しかしながら、前述の特許文献1に記載したような監視カメラ装置においては、昼夜の撮影切り替え時において、撮影された画像の所定周波数成分を用いて合焦度を算出し、もっとも合焦度の高い位置に撮像素子を配置する。よって、昼夜の撮影切り替え時に、不正な者によるレンズへのいたずらや故障等の異常が発生した場合にも、適当な位置に撮像素子が配置されて撮影が続行されるので、監視に用いることのできない画像が撮影されてしまい、監視カメラ装置の管理者が後ほど記録された画像を見るまではその異常が検知されないので、セキュリティ性に課題があった。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、不正な者によるレンズへのいたずらや故障等の異常が発生した場合にも、その異常を検知することのできるセキュリティ性の高い撮影装置および撮影システムを提供することを目的とする。
本発明の撮影装置は、撮影を行う撮影部と、前記撮影部のフォーカス調整を行うフォーカス調整部と、前記フォーカス調整部のフォーカス調整の履歴情報を記憶する履歴情報記憶部と、前記履歴情報記憶部に記憶されたフォーカス調整の履歴情報にもとづいて異常を検知する異常検知部とを備え、前記異常検知部は、前記履歴情報記憶部に記憶された過去の履歴情報と、前記フォーカス調整部によるフォーカス調整の際の最新の履歴情報とを比較し、その差異にもとづいて異常を検知することを特徴としている。
このような構成により、フォーカス調整の履歴情報にもとづいて異常を検知することができるので、不正な者によるレンズへのいたずらや故障等の異常が発生した場合にも、その異常を検知することのできるセキュリティ性の高い構成を実現できる。
このような構成によれば、さらに、過去の履歴情報と現在の履歴情報とを比較するという簡易な構成で異常を検知することが可能な構成を実現できる。
さらに、異常検知部で異常が検知された場合に、履歴情報記憶部に記憶された履歴情報にもとづいて、異常が検知された原因を判定する異常原因判定部を備えた構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、異常が検知された原因を履歴情報にもとづいて判定することができるので、使用者に対して利便性の高い構成を実現することができる。
また、撮影部は、撮像素子を有し、フォーカス調整部は、撮像素子を光軸方向に移動させる撮像素子駆動部と、撮影部で撮影された画像から合焦度を算出する合焦度算出部と、合焦度がもっとも高くなるように撮像素子駆動部を制御する駆動制御部とを有する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、撮像素子を光軸方向に移動させることでフォーカス調整ができるので、光学系として固定焦点レンズを用いたような場合にも鮮鋭な画像を撮影することが可能である。
また、履歴情報は、フォーカス調整を完了したときの合焦度の値、および、フォーカス調整を完了したときの撮像素子の位置を示すAF位置情報を有する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、合焦度またはAF位置情報という取得しやすい情報を用いて異常の検知およびその原因を判定することができる。
また、履歴情報は、合焦度の初期の平均値および最新の平均値、ならびに、AF位置情報の初期の平均値および最新の平均値を含む構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、初期の平均値と最新の平均値とを比較することにより、レンズや装置等の経時変化による異常発生を検知することが可能となる。
さらに、撮影部は、光軸に対して垂直方向に移動可能な赤外光カットフィルタ部を含むフィルタ部を有し、フォーカス調整部は、フィルタ部を移動させたときにフォーカス調整を行う構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、昼夜間を問わず、撮影を行うことが可能な撮影装置、特に監視用途に適した撮影装置を実現できる。
さらに、フォーカス調整部に対してフォーカス調整を開始させるAF開始指示部を備え、フォーカス調整部は、AF開始指示部からの指示にもとづいてフォーカス調整を開始する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、様々な条件の際にフォーカス調整を開始させることが可能な構成を実現できる。
また、AF開始指示部は、所定の照度変化を検知する照度変化検知部を有し、照度変化検知部が照度変化を検知したときに、フォーカス調整部にフォーカス調整を開始させる構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、周辺の明るさに応じてフォーカスがずれるような撮影装置に適した構成を実現できる。
また、AF開始指示部は、所定の温度変化を検知する温度変化検知部を有し、温度変化検知部が温度変化を検知したときに、フォーカス調整部にフォーカス調整を開始させる構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、周辺の温度変化によってフォーカスがずれるような撮影装置に適した構成を実現できる。
さらに、AF開始指示部は、入力スイッチ部を有し、入力スイッチ部からの入力があったときに、フォーカス調整部にフォーカス調整を開始させる構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、装置の使用者が希望するときにフォーカス調整を行うことが可能な構成を実現できる。
また、AF開始指示部は、撮影部で撮影された画像の所定の輝度変化を検知する輝度変化検知部を有し、輝度変化検知部で所定の輝度変化が検知された場合には、所定の時間フォーカス調整の開始を遅らせるようフォーカス調整部に指示する構成であってもよい。
このような構成によれば、輝度変化の大きなときにフォーカス調整を行わないので、より安定したフォーカス調整を実現することができる。
