JP4471561B2 - 表面処理方法および機械部品の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細な機械部品等の表面に硬質炭素膜を形成して部品表面の改質処理を施す表面処理方法およびその方法により表面処理を施した機械部品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、モータ軸等の機械部品やハードディスク用ヘッド等の情報機器部品など、微細な機械部品等の表面にDLCなどの硬質炭素膜を形成することにより、機械部品等の表面に改質処理を施す表面改質技術を利用して、機械部品間の摺動性や耐摩耗性を向上させる表面処理方法が実用化されている。
【0003】
このように機械部品の表面改質のための処理を施す表面処理方法およびその方法により表面処理を施した機械部品の製造方法について、その従来技術を以下に説明する。
【0004】
まず、従来の表面処理方法および機械部品の製造方法を示すための概念的な構成を説明する。
図4は従来の表面処理方法および機械部品の製造方法を示す概念的な構成図である。図4において、10は真空チャンバであり、排気ライン4を備えている。1は機械部品等の基体である。この基体1は支持台2に乗っている。基体1および支持台2には電源20によってバイアス電圧が印加されるようになっている。このバイアス電源20の電圧は15kV以上である。31はプラズマ源であり、本従来例でのプラズマ源は、炭素ターゲットを有するアークプラズマ源である。33はプラズマ源の電源である。
【0005】
なお、本従来例においては、基体1はモータの回転部分の部品であり、鉄系合金でできている場合を例に挙げている。
以上のような表面処理方法および機械部品の製造方法のための構成による動作を以下に説明する。
【0006】
まず排気ライン4より真空チャンバ10内を排気する。次に電源33よりアークプラズマ源31に電力を供給し、炭素イオンと電子からなるプラズマ50を真空チャンバ10内に発生させる。同時にバイアス電源20により基体1に負のパルスバイアス電圧を印加する。
【0007】
プラズマ50中の炭素イオン(+電荷)は、基体1に印加された負のバイアス電圧により、プラズマ50から引き出され基体1の表面に衝突する。その際に、炭素イオンは、プラズマ50と基体1との電位差に相当する分のエネルギーをもっているので、基体1に衝突し、その表面に注入または付着する。
【0008】
基体1の表面では、炭素膜が形成され潤滑性の発現と硬化が生じる。これによって基体1表面の摺動性と耐摩耗性を得ることができるが、この時の炭素膜は、密着性に乏しく、一般的にプラズマによる炭素傾斜層の形成プロセスが必要である。すなわち、上記プロセスを前半と後半にわけ、後半プロセス(プロセスの全体時間の1/5程度)において、バイアス電圧を15kV以上に設定しイオンを基体1に注入することで、炭素イオン濃度が基体1表面から内部に向けて徐々に低下する炭素傾斜層を形成している。
【0009】
ここでは従来例として、PVD方式を引用したが、アセチレンやメタンガスを使うCVD方式も多用されている。またイオン注入プロセスとしてイオンビームを用いる場合もある。
【0010】
【特許文献1】
特開平06−2138号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のような従来の表面処理方法では、そのプラズマプロセスによって形成された炭素傾斜層は、その厚さが約50nm程度と薄いため、機械部品との密着性が十分に得られないという問題点を有していた。また、炭素傾斜層の形成時に印加されるバイアス電圧が高く、そのような高圧のバイアス電圧を供給するための電源等の設備費が増大し、結果的に処理費が高価なものになるという問題点をも有していた。
【0012】
これに対して、高温処理で生成するダイヤモンド膜に関して、特開平06−2138号公報(特許文献1)に、表面に放電加工処理を施し凹凸をつけたり結晶構造を変化させたりして、密着性を向上する技術が開示されているが、この技術では、DLC等の摺動性向上用の硬質炭素膜に関しては、十分に密着性を向上することができなかった。
【0013】
