JP4464072B2 - 熱溶融材料の圧力を制御する方法及び装置、及び熱可塑性樹脂で保護被覆された電気部品を生産する方法 - Google Patents
熱溶融材料の圧力を制御する方法及び装置、及び熱可塑性樹脂で保護被覆された電気部品を生産する方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱溶融材料の圧力を制御する方法及び装置、及び熱可塑性樹脂で保護被覆された電気部品を生産する方法に関する。特に、本発明は、ホットメルトモールディングにおいて、熱溶融材料を金型に注入するときの熱溶融材料の圧力を制御する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子部品が実装された回路基板を熱可塑性樹脂でほぼ全体を覆うように射出成形により封止する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、電子部品の半田が再溶融する前に、樹脂材料及び半田を急速に冷却・固化させることができる。
また、比較的低温低圧で電子部品が実装されたプリント基板を封止するために、電子部品が実装されたプリント基板を金型キャビティ内に配置し、160〜230℃に加熱溶融したポリアミド樹脂を2.45×105〜24.5×105Pa(2.5〜25kg/cm2)の圧力範囲で金型キャビティ内に注入し、それによって、プリント基板をポリアミド樹脂により封止するホットメルトモールディング方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−92668号公報(要約)
【特許文献2】
特開2000−133665号公報(請求項1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のホットメルトモールディング方法においては、低粘度のホットメルトを使用したときに、乱流が起こりやすいためボイドが発生することが多かった。したがって、ボイドが発生するたびに、金型の設計変更やエア溜まり部の追加などをする必要があった。
ホットメルトモールディングにおいては、一般に、金型内へホットメルトを注入するときのホットメルトの流速を制御する場合に、ノズルのオリフィス径を変更したり、金型のゲートの径、スプルー又はランナーの長さを変更したりしていた。
ホットメルトの流速が遅いと、金型内へのホットメルトの充填不良、ホットメルトと回路基板との接着不良という問題が発生する。
逆に、金型へのホットメルトの注入圧力を上げることにより、ホットメルトの流速を上げホットメルトの注入時間を短くすることができる。しかし、ホットメルトが低粘性材料の場合には、ホットメルトの流速が早くなることにより、乱流が生じる。この乱流により、ホットメルトが空気を巻き込み、ホットメルト内にボイドを生じ、製品不良を生じる。したがって、注入圧力は、ホットメルトが乱流を生じない程度の流速になるように設定されなければならない。
しかし、流速の変更によってボイドを防止できない場合に、このボイド(製品中のエアの噛み込み)をなくすために、金型の試作、改造を大量に行う必要があった。さらに、大量のエアーチャンバー、ランナーを作成することによる生産コストの上昇もあった。
【0005】
ギアポンプを使用した従来のホットメルトモールディング装置では、ギアポンプを作動させて、ガンの弁を開き、金型へのホットメルトの注入を行う。このとき、ガンの内部圧力は一旦低下する。金型へのホットメルトの充填が完了すると、ガンの内部圧力は上昇し、ガンの弁を開いたまま保圧する。ボイドの発生の対策としては、注入時の流速を低速にし、保圧時間を長くする方法がある。保圧工程で金型内のホットメルトの体積減少に相当する材料を補給しつつ冷却することができる。
しかしながら、ボイドが発生した場合には、ギアポンプの回転数を変更したり、注入圧力及び保圧力の設定を変更したりするだけであった。このため、ボイドが発生した場合には、流入経路の設計変更、金型の設計変更が必要となっていた。
【0006】
