JP4459373B2 - 生産能力の取引方法およびシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生産能力の取引方法および取引システムに関し、特に、半導体製造プロセス等、取り扱う製品の設計ルール等で層別される製造能力の取引に適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年コンピュータネットワークの進展に伴い、各種電子商取引が盛んに行われつつある。たとえばインターネットを用いた金融取引等がその代表例である。また、トラックの輸送能力等をネットワーク上の取引サイトを利用して取引される例がある。
【0003】
一方、半導体産業における生産能力は、半導体装置のプロセス技術と密接に関連するものであり、各社の技術ノウハウ等に関連して各種のカテゴリが存在する。たとえばバイポーラ素子を形成する工程では、不純物の拡散工程に微妙な制御が必要であり、エピタキシャル成長等特有の工程が介在する。DRAMを代表とするメモリ素子(MOSトランジスタ)が形成される工程では、その高集積化の必要性から高度な異方性エッチング工程が要求される。高速性が要求されるロジック回路がCMOSトランジスタを基本素子として形成される場合にはサリサイド技術の適用や多層配線工程に必須となりつつあるCMP(Chemical Mechanical Polishing)工程が重要になる。
【0004】
このように半導体産業で適用される生産能力は、フォトリソグラフィ、被膜形成等のクラスタ技術に深く関連した固有技術の集積であり、単に月当たりに処理できるウェハ枚数だけでは図れない各種の種類(属性)が存在する。つまり、バイポーラ素子用に設計された製造ライン(生産能力)は単純にCMOSプロセスに転用することはできないし、その逆もまた真である。
【0005】
ところが、半導体産業においては、投資負担の軽減と迅速な技術進歩への適応の必要性から、半導体製品の設計段階と、製造あるいは設計に必要な情報(IP)の開発あるいは供給と、実際の製造工程とを分けて分業で行われる事業形態が進展している。すなわち、製品のマーケッティングから企画を行う部門、この企画を製品仕様に焼きなおして必要な性能あるいは機能を実現する回路を設計する部門、設計回路からマスクを起こす部門、このマスクを用いてウェハプロセスを実施する前工程部門、チップをモールドし完成品検査、信頼性を検査する後工程部門等を分けて、異なる事業主体の連携で一連の製品が開発製造されるような事業形態が進展している。この前提として、たとえば製造部門についていえば、採用できる製造工程の種類をできるだけ規格化し、製造し得る製品の種類を多くカバーするように製造ラインが設計されていることが必要である。現状では製造ライン(製造方式)の規格化が進められ、2〜3種類の製造ラインに集約されつつある。この2〜3種類の製造ラインでほとんどの半導体製品が製造可能になりつつある。
【0006】
このような事業形態の進展の結果として、ウエハプロセス(前工程)あるいは後工程を専業とする企業(一般にファウンドリと称される)や製品の企画段階から回路設計にいたる部門に経営資源を集中し、製造を外部委託する企業(一般にファブレスメーカと称される)が誕生している。ファブレスメーカは、製品企画や設計に人的あるいは金銭的資源を集中し、より効率的な経営を実現して企業の競争力を高めようとしている。一方、ファウンドリは、製造に必要な設備投資あるいはプロセス開発に人的資金的な資源を集中し、当該分野での競争力を高めようとしている。ファウンドリは、ファブレスメーカからの製造委託を受けて事業を行う以外に、半導体製品のユーザである企業の設計部門から委託を受けて製造する場合や、半導体製品の設計をサポートする企業からの委託、半導体メーカ(半導体製品を設計から製造まで一貫して事業展開する企業)の設計部門から委託を受けて製造する場合もある。
【0007】
