JP4462579B2 - 大型2サイクルディーゼルエンジンの主軸受支え - Google Patents

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Description

本発明は、クロスヘッド型の大型2サイクルディーゼルエンジンの主軸受支え、および当該主軸受支えを製造するための方法に関する。
クロスヘッド型の大型2サイクルディーゼルエンジンは、例えば、大型遠洋航行船舶の推進、または3つの主ハウジング部品を含む発電所の主原動機として使用される。下から上に見て、これらの部品は、いわゆる台板、フレームボックス、およびシリンダフレームである。これらの3つハウジング部品は、互いにステーボルトによって保持される。クランク軸の主軸受は、台板に配される。
従来技術のエンジンの台板(bedplate)は、高さのある溶接された縦桁(longitudinal girder)、および鋳鋼製の軸受支えに溶接される横桁(cross girder)から構成される。すなわち、台板は、軸受支えを除いて、全て圧延金属プレート材料製の溶接構造物である。横桁は、2つのウェブプレート及びその間に溶接される鋳造の主軸受支えから構成される。
主軸受支えは、軸受合金を裏打ちした薄い下部軸受シェルを担持する。ステーボルトは、主軸受支えの上部において軸受およびクランク軸の反対側に配されるねじ付き孔内に据え付けられる。
近年の最大燃焼圧力の著しい増加は、クランク軸によって主軸受に加わる下向きの力、およびステーボルトによって主軸受支えの上部に加わる上向きの力の著しい増加をもたらしている。1つまたは2つで一組のステーボルトが、主軸受支えに取り付けられた主軸受の片側に配されることがある。
これらの高い力によるスライド型主軸受の油膜を許容可能な圧力レベルに到達させるために、軸受シェルの幅(クランク軸の縦軸方向の軸受シェルの延長部)を広くしなければならず、したがって、主軸受支えの幅または厚さを等しく大きくする必要がある。主軸受の反対側のステーボルトによって主軸受支えの上部に加わる大きな力は、主軸受支えを変形させる傾向がある。この変形は、許容可能なレベル以下に保持しなければならないが、これは、それに応じて、主軸受支えの材料の厚さを厚く設計しなければならないことを意味する。
主軸受の直下の幅広く厚い領域から下方に、主軸受支えが、台板の下部に延在するプレート状の部分を含むので、このプレート状の部分も鋳造によって製作される。
台板を互いに溶接した後に、特に主軸受の非常に精密なジオメトリに対する厳密な要件を満たすように、第一の機械加工行程が行われる。この機械加工の手順には、下部軸受シェルが配される主軸受支えの円弧状の表面(主軸受サドルと呼ぶ)と、主軸受支えの円弧状の表面に近接する側面と、主軸受支えの上側とを含む。主軸受キャップを載置してねじ立てを行った後に、主軸受支えおよび主軸受キャップの両方の第二の機械加工が行われる。この工程は、主軸受の予想位置において主軸受キャップおよび主軸受支えを通して穴あけを行い、最終直径および許容限度を得る。
大型2サイクルディーゼルエンジンの主軸受支えの寸法は非常に大きい。例えば、シリンダ内径が108cmのエンジンでは、主軸受支えは、高さが3m以上、幅が2m以上、最大厚さがほぼ0.5mになりうる。機械加工が行われる大型の門型フライス盤、いわゆるプラノミラーも同様に大型かつ高価である。エンジンの製造工場には、しばしばこれらの大型の門型フライス盤のうちの1つしかなく、したがって、他の大型のエンジン構成要素のミリング工程がしばしば製造におけるボトルネックとなる。