さらに、AF開始指示部は、撮影部で撮影された画像における被写体の動きを検知する動き検知部を有し、動き検知部で被写体の動きが検知された場合には、所定の時間フォーカス調整の開始を遅らせるようフォーカス調整部に指示する構成であってもよい。
このような構成によれば、被写体の動きが大きなときにフォーカス調整を行わないので、より安定したフォーカス調整を行うことができる。
また、撮影部は、絞り部および絞り部の開閉駆動を行う絞り駆動部を有し、フォーカス調整部は、絞り駆動部に対して絞り部を開けさせてフォーカス調整を行う構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、光学系の被写界深度の浅い状態でフォーカス調整を行うので、フォーカス調整後に通常の撮影を行う場合に、より広い範囲で鮮鋭な画像を撮影することができる。
次に、本発明の撮影システムは、本発明の撮影装置と、撮影装置のフォーカス調整部に対してフォーカス調整の開始を指示するフォーカス調整指示部を有する入力装置と、撮影装置で撮影された画像および異常検知部で異常が検知された場合にはその旨を表示する表示部とを有することを特徴としている。
このような構成によれば、フォーカス調整の履歴情報にもとづいて異常を検知することができるので、不正な者によるレンズへのいたずらや故障等の異常が発生した場合にも、その異常を検知して表示装置に表示することのできるセキュリティ性の高い構成を実現できる。さらに、入力装置からフォーカス調整が可能で管理者に利便性の高い構成を実現できる。
また、本発明の撮影システムは、本発明の撮影装置と、撮影装置のフォーカス調整部に対してフォーカス調整の開始を指示するフォーカス調整指示部を有する入力装置と、撮影装置で撮影された画像、異常検知部で異常が検知された場合にはその旨、および、異常原因判定部で異常の原因が判定された場合にはその原因を表示する表示部とを有することを特徴としている。
このような構成によれば、フォーカス調整の履歴情報にもとづいて異常を検知してその原因を判定することができるので、不正な者によるレンズへのいたずらや故障等の異常が発生した場合にも、その異常を検知して原因を表示装置に表示することのできるセキュリティ性の高い構成を実現できる。さらに、入力装置からフォーカス調整が可能で管理者に利便性の高い構成を実現できる。
以上述べたように、本発明の撮影装置および撮影システムは、フォーカス調整の履歴情報にもとづいて異常を検知することができるので、不正な者によるレンズへのいたずらや故障等の異常が発生した場合にも、その異常を検知することのできるセキュリティ性の高い構成を実現できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態における監視カメラシステム50の構成を示すブロック図である。図1に示したように、本発明の実施の形態における監視カメラシステム50は、レンズ部2および入力スイッチ部20を有する監視カメラ装置1、監視カメラ装置1と接続され、監視カメラ装置1で撮影された画像を含む情報を表示する表示部35を有する表示装置30、ならびに、同じく監視カメラ装置1と接続され、監視カメラ装置1に対して後述するようなフォーカス調整を含む様々な指示の入力を行うためのキーボード41およびフォーカス調整指示部42を有する入力装置40を備えている。
本発明の実施の形態における監視カメラシステム50の監視カメラ装置1は、後述する構成および方法によって、周辺の明るさを検知し、周辺が比較的明るいときには赤外光カットフィルタをレンズ部2の光軸上に挿入し、周辺が比較的暗いときには赤外光カットフィルタを光軸上から退避させることにより、周辺の明るさを問わず監視を行うことができる。
本発明の実施の形態における監視カメラシステム50の監視カメラ装置1は、この赤外光カットフィルタの切り替えを行った際に、その光路長の補正を行うために後述する方法でフォーカス調整(以下、AF調整またはAF処理とも記す)を行う(以下、このフォーカス調整のことを「オート調整」と記す。)。また、監視カメラ装置1のフォーカス調整は、この他にも、監視カメラ装置1に設けられた入力スイッチ部20または入力装置40のフォーカス調整指示部42を操作することによって行うことが可能である。具体的には、監視カメラ装置1のAF調整ボタン46または入力装置40のAF調整ボタン45を押すことにより、フォーカス調整が行われる(以下、このフォーカス調整のことを「ワンプッシュ調整」と記す。)。さらに、監視カメラシステム50の管理者が、表示装置30の表示部35に表示された誘導表示33および実際に撮影された画像を見ながら、監視カメラ装置1のマニュアル調整ボタン44または入力装置40のマニュアル調整ボタン43を押下することにより、管理者がフォーカス調整を行うことができる(以下、このフォーカス調整のことを「マニュアル調整」と記す。)。
また、本発明の実施の形態における監視カメラシステム50においては、後述するような構成および方法により、監視カメラ装置1がフォーカス調整の履歴情報にもとづいて異常を検知して、監視カメラ装置1に異常が発生したことおよび原因の判別が可能な異常についてはその原因についても表示装置30に表示させることが可能である。
本発明の実施の形態における監視カメラシステム50においては、監視カメラ装置1に装着されたレンズ部2は、固定焦点のレンズであって、その絞り部3の開閉は監視カメラ装置1に設けられた駆動制御部10(図1に図示せず)によって制御されているタイプのレンズ、すなわち一般に自動絞りレンズとよばれるタイプのレンズを用いている。
また、本発明の実施の形態における監視カメラシステム50の表示装置30としては、表示デバイスとしてCRTを用いたモニター装置を用いているが、液晶、ELまたはPDP等の公知の各種表示デバイスを用いることも可能である。