このような背景の下に、ファブレスメーカ、ユーザ設計部門、設計サポート会社あるいは半導体メーカ設計部門等生産委託者と、ファウンドリとの間で、生産委託契約が個別に行われている。一般的には一定の期間(たとえば6ヶ月乃至1年程度)の長期委託生産の契約が結ばれる。これにより生産委託者にとっては一定期間の生産能力が確保でき、契約の他方当事者であるファウンドリには設備の稼動状況にかかわらず前記期間の収入が確保できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記生産委託者にとっては、前記契約で一定期間の生産能力が確保できる利益があるものの、半導体製品の需要は一定ではなく、ある期間(たとえば7月)には需要が落ち込んでその期間内での生産能力に余剰を生じ、一方、他の期間(たとえば9月)には需給が逼迫して、需要に応える生産量がその期間の製造能力を超える場合がある。
【0009】
このような場合、余剰生産能力を他の生産委託者に売却すれば設備の遊休状態を回避でき、投入資金を有効に回収できる。一方、生産能力が不足している場合には、他のファウンドリあるいはその期間の設備使用権を持つ生産委託者との間でその期間の設備使用権を取引すれば、半導体製品の販売機会の逸失を回避できる。よって、適正な価格で生産能力が取引される市場の形成が望まれる。
【0010】
なお、前記生産能力には、半導体製品のウェハプロセス(前工程)のほかに、ウェハプロセス以降のチップモールド等の後工程、製品検査(信頼性検査を含む)等の検査工程も含む。
【0011】
本発明の目的は、たとえば半導体製品のような、その能力に各種の技術的カテゴリ(属性)を有する生産能力を取引する市場の形成手段を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、取引された生産能力の信頼性を担保することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、生産能力の取引に際し、取引者に有益な情報を提示することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、取引に関するトラブルを解決する手段を提供し、前記トラブル情報等を活用して、適正な価格情報を生成し提示する手段を提供することにある。
【0015】
また、本発明は、半導体や鉄鋼など巨額な設備を必要とする産業において、安定的に操業が可能となる手段を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の取引方法は、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークを用いた生産能力の取引方法であって、取引者が取引サイトのサーバに接続し、取引者のコンピュータ表示装置に入力画面を表示するステップと、取引者が入力画面に、生産能力に関連付けられたコード情報と、売りまたは買い情報と、取引の価格、規模、期日および期間に関する情報とを入力し、入力された各情報を取引サイトのサーバに送信し、送信された情報を取引情報としてサーバの取引情報ファイルに記録するステップと、取引情報ファイルを検索し、取引情報間の、コード情報を参照して生産能力に関連する属性情報の一致を判断し、売りまたは買い情報に対応する買いまたは売り情報であるかを判断し、取引の価格、規模、期日および期間の要求に合致するかを判断するステップと、を有し、各判断にパスした取引情報の取引者間で取引を成立させるものである。
【0017】
また、本発明の取引システムは、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークを用いた生産能力の取引システムであって、取引者が取引サイトのサーバに接続し、取引者のコンピュータ表示装置に入力画面を表示する手段と、取引者が入力画面に、生産能力に関連付けられたコード情報と、売りまたは買い情報と、取引の価格、規模、期日および期間に関する情報とを入力する手段と、入力された各情報を取引サイトのサーバに送信する手段と、送信された情報を取引情報としてサーバの取引情報ファイルに記録する手段と、取引情報ファイルを検索し、取引情報間の、コード情報を参照して生産能力に関連する属性情報の一致を判断し、売りまたは買い情報に対応する買いまたは売り情報であるかを判断し、取引の価格、規模、期日および期間の要求に合致するかを判断する手段と、各判断にパスした取引情報の取引者間で取引を成立させる手段と、を有する。
【0018】
