JP4464593B2 - 特に眼科外科手術手順に有用な小型手術用器具及びその製造方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的には外科手術用器具に関し、特に眼科の外科的処置に使用される器具に関するものである。本発明は、好ましい形態においては眼科の外科的処置、例えば特に黄班転移の間に外科医を支援するのによく適合している小型の手術器具に関するものである。
【０００２】
黄班変性の治療のために黄班転移は加齢に伴う黄班変性症を取り扱うための手段として最近注目されている。これに関連して多くの眼内外科手術では、外科医が出血の防止、血液その他の流体の灌注吸引、網膜切除を通じての流体の注入、目の中で組織の運動を維持するために吸引及び組織に対する吸引を解除するための流体の流動の使用のような目の内部で異なる外科的治療を完結することが必要である。これらの治療の最中に眼内器具を取り除き取り替えることは網膜亀裂、剥離した網膜の嵌頓等の合併症の危険性を増大させ、器具交換のあいだに流体の流出を招き出血の継続の危険性を増大させる。従って、連続的に必要とされる多くの処置を行うことのできる器具を有することが望まれる。
【０００３】
従って、もし外科医をして一連の外科的職務を容易でかつ損傷なく遂行、例えば出血している血管を圧縮しながら出血の源と圧縮により組織が血の気を失っていく程度を視認し、出血の源を発見するために血液を灌注吸引し、網膜内の穴から流体を灌注しつつ直下の組織からの網膜分離を起こす逆流を防止し組織を移動させその位置を変える試みの間に網膜その他の組織をしっかりと支持からその組織を即座に開放することができるようにする器具が入手可能であることが極めて望ましい。本発明が指向するのはそのような必要を満たすことである。
【０００４】
広い意味では、本発明はルーメンの遠端部を囲繞する円滑で球根状のアーチ状チップを有している外科用器具で実施化される。ルーメンと球根状のアーチ状チップの相対的位置決めは外科医をして上記したような外科的職務の遂行を可能とさせる。本発明の外科用器具に関連したチップの丸みをつけたボール形状は「四角に区切った」典型的なカニューレに起こりがちな隣接する構造の磨耗やゴージングを防止することができる。医療用グレードの透明なシリコン・エラストマーのような柔軟で自己支持力を有する材質でチップがてきていることが最も望ましい。
【０００５】
球根状のアーチ形チップは様々な幾何学的形状をとることができる。これに関連して、チップの外面はアーチ状であり全体は球面状でも楕円面その他でもよい。また、球根状のアーチ形チップは器具の長手方向軸を中心にして対称的であってもそのような長手方向軸を中心にして非対称的（すなわち、角度をもって配置されでも）であってもよい。
【０００６】
本発明の外科用器具は、まず一条の柔軟なチューブ体（例えばシリコン・ゴム）を剛体のチューブ（例えばステンレス鋼針の一部）の遠端部の中へ付着させて製造するのが最も好ましい。具体的には、基部が剛体のチューブ部分は遠端が柔軟なチューブ部に同軸的に袖嵌被覆され固定されているのが望ましい。そして形成ワイヤーは基部が剛体のチューブと遠端部が柔軟なチューブ部からなる直線に合せて揃えたルーメンに挿入して形成ワイヤーの終端部がが柔軟なチューブ部の遠端部を越えて延長するようなしてもよい。それから、塊状体をした硬化性液体エラストマーを突出した形成ワイヤーの周囲に柔軟なチューブ部の遠端部に塗布する。該液体エラストマーの硬化中にチューブ部を回転したり、成形したりその他の処置をすることにより、球根状のアーチ形チップを形成してもよい。エラストマーチップが一旦硬化すると、形成ワイヤー又は型は引き抜かれチップを端部とする小型の中空孔ルーメンを形成する。すなわち、球根状のアーチ型チップはこのようにして形成されたルーメンの遠端部を囲繞する。
【０００７】
本発明のこれら態様またはその他の形態と利点は、以下好ましい実施例の詳細な説明からより明確になるであろう。
【０００８】
【発明の実施の形態】
添付の図１は本発明の外科用器具の好ましい実施例を示す。これに関連して、器具１０は、基部の連結部材１４から延長する剛体のステンレス鋼のチューブ部１２を含む。該剛体のチューブ部１２は標準的な医療用針、例えば１９ゲージのステンレス鋼針の一部からなることが最も望ましい。連結部材１４はそれ自体は従来のものであり、ルェール・タイプその他適当なロック機構で器具１０が例えば真空源に接続できるものであればよい。
