JP4474693B2 - 化学物質のエストロゲンレセプター活性調節能の測定用細胞 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学物質のエストロゲンレセプター活性調節能の測定用細胞に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
近年、環境中の幾つかの化学物質がエストロゲン様作用または抗エストロゲン様作用を示すことが報告されている。かかる化学物質の作用は、動物のホルモンバランスを崩し生態系の混乱や疾患の原因等となることが危惧されることから、化学物質の安全性評価の一環として化学物質のエストロゲン様作用および抗エストロゲン様作用を測定する試みがなされている。
エストロゲンの作用機序として、エストロゲンの標的細胞に存在するエストロゲンレセプターにエストロゲンが結合すると、該レセプターが活性化され、染色体上の標的遺伝子の転写調節領域に存在するエストロゲンレセプター認識配列に結合し、標的遺伝子の転写を促進する。そこで、化学物質のエストロゲン様作用または抗エストロゲン様作用を測定するための方法として、化学物質のエストロゲンレセプター活性調節能を測定することのできる試験系の開発が切望されていた。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる状況の下、鋭意検討した結果、エストロゲンレセプターの転写調節能に対する化学物質の作用を測定するために用いることのできる凍結保存可能な動物細胞を作出することに成功し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
(1)エストロゲンレセプター遺伝子を発現し、
(2)染色体に、
(a)エストロゲンレセプター認識配列と動物細胞で機能可能な最小プロモーターとから実質的に構成される転写調節領域の下流に機能的に接続されてなるレポーター遺伝子と(b)動物細胞で機能可能な細胞選択マーカー遺伝子とを同一分子上に含むDNA
が導入されてなることを特徴とする動物細胞(以下、本発明細胞と記す。)を提供するものである。
【0004】
【発明の実施の形態】
以下、さらに詳細に本発明を説明する。
本発明細胞を調製するに際し、DNAを導入する宿主細胞として用いることのできる動物細胞としては、例えばヒト、マウス、ラット等由来の哺乳動物細胞や昆虫動物細胞などがあげられ、操作性や再現性を考慮すると安定に継代可能な細胞が好ましい。より具体的には、例えば、ヒト由来のMCF7細胞、T47D細胞、ヒト由来のHeLa細胞、マウス由来のNIH3T3細胞[いずれも、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能]などがあげられる。これらのうち、HeLa細胞、NIH3T3細胞等のエストロゲンレセプター非内在性細胞は、該細胞にエストロゲンレセプター遺伝子を導入し該遺伝子の発現能を付与して使用する。MCF7細胞、T47D細胞等のエストロゲンレセプター遺伝子を発現している細胞はそのまま宿主細胞として用いてもよく、また、該遺伝子を導入して該遺伝子の発現量を増大させて使用してもよい。
宿主細胞に導入されるエストロゲンレセプター遺伝子としては、ヒトエストロゲンレセプターα遺伝子(GenBank Accession No.X03635)、ヒトエストロゲンレセプターβ遺伝子(Biochem.Biophysical.Research.Com.,243,122-126(1998))、ラットエストロゲンレセプターα遺伝子(GenBank Accession No.X61098)、ラットエストロゲンレセプターβ遺伝子(GenBank Accession No.U57439)、マウスエストロゲンレセプターα遺伝子(GenBank Accession No.M38651)等に由来するcDNA遺伝子があげられる。これらの遺伝子はその翻訳開始コドンATGの上流にKozakのコンセンサス配列(Nucleic Acids Res., 12, 857-872 (1984))が連結されていてもよい。
かかるエストロゲンレセプター遺伝子を宿主細胞で発現させるには、該遺伝子を、動物細胞で機能可能なプロモーターの下流に機能的に接続された形でベクターに挿入し、宿主細胞に導入するとよい。「プロモーターの下流に機能的に接続された」とは、宿主細胞において発現するようにプロモーターと結合された形を意味する。動物細胞で機能可能なプロモーターとしては、ラウス肉腫ウィルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーター、シミアンウィルス(SV40)の初期もしくは後期プロモーター、マウス乳頭腫ウィルス(MMTV)プロモーター等があげられる。また、ベクターとしては、大腸菌中での複製起点および薬剤耐性マーカー遺伝子を有するプラスミド等があげられ、前記のようなプロモーターを有しその下流に遺伝子挿入部位を有する市販の発現用ベクターを利用してもよい。動物細胞で機能可能なプロモーターの下流に機能的に接続されてなるエストロゲンレセプター遺伝子が組込まれたベクターのDNAを宿主細胞に導入し、該遺伝子が染色体に導入された安定形質転換細胞を取得すると、試験に使用するたびに一過性に遺伝子導入を行う手間を省くことができる。このようなエストロゲンレセプター遺伝子を含むDNAは、レポーター遺伝子と細胞選択マーカー遺伝子とを含む後述のDNAと同時に、宿主細胞へ導入されてもよいし、別々に順次導入されてもよい。かかるエストロゲンレセプター遺伝子を含むDNAには、宿主細胞で機能可能な細胞選択マーカー遺伝子であって、後述のレポーター遺伝子の導入用に用いられるDNAに含まれる細胞選択マーカー遺伝子とは異なる形質をコードする遺伝子が同一分子上に含まれていると、形質転換細胞の選択がより容易となる。
