以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
図1は、本発明を適用した実施形態における燃料容器1の斜視図である。図1に示すように、燃料容器1は、液体燃料が収容された略直方体状の容器本体2と、容器本体2を包装した包装材9と、を備える。
容器本体2について図1〜図8を用いて説明する。ここで、図2は燃料容器1の分解斜視図である。図3は、燃料容器1の長手方向Xに沿った中心線を通り且つ燃料容器1の厚み方向Zに平行な切断面を燃料容器1の幅方向Yに向けて見た端面図であり、図4は、図3の端面図において燃料容器1の前部を拡大した図であり、図5は、図3の端面図において燃料容器1の後部を拡大した図である。また、図6は、中心線Lを通り且つ燃料容器1の幅方向Yに平行な切断面を燃料容器1の厚み方向Zに向けて見た端面図であり、図7は、図6の端面図において燃料容器1の前部を拡大した図であり、図8は、図6の端面図において燃料容器1の後部を拡大した図である。なお、図6〜図8においては、図面を見やすくするために包装材9の耳部92,93の図示を省略する。
容器本体2は合成樹脂又は金属からなるケース10を具備し、ケース10に前側内蓋部材20、前側外蓋部材30、後ろ内蓋部材40、後ろ外蓋部材60及び水収容管70が取り付けられることで容器本体2が構成されている。
ケース10はその内側が中空となる略矩形管状のものであり、ケース10の前端及び後端が開口し、ケース10を長手方向Xに向けて見た場合にケース10が矩形枠状に形成されている。ケース10の開口面積は長手方向にわたって一様である。ケース10の外周面が容器本体2の外面となり、ケース10の内周面が容器本体2の内面となり、ケース10の外周面と内周面との間の厚肉部が容器本体2の厚肉部となる。
ケース10としては、例えば、透光性を要求されない場合であれば、アルミニウム、ステンレス等の金属、樹脂、ガラス、陶器、磁器等が挙げられるが、透光性、ガス不透過性、製造や組立時のコスト低減及び製造の容易性等を考慮する場合には、好ましくは上記各特定を有するポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアクリルニトリル、ナイロン、セロハン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等の単独又は二種以上の樹脂の混合物、あるいは、前記樹脂または樹脂の混合物表面にアルミナ、シリカ、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)をコートしたものを含む単層構造、二層構造以上の多層構造からなるものが挙げられる。多層構造の場合は、少なくとも一層が、前記した性能(ガス透過度)を持つ樹脂で構成されていれば、残りの層は通常の樹脂でも問題はなく、前記包装材のガス遮蔽性を補う効果が期待出来る。
ケース10の底面及び上面には、流路溝11,12がそれぞれ凹設されている。流路溝11,12はケース10の後端から前端まで直線状に延在している。
ケース10の前端側の開口が前側内蓋部材20によって閉塞され、この前側内蓋部材20の前面には前側外蓋部材30の後面が接合されている。そのため、前側内蓋部材20の後面が容器本体2の内面となり、前側外蓋部材30の前面が容器本体2の外面となり、前側内蓋部材20の後面と前側外蓋部材30の前面との間の部分が容器本体2の厚肉部となる。
また、ケース10の後端側の開口が後ろ内蓋部材40によって閉塞され、この後ろ内蓋部材40の後面には後ろ外蓋部材60の前面が接合されている。そのため、後ろ内蓋部材40の前面が容器本体2の内面となり、後ろ外蓋部材60の後面が容器本体2の内面となり、後ろ内蓋部材40の前面と後ろ外蓋部材60の後面との間の部分が容器本体2の厚肉部となる。
前側内蓋部材20について図9〜図11を用いて説明する。図9は、斜め前から見た前側内蓋部材20の斜視図であり、図10は、斜め後ろから見た前側内蓋部材20の斜視図であり、図11は、ケース10を閉塞した状態の前側内蓋部材20の正面図である。
前側内蓋部材20は、第一層21と、第一層21に強固に接着又は固定された第二層22と、から構成されている。第一層21の周縁は第二層22の周縁よりも大きく、第一層21の周縁がケース10の前端面の外縁に一致し、第二層22の周縁がケース10の前側開口の内縁に一致している。
第二層22の周縁がケース10の前端の肉厚分だけ第一層21の周縁よりも内側に位置するので、前側内蓋部材20がケース10の前側開口を閉塞した状態では、第二層22がケース10の前側開口に嵌合して第二層22の周縁がケース10の内壁に密着し、第一層21の周縁がケース10の前端面の外縁と一致し、第一層21の縁部がケース10の前端面に重なる。