鋳造の構成要素は、混在物、不純物、およびエアポケットのような鋳造の欠陥を常に有することになる。主軸受支えへの溶接および機械加工の前後に、主軸受支えは検査される。この検査は視覚的なものであるが、超音波探傷検査および磁気探傷検査を伴う。鋳造の欠陥の量およびサイズが規定の基準内であれば、主軸受支えは許容される。しかし、特に軸受サドルの機械加工の後に、穴であるエアポケットが現れる場合がある。この場合、そのポケットを溶接によって充填し、その後、機械加工および熱処理を行う、いわゆる溶接修復が必要になる可能性がある。しかし、主軸受支えの修復部分(Heat affected Zones; HAZ: 熱影響域)は、熱処理の後であっても、主軸受支えの残りの部分よりも硬くなり、熱影響域の硬度が高くなることにより、主軸受支えに載置される比較的薄い軸受シェルに影響を及ぼす。クランク軸から及ぼされる非常に大きな圧力によって、この比較的薄い軸受シェルには、それが戻るときの完全な支持を必要とするので、上述の溶接修復がしばしば必要となる。これは、半径方向および軸方向の寸法が非常に大きいため、穴の領域が非常に大きい場合に必要である。一般的に、特に薄い軸受シェルを支持する表面のある、主軸受支えの材料の特性は可能な限り均一であることが望ましい。したがって、鋳造の欠陥の修復は望ましくないが、経済的な理由から、比較的鋳造の欠陥の少ない主軸受支えは廃棄されない。
本発明は、上述の欠点を解決、または少なくとも軽減する大型2サイクルディーゼルエンジンの主軸受支えを提供することを目的とする。
本目的は、台板と、前記台板に載置されたフレームボックスと、前記フレームボックスに載置されたシリンダフレームと、主軸受内に載置されたクランク軸と、を備えるクロスヘッド型の大型2サイクルディーゼルエンジンであって、前記台板は、複数の横桁を備え、前記横桁のうちの少なくともいくつかは、1つ以上のウェブプレートと、前記1つ以上のウェブプレートに溶接によって結合される主軸受支えとを備え、前記主軸受支えは、下部軸受シェルを担持するための円弧状の支持面を備える圧延鋼スラブまたはプレートを含む、クロスヘッド型の大型2サイクルディーゼルエンジンを提供することによって、請求項1に基づいて達成される。
特に、従来の主軸受支えのデザインには数多くの湾曲面が存在することから、従来技術においては、厚みのある主軸受支えは、鋳造でしか製造することができないといった先入観がある。しかし、本発明の発明者らは、厚みのある軸受支えを圧延鋼材のスラブまたはプレートから製造することができるという見識に達した。しばしば鋳鋼製品に存在する混在物、エアポケット、および他の不純物の量は、圧延鋼を使用することによって大幅に減じられる。したがって、主軸受支えに行う必要のある修復の量が著しく減じられる。主軸受支えは、修復後にフライス盤によって機械加工しなければならないため、ボトルネックをもたらす大型プラノミラー上で主軸受支えが費やす時間が短縮される。混在物、エアポケット、および他の不純物の量を削減することで、主軸受支えの強度特性に関しても有効な効果がある。これは、回転および振動によって大きな負荷を受ける主軸受の軸受シェルが主軸受支え上に載置されるので、特に重要である。プレートの圧延構造によって、見込まれるエアポケットは、軸方向の長さが短くなり、加工後に穴が現れることがあるが、その領域は非常に小さいので溶接による充填を必要としない。鋭いエッジのスムージングだけしか必要としない。
鋳造軸受支えの厚さは変動する。しかし、薄い軸受シェルの完全な支持を達成するために、主軸受支えの特定の幅を定める必要がある。したがって、軸方向の厚さがオーバーサイズである主軸受支えを鋳造した後に、特定の幅に機械加工する必要がある。これは、円弧状の支持面に近接する前面および背面(軸方向の接面)を大型のフライス盤で機械加工することによって行われる。鋼板またはスラブの厚さは非常に安定しているので、圧延鋼プレートまたはスラブ材に形成された主軸受支えの前面および側面が不要となり、それによって、ボトルネックをもたらす大型プラノミラー上で主軸受支えが費やさなければならない時間の量がさらに減じられる。軸受シェルの側面および軸受サドルの側面の位置が完全に合っていなくても、軸受の性能には影響を及ぼさない。実際には、シェルは、軸受サドルの側面から、シェルのほぼ半分の厚さの距離分突出させることができる。この状況は、鋼製プレートの厚さは鋳造構造の厚さよりも制御しやすいという事実と相まって、鋼製プレートの軸受支えの前面および背面の機械加工を回避することができる理由を説明している。
主軸受支えと関連する下部シェルの軸方向の位置は、ピン用の2つの位置決め穴を形成する、台板の機械加工工程中に実現される。ピンは、下部シェルを載置する前に主軸受支え内に圧入される。下部シェルは、上述のピンを嵌合する溝を有する。