エアシリンダを使用した従来のホットメルトモールディング装置(定容積充填方式)では、ホットメルトを金型へ注入するときのホットメルトの流速を変更するために、ガン内部の背圧を変更する必要がある。背圧を変更するために、ノズルオリフィスの径、長さを変更するか、または、ニードル(弁体)隙間調整機構を備えたガンを用いニードルと弁座の開口面積を変更する必要がある。このように、ガン内部の背圧を変更する必要があるために、ガン内部の背圧を検出しても、ホットメルト注入時の金型内部の圧力を計測することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、熱溶融材料の圧力を制御することにより、どのようなメルターでも金型でもボイドの発生を防ぐことができる方法及び装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、ガン内部の熱溶融材料の圧力を検知し、検知結果に基づいて熱溶融材料の圧力を制御する方法及び装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、熱溶融材料の金型への注入工程後の圧力を制御することにより、製品中のボイドの発生を防ぐことができる方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決する為に本発明では次のような熱溶融材料の圧力を制御する方法とした。
すなわち、熱溶融材料を金型へ注入するためのガンに設けられた圧力センサーによりガン内部の熱溶融材料の圧力を検知し、検知した圧力に基づいて金型へ注入される熱溶融材料の圧力を制御する。
本発明の方法によれば、熱溶融材料の圧力を制御することができるので、ノズルのオリフィス径の変更やニードル弁による開口面積の調整を行わなくても、ボイドの発生を防止することができる。ボイドの発生を防止できるので、オリフィス径を従来よりも大きくすることができる。したがって、ガン内部の圧力を検知することにより、金型内部の圧力を従来のものよりもより正確に検知することができる。これによって、ガンに設けられた圧力センサーの検知結果に基づいて熱溶融材料の圧力をより正確に制御することができる。
【0009】
金型に熱溶融材料を注入した後に、熱溶融材料の圧力を制御するとよい。これによって、金型内に発生し成長しているボイドを熱溶融材料の外に出すことができる。
【0010】
また、本発明の熱溶融材料の圧力を制御する方法は、金型内へ熱溶融材料を注入する注入工程と、熱溶融材料の圧力を急激に減少する圧力開放工程と、熱溶融材料の圧力を徐々に増加させる圧力上昇工程とを含む。
本発明は圧力開放工程と圧力上昇工程とを含むことにより、製品中にボイドが発生することを防止できる。
熱溶融材料を金型へ注入するためのガンに設けられた圧力センサーによりガン内部の熱溶融材料の圧力を検知する検知工程を含んでいてもよい。
前記検知工程は、前記注入工程中に熱溶融材料の圧力が所定圧力以上になったことを検知する工程を含み、熱溶融材料の圧力が所定圧力以上になった後に、前記圧力開放工程が行われてもよい。
前記圧力開放工程は、熱溶融材料の圧力をほぼゼロで所定時間の間維持する工程を含んでいてもよい。
前記圧力上昇工程は、熱溶融材料の圧力を所定の傾きをもってほぼ直線状に上昇させてもよい。
前記圧力上昇工程は、熱溶融材料の圧力を階段状に多数の段階で上昇させてもよい。
前記圧力上昇工程は、熱溶融材料の圧力を第一の傾きをもった第一直線と第二の傾きをもった第二直線とに沿って上昇させてもよい。
【0011】
本発明による熱溶融材料の圧力を制御する装置は、吐出口と、前記吐出口を開閉するための弁組立体と、前記吐出口と連通する熱溶融材料室とを有し、金型内へ熱溶融材料を注入するためのガンモジュールと、熱溶融材料を熱溶融材料源から前記ガンモジュールの前記熱溶融材料室へ圧送するギアポンプと、前記熱溶融材料室内の熱溶融材料の圧力を制御するための圧力制御システムと、前記熱溶融材料室内の圧力を検知するために前記ガンモジュールに取り付けられた圧力センサーと、前記圧力センサーにより検知された圧力に基づいて前記圧力制御システムを制御する制御装置とを含む。
【0012】
本発明による熱可塑性樹脂で保護被覆された電気部品を生産する方法は、電気部品が配置されている金型のキャビティ内へガンから熱可塑性樹脂を注入する注入工程と、前記注入工程においてガン内の熱可塑性樹脂の圧力が第一圧力以上になったときに、熱可塑性樹脂の圧力を急激に減少させる圧力開放工程と、熱可塑性樹脂の圧力を第二圧力になるまで徐々に上昇させる圧力上昇工程と、熱可塑性樹脂の圧力を第二圧力に保持する保圧工程とを含む。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本発明による熱溶融材料を金型へ注入する方法を使用する熱溶融材料注入装置1の概略構成図である。
