時には、図4に示されているとおり、当接部材61の内側延出部61D,61Eの下面が移動部材62の外側延出部68A,69Aの上面に載っており、これにより、当接部材61が移動部材62に吊り下げられた状態となっている。
本実施形態では、シャッターカーテン30が閉じ移動することによって座板51が床5に達したときには、すなわち、シャッターカーテン30が全閉状態となったときには、図5に示されているとおり、当接部材61が床5に当接するとともに、シャッターカーテン30及び移動部材62のさらなる下降によって外側延出68A,69Aが内側延出部61D,61Eから下側へ離間移動し、ボルト71の頭部とナット72が内側延出部61D,61Eの上面に当接することにより、移動部材62は、当接部材61の内部空間64に一定深さ分侵入した状態となる。
また、シャッターカーテン30が開き移動したときには、移動部材62が当接部材61に対して所定値である内側延出部61D,61Eと外側延出部68A,68Aとの離間間隔H分上方へ移動することにより、外側延出部68A,68Aが内側延出部61D,61Eに当接し、シャッターカーテン30がさらに開き移動すると、すなわち、移動部材62が離間間隔H以上に上方へ移動すると、内側延出部61D,61Eと外側延出部68A,69Aが当接部材61と移動部材62とを連結するための連結部となるため、これらの連結部によって当接部材61と移動部材62は一体となって上方へ移動する。
また、本実施形態では、火災の発生により、図5で示したようにシャッターカーテン30が全閉状態となったとき、移動部材62よりもシャッターカーテン30の厚さ方向の寸法が大きくなっている当接部材61が床5に当接し、これらの当接部材61と床5との当接面積は大きいため、座板51と床5による高度の密閉性を確保することができる。
また、当接部材61と移動部材62との間には、前述した当接部材61の開口部63や内部通路64を通る図5で示す流通路72ができているが、この流通路72は、当接部材61の内側延出部61D,61Eと移動部材62の外側延出部68A,69Aによって迷路化されているため、シャッターカーテン30の全閉時において、当接部材61と移動部材62の間についても高度の密閉性が確保されている。
また、シャッターカーテン30が全閉状態となっているとき、図6で示しているように、火災の発生に伴う風圧73をシャッターカーテン30が受け、スクリーン式となっているこのシャッターカーテン30が撓み変形したときには、移動部材62は、当接部材61に対してシャッターカーテン30の撓み変形方向にしたがって斜め上方へ持ち上がる。
すなわち、本実施形態では、移動部材62は、床5に当接している当接部材61に対して斜め上方を含む上方へ移動可能となっているため、風圧73を受けたシャッターカーテン30が撓み変形しても、移動部材62が当接部材61に対して斜め上方に持ち上がることにより、当接部材61はそれ自身の重量で床5に着床した状態を維持する。このため、シャッターカーテン30が風圧73を受けても座板51全体が持ち上がることはなく、座板51と床5との間の密閉性は維持され、火災の発生に伴う煙等が座板51と床5との間を流通してシャッターカーテン30の反対側に達するのを防止することができる。
また、図6に示すように、移動部材62が当接部材61に対して斜め上方に持ち上がることにより、移動部材62の2個の外側延出68Aと69Aのうちの一方が、図6はエレベータホール3側で火災が発生した場合であるため、エレベータホール3側の外側延出部69Aが、当接部材61の内側延出部61Eに近づく又は接触するため、当接部材61と移動部材62との間にできている図5の流通路72は狭められ又は閉塞される。これにより、シャッターカーテン30が風圧73を受けたために移動部材62が斜め上方に持ち上がっても、座板51自体についての充分な密閉性も確保され、煙等が座板51の内部を流通してシャッターカーテン30の反対側に達することも抑制できる。
なお、以上説明した実施形態では、図5のシャッターカーテン30の全閉時にボルト71の頭部とナット72が内側延出部61D,61Eの上面に当接したため、移動部材62が当接部材61の内部空間64に一定深さ分だけ侵入した状態となっていたが、図7で示すように、移動部材62における外側部材68’、69’を前記実施形態の外側部材68、69よりも上下寸法が大きいものとすることにより、ボルト70及びナット71の配置位置を前記実施形態よりも高い位置とし、移動部材62の底面が当接部材61の下面部61Aに当たる構造としてもよい。これによると、シャッターカーテン30の全閉時において、図5の流通路72を移動部材62で遮断できるため、当接部材61と移動部材62との間の密閉性を一層向上させることができる。
図8及び図9は、当接部材61の下面部61Aの上に、言い換えると、当接部材61の底部に、耐熱性を有するゴムや軟質プラスチック等による弾性部材80を固定配置した実施形態を示す。
この実施形態によると、シャッターカーテン30の全閉時に、当接部材61が床5に当接して移動部材62が弾性部材80の上に載り、この弾性部材80が移動部材62の重量で圧縮変形することにより、図5で示した流通路72は弾性部材80によって遮断される。これにより、シャッターカーテン30の全閉時において、当接部材61と移動部材62との間の極めて高度の密閉性を確保することができる。