【0005】
エストロゲンレセプターの転写調節を受ける遺伝子の転写活性の指標とするレポーター遺伝子としては、その転写産物(レポーター蛋白質)の有する酵素活性等に基づいて発現量が測定できる遺伝子が、発現量の測定が容易である点で好ましく、例えば、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素蛋白質をコードする遺伝子があげられる。
前記のレポーター遺伝子は、宿主細胞においてエストロゲンレセプターの転写調節下に発現させるために、エストロゲンレセプター認識配列と最小プロモーターとから実質的に構成される転写調節領域の下流に機能的に接続されている。ここで、「エストロゲンレセプター認識配列」とは、一般にエストロゲン応答配列(estrogen response element;ERE)とも呼ばれる特定の塩基配列であって、エストロゲンレセプターによって転写活性が調節される標的遺伝子の転写調節領域に在し、例えばエストロゲンとエストロゲンレセプターとの複合体が、該配列を認識しここに結合してエストロゲン依存性に標的遺伝子の転写を促進する。このようなエストロゲンレセプター認識配列としては、具体的には例えば、アフリカツメガエルのビテロゲニン遺伝子の5'上流領域の塩基配列(Cell.,57,1139-1146)等があげられる。かかる塩基配列を有するDNAは、化学合成するか、PCR法などにより増幅しクローニングする等により調製することができる。また、EREのコンセンサス配列[5'-AGGTCAnnnTGACCTT-3']を1回以上含む塩基配列からなるDNAを化学合成して用いてもよい。尚、十分な転写調節能を得るには、前記のコンセンサス配列は通常2〜5程度タンデムに連結されていることが好ましい。
また、「最小プロモーター」とは、RNAポリメラーゼIIによる転写開始部位を決定し最低限の転写水準維持に関与するDNA領域であって、コアプロモーターともいわれ、通常、遺伝子の転写開始部位付近の比較的狭い部分にみられる領域である。このような領域の塩基配列としては、例えば、TATAボックスおよび転写開始点近傍の塩基配列があげられ、具体的には例えば、マウスのメタロチオネインI遺伝子の5'上流領域の−33番目(転写開始点を+1番目とする。以下、同様。)の塩基から+15番目の塩基までの塩基配列(Genbank Accession No.J00605)や、チキンオボアルブミン遺伝子の5'上流領域の−40番目の塩基から+10番目の塩基までの塩基配列(Genbank accession No.J00895)等があげられる。本発明細胞において用いられる「最少プロモーター」の転写活性としては、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のチミジンキナーゼ(tk)遺伝子の5'上流領域の−130番目の塩基から+53番目の塩基までの塩基配列(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,78,1441-1445(1981))からなるDNA領域の転写活性よりも弱い活性であると、転写活性を測定する際の構成的なバックグランド転写活性が低くなりリガンド応答性の転写活性の検出が感度よく行える点から好ましい。上記のような塩基配列からなるDNAは、例えば、その塩基配列に基づいて化学合成することなどにより調製することができる。
「リガンド応答性転写調節因子認識配列と最小プロモーターとから実質的に構成される転写調節領域」とは、転写調節に関わる主たる機能性エレメントとして、目的とするリガンド応答性転写調節因子認識配列と最小プロモーターとのみを含む転写制御領域を意味し、例えば他の転写調節因子の認識配列等の転写調節に関わる他の機能性エレメントを含まないか、または、かかる機能性エレメントを含んでいても、それは前記リガンド応答性転写調節因子認識配列と最小プロモーターとによる転写調節能を本質的に変化させることのない配列であることを意味する。
また、「転写調節領域の下流に機能的に接続されてなるレポーター遺伝子」とは、導入される宿主細胞において該転写調節領域の制御下に発現するように、該転写調節領域と接続された状態にあるレポーター遺伝子を意味する。
【0006】
