JP4465956B2 - ホログラム素子の製造方法、投射型表示装置 - Google Patents

ホログラム素子の製造方法、投射型表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホログラム素子及びその製造方法、並びにこのホログラム素子を備えた照明装置、投射型表示装置に関し、詳しくは、複数の光源から出射された光を光変調装置に効率的に導くため技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
表示装置の分野では、大型化,高精細化に対するニーズが高く、このような大画面表示を容易に実現できる手段として、従来より液晶プロジェクタやDMD等の投射型表示装置が知られている。
中でも、特許文献1に開示されるように、ダイクロイックプリズムの周囲に配置されたR(赤色),G(緑色),B(青色)のLED光源を時分割で点灯し、各光源から出射された色光を一枚のライトバルブで変調してスクリーン上で合成するようにした単板式の投射型表示装置は、光利用効率が高く構造も簡素化されるため注目されている。
【0003】
ところで、LEDを光源として用いた場合、LEDの放射角度分布が指向性を持っているため、単に照明しただけでは、ライトバルブ上での照明均一性が低下する虞がある(即ち、LEDの有する大きな放射角度分布によって照明効率が低下する虞がある)。このため、各光源とライトバルブとの間に照明を均一化する手段を設け、光強度をライトバルブ上で均一化する必要がある。このような均一化手段としては、従来より、フライアイレンズやロッドレンズ等の光学素子が用いられている。また、特許文献2では、光学系をコンパクトに構成するために、フライアイレンズ等の代わりにホログラム素子を用いることが提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−56410号公報
【特許文献2】
特開平10−10466号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の光学素子或いはホログラム素子は、光源やライトバルブと同一の光軸(システム光軸)上に配置されることを前提としているため、十分な均一化効果が得られなかった。つまり、上述の三つのLED光源を用いた投射型表示装置では、システム光軸上に配置できるLED光源は一つのみで、他のLED光源はこの光軸から外れた位置に配置されることになる。このため、上述の素子は、このようなLED光源から斜めに入射される色光に対して十分に機能しない。また、波長の影響を考慮していないため、各色光に対して均一性にむらが生じる虞があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、異なる角度で入射される複数の照明光を同時に均一化できるようにした、ホログラム素子の製造方法及びホログラム素子並びにこのホログラム素子を備えた照明装置、投射型表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のホログラム素子の製造方法は、基材上に光重合性の樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、上記基材の一面側の互いに異なる位置から波長の異なる複数の参照光を順次上記樹脂層に照射するとともに上記各参照光と同じ波長の物体光によって上記一面側から上記基材の他面側に仮想的に設けられた被照明領域を順次照明することで、上記樹脂層の所定の領域にホログラムパターンを有する回折部を形成するパターン形成工程とを備え、上記樹脂層上の上記物体光を照射する位置を変更しながら上記パターン形成工程を繰り返すことにより上記樹脂層に上記回折部を複数形成することを特徴とする。
【0008】
本製造方法では、複数の参照光と複数の波長の光成分を有する物体光との間で各光成分毎に干渉パターンが形成される。このため、参照光と物体光とが照射された上記所定の領域には各干渉パターンが混合された形状の干渉縞が生じ、干渉縞の明部で樹脂の重合が促進され、上記干渉縞の形状に対応したホログラムパターンが形成される。
【0009】