【0014】
(熱溶融材料供給源)
熱溶融材料供給源としてのタンク10は、熱溶融材料12を蓄えている。熱溶融材料12としては、ホットメルト又はポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂がある。タンク10内の熱溶融材料12は、ギアポンプ14によりフィルター16を介してガンモジュール40へ圧送される。エアバルブ22は、ガンモジュール40へ送られる熱溶融材料12の圧力を調整する。エアバルブ22は、入口室24、出口室26、シリンダ室28と、弁組立体30とからなる。入口室24と出口室26の間に熱溶融材料12が通る開口25が設けられている。弁組立体30は、弁棒30aと、弁棒30aの一端部に設けられ開口25を開閉するための弁体30bと、弁棒30aの他端部に設けられシリンダ室28内に配置されたピストン部30cとからなる。シリンダ室28内のエア圧力をP1とし、入口室24内の熱溶融材料の圧力をP2とし、ピストン部30cの面積をA1とし、開口25の面積をA2とする。入口室24の圧力P2が上昇して、P2×A2>P1×A1の条件を満たすと、弁組立体30は、熱溶融材料の圧力P2によってエアの圧力P1に抗して図1の右方向へ移動し、開口25を開く。これによって、熱溶融材料は、入口室24から開口25を通って出口室26へ流れ、出口室26から導管27を介してタンク10へ戻される。
【0015】
(ガンモジュール)
ガンモジュール40は、本体42とノズルチップ44とからなる。本体42は、熱溶融材料室46と、シリンダ室48と、弁組立体50とを有する。熱溶融材料室46は、タンク10からの熱溶融材料12を導管18を介して受け入れるための入口42aと連通している。さらに、熱溶融材料室46は、熱溶融材料を吐出するための吐出口42bと連通している。吐出口42bは、本体42の先端部に取り付けられたノズルチップ44に設けられたオリフィス45と連通している。熱溶融材料12は、オリフィス45を通して金型200へ注入される。シリンダ室48は、ソレノイドバルブ60を介してエア供給源70からのエアを受け入れるためのエア入口48aと連通している。弁組立体50は、弁棒50aと、弁棒50aの一端部に設けられ吐出口42bを開閉するための弁体50bと、弁棒50aの他端部に設けられシリンダ室48内に配置されたピストン部50cとからなる。バネ52は、シリンダ室48内に配置されてピストン部50cに係合している。バネ52は、弁体50bが吐出口42bを閉じるようにピストン部50cを付勢している。制御装置300は、ソレノイドバルブ60の開閉を制御する。ソレノイドバルブ60が開かれると、エア供給源70から加圧されたエアがエア入口48aを介してシリンダ室48に供給される。加圧されたエアは、ピストン部50cに作用して、バネ52の付勢力に抗して弁組立体50を図1の上方向に移動し、吐出口42bを開く。吐出口42bが開かれると、熱溶融材料室46から吐出口42bとオリフィス45を介して金型200へ熱溶融材料が注入される。
【0016】
(圧力制御システム)
ガン本体42の熱溶融材料室46内の熱溶融材料の圧力P3は、エアバルブ22のシリンダ室28内のエアの圧力P1を制御することにより変えることができる。熱溶融材料室46内の熱溶融材料の圧力P3は、熱溶融材料室46に設けられた圧力センサー500により計測される。エアバルブ22のシリンダ室28は、シャトル弁80と接続されている。シャトル弁80は、二つの入口80a及び80bを有する。シャトル弁80は、入口80aのエア圧力が入口80bのエア圧力よりも高いときには、入口80bを閉じて入口80aからのエアをシリンダ室28へ供給する。逆に、入口80bのエア圧力が入口80aのエア圧力よりも高いときには、入口80aを閉じて入口80bからのエアをシリンダ室28へ供給する。シャトル弁80の一方の入口80aは、初期注入時用電磁弁82と接続されている。初期注入時用電磁弁82は、注入圧力レギュレーター84を介してエア供給源70と接続されている。注入圧力レギュレーター84は、エア供給源70からのエアの圧力を所定の設定圧力に調整する。シャトル弁80の他方の入口80bは、電空変換レギュレーター86と接続されている。電空変換レギュレーター86は、エア供給源70と接続されている。電空変換レギュレーター86は、印加される電圧の大きさに応じてエア圧力を調整する。制御装置300は、初期注入時用電磁弁82と電空変換レギュレーター86を制御する。
