−−−システム構成−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態の電力供給調整時損失予測システムを含むネットワーク構成例を示す図である。本発明の電力供給調整時損失予測システム100(以下、システム100)は、本発明の電力供給調整時損失予測方法を実行する機能を実現すべく書き換え可能メモリなどのプログラムデータベース101に格納されたプログラム102をメモリ103に読み出し、演算装置たるCPU104により実行する。
また、前記システム100は、コンピュータ装置が一般に備えている各種キーボード12やボタン類、ディスプレイ11などの入出力インターフェイス105、ならびに、需要家の端末200などとの間のデータ授受を担う通信手段106などを有している。
前記システム100は、前記通信手段106により、前記需要家の端末200らと例えばインターネットやLAN、シリアル・インターフェース通信線などのネットワーク140を介して接続し、データ授受を実行する。システム100の各種機能部と通信手段106との間ではI/O部107がデータのバッファリングや各種仲介処理を実行している。
続いて、前記システム100が、例えばプログラム102に基づき構成・保持する機能部につき説明を行う。なお、システム100は、電力供給制限に対応する際の需要家側の各設備で発生するコスト単価と、各設備の時間帯別稼働率および電力容量との情報を格納する設備情報データベース125(データ構造は後述)を利用可能であるとする。
こうしたシステム100は、電力供給制限に対応する際の需要家側で発生するコストの種別に応じて、前記設備情報データベース125における設備を分類し、当該設備毎のコスト種別情報を設備情報データベース125に格納するコスト分類処理部110を備える。
また、前記システム100は、調整電力量および調整時間帯の情報を含む、供給制限条件を入力インターフェイスより取得する、供給制限条件取得部111を備える。
また、前記システム100は、前記設備情報データベース125における設備毎に、供給制限条件が含む前記調整時間帯に応じた時間帯別稼働率を該当設備の電力容量に乗じて、電力供給制限に対応する際に需要家側で発生する電力需要量を算出する需要量算出部112を備える。
また、前記システム100は、前記設備情報データベース125における設備毎に、該当コスト単価を前記電力需要量に乗じて、電力供給制限に対応する際に需要家側で発生するコストを算出し、コストリスト127を生成するコスト算出部113を備える。
また、前記システム100は、需要家の当初契約電力量から前記供給制限条件に含まれる調整電力量を減じた電力量以下に、当該需要家の設備の前記電力需要量の総和が収まるまで、前記コストリスト127のうちでコストの小さな設備から順に停止推奨設備を選択する停止推奨設備判定部114を備える。
また、前記システム100は、前記停止推奨設備について生じる前記コストの総和を算出し、このコスト総和と停止推奨設備の情報とを出力インターフェイスに出力する出力処理部115を備える。
なお、前記コスト分類処理部110が、前記コストの種別に応じて前記設備情報データベース125における設備を分類するに際し、電力供給制限に対応する際に需要家側でコストが発生しない第1設備種と、電力供給制限に対応すべく需要家側で節電を行うことで節電コストが発生する第2設備種と、電力供給制限に伴って需要家側で生じる業務停止により停電コストが発生する第3設備種と、電力供給制限に対応して需要家側で自家発電を行うことで発電コストが発生する第4設備種とに設備を分類する処理を実行し、各設備毎に該当する前記第1から第4の設備種をコスト種別情報として設備情報データベース125に格納するするものであるとすれば好適である。この場合、前記出力処理部115は、前記停止推奨設備について生じる前記コストの総和を算出し、このコスト総和と、停止推奨設備の前記第1から第4の設備種の情報とを出力インターフェイスに出力するものとなる。
また、前記停止推奨設備判定部114が、需要家の当初契約電力量から前記供給制限条件に含まれる調整電力量を減じた電力量以下に、当該需要家の設備の前記電力需要量の総和が収まる設備の組合せパターンを、前記コストリスト127に含まれる設備から選択するものであるとすれば好適である。この場合、前記出力処理部115は、前記組合せパターン毎に当該組合せパターンに含まれる設備の前記コストの総和を算出し、組合せパターン毎のコスト総和と組合せパターンに含まれる設備の情報とを出力インターフェイスに出力するものとなる。
また、前記出力処理部115が、組合せパターン毎のコスト総和と組合せパターンに含まれる設備の情報とを、組合せパターンを一方の軸とし、各組合せパターンに応じたコスト総和を他方の軸としたグラフ300(図6)上に表示するグラフデータを生成し、これを出力インターフェイスに出力するものである、とすれば好適である。
また、前記コスト分類処理部110が、前記設備情報データベース125における設備の分類と、設備毎のコスト種別情報の設備情報データベース125への格納とを、複数の需要家からなる需要家群について実行するものであるとすれば好適である。この場合、前記需要量算出部112は、前記電力需要量の算出を前記需要家群について実行し、前記コスト算出部113は、前記コストの算出とコストリストの生成とを前記需要家群について実行し、前記停止推奨設備判定部114は、需要家の当初契約電力量から前記供給制限条件に含まれる調整電力量を減じた電力量以下に、前記需要家群における設備の前記電力需要量の総和が収まるまで、前記コストリスト127のうちで、需要家群に含まれる需要家を跨ってコストの小さな設備から順に停止推奨設備を選択し、前記出力処理部115は、、前記停止推奨設備の情報と当該停止推奨設備の電力需要量の情報とを調整依頼量の情報として該当需要家の端末200に送信するものとなる。
なお、これまで示した 前記システム100における各機能部110〜115は、ハードウェアとして実現してもよいし、メモリやHDD(Hard Disk Drive)などの適宜な記憶装置に格納したプログラムとして実現するとしてもよい。この場合、本発明のシステム100のCPU104がプログラム実行に合わせて記憶装置より該当プログラム102をメモリ103に読み出して、これを実行することとなる。
また、前記ネットワーク140に関しては、インターネット、LANの他、ATM回線や専用回線、WAN(Wide Area Network)、電灯線ネットワーク、無線ネットワーク、公衆回線網、携帯電話網、シリアル・インターフェース通信線など様々なネットワークを採用することも出来る。また、VPN(Virtual Private Network)など仮想専用ネットワーク技術を用いれば、インターネットを採用した際にセキュリティ性を高めた通信が確立され好適である。なお、前記シリアル・インターフェイスは、単一の信号線を用いて1ビットずつ順次データを送るシリアル伝送で、外部機器と接続するためのインターフェースを指し、通信方式としてはRS−232C、RS−422、IrDA、USB、IEEE1394、ファイバ・チャネルなどが想定できる。
