JP4471636B2 - デジタル制御装置 - Google Patents
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Description
近年,旋盤等の装置の制御では,生産性の向上の要請から,装置速度が高速化する一方,依然として低速度での運転が必要な状況もあり,運転速度範囲が広くなっている。デジタル制御装置において,このように広い運転速度範囲に対応させようとすると,速度分解能が粗くなる。
このため,例えば,光ファイバの線引装置等の制御では,線掛け速度近辺(10〜20m/分程度)で素線外径を見ながら引き取りキャプスタンを制御する場合の制御性能が悪くなり,引き取り速度を安定させることが難しくなる。さらに,光ファイバの母材送り装置の送り込み速度の分解能が粗くなるため,細かな速度設定ができないという問題も生じる。特に,母材送り装置では手動速度(高速)と生産速度(低速)の速度差が大きい一方,生産速度(低速)においてより高い速度分解能が必要であるため,速度分解能の問題がより顕著となる。このような光ファイバの線引装置については,例えば,特許文献1等に示されている。
従来,PC(プログラマブルコントローラ),シーケンサ,DSP(デジタル信号プロセッサ)等の内部でデジタル演算を行うデジタル制御装置では,外部機器に出力する制御信号を高分解能化する場合,以下のような技術があった。
(従来技術1)
内部演算を高分解能化(例えば,32bit,64bit等の高分解能のプロセッサを用いて浮動小数点演算を行う等)し,さらに同等分解能のD/Aコンバータを設けて制御信号をアナログ出力する,或いは高分解能のデジタル制御信号を出力してこれに対応する外部機器を用意する。
(従来技術2)
旋盤等における工具の速度制御のように,比較的低い制御精度でも許容される高速動作から比較的高い制御精度が要求される低速動作まで広範囲の速度制御を行う必要がある場合に,高速用と低速用のアクチュエータ(サーボモータ等)をそれぞれ設け,これを必要に応じて切り替えるとともに,制御信号のフルスケールを切り替えることにより,低速動作時における制御信号を高分解能化する。
また,デジタル制御装置で対応が困難な場合は,アナログ制御装置を用いることも行われる。
また,前記従来技術2では,複数のアクチュエータ及びその切り替え機構等が必要にな
るため装置が複雑になる上,低速から高速までの全領域で高分解能を得ることができないとう問題点があった。
また,アナログ制御装置を用いた場合,設定や調整に個体差が生じて調整が難しくなるという問題点があった。
一方,旋盤や後述する光ファイバ線引装置等,制御対象によっては,制御量の瞬時的な変化の(短期的な)精度よりも所定時間内の平均的な値の精度,即ち,所定時間内における制御信号の平均的な値の精度がより重要となるものがある。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,比較的低い分解能の制御信号を用いながら,その制御信号の平均的な出力レベルの高精度化を簡易な構成によって実現できるデジタル制御装置を提供することにある。
これにより,短期的には前記デジタル制御値(即ち,前記制御信号)に前記演算分解能と前記出力分解能の違いに起因する誤差が生じても,前記単位時間帯ごとに前記誤差分が簡易な補正処理を行うだけで補正されるため,平均的にはその誤差が打ち消され(補正され),前記制御信号の平均的な出力レベルの高精度化を実現できる。