主軸受支えは、単一の一枚スラブまたはプレートから機械加工するができるので、極めて頑丈な主軸受支えが得られる。
スラブまたはプレートは、その底部に前記円弧状の支持面が配される凹部を備える上側と、互いに相対して配される前面および背面と、1つ以上のウェブプレートに結合される1つ以上の取付け面とを有することが好ましい。
1つ以上の取付け面は、直線的に延在させることが可能であり、軸受支えの製造を容易にする。
前面および背面の少なくとも周縁部分は、1つ以上の取付け部に向かってテーパー状を呈することが好ましい。テーパー部分は、主軸受支えから台板へスムーズに力が移行するようにし、主軸受支えとウェブプレートとの間の立ち上がり部での切り欠きファクタを許容可能なレベルに保持する。
前面および背面の周縁部分以外の部分は、実質的に平面状とすることができ、前面および背面の平面状部分と上記テーパー部分との間に急激な立ち上がり部を備えることができる。急激な立ち上がり部は、スムーズで丸みのある立ち上がり部よりも製造が容易である。
スラブまたはプレートとウェブプレートとの間の溶接は、K−またはX−溶接であることが好ましい。ウェブプレートとスラブまたはプレートとの間の溶接は、ウェブプレートの厚さ全体にわたって鋼材が溶融するように行われることが好ましい。
上記取付け面のうちの2つを鉛直方向的に延在させることが可能であり、また、更なる2つの取付け面を2つの垂直に延在する取付け面の下端から互いの方へ斜め下方に延在させることが可能である。したがって、スラブまたはプレートの輪郭は、比較的単純で、製造が容易である。結果的に、主軸受支えに結合されるウェブプレートの輪郭も製造が容易になり、主軸受支えの輪郭のウェブプレートの輪郭へ適合が容易である。上記斜めに延在する取付け側面は、互いに接触させることが可能である。
また、上述の目的は、請求項9に記載のクロスヘッド型の大型2サイクルディーゼルエンジン台板の横桁を製造するための方法であって、圧延鋼スラブまたはプレートを準備するステップと、前記エンジンの主軸受の下部シェルを担持するための前記スラブまたはプレートに、円弧状の支持面を機械加工するステップと、1つ以上のウェブプレートを準備するステップと、前記スラブまたはプレートを前記1つ以上のウェブプレートに溶接によって結合するステップと、を含む方法を提供することによって達成される。
いかなる鋳造要素も無い横桁を製造することによって、費用のかかる鋳型を排除することができる。さらに、鋳型の形成および新しく鋳造した主軸受支えの冷却に費やす時間を回避することができるので、横桁の製造に必要な時間が短縮される。また、溶接鋼板を主軸受支えに使用することによって、短納期で、しかも主軸受支えの幾何学的変更を迅速に具現化する柔軟な製造工程とすることが可能である。
上記方法は、上記プレートまたはスラブの輪郭の少なくとも一部を、ガス切断または砥粒噴射加工によって切断するステップを含むことも可能である。これらの2種類の機械加工工程のどちらも比較的安価で早いので、エンジンの製造コストがさらに下げられる。
方法は、ウェブプレートに結合されるスラブまたはプレートの周縁領域内にテーパー部分を形成するステップを含むことが好ましい。
テーパー部分の輪郭は、ガス切断または砥粒噴射加工によって形成することが可能である。
方法は、シェルの幅に対応する厚さに圧延された鋼スラブまたはプレートを準備するステップを含むことが可能である。したがって、下部シェルを担持する軸受サドルに近接する側面を機械加工する必要が無い。これは、大型プラノミラー上における1つの製造ステップを省くことができるが、従来技術では、下部時軸受シェルを支持する円弧状の表面の適切な幅が得られるように、鋳造の主軸受支えを精密加工する必要がある。
本発明による大型2サイクルディーゼルエンジンの更なる目的、機能、利点、および特性、および大型2サイクルディーゼルエンジンの台板のための横桁の製造方法は、以下の詳細な説明によって明らかになろう。
好適な実施形態の詳細な説明
