JP4460808B2 - 電流密度ベクトル推定装置および電気導電率推定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、物体、物質・材料の非破壊的物性・特性評価・検査技法、生物の非侵襲的診断・検査技法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術としては、磁場ベクトル成分の内、測定対象物表面上において測定される垂直成分からそれ相応の数値解析(たとえば、最小ノルムミニマム法)を行うことにより電流密度ベクトル空間分布を推定するものが多く(従来の技術1, 図11(a):磁場検出器のコイル部の模式図参照)、その他、二例ではあるが測定対象物表面上において接線成分から推定するものがあり、フーリエ解析法および最小ノルムミニマム法に基づくものがある(従来の技術2,図11(b):磁場検出器のセンサー部の模式図参照)。
【0003】
なお、従来の技術1に含まれるものとして、磁場の測定精度を向上させるべく、1次元あるいは2次元アレイ型SQUID計を実現した上で開口面合成を行う技術がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術1および2では、3次元関心空間内の3次元電流密度ベクトル分布を一意に決定することは数理的に不可能であり、数値解析的に安定化を施したとしても、偽電流密度ベクトルデータが得られるに過ぎず、導電率空間分布を推定できるだけの精度は得られなかった。
【0005】
但し、測定対象物が平板や薄膜などの2次元物体として近似的に扱えるものであれば、従来の技術2によりその面内の2次元電流密度ベクトル空間分布を決定することは可能であるが、フーリエ解析法による場合は有限な2次元関心領域内の電流分布の空間的な周期性を仮定する必要があり、その関心領域の境界付近での推定に問題が生じる。
【0006】
特に、その2次元物体が絶縁物に囲まれており(たとえば、空気中)、2次元物体の全体を関心領域とした場合に、その境界付近における推定は不可能となる。
【0007】
本発明は、基本的には、試料が空間中に任意の状態で存在した場合、時に1次元、2次元あるいは3次元開口面合成を行った上で、3次元磁場ベクトルまたは2次元磁場ベクトルの3次元分布または2次元分布を測定し、任意に設定した有限の大きさの3次元関心空間内または2次元関心領域(3次元物体を明に扱うため、3次元関心空間内と2次元平面が交差した領域、および、2次元物体内に設定する関心領域を総称するものとして使用する)内の3次元電流密度ベクトルまたは2次元電流密度ベクトルまたは3次元電流密度ベクトルの2成分を一意に決定でき、3次元空間内または2次元関心領域内の導電率空間分布の推定を実現する電流密度ベクトル推定装置および電気導電率推定装置を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる電流密度ベクトル推定装置は、計測対象物の3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の電流密度ベクトル分布を推定する電流密度ベクトル推定装置において、前記計測対象物を設置する試料設置台と、磁場ベクトルを検出する磁場ベクトル検出手段と、前記磁場ベクトル検出手段が前記計測対象物を計測するように設置されるハウジングと、前記計測対象物の磁場ベクトルの分布を測定するために前記試料設置台と前記ハウジングの、少なくともどちらか一方に接続する上下左右・方向を変えることのできる走査手段と、前記磁場ベクトル検出手段を駆動し、前記計測対象を計測する前記磁場ベクトル検出手段の出力を調整する調整手段と、前記調整手段から出力される計測結果を記録するデータ記録手段と、計測した磁場ベクトルデータから電流密度ベクトル分布を推定するデータ処理手段と、前記計測対象物と前記磁場ベクトル検出手段との距離を調整する距離調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる電流密度ベクトル推定装置は、前記計測対象物の前記3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の電流密度ベクトル分布を得るために計測した前記磁場ベクトル検出手段の出力、あるいは前記調整手段の出力を、その測定の位置を示す位置データと関連付け、前記データ記録手段に記録することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる電流密度ベクトル推定装置は、さらに、必要に応じて、前記計測対象物の前記3次元関心空間の外部からその空間内またはその中の2次元関心領域内に、少なくとも一つ以上の電流場を生じせしめることができるように、電流を直接的に流せる、あるいは、磁界を印加することにより渦電流を誘起できる電流場発生手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる電流密度ベクトル推定装置は、前記磁気ベクトル検出手段は、超伝導量子干渉素子(SQUID)、ホール素子、ジョセフソン接合素子、磁気インピーダンス素子、GMR、CMR、SETなどを使用することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる電流密度ベクトル推定装置は、前記磁場ベクトル検出手段として、磁気、静磁界または電磁波検出素子を複数個使用し、検出方向を直交する2方向または3方向として、時に開口面合成を行い、磁場ベクトルデータを収集することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる電流密度ベクトル推定装置は、前記磁場ベクトル検出手段として、電磁波検出素子を複数個使用し、検出方向を1方向、直交する2方向、あるいは3方向とし、かつ、1次元、2次元、または3次元アレイを構成して、時に開口面合成を行い、磁場データの収集を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる電流密度ベクトル推定装置は、前記磁場ベクトル検出手段を用いて2次元磁場ベクトルの2次元空間分布を測定し、測定されたこの磁場ベクトルデータに、所定の数値解析を施すことによって、3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の2次元電流密度ベクトル分布を推定することを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる電流密度ベクトル推定装置は、前記磁場ベクトル検出器を用いて3次元、または2次元磁場ベクトルの3次元空間分布を測定し、測定されたこの磁場ベクトルデータに数値解析を施すことによって、3次元関心空間内の3次元あるいは2次元電流密度ベクトルの空間分布を推定することを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる電流密度ベクトル推定装置は、前記磁場ベクトル検出器を用いて3次元、または2次元磁場ベクトルの3次元空間分布を測定し、測定されたこの磁場ベクトルデータに数値解析を施すことによって、3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の3次元あるいは2次元電流密度ベクトルの空間分布を推定することを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる電気導電率推定装置は、計測対象物の3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の電気導電率分布を推定するための電気導電率推定装置において、電流密度ベクトル推定装置において、前記計測対象物を設置する試料設置台と、磁場ベクトルを検出する磁場ベクトル検出手段と、前記磁場ベクトル検出手段が前記計測対象物を計測するように設置されるハウジングと、前記計測対象物の磁場ベクトルの分布を測定するために前記試料設置台と前記ハウジングの、少なくともどちらか一方に接続する上下左右・方向を変えることのできる走査手段と、前記磁場ベクトル検出手段を駆動し、前記計測対象を計測する前記磁場ベクトル検出手段の出力を調整する調整手段と、前記調整手段から出力される計測結果を記録するデータ記録手段と、計測した磁場ベクトルデータから電流密度ベクトル分布および電気導電率分布を推定するデータ処理手段と、前記計測対象物と前