したがって、本製造方法によれば、このようなホログラムパターンにより、互いに異なる角度から入射された異なる波長の複数の再生光を上記被照明領域に向けて略同一な方向に回折する回折部を形成することができる。また、本製造方法では、このような回折部が複数形成されるため、各回折部で回折された光が被照明領域上で重畳されることで照明光を均一化できる。さらに、本製造方法では、複数の参照光を同時に照射しているため、複数の再生光に対応したホログラムパターンを一度に形成でき、製造工程を簡略化できる。
【0010】
また、本発明のホログラム素子の製造方法は、基材上に光重合性の樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、上記基材の一面側から所定の波長の参照光を上記樹脂層に照射するとともに上記参照光に対応した物体光によって上記基材の他面側に仮想的に設けられた被照明領域を照明することで、上記樹脂層の所定の領域にホログラムパターンを有する回折部を形成し、更に、上記樹脂層上の上記物体光を照射する位置を変更しながら上記パターン形成を繰り返すことにより上記樹脂層に上記回折部を複数形成するパターン形成工程とを備え、上記参照光及び上記物体光の波長と上記参照光の照射位置とを変更しながら上記樹脂層形成工程と上記パターン形成工程とを繰り返すことにより、上記回折部を面内に複数有する樹脂層を上記基材上に複数積層して形成することを特徴とする。
【0011】
本製造方法では、樹脂層は参照光の波長に応じて複数設けられ、積層された各樹脂層には、対応する波長の参照光と物体光との干渉によるホログラムパターンが複数形成される。
【0012】
したがって、本製造方法によれば、このようなホログラムパターンにより、それぞれの樹脂層に、対応する波長の再生光を上記被照明領域に向けて略同一な方向に回折する回折部を形成することができる。そして、異なる波長の光に対応した樹脂層を複数積層することで、異なる角度から入射された異なる波長の複数の再生光を上記被照明領域に向けて略同一な方向に回折するホログラム素子を形成することができる。また、本製造方法では、このような回折部が各樹脂層に複数形成されるため、各回折部で回折された上記波長の光が被照明領域上で重畳されることで各波長の光毎に照明光を均一化できる。さらに、本製造方法では、各再生光に対応するホログラムパターンをそれぞれ別々の工程で形成しているため、ホログラム素子を設計する際の自由度を高めることができる。
【0013】
また、本発明のホログラム素子は、互いに異なる角度から入射された異なる波長の光を略同一な被照明領域に向けて回折する複数の回折部を備えたことを特徴とする。
本構成によれば、異なる角度で入射された波長の異なる複数の光は全て略同一な方向にある被照明領域に回折される。そして、複数の回折部により回折された各光が被照明領域上で重畳されることで、照明光を均一化できる。
【0014】
また、本発明のホログラム素子は、互いに異なる角度から入射される異なる波長の光に対応して設けられた複数のホログラム回折層の積層体を備え、上記各ホログラム回折層は、対応する波長の光を被照明領域に向けて略同一な方向に回折する複数の回折部を有することを特徴とする。
本構成によれば、互いに異なる角度で入射される異なる波長の光は、それぞれ対応するホログラム回折層により、全て被照明領域に向けて略同一な方向に回折される。そして、各ホログラム回折層の複数の回折部により回折された各光が被照明領域上で重畳されることで、照明光を均一化できる。
【0015】
また、本発明のホログラム素子は、上述のホログラム素子の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の照明装置は、上述のホログラム素子と、互いに異なる角度から異なる波長の色光で上記ホログラム素子を照明する複数の光源とを備えたことを特徴とする。
本構成によれば、上述のホログラム素子によって、異なる角度から入射される波長の異なる光を略同一方向に回折できるため、システム光軸上にない光源の光を所定の被照明領域に向けて均一に出力することができる。このため、コンパクトな構成で、出射面における光の強度の均一な照明光を得ることができる。なお、システム光軸とは、ホログラム素子を含めた照明装置全体としての出射光軸をいう。
【0017】
また、本発明の投射型表示装置は、上述の照明装置と、上記ホログラム素子から出射された色光を変調する光変調装置とを備えたことを特徴とする。