すなわち本発明の取引システムあるいは取引方法に参加または使用を希望する工場やそれらの工場に製造委託する製造委託者は、あらかじめ本実施の形態の取引システムに登録し、VPNやSSLなど既存のセキュリティ対策を講じた上で本実施の形態の取引システムに接続する。本実施の形態の取引システム上では同種の製品を製造する工場のある特定の時期の生産能力をこのコンピュータシステム上で売買取引する。
【0019】
このような取引方法あるいは取引システムによれば、取引者間で生産能力(余剰生産能力)の取引が可能になる。これによって生産能力の売り手にとっては、余剰に起因する生産設備の遊休化が防止でき、生産設備の稼働率を高めることができる。他方、生産能力の買い手にとっては、適正な価格でスポット的に生産能力の調達ができる。これにより、製品需要の波にかかわらず、安定的に製造設備を稼動させ、一方安定的に生産能力を調達して製品販売の機会逸失を防止できる。また、本発明はコンピュータシステムまたはコンピュータネットワークを用いているので、取引の場所的制約がなく、時間的にも迅速な取引が可能になる。
【0020】
なお、前記取引の成立は、前記判断をパスした取引情報をリスト化し、リスト内から後にオファーした取引者が選択することにより成立する第1の構成、リスト内の取引情報から後にオファーした取引者にとって最も有利な条件でサーバが自動的に選択することにより成立する第2の構成、判断をパスした取引情報が一組である場合には、一組の取引情報を提示した取引者間で成立する第3の構成、の何れかの構成を有することができる。
【0021】
また、前記生産能力の属性情報には、生産能力により製造可能な製品の種別、生産能力により製造された製品の歩留まりを含むことができる。本発明は、単なる生産能力の取引ではなく、前記のような属性情報で層別された生産能力を取引する点に特徴がある。このように層別された生産能力の取引では、属性情報が取引の内容を画定する重要な条件情報として機能し、本発明のコンピュータネットワークまたはコンピュータシステムを用いて取引する取引形態においては、システム(サーバ)により前記層別情報(属性)を自動的に判別できるので、より効率的な取引を実現できる。
【0022】
また、前記生産能力の履行による製品の製造において、製品の歩留まりが、属性情報に含まれる製品の歩留まりに達しなかった場合には、一定の算定基準による違約金を、取引の売り手側取引者に課すことができる。このような違約金を定めることにより取引の信頼性を高めることができる。
【0023】
また、前記サーバには予め審査された取引者に関する信用情報が蓄積された登録者ファイルを備え、登録者ファイルの取引者のうち、先物取引を許容された取引者にのみ、取引情報の送信または記録の際に、取引者の現に所有する生産能力を超えて取引を許容することができる。また、前記取引の内容に、生産能力の買いまたは売り取引を所定の価格および期日の条件で行使する権利を売買する選択を含めることができる。このようにいわゆる先物(フューチャ)取引あるいはオプション取引を認めることにより、積極的にリスクを取る者と安全を重視する者との取引要求を満足して、いわゆる延取引(フォワード取引)のみの場合に比較してより多様性に富んだ取引形態を提供でき、価格の安定に寄与する。
【0024】
また、本発明の取引方法あるいは取引システムは、特に半導体ウエハプロセスの生産能力、半導体チップのパッケージング工程の生産能力または製品検査工程の処理能力に適用できる。本発明のように生産能力の属性が重要視される取引は、半導体製品の生産能力に好適である。
【0025】
また、前記取引方法またはシステムでは、取引情報の入力に際し、取引者の要請により、取引者が必要とする製品の仕様および数量と、製品の設計ルールとを含む情報を入力することにより、製品の製造に必要な生産能力の属性を選択し、コード情報を自動的に提示することができる。このように取引に際して有益な情報を提示することにより、取引者の便宜を図り、本発明の取引システム、方法を利用しやすくなる。加えて、ファウンドリを選択する際に必要な詳細情報を知りえないユーザ、たとえば半導体製品のユーザに対しても本取引への参加を可能にする。つまり、半導体製品のユーザは、単に製品の仕様を入力するだけで、その仕様を実現するに必要な詳細な情報を知らなくても本システムが自動的に最適な属性を持つ製造能力を選択する。これにより、半導体製品のユーザは設計サポート会社等生産委託者に頼らなくともあるいは生産委託者を介さなくとも生産能力を確保して半導体製品の調達を可能にする。
