JP4459757B2 - 電動射出成形機の可塑化移動装置 - Google Patents

電動射出成形機の可塑化移動装置 Download PDF

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Description

本発明は射出成形機に係り、特に電動射出成形機において樹脂を溶融しながら金型に対して射出するため射出装置を移動する可塑化移動装置に関する。
従来の可塑化移動装置の一例として、減速機付き電動機(モータ)により駆動されるボールネジ軸とこれに係合するボールナットにより推力を得る移動機構により射出装置(可塑化装置)を移動する可塑化移動装置がある。射出装置は、樹脂を溶融するシリンダと、シリンダ内で溶融した樹脂を計量しノズルから吐出するためのスクリュとを有しており、ノズルを金型の樹脂供給部に押し付けて金型内に溶融樹脂を射出注入する。
ノズルを金型に押し付けることをノズルタッチと称し、ノズルタッチ時のノズルの金型に対する押し付け力をノズルタッチ圧と称する。溶融樹脂を金型に射出注入する際には、溶融樹脂は高圧に加圧されているため、この射出圧力に負けないようなノズルタッチ圧が必要となる。上述の電動機とボールネジにより駆動する可塑化移動装置では、電動機の駆動により射出装置を金型に向けて移動し、射出装置をバネを介して金型に対して押圧することによりバネの弾性変形力を利用してノズルタッチ圧を得る。
ここで、ノズルタッチ圧は金型が閉じている際、例えば樹脂充填工程及び保圧工程では高圧が必要である。一方、成形品の取り出し時や樹脂計量工程のように金型を開いている間はノズルタッチ圧を高圧とする必要はなく、ノズルタッチ圧に起因した金型の変形を防止するためにノズルタッチ圧を低減する必要がある。すなわち、金型を開いている間は、可動金型による押圧力が固定金型に作用しないため、固定金型に対するノズルタッチ圧が高いと固定金型が変形する等の不具合が生じるため、これを回避するためにノズルタッチ圧を低減する必要がある。このようなノズルタッチ圧の低減を「脱圧」と称する。
また、成形条件によっては、ノズルタッチさせたまま金型を開いて成形品を取り出す際に、ノズル付近の十分に固化していない樹脂が成形品と切り離されずに糸を引いた状態となる「糸引き現象」が生じることがある。そこで、「糸引き現象」の発生を防止するために、いわゆる「後退成形」という成形方法を採用することがある。「後退成形」では、充填工程及び保圧工程以外の工程において射出装置を後退させて機械的にノズルタッチを解除させ、強制的にノズル部分の樹脂と金型内の樹脂とを分離することにより、「糸引き現象」を防止する。
以上のように、連続成形を行なう場合、ノズルタッチ圧を樹脂充填時の高圧と型開時の低圧又は大気圧との間で繰り返し変化させることとなる。
特開2000−71287号公報
上述のようにバネの弾性変形力を利用してノズルタッチ圧を得る場合、ノズルタッチ圧を変化させるために、電動機を駆動してボールネジ軸を回転させ、ボールネジナットを移動することにより、バネの押し付け力を変化させる。連続成形の場合、このようなノズルタッチ圧の変化を成形の各サイクル毎に行なう。したがって、ボールネジナットはボールネジ軸上の一定の場所で繰り返し往復移動することとなり、ボールネジ軸が局部的に大きく摩耗して寿命が低下するという問題がある。
また、ボールネジによる駆動機構はバネの圧縮を利用するために、応答性が悪く短時間にノズルタッチ圧を大きく変化させることができない。また、バネの弾性変形力を精密に制御することが難しく、ノズルタッチ圧を精度よく短時間で変化させることができない。さらに、バネが繰り返し圧縮されるため、バネの寿命が短いといった問題がある。
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、油圧アクチュエータを用いた簡単な構成で、ノズルタッチ圧を高精度且つ高応答性で制御することのできる、可塑化移動装置を有する電動射出成形機を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明によれば、射出成形機に設けられた射出装置を金型に対して移動するための可塑化移動装置を有する電動射出成形機の可塑化移動装置であって、該射出成形機を移動するための駆動源として設けられ、前記射出装置を前記金型に向かう方向に移動するための第1の油室と前記射出装置を前記金型から離間する方向に移動するための第2の油室とを有する液圧アクチュエータと、該液圧アクチュエータを駆動するためのものであって、出力液圧を制御することのできる両方向回転可能で第1の吸入吐出口と第2の吸入吐出口とを有する液圧源と、該液圧源の第1の吸入吐出口と前記液圧アクチュエータの第1の油室とを接続、前記液圧源の第1の吸入吐出口から吐出される作動媒体を前記液圧アクチュエータの第1の油室に供給して前記射出装置を前記金型に向かう方向に移動するための第1の作動媒体流路と、前記液圧源の第2の吸入吐出口と前記液圧アクチュエータの第2の油室とを接続前記液圧アクチュエータの第1の油室に供給された作動媒体を圧抜きを行なわずに前記第1の作動媒体流路で前記液圧源の第1の吸入吐出口に吸入し、前記液圧源の第2の吸入吐出口から吐出される作動媒体を前記液圧アクチュエータの第2の油室に供給して前記射出装置を前記金型から離間する方向に移動するための第2の作動媒体流路と、前記射出装置の前記金型に対する押圧力を検出し、検出信号を出力する圧力検出器と、該検出信号に基づいて前記液圧源を駆動するサーボモータの動作を制御する制御装置とを有することを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置が提供される。
上述の電動射出成形機の可塑化移動装置は、前記第1の作動媒体通路を開閉する切替弁をさらに有し、前記制御装置は、前記検出信号に基づいて前記液圧源及び前記切替弁の動作を制御することが好ましい。また、前記切替弁は、前記液圧源から前記液圧アクチュエータへ向かう作動媒体の流れに対する逆止弁としての機能を有することが好ましい。また、前記制御装置は、前記圧力検出器が検出した押圧力が入力装置にて設定された設定値となるように、前記検出信号に基づいて前記切替弁の動作を制御し、該設定値は、少なくとも高圧設定値、及び、低圧設定値の2つの設定値を含むことが好ましい。
上述の電装射出成形機の可塑化移動装置において、計量工程完了後、若しくは冷却工程中に前記低圧設定値を用いて制御することとしてもよい。あるいは、充填工程中には、前記高圧設定値を用いて制御することとしてもよい。
上述の電装射出成形機の可塑化移動装置において、前記制御装置は、少なくともスクリュの仕様値、検出された充填圧値、及び検出された背圧値のうちの一つの値を基に、前記設定値を算出することとしてもよい。また、前記制御装置は、冷却工程開始から所定の時間が経過した後、前記射出装置の後退動作若しくはノズルタッチ圧の低圧制御の少なくとも一方の制御を行なうこととしてもよい。さらに、前記制御装置は、計量工程開始から所定の時間が経過した後、前記射出装置の後退動作若しくはノズルタッチ圧の低圧制御の少なくとも一方の制御を行なうこととしてもよい。
上述の電装射出成形機の可塑化移動装置において、前記液圧源は、逆回転可能なサーボモータにより駆動される液圧ポンプであり、該液圧ポンプは、前記第1の作動媒体通路が接続される第1の吸入吐出口と、前記第2の作動媒体通路が接続される第2の吸入吐出口とを有し、前記サーボモータの回転方向及び回転速度は前記制御装置により制御されることとしてもよい。
上述の本発明によれば、液圧調整可能な液圧源を用いて液圧アクチュエータの作動を制御するという簡単な構成で、ノズルタッチ圧を精度高く所望の圧力に制御して保持することができる。また、液圧アクチュエータを用いているため、ボールネジのように摩耗する部品は必要なく、作動寿命の長い移動機構を実現することができる。
次に、本発明の第1実施例について図1を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施例による電動射出成形機に設けられた可塑化移動装置の全体構成を示す図である。
図1に示す可塑化移動装置は、電動射出成形機に設けられた射出装置2を移動するために設けられる。射出装置2は成形機のシャーシ4上で、固定金型6を支持する固定プラテン8に対して移動可能に支持される。移動金型10は、固定金型6に対して移動可能に設けられ、移動金型10を固定金型6に押し付けて金型を閉じた状態で樹脂充填工程及び保圧工程が行なわれ、移動金型10を固定金型6から離して金型を開いた状態で成形品の取り出し工程及び樹脂計量工程が行われる。
射出装置2は溶融した樹脂を計量して押し出すためのスクリュ12を有しており、スクリュ12の先端にノズル14が設けられている。このノズル14の先端から溶融樹脂が吐出される。溶融樹脂を金型に注入し充填する充填工程では、射出装置2を固定プラテン8に向けて移動し、ノズル14を固定金型10又は固定プラテン8の注入部に対して押し付ける(ノズルタッチ)。