また,本発明は,整数演算によって所定の演算分解能のデジタル演算値をそれより低い分解能である出力分解能のデジタル制御値に換算する換算処理を一定周期で行い,該デジタル制御値に応じた制御信号を出力するデジタル制御装置であって,前記デジタル演算値を精度確保に必要な最小単位を1とする整数とし,前記換算処理が行われるごとに,前記デジタル演算値と前記デジタル制御値のフルスケール値との積を前記デジタル演算値のフルスケール値で除算する第1の除算の余りを算出する整数演算を行う誤差算出手段と,前記換算処理が所定の単位回数だけ行われる期間ごとに,その期間内において,前記誤差算出手段によって算出される前記第1の除算の余りを積算し,該積算値が前記デジタル演算値のフルスケール値以上である場合は,前記第1の除算の商に前記デジタル制御値の最小単位分を加算した値を前記デジタル制御値として出力すると共に,該積算値から前記デジタル制御値のフルスケール値を減算し,残りは前記第1の除算の商を前記デジタル制御値として出力する制御値補正手段と,を具備してなることを特徴とするデジタル制御装置として構成される。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係るデジタル制御装置Xの概略構成を表すブロック図,図2は本発明の実施の形態に係るデジタル制御装置Xの制御対象の一例である移動台車装置の概略構成を表す図,図3はデジタル制御装置Xによる移動台車装置の制御手順の第1の実施例を表すフローチャート,図4はデジタル制御装置Xによる移動台車装置の制御手順の第2の実施例を表すフローチャート,図5はデジタル制御装置Xによる移動台車装置の制御手順の第3の実施例を表すフローチャート,図6は本発明による制御対象の一例である光ファイバ線引装置の概略構成を表す図,図7は本発明による制御対象の一例であるガラス旋盤等の概略構成を表す図,図8は本発明による制御対象の一例であるジャケッティング装置等の概略構成を表す図である。
デジタル制御装置Xは,いわゆるPC(プログラマブルコントローラ)であり,MPUにより各種演算を行う演算部1と,該演算部1で実行されるプログラムが予め記憶される不揮発性RAM等の記憶手段であるプログラムメモリ2と,外部との入出力データや前記演算部1による演算結果が一時記憶されるRAM等の記憶手段であるデータメモリ3と,外部のホスト装置との通信を行い,該ホスト装置から前記プログラムメモリ2内のプログラムや前記データメモリ3内のデータの参照や書き込みを行う際のプログラム或いはデータの転送を中継する通信インターフェース(I/F)4と,前記データメモリ3内の所定の出力データ領域に格納されたデータをアナログ信号に変換(D/A変換)し,そのアナログ信号を制御信号として制御対象が備えるアクチュエータ等の機器に出力するD/A変換部5と,制御対象が備えるセンサから速度や温度等の検出信号(アナログ信号)を入力し,これをデジタルデータに変換(A/D変換)し,そのデジタルデータを前記データメモリ内の所定の入力データ領域に格納するA/D変換部6とを具備している。
前記演算部1は,所定の演算分解能(例えば,32bit等)で各種制御演算を行い,そのデジタル演算値をそれより低い分解能である出力分解能(例えば,12bit或いは16bit等)のデジタル制御値に換算して前記データメモリ3の前記出力データ領域に格納する。そして,前記D/A変換部5が,前記出力データ領域内の換算後の前記デジタル制御値をD/A変換した制御信号(前記デジタル制御値に応じた制御信号)を外部の制御機器へ出力する。これにより,出力される制御信号(アナログ信号)の実質的な分解能も前記出力分解能と等しくなる。ここで,前記演算部1は,制御演算に用いる入力値として,前記A/D変換部6を介して入力される制御対象からのフィードバック値,即ち,制御対象の状態量の検出値(前記センサの検出信号の値)を用いる。
ここでは,前記演算分解能は最大で32bit(4294967296)であり,前記出力分解能は12bitであるとする。
前記移動台車装置10は,ねじ切り穴が設けられた台車11と,前記ねじ切り穴に挿入されるボールスクリュ12と,該ボールスクリュ12を回転駆動するサーボモータ13とを具備し,前記サーボモータ13で前記ボールスクリュ12が回転駆動されることにより,前記台車11が前記ボールスクリュ12の軸方向に移動するものである。
