JP4473625B2 - 半導体デバイス耐圧評価装置及び耐圧シミュレーション方法 - Google Patents

半導体デバイス耐圧評価装置及び耐圧シミュレーション方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体デバイス、特に破壊電界に異方性をもつ半導体を用いた半導体デバイスの耐圧を予測する機能をもつ半導体デバイス耐圧評価装置及び耐圧シミュレーション方法に関する。
半導体パワーデバイスにおいてはオン抵抗を最小化し、耐圧を最大化するようなデバイス構造が求められる。従来のシリコンを半導体材料とした半導体パワーデバイスの開発においてはデバイスシミュレータが構造設計に用いられてきた。従来のデバイスシミュレータでは、例えば非特許文献1に記載されているように、シリコンの破壊電界強度と移動度を再現するような物理モデルが組み込まれ、設計し試作したパワー半導体デバイスのオン抵抗と耐圧を正確に予測してきた。
最近、シリコンを材料としたパワーデバイスの性能を飛躍的に凌駕する、炭化珪素を材料としたパワーデバイスが開発されている。炭化珪素はワイドバンドギャップ半導体であり、破壊電界強度がシリコンの10倍近い大きさなのでパワー半導体の耐圧とオン抵抗のトレードオフを改善できる。炭化珪素を材料としたパワーデバイスの開発においても、例えば非特許文献2に記載されているように、シリコンのパワーデバイスと同様にデバイスシミュレータがデバイスの構造設計に用いられ、耐圧とオン抵抗を予測して、開発を行っている。
デバイスシミュレータの開発を行っている企業においても、炭化珪素の特徴である異方性のある物理量を取り込んで計算できる、炭化珪素をターゲットとしたシミュレータの開発を行ってなっており、非特許文献3に記載されているように、移動度の異方性に関しては、ある程度素子の特性を予測できるようになってきている。
ところが、炭化珪素においては、移動度だけではなく破壊電界強度に異方性があることが知られている。破壊電界強度は特にパワーデバイスの性能に重要であり、その特性を考慮してデバイスシミュレーションをおこなうことは、炭化珪素のデバイス開発において不可欠である。従来のデバイスシミュレータは、本来シリコンのデバイス向けに開発されたので、物性値の等方性が仮定され、物性の異方性への対応が遅れていた。最近、炭化珪素などの半導体を想定した、移動度の異方性には対応するデバイスシミュレータは開発されたが、非特許文献4に記載されているように、破壊電界強度を定める衝突イオン化係数の異方性に対しては、結晶軸方向以外の一般の電界方向に対する衝突イオン化係数を、単純な補間法で計算するように扱っているなど充分対応しておらず、炭化珪素パワーデバイスの耐圧の予測精度が、従来のシリコンのパワーデバイスと比べて低いという問題があった。
パワーデバイス、パワーICハンドブック、コロナ社、72〜76頁 SiC素子の基礎と応用、荒井和雄編、オーム社、165〜186頁 M. Lades and G. Wachutka , "Extended Anisotropic Mobility Model Applied to 4H/6H-SiC Devices", Proc. IEEE SISPAD, pp. 169-171, 1997) K. Bertilsson, H.-E. Nilsson, C.S. Petersson, "Simulation of Anisotropic Breakdown in 4H-SiC Diodes", Computers in Power Electronics, 2000, COMPEL 2000, The 7th Workshop on 16-18 July 2000, pp. 118-120.