記磁場ベクトル検出手段との距離を調整する距離調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる電気導電率推定装置は、前記計測対象物の前記3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の電流密度ベクトル分布を得るために計測した前記磁場ベクトル検出手段の出力、あるいは前記調整手段の出力を、その測定の位置を示す位置データと関連付け、前記データ記録手段に記録することを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる電気導電率推定装置は、さらに、必要に応じて、前記計測対象物の前記3次元関心空間の外部からその空間内またはその中の2次元関心領域内に、少なくとも一つ以上の電流場を生じせしめることができるように、電流を直接的に流せる、あるいは、磁界を印加することにより渦電流を誘起できる電流場発生手段を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる電気導電率推定装置は、前記磁場ベクトル検出手段は、超伝導量子干渉素子(SQUID)、ホール素子、ジョセフソン接合素子、磁気インピーダンス素子、GMR、CMR、SETなどを使用することを特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかる電気導電率推定装置は、前記磁場ベクトル検出手段として、磁気、静磁界または電磁波検出素子を複数個使用し、検出方向を直交する2方向または3方向として、時に開口面合成を行い、磁場ベクトルデータを収集することを特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかる電気導電率推定装置は、前記磁場ベクトル検出手段として、磁気、静磁界または電磁波検出素子を複数個使用し、検出方向を1方向、直交する2方向、あるいは3方向とし、かつ、1次元、2次元、または3次元アレイを構成して、時に開口面合成を行い、磁場データの収集を行うことを特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかる電気導電率推定装置は、測定された電流密度ベクトルデータから、所定の数値解析によって3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の導電率分布を推定することを特徴とする。
【0024】
また、本発明にかかる電気導電率推定装置は、計測された電流密度ベクトルデータから3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の導電率分布を推定する場合に、所定の一階の空間偏微分方程式中の導電率分布あるいは電流密度ベクトル分布に関して離散近似あるいは有限要素近似(変分法またはガラ−キン法を使用)を適用することに基づいた所定の数値解法を使用することを特徴とする。
【0025】
また、本発明にかかる電気導電率推定装置は、計測された電流密度ベクトルデータから3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の導電率分布を推定する場合に、電流密度ベクトルおよび導電率にて表されるエネルギ密度の3次元関心空間または2次元関心領域内にわたる積分の二乗として定義される導電率分布に関する汎関数を導出し、汎関数中に表される導電率分布および電流密度ベクトルに関して離散近似あるいは有限要素近似を適用することに基づいた所定の数値解法を使用することを特徴とする。
【0026】
また、本発明にかかる電気導電率推定装置は、測定結果としての磁場ベクトル分布、電流密度分布、電流密度発散・勾配分布、導電率分布、導電率勾配分布、これらの経時的絶対変化、および経時的相対変化などを画像表示する表示手段を設けたことを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる電流密度ベクトル推定装置および電気導電率推定装置の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0028】
本実施の形態では、磁気、静磁界、または、電磁波検出素子、および、その1次元、2次元、または、3次元アレイ型素子群を使用した磁場ベクトル検出器などの非接触検出器を用いて、必要に応じて参照物を未知試料にあてがうことにより設定できる3次元関心空間または2次元関心領域内の参照領域内にて与えられる導電率参照値(たとえば、真値、単位値など)に対する相対的な導電率分布を安定的に再構成できるように、適宜、磁場ベクトルまたは磁場ベクトル成分を適切に測定し、考案した数値解析法を用いて必要となる電流密度ベクトル分布の高精度な推定を可能として、絶対的な導電率分布、または、相対的な導電率分布の再構成を可能とする。
【0029】
以下、直交デカルト座標系(x, y, z)を用いて説明する。
【0030】
本発明にて記載した導電率分布を推定する際に使用する連立一階偏微分方程式は以下の通りである。
【数1】
【0031】
但し、J1 (x,y,z) [ = (J1x(x,y,z),J1y(x,y,z),J1z(x,y,z))T]とJ2 (x,y,z) [ = (J2x(x,y,z),J2y(x,y,z),J2z(x,y,z))T]は3次元関心空間外又は2次元関心領域外に存在する電流源により生成される任意の二つの独立した電流場の電流密度ベクトル分布である。
【0032】
これらの方程式は、各々、
【数2】
と表せる。
【0033】
電流場が一つである場合は、各(1a)式、(1b)式、(1c)式、[又は(2a)式、(2b)式、(2c)式]中の一つの偏微分方程式のみが成立する。避けるべきことではあるが、電流場が複数である場合は、この偏微分方程式がその個数だけ連立することとなる。
【0034】
以下、各(1a)式、(1b)式、(1c)式 [又は(2a)式、(2b)式、(2c)式]中の電流データセットを、例えば、電流ベクトルJ1(x, y, z)に関して、(J1x(x,y, z), J1y(x, y, z))T、(J1y(x, y, z), J1z(x, y, z))T 、( J1z(x, y, z), J1x(x, y, z))T とベクトル表示し、これら3つのベクトルの各々を電流ベクトルJ1(x, y, z)の擬似2次元電流密度ベクトルと呼ぶ。
【0035】
例えば、3次元関心空間内の任意z座標z=Zの2次元平面(x, y, Z)内の導電率を推定するためには、(1a)式[又は、(2a)式]よりわかる通り、その平面(x, y, Z)内にて3次元電流密度ベクトルJ1(x, y, z)の擬似2次元電流密度ベクトル(J1x(x, y, Z), J1y(x, y, Z))Tが測定される必要がある。従って、測定される電流密度ベクトルの次元数及び成分の方向により、任意のx座標Xの平面(X, y, z)に関する(1b)式[又は(2b)式]、任意のy座標Yの平面(x, Y, z)に関する(1c)式[又は(2c)式]も用いることが可能となる。また、測定対象物を2次元物体として扱う場合はz座標を特定してz= Zとする2次元物体の位置を2次元座標(x, y,Z)で表すが、この場合、(1a)式[又は、(2a)式]のみが成立する。
【0036】
尚、3次元関心空間内又は2次元関心領域内にて超伝導体を含みうる場合は(1a)〜(1c)式を、導電率σ(x, y, z)がゼロとなる絶縁体を含みうる場合は(2a)〜(2c)式を用いる。
【0037】
一方、導電率の推定に必要となる参照導電率は、初期条件として、一般的には、
lnσ(x, y, Z)=lnσl (x, y, z)∈wl(l=1〜N) (3)
という様に、各z =Zの平面(x, y, Z)内にて導電率分布を決定する場合は、二つの電流場が測定された場合にはその平面内の少なくとも一点wlにて参照値が与えられれば良い。Nは、参照点の数である。また、一つの場が測定された場合にはその平面内にて電流が支配的に流れる方向に長く広がる参照領域wlを実現する必要がある。この場合、Nは、参照領域の数である。
【0038】