本明細書の以下の詳細部分において、図面に示される例示的な実施態様を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
図1および2は、それぞれ、本発明の好適な一実施態様によるエンジン1の、断面図および(1つのシリンダの)縦断面図である。エンジン1は、クロスヘッド型の単流低速2サイクルクロスヘッドディーゼルエンジンであり、船舶の推進システムまたは発電所の主原動機とすることが可能である。これらのエンジンは、一般に直列で3乃至14のシリンダを有する。エンジン1は、クランク軸3のための主軸受を備える台板2から組み立てられる。
クランク軸3は、半組立型である。半組立型とは、焼嵌め結合によって主ジャーナルと結合される、鍛鋼または鋳鋼スローで形成されるものである。
台板2は、単一の部品で形成するか、または生産設備に従った好適なサイズの部分に分割することができる。台板は、側壁と、軸受支えを備える溶接横桁とで構成される。横桁(cross girder)は、従来技術において、"横断桁"(transverse girder)とも称される。油受58は、台板2の底部に溶接され、強制潤滑および冷却油システムからの戻り油を回収する。
連接棒8は、クロスヘッド軸受22にクランク軸3を結合する。クロスヘッド軸受22は、垂直案内面23との間を案内される。
溶接設計のA形フレームボックス4は、台板2に載置される。フレームボックス4は、溶接設計である。排気側には各シリンダのための逃し弁を備え、カム軸側には各シリンダのための大型ヒンジ付ドアを備える。クロスヘッド案内面23は、フレームボックス4内に一体化される。
シリンダフレーム5は、フレームボックス4の上部に載置される。ステーボルト29は、台板2と、フレームボックス4と、シリンダフレーム5とを結合し、その構造を統一的に保持する。ステーボルト29は、油圧ジャッキで締め付けられる。
シリンダフレーム5は、1つ以上の部分に分けられて鋳造され、最終的には一体型カム軸筐体25とともに鋳造されるか、または溶接設計である。本実施態様の一変形例(図示せず)によれば、排気弁の作動は電子的に制御され、クランク軸28もカム軸筐体25も存在しない。
シリンダフレーム5は、掃気空間を浄化するためのアクセスカバーを備える。このアクセスカバーによって、カム軸側から掃気口およびピストンリングを検査することができる。シリンダフレーム5は、シリンダライナ6と共に掃気空間を形成する。掃気受9は、その開口側とともにシリンダフレーム5にボルトで固定される。シリンダフレームの底部にはピストン棒のスタッフィングボックスがあり、これは、掃気のためのシールリングと、油スクレーパリングとを備え、排気物がフレームボックス4および台板2の空間に侵入しないようにして、この空間に存在する全ての軸受を保護する。
ピストン13は、ピストンクラウンと、ピストンスカートとを含む。ピストンクラウンは、耐熱鋼製であり、溝の上面および下面の両方に硬質クロムをメッキした、4つの環状溝を有する。
ピストン棒14は、4本のネジでクロスヘッド22に結合される。ピストン棒14は、冷却油パイプと連動してピストン13に対する冷却油の出入口を形成する、2つの同軸孔(図では不可視)を有する。
シリンダライナ6は、シリンダフレーム5によって担持される。シリンダライナ6は、合金鋳鉄製であり、低位のフランジによってシリンダフレーム5内に懸架される。ライナーの最上部は、鋳鉄製の冷却ジャケットで囲まれる。シリンダライナ6は、シリンダ潤滑用のドリル孔(図示せず)を有する。
シリンダは単流型であり、エアボックス内に位置する掃気口7を有し、エアボックスには、掃気受9(図1)からターボチャージャ10(図1)で加圧された掃気が供給される。
エンジンには、4乃至9シリンダのエンジンに対してはエンジンの後端部に、10以上のシリンダのエンジンに対しては排気側に配される、1つ以上のターボチャージャ10が取り付けられる。
ターボチャージャ10への給気は、ターボチャージャの給気消音器(図示せず)を介して、エンジンルームから直接行われる。空気は、ターボチャージャ10から、給気パイプ(図示せず)、空気冷却器(図示せず)、および掃気受9を経て、シリンダライナ6の掃気口7に導かれる。