本構成によれば、明るさむらの少ない高品質な表示の得られるコンパクトな投射型表示装置を実現することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、図1〜図6を参照しながら本発明の第1実施形態に係る投射型表示装置について説明する。図1は本実施形態の投射型表示装置の全体構成を示す概略図、図2は本投射型表示装置に備えられた光源の一構成例を示す概略斜視図、図3は本投射型表示装置に備えられたホログラム素子の構造を示す概略図で、図3(a),図3(b)はそれぞれそのZ軸方向,X軸方向から見た図、図4,図5はいずれも本ホログラム素子の製造方法を説明するための図、図6は本投射型表示装置の駆動方法を説明するための図である。
【0019】
なお、本投射型表示装置ではシステム光軸をX軸としている。また、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の投射型表示装置は、それぞれ異なる波長の色光を出射可能な光源20R,20G,20Bと、光源20R,20G,20Bから出射された色光を集光するためのホログラム素子30とを有する照明装置10と、照明装置10から出射された色光を変調してカラー画像を出力する光変調装置40と、光変調装置40から出力された画像をスクリーン60に拡大投影するための投射光学系50とを備えて構成されている。
【0021】
光源20R,20G,20Bは、図2に示すように、それぞれ赤色光,緑色光,青色光を出射可能なLED等の発光素子2R,2G,2Bがプリント基板20上にアレイ状に複数配置された構成となっている。また、これらの光源20R,20G,20Bは略同一平面上に並置されており、プリント基板20の背面側に設けられた共通の冷却ファン(図示略)によって冷却されるようになっている。なお、図2では、4×7個のチップLEDによって一つの光源を構成しているが、これらの光源20R,20G,20Bを各々一個の発光素子から構成してもよい。
【0022】
これらの光源20R,20G,20Bは、光出力制御回路70により色光の出射タイミングを制御されるようになっており、1フレームを時分割して光源20R,20G,20Bから時間順次に赤色光,緑色光,青色光が出射されるようになっている。
【0023】
ホログラム素子30は、図3に示すように、ガラスや樹脂等の透光性の基材31上にホログラムパターンの形成された樹脂層(ホログラム回折層)32を備えて構成されている。
【0024】
樹脂層32は、例えば光重合性のモノマーを二光束露光法により重合させて形成したもので、異なる角度から入射された異なる波長の光を略同一な方向に回折するホログラム回折部A11〜A77がアレイ状に複数形成されている。すなわち、各回折部A11〜A77は光源20R〜20Bからそれぞれ異なる角度で入射された各色光を共に被照明領域である光変調装置40に向けて回折するようになっており、各回折部A11〜A77から出射された光を重畳させることで光変調装置40を均一に照明できるようになっている。
【0025】
このようなホログラム回折部A11〜A77は、例えば図4,図5に示すような干渉露光法により形成される。
【0026】
まず、基材31上に光重合性のモノマー層Fを塗布し、基材31の一面側に再生光(即ち、光源20R,20G,20Bから出射される赤色光,緑色光,青色光)と同じ波長の参照光を出射可能な光源20R′,20G′,20B′と、これらと同じ波長を持つ物体光を出射可能な光源Lとを配置する。この際、各光源20R′〜20B′はそれぞれ光源20R〜20Bの配置される位置に配置し、光源Lは基材31に対して光源20R′〜20B′と同じ側に配置する。
そして、光源20R′からの光をモノマー層Fに照射しながら、光源Lからこのモノマー層Fを介して被照明領域40′に光源20R′と同じ波長の物体光を照射する。次いで、光源20G′及び光源20G′と同じ波長の物体光を光源Lの位置から照射する。最後に光源20B′及び光源20B′と同じ波長の物体光を光源Lから照射する。
【0027】
なお、この被照明領域40′は光変調装置40の配置される位置を仮想的に示したものであり、実際に何かが存在するわけではない。また、図4では、便宜的に各光源20R′〜20B′から出射された光が領域aijに集光されるように描かれているが、実際には各光源20R′〜20B′はモノマー層F全体を照明していて、領域aij以外の部分を遮光することによって領域aijだけに光を照射している。
【0028】