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は破壊電界強度の異方性を取り入れたデバイスシミュレーションを物理的な考察に基づいて行い、炭化珪素パワーデバイスの耐圧を精度よく予測する半導体デバイス耐圧評価装置及び耐圧シミュレーション方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の半導体デバイス耐圧評価装置は、設計された半導体デバイス内に格子点を定め、前記格子点毎に設計情報を設定する初期値設定部と、前記半導体デバイスに印加するバイアス条件を設定するバイアス設定部と、前記半導体デバイスの異方性を有する半導体物性値を用いて、ポアッソン方程式、電流連続方程式の連立方程式を解く連立計算部とを具備し、前記連立計算部は、前記ポアッソン方程式、電流連続方程式を連立させて、電位分布、電子・正孔からなるキャリアの濃度分布を計算する部分と、前記電位分布から計算する電界ベクトルに応じて、前記キャリアの移動度ベクトルを計算する部分と、前記移動度ベクトルと前記電界ベクトルの積である速度ベクトルを計算し、この速度ベクトルと前記電界の内積の値に応じて、前記電流連続方程式のキャリアの生成・再結合に関する項にパラメータとして関与するキャリアの衝突イオン化係数を計算する部分とを具備し、x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数をα x (E1)、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数をα y (E2)としたとき、α x (E1)=α y (E2)であるような電界(E1,E2)の値の組に対して、x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの移動度ベクトルのx成分をμ x (E1)、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の前記キャリアの移動度ベクトルのy成分をμ y (E2)として μ x (E1)*(E1) 2 =μ y (E2)*(E2) 2
が成り立つように前記キャリアの移動度ベクトルを決定し、電界ベクトル成分(Ex、Ey)を有する電界が印加される格子点の前記キャリアの移動度ベクトルは、前記キャリアの前記速度ベクトルと前記電界ベクトルの内積に関しμ x (E1)*(Ex) 2 +μ y (E2)*(Ey) 2 =μ x (E1)*(E1) 2 =μ y (E2)*(E2) 2 なる関係式を有し、前記衝突イオン化係数に関するα x (E1)=α y (E2)を満足する前記(E1、E2)の値の組の中から、前記関係式を満たすような(E1、E2)を選び、このE1を前記衝突イオン化係数α x (E1)に代入することにより、前記格子点の前記キャリアの衝突イオン化係数が計算されることを特徴とする。
また、本発明の耐圧シミュレーション方法は、設計された半導体デバイス内に格子点を定め、前記格子点毎に設計情報を設定するステップと、前記半導体デバイスに印加するバイアス条件を設定するステップと、前記半導体デバイスの異方性を有する半導体物性値を用いて、ポアッソン方程式、電流連続方程式の連立方程式を解くステップとを具備し、前記連立方程式を解くステップは、前記ポアッソン方程式、電流連続方程式を連立させて、電位分布、電子、正孔からなるキャリアの濃度分布を計算するステップと、前記電位分布から計算する電界に応じて、前記キャリアの移動度ベクトルを計算するステップと、前記電流連続方程式のキャリアの生成・再結合に関する項にパラメータとして関与する、前記格子点における前記キャリアの衝突イオン化係数を計算するステップとを具備し、前記衝突イオン化係数を計算するステップは、x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数をαx(E1)、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の電子のイオン化係数をαy(E2)として、電界ベクトル成分(Ex,Ey)を有する電界が印加される格子点において、前記衝突イオン化係数がαx(E1)=αy(E2)であるような(E1,E2)の値の組の中から、(Ex)2/(E1)2+(Ey)2/(E2)2=1を満たすような(E1,E2)を選び、このE1を前記αx(E1)に代入することにより、この格子点の衝突イオン化係数α(Ex,Ey)を得ることを特徴とする。