−−−データベース構造−−−
次に、本実施形態の電力供給調整時損失予測システム100が利用するデータベースの構造について説明する。図2は、本実施形態における、(a)設備情報データベース125、(b)設備情報データベース126(予備電源分)、(c)コストリスト127の各データ構造を示す図である。
前記設備情報データベース125は、電力供給制限に対応する際の需要家側の各設備で発生するコスト単価と、各設備の時間帯別稼働率および電力容量との情報を格納するデータベースである。このような設備情報データベース125は、例えばレコードNO.をキーとして、設備分類名称、設備分類に属する設備の総電力容量、発生するコストの種別(第1〜3:無コスト、節電コスト、停電コスト)、コストの種別内での優先順位(利用停止や利用制限等をしない優先順位)、電力供給の制限時に生じるコストの単価、各設備の時間帯別稼働率といった情報を関連づけたレコードの集合体となっている。
また、前記設備情報データベース126(予備電源分)は、電力供給制限に対応する際の需要家側の予備電源設備(自家発電の設備)で発生するコスト単価や電力容量の情報を格納するデータベースである。このような設備情報データベース126(予備電源分)は、例えばレコードNO.をキーとして、設備分類名称、設備分類に属する設備の総発電容量、発生するコストの種別(第4:発電コスト)、コストの種別内での優先順位(利用を優先的に行う順位)、電力供給の制限時に生じるコストの単価といった情報を関連づけたレコードの集合体となっている。ここで「発電容量」とは対象の予備電源設備が1時間当たりに発電できる容量Z[kwh]であり、電源設備の定格電力z[kw]の場合には、接続される負荷の平均負荷率がU[%]の場合には、1時間継続して定格電力z[kw]を発電し続けられるとしてZ[kwh]=z[kw]×1時間×U[%]となる。なお、このデータベース126は前記設備情報データベース125と一体となっていてもよい。
また、前記コストリスト127は、前記設備毎の、電力供給制限に対応する際に需要家側で発生するコストの情報を格納するリストであり、システム100のメモリ103などに設けられる。このようなコストリスト127は、例えばレコードNO.をキーとして、設備分類名称、発生するコストの種別、コストの種別内での優先順位(利用を優先的に行う順位)、電力供給の制限時に生じるコストといった情報を関連づけたレコードの集合体となっている。
−−−実施例1−−−
以下、本実施形態における電力供給調整時損失予測方法の実際手順について、図に基づき説明する。なお、以下で説明する電力供給調整時損失予測方法に対応する各種動作は、前記システム100が、メモリ103に読み出して実行するプログラム102によって実現される。そして、このプログラム102は、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
この実施例1では、例えば、需要家に対して需給調整契約を促す電力事業者の営業担当などユーザが、調整電力量や調整時間帯とった供給制限条件をシステム100の入力インターフェイスを介して入力した場合に、システム100が、電力供給制限に伴う発生コスト(つまり損失)を前記需要家について推定する実施例1について説明する。これにより、需給調整契約などにより電力供給の一部を調整・制約する状況に対しても、発生するコストの種類によって設備を分類して、電力供給制限による損失を算出することができる。そのため、節電などによって回避できる損失を考慮でき、従来手法による過剰な損失推定を回避することが可能となる。
この場合まず、システム100は、入出力インターフェイス105から供給制限条件の入力があるかないかを判定する(ステップ201)。ここで供給制限条件とは、次の2つのデータを含むものとする。まず1つ目は、電力調整量X[kwh]であり、電力供給事業者から需要家に通常時に供給を約束されている電力供給量Y[kwh](Y>X)から調整・制限される電力量である。2つ目は、需要家が電力供給調整を受ける時間帯である。 ここでは予め、少なくとも1つ以上の時間帯(図2(a)のデータベース125中の時間帯別稼働率の時間帯A〜Cに対応)を入出力インターフェイス105で選択可能に表示して、ユーザからの選択を受け付ける。なお、前記時間帯の具体例としては例えば、朝時間帯(8時〜12時)、ピーク時間帯(13時〜15時)、晩時間帯(16時〜22時)、夜間時間帯(23時〜7時)のように電力需要の特性が異なる時間帯を想定できる。
入出力インターフェイス105にて調整電力量の入力と調整時間帯の選択、つまり供給制限条件の入力がある場合には、システム100は処理をステップ202に移行する。他方、入出力インターフェイス105にて調整電力量の入力と調整時間帯の選択がない場合には、システム100は処理をステップ201に戻す。
ステップ202においてシステム100は、ステップ201で読込んだ調整電力量と調整時間帯のデータをメモリ103に読込む。またシステム100は、メモリ103に読込まれた調整時間帯の情報を基に、電力供給が制限された場合に需要家側で発生するコストの種類で分類した設備種別ごとに、供給制限時の総コストを算出する(ステップ203)。
なお、システム100のコスト分類処理部110は、電力供給制限に対応する際の需要家側で発生するコストの種別に応じて、前記設備情報データベース125における設備を分類し、当該設備毎のコスト種別情報を設備情報データベース125に予め格納しているものとする。このコスト種別情報としては、例えば、第1設備種:無コスト(電力供給が制限された場合にも追加コストが発生しない設備)、第2設備種:節電コスト(電力供給が制限された場合には電力利用の時間帯の変更など節電により対応ができ、節電コストが発生する設備)、第3設備種:停電コスト(電力供給が制限された場合に、対象設備の停止による業務停止や材料廃棄などにより停電コストが発生する設備)があるものとする。なお第4設備種については後述する。
ステップ203においてシステム100は、設備種別ごとに全ての設備分類について電力供給制限を行った場合の総コストを算出する。例えば発生コスト種別が「節電コスト」である設備種別について処理を行う際には、システム100は、設備情報データベース125から「発生コスト種別」が「節電コスト」の設備分類のレコードを上から順番に判定し、「発生コスト種別」が「節電コスト」の設備分類の情報をメモリ103に読込む。そしてシステム100は、設備分類が「節電コスト」であるレコードを集約した設備情報リストを作成しメモリ103に記憶する。