【０００９】
最も好ましくはシリコン・エラストマーからなる柔軟なチューブ部１６は、好ましくは硬化性のシリコン・エラストマー製の接着剤を使用して剛体のチューブ部１２のルーメン１２ａ内に付着されている。柔軟なチューブ部１６の上に袖付けされた剛体のチューブ部１２は、ルーメン１２ａと１６ｂが互いに同軸に揃えて位置決めされる。また、見られるように、柔軟なチューブ部１６の遠端部１６ｂは剛体のチューブ部１２から遠端方向に延長される。
【００１０】
中実の球根状のアーチ形チップ１８は、柔軟なチューブ部１６の遠端部１６ｂに付着して一体となっている。このようにチップ１８は、柔軟なチューブ部１６の直径より大である直径を有している。球根状のチップ１８は、カリフォルニア、カーピンテリアのNuSILテクノロジー社が市販している硬化性シリコン・エラストマー製品＃ＭＤ−４２１１のような硬化性医療グレードのシリコン・エラストマーであることが最も望ましい。おそらく添付の図２からより明瞭に理解されるように、チップ１８の外面は円滑で実質的には球状の断面幾何学的形状を有している。チップ１８の最も遠端部は切頭形状であり柔軟なチューブ部のルーメン１６ａに連通する全体が円錐状に窪んだ還流ポート１８ａを形成している。
【００１１】
しかし、ルーメン連通孔１８ａは、添付の図３示したチップ１８−１に関連した突状で湾曲した角の形状のルーメン連通孔１８ａ−１のような他の形状をとってもよい。あるいは、例えば添付の図４に示された全体が球状のチップ１８−２に示されたように還流ポート形状を設ける必要はなく、この場合はルーメン連通孔１８ａ−２は、最も遠端部の位置で球状外面で単に開口している。
【００１２】
チップ１８、１８−１及び１８−２は、それぞれ柔軟なチューブ部１６の遠端部１６ｂのルーメン１６ａを対称的に囲繞していることが観測される。しかし、添付の図５に示される実施例により示されるようにルーメン軸に対して非対称であるチップも構想することができる。図示のように、チップ１８−３はこれまでに記述されたチップ１８、１８−１及び１８−２に同じなだらかなアーチ状をしているが、剛体のチューブ部１２と柔軟なチューブ部１６に対してそれぞれ非対称に位置している。その状態で、連通孔１８ａ−３は柔軟なチューブ部のルーメン１６ａに対して角度をもって（好ましくは鈍角で）位置している。図５に示された実施例において、基部の剛体のチューブ部１２の遠端部１２ｂの角度は、連通孔１８ａ−３に軸に実質的に直角でチップ１８のために側面構造を支えるようになっている。
【００１３】
本発明の外科用器具を製造する方法の例は添付の図６に線図で示されている。これに関して、剛体のチューブ部１２は最初に例えばスタンダード１９ｇａのステンレス鋼の針からカットされたものでもよい。そして、柔軟なチューブ部１２はステップ２０において基部が剛体のチューブ部１２のルーメン１２ａの中に挿入されてなにか適当な医療グレードの接着剤によりそこに固定されてもよい。例えば、柔軟なチューブ部１６のためにシリコン・チューブを使用する時には、硬化性シリコン接着剤をこの目的に使用するのが有益である。
【００１４】
ひとたび袖嵌された剛体のチューブ部１２と柔軟なチューブ部１６が互いに軸方向に連結されると、ステップ２２に図示されるように軸方向に揃えたルーメン１２ａと１６ａ内にそれぞれ形成ワイヤが挿入される。これに関連して形成ワイヤーは最も遠端部が柔軟なチューブ部の遠端部を超えて伸張するように位置する。ステップ２４においては硬化性液体エラストマー、例えば、硬化性シリコン・エラストマーの塊状体は柔軟なチューブ部の遠端部上で形成ワイヤーの突出した遠端部の周囲に塗布する。混合されているが硬化していない状態の液体エラストマーの粘度は、約４０，０００乃至約７０，０００ｃＰであり、連結された剛体のチューブ部１２と柔軟なチューブ部１６を重力に抗して適切な操作をすることにより成形することが可能とするのに適切であり、同時にエラストマーが流動するためには十分低く、ステップ２６により硬化している間に成形が行われる。液体エラストマーの粘度は、２時間の休止期間の後に約７０，０００乃至約１５０，０００Ｃｐの間にあると有利である。例えば、硬化性液体シリコン・エラストマーを使用するときは、その粘度は２時間の休止時間の後は約１００，０００ｃＰである。