このような露光工程によって、物体光と参照光とが照射されたモノマー層Fの所定の領域aijでは、光源20R′〜20B′からの各色光と光源Lの各色光成分との間でそれぞれ干渉が生じ、干渉によって光強度の強くなった部分でモノマーの重合が促進される。この際、領域aijには波長の異なる複数の光(ここでは、赤色光,緑色光,青色光の三種類の色光)が入射されるため、干渉縞の形状は各波長の光の干渉パターンを合成したものとなる。
【0029】
つまり、領域aijには、光源20R′の赤色光と光源Lの赤色光成分との干渉により生じる干渉パターンと、光源20G′の緑色光と光源Lの緑色光成分との干渉により生じる干渉パターンと、光源20B′の青色光と光源Lの青色光成分との干渉により生じる干渉パターンが順次形成される。
【0030】
そして、図5に示すように、光源Lの位置をモノマー層Fの端部側から順にL1,L2,・・・,Lj,・・・,L7に変更しながら上述の露光工程を繰り返し行ない、重合パターンの異なる複数の領域ai1〜ai7をY軸方向に形成する。そして、更に、光源LをZ軸方向に走査して同様の露光工程を繰り返し、重合パターンの異なる複数の領域a11〜a77をアレイ状に形成する。
なお、上述の露光工程では、光源Lの照射位置や出射口の形状等を調節することで、各領域aijの大きさや形状、干渉縞のパターンを制御することができる。
【0031】
そして、最後に、紫外光を全面に照射して重合を完了させる。
以上により、アレイ状の回折部A11〜A77を有する樹脂層32が形成される。このような方法によれば、光源20R〜20Bから入射される各再生光を共に光変調装置40に向けて略同一方向に回折する回折部を任意のレイアウトで複数形成でき、各回折部の形状や大きさ等も比較的自由に設計できる。また、上述の方法では、複数の参照光を同時に照射しているため、複数の再生光に対応したホログラムパターンを一度に形成でき、製造工程を簡略化できる。
【0032】
光変調装置40は、例えばアクティブマトリクス型の透過型液晶装置として構成され、光変調装置駆動回路80により光源20から出射される各色光の出射タイミングに合わせて、各色光に対応する画像を出力するようになっている。この際、色光の出射タイミングと光変調装置40の駆動タイミングとを同期させるために、光出力制御回路70及び光変調装置駆動回路80に対して同期信号発生回路90から同期信号SYNCが出力されるようになっている。なお、光利用効率を高めるために、光変調装置40とホログラム素子30との間に、光の偏向方向を一方向に揃えるPBS(偏向ビームスプリッタ)アレイを設けてもよい。
【0033】
次に、本実施形態の投射型表示装置の動作について図3(a),図6を用いて説明する。
図6に示すように、本投射型表示装置では1フレームが3分割され、各分割されたタイミングで同期信号SYNCが光出力制御回路70,光変調装置駆動回路80に出力される。
【0034】
そして、同期信号SYNCに合わせて光源20R,20G,20Bから順次赤色光,緑色光,青色光が出射され、それぞれホログラム素子30に入射される。そして、ホログラム素子30の各回折部A11〜A77に入射された色光はそれぞれ光変調装置40に向けて略同一な方向に回折され、光変調装置40上で重畳される。
【0035】
つまり、例えば図3(a)に示すように、光源20Rから光源20Rの略正面に位置する回折部A12に入射された赤色光は、緩やかに回折されて光変調装置40全面を照明する。また、光源20G,20Bから回折部A12に対して斜めに入射される緑色光,青色光は、光変調装置40に向けて大きく回折されて光変調装置40全面を照明する。同様に、各光源20R〜20Bから他の回折部A11,A13,・・・,A77に対してそれぞれ異なる角度で入射された各色光は、いずれも光変調装置40に向けて回折され、光変調装置40全面を照明する。各回折光にはそれぞれ光変調装置40上で輝度分布を有しているが、各回折光が光変調装置40上で重畳されることで全体として均一化される。
【0036】
一方、光変調装置40は、光源20R,20G,20Bから出射される各色光の出射タイミングに合わせて、1フレーム毎に各色光に対応した画像信号SR,SG,SBを出力する。
そして、出力された画像信号SR,SG,SBは投射光学系50によりスクリーン60上に拡大投影されて合成され、カラー表示が行なわれる。
【0037】