さらに、本発明の実施の形態における監視カメラシステム50の入力装置40としては、押下することにより指示が入力可能なダイレクトキーを入力デバイスとして用いるが、マウス、トラックボールまたはトラックパッド等の公知の各種入力デバイスを用いることも可能である。監視カメラ装置1の入力スイッチ部20および入力装置40のフォーカス調整指示部42も同様に、公知の各種入力デバイスを用いることができる。
また、本発明の実施の形態における監視カメラシステム50の表示装置30に表示された誘導表示33は、現在のフォーカス位置と、マニュアル調整ボタン44またはマニュアル調整ボタン43の操作とフォーカス方向との相関(図1に示した例では、現在のフォーカス位置が概略中心位置にあり、右側のマニュアル調整ボタン43,44を押下するとより近くにピントが合い、左側のマニュアル調整ボタン43,44を押下するとより遠くにピントが合うことを示している。)を示している。
ここで、本発明の実施の形態における監視カメラシステム50における監視カメラ装置1の構成について、図2を用いて詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の構成を示すブロック図である。本発明の実施の形態における監視カメラ装置1は、絞り駆動部51によって駆動される絞り部3を有するレンズ部2、レンズ部2を透過した光線のうち赤外領域の光線を選択的に吸収し、可視領域の光線を選択的に透過させる赤外光カットフィルタ62および枠体部61を有する、光軸に垂直な方向(図2における紙面上下方向)に移動可能なフィルタ部4、フィルタ部4を透過した光線を光電変換して電気信号を出力する撮像素子5、撮像素子5を光軸に平行な方向(図2における紙面左右方向)に移動させる撮像素子移動部6、撮像素子5の撮像素子移動部6上における原点を検出する原点検出部52、撮像素子5から出力された電気信号に対して電子シャッタ処理を含む処理を行って映像信号を出力する映像信号処理部7、映像信号処理部7から出力された映像信号から後述する方法で合焦度を算出する合焦度算出部9、映像信号処理部7から出力された映像信号から後述する方法で輝度変化の有無を判定する輝度変化判定部16、映像信号処理部7から出力された映像信号から後述する方法で動き検出処理を行う動き検出部17、監視カメラ装置1の周辺照度の変化を検知する照度変化検知部18、監視カメラ装置1の周辺温度の変化を検知する温度変化検知部19、入力装置40、監視カメラ装置1に設けられた入力スイッチ部20、輝度変化判定部16、動き検出部17、照度変化検知部18および温度変化検知部19からの出力にもとづいて、後述する方法によりフォーカス調整を行うか否かの判定を行うAF処理判定部15、AF処理判定部15によってフォーカス調整を行うと判定された際に、合焦値算出部9によって算出された合焦値を参照しながら、絞り駆動部51、フィルタ駆動部12、撮像素子駆動部13およびシャッタ駆動部14の駆動制御を行う駆動制御部10、駆動制御部10からの駆動信号にもとづいてフィルタ部4を駆動するフィルタ駆動部12、駆動制御部10からの駆動信号にもとづいて撮像素子5を撮像素子移動部6上で移動させるように駆動する撮像素子駆動部13、駆動制御部10からの駆動信号にもとづいて映像信号処理部7におけるシャッタスピードの制御を行うシャッタ駆動部14、駆動制御部10が行ったフォーカス調整の後述する履歴情報を記憶する履歴情報記憶部22、入力装置40からの入力または履歴情報記憶部22に記憶された履歴情報にもとづいて後述の方法で異常を検知する異常検知部21、異常検知部21において異常が検知された場合に、履歴情報記憶部22に記憶された履歴情報にもとづいて異常が検知された原因を判定する異常原因判定部23、映像信号処理部7から出力された映像信号および異常原因判定部23によって判定された異常が検知された原因を示す情報を表示装置30に出力するとともに、入力装置40からのAF処理判定部15または異常検知部21への情報の入力を行う通信制御部8、通信制御部8と表示装置30、および、通信制御部8と入力装置40をそれぞれ接続するコネクタ31、ならびに、駆動制御部10とレンズ部2の絞り部3とを接続するコネクタ32を備える。
ここで、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の各構成要素についてさらに詳細に説明する。
本発明の実施の形態における監視カメラ装置1のフィルタ部4は、枠体部61と赤外光カットフィルタ62とがフィルタ駆動部12によって光軸方向に対して直交する方向に移動し、切り替え可能に設けられている。なお、赤外光カットフィルタ62とともに、撮像素子の配置パターンと画像とのモアレ現象を抑制するために、ローパスフィルタが配置されていてもよい。フィルタ駆動部12としては、例えばDCモータを用いることができる。フィルタ部4を移動させることができれば、本発明はこの構成に限定されるものではなく、各種モータ等公知の駆動手段を各種用いることができるのはいうまでもないことである。フィルタ部4の赤外光カットフィルタ62が光軸上に配置されている場合、すなわち図2に示した状態が、可視光画像を撮影している状態(昼間等、周辺が明るい状態)である。枠体部61のレンズ部2からの光線が透過する部分には、波長選択特性の小さい材料、例えばガラスが配置されて、その周辺に枠体が形成されている。よって、光軸上に枠体部61が位置する状態は、可視光に加えて赤外光の画像も撮影することが可能な状態(夜間等、周辺が暗い状態に適する)である。
本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の撮像素子5としては、例えばCCDやCMOSセンサ等の公知のデバイスを用いることができる。また、本実施の形態における監視カメラ装置1においては、撮像素子5を移動させる撮像素子移動部6としてリードスクリューを用い、リードスクリューに対するナット部に撮像素子5を取り付け、撮像素子移動部6を駆動する撮像素子駆動部13としてステッピングモータを用いている。このような構成によれば、撮像素子駆動部13であるステッピングモータの回転によって撮像素子移動部6であるリードスクリューを回転させて、撮像素子5を光軸方向に移動させることが可能である。