また、前述のPVDプロセスでは、プラズマの濃度がイオン源の位置に依存し機械部品が均一に処理できないという問題があり、一方、基体を電極として使うCVDにおいては、均一に処理できるがアセチレンやメタンなどの爆発性がある危険なガスを使用しなければならないという問題点を有していた。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、機械部品等の表面に密着性の高い硬質炭素膜を安価に形成することができ、また、硬質炭素膜を形成するにあたって、部品の表面に対して均一にしかも安全に形成することができる表面処理方法および機械部品の製造方法を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明の請求項1記載の表面処理方法は、導体からなる基体の表面に硬質炭素膜を形成する表面処理方法であって、放電加工漕の中に配置される一対の電極の間に基体材料を設け、前記放電加工漕内に加工液Aを供給した後、前記基体材料を回転させ、前記基体材料の極性がプラスになるように前記一対の電極の一方に電圧を印加し、前記一方の電極と前記基体材料との距離を5μm以下にして、前記一方の電極と前記基体材料との間でアーク放電を起こしながら、前記基体材料を加工して基体を形成し、その後、前記一対の電極に印加した電圧を切り前記放電加工漕内の前記加工液Aを加工液Bに入れ替え、前記他方の電極がプラスになるように前記一対の電極の他方に電圧を印加し、前記他方の電極と前記基体との距離を5μm以下にして、前記他方の電極と前記基体との間でアーク放電を発生させ、前記基体に炭素を入り込ませて前記基体の表面に炭素傾斜層を形成する前工程と、プラズマプロセスにより炭素原子を注入および堆積させて硬質炭素膜を形成する後工程とを有する方法としたことを特徴とする。
【0016】
この方法により、一点に集中した放電加工のエネルギーによって厚い炭素傾斜層が形成できるので、部品表面に対して密着性の高い硬質炭素膜を形成することができ、また高電圧の電源が不要となり処理費用を低減することができる。
【0017】
また、本発明の請求項2記載の表面処理方法は、導体からなる基体の表面に硬質炭素膜を形成する表面処理方法であって、放電加工漕の中に配置される一対の電極の間に基体材料を設け、前記放電加工漕内に加工液Aを供給した後、前記基体材料を回転させ、前記基体材料の極性がプラスになるように前記一対の電極の一方に電圧を印加し、前記一方の電極と前記基体材料との距離を5μm以下にして、前記一方の電極と前記基体材料との間でアーク放電を起こしながら、前記基体材料を加工して基体を形成し、その後、前記一対の電極に印加した電圧を切り前記放電加工漕内の前記加工液Aを加工液Bに入れ替え、前記他方の電極がプラスになるように前記一対の電極の他方に電圧を印加し、前記他方の電極と前記基体との距離を5μm以下にして、前記他方の電極と前記基体との間でアーク放電を発生させ、前記基体に炭素を入り込ませて前記基体の表面に炭素傾斜層および炭素層を形成する前工程と、不活性ガスのプラズマにより前記炭素層を硬化させて硬質炭素膜を形成する後工程とを有する方法としたことを特徴とする。
【0018】
この方法により、一点に集中した放電加工のエネルギーによって厚い炭素傾斜層が形成できるので、部品表面に対して密着性の高い硬質炭素膜を形成することができ、また高電圧の電源が不要となり処理費用を低減することができ、さらに不活性ガスによるプラズマを用いるため、安全性が高く立体的な機械部品に均一に表面処理を施すことができる。
【0023】
た、本発明の請求項記載の機械部品の製造方法は、放電加工漕の中に配置される一対の電極の間に導体材料を設け、前記放電加工漕内に加工液Aを供給した後、前記導体材料を回転させ、前記導体材料の極性がプラスになるように前記一対の電極の一方に電圧を印加し、前記一方の電極と前記導体材料との距離を5μm以下にして、前記一方の電極と前記導体材料との間でアーク放電を起こしながら、前記導体材料を所望の形状に加工して導体を形成し、その後、放電加工に使用する電極または加工液またはその両者を炭素傾斜層の形成用に交換し、前記一対の電極に印加した電圧を切り前記放電加工漕内の前記加工液Aを加工液Bに入れ替え、前記他方の電極がプラスになるように前記一対の電極の他方に電圧を印加し、前記他方の電極と前記導体との距離を5μm以下にして、前記他方の電極と前記導体との間でアーク放電を発生させ、前記導体に炭素を入り込ませて前記導体の表面処理を行い、さらにプラズマプロセスにより炭素原子を注入および堆積させて硬質炭素膜を形成し、機械部品を製造する方法としたことを特徴とする。