【0017】
(金型)
本実施例においては、金型200は、上金型201と下金型202とからなる二枚構成金型として示されているが特にこれに限定するものではない。上金型201と下金型202とでキャビティ204を構成している。キャビティ204の中に、封止させるべき回路基板250が配置されている。上金型201には、ガンモジュール40のノズルチップ44から熱溶融材料を受けるためのゲート206、ゲート206と連通するスプルー208、スプルー208とキャビティ204を連通するランナー210が設けられている。
【0018】
(動作)
次に、熱溶融材料注入装置1の動作を説明する。
エア供給源70は、常時約5×105〜8×105Paの圧力のエアを供給している。注入圧力レギュレーター84は、エア供給源70からのエアの圧力を初期設定圧力Pinに調整する。初期設定圧力Pinは、約1×105〜2×105Paの範囲で設定されている。
【0019】
ガンモジュール40が移動機構(不図示)により金型200へ移動され、ノズルチップ44を金型200のゲート206に接続する。これによって、オリフィス45とゲート206が連通する。制御装置300は、初期注入時用電磁弁82にON信号を出して、初期注入時用電磁弁82を開く。これにより、初期設定圧力Pinのエアがシャトル弁80の入口80aからエアバルブ22のシリンダ室28へ供給される。シリンダ室28の圧力P1は、初期設定圧力Pinに保持されて、エアバルブ22の弁体30bは開口25を閉じている。
【0020】
エアバルブ22のピストン部30cの面積A1と開口25の面積A2との比は、約10:1に設定されているので、入口室24の圧力P2が初期設定圧力Pinの約10倍の初期注入圧力PIN以上になると、弁組立体30が図1の右方向に移動して弁体30bが開口25を開く。すなわち、開口25が開くための入口室24の初期注入圧力PINは、約10×105〜20×105Paの範囲で設定される。
【0021】
制御装置300からの信号に応じてギアポンプ14が駆動を開始すると、タンク10内の熱溶融材料12をフィルター16及び導管18を介してガンモジュール40へ圧送する。ガンモジュール40の弁体50bが吐出口42bを閉じているときは、熱溶融材料はガンモジュール40のオリフィス45から外へ吐出されない。したがって、熱溶融材料はフィルター16及び導管17を介してエアバルブ22の入口室24へ圧送され、入口室24内の圧力P2を上昇させる。入口室24内の圧力P2が初期注入圧力PINを超えると、開口25が開く。熱溶融材料は、入口室24から開口25を通って出口室26へ流れ、出口室26から導管27を介してタンク10へ戻される。このとき、導管18及び導管18と連通しているガンモジュール40の熱溶融材料室46の圧力P3も初期注入圧力PINに維持されている。
【0022】
図2は、ガンモジュール40の開閉、熱溶融材料の吐出流量、エアバルブ22のシリンダ室28内の圧力、及びガンモジュール40の熱溶融材料室46内の圧力の関係を示す図である。制御装置300は、ソレノイドバルブ60へON信号を出力する。これによって、エア供給源70からのエア圧力がガンモジュール40のシリンダ室48へかけられ、バネ52の付勢力に抗して弁組立体50を図1の上方向に移動し、吐出口42bを開く。吐出口42bが開かれると、熱溶融材料室46から吐出口42bとオリフィス45を介して金型200へ熱溶融材料が注入される。熱溶融材料は、初期注入圧力PINで注入される。しかし、図2に示すように、吐出口42bが開いたときに、熱溶融材料室46内の圧力が一旦低下し、徐々に圧力が回復する。この充填期間の圧力変動は、条件によってさまざまなパターンを取ることがあるが、本発明の圧力制御とは直接関係がない。初期注入圧力PINを上げることにより、あるいは、オリフィス45の径を大きくすることにより、熱溶融材料の注入時間を短くすることができる。しかし、熱溶融材料が低粘性材料の場合には、熱溶融材料の流量が多くなることにより、乱流が生じる。この乱流により、熱溶融材料が空気を巻き込み、熱溶融材料内にボイドを生じる。従来の技術では、このボイドにより製品不良が生じていた。したがって、従来の技術では、この初期注入圧力PIN又はオリフィス45の径は、熱溶融材料が乱流を生じない程度の流量になるように設定されなければならなかった。しかし、本発明による熱溶融材料の圧力制御方法により、ボイドを取り除くことができるので、本発明によれば、従来技術よりも初期注入圧力PINを上げることができ、あるいは、オリフィス45の径を大きくすることができる。