次にシステム100は、発生コスト種別が「節電コスト」の設備分類に関するレコードだけからなる前記設備情報リストに、新たなデータ項目「発生コスト」を追加し、発生コスト種別が節電コストの設備分類に関するコストリスト127を生成する。「発生コスト」のデータ項目には、システム100が算出した発生コストを記憶する。各設備分類の「発生コスト」は、「発生コストcj=総電力容量j×時間帯別稼働率j×停止時コスト単価j」の算定式より算出できる。なお、前記算定式における「j=1、2、3…」は、発生コスト種別が「節電コスト」の設備分類に関するレコードだけからなる前記設備情報リストの上からの順番を示す。ここで時間帯別稼動率についてはステップ202で記憶した時間帯に対応する時間帯別稼動率を用いる。また、前記算定式のうち、「総電力容量j×時間帯別稼働率j」は、該当設備分類の電力需要量の算定式となっている。
システム100は、発生コスト種別が「節電コスト」の設備分類のレコードだけからなる設備情報リストにおける、全ての設備分類に対して「発生コスト」を算出して、コストリスト127を生成し、これをメモリ103に記憶した後、発生コスト種別が「節電コスト」である設備分類の総コストCi=Σcjを算出する。なお、前記i=1、2、3…は、発生コスト種別ごとに割り振った番号を示し、システム100は、「節電コスト」だけではなく他の発生コスト種別の総コストも同様の処理により、「無コスト」ならばC1、「節電コスト」ならばC2、「停電コスト」ならばC3として算出する。また同様に、システム100は、発生コスト種別が「節電コスト」以外の「停電コスト」や「発電コスト」である設備分類に関する各コストリスト127を生成するものとする。
一方でシステム100は、「発電コスト」に関しては、設備情報データベース(予備電源分)126に基づき、各設備分類の「発生コスト」を「発生コストcj=平均発電容量j×停止時コスト単価j」の算定式により算出する。さらにシステム100は、「発電コスト」の総コストを「C4=Σcj」の算定式により算出する。ここで、前記算定式における「j=1、2、3…」は図2(b)に示す発生コスト種別が「発電コスト」である設備分類のレコードだけからなる設備情報リストの上からの順番を示す。ここで算定した発電コストは、発生コスト種別が「発電コスト」である設備分類に関するコストリスト127の構成情報となる。
このようにシステム100は、ステップ203において、「無コスト」の総コストC1、「節電コスト」の総コストC2、「停電コスト」の総コストC3、「発電コスト」の総コストC4を算出し、それぞれメモリ103に記憶する。
続いてシステム100は、前記調整時間帯において、全ての設備分類についてそれぞれが必要とする総電力需要量を算出する(ステップ204)。ここでもシステム100は、ステップ203と同様にまず、例えば発生コスト種別が「節電コスト」である設備分類のレコードだけからなる設備情報リストを作成し、メモリ103に記憶する。
次にこの発生コスト種別が「節電コスト」である設備分類のレコードだけからなる設備情報リストに、新たなデータ項目「電力需要量」を追加する。この「電力需要量」のデータ項目には、システム100が算出する電力需要量を記憶する。なお、各設備分類の「電力需要量」についてシステム100は、「電力需要量ej=総電力容量j×時間帯別稼働率j」の算定式により算出する。なお、前記算定式において「j=1、2、3…」は、発生コスト種別が「節電コスト」である設備分類のレコードだけからなる設備情報リストの上からの順番を示す。また、時間帯別稼動率については、ステップ202で記憶した時間帯に対応する時間帯別稼動率を用いる。
システム100は、前記設備情報リストが含む全ての設備分類に対して、「電力需要量」を算出してこれをメモリ103に記憶する。またその後、システム100は、発生コスト種別が「節電コスト」である設備分類について、「総電力需要量Ei=Σej」を算出する。なお、前記算定式にて「i=1、2、3…」は、発生コスト種別ごとに割り振った番号を示す。システム100は、前記「節電コスト」だけではなく他の発生コスト種別に関する総電力需要量も同様の処理により、「無コスト」ならばE1、「節電コスト」ならばE2、「停電コスト」ならばE3として算出する。こうしたコストと調整量の関係は、図5に示す通りである。
一方でシステム100は、「発電コスト」に関しては、図2(b)に示す設備情報データベース126から、各設備分類の「電力需要量」を「電力需要量ej=平均発電容量j」とし、「発電コスト」の総電力需要量を、「E4=Σej」の算定式により算出する。この算定式において前記「j=1、2、3…」は、図2(b)の設備情報データベース126に示すような、発生コスト種別が「発電コスト」である設備分類のレコードだけからなる設備情報リストの上からの順番を示す。
このようにシステム100は、ステップ204において、「無コスト」の総電力需要量E1、「節電コスト」の総電力需要量E2、「停電コスト」の総電力需要量E3、「発電コスト」の総電力需要量E4を算出し、それぞれメモリ103に記憶する。
システム100は、ステップ202で取得した電力調整量Xに対して、前記コストリスト127中よりどの設備種別を停止(の推奨を)するか判定する(ステップ205)。以下、システム100がステップ205で行う処理の詳細を、図4を用いて説明する。
システム100は、まず予め、損失予測対象となる需要家の情報として予め適宜な不揮発性メモリ等(システム100が装備)に記憶されている、電力供給事業者から通常時に供給を約束されている供給量Y[kwh]のデータを、メモリ103に読み込んで記憶する。続いて、ステップ202で取得した電力調整量Xと、通常時に供給を約束されている供給量Y[kwh]とから、システム100は、電力調整時に供給される電力量V[kwh]=Y−X、を算出して、これをメモリ103に記憶する(ステップ301)。
次にシステム100は、電力調整時に供給される電力量V[kwh]と「停電コスト」の総電力需要量E3とを比較し、電力量Vが総電力需要量E3より大きい場合、つまり「停電コスト」発生の恐れがある設備分類をカバーする電力供給がある場合には(ステップ302:はい)、ステップ304に処理を移行する。他方、電力量Vが総電力需要量E3より小さい場合には(ステップ302:いいえ)、システム100は、処理をステップ303に移行する。
システム100は、ステップ303において、電力調整時に供給される電力量V[kwh]と、「停電コスト」の総電力需要量E3から「発電コスト」の総電力需要量E4を差し引いた需要量(E3−E4)とを比較する。つまりここでシステム100は、「停電コスト」発生の恐れがある設備分類をカバーするのに不足する電力供給量を、予備電源の稼動により補えるかどうかを判定するのである。