【0026】
また、前記取引方法またはシステムでは、取引者の要請により、取引者が必要とする製品の仕様と、製品の設計ルールとを含む情報を入力することにより、製品の設計に必要な設計情報または設計その他関連するサービスを提供する用意のある事業者の情報を提示し、入札により設計情報または事業者のサービスを調達することができる。前記同様に半導体製品のユーザの本取引への参加を可能にし、また、ユーザの便宜を図ることができる。
【0027】
また、前記取引方法またはシステムでは、取引の状況を記録する取引状況ファイルを有し、取引状況において品質トラブル、納期遅れその他の価格低減要因を数値化して取引状況ファイルに記録し、価格低減要因を有する生産能力の提供者または設計その他関連するサービスの提供者の価格を一定の料率に応じて低減した上で取引を行うことができる。このようにトラブル情報を取引にフィードバックすることにより、より適正な取引価格を提示して取引の公正さを担保することができる。
【0028】
なお、本明細書においてインターネットとは、複数のコンピュータシステムで構成されたコンピュータネットワークあるいは単独で使用されるコンピュータシステム間を通信回線を介して接続された世界的規模のコンピュータネットワークを言うが、本明細書では、TCP/IP等の特定のプロトコルを用いて通信が行われているか否かは問われず、コンピュータあるいはコンピュータネットワーク間の通信を適当なプロトコルを適用して行えるグローバルなネットワーク環境を言うものとする。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、産業分野としてはもっとも委託生産形態が発達している半導体産業を例にとって説明する。
【0030】
図1は、本発明の取引システムの一例を示した概念図である。本実施の形態の取引システムは、インターネット100に接続されたサーバ101、ワークステーション102、パソコン103、メインフレーム104等を有する。サーバ101、ワークステーション102、パソコン103、メインフレーム104は、インターネットに接続して情報のやりとりを行うことができる情報処理機器であり、その他の情報処理機器、たとえば携帯情報端末、携帯電話、インターネットテレビ等、あらゆる情報端末を含む。本実施の形態では、取引者が利用できるコンピュータシステムとしてサーバ101、ワークステーション102、パソコン103、メインフレーム104例示するが、その他の情報処理機器であっても良いことは勿論である。
【0031】
サーバ101には、ターミナルアダプタTAが接続され、ターミナルアダプタTAを介して情報の入出力が行われる。サーバ101以外のワークステーション102、パソコン103、メインフレーム104等にも同様にターミナルアダプタTAが接続されるが、図では省略している。ターミナルアダプタTAに代えて、アクセスポイントルータやモデム等のデータ変復調装置を用いることもできる。なお、本実施の形態では取引サービスの事業者がサーバ101を利用する例を説明するが、事業者がその他の情報処理機器を用いても良いことは勿論である。
【0032】
メインフレーム104には端末104a、104b、104cが接続され、さらに多数の端末が接続されてもよい。また、図示はしていないが、インターネットゲートを介して他のネットワークに接続されていても良い。他のネットワークとしては、商用的なネットワーク、企業内のイントラネット等を例示できるが、これら代表的なネットワークに限られず、インターネットに接続可能なあらゆるネットワークが含まれる。
【0033】
なお、本実施の形態ではインターネット100を介して生産能力が取引される例を説明するが、インターネット100に代えて、メインフレーム、あるいはワークステーション等をサーバとしてクライアント/サーバシステムを構築してもよい。その他コンピュータシステムを用いて情報の授受が行えるシステムを用いて生産能力の取引を行う場合にも本発明を適用できる。すなわち、単一のコンピュータシステム(クライアント/サーバシステム)を中心に端末(クライアントシステム)を構成し、この端末(クライアントシステム)を取引者が利用し、サーバを取引サービス事業者が運営することができる。