したがって、本実施形態の投射型表示装置によれば、ホログラム素子30によって、互いに異なる角度から入射された異なる波長の複数の光を略同一な方向に回折されるため、システム光軸上に配置された光源20Gからの出射光だけでなくシステム光軸上にない光源20R,20Bからの出射光を光変調装置40に向けて効率的に導くことができる。そして、この際、複数の回折部A11〜A77のそれぞれで回折された各光が光変調装置40上で重畳されて均一化されるため、輝度むらが少なく明るい表示が得られる。
【0038】
また、本投射型表示装置では、波長の異なる複数の照明光の輝度を一つのホログラム素子30によって均一化できるため、照明光毎に均一化手段を設ける必要がなく、光学系をコンパクトに構成することができる。
【0039】
さらに、上述のホログラム素子30の性質から、光源20R〜20Bを比較的自由に配置でき、本構成のように一枚のプリント基板20上にまとめて並置することもできる。このため、例えばこれまで光源毎に一つずつ設けられていた冷却ファンを共通化し、一つのファンによって三つの光源20R〜20Bを同時に冷却するようなことが可能となる。このように、従来光源毎に設けられていた付属部材を共通化することで、照明装置10全体としての構成をコンパクトにできる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、図7〜図12を参照しながら本発明の第2実施形態に係る投射型表示装置について説明する。
図7は本実施形態の投射型表示装置の全体構成を示す概略図、図8は本投射型表示装置に備えられたホログラム素子の構造を示す概略図、図9〜図12はいずれも本ホログラム素子の製造方法を説明するための図である。なお、本投射型表示装置ではシステム光軸をX軸としている。また、上記第1実施形態と同様の部位については同じ符号を付し、その説明を省略する。さらに、本投射型表示装置の駆動方法について、図3(b)や図6を適宜流用して説明する。
【0041】
図7に示すように、本実施形態の投射型表示装置は、それぞれ異なる波長の色光を出射可能な光源20R,20G,20Bと、光源20R,20G,20Bから出射された色光を集光するためのホログラム素子30′とを有する照明装置10′と、照明装置10′から出射された色光を変調してカラー画像を出力する光変調装置40と、光変調装置40から出力された画像をスクリーン60に拡大投影するための投射光学系50とを備えて構成されている。
【0042】
本ホログラム素子30′は、図8に示すように、ガラスや樹脂等の透光性の基材31上にホログラムパターンの形成された複数の樹脂層(ホログラム回折層)321,322,323が積層されて構成されている。
【0043】
各樹脂層321〜323は、例えば光重合性のモノマーを二光束露光法により重合させて形成したもので、異なる角度から入射された所定の波長の光を略同一な方向に回折するホログラム回折部Akij(k=1〜3、i,j=1〜7)がアレイ状に複数形成されている。なお、kは積層された樹脂層の各レイヤーを示し、i,jはそれぞれ回折部の存在する行番号,列番号(図3(b)参照)を示している。つまり、回折部Akijは、基材31から数えてk番目の樹脂層32kに形成されたi行j列目の回折部であることを示している。
【0044】
例えば、樹脂層321〜323はそれぞれ光源20R,20G,20Bに対応して設けられており、各光源20R〜20Bからそれぞれ出射された色光は、対応する樹脂層の複数の回折部により光変調装置40に向けて回折されるようになっている。つまり、光源20Rから樹脂層321の各回折部A111〜A177に入射された各赤色光は、いずれも光変調装置40に向けて略同一方向に回折されるようになっており、各回折部A111〜A177から出射された各赤色光を重畳させることで光変調装置40を均一に照明できるようになっている。同様に、光源20Gから樹脂層322の各回折部A211〜A277に入射された各緑色光、及び光源20Bから樹脂層323の各回折部A311〜A377に入射された各青色光は、いずれも光変調装置40に向けて略同一方法に回折され、各回折光が重畳されることで緑色光及び青色光の照明光が均一化されるようになっている。
【0045】
このようなホログラム回折部A111〜A177,A211〜A277,A311〜A377は、例えば図9〜図12に示すような干渉露光法により一層ずつ形成される。
【0046】