従って、3次元電流ベクトル、又は、その擬似2次元電流密度ベクトルが3次元関心空間内又は2次元関心領域内にて測定されれば、この関心空間・領域にわたり、適宜、上記(1a)式、(1b)式、(1c)式、[又は(2a)式、(2b)式、(2c)式]中の偏微分方程式が成立し、参照導電率が適切に与えられた範囲内にて、時に推定された導電率も参照値として用いることが可能なため冗長的になるが、導電率分布を一意に表現できる。しかし、実際には、測定データはエラー(ノイズ)を必ず含み、特に3つの内の一つの擬似2次元電流密度ベクトル分布のみが測定される場合には参照領域の広がる方向、大きさ、位置が不適切な状態になり、推定が不安定になる。そこで、考案した数値解析法(出願中)を応用して、直接的にその3次元空間内の導電率空間分布を推定する、又は、2次元関心領域ごとに推定することにより、3次元関心空間内又は2次元関心領域内の導電率空間分布を推定する。
【0039】
2次元電流密度ベクトルが測定された場合を想定し、正則化(出願中, 請求項7, 式5)においてx, y方向の2次元勾配作用素Dを用いることもできるが、3次元関心空間にて成立した方程式を全て連立して3次元導電率空間分布を求めることも可能であり、その場合の正則化においては3次元勾配作用素D'を用いることとなる。以下に、この場合のこの手順を示す。
【0040】
一階空間偏微分方程式及び初期条件に対し、離散デカルト座標系(I, J, K)〜(x/Δx, y/Δy, z/Δz)を用い(但し、Z = KΔzとする。)、未知導電率空間分布σ(x, y, z)あるいは電流密度ベクトル分布J(x, y, z)に関して有限差分近似あるいは有限要素近似(変分原理またはガラ−キン法を利用)を適用し、初期条件を代入することにより、有限差分近似を適用した場合には以下の未知導電率分布に関する連立方程式
JDs=j (4)
但し、s: 未知導電率空間分布σ(I, J, K)を表すベクトル
D:σ(I, J, K)に関するx, y方向の
2次元勾配作用素の有限差分近似定数からなる行列
J:低域通過型フィルタをかけた
擬似2次元電流密度ベクトル分布(J1x(I, J, K), J1y(I, J, K))T
及び(J2x(I, J, K), J2y(I, J, K))T、又は、その一方のみから定
まる行列
j:低域通過型フィルタをかけた擬似2次元電流密度ベクトルの一階変
微分値からなるベクトル
を得る。
【0041】
この場合、この連立方程式を最小二乗法を用いて解くことになるが、その際に正則化を施すことによりJDの逆作用素がjに含まれる高周波数帯のノイズを増幅させることを抑圧することがある。また、有限要素法を用いた場合においても、未知導電率分布に関して導出される連立方程式を最小二乗法を用いて解く際に、同様に、正則化を施すことがあるが、特に、変分原理を適用する場合
【数3】
には、変分(最小化)を行う際に正則化を施すことがある。具体的には、正則化パラメータα1及びα2(正値)を用いて
Rs(s)=||j−JDs||2+ α1||D's||2 + α2||D'TD's||2 (5)
但し、D's:未知導電率空間分布σ(I, J, K')の3次元勾配
D'TD's:σ(I, J, K')の3次元ラプラシアン
をsに関して最小化する。
【0042】
参照領域が不適切である場合においても、D's及びD'TD'sは正定値であるため、e(s)は必ず一つの最小値を持つことになる。
E(s)の最小化により、正則化された正規方程式
(DTJTJD+α1 D'TD' +α2 D'TD'D'TD')s = DTJTj (6)
が得られ、従って、解は
s=(DTJTJD+α1 D'TD' +α2 D'TD'D'TD')-1 DTJTj (7)
である。
【0043】
尚、変分原理を用いる場合には、計測された電流密度ベクトルが二つである場合[J1(x,y,z)およびJ2(x,y,z)[=(J2x(x,y,z),J2y(x,y,z),J2z(x,y,z))T]には、汎関数はI1(s)+I2(s)となる。また、2次元物体内に設定される2次元関心領域を対象とする場合は、汎関数I1(s)[または、I1(s)+I2(s)]中の積分はその2次元関心領域内の2重積分で表される。各汎関数中に表される導電率分布sおよび電流密度ベクトルに関して有限要素近似[有限要素の節点(I,J,K)の節点電流(J1x(I,J,K),J1y(I,J,K),J1z(I,J,K))Tおよび基底関数φJ(I,J,K,x,y,z)を用いてJ1(x,y,z)〜(ΣI,J,KφJ(I,J,K,x,y,z)J1x(I,J,K),ΣI,J,KφJ(I,J,K,x,y,z)J1y(I,J,K),ΣI,J,KφJ(I,J,K,x,y,z)J1z(I,J,K))Tと内挿される、(1a)式に対応する有限要素の節点導電率lnσ(I,J,K)および基底関数φσ(I,J,K,x,y,z)を用いてlnσ(x,y,z)〜ΣI,J,Kφσ(I,J,K,x,y,z)lnσ(I,J,K)と内挿される、または、(2a)式に対応する有限要素の節点導電率ln(1/σ(I,J,K))および基底関数φσ(I,J,K,x,y,z)を用いてln(1/σ(x,y,z))〜ΣI,J,Kφσ(I,J,K,x,y,z)ln(1/σ(I,J,K))と内挿される]が適用される(有限要素の節点数は略。以下、同様。)。但し、基底関数φσ(I,J,K,x,y,z)は、上記にて初期値として与えられる3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の参照領域wlまたは参照点wl内の参照導電率を矛盾なく表すことのできるものである必要があり、これを用いて導電率分布lnσ(x,y,z)[または、ln(1/σ(x,y,z))]が有限要素近似された後に、初期値は規定値として汎関数に代入される。
【0044】
但し、この汎関数I1(s) [または、I1(s)+I2(s)]の正則化においては、有限差分近似を行った際の(5)式と同様に、導電率分布lnσ(x,y,z)[または、ln(1/σ(x,y,z))]の勾配分布およびラプラシアン分布の二乗ノルムを使用するべく、3次元関心空間を対象とする場合は3次元勾配作用素D'および3次元ラプラシアンD'TD'、2次元関心領域を対象とする場合は(4)式にて使用した2次元勾配作用素Dおよび3次元ラプラシアンDTDを使用することもあるが、3次元空間または2次元領域において採用された基底関数φσ(I,J,K,x,y,z)を用いて近似されるlnσ(x,y,z)の勾配およびラプラシアンそのものが評価され、その空間内あるいは領域内の積分が行われることもある。この場合、上記にて与えられる初期値はこれらの導電率分布の勾配およびラプラシアンの二乗ノルムにも代入される。最終的に、この汎関数は未知導電率分布lnσ(I,J,K) [または、ln(1/σ(x,y,z))]に関して最小化され、未知導電率分布の推定結果として、lnσ(x,y,z) [= ΣI,J,Kφσ(I,J,K,x,y,z)lnσ(I,J,K)、あるいは、ln(1/σ(x,y,z)) = ΣI,J,K φσ(I,J,K,x,y,z)ln(1/σ(I,J,K))]が得られる。
【0045】
この様に、外部から電流を強制的に流し込む必要が有るが、3次元関心空間・2次元関心領域内に既に電流場が存在する場合にはその場を乱すことなく、電流密度ベクトル分布の測定のみから導電率空間分布の評価を行うことも可能である。
【0046】
正則化パラメータα1・α2に関しては、空間的に変化するものとして実現することもあり、結果的に、各関心点の導電率にかかる局所行列が数値解析的に充分に正値となる様に大きい値に調節される、または、各関心点の計測された電流密度ベクトルデータの精度(SN比)により調節される(SN比が高い場合に小さく、SN比が低い場合に大きく)ことがある。これに準じて、そのSN比に比例させることもある。
【0047】
また、絶縁体を含む場合には使用できないが、本発明にて記載した導電率を推定する際に使用する汎関数は、デカルト座標空間(x,y,z)において、導電率および計測された電流密度ベクトルにて表されるエネルギ密度の3次元関心空間または2次元関心領域(z = Z)にわたる連続積分の二乗として定義されるが、実際に導電率分布を推定する際には、ベクトルrとして表される抵抗率ρ(x,y,z)[=1/σ(x,y,z)]の3次元関心空間内またはその2次元関心領域内の分布に関して最小化され、抵抗率分布ρ(x,y,z)が直接的に評価される。
【0048】
具体的には、3次元関心領域において計測された電流ベクトルが一つである場合[J1(x,y,z) = (J1x(x,y,z),J1y(x,y,z),J1z(x,y,z))T]および二つである場合[J1(x,y,z)およびJ2(x,y,z) = (J2x(x,y,z),J2y(x,y,z),J2z(x,y,z))T]に汎関数(8)式[(9)式:パワーで正規化したもの]が成立する。