本発明細胞を作製するに際し、宿主細胞の形質転換に用いられるDNAには、上記のレポーター遺伝子の他に、宿主細胞(動物細胞)で機能可能な細胞選択マーカー遺伝子が含まれる。「細胞選択マーカー遺伝子」とは、該遺伝子を含むDNAで形質転換された細胞を非形質転換細胞と見分ける際に目印となり得る表現形質をコードする遺伝子である。「動物細胞で機能可能な」とは、動物細胞で前記形質を発現することができることを意味し、例えば、動物細胞で転写開始能を有するプロモーターの制御下にあって動物細胞で発現可能な状態にある遺伝子であって、動物細胞で有効な細胞選択用の表現形質をコードする遺伝子があげられる。動物細胞で有効な細胞選択マーカー遺伝子としては、例えば、動物細胞の増殖を抑制または阻害する薬剤に対する耐性を細胞に付与することの可能な遺伝子をあげることができ、具体的には例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子(アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子)、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子)、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子(ブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子)などが挙げられ、形質転換細胞の選抜がより短期間で行える点でブラストサイジンS耐性付与遺伝子を好ましくあげることができる。ブラストサイジンS耐性付与遺伝子は、例えば、市販のプラスミドpUCSV-BSDなどから得ることができる。
【0007】
「(a)リガンド応答性転写調節因子認識配列と最小プロモーターとから実質的に構成される転写調節領域の下流に機能的に接続されてなるレポーター遺伝子と(b)該動物細胞で機能可能な細胞選択マーカー遺伝子とを同一分子上に含むDNA」は、例えばこれらの遺伝子を同一ベクター上に組込むことによって調製される。ベクターとしては、取扱い易く、ベクター分子内または分子間の遺伝子組換えや安定形質転換細胞における染色体からの脱落等が起こる頻度が低くなると期待される点から、コンパクトな大きさであることが望ましく、例えば、およそ2kb〜10kb程度のプラスミドがあげられる。また、該ベクターに遺伝子を組込むにあたって大腸菌を宿主として使用すると効率よく操作を行うことができる点から、大腸菌ベクターとしての機能、すなわち大腸菌内で機能可能な複製起点、薬剤耐性遺伝子、遺伝子挿入用制限酵素認識部位等を有していることが好ましい。より具体的には例えば、ホタルルシフェラーゼ遺伝子(レポーター遺伝子)を保有するプラスミドの該遺伝子の上流に、アフリカツメガエルのビテロゲニン遺伝子の5'上流領域に由来しエストロゲンレセプター認識配列を含む塩基配列からなるDNAとマウスメタロチオネインI遺伝子由来の最小プロモーターとを組込み、さらに、該プラスミドに、例えばSV40初期プロモーターに接続されてなるブラストサイジンS耐性付与遺伝子を組込むことにより、上記の構成のDNAを調製することができる。
【0008】
本発明細胞を調製するには、例えば、前記のようにして調製された(「(a)リガンド応答性転写調節因子認識配列と最小プロモーターとから実質的に構成される転写調節領域の下流に機能的に接続されてなるレポーター遺伝子と(b)該動物細胞で機能可能な細胞選択マーカー遺伝子とを同一分子上に含むDNA」を宿主細胞に導入し、安定形質転換細胞を選抜するとよい。具体的には例えば、まず、MCF7細胞などの宿主細胞をシャーレに播き(105〜107細胞/直径6〜10cmシャーレ)、5〜10%程度の血清を含有するαMEM培地等を用いて、5% CO2および飽和湿度条件下に37℃で数時間〜一晩程度培養する。このようにして培養した細胞へ、上記DNAを導入する。DNA導入法としては、エレクトロポレーション法、燐酸カルシウム法、リポフェクション法等の一般的な方法があげられる。具体的には例えば、市販のリポフェクトアミン(GIBCO製)を用いる場合には、添付のマニュアルに従って操作を行なうとよい。細胞量に対するリポフェクトアミンの量、導入されるDNAの量などについて予備検討を行い最適条件を求めておくとよい。宿主細胞に導入されるDNAの純度としては、CsCl密度勾配遠心法で精製したプラスミドDNAまたはそれとほぼ同等の純度が望ましい。宿主細胞に導入されるDNAの形状としては、上記のようなレポーター遺伝子と細胞選択マーカー遺伝子とが組込まれたプラスミドのDNAが環状のまま宿主細胞へ導入されてもよいが、一般的には、各遺伝子の発現に影響を与えない領域に存在する制限酵素部位で切断されることにより直鎖状とされたDNAが、宿主細胞に導入されるとよい。
導入されたDNAによって安定に形質転換された細胞を取得するには、まず、前記のようにしてDNAが導入された細胞を、通常の細胞培養液(培地)中で一日程度そのまま培養する。次に、細胞を常法(トリプシン処理等)に従って剥がして播き直した後、直ちに、宿主細胞へ導入された細胞選択マーカー遺伝子に対応する選択条件下に培養を開始する。即ち、細胞選択マーカー遺伝子が薬剤耐性付与遺伝子である場合は、形質転換細胞に耐性が付与される薬剤を培地に加え、形質転換細胞に由来するコロニーが適当な大きさになるまで該薬剤存在下で培養を続ける。この間必要に応じて、薬剤が添加された新しい培地への培地交換を1〜3回/週の割合で行う。