本発明によれば、結晶軸方向での衝突イオン化係数のデータからあらゆる電界方向の衝突イオン化係数を簡便かつ正確に計算できる手法をとっているためデバイスシミュレーションを正確かつ迅速に実行でき、破壊電界強度に異方性のある半導体の絶縁破壊耐圧を精度よく予測することができる。
本発明の実施形態の説明の前に、本実施形態で行なう半導体デバイス耐圧評価の基本的なフローを説明する。本実施形態では、炭化珪素のように物性値に異方性を有する半導体を使用した半導体デバイスの耐圧を予測する。例えば、図7に示すようなpn接合を有するダイオードの耐圧を予測する事例を考える。ダイードの各領域の寸法、p型領域、n型領域の濃度などの設計諸元はすでに設定されているものとする。アノード電極A,カソード電極Cに印加する逆バイアス電圧を徐々に増加させたときの電流を予測して、電流が所定の閾値を超えたときの印加電圧を耐圧と判定する。
上記の耐圧の算出は、半導体装置が定常状態において満足する3つの基本的な方程式、即ちポアッソン方程式、電子電流連続方程式、正孔電流連続方程式からなる連立方程式を解くことにより行われる。上記の連立方程式を解くに当たり、デバイス上の位置情報、不純物濃度情報などの諸元は、図7のM部に部分的に示したごとく、デバイスにメッシュ状の格子点を割り付け、これらの格子点に対して与えられる。
次に、上記の耐圧予測方式に基づく本発明の半導体デバイス耐圧評価シミュレーション及び装置について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体デバイス耐圧評価装置の概略構成を示すブロック図である。図1において、入力部1と初期値設定部2はシミュレーションに必要な各種情報を設定する。バイアス設定部3は、耐圧を評価する際のバイアス条件を設定する。異方性を考慮した連立計算部4は、シミュレーション用各格子点での電位、キャリア(電、正孔)濃度を計算する部分4aと、各格子点での電位に基づいてキャリアの移動度を計算する移動度計算部4bと、電位から求められる電界に基づいてキャリアの衝突イオン化係数を計算する衝突イオン化計算部4cとを含む。出力部5はその計算結果を出力する。全体制御部6は、上記の各部を中央制御する部分である。
図2はデバイスシミュレーションの基本的な処理手順を示すフローチャートである。まず、シミュレーションに必要な情報を入力する(ステップS1)。ここでは、デバイス構造、不純物分布及びバイアス印加条件などの設定情報を入力する。デバイス構造や不純物分布のデータは、プロセス・シミュレーションの結果を用いてもよいし、あるいは、モデラと呼ばれる形状入力システムで記述したデバイス構造を入力してもよい。
続いて、入力された設定情報を解釈して、シミュレーションの実行の準備を行う(ステップS2)。より具体的には、設定情報に含まれるデバイス構造と不純物分布から、格子点と格子点上の不純物濃度を設定し、バイアス印加条件のスケジューリングを行う。
続いて、シミュレーション用の初期値を設定する(ステップS3)。より具体的には、格子点上の電位、電子濃度及び正孔濃度の初期値を決定する。例えば、電荷中性条件と質量保存則に基づいて電子濃度と正孔濃度を求める。また、ボルツマン統計に従って電位を決定する。
続いて、シミュレーション対象であるデバイスの各端子のバイアス条件を設定する(ステップS4)。続いて、ポアソン方程式、電子の電流連続方程式、及び正孔の電流連続方程式を連立させて、電位、電子濃度及び正孔濃度を計算する(ステップS5)。方程式のパラメータである電子及び正孔の移動度ベクトルは、ドーピング濃度、電界及び結晶方位の関数として与えられる。衝突イオン化係数は、電位の微分である電界の関数として与えられ、以下の電流連続方程式(3)、(4)式のGR項(電子、正孔の生成・再結合に関する項)にパラメータとして関与する。具体的には、衝突イオン化係数に関与する電子、正孔の生成に係わる項Gimpactが以下の(1)式で与えられ、電流連続方程式のGR項の1つとして代入される。
Gimpact=αn nvn +αp pvp … (1)
ここで、αn は電子の衝突イオン化係数、nは電子濃度、vn は電子速度(ベクトル値)、αp は正孔の衝突イオン化係数、pは正孔濃度、vp は正孔速度(ベクトル値)である。
次に、方程式の解法について詳細に説明する。ポアソン方程式は下記の(2)式で、電子及び正孔の電流連続方程式はそれぞれ(3)式及び(4)式で表される。また、(3)式及び(4)式中のnvn、pvpはそれぞれ(5)式及び(6)で表される。