本実施例による可塑化移動装置は、上述の射出装置2を移動するための移動機構であり、液圧アクチュエータとしての油圧シリンダ20と、油圧シリンダ20に作動媒体である作動油を供給する油圧回路22と、作動油の油圧(作動媒体の液圧)を発生する液圧源としての両方向回転可能な油圧ポンプ24と、油圧ポンプ24を制御する制御装置26とを有する。油圧ポンプ24は、本実施例では逆回転可能であり且つ回転速度制御可能な電動機としてのサーボモータ28により駆動される。
油圧シリンダ20のシャフト20aの先端は固定プラテン8に固定されており、油圧シリンダ20の後側に油圧ポンプ24によって圧力のかけられた作動油を油圧配管である通路30(第1の作動油通路)を介して供給することで、射出装置2全体は固定プラテン8(すなわち金型)に向かって移動する(この方向を前方と称する)。一方、油圧シリンダ20の前側に油圧ポンプ24によって圧力のかけられた作動油を通路32(第2の作動油通路)を介して供給することにより、射出装置2全体は固定プラテン8(すなわち金型)から離れる方向に移動する(この方向を後方と称する)。
通路30は油圧ポンプ24の一方の吸入吐出口24a(第1の吸入吐出口)に接続され、通路32は油圧ポンプ24のもう一方の吸入吐出口24b(第2の吸入吐出口)に接続される。油圧ポンプ24は、サーボモータ28の回転方向を切り替えることにより、吸入吐出口24a,24bのいずれか一方から作動油を吸入し他方から吐出して油圧を発生することができる。サーボモータ28の回転速度及び回転方向は制御装置26により制御される。なお、油圧ポンプ24はタンク34から作動油を吸引して吐出口24a,24bのいずれか一方から作動油を吐出することもできる。
また、通路30は油圧シリンダ20の前側油室20bへ接続され、通路32は油圧シリンダ20の後側油室20cへ接続される。ここで、前側油室20b内をシャフト20aが貫通しているため、前側油室20bの断面積は後側油室20cの断面積より小さい。しかしながら、ノズルタッチ力を発生する際に、作動油が供給される側を前側にすることで、射出装置2上に油圧シリンダ20を配置することができ、成形機をコンパクトにすることができる。
油圧シリンダ20の前側に作動油を供給する通路30の途中には、圧力センサ36が設けられる。圧力センサ36は通路30の油圧を検出して、検出信号を制御装置26に送信する。圧力センサ36は油圧シリンダ20の近傍の通路30に設けられており、圧力センサ36により検出した油圧は油圧シリンダ20内の油圧にほぼ等しい。したがって、制御装置26は圧力センサ36からの検出信号により油圧シリンダ20内の油圧を認識することができる。油圧シリンダ20の前側の油圧により、射出装置2を前方に移動してノズル14を押し付けるノズルタッチ圧が発生するので、圧力センサ36の検出信号はノズルタッチ圧を表す信号でもある。
油圧ポンプ24が作動して作動油が吸入吐出口24aから吐出されて油圧シリンダ20の前側に供給されると、射出装置2は前方に移動する。射出装置のノズル14が固定プラテン8又は固定金型6に当接する(ノズルタッチ)。ノズルタッチが行なわれてから引き続き作動油が油圧シリンダ20の前側に供給されると、油圧シリンダ20内の前側の油圧は上昇し、これによりノズルタッチ圧は上昇する。ノズルタッチ圧が所望の高圧となった時点で、すなわち、圧力センサ36の検出信号が所定のレベルとなった時点で、制御装置26は油圧シリンダ20内の圧力が所望の高圧で一定となるようにサーボモータ28の回転を制御して油圧ポンプ24の出力を制御する。これにより、油圧シリンダ20の前側には油圧が保持され、ノズルタッチ圧も所望の圧力のまま保持される。
なお、上述の圧力センサ36は油圧シリンダ20の内の圧力をノズルタッチ圧として検出するが、ノズルタッチ圧を検出するのであれば、例えばロードセルのような他のセンサを用いてもよい。
ノズルタッチ圧を高圧に維持した後、ノズルタッチ圧を低減する際には、サーボモータ28を逆回転させて油圧ポンプ24を逆回転することにより、油圧シリンダ20内の前側の作動油は油圧ポンプ24の吸入吐出口24aに流入し、吸入吐出口24bから通路32に吐出され、油圧シリンダ20の後側に供給される。これにより、油圧シリンダ20の前側の圧力が低減され、ノズルタッチ圧は低減される。ノズルタッチ圧が所定の低圧になった時点でサーボモータ28の回転速度を制御することにより、低圧のノズルタッチ圧を維持することができる。