エンジンは、電動の掃気ブロワー(図示せず)を備える。ブロワーの吸引側は、空気冷却器の後ろの掃気空間に結合される。空気冷却器と掃気受との間には、補助ブロワーが空気を供給するときに自動的に閉じる、逆止め弁(図示せず)が取り付けられる。補助ブロワーは、低負荷および中負荷状態でのターボチャージャ圧縮機を支援する。
排気弁11は、シリンダカバー12内のシリンダ上部中央に載置される。膨張行程の終わりに、エンジンのピストン13が掃気口7を過ぎて下行する前に排気弁11が開くことによって、ピストン13の上の燃焼室15内の燃焼ガスが、排気受17に開口する排気流路16を通って流出し、燃焼室15内の圧力が軽減される。排気弁11は、ピストン13が上向きに動く間に再び閉じる。排気弁11は、油圧で作動する。
図3は、クランク軸3を備える台板2をより詳細に示す図である。台板2は、側壁52の間に延在し、溶接によって後の方に結合される複数の横桁50を含む。下部フランジ51は、横桁50の下部、横桁50、および側壁52に溶接される。2つの上部フランジ56は、台板2の上部の各側面に沿って延在し、溶接によって側壁52および横桁50に結合される。油受58は、下部フランジ51に溶接される。
図4は、横桁をより詳細に示す図である。図5、5A、および5Bは、主軸受支えをさらに詳細に示す図である(図5Aおよび5Bは、軸受キャップを図示せず)。横桁50は、2つのウェブプレート60と、主軸受支え62とを備える。2つのウェブプレート60の外側は側壁52に溶接され、2つのウェブプレート60の内側の一部は溶接線61に沿って互いに溶接され、2つのウェブプレート60の内側の他の部分は、垂直取付け面68および傾斜取付け面69において主軸受支え62に溶接される。主軸受支え62および/またはウェブプレート60の垂直および傾斜取付け面68および69は、K−またはX−溶接が可能なように尖らされ、ウェブプレート60の鋼材がウェブプレートの厚さ全体にわたって溶融して、高品質かつ信頼性のある溶接接合を確実にする。
主軸受支え62は、上向きの凹部を備え、その底部には、下部軸受シェル86が配される円弧状の支持面を備える(下部軸受シェルは、薄いシェル型で、軸受合金がその上に被着された鋼板によって形成されることが好ましい)。上向きの凹部は、主軸受支えの上側64へ開口する。ステーボルト29を受けるねじ付き穴は、上側64の上部開口凹部の両側に設けられる。上向きの凹部は、軸受キャップ80を導くための案内面67も備える。軸受キャップ80は、上部軸受シェル87のための円弧状の支持面を備え、この支持面も薄いシェル型であり、軸受合金がその上に被着された鋼板によって形成される。軸受キャップ80は、主軸受支え62の本体に備えられるねじ付き穴に据え付けられた、油圧で張力をかけたボルト82によって適所に保持される。
応力除去円弧66は、支持面67から上向きの凹部の下部への立ち上がり部に設けられる。
主軸受支え62は、前面71と、相対して配される後面71とを備えるが、用語"前部"および"後部"は随意的に使用している。実質的に平面であることが好ましい前面および後面71の周縁部は、より狭幅の結合面68および69に向かってテーパー状を呈する。これらのテーパー部分73は、比較的厚い主軸受支え62から比較的薄いウェブプレート60へ、比較的スムーズに力を伝達する役目をする。実質的により平坦な前部および後面71と、テーパー部分73との間には急激な立ち上がり部が存在する。なお、主軸受支え62は、テーパー部分を持たずに実現される好適な実施態様の変形例(図示せず)に基づくことも可能であり、その場合、最大負荷レベルをわずかに減じる必要があることに留意されたい。
主軸受支え62は、圧延鋼材(好ましくは、高品位鋼)の単一の一枚スラブまたはプレートから形成される。縦取付け側面68、傾斜取付け面69、およびテーパー部分73によって画定されるように、主軸受支えの輪郭は、ガス切断または砥粒噴射加工によって切断することによって得られる。これらの方法によって得られる切断部の表面品質および寸法精度はあまり高くないが、上述の正面および/または側面には十分なものである。上側64および上方へ開口する凹部もガス切断または砥粒噴射加工によって切断することが可能であり、その後フライス盤で機械加工して、主軸受支え62のこれらの表面に必要な精密なジオメトリを得る。