一層目の樹脂層321の形成方法について説明すると、まず、図9に示すように、基材31上に光重合性のモノマー層F1を塗布し、基材31の一面側に再生光(即ち、光源20Rから出射される赤色光)と同じ波長の参照光及び物体光をそれぞれ出射可能な光源20R′,光源L1を配置する。この際、光源20R′は光源20Rの配置される位置に配置し、光源L1は基材31に対して光源20R′と同じ側に配置する。そして、光源20R′からモノマー層F1に対して参照光(赤色光)を照射しながら光源L1からこのモノマー層F1を介して被照明領域40′に参照光(赤色光)を照射する。
【0047】
なお、この被照明領域40′は、上記第1実施形態と同様に、光変調装置40の配置される位置を仮想的に示したものであり、実際に何かが存在するわけではない。また、図9では、便宜的に光源20R′から出射された光が領域a1ijに集光されるように描かれているが、実際には光源20R′はモノマー層F1全体を照明している。
【0048】
このような露光工程によって、物体光と参照光とが照射されたモノマー層F1の所定の領域a1ijでは両赤色光の干渉が生じ、干渉により光強度の強くなった部分でモノマーの重合が促進される。
【0049】
そして、図10に示すように、光源L1の位置をモノマー層F1の端部側から順にL11,L12,・・・,L1j,・・・,L17に変更しながら上述の露光工程を繰り返し行ない、重合パターンの異なる複数の領域a1i1〜a1i7をY軸方向に形成する。そして、更に、光源L1をZ軸方向に走査して同様の露光工程を繰り返し、重合パターンの異なる複数の領域a111〜a177をアレイ状に形成する。
【0050】
そして、紫外光を照射し重合を完了することで、アレイ状の回折部A111〜A177を有する一層目の樹脂層321が形成される。
樹脂層322,323についても、上述の一層目を形成したのと同様の方法により形成できる。
【0051】
つまり、二層目の樹脂層322では、図11に示すように、一層目の樹脂層321の上に、モノマー層F1と同様の光重合性のモノマー層F2を塗布し、基材31の一面側に再生光(即ち、光源20Gから出射される緑色光)と同じ波長の参照光及び物体光を出射可能な光源20G′,光源L2を配置する。この際、光源20G′は光源20Gの配置される位置に配置し、光源L2は基材31に対して光源20G′と同じ側に配置する。そして、光源20G′からモノマー層F2に対して参照光(緑色光)を照射しながら光源L2からこのモノマー層F2を介して被照明領域40′に参照光(緑色光)を照射する。
【0052】
そして、光源L2の位置をモノマー層F2の端部側から順にL21,L22,・・・,L2j,・・・,L27に変更しながら上述の露光工程を繰り返し行ない、重合パターンの異なる複数の領域a2i1〜a2i7をY軸方向に形成する。そして、更に、光源L2をZ軸方向に走査して同様の露光工程を繰り返し、重合パターンの異なる複数の領域a211〜a277をアレイ状に形成する。
そして、紫外光を照射し重合を完了することで、アレイ状の回折部A211〜A277を有する二層目の樹脂層322が形成される。
【0053】
三層目の樹脂層323では、図12に示すように、二層目の樹脂層322の上に、モノマー層F1,F2と同様の光重合性のモノマー層F3を塗布し、基材31の一面側に再生光(即ち、光源20Bから出射される青色光)と同じ波長の参照光及び物体光を出射可能な光源20B′,光源L3を配置する。この際、光源20B′は光源20Bの配置される位置に配置し、光源L3は基材31に対して光源20B′と同じ側に配置する。そして、光源20B′からモノマー層F3に対して参照光(青色光)を照射しながら光源L3からこのモノマー層F3を介して被照明領域40′に参照光(青色光)を照射する。
【0054】
そして、光源L3の位置をモノマー層F3の端部側から順にL31,L32,・・・,L3j,・・・,L37に変更しながら上述の露光工程を繰り返し行ない、重合パターンの異なる複数の領域a3i1〜a3i7をY軸方向に形成する。そして、更に、光源L3をZ軸方向に走査して同様の露光工程を繰り返し、重合パターンの異なる複数の領域a311〜a377をアレイ状に形成する。
そして、紫外光を照射し、重合を完了することで、アレイ状の回折部A311〜A377を有する三層目の樹脂層323が形成される。
【0055】