このようにして得られたコロニーを複数に分割して植え直し、細胞を増殖させた後、その一部に、目的とするエストロゲンレセプターのリガンドの溶媒溶液を添加して24時間程度培養した後、レポーター遺伝子の発現量を測定する。また、対照として、溶媒のみを添加した系の発現量を測定する。レポーター遺伝子の発現量の測定法は、用いる個々のレポーター遺伝子の種類によるが、レポーター遺伝子産物が培地に分泌される場合を除き、一般的には細胞溶解剤処理や超音波処理等で該細胞の細胞膜を破壊して細胞抽出液を調製し、該抽出液に含まれるレポーター遺伝子産物を定量する。例えば、レポーター遺伝子産物が酵素蛋白質である場合は、前記抽出液中の酵素蛋白質を該酵素に特異的な基質と反応させ、生ずる発光量、蛍光量、吸光度などを測定することによりレポーター遺伝子産物による酵素活性を定量し、レポーター遺伝子産物量、ひいては、レポーター遺伝子の発現量の指標とする。このようにして細胞をリガンドと接触させた系のレポーター遺伝子の発現量が、溶媒のみを添加した系におけるレポーター遺伝子の発現量に対して少なくとも2倍以上、好ましくは5倍以上高い値を示した細胞を選択する。なお、このようにして得られた細胞が単一の形質転換細胞で構成されていない場合には、該細胞を限界希釈培養し、単一の細胞からなるコロニーを選択してもよい。
【0009】
以上のようにして得られる本発明細胞は、例えば、エストロゲンレセプターに対して、アゴニスト作用を示す化学物質や、アンタゴニスト作用を示す化学物質の同定に利用することができる。
具体的には、まず、本発明細胞を細胞培養容器に播種し培養する。例えば96穴プレートを使用する場合は、通常、1穴あたり103から2x104個程度の細胞を播種し、数時間〜一晩程度培養するとよい。また、血清が添加された培地を培養に用いる場合には、培地に加える血清を例えば活性炭等で処理して血清中に含まれるリガンドをあらかじめ除いておいてもよい。次いで、かかる細胞培養液に被験化学物質を添加する。被験化学物質のアゴニスト活性を測定する場合には、被験化学物質を溶媒に溶解させた溶液、または、溶媒のみを、培養液における溶媒の最終体積濃度が通常0.5%〜2%以下になるようにして前記の細胞培養液に添加する。また、被験化学物質のアンタゴニスト活性を測定する場合には、エストロゲンレセプターのリガンド、例えば17β−エストラジオールを溶媒に溶解させた溶液が、培養液における該リガンドの濃度が通常EC50程度となるように前記培養液に添加された系、および、前記の系にさらに被験化学物質が添加された系を調製する。上記のようにして培養液に添加される溶媒には、例えば、蒸留水、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、エタノール等が用いられる。また、被験化学物質を水溶液として添加する場合には、該水溶液をポアサイズ20μm以下のフィルターなどでろ過滅菌した後に培養系に添加するとよい。
前記の細胞を、例えば、数時間以上72時間程度まで培養した後、上述のようにレポーター遺伝子の発現量を測定する。例えば、レポーター遺伝子がホタルルシフェラーゼ遺伝子である場合には、まず培養上清を除去した後、器壁に接着した細胞をPBS(-)等で洗い、該細胞に細胞溶解剤などを添加して細胞を破壊し細胞抽出物を調製する。この細胞抽出物をレポーター遺伝子産物であるルシフェラーゼの試料として、ルシフェラーゼの基質であるルシフェリンと反応させ、生ずる発光量を定量する。被験化学物質のアゴニスト活性を測定する試験系において、溶媒のみが添加された系の細胞よりも、被験物質が添加された系の細胞の方が、細胞あたりのルシフェラーゼ活性が高い、すなわち、レポーター遺伝子産物量が多い場合は、その被験物質はエストロゲンレセプターに対してアゴニスト活性を示すと判断される。また、被験化学物質のアンタゴニスト活性を測定する試験系において、エストロゲンレセプターのリガンドのみが添加された系の細胞のルシフェラーゼ活性に比較して、該リガンドと被験化学物質とが添加された系の細胞のルシフェラーゼ活性が低い場合には、その被験物質はエストロゲンレセプターに対してアンタゴニスト活性を持つと判断される。
【0010】
上述のようにして、本発明細胞を用いてエストロゲンレセプターの転写調節を受ける遺伝子の転写活性を種々の化学物質の存在下に測定することができ、かかる測定値に基づいてエストロゲンレセプターの転写調節能に対する化学物質の作用を評価することができ、エストロゲンレセプターに対するアゴニストやアンタゴニストを同定することができる。かかる評価、同定方法は、エストロゲン様作用または抗エストロゲン様作用を有する内分泌撹乱化学物質等の検出に利用することができ、また、エストロゲンレセプターをターゲットとする医薬品の有効成分の探索に利用することもできる。
本発明細胞は凍結保存が可能であり、必要に応じて起眠して使用することができる。本発明細胞を試験に用いることにより、レポーター遺伝子が一過性に導入された細胞を用いる場合と比較して、試験毎の遺伝子導入や細胞選抜等の煩雑な操作を省くことができ、また、一定の性能の細胞を試験に用いることができることから、再現性良く測定することが可能となる。よって、本発明細胞は、例えばハイスループットスクリーニング等の自動化された大規模スクリーニング法により上述のような化学物質の探索や検出等を行う際にも有用である。
【0011】
【実施例】
以下に、実施例および試験例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
実施例1 (レポーター遺伝子と細胞選択マーカー遺伝子とを含むプラスミドの作製)
エストロゲンレセプター認識配列を含むアフリカツメガエル由来ビテロゲニン遺伝子上流の塩基配列(5'-TCGACAAAGTCAGGTCACAGTGACCTGATCAAG-3')からなるオリゴヌクレオチドおよび該塩基配列と相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをDNA合成機にて合成し、これらをアニーリングさせて2本鎖DNA(該DNAを、以下、ERE DNAと記す。)とした後、T4リガーゼを作用させて該2本鎖DNAをタンデムに結合させ、これにT4ポリヌクレオチドカイネースを作用させてその両末端をリン酸化した。