前記デジタル制御装置Xは,前記サーボモータ13から実際の回転速度の検出値を前記A/D変換部6を介して入力し,これをフィードバック値として所定の制御演算(演算分解能でのデジタル演算)を行い,そのデジタル演算値を前記出力分解能で換算した前記デジタル制御値を前記D/A変換部6を介して前記サーボモータ13の速度指令値(アナログ信号)として出力する。
ここで,前記台車11の移動速度Vxの範囲は0〜10000(mm/min),その速度制御に必要な精度は0.1mm/min(即ち,1/100000)である。
これに対し,前記デジタル制御装置Xは,前記演算部1により前記台車11の速度指令演算値V(前記デジタル演算値の一例)を1を精度確保に必要な最小単位(0.1(mm/min)に相当)とし,100000(10000.0(mm/min)に相当)をフルスケールとして整数演算を行う(即ち,前記演算分解能は100001)。
さらに,前記演算部1は,前記速度指令演算値Vを4095をフルスケールとして換算した速度指令出力値A(前記デジタル制御値の一例)を整数演算により算出する(0〜100000を0〜4095に換算(最小単位は1),前記出力分解能は4096)。
このように,前記速度指令演算値Vは十分な分解能を有するが,前記速度指令出力値Aの分解能(4096)は,必要精度(1/100000)に対して不十分であり,このままでは前記移動台車装置10に必要な精度を満足しない。
これにより,短期的には前記台車11に対する速度指令(前記速度指令出力値A)に誤差が生じても,前記単位時間ごとに,前記演算分解能と前記出力分解能の違いに起因する前記誤差分が補正されるため,平均的にはその誤差が打ち消されることになる。
以下,このような補正処理のいくつかの具体例について説明する。
まず,図3のフローチャートを用いて,前記デジタル制御装置Xの前記演算部1が,前記プログラムメモリ2に格納された所定のプログラムを実行することにより処理される前記移動台車10の制御手順の第1の実施例について説明する。以下,S10,S11…は処理手順(ステップ)の番号を表す。また,前記デジタル制御装置Xでは,前記演算部1が,前記速度指令演算値V(前記デジタル演算値)及び前記速度指令出力値A(前記デジタル制御値)を一定周期で演算し,その演算回数によって間接的に時間管理を行う。
制御処理が開始されると,前記演算部1は,演算回数を表す変数であるカウンタKを初期化(=0)し(S10),さらに前記速度指令演算値Vを演算する(S11)。
次に,前記演算部1は,前記速度指令演算値V(前記デジタル演算値)と前記速度指令出力値A(前記デジタル制御値)のフルスケール値R(=4095)との積(V×R)を前記速度指令演算値V(前記デジタル演算値)のフルスケール値Y(=100000)で除算(前記第1の除算に相当)した商を前記速度指令出力値Aとし,その余りを前記誤差分Bとして算出する(S12,前記誤差算出手段の処理の一例)。
これにより,前記速度指令出力値Aは,前記速度指令演算値Vが前記出力分解能(4096)で換算された値となる。また,その換算(除算)の際に丸められた余りが,前記誤差分B(前記演算分解能と前記出力分解能の違いに起因する誤差分)となる。
S15〜S17の処理では,まず前記カウンタKを1カウントアップ(+1)し(S15),K≧Yでなければ(K<Yである間は)そのままS11へ戻って処理を繰り返す(S16のNo側)が,K≧Yである場合(S16のYes側)は前記カウンタKを初期化(K=0,S17)した後にS11へ戻って処理を繰り返す。
これにより,前記カウンタKは,前記速度指令演算値VのフルスケールY(=100000)となるまでは演算1回ごとに1カウントアップされ,前記フルスケールYとなるごとに初期化(K=0)されるカウンタとなる。
一方,S13において,K<Bでない(K≧Bである)と判別された場合は,前記速度指令出力値Aの補正は行わずにそのままS15〜S17の処理へ移行する。