【0024】
この方法により、部品の高精度形状加工と炭素傾斜層の形成とが同一装置で行えるため処理費が安価となり、また形状加工によってできたすべての表面に均一に十分な炭素傾斜層を形成することができるため、部品表面に対して密着性の高い硬質炭素膜を形成することができ、また高電圧の電源が不要となり処理費用を低減することができる。
【0025】
また、本発明の請求項記載の機械部品の製造方法は、放電加工漕の中に配置される一対の電極の間に導体材料を設け、前記放電加工漕内に加工液Aを供給した後、前記導体材料を回転させ、前記導体材料の極性がプラスになるように前記一対の電極の一方に電圧を印加し、前記一方の電極と前記導体材料との距離を5μm以下にして、前記一方の電極と前記導体材料との間でアーク放電を起こしながら、前記導体材料を所望の形状に加工して導体を形成し、その後、放電加工に使用する電極または加工液またはその両者を炭素傾斜層および炭素層の形成用に交換し、前記一対の電極に印加した電圧を切り前記放電加工漕内の前記加工液Aを加工液Bに入れ替え、前記他方の電極がプラスになるように前記一対の電極の他方に電圧を印加し、前記他方の電極と前記導体との距離を5μm以下にして、前記他方の電極と前記導体との間でアーク放電を発生させ、前記導体に炭素を入り込ませて前記導体の表面処理を行い、さらに不活性ガスのプラズマにより前記炭素層を硬化させて硬質炭素膜を形成し、機械部品を製造する方法としたことを特徴とする。
【0026】
この方法により、部品の高精度形状加工と炭素傾斜層の形成とが同一装置で行えるため処理費が安価となり、また形状加工によってできたすべての表面に均一に十分な炭素傾斜層を形成することができるため、部品表面に対して密着性の高い硬質炭素膜を形成することができ、また高電圧の電源が不要となり処理費用を低減することができるとともに、不活性ガスを用いるので安全性が高く立体的な機械部品に対して均一に表面処理を施すことができる。
【0027】
また、本発明の請求項記載の機械部品の製造方法は、請求項または請求項に記載の機械部品の製造方法であって、機械部品は、小型モータ用の部品である方法としたことを特徴とする。
【0028】
この方法により製造されたモータ部品は、密着性の高い摺動膜により表面処理されているので、寿命を長くすることができる
【0029】
この構成により、携帯電子機器は寿命が長いモータ部品を使っているので、長期間使用することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す表面処理方法および機械部品の製造方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の表面処理方法および機械部品の製造方法を説明する。
【0031】
図1は本実施の形態の表面処理方法および機械部品の製造方法を示す概念的な構成図である。本実施の形態においては、基体1はモータの回転部分の部品であり、その拡大図を図5に示す。図5に示すように、部品は対称軸60に対して対称形で鉄系合金でできている。本実施の形態の表面処理は、表面に硬質炭素膜を形成することにより、機械部品の摺動性および耐摩耗性を向上することを目的としている。
【0032】
本実施の形態1の表面処理方法および機械部品の製造方法における前工程について、図1(a)、図1(b)を用いて説明する。
まず、構成について説明する。図1において、11は放電加工漕、3は基体1の材料、12は材料取り付け治具であり回転機構を備える。13は加工液であり、図示していない加工液切り替え機構により、加工液A用のタンク14および加工液B用のタンク15からの2種類の加工液を切り替えることができる。タンク14からの加工液Aは、材料を所望の形状に加工するときに用いるもので、タンク15からの加工液Bは、炭素傾斜層を形成する際に用いる。加工液Bには、炭素傾斜層を形成するための炭素粉末が添加されている。
【0033】
放電加工槽11の中には、放電加工時の放電用電極となる電極a16、電極b17が配置されている。電極a16は材料を所望の形状に加工するときに用いるもので、電極b17は炭素傾斜層を形成する際に用いる。電極b17は、WCなど炭素を含む材質を用い、望ましくは表面を炭素被覆している。