【0049】
【数4】
【0050】
また、3次元物体内、または、2次元物体内に設定される2次元関心領域において計測された電流場ベクトルが一つである場合[3次元物体:J1(x,y,z) = (J1x(x,y,z),J1y(x,y,z),J1z(x,y,z))T、または、2次元物体:J1(x,y,z) = (J1x(x,y,z),J1y(x,y,z))T]および二つである場合[J1(x,y,z)およびJ2(x,y,z)]に汎関数(10)式[(11)式:パワーで正規化したもの]が成立する。
【0051】
【数5】
【0052】
上記の各場合において、各汎関数中に表される導電率分布rおよび電流密度ベクトルに関して離散近似[離散座標系:(I,J,K)〜(x/Δx,y/Δy,z/Δz)]あるいは有限要素近似[有限要素の節点(I,J,K)の節点電流(J1x(I,J,K),J1y(I,J,K),J1z(I,J,K))Tおよび基底関数φJ(I,J,K,x,y,z)[有限要素の節点数は略]を用いてJ1(x,y,z)〜(ΣI,J,KφJ(I,J,K,x,y,z)J1x(I,J,K),ΣI,J,KφJ(I,J,K,x,y,z)J1y(I,J,K),ΣI,J,KφJ(I,J,K,x,y,z)J1z(I,J,K))Tと内挿される、有限要素の節点抵抗率ρ(I,J,K)および基底関数φρ(I,J,K,x,y,z)[節点数は略]を用いてρ(x,y,z)〜ΣI,J,Kφρ(I,J,K,x,y,z)ρ(I,J,K)と内挿される]が適用されるが、上記と同様に初期値として与えられる3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の参照領域wlまたは参照点wl内の参照抵抗率
ρ(x,y,z) = 1/σ(x,y,z) (x,y,z) ∈ wl(l=1〜N) (12)
は、導電率分布が離散近似される場合は離散系で表される汎関数、例えば、3次元関心領域においては抵抗率分布ρ(I,J,K)からなるベクトルr'に関する汎関数
【数6】
に直接的に代入され、また、導電率分布が有限要素近似される場合は(12)の初期値を矛盾なく表すことのできる基底関数φρ(I,J,K,x,y,z)を用いて抵抗率分布ρ(x,y,z)が有限要素近似された後に、規定値として汎関数に代入される。
【0053】
最終的に、離散化または有限要素化された汎関数を未知抵抗率分布ρ(I,J,K)に関して最小化することにより、未知導電率分布の推定結果として、離散近似を行った場合にはρ(I,J,K)、有限要素近似を行った場合にはρ(x,y,z) [= ΣI,J,Kφρ(I,J,K,x,y,z)ρ(I,J,K)]が得られる。
電流密度ベクトルデータの計測誤差および参照領域wlおよび電流源の相対的な配置位置が不適切となった場合に対処するべく、上記のいずれの場合においても、汎関数の最小化を行う際に正則化を施すことがあり、すなわち、3次元関心領域を対象とした場合には、汎関数(8)式または(9)式に、
【数7】
を、2次元物体内に設定される2次元関心領域を対象とした場合には、汎関数(10)式または(11)式に、
【数8】
を加え、汎関数と共に離散化または有限要素化された上で最小化される。単なる離散化を行った際には、(14)式および(15)式中の空間微分および空間積分に関しては、3次元関心空間を対象とする場合は(5)式にて使用した3次元勾配作用素D'および3次元ラプラシアンD'TD'を、2次元関心領域を対象とする場合は(4)式にて使用した2次元勾配作用素Dおよび3次元ラプラシアンDTDを使用することする。一方、有限要素化を行った際には、(14)式および(15)式中の空間微分および積分に関しては、3次元空間または2次元領域において、(5)式の3次元勾配作用素D'および3次元ラプラシアンD'TD'または(4)式の2次元勾配作用素Dおよび3次元ラプラシアンDTDを使用するか、基底関数φρ(I,J,K,x,y,z)を用いて近似されるρ(x,y,z)の勾配およびラプラシアンそのものが評価され、積分も行われることとなる。上記にて与えられる初期値はこれらの導電率分布の勾配およびラプラシアンの二乗ノルムにも代入される。
【0054】
α1・α2・α3は正則化パラメータ(正値)であり、計測された電流密度ベクトルのSN比に依存して、空間的に変化させることもあり、単なる離散近似を行った場合には各離散座標(I,J,K)の電流密度ベクトルデータJ(x,y,z)のSN比の2乗に、また、有限要素近似化した場合には各要素の節点(I,J,K)の電流密度ベクトルデータから見積もられる要素内の連続座標にて与えられる電流密度ベクトルデータのSN比の2乗に比例する様に調節されることがある。
【0055】
次に、導電率空間分布を推定するために用いる電流密度ベクトル推定法として、2次元磁場ベクトルの2次元空間分布の測定が可能である場合に使用できる技法1及び、3次元、又は、2次元磁場ベクトルの3次元空間分布の測定が可能である場合に使用できる技法2を示す。
【0056】
技法1(2次元磁場ベクトルの2次元空間分布の測定が可能である場合に使用する技法)
【0057】
3次元空間(I, J, K)内にある、3次元関心空間とK座標K=K'にて交差する、又は、2次元関心領域内をK座標K=K'にて含む、平面内に存在しうる電流密度ベクトル分布として、3次元電流密度ベクトルの2次元分布J (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'), Jz (I, J, K'))T]、又は、2次元電流密度ベクトルの2次元分布J (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T]により、平面z=z0(≠Z)[K = K0(≠K')]に生成される3次元磁場ベクトルB(I, J, K0; K') [= (Bx (I, J, K0; K'), By (I, J, K0; K'), Bz (I, J, K0; K'))T]の2成分Bx (I, J, K0; K')及びBy (I, J, K0; K')の2次元分布を測定し、連続なデカルト座標系(x, y, z)にて表されるビオ・サバールの法則
【数9】
但し、μ(x', y', z'):与えられる透磁率
r:(x', y', Z)から(x, y, z0)までの距離ベクトル
を考え、この平面内(K = K')の2次元関心領域内における3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'), Jz (I, J, K'))T]の擬似2次元電流密度ベクトル分布(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T、又は、2次元電流密度ベクトル分布J (I, J, K') = (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))Tを推定する。但し、電流は平面(x, y, Z)内を支配的に流れていることを仮定する。
【0058】
この場合の磁場ベクトルの測定に関しては、前述の磁場ベクトル検出器を機械的に走査するなどして、K座標K = K'の2次元関心領域内及びその面内の十分に広い周辺領域内の電流により生成されると考えられる3次元磁場ベクトル分布B(I ,J, K0; K')の2成分Bx (I, J, K0; K')及びBy (I, J, K0; K')を、極力、2次元関心領域面に対して近距離位置にて測定する必要がある (すなわち、極力、|K0−K'|を小さく。)。
【0059】
この測定された磁場ベクトルデータに対して2次元関心領域外に存在する電流により生成される磁場成分の低減するべく、平面K=K'内に任意の一方向の大きさ1の2次元電流密度ベクトルがこの2次元関心領域内のみに空間的に一様に分布していることを想定して、ビオ・サバールの法則[(8)式]を離散デカルト系にて表した式
B = L J (17)
但し、
B:3次元磁界ベクトルB(I, J, K0; K')の2成分Bx (I, J, K0; K')及びBy
(I, J, K0; K')の2次元分布からなるベクトル
J:擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T、又は、
2次元電流密度ベクトルJ(I ,J, K')の、2成分Jx (I, J, K')及びJy