前側内蓋部材20の中央部には、第一層21の前面から第二層22の後面に貫通した水排出口23が穿孔されており、この水排出口23の右方には、第一層21の前面から第二層22の後面に貫通した燃料排出口24が穿孔されている。
また、第一層21には、スリット25が形成されており、第一層21に第二層22が接着又は固定されることによってスリット25が溝状になる。スリット25は、第一層21の上縁から第一層21の下縁にまで連続して形成され、水排出口23を避けるようにして屈曲し、後述する空気排出口32に対応する位置で幅が広がっている。
第二層22の上縁部であってスリット25の上端部に重なる箇所には、切欠き26が形成され、スリット25の上端部が切欠き26を介して流路溝11の前端部に連通している。第二層22の下縁部であってスリット25の下端部に重なる箇所には、切欠き27が形成され、スリット25の下端部が切欠き27を介して流路溝12の前端部に連通している。
図12は、前側内蓋部材20の前面に重ねた状態の前側外蓋部材30の正面図である。図12に示すように、前側外蓋部材30が前側内蓋部材20の第一層21に重ねられているのでスリット25が前側外蓋部材30によって被覆され、スリット25による流路が形成される。この前側外蓋部材30には、燃料排出口31、空気排出口32及び水排出口33が前側外蓋部材30の前面から後面に貫通するよう穿孔されている。水排出口33が前側外蓋部材30の中央部に形成され、燃料排出口31、水排出口33、空気排出口32がこれらの順に燃料容器1の幅方向に沿って一直線状に配列されている。そして、燃料排出口31が前側内蓋部材20の燃料排出口24に相対向し、水排出口33が前側内蓋部材20の水排出口23に相対向している。
図1、図2、図3、図6及び図7に示すように、前側外蓋部材30の前面において、燃料排出口31及び空気排出口32それぞれの周囲がニップル状に凸設されているが、水排出口33は、水収容管70が挿入されていない状態では前側外蓋部材30の前面に対して平坦に設けられている。
後ろ内蓋部材40について図13〜図14を用いて説明する。図13は、斜め後ろから見た後ろ内蓋部材40の斜視図であり、図14は、斜め前から見た後ろ内蓋部材40の斜視図である。
後ろ内蓋部材40は、第一層41と、第一層41に強固に接着又は固定された第二層42と、から構成されている。第一層41の周縁は第二層42の周縁よりも小さく、第一層41の周縁がケース10の後ろ側開口の内縁に一致し、第二層42の周縁がケース10の後端面の外縁に一致している。
図5及び図8に示すように、第一層41の周縁がケース10の後端の肉厚分だけ第二層42の周縁よりも内側に位置するので、後ろ内蓋部材40がケース10の後ろ側開口を閉塞した状態では、第一層41がケース10の後ろ側開口に嵌合して第一層41の周縁がケース10の内壁に密着し、第二層42の周縁がケース10の周縁と一致し、第二層42の縁部がケース10の後端面に重なる。
図13及び図14に示すように、後ろ内蓋部材40の中央部には、第一層41の前面から第二層42の後面まで貫通した保持口43が穿孔されている。第二層42における保持口43の左右には、横スリット44,45が形成され、この横スリット44,45と保持口43が一体となって連続している。第一層41における保持口43の左方及び右方には、通気孔46,47が穿孔されており、通気孔46が横スリット44の端部に連通し、通気孔47が横スリット45の端部に連通している。
後ろ内蓋部材40には、第一層41の前面から第二層42の後面まで貫通した通気孔51が形成されている。通気孔51の周囲では、第二層42がニップル状に凸設されている。
また、第二層42には、スリット48が形成されており、第二層42に第一層41が接着又は固定されることによってスリット48が溝状になる。スリット48は、第二層42の上縁から第二層42の下縁にまで連続して形成され、保持口43を避けるようにして屈曲し、後述する空気導入口62に対応する位置で幅が広がっている。
第一層41の上縁部であってスリット48の上端部に重なる箇所には、切欠き49が形成され、スリット48の上端部が切欠き49を介して流路溝11の後端部に連通している。第一層41の下縁部であってスリット48の下端部に重なる箇所には、切欠き50が形成され、スリット48の下端部が切欠き50を介して流路溝12の後端部に連通している。