また、撮像素子駆動部13としてステッピングモータを用いることにより、フォーカス調整時の撮像素子5の位置を記憶部(図示せず)に記憶したり、正確に制御したりすることができる。また、撮像素子移動部6には、撮像素子5の位置の原点を検出するための原点検出部52が設けられている。原点検出部52としては、例えばフォトインタラプタを用いることができる。なお、本発明は前述の撮像素子移動部6、撮像素子駆動部13および原点検出部52の構成に限定されるものではなく、撮像素子5を光軸方向に平行に移動させることができ、撮像素子5の位置を検出できる構成であれば、他の公知の構成を用いることができる。
映像信号処理部7は、撮像素子5から出力される電気信号に対して、電子シャッタ処理等の画像処理を行って、動画の映像信号として出力する。
通信制御部8における通信制御としては、例えば画像の伝送を公知の動画の通信制御方法によって行うとともに、監視カメラ装置1の異常を示す信号等のデータ通信の制御をRS485等による通信方法によって行うことができる。
合焦値算出部9は、映像信号処理部7から出力された映像信号から合焦値を算出する。合焦値の算出方法は、様々な公知の方法を用いることができる。例えばフォーカスが合った鮮鋭な画像は、フォーカスの合っていないぼけた画像と比較して、画像中の高周波成分の量が多いことを利用して、合焦値算出部9は映像信号のうち所定の高周波成分を抽出して、その高周波成分の値を積算して、合焦値として算出することができる。この場合には、合焦値が大きくなるほどフォーカスが合っている(鮮鋭な画像である)ことを示し、合焦値が小さくなるほどフォーカスがずれている(ぼけた画像である)ことを示す。
照度変化検知部18、温度変化検知部19および入力スイッチ部20はそれぞれ、監視カメラ装置1のAF処理判定部15に対してフォーカス調整を開始させる開始トリガとなっている。一方、輝度変化判定部16および動き検出部17は、監視カメラ装置1のAF処理判定部15に対して、輝度変化または動きが検出されたときにはフォーカス調整の開始を遅らせる旨を指示する機能を有する。
輝度変化判定部16は、映像信号処理部7から出力された映像信号において、画像中に大きな輝度変化があったかどうかを判定する。大きな輝度変化があった場合とは、例えば、特に夜間において、自動車のライトや懐中電灯等の高い輝度の被写体が画面内に入ってきた場合または出て行った場合等があるが、このような場合には、高輝度の被写体の影響によって最適な位置にフォーカス調整を行うことが難しい。そこで、輝度変化判定部16はAF処理判定部15に対して、輝度変化を検知した旨の出力をし、AF処理判定部15では、輝度変化がなくなるまでまたは所定の時間フォーカス調整の開始を遅らせる。輝度変化判定部16における輝度変化の判定方法は、様々な公知の方法を用いることができる。例えば、輝度変化判定部16は、画像における全画素の輝度値の平均値を記憶しておき、その輝度値の変化が所定の閾値を超えた場合に、輝度変化があったと判定することが可能である。
動き検出部17は、映像信号処理部7から出力された映像信号において、画像中に大きな動きがあったかどうかを判定する。大きな動きがあった場合とは、例えば被写体が画面中を移動している場合等であり、このような場合にも、被写体が特にレンズ部2から遠ざかる方向または近づく方向に移動するような場合には、その影響によって最適な位置にフォーカス調整を行うことが難しい。よって、動き検出部17はAF処理判定部15に動きが検出されている旨の出力を行い、AF処理判定部15では、動きが検出されなくなるまで、または所定の時間フォーカス調整の開始を遅らせる。動き検出部17における動き検出の方法は、様々な公知の方法を用いることができる。例えば、動き検出部17は、画像中の画素毎の輝度変化量を微分して、その値が所定の閾値を超えた画素数が一定数以上存在する場合に、動きを検出したと判定することが可能である。
照度変化検知部18は、監視カメラ装置1周辺の照度を測定することにより、撮影時の時間帯が昼間であるのか夜間であるのかを判定するために用いられる。前述のように、昼間と夜間とで撮影に用いる光線の波長が異なることから、時間帯が切り替わる際には、再度フォーカス調整をすることが望ましい。照度変化検知部18の一例としては、監視カメラ装置1に取り付けられた照度計を用いることができる。また、映像信号処理部7から出力された映像信号の画像全体の平均輝度値を用いて、平均輝度値が所定の閾値よりも高い時間が一定時間続いた場合には時間帯が昼間であると判定し、平均輝度値が所定の閾値よりも低い時間が一定時間続いた場合に周辺が夜間であると判定することもできる。照度変化によって撮影時の時間帯の判定結果が変化した場合(すなわち、「昼間」→「夜間」または「夜間」→「昼間」の場合)に、照度変化検知部18は、照度変化があった旨をAF処理判定部15に出力する。
温度変化検知部19は、監視カメラ装置1の周辺温度を測定するために用いられる。周辺温度を測定することによって、照度変化検知部18と同様に撮影時の時間帯を推定することが可能であり、前述のように、昼間と夜間とで撮影に用いる光線の波長が異なることから、時間帯が切り替わる際には、再度フォーカス調整をすることが望ましい。温度変化検知部19としては、例えば監視カメラ装置1に取り付けられた温度計を用いることができる。温度計によって温度が所定の閾値よりも高い場合には、撮影時が昼間であると判定することができるし、温度が所定の閾値よりも低い場合には、撮影時が夜間であると判定することも可能である。温度変化によって撮影時の時間帯の判定結果が変化した場合(すなわち、「昼間」→「夜間」または「夜間」→「昼間」の場合)に、温度変化検知部19は、温度変化があった旨をAF処理判定部15に出力する。なお、温度変化検知部19を用いることによって、レンズ部2として光学系の屈折率が温度特性を有する場合等にも、温度変化によってフォーカス調整を開始することのできる構成を実現できる。