また、油圧シリンダ20の前側に作動油が供給されて油圧シリンダ20が作動する際には、油圧シリンダ20の後側の作動油は通路32を流れて吸入吐出口24bから油圧ポンプ24に吸引され、吸入吐出口24aから通路30に吐出され、油圧シリンダ20の前側に供給される。
射出装置2を後退させる際には、サーボモータ28の回転を反対向きとし、油圧ポンプ24の吸入吐出口24bから作動油を吐出して通路32を介して油圧シリンダ20の後側に作動油を供給する。
なお、本実施例では通路30と通路32との間に逆止弁38,40が設けられており、2つの逆止弁38,40の間の部分はドレン通路39によりタンク34に接続されている。この逆止弁38,40及びドレン通路39は、油圧シリンダ20の前側と後側の容積の違いに起因する作動油の循環量の過不足を調整するためのドレン回路を形成している。例えば射出装置2を前進させる際に、配管30より前側油室20bへ作動油が供給されるとともに、後側油室20cからは作動油が吐出される。この場合、後側油室20cの断面積が前側油室20bの断面積より大きいため、後側油室20cから吐出される作動油の量は、前側油室20bへ供給される作動油の量より多くなる。一方、射出装置2を前進させるため、ポンプ24より作動油が配管30へ供給され続けると、配管30内の作動油の圧力が高くなり、配管30内の作動油が配管30a伝って、配管32の逆止弁44を開くように作用する。そして、逆止弁40が開くと、後側油室20cより吐出された作動油が逆止弁40、ドレン通路39を通ってタンク34へ戻される。したがって、配管30及び配管32の作動油の過不足分を調整することができる。
上述の油圧回路22では、弁又はバルブの数が少ないのでシステム構成が簡素化されコンパクトになる。また、バルブ動作によるノイズの影響が少ない。さらに、油圧回路22は、油圧配管が簡素化されているため作動油漏れを起こすおそれのある部分が少なく、信頼性に優れている。
また、上述の油圧回路22では、油圧シリンダ20の前側あるいは後側の高圧の作動油は一旦油圧ポンプ24に吸入されてから油圧ポンプにより吐出される。この際、余分な作動油のみがタンク34に戻される。したがって、高圧の作動油が直接タンクに戻されることはない。高圧の作動油を直接タンクに34に戻した場合、タンク34内の油面が波打って作動油に空気が混入するおそれがある。特にタンク34を小さくした場合には、空気が混入する可能性がより高くなる。しかし、本実施例における油圧回路22では高圧の作動油が直接タンク34に戻ることはないため、これに起因する空気の混入を防止することができる。
また、上述の油圧回路22では、油圧シリンダ20の前側からの作動油を油圧ポンプ24を介して油圧シリンダ20の後側に戻している。ここで、油圧シリンダ20の前側からの作動油をタンク34に戻してから、油圧ポンプ24で吸引し、油圧シリンダ20の後側に供給する場合、圧抜き分の作動油(油圧シリンダ20の前側の作動油)をタンクに戻してから、油圧ポンプで吸引して吐出する必要があり、射出装置の後退動作を開始するにはタンクへの作動油の戻りを待たなければならない。しかし、上述の本実施例による油圧回路22では、作動油は油圧ポンプ24に戻って直ちに吐出されるので、直ちに後退動作を開始でき、成形のサイクル時間を短縮することができる。
以上のように、本実施例ではサーボモータ28により駆動されるポンプ24により油圧を発生し、圧力センサ36からの検出信号に基づいて制御装置26によりサーボモータ28の回転速度及び回転方向を制御するだけの簡単な構成で、ノズルタッチ圧を所望の圧力に制御して保持することができる。
また、油圧シリンダ20の前側と後側の作動油を油圧ポンプを介して循環するだけなので、油圧ポンプ24の吸入圧は大気圧より高い油圧シリンダ20での圧力となり、圧縮比が低減されるため効率的に油圧ポンプ24を作動させることができる。また、作動油の圧力を大気圧に戻してから(すなわちタンク34に戻してから)再び加圧する必要がなく、作動油の発熱も抑えられるので、作動油の劣化を抑制することができる。
また、油圧回路22には作動油の流れを制限するような絞りは設けられていないため、油圧シリンダ20の圧力制御の応答性がよく、例えば、後退成形時の射出装置2の後退動作を迅速に行なうことができる。さらに、作動油の発熱も抑えることができる。
また、圧力センサ36の検出信号に基づいて油圧ポンプ24の回転方向を切替えて作動油の流れを切替えるため、圧力スイッチ等を用いて圧力を制御する油圧制御回路に比較すると回路構成が簡単になる。