図15は、後ろ内蓋部材40の後面に重ねた状態の後ろ外蓋部材60の正面図である。図15に示すように、後ろ外蓋部材60が後ろ内蓋部材40の第二層42に重ねられているのでスリット48が後ろ外蓋部材60によって被覆され、スリット48による流路が形成される。更に、横スリット44,45も後ろ外蓋部材60によって被覆される。図2、図15に示すように、後ろ外蓋部材60には、円形状の圧力調整口61が形成されているとともに、矩形状の空気導入口62が形成されている。なお空気導入口62にはエアフィルタ63が嵌め込まれている。圧力調整口61は、後述する追従体5、7の後方にできる空間65の圧力を調整するために外部の空気を取り込むための口であり、通気孔51に相対する位置に形成され、空気導入口62は、スリット48の幅広となった部分に相対する位置に形成されている。
図2〜図8に示すように、ケース10内には水収容管70が配設されている。水収容管70の一端部が水排出口33及び水排出口23に挿入され、その一端部が前側外蓋部材30の前面よりも前方へ突出し、この突出部分の突出高さは燃料排出口31及び空気排出口32のニップル部の突出高さとほぼ同じである。一方、水収容管70の他端部が後ろ内蓋部材40の保持口43に挿入されているが、水収容管70の後端面は第二層42まで達していない。そのため、横スリット44,45が水収容管70内まで連通している。
燃料排出口31及び燃料排出口24には、ケース10に外力が加わってもケース10の内から燃料排出口31及び燃料排出口24を通ってケース10の外へ向かう流体の不要な流れを阻止する逆止弁35が嵌め込まれている。具体的には、逆止弁35はダックビル状に形成されたダックビル弁であり、逆止弁35はそのダックビル状の先端をケース10の内側に向けた状態で燃料排出口31及び燃料排出口24に嵌め込まれている。
空気排出口32には、ケース10に外力が加わっても燃料容器1の内側のスリット25から空気排出口32を通って外へ向かう流体の不要な流れを阻止する逆止弁36が嵌め込まれている。具体的には、逆止弁36はダックビル状に形成されたダックビル弁であり、逆止弁36はそのダックビル状の先端をケース10の内側に向けた状態で空気排出口32に嵌め込まれている。
水収容管70内であって水排出口33側の端部寄りには、ケース10を介して水収容管70に外力が加わっても水収容管70内からその端部開口へ向かう流体の不要な流れを阻止する逆止弁73が嵌め込まれている。具体的には、逆止弁73はダックビル状に形成されたダックビル弁であり、逆止弁73はそのダックビル状の先端を後ろ内蓋部材40の方に向けた状態で水収容管70に嵌め込まれている。
圧力調整口61には、ケース10の内から通気孔51及び圧力調整口61を通って外へ向かった流体の流れを阻止する逆止弁64が嵌め込まれている。具体的には、逆止弁64はダックビル状に形成されたダックビル弁であり、逆止弁64はそのダックビル状の先端をケース10の内側に向けた状態で圧力調整口61に嵌め込まれている。逆止弁64は、追従体5、7より後方の内部空間65の気圧が容器本体2外の気圧より著しく低くなったときに圧力差を緩衝するために容器本体2外から内へ空気の進入を許容するものである。
逆止弁35,36,64,73は、弾性を有する材料からなる。逆止弁35,36,64,73の材質としては、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアクリルニトリル、ナイロン、セロハン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム、エラストマーが挙げられる。
また、水収容管70は、流動性のない固体である追従補助部材71に貫通している。追従補助部材71は、所定の密度にするために中が中空の部材であり、その中央部に水収容管70を挿入するための貫通孔72が形成されている。また、追従補助部材71は水収容管70に案内されて方向Xに沿って移動可能となっている。また、方向Xから見た場合、追従補助部材71の外縁形状はケース10の開口の内縁形状と相似しており、追従補助部材71がケース10内に挿入されている。方向Xから見た場合、追従補助部材71の面積はケース10の開口面積に対して50%以上であるのが好ましく、80〜99%であるのが更に好ましい。
追従補助部材71としては、例えば、ポリプロピレン、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアクリルニトリル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、各種ゴムなどから構成されるものが挙げられる。