【0034】
図2は、取引事業者により利用されるサーバ101のシステム構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態のサーバ101は、制御手段110、インターネット100に接続された入力制御手段111および出力制御手段112を有する。制御手段110は、入力制御手段111を介して伝送されたバイナリデータを各種ファイルに転送制御し、各種ファイルからのバイナリデータの読み出しおよび出力制御手段112を介したインターネット100への情報の送出を行う。制御手段110は、その他サーバ101内での各種ファイル間のデータの読み出しもしくは書き込み、および検索等の演算処理を行う。入力制御手段111および出力制御手段112は、たとえば前記ターミナルアダプタTA等である。
【0035】
サーバ101には、メインプログラムファイル113、属性情報ファイル114、取引情報ファイル115、決済情報ファイル116、ユーザ支援用データベースファイル117格納される。これらのファイルは、単一の記憶装置内に領域を設けて記録されても良く、また、物理的には別個の記憶装置を複数用いて記憶されても良い。また、各ファイルは制御手段110に直接制御される必要はなく、サーバ101の外部に設けられ、他のコンピュータシステムを介して制御されても良い。前記各ファイルはサーバ101の制御手段110により制御可能な状態に置かれることが要求されるが、論理的に制御可能であれば良く、物理的な記憶装置との一体性、サーバ101との一体性は要求されない。
【0036】
プログラムファイル113には、本実施の形態の取引方法を制御するプログラムが格納される。すなわち、各種画面の表示用プログラム、登録者のIDおよびパスワードをチェックするプログラム、生産能力の属性情報を蓄積するプログラム、検索プログラム、取引情報、決済情報等を管理するプログラム、ユーザ支援用のデータベース管理用のプログラム等である。本プログラムの詳細な動作は後に説明する。
【0037】
属性情報ファイル114には、取引対象である生産能力に関連づけられた属性情報が記録される。半導体製品の前工程(ウエハプロセス工程)を例に採れば、たとえば、処理可能なウェハサイズ、1ロット当たりのウエハ枚数、チップ(ダイ)サイズ、平均歩留まり率、平均処理期間、月当たりの最大処理量、CMOSあるいはバイポーラ等のプロセスタイプ、加工可能サイズ、ゲート電極材料、金属配線の種類あるいはピッチサイズ、配線層数、電極取出し用のパッドサイズ、トランジスタの設計しきい値・スイッチング遅れ時間、最大クロック周波数、電源電圧、最大ゲート数等である。
【0038】
取引情報ファイル115には、後に説明する取引方法によりオファーされている取引情報が蓄積されている。本実施の形態のコンピュータシステムはこれら取引情報を参照してメインプログラムにより自動落札等される。決済情報ファイル116には、取引成立後の決済情報が蓄積される。これら取引情報、決済情報は、正常な取引が行われているか否かの監視のために用いられるほか、取引者の与信情報にも用いることができる。
【0039】
ユーザ支援用データベースファイル117には、ユーザを支援するためのデータ、たとえば大まかな製品仕様データを入力するのみで、その仕様を満足するに必要な生産能力の属性を提示するためのデータや、要求する製品仕様を満足するに必要な回路設計情報あるいはこれら回路設計を支援するサービス事業者に関するデータ等が格納される。このようなユーザ支援により詳細な属性情報をそのまま取り扱うには知識が不足しているユーザ、たとえば半導体製品のユーザに対しても本システムの利用が可能になる。
【0040】
なお、サーバ101には、キーボード、マウス等の入力デバイス、あるいは、CRT、液晶表示パネル等の出力デバイスが含まれるが、説明を省略する。
【0041】