マウスメタロチオネインI遺伝子のTATA box近傍の塩基配列とリーダー配列に由来する塩基配列からなる2本のオリゴヌクレオチド;5'-GATCTCGACTATAAAGAGGGCAGGCTGTCCTCTAAGCGTCACCACGACTTCA-3'、および、5'-AGCTTGAAGTCGTGGTGACGCTTAGAGGACAGCCTGCCCTCTTTATAGTCGA-3' をアニーリングさせて2本鎖DNAとし、これにT4ポリヌクレオチドカイネースを作用させてその両末端をリン酸化した(該DNAを、以下、TATA DNAと記す。)。一方、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドpGL3(プロメガ社製)を制限酵素Bgl IIおよびHind IIIで消化した後、これにBacterial alkaline phosphatase(BAP)を加えて65℃で1時間保温した。次いで、該保温液を低融点アガロース(AgaroseL;ニッポンジーン社製)を用いた電気泳動に供し、バンド部分のゲルからDNAを回収した。該DNA約100ngと、前記のTATA DNA1μgとを混合し、T4リガーゼで結合させることによりプラスミドpGL3−TATAを作製した。
次に、pGL3-TATAを制限酵素Sma Iで消化した後、BAPを加えて65℃で1時間保温した。該保温液を低融点アガロースゲル電気泳動に供し、バンド部分のゲルからDNAを回収した。該DNA約100ngと、上記のタンデムに結合させ末端をリン酸化したERE DNA約1μgとを混合してT4リガーゼを反応させた後、該反応液を大腸菌 DH5αコンピテントセル(TOYOBO製)へ導入した。アンピシリン耐性を示した大腸菌のコロニー数個からそれぞれの保有するプラスミドのDNAを精製し、これらを制限酵素Kpn IおよびXho Iで消化して該消化液をアガロースゲル電気泳動で分析した。pGL3−TATAのSma I部位にERE DNAがタンデムに5コピー導入された構造を有するプラスミドを選択し、これをプラスミドpGL3−TATA-EREx5と名づけた。
次いで、プラスミドpUCSV-BSD(フナコシ社から購入)をBamHIで消化し、ブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子発現カセットをコードするDNAを調製した。該DNAと、前記プラスミドpGL3−TATA-EREx5をBamHIで消化しBAP処理して得られたDNAとを混合して、T4リガーゼを反応させた後、該反応液を大腸菌DH5αコンピテントセルに導入した。得られたアンピシリン耐性の大腸菌クローンからプラスミドDNAを調製し、それぞれを制限酵素Bam HIで消化して該消化液をアガロースゲル電気泳動で分析した。ブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子発現カセットがBam HIサイトに導入された構造を有するプラスミドを選択し、プラスミドpGL3-TATA-EREx5-BSDと名づけた。
【0013】
実施例2 (エストロゲンレセプター発現プラスミドの作製)
(1)エストロゲンレセプターα
ヒトエストロゲンレセプターαをコードするcDNAを取得するために、Genbank Accession NO.M12674に公開されているエストロゲンレセプターα遺伝子の塩基配列に基づき、フォワードプライマー:5'-CCTGCGGGGACACGGTCTGCACCCTGCCCGCGGCC-3'、および、リバースプライマー:5'-CAGGGAGCTCTCAGACTGTGGCAGGGAAACCCTCT-3'を設計し、DNA合成機(アプライドバイオシステムズ社製モデル394)を用いて合成した。
次に、ヒト肝 cDNA 10ng(クロンテック社製クイッククローンcDNA#7113−1)を鋳型にし、前記のプライマーをそれぞれ10pmol添加し、LA-Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)および該酵素に添付されたバッファーを用いて、反応液量を50μlとしてPCR反応を行った。該反応は、PCRsystem9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、95℃1分間次いで68℃3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。次いで、該反応液全量を、低融点アガロース(アガロースL:ニッポンジーン)を用いたアガロースゲル電気泳動に供した。既知配列から予想される大きさのバンドが増幅されていることを確認した後、そのバンドからDNAを回収し、該DNAとダイターミネーターシークエンスキットFS(アプライドバイオシステムズ社製)とを用いてダイレクトシークエンス用のサンプルを調製した。これを、オートシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル377)を用いた塩基配列解析に供し塩基配列を確認した。