【００１５】
硬化性液体エラストマー材料の塊状体はアーチ型のチップの所望の最終名目直径を得るのに十分な量で塗布される。凝固したアーチ型チップは、相対的に小型化される、すなわち、約０．８０ｍｍ未満の名目直径を有し、典型的には約０．７５ｍｍを超えることが望ましい。従って、本発明による好ましいアーチ型チップは全体が球状で名目直径が約０．７５ｍｍ−約０．８０ｍｍの間でありチップを固定する柔軟なチューブ構造の直径より大である。
【００１６】
もし必要ならば、還流部を射出成形によりあるいは最初の「皮膚」層を液体エラストマーの塊状体の凝固中に形成するようにすることより製造することができる。一旦、この凝固した「皮膚」層が形成されると形成ワイヤをそっと引き抜き、そして／または揃えられたルーメン１２a、１６aのなかで回転させることができ、これにより硬化した皮膚層も同様に液体エラストマーの塊状体の残る未硬化部分に対して僅かに引き抜かれ、そして／または回転させられる。一旦、所望の還流形状が形成ワイヤの操作で得られると、液体エラストマーの残りの塊状体はステップ２６において硬化する。そして硬化すると形成ワイヤをルーメン１２aから完全に引き抜くことができ、それによりアーチ状チップのルーメン連通孔を露出させる。
【００１７】
これまで簡単に述べた通り、本発明の外科用器具は射出成形、例えば、添付の図７で全体を示した技術を使用することで製造ができ便利である。これに関連してステップ３０では柔軟なチューブを最初に適切な形状の型穴（例えば、図１−５に示した遠端部のチップを形成するために所望のアーチ型球根の形状の型穴を有するもの）の内部に位置させる。あるいは、一体構造（例えば、一体に形成された柔軟なチューブとアーチ形球根状のチップ）が所望であれば、順応性のある形状の型穴を提供する。いづれの状況であっても、所望直径の一個（またはそれより多い）のルーメン形成ピンをステップ３２で型内に挿入して最終的には器具のルーメンを形成することができる。
【００１８】
しかる後、ステップ３４においてすでに述べたような粘度を有する液体シリコン・ゴムを型穴内に射出して柔軟なチューブと一体のアーチ型球根状チップを形成するか、あるいは柔軟なチューブとチップの両方を一体構造に形成することができる。射出されたシリコン・ゴムは、それから自己保持力がつくまで型内で硬化され、それから型を開放して射出成形部品を取り出す。ルーメン形成ピンを除去することに続いて、ステップ３８にて射出成形部品は適当な接着剤を使用して剛体の針の遠端部に固着される。
【００１９】
さらに次の実施例から本願発明を理解することができる。この実施例は説明のために意図したものでこれに関連して限定するためのものではない。
【００２０】
【実施例】
規格１９ｇａのステンレス鋼（ＳＳ）の針が使用され切断されて２９．７５mmの長さを有するセクションを得た。切断された針の端部はバリ取りされ滑らかにされた。針のセクションは、汚染物質の除去ため超音波洗浄された。１ｃｍの長さを有するシリコン・チューブ体（０．６３５ｍｍ ｏｄｘ０．３ｍｍ ｉｄ）は超音波洗浄されてＭＤ−４２１１でその外表面を加湿された。ＭＤ−４２１１に対しては硬化剤とシリコンエラストマーの１対１０の比率が求められた。
【００２１】
良好な固着を得るためには、シリコン・チューブを剛体のＳＳ針の内外を軸方向に移動させて硬化性液体シリコン・エラストマーで外面が十分に覆われるようにする。硬化の直前に、ＳＳ針セクションの端部を０．８ｍｍだけ超えたシリコン・チューブの端部セクションから余分な液体シリコン・エラストマーを拭き取った。一旦、シリコン・チューブを剛体のＳＳチューブに対して正しく位置決めして突出した遠端部セクションから余分の液体を除去すると、硬化性液体シリコンは熱いエア・ガンで静かに加熱すると硬化する。
【００２２】
一旦硬化すると、シリコン・チューブは各チューブが互いに軸方向に揃った状態で剛体のＳＳチューブに固着される。通常０．２ｍｍの外径を有する研磨形成ワイヤを接合した剛体のＳＳチューブとシリコン・チューブセクションのルーメンの揃った状態でその内部に貫通させ約１ｃｍがシリコン・チューブの遠端部を越えて伸張するようにした。シリコン・エラストマーは上記のように混合して用意されたものである。顕微鏡内に測定用焦点板を使用することで、直径約０．７５以下の球を形成するのに十分な液体シリコン・エラストマーの塊状体を突出した形成ワイヤの周りのシリコン・チューブの露出した遠端部の上に載置した。シリコン・チューブの最遠端は液体シリコンの塊状体の約中心になるように位置させた。チューブは、全体が球状のチップを形成するように重力に対向して回転させた。毛細管作用により十分な量の液体シリコン・エラストマーがシリコン・チューブ・ルーメンの遠端部内に吸引されこれにより一体の接続が確保された。