当該ステップ303における判定処理にて、電力量V[kwh]が需要量(E3−E4)よりも大きいとされた場合(ステップ303:はい)、システム100は、「無コスト」および「節電コスト」発生の恐れがある設備種別を、「無コスト」および「節電コスト」のコストリスト127中より停止推奨設備として設定し、「発電コスト」発生の恐れがある設備種別を、「発電コスト」のコストリスト127中より一部発電設備として設定する。またシステム100は、電力量V[kwh]から需要量(E3−E4)を差し引いて過剰発電量(V−(E3−E4))を算出する。またシステム100は、前記停止推奨設備および一部発電設備の設定情報と過剰発電量の情報とをメモリ103に記憶する。これにより、システム100はステップ205の処理を終了する。なお、システム100が、コストリスト127中より停止推奨設備等を選択する際には、需要量(E3−E4)が供給電力量V以下に、当該需要家の設備の電力需要量の総和が収まるまで、コストリスト127のうちでコストの小さな設備から順に停止推奨設備等を選択する。
一方でシステム100は、ステップ303において、電力量V[kwh]が需要量(E3−E4)よりも小さいとされた場合(ステップ303:いいえ)、つまりは「停電コスト」発生の恐れがある設備分類をカバーするのに不足する電力供給量を予備電源の稼動により補えない場合には、「無コスト」および「節電コスト」発生の恐れがある設備種別を「無コスト」および「節電コスト」のコストリスト127中より停止推奨設備として設定し、「停電コスト」発生の恐れがある設備種別を、「停電コスト」のコストリスト127中より一部停止設備として設定し、「発電コスト」発生の恐れがある設備種別を、「発電コスト」のコストリスト127中より発電設備として設定する。またシステム100は、需要量(E3−E4)から電力量V[kwh]を差し引いて過剰需要量((E3−E4)−V)を算出する。システム100は、前記停止推奨設備と一部停止設備と発電設備とについての設定情報と、過剰需要量の情報とを、メモリ103に記憶して、ステップ205の処理を終了する。なお、システム100が、コストリスト127中より停止推奨設備等を選択する際には、需要量(E3−E4)が供給電力量V以下に、当該需要家の設備の電力需要量の総和が収まるまで、コストリスト127のうちでコストの小さな設備から順に停止推奨設備等を選択する。
他方、ステップ302で供給電力量Vが需要量E3を上回っていた場合、システム100は、ステップ304において、「停電コスト」の総電力需要量E3と「節電コスト」の総電力需要量E2とを足し合わせた需要量(E3+E2)と、電力調整時に供給される電力量V[kwh]とを比較する。ここで、電力量Vが需要量(E3+E2)より大きい場合(ステップ304:はい)、つまり「停電コスト」および「節電コスト」発生の恐れがある設備分類をカバーする電力供給がある場合には、システム100は処理をステップ306に移行する。
一方、電力量Vが需要量(E3+E2)より小さい場合(ステップ304:いいえ)、システム100は処理をステップ305に移行する。このステップ305においてシステム100は、電力調整時に供給される電力量V[kwh]と、需要量(E3+E2)から「発電コスト」の総電力需要量E4を差し引いた需要量(E3+E2−E4)とを比較する。つまり、「停電コスト」および「節電コスト」発生の恐れがある設備分類をカバーするのに不足する電力供給量を予備電源の稼動により補えるかどうかを判定する。
ここで電力量V[kwh]が需要量(E3+E2−E4)よりも大きい場合には(ステップ305:はい)、システム100は、「無コスト」発生の恐れがある設備種別を、「無コスト」のコストリスト127中より停止推奨設備として設定し、「発電コスト」発生の恐れがある設備種別を、「発電コスト」のコストリスト127中より一部発電設備として設定する。またシステム100は、電力量V[kwh]から需要量(E3+E2−E4)を差し引いて過剰発電量(V−(E3+E2−E4))を算出する。システム100は、前記停止設備と一部発電設備とに関する設定情報と、過剰発電量の情報とをメモリ103に記憶し、ステップ205の処理を終了する。なお、システム100が、コストリスト127中より停止推奨設備等を選択する際には、需要量(E2+E3−E4)が供給電力量V以下に、当該需要家の設備の電力需要量の総和が収まるまで、コストリスト127のうちでコストの小さな設備から順に停止推奨設備等を選択する。
一方で電力量V[kwh]が需要量(E3+E2−E4)よりも小さい場合、つまりは「停電コスト」および「節電コスト」発生の恐れがある設備分類をカバーするのに不足する電力供給量を予備電源の稼動により補えない場合には(ステップ305:いいえ)、「無コスト」発生の恐れがある設備種別を「無コスト」のコストリスト127中より停止推奨設備として設定し、「節電コスト」発生の恐れがある設備種別を「節電コスト」のコストリスト127中より一部停止設備として設定し、「発電コスト」発生の恐れがある設備種別を「発電コスト」のコストリスト127中より発電設備として設定する。またシステム100は、需要量(E3+E2−E4)から電力量V[kwh]を差し引いて過剰需要量((E3+E2−E4)−V)を算出し、前記停止推奨設備と一部停止設備と発電設備こに関する設定情報と過剰需要量の情報とをメモリ103に記憶し、ステップ205の処理を終了する。なお、システム100が、コストリスト127中より停止推奨設備等を選択する際には、需要量(E2+E3−E4)が供給電力量V以下に、当該需要家の設備の電力需要量の総和が収まるまで、コストリスト127のうちでコストの小さな設備から順に停止推奨設備等を選択する。
続いて、システム100は、「停電コスト」の総電力需要量E3と「節電コスト」の総電力需要量E2と「無コスト」の総電力需要量E1とを足し合わせた需要量(E3+E2+E1)と、電力調整時に供給される電力量V[kwh]とを比較する(ステップ306)。ここで電力量Vが需要量(E3+E2+E1)より大きい場合(ステップ306:はい)、つまり「停電コスト」、「節電コスト」、および「無コスト」の発生の恐れがある設備分類をカバーする電力供給がある場合には、システム100は、停止推奨設備を「なし」として設定してこの設定情報をメモリ103に記憶し、ステップ205の処理を終了する(ステップ312)。
一方、電力量Vが需要量(E3+E2+E1)より小さい場合(ステップ306:いいえ)、つまり「停電コスト」、「節電コスト」、および「無コスト」の発生の恐れがある設備分類をカバーする電力供給がない場合には、システム100は、「無コスト」の発生の恐れがある設備種別を「無コスト」のコストリスト127中より停止推奨設備または一部停止設備として設定する。またシステム100は、需要量(E3+E2+E1)から電力量V[kwh]を差し引いて過剰需要量((E3+E2+E1)−V)を算出する。システム100は、前記停止推奨設備や一部停止設備に関する設定情報と過剰需要量の情報とをメモリ103に記憶しステップ205の処理を終了する(ステップ311)。ここでは、「無コスト」発生の恐れがある設備種別の一部を停止したとしても、コストが発生しないことから、「発電コスト」が発生する予備電源を稼動して不足する供給電力量を補うことは行わない。