Figure 0004473625
Figure 0004473625
Figure 0004473625
Figure 0004473625
Figure 0004473625
上式において、εは誘電率、ψは電位、qは単位素電荷、ND はドナー濃度、NA はアクセプタ濃度、pは正孔濃度、nは電子濃度、vn は電子速度、vp は正孔速度、GRは電子・正孔の生成・再結合項、μe は電子移動度、μh は正孔移動度、kB はボルツマン定数、Tは温度である。
電位ψ、電子濃度n及び正孔濃度pの修正量をそれぞれδψ、δn、δp、近似解をψ0 、n0 、p0 とすると、(7)式に示す線形な式が得られる。
Figure 0004473625
(7)式の逆行列を求めることにより、電位ψ、電子濃度n及び正孔濃度pの修正量δψ、δn、δpが求まる。これらの修正量を用いて電位ψ0 、電子濃度n0 及び正孔濃度p0 を更新し、再び(7)式の逆行列を求める。修正量δψ、δn、δpが十分小さくなるまで反復計算を繰り返す。
上述の過程が、図2に示したステップS6およびステップS5への戻り部分に相当する。すなわち、ステップS6では、計算された電位、電子濃度及び正孔濃度の変動が小さいか否か、すなわちこれらの値が収束したか否かを判定し、収束するまでステップS5の処理を繰り返す。
なお、図7の電極部A,Cにも、格子点が割り付けられており、電極部格子点の電流密度を積分することにより、電極を通じて流れる電流を計算することができる。この計算された電流値が基準値を超えたかを判定し(ステップS7)、超えていなかったらステップ4のバイアス条件を変えて(逆バイアス電圧を上げて)ステップS4以降の処理を繰り返し、主電流の流れる電極A,Cにおける電流値が所定の閾値を超えるとそのバイアス値を耐圧と判定し、計算結果を出力して処理を終了する(ステップS8)。
本発明は、ステップS5において、移動度と衝突イオン化係数のシミュレーション計算する際、異方性を考慮するところに特徴があるので、そのシミュレーションプロセスについて詳述する。等方性で処理する部分は、従来のシミュレーションと同様であるので、説明を省略する。
本実施形態のシミュレーション方法においては、移動度は各格子点の電界強度より定められ異方性があるものとする。衝突イオン化係数の異方性のデータはx軸、y軸に沿って与えられ、これらの軸は結晶軸に一致するものとする。x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の電子の衝突イオン化係数をαx(E1)、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の電子の衝突イオン化係数をαy(E2)として、実験により測定データが与えられている。なお、ここではキャリアとして電子を例にとり説明するが、正孔についても全く同様に計算することができる。
より具体的には、x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の電子の衝突イオン化係数αx(E1)を
αx(E1)=axexp(−b/E1) … (8)
また、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の電子の衝突イオン化係数αy(E2)を
αy(E2)=aexp(−b/E2) … (9)
という形を仮定して、測定データからパラメータa、a、b、bを抽出して、入力データとする。
x軸方向に一様にE1の電界が印加された場合の衝突イオン化係数と、y軸方向に一様にE2の電界が印加された場合の衝突イオン化係数との間には、αx(E1)=αy(E2)が成立するので、これより電界E1,E2の値の組を決定する関係式を導くことができる。
さらにx軸方向に一様に電界E1が印加された場合の電子移動度ベクトルのx成分μx(E1)、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の移動度ベクトルのy成分をμy(E2)とすると、衝突イオン化係数はキャリアの熱分布の関数であるため、その値が等しいことはキャリア温度が等しいことを意味する。よってx軸方向に一様に電界E1が印加された場合の熱エネルギーとしてのエネルギー散逸量と、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の熱エネルギーとしてのエネルギー散逸量は等しくなる。すなわち