ケース10の内部空間のうち追従補助部材71よりも前方には、液体燃料4が収容されている。ケース10の内部空間のうち液体燃料4よりも後方には、液体燃料4に対して親和性の低い液体、ゾル又はゲルからなる追従体5が収容され、ケース10の内部空間が追従体5によって閉塞されている。ケース10の内部空間は、追従体5よりも前方の領域と追従体5よりも後方の領域に追従体5によって区切られている。そして、追従体5は、追従補助部材71とケース10との隙間を埋設しているため、液体燃料4が追従補助部材71とケース10の間の隙間から漏洩することがない。このように追従補助部材71は液体燃料4と追従体5との接触部にあり、追従補助部材71の後部が液体燃料4に浸漬し、追従補助部材71の後部が追従体5に浸漬している。
水収容管70内には水6が収容されている。水収容管70内であって水6よりも後方には、液体、ゾル又はゲルからなる追従体7が収容され、水収容管70は追従体7によって閉塞されている。追従体7よりも前側は水6によって充填されており、水6と追従体7は接触し、水6が追従体7によって封止されている。そして、水収容管70内のうち追従体7よりも後方の空間は、追従体5よりも後方の空間に連通している。
追従体5は、液体燃料4の燃料排出口31からの排出による液体燃料4の後方末端での移動に伴って液体燃料4との界面を維持した状態で液体燃料4側に移動するものであり、液体燃料4の漏出・蒸発を防止するとともに液体燃料4への空気の浸入を防止する。追従体7は、水6の消費に伴い水6に接触した状態で移動するものであり、水6の漏出・蒸発を防止するとともに水6への空気の浸入を防止する。
追従体5は、液体燃料4に対して親和性の低く、液体燃料4に対して溶解せず且つ拡散しないものであり、より好ましくは液体燃料4よりも表面エネルギが低いものである。追従体7は、水6に対して親和性の低く、水6に対して溶解せず且つ拡散しないものであり、より好ましくは水6よりも表面エネルギが低いものである。
追従体5,7は、ずれ応力(又は、ずれ速度)が増大すると見かけの応力が減少する構造粘性流体(異常粘性流体)の性質を有している。
追従体5,7としては、ポリグリコール、ポリエステル、ポリブテン、流動パラフィン、スピンドル油、その他の鉱油類、ジメチルシリコン油、メチルフェニルシリコン油、その他のシリコン油類、脂肪族金属石鹸、変性クレー、シリカゲル、カーボンブラック、天然ゴム、合成ゴム、その他の合成ポリマー、これらの組み合わせを用いることができる。また、これらに溶剤等を加えることにより増粘させたものを追従体5,7として用いても良い。
このように、追従体5,7は、適度な粘性を有しているので燃料容器1を振ってもその形状を維持し続けようとする。ただし、追従体5は、燃料容器1内での液体燃料4の減少に伴い移動するが、一部が移動せずに容器本体2の内壁に付着してしまうことがあり、徐々に液体燃料4との界面を保持する追従体5の量が減ってしまうことがある。このため液体燃料4と追従体5との界面面積が比較的大きい場合、追従補助部材71が設けられていないと液体燃料4が移動するにしたがって界面中央の追従体5の厚さが薄くなりやがて液体燃料4が露出して揮発されやすい状態に陥ってしまう。しかし、固形体である追従補助部材71は液体燃料4が移動しても変形することがないので、仮に追従体5の厚さが徐々に薄くなっても、液体燃料4が揮発しないように液体燃料4との界面に介在し続けることができる。
以上のように構成された容器本体2は、図1〜図2に示すように、ガス遮蔽性を有する包装材9によって包装されている。包装材9は、内部を真空吸引して容器本体2を包装することが好ましい。包装材9は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる上層と、同様にPETからなる下層との間に、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリアミド若しくはポリグリコール酸(PGA)又はこれらのうちの二種以上の混合体からなる中間層を挟んだ積層体である。このような中間層はPETよりもガスバリア性が低く、PETは中間層の保護膜、防湿膜として機能するため、ガスバリア性は中間層の厚さに最も依存される。エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂としては、EVAL(登録商標 株式会社クラレ製)があり、ガスバリア性の観点から共重合比率が低い方が好ましく、特にEVAL(登録商標)のL101、F101、H101、E105が好ましい。ポリアミドとしては、ナイロンMXD6(三菱ガス化学株式会社製)がある。
なお、包装材9として、以下の(A)〜(E)の何れかを用いても良い。
(A)…ポリエチレンテレフタレートエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリグリコール酸、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル、セロハン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルの群から選ばれる一種または二種以上の混合体からなる樹脂フィルムの単層体。
(B)…上記(A)の単層体を一層だけ含む複数の層からなる積層体。
(C)…上記(A)の単層体を複数含む複数の層からなる積層体。
(D)…ポリエチレンテレフタレートエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリグリコール酸、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル、セロハン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルの群から選ばれる一種からなる樹脂フィルムと、前記群から別の種からなる樹脂フィルムと、の複数の層を有する積層体。
(E)…上記(A)〜(D)の上記樹脂フィルムの何れかに金属を蒸着させた積層体。
包装材9は、ケース10の胴回りに巻かれた胴巻き部91と、胴巻き部91から前方に延出して容器本体2の前端面(前側外蓋部材30の前面)を封止した第一耳部92と、胴巻き部91から後方に延出して容器本体2の後端面(後ろ外蓋部材60の後面)を封止した第二耳部93と、から構成されている。第一耳部92によって燃料排出口31、空気排出口32及び水排出口33が覆われ、第二耳部93によって圧力調整口61及び空気導入口62が覆われている。
胴巻き部91と第一耳部92との間には、前側外蓋部材30の前面の縁に沿った切取線94が形成されており、胴巻き部91と第二耳部93との間には、後ろ外蓋部材60の後面の縁に沿った切取線95が形成されている。包装材9が切取線94に沿って切断されることによって第一耳部92が胴巻き部91から容易に分離可能であり、包装材9が切取線95に沿って切断されることによって第二耳部93が胴巻き部91から容易に分離可能である。なお、胴巻き部91は、ケース10の外面、前側外蓋部材30の縁、後ろ外蓋部材60の縁、前側内蓋部材20の第一層21の縁、後ろ内蓋部材40の第二層42の縁に接着されていることが好ましい。
未使用時の容器本体2が包装材9内に封入されているので、燃料排出口31からの液体燃料4の排出或いは水排出口33からの水6の排出を未然に防ぐことができるとともに、空気導入口62においてエアフィルタ63が露出されていないため、フィルタの劣化を防止できる。
また、包装材9がガス遮蔽性を有するため、容器本体2自体がガス遮蔽性を有しなくても、気化した燃料が漏れない。容器本体2がガス遮蔽性を有しなくても良いから、容器本体2の材料を選択範囲が広がり、どのような材料でも容器本体2として用いることができる。特に、容器本体2としてガス遮蔽性の低い樹脂を用いることができ、容器本体2を軽くすることができる。
燃料電池等を搭載した電子機器に容器本体2から水6及び液体燃料4を供給する際には、第一耳部92を引っ張ることによって切取線94に沿って第一耳部92を胴巻き部91から切り離して燃料排出口31、空気排出口32及び水排出口33を露出させる。同様に、第二耳部93を引っ張ることによって切取線95に沿って第二耳部93を胴巻き部91から切り離して圧力調整口61及び空気導入口62を露出させる。この後、胴巻き部91を残した状態の容器本体2を機器にセットする。このように燃料容器1を使用した状態でもケース10は包装材9の胴巻き部91によって覆われているので、ケース10が多少ガス透過性であっても包装材9がケース10内の液体が揮発しないように保護することができる。
なお、図16に示すように、胴巻き部91との第一耳部92との間の一部にわずかな切り込みを入れて、端部がこの切り込みと重なるように前側外蓋部材30の周縁に沿って切取ガイドテープ96を設け、この切取ガイドテープ96を引っ張ることによって第一耳部92を引き剥がしてもよい。流路溝11,12が露出してしまわないように切取ガイドテープ96の下に切取線94が設けられていることが望ましい。
後ろ側についても同様に、胴巻き部91と第二耳部93との間の一部にわずかな切り込みを入れて、端部がこの切り込みと重なるように後ろ外蓋部材60の前面の周縁に沿って切取ガイドテープ97を設け、この切取ガイドテープ97を後ろ外蓋部材60の周縁方向に引っ張ることによって第二耳部93を引き剥がしてもよい。流路溝11,12が露出してしまわないように切取ガイドテープ97の下に切取線95が設けられていることが望ましい。