さらに、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ20)を用いているため、ボールネジのように摩耗する部品は必要なく、作動寿命の長い移動機構を実現することができる。
次に、本発明の第2実施例について、図2を参照しながら説明する。図2は本発明の第2実施例による電動射出成形機に設けられた可塑化移動装置の全体構成を示す図である。図2において、図1に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
本発明の第2実施例による可塑化移動装置は、上述の第1実施例と基本的な構成は同じであるが、油圧回路22に安全弁42,44を設けた点が異なる。安全弁42,44は油圧が設定圧力となったら圧力を開放し、油圧が設定圧力以上とならないようにするリリーフ弁である。設定圧力(リリーフ圧力)は、油圧回路の通常の動作ではならないような高い圧力に設定され、安全弁42,44は、油圧回路がなんらかの不具合で異常な高圧になった時に、油圧回路を保護する機能を果たす。
具体的には、安全弁42は通路30の途中に接続され、通路30の油圧が異常な高圧となった際に圧力を逃がして、通路30の破損を防止する。同様に、安全弁44は通路32の途中に接続され、通路32の油圧が異常な高圧となった際に圧力を逃がして、通路32の破損を防止する。
以上のように、本実施例によれば、上述の第1実施例で得られる効果に加えて、安全弁42,44を設けることにより、例えば油圧ポンプ24が故障して異常な高圧が発生した場合であっても、油圧回路22において設定圧力以上にならないように圧力を逃がすことができ、油圧回路22の破損などを防止することができる。
次に、本発明の第3実施例について、図3を参照しながら説明する。図3は本発明の第3実施例による電動射出成形機に設けられた可塑化移動装置の全体構成を示す図である。図3において、図1及び図2に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
本発明の第3実施例による可塑化移動装置は、上述の第1実施例と基本的な構成は同じであるが、油圧回路22に安全弁42,44及び切替弁46を設けた点が異なる。安全弁42,44は上述の第2実施例と同様な機能を果たす。切替弁46は、通常のブロック式切替弁でもよいが、図3に示すようにチェック弁式切替弁とすることが好ましい。
本実施例では、通路30に切替弁46を設けて、充填工程及び保圧工程において切替弁46を閉じておくことにより、油圧シリンダ20の前側の圧力を保持してノズルタッチ圧を高圧に保持する。したがって、切替弁46が閉じている間は、油圧ポンプ24を駆動せずに停止するか、アイドリング駆動としておくことができる。これにより、油圧ポンプ24の駆動時間を低減することがで、サーボモータ28の消費電力を低減することができる。また、ノズルタッチ圧を低圧に保持する際にも、切替弁46を閉じて油圧ポンプの駆動を停止するか、アイドリング駆動とすることもできる。
以上のように、本実施例によれば、上述の第2実施例で得られる効果に加えて、切替弁46を通路30に設けることにより、油圧ポンプ24が駆動している時間を短縮することができ、サーボモータ28の消費電力を低減することができる。
次に上述の第1及び第2実施例による可塑化移動装置を用いた射出成形機により行なわれる成形工程について説明する。
図4は上述の実施例による可塑化移動装置が設けられた射出成形機において行なわれる成形工程の一例を示すフローチャートである。図3に示す成形工程は「ノズルタッチ力圧抜き成形工程」と称され、金型を開く際にノズルタッチ圧を低減する成形工程である。金型を開く際にノズルタッチ圧を低減することを「脱圧」と称する。
まず、ステップS1において、サーボモータ28を駆動して油圧ポンプ24を作動し、射出装置(射出ユニット)2を前進させてノズルタッチを行い、ノズルタッチ圧を高圧にする。圧力センサ36の検出信号に基づいてノズルタッチ圧が所望の高圧となった時点でサーボモータ28を一定の回転速度に制御し、油圧ポンプ24の出力をそのまま維持する。これにより、油圧シリンダ20の前側の油圧は所望の高圧に保持され、ノズルタッチ圧も高圧に保持される。ここで、高圧とは充填工程及び保圧工程において、溶融樹脂がノズル14と固定金型6との間から漏れ出ないような接触圧力である。