μx(E1)*(E1)2 =μy(E2)*(E2)2 … (10)
が成りたつ。
上記のE1とE2の関係式があるので、もし一方の結晶軸方向の移動度の電界依存性が既知ならば、他方の結晶の軸方向の移動度の電子移動度ベクトルの電界依存性を計算できる。正孔についても、同様にして移動度ベクトルの電界依存性を計算することが可能である。
各格子点の電界ベクトル成分は一般に結晶軸方向とは異なるので、結晶軸方向で与えられた衝突イオン化係数から補間する必要がある。上記のE1,E2で与えられたエネルギー散逸量と同じ大きさのエネルギーを散逸する場合の一般の電界成分を(Ex,Ey)とする(但し、ベクトルの大きさノルムをEとする)。この場合の移動度ベクトルは、結晶軸方向のそれと、エネルギー散逸量が同じでキャリア温度は変化しない。従って、移動度のx方向成分をμx(E1)、y方向成分をμy(E2)とすると、
μx(E1)*(Ex)2+μy(E2)*(Ey)2
=μx(E1)*(E1)2=μy(E2)*(E2)2 … (11)
が成り立つ。移動度μと電界Eの積は速度となるので、上記(11)式の左辺は、速度ベクトルと電界ベクトルの内積であると言うことができる。
前述の衝突イオン化係数に関するαx(E1)=αy(E2)を満足する(E1、E2)の値の組の中から、上記(11)式を満たすような(E1、E2)を選び、このE1を衝突イオン化係数αx(E1)に代入することにより、電界ベクトル(Ex,Ey)を有する格子点における衝突イオン化係数α(Ex,Ey)が計算できる。
あるいは、(11)式から移動度を消去し書き換えて
(Ex)2/(E1)2+(Ey)2/(E2)2=1 … (12)
と書くこともできる。この式に、先に述べた衝突イオン化係数に関するαx(E1)=αy(E2)から与えられる関係式を代入してE2を消去し、E1をax,ay,bx、byとEx、Eyで表して、αx(E1)に代入することにより、電界ベクトル(Ex,Ey)を有する格子点における衝突イオン化係数α(Ex,Ey)が計算できる。
即ち、電界ベクトル(Ex,Ey)を有する格子点における衝突イオン化係数α(Ex,Ey)は、(13)式で与えられるb、(14)式で与えられるa,(15)式で与えられるAを用いて(16)式で与えられる。ここで、
2/b2=Ex2/b 2+E 2/b 2 … (13)
Figure 0004473625
A=ln(ay /ax ) … (15)
Figure 0004473625
なお、上記より明らかなように、衝突イオン化係数計算時に使用される移動度ベクトルμx(E1)、μy(E2)は、(12)式において消去されるので、電流連続式(3)、(4)に用いる格子点での移動度ベクトルと、異なる移動度ベクトルを用いてもよい。
図3に上述の関係を図示する。X軸はX軸方向の衝突イオン化係数データ(上記の(8)式)を表わし、(E1、0)の場合のベクトルが例示されている。Y軸は方向の衝突イオン化係数データ(上記の(9)式)を表わし、(0、E2)の場合のベクトルが例示されている。任意方向の衝突イオン化係数のベクトル(Ex,Ey)は、上記の(10)式を表わしている。
以上の式に従い、入力データから初等的な演算により、各格子点における衝突イオン化係数を電界ベクトルの関数として求めることができる。(16)式で得られた衝突イオン化係数を(1)式のGimpactに代入し、さらにこのGimpactを(3)または(4)式の電流連続方程式のGR項に代入することにより、異方性を加味した解を得ることができる。そして、上述の式を用いたデバイスシミュレーションを繰り返し、収束にいたるまで計算を行うことにより、デバイスの絶縁破壊に至るまでの電流電圧特性を計算することができ、物性値に異方性を有する半導体デバイスにおいても正確な耐圧を予測できる。
図4は炭化珪素の電子の衝突イオン化係数の電界依存性の結晶軸依存性を示す図である。αxはX軸方向、αyはY軸方向、α(Ex,Ey)は本実施形態における結晶軸に45度傾いた状態での衝突イオン化係数を夫々示す。軸方向により、衝突イオン化係数は異なってくるので、シミュレーション時には軸方向を正確に反映させねばならないことを示している。
図5は本実施形態による衝突イオン化係数の結晶角度依存性を既存の方法と比較したものである。本実施形態の計算値に比較して、既存の方法では角度が60度近傍で衝突イオン化係数を過少評価していたことになる。