上記のようにして取得されたDNA約100ngを鋳型にして、フォワードプライマー:5'-CCCAGCCACCATGACCATGACCCTCCACACCAAAGCATCT-3'、および、リバースプライマー:5'-CAGGGAGCTCTCAGACTGTGGCAGGGAAACCCTCT-3' を用いたPCRを行い、エストロゲンレセプターα遺伝子の翻訳開始コドンATGの直前にコザックのコンセンサス配列が付加されたDNAを調製した。すなわち、鋳型となるエストロゲンレセプターαcDNA 0.1μg、LA-Taq ポリメラーゼ(宝酒造社製)、該酵素に添付された反応バッファー、および上記プライマー各10pmolずつを混合し、反応液量を50μlとして、95℃1分間、次いで68℃にて3分間の保温を1サイクルとしてこれを20サイクル行った。このようにして得られた増幅物を低融点アガロースゲル電気泳動法により分離回収した。次にその約1μgを、DNA bluntingキット(宝酒造社製)で処理してその末端を平滑化し、これに次にT4ポリヌクレオチドカイネースを反応させてその末端をリン酸化した。該DNAをフェノール処理した後、エタノール沈殿法により精製し、その全量を下記の発現プラスミド作製用のインサートDNAとして用いた。
RSVプロモーターおよびネオマイシン耐性付与遺伝子を含むpRC/RSV(Invitrogen社製)を制限酵素Hind IIIで消化した後、BAPを加えて65℃で1時間保温した。次にフェノール処理・エタノール沈殿によりこれを精製した後、Bluntingキット(宝酒造社製)で処理して末端を平滑化し、低融点アガロース(ニッポンジーン社製;アガロースL)を用いたアガロースゲル電気泳動に供し、バンド部分のゲルからDNAを回収した。回収されたベクターDNA約100ngと、上記のインサートDNA全量を混合し、T4 リガーゼを添加して反応させた。該反応液を大腸菌DH5αコンピテントセルへ導入し、アンピシリン耐性を示したコロニーからプラスミドDNAを調製し、その塩基配列をABIモデル377型オートシークエンサーを用いてダイターミネーター法で決定した。得られた塩基配列を、前述のダイレクトシークエンスで得られた塩基配列と比較して、翻訳領域の塩基配列が完全に一致していることが確認できたプラスミドを選択し、pRC/RSV-hERαコザックと名づけた。
【0014】
(2)エストロゲンレセプターβ
530アミノ酸からなるヒトエストロゲンレセプターβをコードするcDNAを取得するために、フォワードプライマー:5'-TTGAGTTACTGAGTCCGATGAATGTGCTTGCTCTG-3、および、リバースプライマー:5'-AAATGAGGGACCACACAGCAGAAAGATGAAGCCCA-3'を設計し、DNA合成機(アプライドバイオシステムズ社製モデル394)を用いて合成した。
次に、ヒト脳 cDNA 10ng(クロンテック社製クイッククローンcDNA#7187−1)を鋳型にし、前記のプライマーをそれぞれ10pmol添加し、LA-Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)および該酵素に添付されたバッファーを用いて、反応液量を50μlとしてPCR反応を行った。該反応は、PCRsystem9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、95℃1分間次いで68℃3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。次いで、該反応液全量を、低融点アガロース(アガロースL:ニッポンジーン)を用いたアガロースゲル電気泳動に供した。既知配列から予想される大きさのバンドが増幅されていることを確認した後、そのバンドからDNAを回収し、該DNAとダイターミネーターシークエンスキットFS(アプライドバイオシステムズ社製)とを用いてダイレクトシークエンス用のサンプルを調製した。これを、オートシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル377)を用いた塩基配列解析に供し塩基配列を確認した。
上記のようにして取得されたDNA約100ngを鋳型にして、フォワードプライマー:5'-GCCGCGGCCGCCCAGCCACCATGGATATAAAAAACTCACCATCTAGCCTTAATTC-3'、および、リバースプライマー:5'-GGGTCTAGAAATGAGGGACCACACAGCAGAAAGATGAAGCCCA-3' を用いたPCRを行い、エストロゲンレセプターβ遺伝子の翻訳開始コドンATGの直前にコザックのコンセンサス配列が付加されたDNAを調製した。すなわち、鋳型となるエストロゲンレセプターαcDNA 0.1μg、LA-Taq ポリメラーゼ(宝酒造社製)、該酵素に添付された反応バッファー、および上記プライマー各10pmolずつを混合し、反応液量を50μlとして、95℃1分間、次いで68℃にて3分間の保温を1サイクルとしてこれを20サイクル行った。このようにして得られた増幅物を低融点アガロースゲル電気泳動法により分離回収した。次にその約1μgを、DNA bluntingキット(宝酒造社製)で処理してその末端を平滑化し、これに次にT4ポリヌクレオチドカイネースを反応させてその末端をリン酸化した。該DNAをフェノール処理した後、エタノール沈殿法により精製し、その全量を下記の発現プラスミド作製用のインサートDNAとして用いた。