図3は、本発明の取引方法の一例を示すフローチャートである。本実施の形態の取引方法は、まず、初期画面を表示することから始まる(ステップ120)。初期画面は、取引者のワークステーション102等の表示装置に表示される。初期画面へのアクセスは、たとえば標準的なブラウザを用いてホームページアドレス(URL)を指定し、取引サービス事業者のサーバ101にアクセスすることにより行う。この場合、初期画面はHTML形式で記述される。なお、本実施の形態では、インターネット環境で用いられる標準的なブラウザおよびそのブラウザで表示することができる形式(THML等)で記述されたホームページを例にして説明する。但し、これに限られず、任意のプロトコルあるいは形式に従ったページデータをそれに適合した表示ソフトウェアを用いて表示しても良い。これら初期画面の表示に関する点は、以下で説明する各画面でも同様である。
【0042】
初期画面では、新規登録あるいは取引参加のメニューに別れており、初めて取引に参加する者は新規登録メニューを選択して、新規登録を行う。新規登録メニューを選択すると新規登録画面が現われ、ここで「forwards」あるいは「futures/options」を選択するボタンが表示される。「forwards」とは、いわゆる延べ取引のことであり、取引者の現に有する生産能力の範囲内での取引を許容し、「futures/options」とは、いわゆる先物取引のことであり、取引者の現に有する生産能力の範囲を超えて取引を許容する。何れの取引を選択するかにより後に説明する信用調査の寛厳が相違する。つまり、先物取引を認めるためには延べ取引が認められる信用の度合いよりもさらに厳しい信用が要求される。
【0043】
ここで「forwards」ボタンを選択すると当該新規登録者に「forwards」取引用新規IDが発行され、「futures/options」ボタンを選択すると当該新規登録者に「futures/options」取引用新規IDが発行される(ステップ121)。
【0044】
次に、新規登録者は、当該IDに対応するパスワードを設定する(ステップ122)。パスワードは登録者が任意に設定でき、後に変更できる。
【0045】
次に新規登録者は、その法人名や登記情報やその他会員属性情報を入力する(ステップ123)。当該コンピュータシステムはそれら情報を基に当該新規登録者の与信情報を調査し(ステップ124)、問題がなければ当該IDを活性化する(ステップ125)。その後処理を終了する(ステップ126)。活性化されたIDを持つ取引者は、当該コンピュータシステム上での取引への参加が可能になる。
【0046】
既にIDが活性化された当該コンピュータシステムの登録者は、自分の取引を当該コンピュータシステム上に登録することにより取引に参加する。当該ホームページの初期画面で取引参加メニューを選択して次の画面に進み、活性化されているIDと設定したパスワードを入力する。システムはIDとパスワードが会員情報と一致しているか否かを判断し(ステップ127)、一致している場合には次のステップ128に進み、一致していない場合にはエラー処理をして処理がリジェクトされる(ステップ129)。
【0047】
次にステップ128では、取引の新規登録または取引状況のチェックを選択する(ステップ128)。取引の新規登録は、「selling」または「buying」の何れかのメニューの選択により、取引状況のチェックは「check」メニューの選択により選択する。メニューの選択はたとえばボタンを押すことにより行える。
【0048】
ここでは工場製造能力を売りに出す場合(「selling」)を例にとって説明する。工場製造能力を売りに出したい者は「selling」のメニューを選択した後、次の画面で自らの登録された生産能力の属性情報を確認する(ステップ130)。登録されている属性情報が正しくない場合は、修正メニューを選択し、修正画面に進み修正する(ステップ131)。登録されている情報が正しい場合は、取引画面に進み取引登録を行う(ステップ132)。
【0049】
図4は取引内容の入力画面の一例である。フィールド140に表示されている「member ID」は、生産能力ごとに与えられたIDであり属性情報が異なれば同一の取引者であっても異なるIDが与えられる。フィールド141に表示されている「Transaction ID」は、個々の取引毎に発行される固有のIDであり、後日入札の状況を確認するときはこの「Transaction ID」で参照される。また、取引者の法人名がフィールド142に表示されている。さらに、当該画面には属性確認用の情報(ここでは1.8 micron CMOSプロセスを例示している)がフィールド143に表示されている。この表示情報は新規登録時に登録された詳細情報の一部であり、ごく大まかな情報である。詳細な情報を確認したい場合は「detail information」ボタン144を選択して詳細情報を確認することが可能である。