【0023】
吐出口42bが開いたことにより、ガンモジュール40の熱溶融材料室46内の圧力P3は、一端大きく低下する。そして、金型200のキャビティ204の中へ熱溶融材料が充填されるに連れて、熱溶融材料室46内の圧力P3が上昇する。なお、熱溶融材料室46内の圧力P3は、キャビティ204内の圧力と対応している。本実施例においては、オリフィス45の径を従来よりも大きくすることができるので、熱溶融材料室46内の圧力P3は、キャビティ204内の圧力とほぼ同じであると考えることができる。熱溶融材料室46内の熱溶融材料の圧力P3は、熱溶融材料室46に設けられた圧力センサー500により計測される。
【0024】
キャビティ204が熱溶融材料により満充填に近づくと、熱溶融材料室46内の圧力P3が一次設定圧力Pfに達する。一次設定圧力Pfは、初期注入圧力PINとほぼ同じ圧力に設定されている。しかし、一次設定圧力Pfは、初期注入圧力PINよりも低く設定しても高く設定してもよい。圧力センサー500が一次設定圧力Pfを検知すると、制御装置300は、初期注入時用電磁弁82を閉じ、エアバルブ22のシリンダ室28を大気に開放する。これによって、シリンダ室28の圧力P1は、ほぼゼロ(大気圧)になる。したがって、ギアポンプ14から圧送される熱溶融材料の圧力でエアシリンダ22の弁体30bが開口25を開き、熱溶融材料はタンク10へ戻される。したがって、ガンモジュール40の熱溶融材料室46内の圧力P3もほぼゼロ(大気圧)に近い圧力まで減圧される。
【0025】
圧力センサー500が一次設定圧力Pfを検知すると、制御装置300のタイマー310が所定時間T1の計時を開始する。所定時間T1は、熱溶融材料室46内の圧力P3をほぼゼロ(大気圧)に開放する期間、すなわち、金型200のキャビティ内の圧力を開放する期間である。本実施例においては、所定時間T1は、約0.5秒から1.0秒の範囲で設定されている。しかし、この所定時間T1は、前記数値範囲に限定されるものと解釈すべきではなく、金型の大きさ、金型の形状、熱溶融材料などにより適宜適切に設定されるものである。
【0026】
タイマー310が所定時間T1の計時を終了すると、制御装置300のシーケンサー320が電空変換レギュレーター86の制御を開始する。シーケンサー320は、電空変換レギュレーター86へ与える電圧を徐々に大きくすることにより、エアバルブ22のシリンダ室28の圧力P1を徐々に大きくする。これによって、ガンモジュール40の熱溶融材料室46の圧力P3が徐々に大きくなり、金型200内の熱溶融材料の圧力が徐々に大きくなる。電空変換レギュレーター86は、所定時間T2をかけて、ほぼゼロ圧力から二次設定圧力Phoへ圧力を昇圧する。本実施例において、所定時間T2は、1〜2秒の範囲で設定されており、二次設定圧力Phoは、約2×105Paに設定されている。所定時間T2及び二次設定圧力Phoは、金型の大きさ、形状、熱溶融材料により適宜選択されるものであって、前記数値に限定されるものと解釈してはならない。シリンダ室内の圧力P1の上昇に伴い、ガンモジュール40の熱溶融材料室内の圧力P3が上昇する。本実施例においては、図2に示すように、圧力を所定の傾きを持った直線に沿って上昇させている。シリンダ室内の圧力P1がPhoに達すると、熱溶融材料室内の圧力P3は、保圧力PHOに達する。保圧力PHOは、初期注入圧力PINよりも大きくても小さくてもよいが、保圧力PHOは、初期注入圧力PINと略同じ圧力に設定することができる。しかし、保圧力PHOが初期注入圧力PINよりも大きいほうが、熱溶融性材料と基板との接着性を向上し、熱溶融性材料が硬化したときのひけ防止に有効であると考えられる。
【0027】
電空変換レギュレーター86は、所定時間T3の間、シリンダ室内の圧力P1をPhoに保持する。所定期間T3は、約5〜10秒に設定されているが、特に、この範囲に限定されるものではない。この所定期間T3は、一般に保圧期間と呼ばれている。保圧期間の間に、充填後の冷却収縮を補うように熱溶融材料が補給され、成形精度を上げることができる。また、この保圧期間のうちに、熱溶融材料が冷えて硬化するようにすることもできる。