主軸受支え62からのスラブまたはプレートの厚さは、下部軸受シェル86の幅"W"と同じか、またはわずかに狭くなるように製造される。したがって、円弧状の支持面または主軸受サドルの幅は、側面71の機械加工を必要とせずに補正される(幅は、クランク軸/エンジンの長手方向に関係する要素の延長部である)。
図6および6Aは、本発明による主軸受支え62の別の実施態様を示す図である。本実施態様では、3つのテーパー部分が、垂直部分から傾斜部分への急激な立ち上がり部の無い、1つの湾曲した"U"型の面に変形される。さらに、テーパー部分は、図6Aの拡大詳細図において半径R1、R2、およびR3で示されるように、第二の方向に湾曲する。いずれの湾曲も、主軸受支え62の角度または厚さの立ち上がり部での切り欠き効果を減じる役目をする。
図6Aは、ツール110(破線によって示す)を示す図であり、これを使用して、厚さのより薄いウェブプレート60への主軸受支えの厚さのスムーズな移行部を形成することができる。このツールは、3つの曲部R1、R2、およびR3と、所定の角度α、β、γ、およびξで配される、これらの曲部を繋ぐ直線部の移行領域とを有する、ミラーカッターである。テーパー部分73は、主軸受支えの上部に直径D1の湾曲部を備え、台板2のテーパー部分73と上部フランジ56との間のスムーズな遷移を実現する。
図7および7Aは、本発明による主軸受支え62の別の実施態様を示す図である。本実施態様は、テーパー部分73の湾曲部を形成するために使用するミラーカッターが別の形状を有することを除いて、図6および6Aの実施態様と実質的に同一である。本ツールによって、半径R1およびR2は、角度αおよびβで配される、直線接続移行部によって実現することができる。さらに、テーパー部分73の上部湾曲部の直径D1は、より大きくなるように選択されている。
図8は、2つの変形例における本発明による主軸受支え62のさらに別の実施態様を示す図である(垂直の対称線の左側に一方の変形例を示し、垂直の対称線の右側に他方の変形例を示す。これら2つの変形例は、テーパー部分73のジオメトリのみが異なる)。本実施態様は、2つの垂直結合面68および2つの傾斜結合面69に対向する、湾曲した"U"型結合面68'が1つだけ存在することを除いて、図6および7に示された実施態様と実質的に同一である。結合面68'の湾曲部は、主軸受支え62からウェブプレート60への立ち上がり部における切り欠き効果を減じ、したがって、より高い負荷が可能になり、主軸受支え62およびウェブプレート60の結合面を正確に適合させるという、製造の困難さが減じられる。結合面68'とウェブプレート60との間の結合は、K−またはX−溶接91によって実現される。本実施態様は、製造工程中の持ち上げおよび運搬のための横桁の係合に使用される、搬送穴94も示す。
上述の実施態様では、取付け面68および69は、直線に沿って延在する。すなわち、取付け側面は実質的に平面である。この特徴は、所要のジオメトリの主軸受支え62およびウェブプレート60の側面の製造の具現化を非常に容易にする。なお、図8に示される本実施態様の別の態様によれば、例えば切り欠きファクタを減じるように取付け面を湾曲させている。
さらに、上述の好適な実施態様に示された主軸受支えは、2つの傾斜した下部取付け面69を備える。この好適な実施態様(図示せず)の変形例に拠れば、主軸受支えは、1つの単一の直線または湾曲した下部取付け面を備えることが可能である。別の変形例(図示せず)によれば、主軸受支えは、2つの垂直結合面と、主軸受支えの下部の1つの水平結合面と、2つの垂直結合面を水平面に結合する2つの傾斜結合面とを有することが可能である。
請求項で用いられる用語"〜を備える"は、他の要素またはステップを除外するものではない。請求項で用いられる用語のうち、"複数の"と記されていないものは、複数を除外するものではない。
請求項において使用される参照符号は、範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