ノズルタッチ圧が所望の高圧に保持されたまま、ステップS2において充填工程が行われ、溶融した樹脂が射出装置2からノズル14を介して金型に注入され、充填される。充填工程が終了すると、ステップS3において保圧工程が行われ、金型に充填された樹脂に圧力が加えられたまま保持される。これにより金型内全体に溶融樹脂が充填される。
ステップS3の保圧工程が終了すると、処理はステップS4,S5,S7に移行する。ステップS4では冷却工程が行われ、金型を冷却することで金型内の溶融樹脂を冷却して固化する。冷却工程が開始されると同時に遅延カウントが開始される。遅延カウントが終了した時点、すなわち遅延時間に達すると、ステップS5において油圧ポンプを逆転させて駆動し、射出装置2を後退させる(「冷却中後退」)。ステップS6では、タイマのカウントが開始され、続いて行なわれる「脱圧」を開始するまでの時間を計測する。また、金型において冷却工程が行なわれている間、射出装置2ではステップS7においてスクリュ12を回転しながら後退させて溶融樹脂の計量工程を行なう。
なお、「冷却中後退」を行なう場合は、射出装置2が冷却工程において後退してノズルタッチは解除されるので、後述のステップS8〜S11における脱圧は行なわれない。また、「冷却中後退」ではなく、計量工程が終了してから射出装置2の後退(「計量後後退」)を行なってもよい。また、後述のステップS8〜S11においてノズルタッチ圧を低圧とする「脱圧」を行なう場合は、上述のステップS4における遅延カウンタ及びステップS5の「冷却中後退」又は「計量後後退」は行なわれない。本実施例では、「冷却中後退」を行なうモードと、「計量後後退」を行なうモードと、「脱圧」のみを行なうモードのうちいずれかのモードを選択することができる。また、「冷却中後退」、「計量後後退」、又は「脱圧」を行なうタイミングはそれぞれタイマのカウント値により設定することができる。
ステップS6において、所定のカウントを終了したら、ステップS8においてサーボモータ28の回転速度を低減して油圧ポンプ24の出力を低減する。これにより、油圧シリンダ20の前側の油圧を低減し、ノズルタッチ圧を低圧とする「脱圧」を行なう。ここで、低圧とは計量工程において背圧がかかった場合に溶融樹脂がノズル14と固定金型6との間から漏れ出ないような圧力である。続いて、ステップS9において、ノズルタッチ圧を低圧に維持するように油圧ポンプ24の出力(すなわちサーボモータ28の出力)を維持しながら、可動金型10を移動して金型を開き、金型から成形品を取り出して、今回の成形工程を終了する。
以上の成形工程に用いられているノズルタッチ方法では、圧力設定値を複数段設けることで、油圧ポンプを駆動しながらノズルタッチ圧を高圧に保持し、その後、油圧ポンプの出力を低減することによりノズルタッチ圧を低減して保持することができる。したがって、油圧ポンプ(サーボモータ)の操作だけで、ノズルタッチ圧を制御することができ、機械的な移動動作などが不要であり、簡単な構成でノズルタッチ圧を制御することができる。
また、高圧の設定値と低圧の設定値は、予め定められているスクリュの仕様値を基に算出してもよく、成形中に形成される充填圧の検出値や背圧の検出値を基に、算出するようにしてもよい。
図5は上述の実施例による可塑化移動装置が設けられた射出成形機において行なわれる成形工程の一例を示すフローチャートである。図5に示す成形工程は「ノズルタッチ力タッチバック成形工程」と称され、金型を開く際に射出装置2を後退させてノズル14を固定金型6から一時的に切り離す成形工程である。
ステップS1〜S7までは、図4に示す「ノズルタッチ力圧抜き成形工程」と同じである。ステップS6においてタイマカウントが終了すると、ステップS10においてサーボモータ28の回転が切替えられて、油圧ポンプ24が逆転される。これにより、油圧ポンプ24は、吸入吐出口24aから作動油を吸引し、吸入吐出口24bから吐出することとなる。これにより、ステップS11において、作動油は油圧シリンダ20の前側から後側へと移送され、射出装置2は後退する(「計量後後退」に相当する)。射出装置2が後退してノズル14が固定金型6から離間したら(タッチバック)、ステップS12において可動金型10を移動して金型を開き、金型から成形品を取り出して、今回の成形工程を終了する。
以上の成形工程に用いられているノズルタッチ方法では、油圧ポンプを駆動しながらノズルタッチ圧を高圧に保持し、その後、油圧ポンプを逆転することにより射出装置を後退させてノズルタッチを解除する。したがって、油圧ポンプ(サーボモータ)の操作だけで、ノズルタッチ圧を制御することができ、機械的な移動動作などが不要であり、簡単な構成でノズルタッチを制御することができる。