図6は本実施形態による耐圧予測を実験結果及び既存の方法と比較したものである。本実施形態による耐圧予測は、実験結果と略同じ値を示しており、既存の方法と比べてより正確に耐圧を予測できる。
なお上述した実施形態で説明した耐圧予測装置はハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。また上記の実施形態では移動度を衝突イオン化係数の異方性から求めていたが、移動度を別の式で求めて、衝突イオン化係数のみ上記の関係を用いてもとめてもよい。衝突イオン化係数の角度依存性の式は、上記の式を演算上高速な式で近似してもよい。また上記の実施例ではキャリア温度を考慮しなかったが、エネルギーバランス方程式を用いた流体形のデバイスシミュレーションでも同様に構成できる。また電子濃度、正孔濃度を考慮せず、ポアソン方程式のみを解いて、衝突イオン化係数を求めてイオン化積分を計算し耐圧を求めることも可能である。また上記の実施形態では簡単に電界の関数として衝突イオン化係数が与えられるとしたが、拡散の影響を考慮したドライビングフォースと呼ばれる電界成分で衝突イオン化係数を求めてもよい。
本発明の一実施形態に係る耐圧評価装置の構成図。 耐圧評価の基本的な流れを示すフローチャート。 電界方向と衝突イオン化係数の関係を示す図。 炭化珪素の衝突イオン化係数の電界依存性を示す図。 炭化珪素の衝突イオン化係数の結晶角度依存性を示す図。 本実施形態の耐圧予測を、実験値及び従来技術によるものとを比較した図。 半導体デバイスの一例としてのダイオードの断面図と、シミュレーションで用いる格子点を説明する図。
符号の説明
1…入力部
2…初期値設定部
3…バイアス設定部
4…連立計算部
4a…電界、キャリア濃度計算部
4b…移動度計算部
4c…衝突イオン化係数計算部
5…出力部
A…アノード電極
C…カソード電極

Claims (9)

  1. 設計された半導体デバイス内に格子点を定め、前記格子点毎に設計情報を設定する初期値設定部と、
    前記半導体デバイスに印加するバイアス条件を設定するバイアス設定部と、
    前記半導体デバイスの異方性を有する半導体物性値を用いて、ポアッソン方程式、電流連続方程式の連立方程式を解く連立計算部と、
    を具備し、前記連立計算部は、
    前記ポアッソン方程式、電流連続方程式を連立させて、電位分布、電子・正孔からなるキャリアの濃度分布を計算する部分と、
    前記電位分布から計算する電界ベクトルに応じて、前記キャリアの移動度ベクトルを計算する部分と、
    前記移動度ベクトルと前記電界ベクトルの積である速度ベクトルを計算し、この速度ベクトルと前記電界の内積の値に応じて、前記電流連続方程式のキャリアの生成・再結合に関する項にパラメータとして関与するキャリアの衝突イオン化係数を計算する部分と、
    を具備し、
    x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数をα x (E1)、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数をα y (E2)としたとき、α x (E1)=α y (E2)であるような電界(E1,E2)の値の組に対して、x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの移動度ベクトルのx成分をμ x (E1)、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の前記キャリアの移動度ベクトルのy成分をμ y (E2)として
    μ x (E1)*(E1) 2 =μ y (E2)*(E2) 2
    が成り立つように前記キャリアの移動度ベクトルを決定し、
    電界ベクトル成分(Ex、Ey)を有する電界が印加される格子点の前記キャリアの移動度ベクトルは、前記キャリアの前記速度ベクトルと前記電界ベクトルの内積に関し
    μ x (E1)*(Ex) 2 +μ y (E2)*(Ey) 2
    =μ x (E1)*(E1) 2 =μ y (E2)*(E2) 2
    なる関係式を有し、
    前記衝突イオン化係数に関するα x (E1)=α y (E2)を満足する前記(E1、E2)の値の組の中から、前記関係式を満たすような(E1、E2)を選び、このE1を前記衝突イオン化係数α x (E1)に代入することにより、前記格子点の前記キャリアの衝突イオン化係数が計算されることを特徴とする半導体デバイス耐圧予測装置。