包装材9の代わりに、図17のような包装材109によって容器本体2を包装しても良い。包装材109は、空気を十分透過しない合成樹脂で形成されている。包装材109は、内部を真空吸引して容器本体2を包装することが好ましい。
包装材109による容器本体2の包装は以下の工程によりなされる。図18に示すように、流路溝11,12に包装材109が埋まらないように包装材109をケース10に胴巻きし、包装材109の胴巻き部191をケース10の外面に密着させる。そして、前側外蓋部材30の前面より延出した短辺側の一対の耳部192を先行して内側に耳折りし、次に長辺側の一対の耳部198を耳折りし、耳部192,198の重なった部分を接着する。これにより、前側外蓋部材30の前面を耳部192,198によって被覆し、燃料排出口31、空気排出口32及び水排出口33を耳部192,198によって塞ぐ。後ろ側について同様に、後ろ外蓋部材60の後面より延出した短辺側の一対の耳部193を耳折りし、次に長辺側の一対の耳部199を耳折りし、耳部193,199の重なった部分を接着する。これにより、後ろ外蓋部材60の後面を耳部193,199によって被覆し、圧力調整口61及び空気導入口62を耳部193,199によって閉塞する。
以上のように包装されると、燃料排出口31、空気排出口32及び水排出口33は包装材9の耳部192,198によって覆われ、圧力調整口61,空気導入口62は耳部193,199によって覆われている。そのため、ケース10内に収容されている液体燃料4の保存性を高めることができる。このような保存性の高い包装もシンプルである。
図17〜図18に示すように、前側外蓋部材30の前面の縁に沿った切取線194が包装材109に形成されているとともに、後ろ外蓋部材60の後面の縁に沿った切取線195が包装材109に形成されている。そして、使用時には、切取線194に沿って耳部192,98を切り取ることによって、燃料排出口31、空気排出口32及び水排出口33を露出させる。一方、切取線195に沿って耳部193,199を切り取ることによって、圧力調整口61,空気導入口62を露出させる。このように、切取線194,195が形成されているから、使用者が燃料容器1を使用する時に耳部192,193,198,199を簡単に切り取ることができ、燃料排出口31、空気排出口32、水排出口33及び圧力調整口61,空気導入口62を簡単に露出させることができる。
耳部192,193,198,199を切り取った状態では残留した胴巻き部191がケース10に胴巻きされているから、上述したような空気用の流路が形成されている。更に、残留した胴巻き部191によって流路溝11,12を通る空気が空気排出口32に到達する前に拡散してしまうことを防止できる。
使用時においては、上述したように、前側外蓋部材30の前面及び後ろ外蓋部材60の後面を除いて、前側外蓋部材30、前側内蓋部材20、後ろ内蓋部材40及び後ろ外蓋部材60の縁並びにケース10の側面全体が胴巻き部91又は胴巻き部191によって覆われて包装されている。そして、その側面は流路溝11及び流路溝12を除いて胴巻き部91又は胴巻き部191に密着され又は接着されている。流路溝11及び流路溝12が胴巻き部91又は胴巻き部191によって覆われることによって、空気導入口62を介して取り込まれる容器本体2の外からの空気を空気排出口32に流す流路が形成される。
このように、ケース10の外側側面に流路溝11,12を形成して流路溝11,12を1mm以下の薄い合成樹脂からなる胴巻き部91又は胴巻き部191で覆うことによって、空気を流す流路を形成したので、空気を流すための厚い管等を容器本体2に設ける必要がない。そのため、容器本体2の容積に対する液体燃料4の収容量を増やすことができる。
胴巻き部91又は胴巻き部191を残した容器本体2は、燃料電池等を搭載した電子機器に取り付けてその電子機器に液体燃料4、水6を供給するものであり、容器本体2内の液体燃料4が空になったら、この容器本体2をその電子機器から取り外し、新たな燃料容器1の容器本体2をその電子機器に取り付ける。電子機器は、液体燃料4を用いて燃料電池で発電し、その電力により作動するよう設けられている。以下、この容器本体2が取り付けられる電子機器について説明する。
電子機器には、燃料導入管、空気導入管及び水導入管が設けられている。燃料導入管は燃料排出口31に対応し、空気導入管は空気排出口32に対応し、水導入管は水収容管70の先端に対応する。そして、容器本体2の前側外蓋部材30の前面を電子機器に向けて、容器本体2を電子機器に取り付ける。これにより、燃料導入管を燃料排出口31に挿入するが、更に燃料導入管が逆止弁35に挿入され、燃料導入管によって逆止弁35が開く。同様に、空気導入管が空気排出口32内の逆止弁36に挿入され、水導入管が水収容管70内の逆止弁73に挿入される。これにより、容器本体2内の液体燃料4が燃料導入管を通って電子機器に供給され、水収容管70内の水6が水導入管を通って電子機器に供給される。更に、外部の空気がエアフィルタ63を通じてスリット48に吸い込まれ、更にスリット48から流路溝11,12、スリット25、空気導入管を通って電子機器に供給される。