次に、上述の第3実施例による可塑化移動装置を用いた射出成形機により行なわれる成形工程について説明する。
図6は上述の第3実施例による可塑化移動装置が設けられた射出成形機において行なわれる成形工程の一例を示すフローチャートである。図6に示す成形工程は「ノズルタッチ力圧抜き成形工程」と称され、金型を開く際にノズルタッチ圧を低減する成形工程である。金型を開く際にノズルタッチ圧を低減することを「脱圧」と称する。
図6に示す成形工程は、図4に示す形成工程と基本的に同じであるが、切替弁46を閉じて高圧又は低圧のノズルタッチ圧を保持する点が異なる。すなわち、図6に示す成形工程では、ステップS1においてノズルタッチ圧が高圧となった時点で、切替弁46を閉じ、油圧ポンプ24の駆動を停止する。そしてステップS6のタイマカウントが終了したら、ステップS21において切替弁46を開き、油圧シリンダ20の前側の圧力を低減して「脱圧」を行なう。油圧シリンダ20の前側の圧力が所定の低圧となったら、ステップS22において再び切替弁を閉じて低圧を保持する。その後、ステップS23において脱圧状態のまま金型を開いて成形品を取り出す。
図7はは上述の第3実施例による可塑化移動装置が設けられた射出成形機において行なわれる成形工程の一例を示すフローチャートである。図4に示す成形工程は「ノズルタッチ力タッチバック成形工程」と称され、金型を開く際に射出装置2を後退させてノズル14を固定金型6から一時的に切り離す成形工程である。
ステップS1〜S7及びS21までは、図6に示す「ノズルタッチ力圧抜き成形工程」と同じである。ステップS21において切替弁46が開かれると、ステップS24において油圧ポンプ24(サーボモータ28)が駆動され(ステップS1とは反対に駆動)、油圧シリンダ20の前側の作動油は油圧ポンプ24により油圧シリンダ20の後側に移送される。これにより、ステップS25において射出装置2が後退し、ノズル14は固定金型6から離れる。その後、ステップS26において可動金型10を移動して金型を開き、金型から成形品を取り出して、今回の成形工程を終了する。
なお、本実施例では油圧シリンダを用いた例について説明したが、圧縮空気などで駆動されるエアシリンダを油圧シリンダの代わりに用いてもよい。
本発明の第1実施例による電動射出成形機に設けられた可塑化移動装置の全体構成を示す図である。 本発明の第2実施例による電動射出成形機に設けられた可塑化移動装置の全体構成を示す図である。 本発明の第3実施例による電動射出成形機に設けられた可塑化移動装置の全体構成を示す図である。 本発明の第1及び第2実施例による可塑化移動装置が組み込まれた電動射出成形機において行なわれる「ノズルタッチ力圧抜き成形工程」のフローチャートである。 本発明の第1及び第2実施例による可塑化移動装置が組み込まれた電動射出成形機において行なわれる「ノズルタッチ力タッチバック成形工程」のフローチャートである。 本発明の第3実施例による可塑化移動装置が組み込まれた電動射出成形機において行なわれる「ノズルタッチ力圧抜き成形工程」のフローチャートである。 本発明の第3実施例による可塑化移動装置が組み込まれた電動射出成形機において行なわれる「ノズルタッチ力タッチバック成形工程」のフローチャートである。
符号の説明
2 射出装置
4 シャーシ
6 固定金型
8 固定プラテン
10 可動金型
12 スクリュ
14 ノズル
20 油圧シリンダ
22 油圧回路
24 油圧ポンプ
26 制御回路
28 サーボモータ
30,32 通路
34 タンク
36 圧力センサ
38,40 逆止弁
39 ドレン通路
42,44 安全弁
46 切替弁

Claims (10)

  1. 射出成形機に設けられた射出装置を金型に対して移動するための可塑化移動装置を有する電動射出成形機の可塑化移動装置であって、
    該射出成形機を移動するための駆動源として設けられ、前記射出装置を前記金型に向かう方向に移動するための第1の油室と前記射出装置を前記金型から離間する方向に移動するための第2の油室とを有する液圧アクチュエータと、
    該液圧アクチュエータを駆動するためのものであって、出力液圧を制御することのできる両方向回転可能で第1の吸入吐出口と第2の吸入吐出口とを有する液圧源と、
    該液圧源の第1の吸入吐出口と前記液圧アクチュエータの第1の油室とを接続、前記液圧源の第1の吸入吐出口から吐出される作動媒体を前記液圧アクチュエータの第1の油室に供給して前記射出装置を前記金型に向かう方向に移動するための第1の作動媒体流路と、