また、図9で示すように、シャッターカーテン30が火災発生による風圧73を受け、これにより、移動部材62が当接部材61に対して斜め上方へ持ち上げられても、この持ち上がり量が圧縮変形していた弾性部材80の弾性復元変形量の範囲内であれば、流通路72の遮断状態は維持され、また、持ち上がり量が弾性復元変形量を超えても、流通路72は弾性部材80のために狭められているため、当接部材61と移動部材62との間の高度の密閉性を維持できる。
このため、この実施形態における弾性部材80は、当接部材61と移動部材62との間の隙間を狭窄又は閉塞する隙間対処部材となっており、この隙間対処部材により、当接部材61と移動部材62からなる座板51自体の充分な密閉性が確保されている。
なお、この実施形態では、図8で示されているように、内側延出部61D,61Eが外側延出部68A,69Aの上に載ることによって当接部材61が移動部材62に吊り下げられているときに、移動部材62の下面と弾性部材80との間に隙間が生じているが、これよりも弾性部材の体積を増大させ、弾性部材の上面が移動部材62の下面に常時接触するようにしてもよい。
図10及び図11は、移動部材62の外側延出部68A,69Aの上面に弾性部材90を固定配置した実施形態を示す。
この実施形態では、図10で示すように、当接部材61が移動部材62に吊り下げられているときに、弾性部材90は内側延出部61D,61Eから受ける当接部材61の重量で圧縮変形しており、当接部材61が床5に当接してシャッターカーテン30が全閉状態となったときにも、元の形状に弾性復元した弾性部材90の上面が内側延出部61D,61Eと接触していると、図5の流通路72は弾性部材90で遮断される。また、シャッターカーテン30が全閉状態となったときに弾性部材90の上面が内側延出部61D,61Eから離れていても、流通路72は弾性部材90で狭められているため、当接部材61と移動部材62との間の高度の密閉性を維持できる。
また、図11で示すように、シャッターカーテン30が火災発生による風圧73を受け、これにより、移動部材62が当接部材61に対して斜め上方へ持ち上げられた場合には、2個の弾性部材90の一方が圧縮されるため、流通路72はこの圧縮変形した弾性部材90で遮断される。また、移動部材62の持ち上がり量が小さいために2個の弾性部材90が圧縮されない場合にも、流通路72は弾性部材90で狭められ、これにより、当接部材61と移動部材62との間の高度の密閉性を維持できる。
したがって、この実施形態でも、弾性部材90は、当接部材61と移動部材62との間の隙間を狭窄又は閉塞する隙間対処部材となっており、この隙間対処部材のため、当接部材61と移動部材62からなる座板51自体の充分な密閉性を確保することができる。
図12の実施形態の座板51も、シャッターカーテン30の全閉時に床5に当接する当接部材101と、この当接部材101が床5に当接したときに、当接部材101に対して斜め上方を含む上方へ移動可能となっている移動部材102とで構成されているが、移動部材102の外側部材108,109は、ウエイト部材65〜67の下部でシャッターカーテン30の厚さ方向外側に膨出した膨出部108A,109Aと、膨出部108A,109Aの下端部からシャッターカーテン30の厚さ方向内側へ延出した内側延出部108B,109Bとを有する。このため、移動部材102は、下面に開口部103が形成され、内部がこの開口部103と連通した内部空間104となった中空形状になっている。
当接部材101は、開口端部に外側延出部101A,101Bを備えたチャンネル材からなり、当接部材101の上部が移動部材102の内部空間104に挿入されることにより、外側延出部101A,101Bは内側延出部108B,109Bの上に載せられている。これにより、シャッターカーテン30の全開時や開閉途中時には、当接部材101は移動部材102に吊り下げられている。
シャッターカーテン30の全閉時には、当接部材101が床5に当接し、外側延出部101A,101Bは内部空間104の上部へ大きく侵入する。また、シャッターカーテン30が開き移動すると、内側延出部108B,109Bの上面が外側延出部101A,101Bの下面に当接することによってこれらの内側延出部108B,109Bと外側延出部101A,101Bとが連結部となることにより、当接部材101と移動部材102が一体となって上方へ移動する。
そして、シャッターカーテン30の全閉時に、火災の発生に伴う風圧をシャッターカーテン30が受けてこのシャッターカーテン30が撓み変形したときには、これまでの実施形態と同様に、移動部材102は、当接部材101に対してシャッターカーテン30の撓み変形方向にしたがって斜め上方へ移動し、当接部材101は床5に着床した状態を維持する。
この実施形態においても、図8及び図9、図10及び図11の各実施形態で説明した隙間対処部材でもある弾性部材80,90と同様の部材を内部空間104等に配置してもよい。