以上、ステップ301からステップ312の処理により、ステップ205における「電力調整量Xに対して、どの設備種別を停止推奨あるいは一部停止推奨するかの判定」がなされる。
ここでフローを図3に戻す。システム100は、ステップ205で一部停止設備または一部発電設備として設定された設備種別内で発生する詳細コストを算出する(ステップ206)。なお、一部停止設備または一部発電設備に、どの発生コスト種別も設定されていない場合、システム100は、特に処理を行わずステップ207に処理を移行する。一方、一部停止設備に何れかの発生コスト種別が設定されている場合、例えば発生コスト種別が「節電コスト」の場合、システム100は、図2(a)に示す設備情報データベース125から「発生コスト種別」が「節電コスト」の設備分類を上から順番に判定し、「発生コスト種別」が「節電コスト」の設備分類の情報をメモリ103に読込む。そしてシステム100は、発生コスト種別が「節電コスト」の設備分類だけからなる設備情報リストを作成し、これをメモリ103に記憶する。
システム100は、上記で作成した発生コスト種別が「節電コスト」である設備分類だけからなる設備情報リストを、「種別内優先順位」の大きい順番、つまり停止させたくない優先度の低い順番に上から並び替えてリストを再作成し、メモリ103に記憶する。システム100は、優先度の低い順番に並び替えた前記設備情報リストの上から順番に、選択した各設備分類の「電力需要量ej=総電力容量j×時間帯別稼働率jの総和E’=Σej」が、ステップ205で記憶した過剰需要量A[kwh]を上回る(E’>A)まで、停止推奨する設備分類を選択する。
さらにシステム100は、上記で選択した停止推奨する各設備分類の「発生コストcj=総電力容量j×時間帯別稼働率j×停止時コスト単価j」の総和Ci’=Σcjを算出する。またシステム100は、この総和Ci’を、設備の一部停止により発生する詳細コストとしてメモリ103に記憶する。またここでシステム100は、上記で選択された設備に対して停止推奨するというフラグ情報を設定しメモリ103に記憶しておく。
一方、一部発電設備に「発電コスト」が発生する恐れのある設備種別が設定されている場合には、図2(b)に示す設備情報データベース126を「種別内優先順位」の大きい順番、つまり稼動させたい優先度の低い順番に上から並び替えて設備情報リストを再作成し、メモリ103に記憶する。
そしてシステム100は、ステップ205で記憶した過剰発電量B[kwh]を元に、優先度の低い順番に並び替えた前記設備情報リストの上から順番に、選択した各設備分類の「電力需要量ej=平均発電容量j」の総和E’=Σejが過剰発電量B[kwh]を下回る(E’>A)1つ手前の設備分類までを、発電の停止を推奨する設備分類として選択する。さらにここでシステム100は、選択した停止推奨の各設備分類に関する「発生コストcj=平均発電容量j×停止時コスト単価j」の総和C4’=Σcjを算出し、「発電コスト」の総コストC4からこのC4’引いた値C4”=C4−C4’を一部発電により発生する詳細コストとしてメモリ103に記憶する。またここでシステム100は、上記で選択された設備に対して、停止推奨するというフラグ情報を設定しメモリ103に記憶しておく。または、上記で選択されなかった設備に対して、稼動するというフラグ情報を設定しメモリ103に記憶しておく。
システム100は、ステップ203で算出した各設備種別の総コストと、ステップ206で算出した一時停止設備の詳細コストおよび一時発電設備の詳細コストと、ステップ205で判定した停止推奨設備の情報とから、ステップ202で読込んだ供給制限条件に対応して損失予測対象の需要家で発生する総発生コストCOを算出する(ステップ207)。
ここでまずシステム100は、COの初期値として0[¥]を設定する。次にシステム100は、ステップ205で判定した停止推奨設備の情報で、停止推奨設備に設定されている設備種別がある場合には、その設備種別iの総コストEiをCOに加算する。例えば、「節電コスト」と「無コスト」の設備種別が停止推奨設備に設定されている場合、前記加算処理は、「CO=CO+C2+C1」となる。
次にシステム100は、ステップ205で判定した停止推奨設備の情報で、一部停止設備に設定されている設備種別がある場合、その設備種別iの詳細コストC’iをCOに加算する。例えば、「停電コスト」の設備種別が一部停止設備に設定されている場合には、前記加算処理は、「CO=CO+C3’」となる。
次にシステム100は、ステップ205で判定した設備の情報で、発電設備に設定されている設備種別がある場合には、その設備種別の総コストC4をCOに加算する。この加算処理は、例えば「CO=CO+C4」の算定式により実行する。
またシステム100は、ステップ205で判定した設備の情報で、一部発電設備に設定されている設備種別がある場合には、その設備種別の詳細コストC4’’をCOに加算する。この加算処理は、例えば「CO=CO+C4’’」の算定式により実行する。
このようにシステム100は、ステップ207において、ステップ203で算出した各設備種別の総コストと、ステップ206で算出した一時停止設備の詳細コストおよび一時発電設備の詳細コストと、ステップ205で判定した停止推奨設備の情報とから、ステップ202で読込んだ供給制限条件に対応して損失予測対象の需要家で発生する総発生コストCOを算出し、これをメモリ103に記憶する。
さらにシステム100は、上記ステップ207で算出した総発生コストCOの数値を、メモリ103から読出し、ディスプレイ11などの入出力インターフェイス105に表示する。これにより、ステップ201でキーボード12などの入出力インターフェイス105から入力された供給制限条件に応じた、損失予測対象の需要家の総発生コストが、前記供給制限条件の入力を行ったユーザ側にシステム100から示される。
この様に、実施例1により、調整電力量や調整時間帯とった供給制限条件と、電力供給制限に伴う発生コストの種別に分類した需要家の設備情報とに基づき、前記調整電力量に応じた需要家の損失を推定することが可能となる。これにより、需給調整契約などにより電力供給の一部を調整・制約する状況に対しても、発生するコストの種類によって設備を分類して電力供給制限による損失を算出できるため、節電などによって回避できる損失を考慮でき、従来の停電コストによる方法による過剰な損失推定を回避することが可能となる。
−−−実施例2−−−
続いて実施例2として、実施例1のように任意の供給制限条件に対する損失額を推定するのではなく、想定できる範囲内の調整電力量の変化に対する損失額の変化を算出し、その関係を提示する処理例について説明する。このような処理を行うことで、例えば電力供給事業者からの需給調整契約の提案に対し、電力調整を受け入れるべきか、またどこまで電力調整量を約束して契約すればよいかで判断を迷う悩みを抱えている需要家が、需給調整量と需給調整時に自分が被る損害額の関係とを把握することができる。そのため需要家は、電力調整契約による割引価格と調整時の損害額とのバランスを見て、電力供給事業者に約束する調整電力量を決定しやすくなる。