(I, J, K')の2次元分布からなるベクトル
L:BおよびJを関係付けるリード場を表す行列
より、測定の行われた位置(I, J, K0)にて計算される2次元磁場ベクトルB(I, J, K0; K')の絶対値で表される窓関数W(I, J, K0; K')を測定された磁場データBx(I, J, K0; K') 及び By (I, J, K0; K')に掛ける。
【0060】
従って、窓関数の掛けられた磁場測定データW(I, J, K0; K') Bx (I, J, K0; K') 及び W(I, J, K0; K') By (I, J, K0; K')の空間分布からなるベクトルBWを用いて、
BW = L J (18)
よりベクトルJを推定する。具体的には、最小二乗法に基づいて推定する際に正則化法を施すことにより、その推定の安定化を図る。すなわち、正則化パラメータαJ1、αJ2、αJ3(正値)を用いて、
RJ (J) = ||BW - LJ||2 + αJ1 ||J||2 + αJ2 ||DJ||2 + αJ3 ||DTDJ||2 (19)
但し、D:電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T成分の2次元分布に関するx, y方向の2次元勾配作用素の有限差分近似定数からなる行列
DJ:(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))Tの2次元勾配
DTDJ:(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))Tの2次元ラプラシアン
をベクトルJに関して最小化することにより、K座標K = K' の2次元関心領域内の擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T又は2次元電流密度ベクトル分布J(I,J,K')[=( Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T]が求まる。
【0061】
この様に、3次元関心空間(I, J, K)内の各K座標K = K' の2次元関心領域内にて、擬似2次元電流密度ベクトル分布(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T又は2次元電流密度ベクトル分布J(I,J,K')[=(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T]を推定することにより、3次元関心空間内の擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T及び2次元電流密度ベクトル分布J(I,J,K)[=(Jx (I, J,K), Jy (I, J, K))T]が求まる。
【0062】
又、3次元関心空間内の擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T及び2次元電流密度ベクトル分布J(I,J,K)[=(Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T]は、3次元導電率空間分布を求める場合と同様に、3次元関心領域内の各K座標の2次元関心領域内にて成立する方程式を全て連立し、2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T成分の3次元空間分布に関する3次元勾配作用素D'を用いて正則化して推定することも可能である。この場合、(19)式中のD'J及びD'TD'Jは、各々、(Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T空間分布の3次元勾配及び3次元ラプラシアンである。
【0063】
正則化パラメータαJ1・αJ2は、空間的に変化するものとして実現することもあり、結果的に、各関心点の電流密度ベクトルにかかる局所行列が数値解析的に充分に正値となる様に大きい値に調節される、または、各関心点の計測された磁場ベクトルデータの精度(SN比)により調節される(SN比が高い場合に小さく、SN比が低い場合に大きく)ことがある。これに準じて、そのSN比に比例させることもある。
【0064】
技法2(3次元、又は、2次元磁場ベクトルの3次元空間分布の測定が可能である場合に使用する技法)
【0065】
技法2-1:3次元関心空間を直接に対象とする場合
【0066】
3次元空間(I, J, K')内にある、3次元関心空間(I,J,K')及びその空間を含み物体表面にまで及ぶ十分に広い空間内に存在しうる電流密度ベクトル分布として、3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'),Jz (I, J, K'))T]の3次元空間分布、又は、2次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T]の3次元空間分布により、任意z座標z=z0(≠Z)[K = K0(≠K')]に生成される3次元磁場ベクトルB(I, J, K0) [= (Bx (I, J, K0), By (I, J, K0), Bz (I, J, K0))T]の3次元空間分布又はその2成分Bx (I, J, K0)及びBy (I, J, K0)の3次元分布を測定し、連続なデカルト座標系(x, y, z)にて表されるビオ・サバールの法則
【数10】
但し、μ(x', y', z'):与えられる透磁率
r:(x', y', z')から(x, y, z0)までの距離ベクトル
を考え、3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'), Jz (I, J, K'))T]、又は、その擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T、又は、2次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T]の、3次元空間分布を推定する。基本的には、電流は平面(x, y, Z)内を支配的に流れていることを仮定する。
【0067】
この場合の磁場ベクトルの測定に関しては、前述の磁場ベクトル検出器を機械的に走査するなどして、3次元関心空間内及びその空間を含む十分に広い空間内の電流により生成されると考えられる、3次元磁場ベクトルB(I ,J, K0) [= (Bx(I, J, K0), By (I, J, K0), Bz (I, J, K0))T]の3次元空間分布、又は、その2成分Bx (I, J, K0)及びBy (I, J, K0)の3次元空間分布を、極力、その3次元関心空間に対して近距離位置にて測定する必要がある (すなわち、極力、|K0−K'|を小さく。)。
【0068】
この測定された磁場ベクトルデータに対して、その3次元関心空間外に存在する電流により生成される磁場成分を低減するべく、任意の一方向の大きさ1の3次元電流密度ベクトルが、その3次元関心空間内のみに一様に分布していることを想定して、ビオ・サバールの法則[(20)式]を離散デカルト座標系にて表した式
B = L J (21)
但し、
B:3次元磁場ベクトルB(I, J, K0)の3成分Bx (I, J, K0)、By (I, J, K0)
及びBz (I, J, K0)、又は、3次元磁場ベクトルB(I, J, K0)の2成分Bx
(I, J, K0)及びBy (I, J, K0)、の3次元空間分布からなるベクトル
J:3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K')の3成分Jx (I, J, K')、Jy (I,
J, K')及びJz (I, J, K')の3次元空間分布からなるベクトル、
又は、その擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J,
K'))T又は2次元電流密度ベクトルJ (I, J, K')の2成分Jx (I, J, K')
及びJy (I, J, K')の3次元空間分布からなるベクトル
L:BおよびJを関係付けるリード場を表す行列
より、測定の行われた位置(I, J, K0)にて計算される磁場ベクトルB(I, J, K0)の絶対値で表される窓関数W(I, J, K0)を測定された磁場データBx (I, J, K0)、By (I, J, K0)、Bz (I, J, K0)に掛ける。