入力スイッチ部20には、監視カメラ装置1に設けられた公知のプッシュスイッチを用いることができる。
なお、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1では、フィルタ部4の切り替え時間帯の判定を行う構成要素として、照度変化検知部18および温度変化検知部19を備えた構成で説明したが、本発明はこの構成に限定されない。照度変化検知部18または温度変化検知部19を備えることにより、フィルタ部4の切り替え時間帯を判定することが可能である。
ここで、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1におけるAF処理判定部15の機能について詳細に説明する。まず、監視カメラ装置1が、「オート調整」モードにあるとき、すなわち、周辺の明るさによって自動的にフォーカス調整が行われる場合について説明する。この場合、AF処理判定部15は、照度変化検知部18からの照度変化を検知した旨の情報または温度変化検知部19からの温度変化を検知した旨の情報が入力された場合には、駆動制御部10にフォーカス調整を開始させる。このとき、AF処理判定部15に輝度変化判定部16からの画像中に輝度変化を検出した旨の情報および動き検出部17による画像中に動きを検出した旨の情報のいずれかが、前述の照度変化または温度変化のいずれかの情報とともに入力されている場合には、すぐにはフォーカス調整を行わず、所定時間、または、輝度変化もしくは動きがある程度低減するまでの間待機してからフォーカス調整を開始するように、AF処理判定部15は駆動制御部10に指示する(以下、このように待機してからフォーカス調整を行う処理のことを「やりなおし処理」と記す)。このとき、監視カメラ装置1が「オート調整」モードであることを示す情報も駆動制御部10に送る。また、「オート調整」モードにおいては、監視カメラ装置1の電源がONされたときにも上述のフォーカス調整が行われるものとする。
次に、監視カメラ装置1が「ワンプッシュ調整」モード、すなわち監視カメラ装置1のAF調整ボタン46および入力装置40のAF調整ボタン45のいずれかが押下されたときには、AF処理判定部15は他の入力にかかわらず駆動制御部10に対してフォーカス調整を開始させる。このとき、監視カメラ装置1が「ワンプッシュ調整」モードであることを示す情報も駆動制御部10に送る。このようなモードを設けておくことにより、監視カメラシステム50の管理者が、監視カメラ装置1の設置時や表示装置30の画像がぼけている場合等のフォーカス調整の必要を感じたときに、フォーカス調整を行うことが可能となる。
また、「マニュアル調整」モード、すなわち監視カメラ装置1のマニュアル調整ボタン44および入力装置40のマニュアル調整ボタン43のいずれかが押下された場合には、AF処理判定部15は、他の入力にかかわらず駆動制御部10に、マニュアル調整ボタン43,44によって入力された方向にフォーカス調整を行うよう駆動制御部10に指示する。このとき、監視カメラ装置1が「マニュアル調整」モードであることを示す情報も駆動制御部10に送る。このようなモードを設けておくことにより、監視カメラシステム50の管理者が、表示装置30の画像および誘導表示33を見て、所望の方向にフォーカス調整を行うことができる。
駆動制御部10は、AF処理判定部15から指示を受け取ったときは、その指示にしたがって、絞り駆動部51、撮像素子駆動部13またはフィルタ駆動部12の駆動制御を行う。まず、「オート調整」モードの場合、駆動制御部10からフォーカス調整の指示を受けたときには、駆動制御部10はフィルタ駆動部12を駆動して、フィルタ部4の切り替えを行う。「昼間→夜間」に変化した場合には、光軸上に枠体部61が位置するように切り替えを行い、「夜間→昼間」に変化した場合には、光軸上に赤外光カットフィルタ62が位置するように配置する。
次に、駆動制御部10は、合焦値算出部9から出力される合焦値がもっとも高くなる位置に撮像素子5を移動させるよう、撮像素子駆動部13に指示する。このときの撮像素子駆動部13に対する駆動制御方法としては、いわゆる「山登り方式」を用いることができるが、他の公知の方法を用いてもよい。なお、フォーカス調整を行う際に、駆動制御部10が、絞り部3を全開させるように絞り駆動部51を制御し、かつ、映像信号処理部7のシャッタスピードを速くするようにシャッタ駆動部14に指示することにより、レンズ系の被写界深度がもっとも狭い状態でフォーカス調整を行うことができるので、実際に撮影を行う際にはより広い範囲にピントの合った画像を得ることができる。
また、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1においては、フォーカス調整時に、所定時間(例えば30秒)かかってもなお、撮像素子5の最適な位置が決定されない場合には、駆動制御部10は、あらかじめ記憶部(図示せず)に記憶された、時間帯毎のプリセットフォーカス位置に撮像素子5を移動させて処理を終了する(以下、このようなプリセット値による調整のことを「プリセット調整」と記す)。このようなフォーカス調整を行うことにより、例えば突発的に画面中に被写体が現れたような場合でも、周辺の明るさに応じて画面全体の鮮鋭な画像を得ることができる。
また、「ワンプッシュ調整」モードまたは「マニュアル調整」モードの場合には、駆動制御部10は撮像素子駆動部13に対してのフォーカス調整指示を行い、フィルタ部4の駆動は行わない。これは、フォーカス調整の必要性が、周辺の明るさによるものではないために、フィルタ部4の切り替えを行う必要がないからである。
さらに、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1においては、駆動制御部10が行ったフォーカス調整の履歴情報が履歴情報記憶部22に記憶されている。履歴情報記憶部22は、例えばEPROMを用いて構成することが可能であるが、記憶媒体としては、他にもEEPROM、RAM、HDD等公知の各種記録媒体を用いることができる。