本発明は、例証のために詳述したが、当該の詳細は単にその目的のためのものであり、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく変更できると理解されたい。
本発明による、エンジンの断面図である。 図1に示されるエンジンの1つのシリンダ部分の縦断面図である。 図1に示されるエンジンの台板の一部分の斜視図である。 図3に示される台板の横桁の側面図である。 図4に示される横桁内の主軸受支えの詳細な側面図である。 図5の線A−A'で切断した断面図である。 図5の線B−B'で切断した断面図である。 本発明による主軸受支えの別の実施態様の長側面の側面図である。 図6の主軸受支えの短側面の側面図である。 本発明による主軸受支えの別の実施態様の長側面の側面図である。 図6の主軸受支えの短側面の側面図である。 本発明の主軸受支えのさらに別の実施態様の長側面の側面図である。

Claims (14)

  1. 台板と、前記台板に載置されたフレームボックスと、前記フレームボックスに載置されたシリンダフレームと、主軸受内に載置されたクランク軸と、を備えるクロスヘッド型の大型2サイクルディーゼルエンジンであって、前記台板は複数の横桁を備え、前記横桁のうちの少なくともいくつかは、1つ以上のウェブプレートと、前記1つ以上のウェブプレートに溶接によって結合される主軸受支えとを備え、前記主軸受支えは、下部軸受シェルを担持するための円弧状の支持面を備える圧延鋼スラブまたはプレートを含む、クロスヘッド型の大型2サイクルディーゼルエンジン。
  2. 前記主軸受支えは、単一の一枚スラブまたはプレートから機械加工される、請求項1に記載のエンジン。
  3. 前記スラブまたはプレートは、その底部に前記円弧状の支持面が配される凹部を備える上側と、互いに相対して配される前面および背面と、前記1つ以上のウェブプレートに結合される1つ以上の取付け面とを備える、請求項1または2に記載のエンジン。
  4. 前記1つ以上の取付け面は直線的に延在する、請求項に記載のエンジン。
  5. 前記前面および背面の少なくとも周縁部分は、前記1つ以上の取付け部に向かってテーパー状を呈する、請求項3又は4に記載のエンジン。
  6. 前記前面および背面における周縁部分以外の部分は平面状であり、前記前面および背面の平面状部分と前記テーパー部分との間に急激な移行部が存在する、請求項に記載のエンジン。
  7. 前記スラブまたはプレートと前記ウェブプレートとの間の溶接は、K−またはX−溶接である、請求項1乃至に記載のエンジン。
  8. 前記取付け面のうちの2つは、鉛直方向的に延在し、更なる2つの取付け面が、それぞれ前記2つの垂直に延在する取付け面の下端から互いの方へ斜め下方に延在する、請求項3乃至7に記載のエンジン。
  9. 前記斜めに延在する取付け面は、互いに接触する、請求項に記載のエンジン。
  10. クロスヘッド型の大型2サイクルディーゼルエンジン台板の横桁を製造するための方法であって、圧延鋼のスラブまたはプレートを準備するステップと、前記エンジンの主軸受の下部シェルを担持するための前記スラブまたはプレートに、円弧状の支持面を機械加工するステップと、1つ以上のウェブプレートを準備するステップと、前記スラブまたはプレートを前記1つ以上のウェブプレートに溶接によって結合するステップと、を含む方法。
  11. 前記プレートまたはスラブの輪郭の少なくとも一部を、ガス切断または砥粒噴射加工によって切断するステップを含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記ウェブプレートに結合される前記スラブまたはプレートの周縁領域内にテーパー部分を形成するステップを含む、請求項10に記載の方法。
  13. 前記テーパー部分の輪郭は、ガス切断または砥粒噴射加工によって形成される、請求項12に記載の方法。
  14. 前記下部シェルの幅に対応する厚さに圧延された前記鋼スラブまたはプレートを準備するステップを含む、請求項10乃至12に記載の方法。
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