このような処理を行えば,前記速度指令演算値V(前記デジタル演算値)のフルスケール値Y(=100000)の回数(前記単位回数の一例)の演算(V,Aの演算)が行われる間に,前記速度指令出力値A(前記デジタル制御値)の補正(A=A+1)が,前記誤差分Bの回数(前記第1の除算の余りに対応する回数の一例)だけ行われる(前記制御値補正手段の処理の一例)。その結果,前記フルスケール値Yの回数の演算が行われる期間の時間長に対する前記速度指令出力値Aの補正時間長の比が,前記速度指令演算値Vの前記フルスケール値Yに対する前記余りB(前記第1の除算の余り)の比にほぼ一致(Y回の演算中にVに変化がなければ完全一致)することになる。
これにより,簡易な補正演算を行うだけで,前記フルスケール値Yの回数(Y回)の演算が行われる期間で平均すれば前記誤差分Bが解消(補正)され,前記出力分解能を上げることなく(高分解能のD/A変換部を用いることなく)速度指令の出力レベルを高精度化できる。
次に,図4のフローチャートを用いて,前記デジタル制御装置Xの前記演算部1が,前記プログラムメモリ2に格納された所定のプログラムを実行することにより処理される前記移動台車10の制御手順の第2の実施例について説明する。本実施例においても,前記演算部1がV及びAを一定周期で演算し,その演算回数によって間接的に時間管理を行う。
この第2の実施例は,前記単位回数を前記速度指令演算値V(前記デジタル演算値)のフルスケール値Yではなく,所定の単位回数N(Y≠N)としたものである。
制御処理が開始されると,前記演算部1は,前記第1の実施例の場合(図3のS10〜S12)と同じ処理により,カウンタKの初期化(S20),前記速度指令演算値Vの演算(S21)及び前記速度指定出力値A及び前記誤差分B((V×R)/Yの余り)の算出(S22)を行う。ここで,S22における(V× R)/Yが前記第1の除算の一例
であり,S22の処理が,前記誤差算出手段の処理の一例である。
次に,B(前記第1の除算の余り)と前記単位回数Nとの積を前記速度指令演算値V(前記デジタル演算値)のフルスケール値Yで除算(前記第2の除算)したときの商を所定の補正回数Lとして設定する(S23)。
そして,前記演算部1は,前記カウンタK(演算回数)が前記補正回数L未満であるか否かを判別し(S24),K<Lである場合は,前記速度指令出力値Aにその最小単位分1を加算(補正)した値(A+1)を前記速度指令出力値Aとして設定(S25)した後にS26〜S28の処理へ移行する。
S26〜S28の処理では,まず前記カウンタKを1カウントアップ(+1)し(S26),K≧Nでなければ(K<Nである間は)そのままS21へ戻って処理を繰り返す(S27のNo側)が,K≧Nである場合(S27のYes側)は前記カウンタKを初期化(K=0,S28)した後にS21へ戻って処理を繰り返す。
これにより,前記カウンタKは,前記単位回数Nとなるまでは演算1回ごとに1カウントアップされ,前記単位回数Nとなるごとに初期化(K=0)されるカウンタとなる。
一方,S24において,K<Lでない(K≧Lである)と判別された場合は,前記速度指令出力値Aの補正は行わずにそのままS26〜S28の処理へ移行する。
このような処理を行えば,前記単位回数N回の演算(V,Aの演算)が行われる間に,前記速度指令出力値A(前記デジタル制御値)の補正(A=A+1)が,L回(=(N×B)/Y,前記第2の除算の余りに対応する回数の一例)だけ行われる。その結果,前記単位回数N回の演算が行われる期間の時間長に対する前記速度指令出力値Aの補正時間長の比が,前記速度指令演算値Vの前記フルスケール値Yに対する前記余りB(前記第1の除算の余り)の比にほぼ一致(N回の演算中にVに変化がなく,かつ(N×B)/Yに余りがなければ完全一致)することになる。