ここで、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の履歴情報記憶部22に記憶されている履歴情報の一例について説明する。図3は、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の履歴情報記憶部22に記憶された履歴情報の一例を示す図である。
図3には、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の履歴情報記憶部22に記憶された履歴情報の項目名、内容およびデータ数の一例を示している。上から順に、まず、電源ON回数Aは、工場出荷時からの監視カメラ装置1の電源をONした累積回数である。原点サーチ移動ステップ数Bは、監視カメラ装置1の電源がONされた際に原点検出部52を用いた撮像素子5の原点サーチを行うが、その際に要した移動ステップ数を示す。AF位置座標Cは、フォーカス調整を完了した際の撮像素子5の位置のステップ数を示す。合焦度値Dは、フォーカス調整を完了した際の合焦値算出部9からの合焦度の値を示す。移動ステップ数Eは、フォーカス調整を行う際に要した総移動ステップ数を示す。AF調整やりなおし回数Fは、フォーカス調整を行う際に、前述の「やりなおし処理」が行われた回数を示す。駆動種別Gは、フォーカス調整が行われた場合の、モードを示す情報である(例えば、「オート調整」のときには「1」、「ワンプッシュ調整」のときには「2」、「マニュアル調整」のときには「3」、「プリセット調整」のときには「4」)。
なお、本発明の実施の形態の監視カメラ装置1においては、原点サーチ移動ステップ数B、AF位置座標C、合焦度値D、移動ステップ数E、AF調整やりなおし回数Fおよび駆動種別Gそれぞれの情報は、「昼間」「夜間」それぞれの時間帯毎に最新の10回分ずつ、計20回分のフォーカス調整時のデータを記憶するものとする。なお、ここで、時間帯が「昼間」のデータとは、フィルタ部4の赤外光カットフィルタ62が光路上に配置されている状態でのフォーカス調整時のデータを示し、逆に、時間帯が「夜間」のデータとは、フィルタ部4の赤外光カットフィルタ62が光路上から退避した状態でのフォーカス調整時のデータを示すものとする。
履歴情報記憶部22に記憶される履歴情報としてはさらに、AF位置座標平均値(初期)Hは、前述のAF位置座標Cの工場出荷時からの初期データの時間帯毎の平均値であり、時間帯毎に10回分の値を平均した値が格納されている。合焦度平均値(初期)Iは、前述の合焦度値Dの工場出荷時からの初期データの時間帯毎の10回分の平均値である。AF位置座標平均値(最新)Jは、前述のAF位置座標Cの時間帯毎に最新の10回分を平均した値である。合焦度平均値(最新)Kは、前述の合焦度値Dの時間帯毎に最新の10回分の平均値である。AF調整回数(累積)Lは、フォーカス調整を行った累積回数を時間帯毎に示す。本発明の実施の形態における監視カメラ装置1においては、時間帯が「昼間」および「夜間」の二種類であるので、AF位置座標平均値(初期)H、合焦度平均値(初期)I、AF位置座標平均値(最新)J、合焦度平均値(最新)KおよびAF調整回数(累積)Lはそれぞれ二つのデータを有している。
なお、履歴情報記憶部22に記憶されるべき履歴情報としては、上述したものの他に、監視カメラ装置1の電源ONされている累積時間等を有することも可能である。
本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の異常検知部21は、入力装置40から管理者による異常を示す入力があったとき、または、履歴情報記憶部22に記憶された履歴情報から後述の処理を行うことにより監視カメラ装置1に異常があったことを検知したときに、異常原因判定部23に対してその異常が検知された原因を判定させるとともに、表示装置30にその原因とともに異常が発生した旨を表示して管理者に注意を促す。
ここで、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の異常検知部21の処理内容について詳細に説明する。図4は、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の異常検知部21の処理ステップを示すフローチャートである。
本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の異常検知部21は、フォーカス調整が終了するたび、または定期的(所定の時間毎)に以下の処理を行う。まず、異常検知部21は、履歴情報記憶部22に記憶された履歴情報から、合焦度値Dの20個のデータのうち、対応する時間帯(フィルタ部4の赤外光カットフィルタ62が光路上に存在する場合には「昼間」、赤外光カットフィルタ62が光路上から退避した状態であれば「夜間」)のデータ(10回分)を抽出する(S1)。異常検知部21は、最新の合焦度値Dと、抽出された10回分の合焦度値Dとを比較して、最新の合焦度値Dが、抽出された10回分の合焦度値Dのばらつきの範囲内であれば、次のステップに進み、ばらつきの範囲外であれば、異常と判定する(S2)。このステップS2における処理について詳細に説明する。なお、説明を簡単にするために、ここでは過去のフォーカス調整が全て「オート調整」モードで行われ、最新のフォーカス調整も「オート調整」モードにおける「夜間→昼間」の時間帯切り替えに伴って行われたものとする。