システム100はまず、キーボード12などを含む入出力インターフェイス105から、所定の供給制限条件(ユーザが予想したものでもよい)のうち「調整時間帯」の情報のみ読み込み、メモリ103に記憶する。次にシステム100は、損失予測対象の需要家へ電力供給事業者が約束している通常時の供給量Y[kwh](Y>X)のデータを、格納先の適宜な記憶装置からメモリ103に読込む。
システム100は、前記供給量Yを、予め設定した任意の分割数nで分割し、分割幅y[kwh]=Y/nを算出する。システム100はさらに、メモリ103に「調整量」、「損失額」、「停止設備タイプ」の3項目からなる3列×n行のリストを作成する。システム100は、前記リストの「調整量」の項目において上から順番に、調整量「xi=y×(i−1)」の値を算出しリストに記憶する。ここで「i」は作成したリストの上からの行番号を示す。
次にシステム100は、前記3×n行列のリストの上から順に、調整量xiの値を読込み、既に読込んだ「調整時間帯」の情報と一緒に、実施例1のステップ201(図3参照)における入力データとして与える。これにより、前記ステップ201からステップ207の実行処理に伴って、調整量xiおよび選択された「調整時間帯」に対応した発生コストCOiの算出と、停止推奨設備や一部停止設備となる設備種別が設定された設備情報Iiの判定がなされ、これらはメモリ103に記憶されることとなる。
システム100は、この発生コストCOiと設備情報Iiを、対応する前記リストのi番目における「損失額」にはCOi、「停止設備タイプ」にはIiを記憶する。ここで設備情報Iiとしては図4に示したようにステップ307からステップ312で得られる、6タイプとなることから、例えばここでシステム100は、前記ステップ307からステップ312までの各ステップに1〜6の番号を振り分けて、この番号をタイプ番号としてメモリ103に記憶する。
システム100は、こうした処理を前記リストの1行目からn行目まで繰返し実施して、当該リストの「調整量」、「損失額」、「停止設備タイプ」の全てのデータを算出し、メモリ103に記憶する。システム100は、最後にこのリストの「調整量」、「損失額」のデータを、横軸を「調整電力量[kwh]」、縦軸を「発生コスト[¥]」とする2次元グラフにおいて点としてプロットし、ディスプレイ11などの入出力インターフェイス105に表示する。このグラフ300の例としては、図6に示す。このグラフ300で示すように、調整電力量の変化に対する損失額の変化の関係を、例えば需要家等に提示することが可能となる。但し図6のグラフ300においては、調整電力量の変化に対する損失額の変化の関係を線グラフで提示すべく、一度プロットした各点を隣の点と直線で結んだもの例を示す。さらにシステム100はここで、前記リストの「停止設備タイプ」のデータから、前記グラフ300上でプロットした各点が、何れの発生コスト種別に属する設備であるかを判定し、各発生コストのタイプが同じ領域を同じタイプ:タイプ1〜6として示すこともできる。
この様に実施例2によれば、図6のグラフ300で示したように、調整電力量の変化に対する損失額の変化の関係を表示することにより、需要家が調整電力量の変化に対する損失額の変化を把握することが可能となる。例えば電力供給事業者からの需給調整契約の提案に、電力調整を受け入れるべきか、またどこまで調整量を約束して契約すればよいかの判断がつきかねるという悩みを抱えている需要家であれば、所定の設備種別しか停止させたくない、あるいは発電設備を稼動させたくない、などの要件に従って調整電力量を決定することも可能になる。あるいは、電力供給事業者から提案されている割引額と、電力調整量により予測される発生コストの額との大小を比較して、割引額の方が大きい場合に需給調整契約を受け入れるといった判断を需要家が行うことも可能となる。
−−−実施例3−−−
続いて実施例3として、実施例1や実施例2のように個別の需要家における発生コストを算出するのではなく、電力不足時に、既に需給調整契約を行っている複数の需要家に対して電力調整を依頼する際、その需要家群全体での供給制限による発生コストを少なくする電力調整量を算出し、各需要家にその電力調整量を依頼する実施例について説明する。 これにより、他需要家でコストが掛からずに設備停止することが可能な状況において、業務を停止させなくてはならない需要家に調整依頼をする必要がなくなる。したがって、まず需要家群全体での電力供給制限に伴う損失を従来より抑えることが可能となり、さらに、実行困難な電力調整依頼を電力供給事業者から需要家に行う可能性が低くなることになり、需給調整契約の勧奨を推進することが可能となる。
まず実施例3の処理の考え方を、図7を用いて説明する。ここではまず、電力不足が予想される調整時間帯での、既に需給調整契約を行っている複数の需要家の、(1)電力需要量を集計して集計値Eall[kwh]を得て、(2)前記集計値と調整時間帯において想定される電力不足量D[kwh]とを比較する。そして、停止推奨設備となる設備種別を判定して、停止推奨設備と判定した設備を保有する需要家に対して、(3)その設備の需要量を調整量として需要家に提示する。
さらにここでは、各需要家の設備情報をシステム100が保有し、本手法によりどの設備分類を停止推奨設備として判定したかという情報も合わせて需要家側に提示する。これにより調整依頼を受ける需要家は、従来の調整依頼量だけを提示される場合に比べて、どの設備についてより調整量を捻出すべきかのガイドラインも入手することが可能となり、より確実に電力供給制限に対する対応が可能となる。
実施例3におけるシステム100の処理手順を図8のフローチャートを用いて説明する。システム100は、例えば電力供給事業者からの供給制限条件の入力を受付け、当該供給制限条件の有無を判定する(ステップ1001)。ここで供給制限条件の情報は2つあり、調整依頼を想定する調整時間帯の情報と、その調整時間帯で不足する不足電力量D[kwh]の情報である。 前記ステップ1001において、供給制限条件の入力があるとされた場合には(ステップ1001:はい)、システム100は処理をステップ1002に移行する。一方、供給制限条件の入力がないとされた場合には(ステップ1001:いいえ)、システム100は処理をステップ1001に戻す。
システム100は、ステップ1002において、ステップ1001で得た供給制限条件をメモリ103に記憶する。また、システム100は、ステップ1002で読込まれた調整時間帯に対応して、各需要家の設備種別ごとの需要量を算出する(ステップ1003)。ここでは実施例1のステップ204の処理により設備種別ごとの需要量を「無コスト」はE1x、「節電コスト」はE2x、「停電コスト」はE3x、「発電コスト」はE4xと算出する。ここで「x」は需要家の識別番号を示す。