  2. 設計された半導体デバイス内に格子点を定め、前記格子点毎に設計情報を設定する初期値設定部と、
    前記半導体デバイスに印加するバイアス条件を設定するバイアス設定部と、
    前記半導体デバイスの異方性を有する半導体物性値を用いて、ポアッソン方程式、電流連続方程式の連立方程式を解く連立計算部と、
    を具備し、前記連立計算部は、
    前記ポアッソン方程式、電流連続方程式を連立させて、電位分布、電子・正孔からなるキャリアの濃度分布を計算する部分と、
    前記電位分布から計算する電界ベクトルに応じて、前記キャリアの移動度ベクトルを計算する部分と、
    前記移動度ベクトルと前記電界ベクトルの積である速度ベクトルを計算し、この速度ベクトルと前記電界の内積の値に応じて、前記電流連続方程式のキャリアの生成・再結合に関する項にパラメータとして関与するキャリアの衝突イオン化係数を計算する部分と、
    を具備し、
    x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数をαx(E1)、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数をαy(E2)としたとき、αx(E1)=αy(E2)であるような(E1、E2)の値の組に対して、x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの移動度ベクトルのx成分をμx(E1)とし、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の前記移動度ベクトルのy成分をμy(E2)として、
    μx(E1)*(E1)2 =μy(E2)*(E2)2
    が成り立つように前記移動度ベクトルを決定し、
    電界ベクトル成分(Ex、Ey)を有する電界が印加された格子点における前記キャリアの移動度ベクトルμx(E1)、μy(E2)が、
    (Ex)2/(E1)2+(Ey)2/(E2)2=1
    の関係式を満たすようなE1,E2を、αx(E1)=αy(E2)であるような前記(E1、E2)の値の組の中から選んで計算され、
    この選択されたE1を前記αx(E1)に代入することにより、前記格子点の前記キャリアの衝突イオン化係数を計算することを特徴とする半導体デバイス耐圧予測装置。
  3. 前記速度ベクトルの電界依存性が、一様電界中の衝突イオン化係数の異方性を再現するように計算されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体デバイス耐圧予測装置。
  4. 前記キャリアの電流連続方程式に用いる格子点での移動度ベクトルが、衝突イオン化係数の計算に用いる移動度ベクトルと異なることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の耐圧予測装置。
  5. 設計された半導体デバイス内に格子点を定め、前記格子点毎に設計情報を設定する初期値設定部と、
    前記半導体デバイスに印加するバイアス条件を設定するバイアス設定部と、
    前記半導体デバイスの異方性を有する半導体物性値を用いて、ポアッソン方程式、電流連続方程式の連立方程式を解く連立計算部と、
    を具備し、前記連立計算部は、
    前記ポアッソン方程式、電流連続方程式を連立させて、電位分布、電子・正孔からなるキャリアの濃度分布を計算する部分と、
    前記電位分布から計算する電界に応じて、前記キャリアの移動度ベクトルを計算する部分と、
    前記電流連続方程式のキャリアの生成・再結合に関する項にパラメータとして関与する、前記格子点にいけるキャリアの衝突イオン化係数を計算する部分と、
    を具備し、前記衝突イオン化係数を計算する部分は、x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数をαx(E1)、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の電子のイオン化係数をαy(E2)として、電界ベクトル成分(Ex,Ey)を有する電界が印加される格子点において、前記衝突イオン化係数がαx(E1)=αy(E2)であるような(E1,E2)の値の組の中から、
    (Ex)2/(E1)2+(Ey)2/(E2)2=1