【0069】
従って、窓関数の掛けられた3つの磁場測定データW(I, J, K0) Bx (I, J, K0)、 W(I, J, K0) By (I, J, K0)及びW(I, J, K0) Bz (I, J, K0)、又は、2つの磁場測定データW(I, J, K0) Bx (I, J, K0)及び W(I, J, K0) By (I, J, K0)の空間分布からなるベクトルBWを用いて、
BW = L J (22)
よりベクトルJを推定する。具体的には、最小二乗法に基づいて推定する際に正則化法を施すことにより、その推定の安定化を図る。すなわち、正則化パラメータαJ1、αJ2、αJ3(正値)を用いて、
RJ (J)=||BW - LJ||2+αJ1||J||2+αJ2||D'J||2+ αJ3||D'D'J||2 (23)
但し、
D':ベクトルJが3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K')
の3成分Jx (I, J, K')、Jy (I, J, K')及びJz (I, J, K')の3次元空
間分布から成る場合、
これら3成分の空間分布に関するx, y, z方向の3次元勾配作用素の有限差
分近似定数からなる行列、
又、
ベクトルJが3次元電流密度ベクトルJ(I, J, K')の擬似2次元電流密度ベ
クトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T又は2次元電流密度ベクトルJ (I,
J, K')の2成分Jx (I,J, K')及びJy (I, J, K')の3次元空間分布から成る
場合、
これら2成分の空間分布に関する3次元勾配作用素の有限差分近似定数から
なる行列
をベクトルJに関して最小化することにより、3次元関心空間内の3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'), Jz (I, J, K'))T]、又は、その擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T、又は、2次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T]の、3次元空間分布が求まる。
【0070】
正則化パラメータαJ1・αJ2は、空間的に変化するものとして実現することもあり、結果的に、各関心点の電流密度ベクトルにかかる局所行列が数値解析的に充分に正値となる様に大きい値に調節される、または、各関心点の計測された磁場ベクトルデータの精度(SN比)により調節される(SN比が高い場合に小さく、SN比が低い場合に大きく)ことがある。これに準じて、そのSN比に比例させることもある。
【0071】
技法2-2:2次元関心領域を直接に対象とする場合
【0072】
3次元空間(I, J, K')内にある、3次元関心空間とK座標K=K'にて交差する、又は、2次元関心領域内をK座標K=K'にて含む、平面内に存在しうる電流密度ベクトル分布として、3次元電流密度ベクトルの2次元分布J(I, J, K' ) [= Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'), Jz (I, J, K')]T]、又は、2次元電流密度ベクトルの2次元分布J(I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T]により、平面z=z0(≠Z)[K = K0(≠K')]に生成される3次元磁場ベクトルB(I, J, K0; K') [= (Bx (I, J, K0; K'), By (I, J, K0; K'), Bz (I, J, K0; K'))T]の3次元空間分布又はその2成分Bx (I, J, K0; K')及びBy (I, J, K0; K')の3次元分布を測定し、連続なデカルト座標系(x, y, z)にて表されるビオ・サバールの法則([16式])を考え、この平面内(K = K')の2次元関心領域内における3次元電流密度ベクトルJ(I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'), Jz (I, J, K'))T]、又は、その擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T、又は、2次元電流密度ベクトルJ(I, J, K') = (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))Tの、2次元分布を推定する。但し、電流は平面(x, y, Z)内を支配的に流れていることを仮定する。
【0073】
この場合の磁場ベクトルの測定に関しては、前述の磁場ベクトル検出器を機械的に走査するなどして、K座標K = K'の2次元関心領域内及びその面内の周辺領域内の電流により生成されると考えられる、3次元磁場ベクトル分布B(I, J, K0; K') [= (Bx (I, J, K0; K'), By (I, J, K0; K'))T]の3次元空間分布、又は、その2成分Bx (I, J, K0)及びBy (I, J, K0)の3次元空間分布を、極力、2次元関心領域面に対して近距離位置にて測定する必要がある(すなわち、極力、|K0−K'|を小さく。)。
【0074】
この測定された磁場ベクトルデータに対して2次元関心領域外に存在する電流により生成される磁場成分の低減するべく、平面K = K'内に任意の一方向の大きさ1の2次元電流密度ベクトルがこの2次元関心領域内のみに空間的に一様に分布していることを想定して、ビオ・サバールの法則[(16)式]を離散デカルト系にて表した式
B = L J (24)
但し、
B:3次元磁場ベクトルB(I, J, K0; K')の3成分Bx(I, J, K0; K')、By
(I, J, K0; K')及びBz(I, J, K0; K')、
又は、3次元磁場ベクトルB(I, J, K0; K')の2成分Bx(I, J, K0; K')
及びBy(I, J, K0; K')、の3次元空間分布からなるベクトル
J:3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K')の3成分Jx (I, J, K')、Jy (I,
J, K')、Jz (I, J, K')の2次元分布からなるベクトル、
又は、その擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J,
K'))T又は2次元電流密度ベクトルJ(I, J, K')の2成分Jx (I, J, K')
及びJy (I, J, K')の、2次元分布からなるベクトル
L:BおよびJを関係付けるリード場を表す行列
より、測定の行われた位置(I, J, K0)にて計算される磁場ベクトルB(I, J, K0;K')の絶対値で表される窓関数W(I, J, K0; K')を測定された磁場データBx(I, J, K0; K')、By(I, J, K0; K')、Bz(I, J, K0; K')に掛ける。
【0075】
従って、窓関数の掛けられた3つの磁場測定データW(I, J, K0) Bx(I, J, K0; K')、 W(I, J, K0) By(I, J, K0; K')及びW(I, J, K0) Bz(I, J, K0; K')、又は、2つの磁場測定データW(I, J, K0) Bx(I, J, K0; K')及び W(I, J, K0) By(I, J, K0; K')の、空間分布からなるベクトルBWを用いて、
BW = L J (25)
よりベクトルJを推定する。具体的には、最小二乗法に基づいて推定する際に正則化法を施すことにより、その推定の安定化を図る。すなわち、正則化パラメータαJ1、αJ2、αJ3(正値)を用いて、
RJ (J) = ||BW - LJ||2 + αJ1 ||J||2 + αJ2 ||DJ||2 + αJ3 ||DTDJ||2 (26)
但し、D: ベクトルJが3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K')の3成分Jx (I, J, K')、Jy (I, J, K')及びJz (I, J, K')の2次元分布から成る場合、
これら3成分の2次元分布に関するx, y方向の2次元勾配作用素の有限差分近似定数からなる行列、