燃料排出口31、空気排出口32及び水排出口33が同一の面(つまり、前側外蓋部材30の前面)に設けられているから、一回の簡単な装着操作によって、燃料排出口31、空気排出口32及び水排出口33を電子機器に同時に接続することができる。そのため、容器本体2の装着操作を容易に行うことができる。
また、この容器本体2の使用に伴い、エアフィルタ63が詰まっていく。ところが、容器本体2にエアフィルタ63が取り付けられているから、容器本体2の交換によってエアフィルタ63も一緒に交換することができる。そのため、エアフィルタ63の点検をしなくても済む。
図3、図6に示すように、容器本体2内の液体燃料4が減っていくと、それに伴い追従体5にずれ応力が発生して追従体5の粘性率が低下し、液体燃料4の消費に伴い追従体5が液体燃料4の後端側液面に接した状態でその液面に追従する。追従補助部材71も、液体燃料4の消費に伴い、液体燃料4と追従体5に接触しながら液体燃料4の後端側液面に追従する。
一方、水収容管70内の水6が減っていくと、それに伴い追従体7にずれ応力が発生して追従体7の粘性率が低下し、水6の消費に伴い追従体7が水6の後端側液面に接した状態でその液面に追従する。液体燃料4及び水6が減ると、追従体5及び追従体5よりも後ろ側の空間が減圧されるが、その空間の減圧によって逆止弁64が開いて、その空間に空気が供給されるから、その空間は常にほぼ大気圧に保たれる。なお、追従体7及び追従体5は、瞬発的に生じたずれ応力に対しては移動しにくいような材質で構成されている。
電子機器には、図19に示すような発電ユニット901が内蔵されている。発電ユニット901は、燃料容器1の液体燃料4を用いて発電を行うものであり、図19(a)又は図19(b)のように構成されている。図19(a)、図19(b)の何れの場合でも、液体燃料4の一例としてメタノールを挙げるが、その他のアルコール類、ガソリンといった水素元素を含む化合物を用いても良い。
図19(a)の場合には、発電ユニット901が、気化器902と、改質器903と、一酸化炭素除去器904と、燃料電池905と、から構成されている。
ポンプによって液体燃料4及び水6が発電ユニット901に供給されて混合される。そして、液体燃料4と水6の混合液は、まず気化器902に供給される。気化器902では、供給された混合液が加熱されて気化し、燃料と水の混合気になる。気化器902において生成された混合気は改質器903に供給される。
改質器903では、気化器902から供給された混合気から水素及び二酸化炭素が生成される。具体的には、化学反応式(1)のように、混合気が触媒により反応して二酸化炭素及び水素が生成される。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 … (1)
改質器903では、メタノールと水蒸気が完全に二酸化炭素及び水素に改質されない場合もあり、この場合、化学反応式(2)のように、メタノールと水蒸気が反応して二酸化炭素及び一酸化炭素が生成される。
2CH3OH+H2O→5H2+CO+CO2 … (2)
改質器903で生成された混合気は一酸化炭素除去器904に供給される。
一酸化炭素除去器904では、改質器903から供給された混合気に含まれる一酸化炭素が選択的に酸化して混合気中から一酸化炭素が除去される。具体的には、改質器903から供給された混合気のなかから特異的に選択された一酸化炭素と、ポンプによって容器本体2の空気排出口32から送り込まれた空気中の酸素とが触媒により反応して二酸化炭素が生成される。
2CO+O2→2CO2 … (3)
そして、混合気が一酸化炭素除去器904から燃料電池905の燃料極に供給される。
燃料電池905の燃料極では、電気化学反応式(4)に示すように、一酸化炭素除去器904から供給された混合気のうち水素ガスが、燃料極の触媒の作用を受けて水素イオンと電子とに分離する。水素イオンは燃料電池905の固体高分子電解質膜を通じて空気極に伝導し、電子は燃料極により取り出される。
3H2→6H++6e- … (4)
燃料電池905の空気極には、ポンプによって空気排出口32から空気が送り込まれる。そして、電気化学反応式(5)に示すように、空気中の酸素と、固体高分子電解質膜を通過した水素イオンと、電子とが反応して水が副生成物として生成される。