【0050】
取引情報として登録する情報は、ここでは「transaction type」フィールド145で「selling capacity」または「buying capacity」を選択する。ここでは「selling capacity」を選んだ例を示している。
【0051】
価格指定の方式の選択は、「成り行き方式」と「指し値で下限あるいは上限価格あるいはその両方を指定する方式」の何れかの方式を選択できる。なお、ここでは前記2種類の選択方式を例示するがその他の方式を採用できることは勿論である。「成り行き方式」を選択する場合には、フィールド146にチェックマーク「x」を入れる。「指し値方式」を選択する場合には、フィールド147にチェックマーク「x」を入れる。ここでは、指し値で下限1,500ドルを指定するために、フィールド148に「1,500」を入力し、フィールド149に「none」を入力している。
【0052】
次に取引する生産能力を入力する。ここでは「selling capacity」を選択しているので売り出す能力の量と時期を入力する。たとえばフィールド150にウェハ枚数を入力し(例示画面では2,500枚が入力されている)、フィールド151、152にそれぞれ「Lot-in timing」と「transaction deadline」を入力する。「Lot-in timing」は当該取引のロットが当該工場に投入される時期であり、「transaction deadline」は、Lot-in timingまでに当該ロットの製造に必要な情報がある場合あるいは作業を行うためにある程度時間が必要な場合に指定される日である。ここではそれぞれ2000年8月15日と2000年8月1日が指定されている。全ての項目の入力が完了すると「finish」ボタン153を押し、取引内容の入力が終了する(ステップ132)。
【0053】
次に、システムは入力された取引に取引番号を発行し(ステップ133)、取引情報ファイル115の取引データベースとして取引情報を登録する(ステップ134)。そして登録新規取引処理を終了する(ステップ126)。
【0054】
本実施の形態の取引システムではこうして登録された売り注文に対し、成り行きであれば最も高い価格を提示した者が当該製造能力の使用権を獲得し、指し値方式であれば当該価格で買注文を出したものが当該製造能力の使用権を獲得する。指し値方式で当該価格で買注文を出したものが複数ある場合は売り手側が好きな買い手を選択できる。
【0055】
ステップ128で取引状況のチェックを選択した場合には、ステップ135に進み、取引番号を入力する(ステップ135)。システムは取引番号を参照して入札状況を検索し、これを表示する(ステップ136)。未だ入札されていない(取引未成立)場合には、価格または条件の変更をするか否かを選択し(ステップ137)、変更を選択する時には変更入力を行う(ステップ138)。変更入力は図4に示す表示画面と同様である。変更しない場合には処理を終了する(ステップ126)。
【0056】
なお、ステップ128で「buying」を選択した場合の取引登録も「selling」の場合と同様である。
【0057】
図5は、前記製造能力の属性情報のリストを示した図面であり、図6は属性情報の入力画面図である。属性情報の入力は、新規登録の会員情報入力ステップ(ステップ123)で行うことができ、また、その修正は取引登録の際の修正ステップ(ステップ131)で行うことができる。
【0058】
一般に工場の製造能力といっても多種多様であり、金融商品のように単純に売買できない。例えば半導体産業の例で言えば単純に0.18ミクロンルールといってもメタル配線のピッチや層の数が異なったり、トランジスタの特性が異なったりなど工場単位、時には工場のライン単位で様々である。図5に示す製造能力属性情報のリストを基にある程度互換性があると見なせるものをまとめあげ、そのような属性を持つ生産能力間の間で取引を成立させる。属性情報の互換性は、予めシステムに登録されたプログラムにより自動的に行える。このような属性情報の互換性判断は、そのときの技術常識から当業者が通常設計できる事項であるのでここでの説明は省略する。