【0034】
18は放電加工用電源であり、基体材料3と電極16、17との間に電圧をかけており、基体材料3をマイナス側にすることも電極16、17をマイナス側にすることもできるように、極性の切り替え機構を有する。基体材料3と電極16、17間の位置を変化させる機構は図示していないが、通常用いられるXYテーブルや昇降機構により容易に実現できる。
【0035】
次に、動作について説明する。
まず、加工液Aタンク14より加工液Aを放電加工漕11内に供給する。次に、回転機構により基体材料3を回転させる。次に、電極a16と基体材料3間に基体材料3の極性がプラスとなるように、放電加工用電源18によって70Vの電圧をかける。続いて、電極a16と基体材料3を徐々に5μm以下の距離に近づけ、電極a16と基体材料3間でアーク放電を起こしながら、基体材料3を所望の形状に加工していく。基体材料3が所望の形状になった後、電圧を切り電極a16を基体1から離し、さらに加工液Aを放電加工漕11内から回収する。
【0036】
つぎに、図1(b)の如く、加工液Bタンク15より加工液Bを放電加工漕11内に供給し、電極b17を基体1に5μm以下の距離に近づける。このとき電極b17と基体1間に電極b17がプラスとなるように、放電加工用電源18によって100Vの電圧をかける。電極b17と基体1間でアーク放電が発生し電極b17の表面または内部または加工液B中の炭素が基体1に入りこむ。アーク放電は局所的にエネルギーが集中しているので、プラズマプロセスに比べて基体1の深くまで改質することができる。プラズマプロセスによる炭素傾斜層が100nm以下であるのに対し、放電加工による改質は100nm〜5μm程度である。
【0037】
次に、本実施の形態1の表面処理方法および機械部品の製造方法における後工程について、図1(c)を用いて説明する。
まず、構成について説明する。
【0038】
図4と同じ番号は同じ構成要素を表す。ただし、図4と比べて、バイアス電源21の電圧が15kV未満である点が異なる。
以下に動作を説明する。
【0039】
排気ライン4より真空チャンバ10内を1.0×10-4Paまで排気する。次に電源33よりアークプラズマ源31に電力を供給し、アーク電流60Aとして、炭素イオンと電子からなるプラズマ50を発生させる。同時に、バイアス電源21により、基体1にパルス状の負電圧−10kVを、幅10μsec周期1000Hzで印加する。
【0040】
プラズマ50中の炭素イオンは、基体1に印加された負のバイアス電圧により、プラズマ50から引き出され基体1の表面に衝突する。その際の炭素イオンは、プラズマ50と基体1の電位差に相当する分のエネルギーをもっているので、基体1に衝突して注入または付着する。この際に基体1の表面では、硬質炭素膜が形成され、潤滑性の発現と硬化が生じる。これによって、基体表面の摺動性と耐摩耗性を向上することができる。
【0041】
以上の方法によると、一点に集中した放電加工のエネルギーによって、厚い炭素傾斜層が形成できるので、密着性が高い硬質炭素膜を形成することができる。また、高電圧の電源が不要となるため処理費用を低減することができる。
【0042】
また、図2に本実施の形態で処理した基体表面のオージェ分析の結果を示す。硬質炭素膜層の下に500nmの炭素傾斜層が形成されていることがわかる。このため、従来のプラズマプロセスによる処理の密着性が、スクラッチ臨海荷重で20Nであったものを、60Nまで向上することができた。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の表面処理方法および機械部品の製造方法を説明する。
【0043】
図1は本実施の形態の表面処理方法および機械部品の製造方法を示す概念的な構成図である。本実施の形態2においても、基体はモータの回転部分であり、その拡大図を図5に示す。図5に示すように、部品は対称軸60に対して対称形であり鉄系合金でできている。本実施の形態の表面処理は、表面に硬質炭素膜を形成することにより摺動性および耐摩耗性を向上することを目的としている。
【0044】
本実施の形態の構成は、前工程において図1(a)、(b)と同様であるが、加工液Bとして加工液に含ませる炭素粉末の量を実施の形態1の2倍にしている点が異なる。このため前工程において、炭素傾斜層ととともに炭素層が形成される。