これにより,簡易な補正演算を行うだけで,前記単位回数N(N回)の演算が行われる期間で平均すれば前記誤差分Bが解消(補正)され,前記出力分解能を上げることなく(高分解能のD/A変換部を用いることなく)速度指令の出力レベルを高精度化できる。
この第2の実施例は,前記速度指令演算値Vのフルスケール値Yの回数ごとの補正では,補正周期として長すぎる場合に,任意の単位回数N回ごと(即ち,任意の単位時間ごと)に前記誤差分を補正できる点で有効である。例えば,N=10であれば,N回の演算時間(単位時間)における実質的な分解能を10倍にすることができる。
そこで,前記余りCが生じる場合に,図4に示すN回の演算ごとにL回の補正を行うことに加え,さらに,前記単位回数Nと前記速度指令演算値V(前記デジタル演算値)のフルスケール値Yとの積(N×Y)の回数の演算がなされる間に(ごとに),前記第2の除算の余りCの回数だけ前記速度指令出力値(前記デジタル制御値)をその最小単位分(=1)補正するようにすれば,さらに精度が高まり好適である。
次に,図5のフローチャートを用いて,前記デジタル制御装置Xの前記演算部1が,前記プログラムメモリ2に格納された所定のプログラムを実行することにより処理される前記移動台車10の制御手順の第3の実施例について説明する。本実施例においても,前記演算部1がV及びAを一定周期で演算し,その演算回数によって間接的に時間管理を行う。
この第3の実施例は,前記第1の実施例と同様に,前記速度指令演算値V(前記デジタル演算値)のフルスケール値Yの回数(前記単位回数)の演算ごとに,前記誤差分B(前記第1の除算の余り)回分の補正を行うものである。
但し,前記第1の実施例がY回の演算を行う時間帯内においてB回の補正を連続して行うものであったが,本第3の実施例は,Y回の演算を行う期間において,前記速度指令出力値A(前記デジタル制御値)を補正する期間を複数に分散させる点で前記第1の実施例と異なる。以下,その具体例について説明する。
次に,前記誤差積算変数Sに前記誤差分Bを加算する(S=S+B)(S33)。
そして,前記演算部1は,前記変数Sが前記速度指令演算値Vのフルスケール値Y以上であるか否かを判別し(S34),Y≦Sである場合は,前記速度指令出力値Aにその最小単位分1を加算(補正)した値(A+1)を前記速度指令出力値Aとして設定するとともに,前記変数Sから前記フルスケール値Yを減算(S=S−Y)(S35)した後にS31へ戻って処理を繰り返す。
一方,S34において,Y≦Sでない(Y>Sである)と判別された場合は,前記速度指令出力値Aの補正は行わずにそのままS31へ戻って処理を繰り返す。
このような処理により,前記誤差積算変数Sは,その値がY以上となるまでは順次前記誤差分Bを積算した値となり,Y以上となるごとにY減算された値となる。そして,「Y≦S」であるときだけ前記速度指令出力値Aの補正を行うことにより(S34,S35),Y回の演算を行う期間において,前記速度指令出力値A(前記デジタル制御値)を補正する時間帯が複数に分散する。本実施例では,Y回の演算を行う期間内でほぼ等間隔で1回ずつの補正がB回行われることになる。
従って,補正が,Y回の演算が行われる時間帯(単位時間帯)の最初の時間帯に集中しないため,前記速度補正演算値Vの変化周期がそのフルスケール値Yの回数の演算時間(即ち,前記単位時間)に対して比較的短い場合であっても,補正し過ぎることを緩和できる。
この第3の実施例によっても,前記フルスケール値Yの回数の演算が行われる期間の時間長に対する前記速度指令出力値Aの補正時間長の比が,前記速度指令演算値Vの前記フルスケール値Yに対する前記余りB(前記第1の除算の余り)の比にほぼ一致(Y回の演算中にVに変化がなければ完全一致)することになる。
これにより,簡易な補正演算を行うだけで,前記フルスケール値Yの回数(Y回)の演算が行われる時間帯(単位時間帯)で平均すれば前記誤差分Bが解消(補正)され,前記出力分解能を上げることなく(高分解能のD/A変換部を用いることなく)速度指令の出力レベルを高精度化できる。