図5は本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の異常検知部21の処理を説明するための概念図である。図5においては、横軸にフォーカス調整が行われた回数をとり、縦軸に合焦度値Dを示す。図5に示した例においては、領域Pが、「夜間→昼間」の切り替え時の値(すなわち、時間帯が「昼間」の値)を示し、領域Qが「昼間→夜間」の切り替え時の値(すなわち、時間帯が「夜間」の値)を示している。このような前提において、図5に示した最新の合焦度値Rは「夜間→昼間」の切り替え時の値であるので、異常検知部21は、最新の合焦度値Rが領域Pの合焦度値のばらつきΔTの範囲内にあるかどうかを演算し、図5の例においては最新の合焦度値Rが領域Pの合焦度値のばらつきΔTの範囲内にあるので、「異常なし」と判定する。一方、最新の合焦度値が、図5における合焦度値Sである場合には、異常検知部21は、最新の合焦度値Rが領域Pの合焦度値のばらつきΔTの範囲外にあるとして「異常あり」と判定する。このような判定を行うことによって、最新のAF処理時に合焦値が大きく変化したことからなんらかの異常が発生したことが推認される。なお、この例では、過去のフォーカス調整が全て「オート調整」で行われている例を示したが、過去に「ワンプッシュ調整」等の、他のフォーカス調整も行われているような場合には、合焦度値Dの10個のデータのうち、駆動種別Gを参照して、「オート調整」のものだけを最新の合焦度値と比較することによって、より高精度に異常を検知することができる。また、上述の例では、最新の合焦度値と、合焦度値Dの10個のデータとを比較してそのばらつきΔTの範囲内にあるか否かを判定する例を示したが、実用的には、最新の合焦度値と、合焦度値平均値(最新)Kとを比較して、その差が所定の範囲内であれば、「異常なし」と判定する一方、その差が所定の範囲を超えた場合には「異常あり」と判定する構成としてもよい。このような構成とすれば、演算ステップ数が少なくてすむので、装置の小型化等に適した構成を実現できる。
図4に戻って、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の異常検知部21は、ステップS2の後に、履歴情報記憶部22からAF位置座標Cのデータ20個のうち、対応する時間帯のデータ10個を抽出して(S3)、その最新値が先に取得された値のばらつきの範囲内にあるか否かを判定し、ばらつきの範囲内であれば次のステップに進み、ばらつきの範囲外であれば「異常あり」と判定する(S4)。判定の方法は、図5に示した合焦度値における判定方法と同様であるので説明は省略する。このような判定を行うことによって、最新のAF処理時にAF位置座標が大きく変化したことからなんらかの異常が発生したことが推認される。なお、この例では、過去のフォーカス調整が全て「オート調整」で行われている例を示したが、過去に「ワンプッシュ調整」等の、他のフォーカス調整も行われているような場合には、AF位置座標Cの10個のデータのうち、駆動種別Gを参照して、「オート調整」のものだけを最新のAF位置座標の値と比較することによって、より高精度に異常を検知することができる。また、上述の例では、最新のAF位置座標の値と、AF位置座標Cの10個のデータとを比較してそのばらつきΔTの範囲内にあるか否かを判定する例を示したが、実用的には、最新のAF位置座標の値と、AF位置座標平均値(最新)Jとを比較して、その差が所定の範囲内であれば、「異常なし」と判定する一方、その差が所定の範囲を超えた場合には「異常あり」と判定する構成としてもよい。このような構成とすれば、演算ステップ数が少なくてすむので、装置の小型化等に適した構成を実現できる。
次に、異常検知部21は、履歴情報記憶部22から合焦度平均値(最新)Kおよび合焦度平均値(初期)Iを抽出し(S5)、その差が所定の範囲内か否かを判定する(S6)。このような判定を行うことによって、経時変化によって合焦度が大きく変化したことからなんらかの異常が発生したことが推認される。
次に、異常検知部21は、履歴情報記憶部22からAF位置座標平均値(最新)JおよびAF位置座標平均値(初期)Hを抽出し(S7)、その差が所定の範囲内か否かを判定する(S8)。このような判定を行うことによって、経時変化によってAF位置座標が大きく変化したことからなんらかの異常が発生したことが推認される。
なお、上述の例においては、図4に示したように、合焦度値D、AF位置座標C、合焦度平均値I,K、AF位置座標平均値H,Jの順に正常か異常かの判定を行ったが、本発明はこの順番に限定されない。この四つの履歴情報による異常判定の順番は任意に行うことができる。
また、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1においては、異常検知部21から異常原因判定部23へは、「異常あり」を示す情報とともに、いずれの履歴情報によって「異常あり」の判定がなされたのかが出力されるものとする。
次に、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の異常原因判定部23は、異常検知部21において異常が検知された場合に、履歴情報記憶部22から履歴情報を抽出して、その原因を判定する。さらに、この原因について表示装置30に表示することも可能である。この判定方法について詳細に説明する。
図6は、本発明の実施の形態における監視カメラ装置1の異常原因判定部23が行う異常原因判定処理の内容の一例を示す図である。図6においては、合焦度値D、AF位置座標C、合焦度平均値I,K、AF位置座標平均値H,J、AF調整やりなおし回数F、移動ステップ数Eまたは原点サーチ移動ステップ数B、および、AF調整回数(累積)Lまたは電源ON回数Aのそれぞれの内容と、対応するエラーNo.E1〜E6およびその内容について示している。異常原因判定部23は、合焦度値D、AF位置座標C、合焦度平均値I,KおよびAF位置座標平均値H,Jのいずれの履歴情報によって異常検知部21において「異常あり(NG)」と判定されたのか、ならびに、最新のフォーカス調整と同じ時間帯における、AF調整やりなおし回数Fおよび移動ステップ数Eまたは原点サーチ移動ステップ数Bの変化傾向、さらには、AF調整回数(累積)Lまたは電源ON回数Aの値から、異常原因を判定する。