【0045】
動作は実施の形態1の場合と同様である。その結果、厚い炭素傾斜層とそれを覆う炭素層が形成される。しかも、従来例のプラズマプロセスの炭素傾斜層の形成では、基体1とプラズマ50間の電界が、図5の表面61や表面62に集中するため、角部63の付近に十分な炭素傾斜層が得られないのに対し、この方法では、形状加工によってできたすべての表面に均一に十分な炭素傾斜層を形成することができる。
【0046】
次に、本実施の形態の後工程について、図3を用いて説明する。
図3中、図1(c)と同じ番号は同じ構成要素を表す。5は不活性ガスの供給ラインである。ここでは不活性ガスとしてアルゴンを用いた。22は基板支持台2に電圧を印加する電源である。ここでは、周波数3000Hzのパルス電源を用いた。
【0047】
つぎに動作を説明する。
まず、不活性ガスの供給ライン5より真空チャンバ10内に不活性ガスを供給しながら、排気ライン4より排気しチャンバ内を一定圧力に保つ。ここでは5Paに保った。次に、バイアス電源22より−1kVのパルス電圧を印加すると、基体1の周りにプラズマ50が発生する。プラズマ50中のイオンはプラズマ50と基体1の電位差によって基体1に衝突する。イオンのエネルギーで炭素層は活性化され構造が硬質炭素膜となる。
【0048】
また、炭素層の一部はスパッタされプラズマ50中でイオンとなり、バイアス電圧によって再び基体1に衝突し、硬質炭素膜を形成する。このプロセスは、バイアス電圧が低いので注入プロセスのような電界集中の効果は小さい。よって、基体1表面に均一に硬質炭素膜を形成することができる。これによって、基体1表面の摺動性と耐摩耗性を向上することができる。
【0049】
この方法によると、部品の高精度形状加工と炭素傾斜層の形成が同一装置で行えるため、処理費が安価となる。また形状加工によってできたすべての表面に均一に十分な厚さの炭素傾斜層を形成することができる。よって部品の表面に密着性が高い硬質炭素膜を形成することができる。
【0050】
また、高電圧の電源が不要で処理費用を低減することができる。さらに不活性ガスを用いるので、安全性が高く立体的な機械部品に、均一に表面処理を施すことができる。
【0051】
なお、1μm以上の硬質炭素膜を形成する場合は、実施の形態1が実用的であるが、0.1μm以下の場合実施の形態2のほうが均一に処理できるという優位性を持つ。
【0052】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、一点に集中した放電加工のエネルギーによって厚い炭素傾斜層を形成することができるので、機械部品の表面に対して密着性の高い硬質炭素膜を効率良く形成することができる。
【0053】
また、不活性ガスによるプラズマを用いるので、安全性が高く立体的な機械部品に対しても均一に表面処理を施すことができる。
さらに、高電圧の電源が不要となるため処理費用を低減することができるとともに、部品の高精度形状加工と炭素傾斜層や炭素層の形成が同一装置で行えるように構成することができ、その構成により処理費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の表面処理方法および機械部品の製造方法を示す概念的な構成図
【図2】同実施の形態の表面処理方法および機械部品の製造方法による処理表面のオージェ分析の結果説明図
【図3】同実施の形態の表面処理方法および機械部品の製造方法における後工程を示す概念的な構成図
【図4】従来の表面処理方法および機械部品の製造方法を示す概念的な構成図
【図5】従来例および実施の形態の表面処理方法および機械部品の製造方法によって得られる機械部品の拡大図
【符号の説明】
1 基体
2 支持台
3 基体材料
4 排気ライン
5 供給ライン
10 真空チャンバ
11 放電加工漕
12 材料取り付け治具
13 加工液
14、15 タンク
16、17 電極
18 放電加工用電源
20、21、22 バイアス電源
31 プラズマ源
33 プラズマ用電源
50 プラズマ

Claims (5)

  1. 導体からなる基体の表面に硬質炭素膜を形成する表面処理方法であって、