6H++3/2O2+6e−→3H2O … (5)
以上のように、燃料電池905で上記(4)、(5)に示す電気化学反応が起こることにより電気エネルギが生成される。生成された生成物としての水、二酸化炭素、空気等の混合気は外部に排出される。
図19(b)の場合には、発電ユニット901が、気化器906と、燃料電池907と、から構成されている。
ポンプによって液体燃料4及び水6が発電ユニット901に供給されて混合される。その混合液は、気化器906において気化されて、メタノール及び水蒸気の混合気となる。気化器906において生成された混合気は燃料電池907の燃料極に供給される。
燃料電池907の燃料極では、電気化学反応式(6)に示すように、気化器906から供給された混合気を、燃料極の触媒の作用を受けて水素イオンと電子と二酸化炭素に分離する。水素イオンは固体高分子電解質膜を通じて空気極に伝導し、電子は燃料極により取り出される。
CH3OH+H2O→CO2+6H++6e- … (6)
燃料電池907の空気極には、ポンプによって容器本体2の空気排出口32から送り込まれた空気が送り込まれる。そして、電気化学反応式(7)に示すように、空気中の酸素と、固体高分子電解質膜を通過した水素イオンと、燃料極により取り出された電子とが反応して水が生成される。
6H++3/2O2+6e-→3H2O … (7)
以上のように、燃料電池907で上記(6)、(7)に示す電気化学反応が起こることにより電気エネルギが生成される。生成された生成物としての水、二酸化炭素、空気等の混合気は外部に排出される。
容器本体2に収容された水6は発電ユニット901の初期動作の際に用いられるが、容器本体2内の水6が消尽した場合、燃料電池905,907で生成された水が気化器902,906に送り込まれる。
この発電ユニット901を携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、PDA(Personal Digital Assistance)、電子手帳等の電子機器に設けた場合、電子機器に対して燃料容器1が着脱自在となり、発電ユニット901で生成された電気エネルギにより電子機器が動作することになる。
電子機器101としてノート型パーソナルコンピュータを適用した場合を図20及び図21に示す。本実施形態の電子機器101は、表示部103を有する第一筐体106と、入力部107を有する第二筐体108とを備え、第一筐体106及び第二筐体108はヒンジ構造により連結されている。
また、第二筐体108には、燃料容器1が収納自在な収納部110が設けられ、収納部110では、燃料容器1の燃料排出口31、空気排出口32及び水排出口33にそれぞれ対応した取付口121、122、123が露出している。表示部103は、バックライト型液晶表示パネルやEL表示パネル等により構成され、制御部から出力される電気信号に基づいて画面表示を行い、文字情報又は画像等が表示される。入力部107は、ファンクションキー、テンキー、文字入力キーなどの各種のボタンを備え、第二筐体108の外部に突出したボタンを押圧操作すると、ボタンが弾性変形してボタン内部の可動接点を基盤上の固定接点に接離可能に接触させることにより、電気信号が出力される。電子機器101の制御部は、CPU(Central Processing Unit)等の演算手段と、メモリ等の記憶手段とから構成され、コンピュータに読み込まれたソフトウェアと協働して入力された電気信号の加工又は演算を行う。
燃料容器1の前側外蓋部材30の外面を電子機器101の収納部110に向けて矢印Aの方向に挿入すると、燃料排出口31が取付口121に嵌め込まれ、空気排出口32が取付口122に嵌め込まれ、水収容管70の先端部の水排出口33が取付口123に嵌め込まれる。と同時に、電子機器101の燃料導入管が燃料排出口31に挿入して燃料導入管によって逆止弁35が開き、空気導入管が空気排出口32に挿入して逆止弁36が開き、水導入管が水排出口33に挿入して逆止弁73が開く。
燃料容器1は、電子機器101に収納された状態で、エアフィルタ63が電子機器101の側面から露出するように設定され、電子機器101の側面及び下方に突出しない形状が望ましい。燃料容器1を電子機器101から取り外す場合は矢印Aと逆方向に燃料容器1を引っ張り出せばよい。
このような電子機器101に燃料容器1を装填する場合でも包装材9、109の胴巻き部91、191がケース10を密閉しているので燃料容器1の機密性を向上することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、包装材9,109の包装工程は上述したような工程に限定されない。