続いてシステム100は、調整依頼の対象となる需要家群全体での停止推奨設備の判定を行う(ステップ1004)。この処理は実施例1のステップ205の処理と同様に、図9を用いて説明する。
ここでシステム100は、まずステップ1003で算出した各需要家の設備種別ごとの需要量E1x、E2x、E3x、E4xと、ステップ1002で読込んだ不足電力量Dとを用いて、損失予測対象の需要家全体での供給電力量「W[kwh]=(ΣE1x+ΣE2x+ΣE3x)−D」を算出する(ステップ1101)。ここでの「Σ」は対象需要家全体(x=1、2、3…)を総和することを意味する。
次にシステム100は、全供給電力量Wが「停電コスト」の総需要量ΣE3xよりも大きいか小さいかを判定する(ステップ1102)。つまり、「停電コスト」の発生の恐れがある設備種別の需要量を全供給電力量Wがカバーしているかどうかを判定するのである。全供給電力量Wが「停電コスト」の総需要量ΣE3xよりも小さい場合(ステップ1102:いいえ)、システム100は処理をステップ1103に移行する。一方、全供給電力量Wが「停電コスト」の総需要量ΣE3xよりも大きい場合(ステップ1102:はい)、システム100は、処理をステップ1104に移行する。
前記ステップ1103においてシステム100は、全供給電力量Wが、「停電コスト」の総需要量ΣE3xから「発電コスト」の総発電量ΣE4xを差し引いた需要量よりも大きいか小さいかを判定する。つまり、総供給電力量Wでカバーできなかった「停電コスト」の需要量を、予備電源の稼動によりカバーできるかどうかを判定する。
全供給電力量Wが、「停電コスト」の総需要量ΣE3xから「発電コスト」の総発電量ΣE4xを差し引いた需要量よりも小さい場合(ステップ1103:いいえ)、つまりカバーできない場合、システム100は、発生コスト種別が「無コスト」と「節電コスト」の設備種別を停止推奨設備として設定し、発生コスト種別が「停電コスト」の設備種別を一部停止設備として設定し、発生コスト種別が「発電コスト」の設備種別を発電設備として設定し、設備情報としてメモリ103に記憶する。
またシステム100は、需要量(ΣE3x−ΣE4x)から総供給電力量W[kwh]を差し引いた過剰需要量((ΣE3x−ΣE4x)−W)を算出し、その過剰需要量もメモリ103に記憶し、ステップ1004の処理を終了する。
一方で、全供給電力量Wが「停電コスト」の総需要量ΣE3xから「発電コスト」の総発電量ΣE4xを引いた需要量よりも大きい場合(ステップ1103:はい)、つまり予備電源でカバーできる場合には、システム100は、発生コスト種別が「無コスト」と「節電コスト」の設備種別を停止推奨設備として設定し、発生コスト種別が「発電コスト」の設備種別を一部発電設備として設定し、設備情報としてメモリ103に記憶する。
システム100はまた、総供給電力量W[kwh]から需要量(ΣE3x−ΣE4x)を差し引いた過剰発電量(W−(ΣE3x−ΣE4x))を算出し、その過剰発電量もメモリ103に記憶し、ステップ1004の処理を終了する。
続いてシステム100は、全供給電力量Wが「停電コスト」と「節電コスト」の総需要量(ΣE3x+ΣE2x)よりも大きいか小さいかを判定する(ステップ1104)。つまり、「停電コスト」と「節電コスト」の発生の恐れがある設備種別の需要量を全供給電力量Wがカバーしているかどうかを判定するのである。全供給電力量Wが「停電コスト」と「節電コスト」の総需要量(ΣE3x+ΣE2x)よりも小さい場合(ステップ1104:いいえ)、システム100は、処理をステップ1105に移行する。他方、全供給電力量Wが「停電コスト」と「節電コスト」の総需要量(ΣE3x+ΣE2x)よりも大きい場合(ステップ1104:はい)、システム100は、発生コスト種別が「無コスト」の設備種別を一部停止設備として設定し、設備情報としてメモリ103に記憶する。
またシステム100は、総供給電力量W[kwh]から全設備の総需要量(ΣE3x+ΣE2x+ΣE1x)を差し引いた過剰需要量(W−(ΣE3x+ΣE2x+ΣE1x))を算出し、その過剰発電量もメモリ103に記憶し、ステップ1004の処理を終了する。 ステップ1105におけるシステム100は、全供給電力量Wが、「停電コスト」と「節電コスト」の総需要量(ΣE3x+ΣE2x)から「発電コスト」の総発電量ΣE4xを差し引いた需要量よりも大きいか小さいかを判定する。つまり、総供給電力量Wでカバーできなかった「停電コスト」と「節電コスト」の需要量を、予備電源の稼動によりカバーできるかどうかを判定する。
全供給電力量Wが、「停電コスト」と「節電コスト」の総需要量(ΣE3x+ΣE2x)から「発電コスト」の総発電量ΣE4xを差し引いた需要量よりも小さい場合(ステップ1105:いいえ)、つまりカバーできない場合には、システム100は、発生コスト種別が「無コスト」の設備種別を停止推奨設備として設定し、発生コスト種別が「節電コスト」の設備種別を一部停止設備として設定し、発生コスト種別が「発電コスト」の設備種別を発電設備として設定し、これらを設備情報としてメモリ103に記憶する。
またシステム100は、需要量(ΣE3x+ΣE2x−ΣE4x)から総供給電力量W[kwh]を差し引いた過剰需要量((ΣE3x+ΣE2x−ΣE4x)−W)を算出し、その過剰需要量もメモリ103に記憶し、ステップ1004の処理を終了する。
一方で、全供給電力量Wが「停電コスト」と「節電コスト」の総需要量(ΣE3x+E2x)から「発電コスト」の総発電量ΣE4xを引いた需要量よりも大きい場合(ステップ1105:はい)、つまり予備電源でカバーできる場合には、システム100は発生コスト種別が「無コスト」の設備種別を停止推奨設備として設定し、発生コスト種別が「発電コスト」の設備種別を一部発電設備として設定し、これらを設備情報としてメモリ103に記憶する。
またシステム100は、総供給電力量W[kwh]から需要量(ΣE3x+ΣE2x−ΣE4x)を差し引いた過剰発電量(W−(ΣE3x+ΣE2x−ΣE4x))を算出し、その過剰発電量もメモリ103に記憶し、ステップ1004の処理を終了する。以上でステップ1004の処理を全て終了する。
ここで図8のフローに説明を戻す。システム100は、ステップ1004で判定した設備情報のうち一部停止設備に設定されている設備種別、または一部発電設備に設定されている設備種別の中で、何れの設備分類を停止推奨とするかを判定する(ステップ1105)。ここでシステム100は、一部停止設備に発生コスト種別が設定されている場合は、実施例1のステップ206の処理と同様に、各需要家の設備情報データベース125の中から、該当する発生コスト種別が「発生コスト種別」欄に記載されている設備分類を、メモリ103に読込み、対象需要家ごとに該当する設備種別だけの設備情報リストLxを作成する。ここで「x」は需要家の識別番号を示す。