以上により、複数の回折部を有する樹脂層の積層体が形成される。このような方法によれば、各樹脂層321〜323において、対応する光源から入射される所定の波長の再生光を光変調装置40に向けて略同一な方向に回折する回折部を任意のレイアウトで複数形成でき、各回折部の形状や大きさ等も比較的自由に設計できる。また、各再生光に対応するホログラムパターンをそれぞれ別々の工程で形成しているため、ホログラム素子を設計する際の自由度を高めることができる。
【0056】
なお、光源20R〜20B,光変調装置40等に関しては上記第1実施形態と全く同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0057】
次に、本実施形態の投射型表示装置の動作について図8,図6を用いて説明する。
図6に示すように、本実施形態でも1フレームが3分割され、各分割されたタイミングで同期信号SYNCが光出力制御回路70,光変調装置駆動回路80に出力される。
【0058】
そして、同期信号SYNCに合わせて光源20R,20G,20Bから順次赤色光,緑色光,青色光が出射され、それぞれホログラム素子30′の対応する樹脂層に入射される。そして、対応する樹脂層の各回折部に入射された色光はそれぞれ光変調装置40に向けて略同一な方向に回折され、光変調装置40上で重畳される。
【0059】
つまり、例えば図8に示すように、光源20Rから出射された赤色光は一層目の樹脂層321の各回折部A1ij(i,j=1〜7)により、それぞれ光変調装置40に向けて略同一方向に回折され、光変調装置40全体を照明する。各回折部A111〜A177で回折された光はそれぞれ光変調装置40上で輝度分布を有しているが、各回折光が光変調装置40上で重畳されることで光変調装置40を照明する赤色光は全体として均一化される。
【0060】
同様に、光源20Gから出射された緑色光は二層目の樹脂層322の各回折部A2ij(i,j=1〜7)により、それぞれ光変調装置40に向けて略同一方向に回折され、光源20Bから出射された青色光は三層目の樹脂層323の各回折部A3ij(i,j=1〜7)により、それぞれ光変調装置40に向けて略同一方向に回折される。そして、各回折光は互いに重畳されて全体として均一化され、光変調装置40を均一に照明する。
【0061】
一方、光変調装置40は、光源20R,20G,20Bから出射される各色光の出射タイミングに合わせて、1フレーム毎に各色光に対応した画像信号SR,SG,SBを出力する。
そして、出力された画像信号SR,SG,SBは投射光学系50によりスクリーン60上に拡大投影されて合成され、カラー表示が行なわれる。
【0062】
したがって、本実施形態の投射型表示装置でも、上記第1実施形態と同様に、ホログラム素子30′によって、互いに異なる角度から入射された異なる波長の光を略同一な方向に回折されるため、輝度むらが少なく明るい表示が可能な投射型表示装置をコンパクトに構成することができる。
【0063】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上記第2実施形態では、各樹脂層321〜323をそれぞれ7×7の回折部により構成しているが、回折部の数はこれに限定されず、任意に設定できる。また、樹脂層毎に回折部の数や配列,形状等を変えてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態では、光源として赤色光,緑色光,青色光の三種類のものを用いたが、この代わりに、他の三種類の色光を出射する光源を用いてもよく、又、光源の数も二種類或いは四種類以上とすることも可能である。
さらに、上記各実施形態では光変調装置として透過型液晶装置を用いた例を挙げたが、この代わりに、反射型液晶ライトバルブやDMD(Digital Mirror Device)を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る投射型表示装置の構成図である。
【図2】 同、光源の構成例を示す図である。
【図3】 同、ホログラム素子の構成を示す図である。
【図4】 同、ホログラム素子の製造方法を説明するための図である。
【図5】 同、ホログラム素子の製造方法を説明するための図である。
【図6】 同、投射型表示装置の動作を説明するための図である
【図7】 本発明の第2実施形態に係る投射型表示装置の構成図である。
【図8】 同、ホログラム素子の構成を示す図である。