【0028】
制御装置300は、ソレノイドバルブ60へOFF信号を出力する。これによって、エア供給源70からのエア圧力が遮断されるため、ガンモジュール40のシリンダ室48内の圧力が下がり、バネ52の付勢力により弁組立体50が図1の下方向に移動し、吐出口42bを閉じる。その後、制御装置300は、電空変換レギュレーター86への電圧の印加を停止する。ガンモジュール40は、金型200から移動機構(不図示)により離される。そして上金型201を開き熱溶融材料で封止(被覆)された回路基板を取り出す。そして、連続して作業をする場合には、次に封止する回路基板を下金型202内に配置し、上金型201を閉じた後、ガンモジュール40を金型200に接続し、前記動作を繰り返す。なお、異なる製品の封止を行うときは新たな金型が送られてきて、ガンモジュール40を金型200に接続し、前記動作を繰り返す。
【0029】
ところで、熱溶融材料の充填期間において、熱溶融材料に巻き込まれた空気は気泡成長してボイドを形成していると思われる。そして、圧力センサー500が一次設定圧力Pfを検知したときに、金型内の圧力を急激に低減することにより、気泡が熱溶融材料の外へ出ると考えられる。その後、金型内の圧力を徐々に上げていくことにより、気泡が金型の合わせ面などを通して金型の外へ押し出されていくものと考えられる。
【0030】
(圧力上昇パターン)
圧力上昇期間における熱溶融材料の圧力の上昇パターンは、図2に示したような直線パターンに限定されるものではなく、例えば、図3に示すように、細かな階段状にして多数の段階で少しずつ圧力を徐々に上げてもよい。
また、図4に示すように、圧力上昇期間を二つに分けて、第一の期間T2aにおいて熱溶融材料からボイドが抜けるように圧力上昇率を低くし、ボイドが抜けた頃を見計らって、第二の期間T2bにおいて、圧力上昇率を大きくしてもよい。圧力上昇期間は三つ以上の期間に分けてもよい。
圧力上昇を徐々に行い本発明を達成できれば、他の圧力上昇パターンでもよい。圧力を徐々に上げることが重要である。
【0031】
(別の圧力制御システム)
別の圧力制御システムを図5に示す。図1に示した熱溶融材料注入装置においては、圧力を制御するために初期注入時用電磁弁82、注入圧力レギュレーター84、及び電空変換レギュレーター86を用いた。しかし、本発明による熱溶融材料を金型へ注入する方法は、図5に示すような別の圧力制御システムでも実施することができる。すなわち、一つの電空変換レギュレーター186でエアバルブ22を制御するものである。
図5において、図1と同様の構成には、同様の参照符号を付して説明を省略する。すなわち、制御装置300が電空変換レギュレーター186へ印加する電圧を制御することにより、エアバルブへ供給するエア圧力を制御する。これによって、熱溶融材料の圧力を制御する。
【0032】
本発明は電子回路基板の封止(被覆)だけでなく、ワイヤーハーネス、防水コネクター、集合コネクター或いは各種センサー等々の電気電子部品の封止、或いは充填に好適に用いることができる。また、本発明は低圧力による封止であるから電気部品や回路基板の電子部品に与えるダメージを最小に抑えることができる。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、熱溶融材料の圧力を制御することができ、特に有用になるものである。
本発明の方法によれば、熱溶融材料の圧力を制御することができるので、ノズルのオリフィス径の変更やニードル(弁体)隙間調整機構を備えたガンを用いニードルと弁座の開口面積の調整を行わなくても、ボイドの発生を防止することができる。ボイドの発生を防止できるので、オリフィス径を従来よりも大きくすることができる。したがって、ガン内部の圧力を検知することにより、金型内部の圧力を従来のものよりもより正確に検知することができる。これによって、ガンに設けられた圧力センサーの検知結果に基づいて熱溶融材料の圧力をより正確に制御することができる。
【0034】
従来技術においては、ノズルのオリフィス径を大きくして、従来必要とされている初期注入圧力で金型へ熱溶融材料を注入すると、熱溶融材料の流量が増えるために乱流が発生した。この乱流のために、金型に充填される熱溶融材料に多くのボイドが発生した。したがって、ノズルのオリフィス径を小さくして流量が増えないようにしていた。オリフィス径を小さくすると、ガン本体の熱溶融材料室内の熱溶融材料の背圧が上がり、熱溶融材料室内の圧力と金型のキャビティ内圧力との圧力差が大きくなる。したがって、熱溶融材料室内の圧力を圧力センサーにより検知しても、このような大きな圧力差のためにキャビティ内圧力を正確に検知することができなかった。