又、ベクトルJが3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K')の擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T又は2次元電流密度ベクトルJ (I, J, K')の2成分Jx (I, J, K')及びJy (I, J, K')の、2次元分布から成る場合、これら2成分の2次元分布に関するx, y方向の2次元勾配作用素の有限差分近似定数からなる行列
をベクトルJに関して最小化することにより、K座標K = K' の2次元関心領域内の3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'),Jz (I, J, K'))T]、又は、その擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T、又は、2次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T]の、2次元分布が求まる。
【0076】
技法1の場合と同様、3次元関心空間(I, J, K)内の各K座標K = K' の2次元関心領域内にて、3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy(I, J, K'), Jz (I, J, K'))T]、又は、その擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T、又は、2次元電流密度ベクトルJ (I, J, K') [= (Jx (I, J, K'), Jy (I, J, K'))T]を推定することにより、3次元関心空間内の3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K) [= (Jx (I, J, K), Jy (I, J, K), Jz (I,J, K))T]、又は、その擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T、又は、2次元電流密度ベクトルJ (I, J, K) [= (Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T]を推定することもできる。
【0077】
この場合、3次元関心空間内の3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K) [= (Jx (I, J, K), Jy (I, J, K), Jz (I, J, K))T]、又は、その擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T及び2次元電流密度ベクトル分布J(I,J,K)[=(Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T]は、3次元関心領域内の各K座標の2次元関心領域内にて成立する方程式を全て連立し、各々、3次元電流密度ベクトルJ (I, J, K) [= (Jx (I, J, K), Jy (I, J, K), Jz (I, J, K))T]の3成分、又は、その擬似2次元電流密度ベクトル(Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T及び2次元電流密度ベクトルJ(I, J, K)[=(Jx (I, J, K), Jy (I, J, K))T]の2成分の3次元空間分布に関する3次元勾配作用素D'を用いて正則化して推定することも可能である([26式])。
【0078】
正則化パラメータαJ1・αJ2は、空間的に変化するものとして実現することもあり、結果的に、各関心点の電流密度ベクトルにかかる局所行列が数値解析的に充分に正値となる様に大きい値に調節される、または、各関心点の計測された磁場ベクトルデータの精度(SN比)により調節される(SN比が高い場合に小さく、SN比が低い場合に大きく)ことがある。これに準じて、そのSN比に比例させることもある。
【0079】
測定結果として、磁気ベクトル分布、電流密度分布、電流密度発散・勾配分布、導電率分布、導電率勾配分布、これらの経時的絶対変化(差分値)および経時的相対変化(比の値)などが画像表示され、且つ、選択される任意の位置におけるこれらの値が表示される。
【0080】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明にかかる実施の形態1による計測装置の全体構成図を示している。本装置は計測対象物4内の3次元関心空間または2次元関心領域の電流密度ベクトル分布を測定するための磁場ベクトル検出器1とその位置および検出方向をかえるための走査機構3と、磁場ベクトル検出器1と測定対象物4の距離を調整する距離調整手段13と、計測対象物4内に電流場を生じさせる電流場生成手段5と、磁場ベクトル検出器1を駆動する駆動装置2と、それらをコントロールする計測制御手段6と測定データを記憶するデータ記録手段7と、測定データから電流密度ベクトルおよび導電率分布を推定するデータ処理手段8で構成される。
【0081】
ここで、図2に磁場ベクトル検出部器のコイル部を模式図にて示す。
但し、図2(a)は1素子、図2(b)は2素子、図2(c)は3素子をそれぞれ示している。さらに、図3〜図7は、本発明にかかる実施の形態によるアレイ構成を、それぞれ示している。
【0082】
計測制御手段6とデータ記録手段7とデータ処理手段8は、一台の装置上で実現することも可能であり、或いは、複数の装置に分散させることも可能である。走査機構3と距離調整手段13の位置は逆にすることも可能である。
【0083】
図8は、磁場ベクトル検出器1の側に走査機構3と距離調整手段13を設けた実施例である。走査機構3と距離調整手段13の位置は逆にすることも可能である。
【0084】
図9は、磁場ベクトル検出器1側に第一の走査機構10を設け、計測対象物4側に第二の走査機構11を設けた実施例である。この実施例では、距離調整手段13を磁場ベクトル検出器側1に設けているが、計測対象物4側および両側でもかまわない。走査機構10、11と距離調整手段の位置は逆にすることも可能である。
【0085】
つぎに、図10のフローチャートに従って、電流密度分布の推定を通じて導電率分布を推定する技法について説明する。
【0086】
まず、導電率の値が未知である3次元関心空間内または2次元関心領域内に参照領域を適切に設定する。参照領域とは導電率が既知である領域である。
【0087】
測定時に独立な電流場が二つ以上設定できる場合、すなわち、二つ以上の独立した電流密度ベクトル分布(磁場ベクトル分布)の測定が可能である場合には、参照領域として少なくとも一つの参照点を設定する。参照点とは導電率が既知である点である。
【0088】
測定時に電流密度ベクトル分布を一つしか測定できない場合には、参照領域を電流が支配的に流れる方向に広く伸びるように設定する。
【0089】
電流場生成装置を用いて生じせしめた二つの独立した磁場ベクトル分布を測定した場合を例に揚げる。関心空間または関心領域内に第一の電流場を生じせしめ、関心空間または関心領域の周囲に磁場ベクトル分布を生じさせる。続いて、第一の電流場とは独立の第二の電流場を生じせしめ、同様に、第二の磁場ベクトル分布を推定する。技法1または技法2により、その都度、関心空間内または関心領域内の電流密度ベクトル分布を推定するが、これはデータ処理手段により行われる。磁場ベクトル空間分布を測定に関しては、計測制御手段によって磁場ベクトル検出器駆動装置と走査機構をコントロールして、データをサンプリングしながら、磁場ベクトル検出信号および位置情報をデータ記録手段に入力する。場合によっては、走査機構を使用しないこともある。続いて、データ処理手段([7式])において導電率分布を推定する。
【0090】