    を満たすような(E1,E2)を選び、このE1を前記αx(E1)に代入することにより、この格子点の衝突イオン化係数α(Ex,Ey)を得ることを特徴とする半導体デバイス耐圧予測装置。
  6. 前記衝突イオン化係数の計算は、x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数を
    αx(E1)=αxexp(−bx/E1)
    y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数を
    αy(E2)=αyexp(−by/E2)
    として、
    ベクトル成分が(Ex、Ey)かつ電界強度がEで与えられる電界が印加された格子点(x、y)における前記キャリアの衝突イオン化係数α(Ex、Ey)が
    2/b2=Ex2/b 2+E 2/b 2
    なるb及び
    Figure 0004473625
    A=ln(ay /ax
    なるa、Aを用いて
    Figure 0004473625
    で与えられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体デバイス耐圧予測装置。
  7. 設計された半導体デバイス内に格子点を定め、前記格子点毎に設計情報を設定するステップと、
    前記半導体デバイスに印加するバイアス条件を設定するステップと、
    前記半導体デバイスの異方性を有する半導体物性値を用いて、ポアッソン方程式、電流連続方程式の連立方程式を解くステップと、
    を具備し、前記連立方程式を解くステップは、
    前記ポアッソン方程式、電流連続方程式を連立させて、電位分布、電子、正孔からなるキャリアの濃度分布を計算するステップと、
    前記電位分布から計算する電界に応じて、前記キャリアの移動度ベクトルを計算するステップと、
    前記電流連続方程式のキャリアの生成・再結合に関する項にパラメータとして関与する、前記格子点における前記キャリアの衝突イオン化係数を計算するステップと、
    を具備し、前記衝突イオン化係数を計算するステップは、x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数をαx(E1)、y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の電子のイオン化係数をαy(E2)として、電界ベクトル成分(Ex,Ey)を有する電界が印加される格子点において、前記衝突イオン化係数がαx(E1)=αy(E2)であるような(E1,E2)の値の組の中から、
    (Ex)2/(E1)2+(Ey)2/(E2)2=1
    を満たすような(E1,E2)を選び、このE1を前記αx(E1)に代入することにより、この格子点の衝突イオン化係数α(Ex,Ey)を得ることを特徴とする耐圧シミュレーション方法。
  8. 前記衝突イオン化係数の計算は、x軸方向に一様に電界E1が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数を
    αx(E1)=αxexp(−bx/E1)
    y軸方向に一様に電界E2が印加された場合の前記キャリアの衝突イオン化係数を
    αy(E2)=αyexp(−by/E2)
    として、
    ベクトル成分が(Ex、Ey)かつ電界強度がEで与えられる電界が印加された格子点(x、y)における前記キャリアの衝突イオン化係数α(Ex、Ey)が
    2/b2=Ex2/b 2+E 2/b 2
    なるb及び
    Figure 0004473625
    A=ln(ay /ax
    なるa、Aを用いて
    Figure 0004473625
    で与えられることを特徴とする請求項に記載の耐圧シミュレーション方法。
  9. 前記連立方程式を解くステップは、計算により得られた前記電位分布、前記キャリアの濃度分布、移動度ベクトル、衝突イオン化係数を、前記ポアッソン方程式、前記電流連続式に代入して、これら2つの方程式を成立させるために必要な、電位、キャリア濃度の修正量を算出し、前記修正量が所望の閾値以上である場合は、前記修正量を近似解として前記連立方程式を再度計算し、前記修正量が前記所望の閾値以内になるまで繰り返すステップを含むことを特徴とする請求項に記載の耐圧シミュレーション方法。
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