例えば,図6に示す光ファイバ線引装置20や,図7に示すガラス旋盤等30,さらには図8に示すジャケッティング装置等40がその一例である。
前記光ファイバ線引装置20は,図6に示すように,プリフォームフィード装置21により送り込まれたプリフォーム22が炉23において加熱,伸張され,炉23の下から糸状のファイバとなって垂下する。このファイバは,外径測定器24により外径が測定された後,冷却管25で冷却され,強度アップのために被覆装置26にて樹脂が被覆される。そして,被覆された樹脂が樹脂硬化装置27によって硬化された後に引取装置28で引き取られ,巻取装置29によってボビンに巻き取られる。
ここで,前記外径測定器24により測定されたファイバ外径を一定とするためには,前記引取装置28における引取速度をファイバ外径の偏差に応じて高精度で制御する必要がある。また,前記引取装置28の引取速度(線引き速度)は,前記プリフォームフィード装置21により送り込まれる速度(プリフォームフィード速度)と,前記ファイバ外径を一定にするための引取速度制御により決まる。このため,良質のファイバを得るためには,引取速度(実際の引取速度)を安定させること,即ち,実際の引取速度を目標速度(設定速度)により近い状態に維持することが必要である。そのためには,前記プリフォームフィード速度や前記引取速度の制御出力値を高精度に制御する必要がある。
ここで,前記デジタル制御装置Xを前記プリフォームフィード装置21の制御に適用して引取速度を安定させる例としては,前記プリフォームフィード装置21が備えるプリフォームフィード昇降用サーボモータ(不図示)に,前記デジタル制御装置Xから1/4000の精度(分解能)を有する前記D/A変換部5を用いて前記速度指令出力値Aを出力することが考えられる。この場合,定格速度(フルスケール)が50(mm/min)であれば,0.0125(mm/min)の前記出力分解能となる。
一方,プリフォーム径(直径)が120(mm)であり,ファイバ径(直径)が0.125(mm)であるとすると,プリフォームフィード速度の最小分解能当たりの引取速度(線引き速度)の最小変化量ΔAは,(120/0.125)2×0.0125/1000=11.52(m/min)となる。
これは,プリフォームフィード速度を最小単位で変化させても,引取速度は11.52(m/min)単位で変化してしまうことになり,例えば,10(m/min)以内の引取速度変化に抑える必要がある場合には,通常の制御方法では対応できない。
これに対し,例えば,前記第2の実施例(図4)に示した制御手法を適用し,前記単位回数N=10としてN回演算する時間帯当たりの分解能を10倍に向上させれば,その時間帯当たりの引取速度を1.152(m/min)単位の変化に抑えることができる。
また,前記第1又は第3の実施例(図3又は図5)に示した制御手法を適用し,前記演算分解能を0.0001(mm/min)単位の演算に対応させておけば,その分解能相当で引取速度の変化を抑えることができる。
ここで,前記移動テーブル36は,当該ガラス旋盤等30を手動操作する際は比較的速い速度(例えば,1000(mm/min))で移動させる必要がある一方,自動加工の際は低速(例えば,100(mm/min))で移動させる必要がある。
従来,高速動作から低速動作まで広範囲の速度制御を行うため,高速用と低速用の2つもモータを必要に応じてクラッチにより切り替えていた。
このような制御対象に対し,クラッチや減速機による切り替えを行わずに,1つのモータで前記移動テーブル36を移動させる場合を考える。
前記移動テーブル36のモータへの前記速度指令出力値Aの精度(分解能)が1/4000,定格速度(手動操作時の速度)が2000(mm/min)である場合,速度分解能は0.5(mm/min)となる。これは,自動加工の際の速度(例えば,100(mm/min))に対して1/200の精度(速度分解能)に止まる。