    前記液圧源の第2の吸入吐出口と前記液圧アクチュエータの第2の油室とを接続前記液圧アクチュエータの第1の油室に供給された作動媒体を圧抜きを行なわずに前記第1の作動媒体流路で前記液圧源の第1の吸入吐出口に吸入し、前記液圧源の第2の吸入吐出口から吐出される作動媒体を前記液圧アクチュエータの第2の油室に供給して前記射出装置を前記金型から離間する方向に移動するための第2の作動媒体流路と、
    前記射出装置の前記金型に対する押圧力を検出し、検出信号を出力する圧力検出器と、
    該検出信号に基づいて前記液圧源を駆動するサーボモータの動作を制御する制御装置と
    を有することを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置。
  2. 請求項1記載の電動射出成形機の可塑化移動装置であって、
    前記第1の作動媒体流路を開閉する切替弁をさらに有し、
    前記制御装置は、前記検出信号に基づいて前記液圧源及び前記切替弁の動作を制御することを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置。
  3. 請求項2記載の電動射出成形機の可塑化移動装置であって、
    前記切替弁は、前記液圧源から前記液圧アクチュエータへ向かう作動媒体の流れに対する逆止弁としての機能を有することを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置。
  4. 請求項2又は3記載の電動射出成形機の可塑化移動装置であって、
    前記制御装置は、前記圧力検出器が検出した押圧力が入力装置にて設定された設定値となるように、前記検出信号に基づいて前記切替弁の動作を制御し、該設定値は、少なくとも高圧設定値、及び、低圧設定値の2つの設定値を含むことを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置。
  5. 請求項4記載の電動射出成形機の可塑化移動装置であって、
    計量工程完了後、若しくは冷却工程中に前記低圧設定値を用いて制御することを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置。
  6. 請求項4記載の電動射出成形機の可塑化移動装置であって、
    充填工程中には、前記高圧設定値を用いて制御することを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置。
  7. 請求項4乃至6のうちいずれか一項記載の電動射出成形機の可塑化移動装置であって、
    前記制御装置は、少なくともスクリュの仕様値、検出された充填圧値、及び検出された背圧値のうちの一つの値を基に、前記設定値を算出することを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置。
  8. 請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の電動射出成形機の可塑化移動装置であって、
    前記制御装置は、冷却工程開始から所定の時間が経過した後、前記射出装置の後退動作若しくはノズルタッチ圧の低圧制御の少なくとも一方の制御を行なうことを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置。
  9. 請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の電動射出成形機の可塑化移動装置であって、
    前記制御装置は、計量工程開始から所定の時間が経過した後、前記射出装置の後退動作若しくはノズルタッチ圧の低圧制御の少なくとも一方の制御を行なうことを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置。
  10. 請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の電動射出成形機の可塑化移動装置であって、
    前記液圧源は、逆回転可能なサーボモータにより駆動される液圧ポンプであり、
    前記サーボモータの回転方向及び回転速度は前記制御装置により制御されることを特徴とする電動射出成形機の可塑化移動装置。
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