さらにここでシステム100は、作成した各設備情報リストLxに関して、「種別内優先順位」欄の番号の大きい順に、つまり停止したくない優先度が低い順に、各需要家の設備情報リストLxのレコードを並び替え、さらにこのリストの各設備分類に「停止フラグ」欄を新たに追加し、メモリ103に記憶する。またシステム100は、需要家ごとの各設備情報リストLxの中で、「停止フラグ」欄にチェックが着いていない設備種別で表の最上位にある設備分類Sxを読込み、(a)読込んだ設備分類の中で最も「停止時コスト単価」が小さい設備分類Sxを判別する。
システム100はさらに、(b)判別した設備分類Sxの需要家xの設備情報リストLxに対して、対象となっていた設備分類Sxの「停止フラグ」欄にチェックフラグ(例えば1)を設定し記憶する。システム100はさらに、(c)需要家xの新たな停止判定対象となる設備分類Sxとして、リストにおいて前記設備分類Sxから1つ下のレコードの設備分類を読込む。
またシステム100は、(d)全設備情報リストLxで「停止フラグ」欄にチェックした設備分類の「電力需要量ej=総電力容量j×時間帯別稼働率j」の総和E’=Σejが、ステップ1004で得た過剰需要量A[kwh]を上回る(E’>A)まで、(a)から(d)までの処理を繰返し実行する。
一方でシステム100は、一部発電設備に発生コスト種別が設定されている場合も、各需要家の設備情報データベース126の中から、該当する発生コスト種別が「発生コスト種別」欄に記載されている設備分類をメモリ103に読込み、対象需要家ごとに該当する設備種別だけの設備情報リストLxを作成する。システム100は、作成した各設備情報リストLxに関して、「種別内優先順位」欄の番号に小さい順に、つまり稼動させたい優先度の低い順番に、各需要家の設備情報リストLxのレコードを並び替える。
そしてシステム100は、このリストにおいても各設備分類に「停止フラグ」欄を新たに追加して、メモリ103に記憶する。ここでもシステム100は、需要家ごとの各設備情報リストLxの中で、「停止フラグ」欄にチェックが着いていない設備種別で表の最上位にある設備分類Sxを読込み、全設備情報リストLxで「停止フラグ」欄にチェックした設備分類の「電力需要量ej=平均発電容量j」の総和E’=Σejが、ステップ1004で記憶した過剰発電量B[kwh]を下回る(E’>A)まで(a)から(d)までの処理を繰返し実行する。
これによりステップ1005では、ステップ1004で判定した設備情報のうち一部停止設備に設定されている設備種別または一部発電設備に設定されている設備種別の中で、何れの設備分類を停止推奨するかを判定する。
続いてシステム100は、ステップ1004で判定した停止推奨設備と、ステップ1005で判定した一時停止設備内の停止推奨設備の情報を基に、各需要家xへの調整依頼量Rx[kwh]を算出する(ステップ1106)。
ここでシステム100はまず、調整依頼量Rxに初期値0[kwh]を設定する。次に、ステップ1004で停止推奨設備に発生コスト種別の設定がある場合には、例えば「節電コスト」の発生コスト種別が停止推奨設備に設定されている場合には、システム100は、調整依頼量「Rx=Rx+E2x」を算出して、調整依頼量Rを更新する。またステップ1004で発電設備に発生コスト種別の設定がある場合には、システム100は、調整依頼量「R=R+E4x」を算出して、調整依頼量Rを更新する。
次にシステム100は、ステップ1004で一部停止設備または一部発電設備に発生コスト種別の設定がある場合には、ステップ1005で作成したその設備種別の設備情報リストLxをメモリ103から読込み、「停止フラグ」欄にチェックした設備分類の電力需要量「ej=総電力容量j×時間帯別稼働率j」の総和Ex’を算出する。またシステム100は、調整依頼量「R=R+Ex’」を算出して調整依頼量Rxを更新する。これによりシステム100は、各需要家xへの調整依頼量R[kwh]を算出し、これをメモリ103に記憶する。
続いてシステム100は、ステップ1006で算出された各需要家xへの調整依頼量Rx[kwh]を読込み、これをネットワーク140を通して各需要家xの端末200へ送信する。或いはシステム100は、調整依頼量Rx[kwh]を、需要家が閲覧可能なディスプレイ11などの入出力インターフェイス105に表示する(ステップ1107)。さらにここでシステム100は、対象需要家xの設備分類の中で、ステップ1004およびステップ1005で停止推奨設備あるいは発電設備に判定された設備分類を読込み、判定された設備分類名称を前記需要家の端末200または入出力インターフェイス105に出力する。これにより需要家は、電力供給事業者からの調整量に応じて、保有設備の何れを停止または発電のために稼動すれば良いかの指針を容易に知りうることとなる。
この様に実施例3を実行することで、図7に示すように、電力不足時に、既に需給調整契約を行っている複数の需要家(需要家群)に対して電力調整を依頼する際、その需要家群全体での供給制限による発生コストを少なくする電力調整量を算出することができる。したがって、各需要家に算出した電力調整量を提示し、使用電力量の調整依頼を行うことが容易となる。これにより、他需要家でコストが掛からずに設備停止することが可能な状況において、業務停止を伴う調整依頼を強いる需要家に対して調整依頼をするといった、需要家群での調整分担の不均衡な状況を解消できる。こうして、需要家群全体での電力供給制限に伴う損失を抑えることが可能となり、さらに無理な電力調整依頼を需要家に実行する可能性を低減できることとなり、需給調整契約の勧奨を推進することが可能となる。
本発明は、例えば電力供給事業において、電力供給事業者が電力需要者に需給調整契約を勧奨する販売支援システムでの利用が可能である。実際の供給調整時に、各需要家へ調整量を提示したり、設備の停止や稼動のガイドラインを示す節電支援システムといった利用が可能である。また電力事業に限らず、情報通信事業やエネルギー事業などユーティリティを提供する事業においても、供給不足時などの、供給規制量を決定するシステムへの利用が可能である。
また、本発明によれば、夏季の電力不足などの需要家への電力供給量の調整・制限において、需要家の電力設備を、「供給制限により追加的コストが発生しない設備」・「供給制限に対応した節電コストが発生する設備」・「供給制限により停電コストが発生する設備」・「供給制限に対応した予備電力発電による発電コストが発生する設備」といった、供給制限にともなう発生コストの異なる設備種別に分類して需要家が被る損失の予測することで、電力の一部を調整した場合にも、その調整量に応じた需要家の被る損失を推定することが可能となり、節電などによって回避できる損失を考慮して、従来の停電コストによる方法による過剰な損失推定を回避することが可能となる。
したがって、良好な精度での電力供給調整時の損失予測が可能となる。
以上、本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。