例えば、一番上の行(エラーNo.E1)は、異常検知部21において「異常あり(NG)」と判定された履歴情報が合焦度値Dであって、AF調整やりなおし回数Fが通常と同様の値であり、かつ多い場合(例えば、3回以上)であって、さらに、移動ステップ数Eまたは原点サーチ移動ステップ数Bが通常と同様の値で、かつ多い場合を示している。このような場合には、通常からフォーカス調整に時間を要しており、かつ、今回合焦度値Dが大きく変化しているので、その原因としては、例えばその監視カメラ装置1が繁華街のネオンライトや、人通りまたは交通量の多い場所等の比較的輝度変化の多い場所を撮影しているために、その輝度変化の影響を受けて迅速なフォーカス調整ができないことが考えられる。このような場合には、異常原因判定部23は、表示装置30に異常が発生した旨を表示するとともに、「輝度変化が大きい場所に備え付けられている可能性があります。場所を移動するか、フォーカス調整を「プリセット調整」に切り替えてください」というような表示をすることにより、異常の原因が分かるので、管理者に利便性の高い監視カメラシステムを構成できる。
次に、エラーNo.E2は、異常検知部21において「異常あり(NG)」と判定された履歴情報が合焦度値Dであって、AF調整やりなおし回数Fが少ない場合(例えば、3回未満)を示している。このような場合には、フォーカス調整に時間を要しておらず、かつ、今回合焦度値Dが大きく変化しているので、その原因としては、例えば監視カメラ装置1の画角内に、今回のフォーカス調整時に突発的に自動車のヘッドライト等のハイライトを有する被写体が入ってきたために、このハイライトの部分にピントが合っていることが考えられる。このような場合には、異常原因判定部23は、表示装置30に異常が発生した旨を表示するとともに、「「プリセット調整」モードに切り替えてください」というような表示をすることにより、自動車のヘッドライト等のハイライトに影響されず画面全体にフォーカスの合った画像を得ることのできる可能性が高くなり、管理者に利便性の高い監視カメラシステムを構成できる。また、このような場合には、異常原因判定部23がAF処理判定部15に対して、フォーカス調整を再度行わせることも可能である。
次に、エラーNo.E3は、異常検知部21において「異常あり(NG)」と判定された履歴情報が合焦度値Dであって、AF調整やりなおし回数Fが通常よりも突発的に多い場合であって、かつ、移動ステップ数Eまたは原点サーチ移動ステップ数Bが通常よりも突発的に多い場合を示している。このような場合には、フォーカス調整に通常よりも突発的に多くの時間を要しており、かつ、今回合焦度値Dが大きく変化しているので、その原因としては、例えば不正な者がレンズ部2を取り外したり、レンズ面にスプレーを吹きかけたりする行為(いわゆるタンパ行為)や、レンズ部2の故障等が考えられる。このような場合には、異常原因判定部23は、表示装置30に異常が発生した旨を表示するとともに、「タンパ行為が行われている可能性があります」というような表示をすることにより、不正な行為を迅速に知ることができ、管理者に利便性の高い監視カメラシステムを構成できる。
次に、エラーNo.E4は、異常検知部21において「異常あり(NG)」と判定された履歴情報がAF位置座標Cである場合を示している。このような場合には、フォーカス調整に時間はかかっていないものの、AF位置座標Cが大きく変化しているので、その原因としては、例えば通常撮影される被写体よりも近い(または遠い)位置に、フォーカス調整時に別の被写体が突発的に出現した場合等が考えられる。このような場合には、異常原因判定部23は、表示装置30に異常が発生した旨を表示するとともに、「「プリセット調整」モードに切り替えてください」というような表示をすることにより、突発的に出現した被写体以外の画面全体にフォーカスの合った画像を得ることができる可能性が高くなり、管理者に利便性の高い監視カメラシステムを構成できる。
次に、エラーNo.E5は、異常検知部21において「異常あり(NG)」と判定された履歴情報が合焦度平均値であって、AF調整回数(累積)Lまたは電源ON回数Aが多い(例えば、10000回以上)場合を示している。このような場合には、合焦度が経時変化していることが考えられ、原因としては、例えばレンズの熱や直射日光等による変形、くもり、汚れ等によって合焦度が変化していることが考えられる。このような場合には、異常原因判定部23は、表示装置30に異常が発生した旨を表示するとともに、「レンズの点検を行ってください」というような表示をすることにより、異常の原因が分かるので、管理者に利便性の高い監視カメラシステムを構成できる。
さらに、エラーNo.E6は、異常検知部21において「異常あり(NG)」と判定された履歴情報がAF位置座標平均値であって、AF調整回数(累積)Lまたは電源ON回数Aが多い(例えば、10000回以上)場合を示している。このような場合には、AF位置座標が経時変化していることが考えられ、原因としては、例えば撮像素子移動部6や撮像素子駆動部13の機械的ながたつきにより、AF位置座標が変化していることが考えられる。このような場合には、異常原因判定部23は、表示装置30に異常が発生した旨を表示するとともに、「装置の点検を行ってください」というような表示をすることにより、異常の原因が分かるので、管理者に利便性の高い監視カメラシステムを構成できる。
以上述べたように、本発明の実施の形態の監視カメラシステム50を用いれば、監視カメラ装置1においてフォーカス調整がうまくいかない場合にも、その原因を推定し、行うべき対応を表示装置30に表示することができるので、利便性に優れたシステムを提供することができる。
なお、本発明の実施の形態においては、撮影装置として監視カメラ装置1を用いて説明を行ったが、本発明の撮影装置はなんら監視カメラ装置に限定されるものではない。例えば、撮像素子5を光軸方向に移動させてフォーカス調整を行うことのできる撮影装置であれば、ビデオカメラ等いなかる撮影装置にも応用可能なことはいうまでもない。