RSVプロモーターおよびネオマイシン耐性付与遺伝子を含むpRC/RSV(Invitrogen社製)を制限酵素Hind IIIで消化した後、BAPを加えて65℃で1時間保温した。次にフェノール処理・エタノール沈殿によりこれを精製した後、Bluntingキット(宝酒造社製)で処理し末端を平滑化し、低融点アガロース(ニッポンジーン社製;アガロースL)を用いたアガロースゲル電気泳動に供し、バンド部分のゲルからDNAを回収した。回収されたベクターDNA約100ngと、上記のインサートDNA全量を混合し、T4 リガーゼを添加して反応させた。該反応液を大腸菌DH5αコンピテントセルへ導入し、アンピシリン耐性を示したコロニーからプラスミドDNAを調製し、その塩基配列をABIモデル377型オートシークエンサーを用いてダイターミネーター法で決定した。得られた塩基配列を、前述のダイレクトシークエンスで得られた塩基配列と比較して、翻訳領域の塩基配列が完全に一致していることが確認できたプラスミドを選択し、pRC/RSV-hERβコザックと名づけた。
【0015】
実施例3 (本発明細胞の作製)
(1)エストロゲンレセプターα
ヒト由来のHeLa細胞に、実施例1で作製されたプラスミドpGL3-TATA-EREx5-BSDのDNA、および、実施例2で作製されたエストロゲンレセプターαの発現プラスミドpRC/RSV-hERαコザックのDNAを、それぞれ直鎖化して導入し、エストロゲンレセプターαの転写調節を受ける遺伝子の転写活性測定に用いることのできる本発明細胞を作製した。
まず、プラスミドpGL3-TATA-EREx5-BSDのDNA、および、プラスミドpRC/RSV-hERαコザックのDNAをそれぞれSal Iで消化した。
HeLa細胞は、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬社製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。約5x105の細胞を培養し、翌日、該細胞にリポフェクトアミン(GIBCO社製)を用いたリポフェクション法で、上記の直鎖化されたプラスミドpGL3-TATA-EREx5-BSDのDNAおよびプラスミドpRC/RSV-hERαコザックのDNAを同時に導入した。リポフェクション法の条件はリポフェクトアミンに添付されたマニュアルの記載に従って、処理時間5時間、直鎖化されたプラスミドDNAの総量7μg(各々3.5μg)/シャーレ、リポフェクトアミン量は21μl/シャーレとした。リポフェクション処理後、培地を10%FBSを含むDMEM培地に交換して約36時間培養した。次いで、該細胞をトリプシン処理によりシャーレから剥がして回収し、終濃度800μg/mlのG418および終濃度16μg/mlのブラストサイジンSが添加された培地の入った培養容器に移し、培地を3日から4日ごとに新しい培地(前記の選択薬剤入り)に交換しながら約1ヶ月間培養した。出現した直径1mmから数mmの細胞コロニーを、あらかじめ培地を分注しておいた96穴ビュープレート(ベルトールド社製)にコロニーごと移し、さらに培養した。細胞がウェルの底面の半分以上を占める程度までに増殖したら(移植から約5日後)、トリプシン処理により細胞を剥がして回収し、三等分して3枚の新しい96穴ビュープレートに播種した。一枚はそのまま継代と培養を続け、マスタープレートとした。残り二枚のうちの一方にはDMSOに溶解させた17βエストラジオールを終濃度が10nMとなるように加え、もう一方には前記の17βエストラジオール溶解液と同容積のDMSOを加え、それぞれを二日間培養した。次いでこれら2枚のプレートについて、ウェルから培地を除き、器壁に接着している細胞をPBS(-)で2回洗浄した後、5倍に希釈したPGC50(東洋インキ社製)をウェルあたり20μlずつ加えて室温に30分間放置した。該プレートを、酵素基質自動インジェクター付きルミノメーターLB96P(ベルトールド社製)にそれぞれセットし、50μlの基質液PGL100(東洋インキ社製)を自動分注して、ルシフェラーゼ活性を測定した。17βエストラジオールを添加した系の方が、17βエストラジオールを加えていない系よりも、2倍以上高いルシフェラーゼ活性を示す細胞を選択した。
【0016】
(2)エストロゲンレセプターβ
ヒト由来のHeLa細胞に、実施例1で作製されたプラスミドpGL3-TATA-EREx5-BSDのDNA、および、実施例2で作製されたエストロゲンレセプターβの発現プラスミドpRC/RSV-hERβコザックのDNAを、それぞれ直鎖化して導入し、エストロゲンレセプターβの転写調節を受ける遺伝子の転写活性測定に用いることのできる本発明細胞を作製した。すなわち、エストロゲンレセプターαの発現プラスミドpRC/RSV-hERαコザックに替えて、エストロゲンレセプターβの発現プラスミドpRC/RSV-hERβコザックを使用し、他は前記(1)と同様に操作した。得られた形質転換細胞について、前記(1)と同様に17βエストラジオール存在下および17βエストラジオール非存在下のルシフェラーゼ活性を測定し、17βエストラジオールを添加した系の方が、17βエストラジオールを加えていない系よりも、2倍以上高いルシフェラーゼ活性を示す細胞を選択した。
【0017】
試験例1 (本発明細胞を用いたレポーターアッセイ)