    放電加工漕の中に配置される一対の電極の間に基体材料を設け、前記放電加工漕内に加工液Aを供給した後、前記基体材料を回転させ、前記基体材料の極性がプラスになるように前記一対の電極の一方に電圧を印加し、前記一方の電極と前記基体材料との距離を5μm以下にして、前記一方の電極と前記基体材料との間でアーク放電を起こしながら、前記基体材料を加工して基体を形成し、
    その後、前記一対の電極に印加した電圧を切り前記放電加工漕内の前記加工液Aを加工液Bに入れ替え、前記他方の電極がプラスになるように前記一対の電極の他方に電圧を印加し、前記他方の電極と前記基体との距離を5μm以下にして、前記他方の電極と前記基体との間でアーク放電を発生させ、前記基体に炭素を入り込ませて前記基体の表面に炭素傾斜層を形成する前工程と、
    プラズマプロセスにより炭素原子を注入および堆積させて硬質炭素膜を形成する後工程とを有することを特徴とする表面処理方法。
  2. 導体からなる基体の表面に硬質炭素膜を形成する表面処理方法であって、
    放電加工漕の中に配置される一対の電極の間に基体材料を設け、前記放電加工漕内に加工液Aを供給した後、前記基体材料を回転させ、前記基体材料の極性がプラスになるように前記一対の電極の一方に電圧を印加し、前記一方の電極と前記基体材料との距離を5μm以下にして、前記一方の電極と前記基体材料との間でアーク放電を起こしながら、前記基体材料を加工して基体を形成し、
    その後、前記一対の電極に印加した電圧を切り前記放電加工漕内の前記加工液Aを加工液Bに入れ替え、前記他方の電極がプラスになるように前記一対の電極の他方に電圧を印加し、前記他方の電極と前記基体との距離を5μm以下にして、前記他方の電極と前記基体との間でアーク放電を発生させ、前記基体に炭素を入り込ませて前記基体の表面に炭素傾斜層および炭素層を形成する前工程と、
    不活性ガスのプラズマにより前記炭素層を硬化させて硬質炭素膜を形成する後工程とを有することを特徴とする表面処理方法。
  3. 放電加工漕の中に配置される一対の電極の間に導体材料を設け、前記放電加工漕内に加工液Aを供給した後、前記導体材料を回転させ、前記導体材料の極性がプラスになるように前記一対の電極の一方に電圧を印加し、前記一方の電極と前記導体材料との距離を5μm以下にして、前記一方の電極と前記導体材料との間でアーク放電を起こしながら、前記導体材料を所望の形状に加工して導体を形成し、
    その後、放電加工に使用する電極または加工液またはその両者を炭素傾斜層の形成用に交換し、前記一対の電極に印加した電圧を切り前記放電加工漕内の前記加工液Aを加工液Bに入れ替え、前記他方の電極がプラスになるように前記一対の電極の他方に電圧を印加し、前記他方の電極と前記導体との距離を5μm以下にして、前記他方の電極と前記導体との間でアーク放電を発生させ、前記導体に炭素を入り込ませて前記導体の表面処理を行い、
    さらにプラズマプロセスにより炭素原子を注入および堆積させて硬質炭素膜を形成し、機械部品を製造することを特徴とする機械部品の製造方法。
  4. 放電加工漕の中に配置される一対の電極の間に導体材料を設け、前記放電加工漕内に加工液Aを供給した後、前記導体材料を回転させ、前記導体材料の極性がプラスになるように前記一対の電極の一方に電圧を印加し、前記一方の電極と前記導体材料との距離を5μm以下にして、前記一方の電極と前記導体材料との間でアーク放電を起こしながら、前記導体材料を所望の形状に加工して導体を形成し、
    その後、放電加工に使用する電極または加工液またはその両者を炭素傾斜層および炭素層の形成用に交換し、前記一対の電極に印加した電圧を切り前記放電加工漕内の前記加工液Aを加工液Bに入れ替え、前記他方の電極がプラスになるように前記一対の電極の他方に電圧を印加し、前記他方の電極と前記導体との距離を5μm以下にして、前記他方の電極と前記導体との間でアーク放電を発生させ、前記導体に炭素を入り込ませて前記導体の表面処理を行い、
    さらに不活性ガスのプラズマにより前記炭素層を硬化させて硬質炭素膜を形成し、機械部品を製造することを特徴とする機械部品の製造方法。
  5. 機械部品は、小型モータ用の部品であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の機械部品の製造方法。
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