これに対し,例えば,前記第2の実施例(図4)に示した制御手法を適用し,前記単位回数N=10としてN回演算する時間帯当たりの分解能を10倍に向上させれば,自動加工の際の前記移動テーブル36の移動速度の制御分解能を10倍にすることができる。
これに対し,前記加熱部45の昇降速度及び前記チャック41の昇降速度の制御に,前記第1〜第3の実施例(図3〜図5)に示した制御手法を適用すれば,クラッチや減速機による切り替え機構を設けることなく,加工材料43の外径精度を向上させ,高品質の製品を作ることが可能となる。
2…プログラムメモリ
3…データメモリ
4…通信インターフェース
5…D/A変換部
6…A/D変換部
X…デジタル制御装置
S11,S12,,,…処理手順(ステップ)の番号
Claims (4)
- 整数演算によって所定の演算分解能のデジタル演算値をそれより低い分解能である出力分解能のデジタル制御値に換算する換算処理を一定周期で行い,該デジタル制御値に応じた制御信号を出力するデジタル制御装置であって,
前記デジタル演算値を精度確保に必要な最小単位を1とする整数とし,前記換算処理が行われるごとに,前記デジタル演算値と前記デジタル制御値のフルスケール値との積を前記デジタル演算値のフルスケール値で除算する第1の除算の余りを算出する整数演算を行う誤差算出手段と,
前記換算処理が所定の単位回数だけ行われる期間ごとに,その期間内において,前記単位回数に対する補正回数の比が前記デジタル演算値のフルスケール値に対する前記第1の除算の余りの比と一致するよう設定される前記補正回数分だけ,前記第1の除算の商に前記デジタル制御値の最小単位分を加算した値を前記デジタル制御値として出力し,残りは前記第1の除算の商を前記デジタル制御値として出力する制御値補正手段と,を具備してなり,
前記換算処理が前記単位回数だけ行われる期間は前記デジタル演算値がほぼ変化しない期間であることを特徴とするデジタル制御装置。 - 前記単位回数が前記デジタル演算値のフルスケール値であり,前記補正回数が前記第1の除算の余りである請求項1に記載のデジタル制御装置。
- 前記補正回数が,前記第1の除算の余りと前記単位回数との積を前記デジタル演算値のフルスケール値で除算する第2の除算の商であり,
前記制御値補正手段が,前記第2の除算で余りが生じる場合,さらに前記単位回数と前記デジタル演算値のフルスケール値との積の回数の前記換算処理がなされる間に,前記第2の除算の余りの回数だけ前記デジタル制御値をその最小単位分補正するものである請求項1に記載のデジタル制御装置。 - 整数演算によって所定の演算分解能のデジタル演算値をそれより低い分解能である出力分解能のデジタル制御値に換算する換算処理を一定周期で行い,該デジタル制御値に応じた制御信号を出力するデジタル制御装置であって,
前記デジタル演算値を精度確保に必要な最小単位を1とする整数とし,前記換算処理が行われるごとに,前記デジタル演算値と前記デジタル制御値のフルスケール値との積を前記デジタル演算値のフルスケール値で除算する第1の除算の余りを算出する整数演算を行う誤差算出手段と,
前記換算処理が所定の単位回数だけ行われる期間ごとに,その期間内において,前記誤差算出手段によって算出される前記第1の除算の余りを積算し,該積算値が前記デジタル演算値のフルスケール値以上である場合は,前記第1の除算の商に前記デジタル制御値の最小単位分を加算した値を前記デジタル制御値として出力すると共に,該積算値から前記デジタル制御値のフルスケール値を減算し,残りは前記第1の除算の商を前記デジタル制御値として出力する制御値補正手段と,を具備してなることを特徴とするデジタル制御装置。
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