【００２３】
液体シリコン材料の塊状体の塗布と最初の成形の後に、まず最初に液体シリコンは凝固した「皮膚」がその外面に形成される程度に硬化させられる。図１−４に示した様々なチップ形状が、形成ワイヤおよび結合した剛体とシリコンチューブ部間の相対移動により製造される。一旦、所望のチップが得られると形成ワイヤの裸端末部分は位置決め固定されて最初の硬化と凝固の間でのチップの形成が維持される。ボールが正しく形成された後に、シリコン・ゴムはゆっくりと約℃２５０度まで上昇される。この最終的な凝固が完了するのに約３分要した。
【００２４】
発明は、現在最も実質的で好ましい実施例と考えられるものに関連して叙述されたが、開示された実施例に限定されないと理解すべきであり、それに止まらず添付した請求項の精神と範囲内に含まれる各種の改変および等価的構造をもカバーすることを意図したものである。
【図面の簡単な説明】
今後、以下の添付図面を参照することとし、この場合、参照番号は、種々の図面を通じて同様の構造的エレメントを表示するものとする。
【図１】 本発明による外科用器具の1実施例を示す一部断面の側面図である。
【図２】 図１の外科用器具で使用されるアーチ状球根型チップの拡大断面図である。
【図３】 本発明の外科用器具で使用されるアーチ状球根型チップの他の実施例の拡大断面図である。
【図４】 本発明の外科用器具で使用されるアーチ状球根型チップのさらに他の実施例の拡大断面図である。
【図５】 本発明の外科用器具で使用されるアーチ状球根型チップのさらに他の実施例の一部断面拡大断面図である。
【図６】 本発明の器具を製造するために使用される方法を示す線図である。
【図７】 本発明の器具を射出成形で製造するために使用される方法のステップを示す線図である。
【符号の説明】
１０ 外科用器具
１２ ステンレス鋼チューブ
１２ａ ルーメン
１４ 連結部材
１６ チューブ
１８ チップ

Claims (10)

1. 基部が剛体の金属チューブ部分と、前記剛体の金属チューブ部分の内部に袖嵌且つ固定されて長手方向に延長したルーメンを形成し、前記剛体の金属チューブ部分を超えて末梢方向に延長された遠端部を有するエラストマーの柔軟なチューブ部分と、前記柔軟なチューブ部分の遠端部に結合した固形で球根状のエラストマーのチップとを含んでなり、前記チップは、前記柔軟なチューブ部分の径より大な直径を有して前記ルーメンと連通するルーメン連通孔を備え、自己支持力を有する透明又は半透明のエラストマーで、中実なアーチ状に形成されていることを特徴とする、眼科用外科手術器具。
2. 前記ルーメン連通孔は、前記ルーメンと軸方向に揃っていることを特徴とする、請求項１に記載の眼科用外科手術器具。
3. 前記ルーメン連通孔は、前記ルーメンに対して角度をもって方向付けされていることを特徴とする、請求項１に記載の眼科用外科手術器具。
4. 前記ルーメン連通孔は、前記チップ内に窪んでいることを特徴とする、請求項１に記載の眼科用外科手術器具。
5. 前記窪んだルーメン連通孔は、全体が断面で切頭円錐形であることを特徴とする、請求項４に記載の眼科用外科手術器具。
6. 前記窪んだルーメン連通孔は、全体が断面で角状であることを特徴とする、請求項４に記載の眼科用外科手術器具。
7. 前記透明又は半透明のエラストマーは、医療用グレードの透明なシリコン・エラストマーであることを特徴とする、請求項１に記載の眼科用外科手術器具。
8. 前記柔軟なチューブ部分は、シリコン・エラストマーで形成されていることを特徴とする、請求項１に記載の眼科用外科手術器具。
9. 前記チップの名目直径は、0.80mm未満であることを特徴とする、請求項１に記載の眼科用外科手術器具。
10. 前記チップは全体が球状であり、名目直径は約0.75mm〜約0.80mmであることを特徴とする、請求項１ないし９のいずれかに記載の眼科用外科手術器具。

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