【0035】
本発明によれば、ボイドの発生を防止することができるので、ノズルのオリフィス径を大きくすることができる。したがって、熱溶融材料室内の圧力と金型のキャビティ内圧力との圧力差を小さくすることができる。ゆえに、熱溶融材料室内の圧力を圧力センサーにより検知することにより、キャビティ内圧力をより正確に検知することができるという効果がある。また、オリフィス径を大きくすることができることから、ノズル詰まりの発生頻度を低減することができるという効果がある。
【0036】
本発明は、ポリアミド樹脂のように加熱されたときに低い粘度を有する熱溶融材料に特に有効である。
【0037】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その特徴事項から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱溶融材料を金型へ注入する方法を使用する熱溶融材料注入装置1の概略構成図。
【図2】ガンモジュール40の開閉時期、熱溶融材料の吐出流量、エアバルブ22のシリンダ室28内の圧力、及びガンモジュール40の熱溶融材料室46内の圧力の関係を示す図。
【図3】熱溶融材料の圧力を段階的に少しずつ多数回にわたって徐々に上げていく圧力上昇パターンを示す図。
【図4】熱溶融材料の圧力を、傾きの異なる二つの圧力上昇直線線にしたがって徐々に上げていく圧力パターンを示す図。
【図5】本発明による別の実施例の熱溶融材料注入装置の概略構成図。
【符号の説明】
10 タンク
14 ギアポンプ
40 ガンモジュール
42b 吐出口
46 熱溶融材料室
50 弁組立体
200 金型
300 制御装置
500 圧力センサー
Claims (5)
- 低粘度熱可塑性樹脂で保護被覆された電気部品を生産する方法であって、
吐出口と、前記吐出口を開閉するための弁組立体と、前記吐出口と連通する熱溶融材料室とを有するガンモジュールの前記熱溶融材料室へ、低粘度熱可塑性樹脂を熱溶融材料供給源からギアポンプにより約10×105〜20×105Paの圧力で圧送する工程と、
前記弁組立体により前記吐出口を開く工程と、
低粘度熱可塑性樹脂を前記熱溶融材料室から前記吐出口を通して、電気部品が配置されている金型のキャビティ内へ注入する注入工程と、
前記注入工程において前記ガンモジュールに取り付けられた圧力センサーにより検知された前記熱溶融材料室内の低粘度熱可塑性樹脂の圧力が第一圧力以上になったときに、前記熱溶融材料室内の低粘度熱可塑性樹脂の圧力を制御するための圧力制御システムにより低粘度熱可塑性樹脂の圧力を急激に減少させる圧力開放工程と、
前記圧力センサーにより検知された圧力に基づいて前記圧力制御システムにより前記熱溶融材料室内の低粘度熱可塑性樹脂の圧力を第二圧力になるまで徐々に上昇させる圧力上昇工程と、
低粘度熱可塑性樹脂の圧力を第二圧力に保持する保圧工程と、
前記弁組立体により前記吐出口を閉じる工程と、
前記金型から低粘度熱可塑性樹脂で保護被覆された電気部品を取り出す工程とを含むことを特徴とする方法。 - 前記圧力開放工程は、低粘度熱可塑性樹脂の圧力をほぼゼロで所定時間の間維持する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記圧力上昇工程は、低粘度熱可塑性樹脂の圧力を所定の傾きをもってほぼ直線状に上昇させることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 前記圧力上昇工程は、低粘度熱可塑性樹脂の圧力を階段状に多数の段階で上昇させることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 前記圧力上昇工程は、低粘度熱可塑性樹脂の圧力を第一の傾きをもった第一直線と第二の傾きをもった第二直線とに沿って上昇させることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
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