実施例3に記載のようにして作製された本発明細胞を、フェノールレッドフリーのMEM培地(日水製薬社製)にチャコールデキストラン処理済みFBSを終濃度10%となるよう加えた培地を用いて、ルシフェラーゼ発光測定用兼培養用96穴プレート(コーニングコースター社製#3903)に約2x104細胞/穴ずつ播種し、一晩培養した。次いで、該細胞に、DMSOに溶解させた17βエストラジオールを添加した。このとき、17βエストラジオールの終濃度が試験区ごとに10倍ずつ高くなるように、また、全ての試験区の培養液中の最終DMSO濃度が0.1%に揃うように溶解液を調製して添加した。17βエストラジオールが添加されていない系として、溶媒(DMSO)のみを加えた対照区を設けた。
これらの細胞を培養し、17βエストラジオール添加から36時間後に培地を除き、PBS(−)で2回細胞を洗浄した後、5倍に希釈したPGC50(東洋インキ社製)を20μlずつ加えて室温に30分間放置した。このプレートを、酵素基質自動インジェクター付きルミノメーターLB96P(ベルトールド製)にセットし、50μlの基質液PGL100(東洋インキ製)を自動分注して、ルシフェラーゼ活性を測定した。結果を図1および図2に示す。エストロゲンレセプターαの転写調節を受ける遺伝子の転写活性測定用の本発明細胞、および、エストロゲンレセプターβの転写調節を受ける遺伝子の転写活性測定用の本発明細胞のいずれにおいても、細胞に添加された17βエストラジオール濃度の増加に伴うルシフェラーゼ活性の上昇が認められた。
上記方法と同様にして、17βエストラジオールに替えて被験化学物質を各試験区に添加して試験することにより、目的とするエストロゲンレセプターに対する被験化学物質のアゴニスト活性を測定することができる。
また、被験化学物質とともに17βエストラジオールをEC50値程度の濃度となるように各試験区に添加して上記と同様に試験を行うと、目的とするエストロゲンレセプターに対する被験化学物質のアンタゴニスト活性を測定することができる。
【0018】
【発明の効果】
本発明により、エストロゲンレセプターの転写調節能に対する化学物質の作用を評価するために用いることのできる細胞が提供可能となる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明細胞を用いたレポーターアッセイによって、17βエストラジオールのエストロゲンレセプターα活性化能を測定した結果を示す図である。カラムは左から、17βエストラジオールの溶媒に用いたDMSOのみを添加した区(DMSO)、終濃度0.1pMとなるよう17βエストラジオールを添加した区、終濃度1pMとなるよう17βエストラジオールを添加した区(1pM E2)、終濃度10pMとなるよう17βエストラジオールを添加した区、終濃度100pMとなるよう17βエストラジオールを添加した区(100pM E2)、終濃度1nMとなるよう17βエストラジオールを添加した区、終濃度10nMとなるよう17βエストラジオールを添加した区(10nM E2)、終濃度100nMとなるよう17βエストラジオールを添加した区を示す。
【図2】本発明細胞を用いたレポーターアッセイによって、17βエストラジオールのエストロゲンレセプターβ活性化能を測定した結果を示す図である。カラムは左から、17βエストラジオールの溶媒に用いたDMSOのみを添加した区(DMSO)、終濃度0.1pMとなるよう17βエストラジオールを添加した区、終濃度1pMとなるよう17βエストラジオールを添加した区(1pM E2)、終濃度10pMとなるよう17βエストラジオールを添加した区、終濃度100pMとなるよう17βエストラジオールを添加した区(100pM E2)、終濃度1nMとなるよう17βエストラジオールを添加した区、終濃度10nMとなるよう17βエストラジオールを添加した区(10nM E2)、終濃度100nMとなるよう17βエストラジオールを添加した区を示す。
Claims (4)
- (1)エストロゲンレセプター遺伝子を発現し、(2)染色体に、(a)エストロゲンレセプター認識配列と動物細胞で機能可能な最小プロモーターであるTATAボックスからなるプロモーターとから構成される転写調節領域の下流に機能的に接続されてなるレポーター遺伝子と(b)動物細胞で機能可能な細胞選択マーカー遺伝子とを同一分子上に含むDNAが導入されてなり、当該動物細胞がエストロゲンレセプター非内在性細胞であるヒト由来のHela細胞であることを特徴とする安定形質転換動物細胞。
- 染色体に、(1)動物細胞で機能可能なプロモーターの下流に機能的に接続されてなるエストロゲンレセプター遺伝子、および、(2)(a)エストロゲンレセプター認識配列と動物細胞で機能可能な最小プロモーターであるTATAボックスからなるプロモーターとから構成される転写調節領域の下流に機能的に接続されてなるレポーター遺伝子と(b)動物細胞で機能可能な細胞選択マーカー遺伝子とを同一分子上に含むDNAが導入されてなり、当該動物細胞がエストロゲンレセプター非内在性細胞であるヒト由来のHela細胞である請求項1記載の安定形質転換動物細胞。
- エストロゲンレセプターがエストロゲンレセプターαである請求項1又は2記載の安定形質転換動物細胞。
- エストロゲンレセプターがエストロゲンレセプターβである請求項1又は2記載の安定形質転換動物細胞。
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