【図9】 同、ホログラム素子の製造方法を説明するための図である。
【図10】 同、ホログラム素子の製造方法を説明するための図である。
【図11】 同、ホログラム素子の製造方法を説明するための図である。
【図12】 同、ホログラム素子の製造方法を説明するための図である。
【符号の説明】
10 照明装置、20R,20G,20B 光源、30,30′ ホログラム素子、31 基材、32,321〜323 ホログラム回折層、A11〜A77,A111〜A377 回折部、F,F1〜F3 樹脂層、40 光変調装置(被照明領域)

Claims (4)

  1. 互いに波長の異なる複数の光源から異なる角度で入射された複数の色光を光変調装置上の被照明領域に向けて回折するホログラム素子の製造方法であって、
    基材上に光重合性の樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
    上記基材の一面側の互いに異なる位置から上記複数の色光と同じ波長を有する複数の参照光を順次上記樹脂層に照射するとともに上記一面側から上記各参照光と同じ波長の物体光によって上記基材の他面側に仮想的に設けられた被照明領域の全面を順次照明することで、上記樹脂層の所定の領域にホログラムパターンを有する回折部を形成するパターン形成工程とを備え、
    上記樹脂層上の上記物体光を照射する位置を変更しながら上記パターン形成工程を繰り返すことにより上記樹脂層に上記回折部を複数形成することを特徴とする、ホログラム素子の製造方法。
  2. 互いに波長の異なる複数の光源から異なる角度で入射された複数の色光を光変調装置上の被照明領域に向けて回折するホログラム素子の製造方法であって、
    基材上に光重合性の樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
    上記基材の一面側から、上記複数の色光のいずれかと同じ波長を有する参照光を上記樹脂層に照射するとともに上記参照光と同じ波長を有する物体光によって上記基材の他面側に仮想的に設けられた被照明領域の全面を照明することで、上記樹脂層の所定の領域にホログラムパターンを有する回折部を形成し、更に、上記樹脂層上の上記物体光を照射する位置を変更しながら上記パターン形成を繰り返すことにより上記樹脂層に上記回折部を複数形成するパターン形成工程とを備え、
    上記参照光及び上記物体光の波長と上記参照光の照射位置とを変更しながら上記樹脂層形成工程と上記パターン形成工程とを繰り返すことにより、上記回折部を面内に複数有する樹脂層を上記基材上に複数積層することを特徴とする、ホログラム素子の製造方法。
  3. ホログラム素子と、前記ホログラム素子に向けて互いに異なる角度から互いに異なる波長の色光を照射する複数の光源と、前記ホログラム素子から出射された複数の色光を変調する光変調装置と、を備えた投射型表示装置であって、
    前記ホログラム素子は、基材上にホログラム回折層を有し、前記ホログラム回折層には、前記基材と平行な面内に複数の回折部がアレイ状に並んで形成され、前記複数の回折部の各々は、当該回折部に対して前記複数の光源から互いに異なる角度で入射される前記複数の色光のそれぞれを前記光変調装置の被照明領域の全面に照射し、これにより、前記複数の回折部に入射し前記光変調装置に向けて回折された全ての色光が前記光変調装置の被照明領域上で重畳されることを特徴とする、投射型表示装置
  4. ホログラム素子と、前記ホログラム素子に向けて互いに異なる角度から互いに異なる波長の色光を照射する複数の光源と、前記ホログラム素子から出射された複数の色光を変調する光変調装置と、を備えた投射型表示装置であって、
    前記ホログラム素子は、基材上に前記複数の色光に対応した複数のホログラム回折層が積層され、各ホログラム回折層には、前記基材と平行な面内に複数の回折部がアレイ状に並んで形成され、前記複数の回折部の各々は、当該回折部に対して入射される、当該回折部を含むホログラム回折層に対応した前記色光を前記光変調装置の被照明領域の全面に照射し、これにより、前記複数のホログラム回折層に含まれる前記複数の回折部に入射し前記光変調装置に向けて回折された全ての色光が前記光変調装置の被照明領域上で重畳されることを特徴とする、投射型表示装置
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