既に電流場が存在する場合は、これにより生じた磁場ベクトルのみを測定し、その電流ベクトル分布の推定のみを通じて、導電率分布を推定する。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、未知試料内の3次元関心空間または2次元関心領域周辺にて磁場ベクトル検出器を用いて測定された磁場ベクトル分布から、その関心空間内または関心領域内の電流密度ベクトル分布を推定することが可能となり、これより非接触に3次元導電率分布および2次元導電率分布を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態において用いられる磁場ベクトル検出器のコイル部を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかるアレイの構成を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかるアレイの構成を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかるアレイの構成を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかるアレイの構成を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかるアレイの構成を示す説明図である。
【図8】磁場ベクトル検出器側に走査機構と距離調整手段を設けた実施の形態を示すブロック図である。
【図9】磁場ベクトル検出器側に第1の走査機構を設け、計測対象物側に第2の走査機構を設けた実施の形態を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態を表すフローチャートである。
【図11】従来の技術による磁場検出器のセンサー部を示す模式図である。
【符号の説明】
1 磁場ベクトル検出器
2 駆動装置
3 走査機構
4 計測対象物
5 電流場生成装置
6 計測制御手段
7 データ記録手段
8 データ処理手段
9 ハウジング
10 第一の走査機構
11 第二の走査機構
12 電流源
13 距離調整手段
14 試料設置台
Claims (12)
- 計測対象物の3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の電流密度ベクトル分布を推定する電流密度ベクトル推定装置において、
前記計測対象物を設置する試料設置台と、
磁場ベクトルを検出する磁場ベクトル検出手段と、
前記磁場ベクトル検出手段が前記計測対象物を計測するように設置されるハウジングと、
前記計測対象物の磁場ベクトルの分布を測定するために前記試料設置台と前記ハウジングの、少なくともどちらか一方に接続する上下左右・方向を変えることのできる走査手段と、
前記磁場ベクトル検出手段を通じて出力される計測結果を記録するデータ記録手段と、
前記磁場ベクトル検出手段を用いて2次元磁場ベクトルの2次元空間分布を測定し、測定されたこの磁場ベクトルデータから、2次元電流密度ベクトル分布を推定するデータ処理手段と、
前記計測対象物と前記磁場ベクトル検出手段との距離を調整する距離調整手段と、
を備えたことを特徴とする電流密度ベクトル推定装置。 - 計測対象物の3次元関心空間内の電流密度ベクトル分布を推定する電流密度ベクトル推定装置において、
前記計測対象物を設置する試料設置台と、
磁場ベクトルを検出する磁場ベクトル検出手段と、
前記磁場ベクトル検出手段が前記計測対象物を計測するように設置されるハウジングと、
前記計測対象物の磁場ベクトルの分布を測定するために前記試料設置台と前記ハウジングの、少なくともどちらか一方に接続する上下左右・方向を変えることのできる走査手段と、
前記磁場ベクトル検出手段を通じて出力される計測結果を記録するデータ記録手段と、
前記磁場ベクトル検出手段を用いて3次元、または2次元磁場ベクトルの3次元空間分布を測定し、測定されたこの磁場ベクトルデータから、3次元あるいは2次元電流密度ベクトルの空間分布を推定するデータ処理手段と、
前記計測対象物と前記磁場ベクトル検出手段との距離を調整する距離調整手段と、
を備えたことを特徴とする電流密度ベクトル推定装置。 - 計測対象物の3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の電流密度ベクトル分布を推定する電流密度ベクトル推定装置において、
前記計測対象物を設置する試料設置台と、
磁場ベクトルを検出する磁場ベクトル検出手段と、
前記磁場ベクトル検出手段が前記計測対象物を計測するように設置されるハウジングと、
前記計測対象物の磁場ベクトルの分布を測定するために前記試料設置台と前記ハウジングの、少なくともどちらか一方に接続する上下左右・方向を変えることのできる走査手段と、
前記磁場ベクトル検出手段を通じて出力される計測結果を記録するデータ記録手段と、
前記磁場ベクトル検出手段を用いて3次元、または2次元磁場ベクトルの3次元空間分布を測定し、測定されたこの磁場ベクトルデータから、3次元あるいは2次元電流密度ベクトルの空間分布を推定するデータ処理手段と、
前記計測対象物と前記磁場ベクトル検出手段との距離を調整する距離調整手段と、
を備えたことを特徴とする電流密度ベクトル推定装置。 - 前記磁場ベクトル検出手段は、超伝導量子干渉素子(SQUID)、ホール素子、ジョセフソン接合素子、磁気インピーダンス素子、GMR、CMR、SETなどを使用することを特徴とする請求項1〜3に記載の電流密度ベクトル推定装置。
- 前記計測対象物の前記3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の電流密度ベクトル分布を得るために計測した前記磁場ベクトル検出手段の出力を、その測定の位置を示す位置データと関連付け、前記データ記録手段に記録することを特徴とする請求項1〜3に記載の電流密度ベクトル推定装置。
- さらに、必要に応じて、前記計測対象物の前記3次元関心空間の外部からその空間内またはその中の2次元関心領域内に、少なくとも一つ以上の電流場を生じせしめることができるように、電流を直接的に流せる、あるいは、磁界を印加することにより渦電流を誘起できる電流場発生手段を有することを特徴とする請求項1〜3に記載の電流密度ベクトル推定装置。
- 前記磁場ベクトル検出手段として、磁気、静磁界または電磁波検出素子を複数個使用し、検出方向を直交する2方向または3方向として、時に開口面合成を行い、磁場ベクトルデータを収集することを特徴とする請求項1〜3に記載の電流密度ベクトル推定装置。
- 前記磁場ベクトル検出手段として、磁気、静磁界または電磁波検出素子を複数個使用し、検出方向を1方向、直交する2方向、あるいは3方向とし、かつ、1次元、2次元、または3次元アレイを構成して、時に開口面合成を行い、磁場データの収集を行うことを特徴とする請求項1〜3に記載の電流密度ベクトル推定装置。
- 測定結果としての磁気ベクトル分布、電流密度分布、電流密度発散・勾配分布、導電率分布、導電率勾配分布、これらの経時的絶対変化、および経時的相対変化などを画像表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3に記載の電流密度ベクトル推定装置。
- 前記データ処理手段は、計測した磁場ベクトルデータから電流密度ベクトル分布を推定することに加えて、電流密度ベクトルから、所定の数値解法を使用して、計測対象物の3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の電気導電率分布を推定し、
前記所定の数値解法は、所定の一階の空間偏微分方程式中に表される導電率分布、その逆数の分布あるいは電流密度ベクトル分布に関して離散近似あるいは有限要素近似(変分法またはガラ−キン法を使用)を適用することに基づいたものであること、
を特徴とする請求項1〜3に記載の電流密度ベクトル推定装置。 - 前記データ処理手段は、計測した磁場ベクトルデータから電流密度ベクトル分布を推定することに加えて、電流密度ベクトルから、所定の数値解法を使用して、計測対象物の3次元関心空間内あるいは2次元関心領域内の電気導電率分布を推定し、
前記所定の数値解法は、電流密度ベクトルおよび導電率にて表されるエネルギ密度の3次元関心空間または2次元関心領域内にわたる積分の二乗として定義される導電率分布に関する汎関数を導出し、汎関数中に表される導電率分布および電流密度ベクトルに関して離散近似あるいは有限要素近似を適用することに基づいたものであること、
を特徴とする請求項1〜3に記載の電流密度ベクトル推定装置。 - 測定結果としての磁気ベクトル分布、電流密度分布、電流密度発散・勾配分布、導電率分布、導電率勾配分布、これらの経時的絶対変化、および経時的相対変化などを画像表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3に記載の電流密度ベクトル推定装置。
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