【0059】
本実施の形態の取引システムあるいは取引方法によれば、以下のような取引環境を提供できる。たとえば、一例を半導体工場の生産能力を使って説明する。当該工場の4ヶ月先の生産能力が20%余っているとする。この工場はその余剰能力を前記取引システム上で売りに出すことができるが、その際にこの工場で製造できる種類の半導体を明示する。例としては図5の例のように0.18ミクロンの6層メタルロジック品というように詳細に明示する。この製造能力にあった製品を製造している半導体製造社で4ヶ月後に製造能力足りないと予測される会社があり、この会社が買い取引のオファーを行えば売買は成立する。このような取引は前記システムを用いて行える。取引はインターネットあるいは同様のデータ通信回線を通して迅速に成立する。また逆に当該工場で6ヶ月後に30%の製造能力の不足が予想されれば、本実施の形態のコンピュータシステムを通じて不足製造能力を購入できる。売買は1ヶ月前から1年前まで1ヶ月単位あるいはもっと細かくあるいは長くしてもよい。ここでは1年前まで1ヶ月単位と仮にする。当該工場は4ヶ月前の取引に出しても良いし、あと1ヶ月待って自社の生産計画の様子を見てから3ヶ月前の取引に出してもよい。
【0060】
また、本実施の形態のシステムを用いれば、当該余剰生産能力の取引に1ヶ月といった短期あるいは少量の取引可能にする。たとえば半導体製造工程の例で言えばウェハで100枚などである。通常、半導体製造工程のような委託生産方式では1年や2年といった長期の契約が主である。ただし、長期に渡って委託生産者は委託生産量を保証することは難しく、通常はおおよその長期契約中の委託生産量を決めた上で、直前に実際の委託生産量を受託生産する工場側に通知するのが普通である。このような受託生産方式では受託生産する工場側は実際の受託生産量は直前にならないとわからないため安定した稼働率を達成することが難しかった。また、委託生産者側としても受託生産する工場側を確実に押さえたわけではないため、直前に委託生産量を増やそうと思ってもできないことが多い。これに対し、委託生産者が長期契約で受託生産する工場側に委託生産量を保証し、確保することは将来の生産計画を精度良く見通すことは難しいため困難である。しかし、本実施の形態の取引システムを用いれば委託側受託側双方にとって、余剰あるいは不足の生産能力を売買できるのでメリットが大きい。さらに、本実施の形態のシステムを用いれば、従来の長期的な契約による受託委託形態を前提としつつ工場の稼働率を上げることができる。つまり、委託生産者は受託生産する工場側と長期契約で委託生産量を保証する。直前になり委託生産量が長期契約で保証した量より少なくなった場合、本実施の形態の取引システムで余った生産量を売ることができる。逆に足りない場合は同様に本実施の形態の取引システムを通じて購入することができる。本実施の形態の取引システムはインターネットなどの通信網を通じて世界中の同種の工場や委託生産者をつなげることができるので、小さなロットの過不足まで売買し、効率よく世界の工場の稼働率を市場経済メカニズムにより調整することができる。こうしたメカニズムによりユーザ側の需要予測をいち早く製造側に反映することができ、適正な需給関係を保つとともに適正な価格を形成してより安定的な産業の発展を促すことができる。
【0061】
本実施の形態の取引システムによれば、工場側は安定した稼働率を達成することができる。また製造者側だけでなくこれら工場で生産されたものを部品として使用するユーザ側にもメリットがある。例えば半導体製品の例で言えば、当該工場で生産された半導体製品(例えばLSI)を部品として使うユーザ(例えばパーソナルコンピュータメーカ)が半導体の生産能力の取引に直接参加することで、部品であるLSIを将来的に安定確実に確保できるだけでなく、機敏にLSIといった部品まで含めて生産管理することができる。その結果部品や完成品の在庫を減らすことができ全体的なコストダウンが可能になる。特に近年、SCM(Supply Chain Management)の必要性が叫ばれており、最終ユーザが部品であるLSIまで含めて機敏に生産管理できればSCM以上の成果を上げることが期待できる。本実施の形態の取引システムはこのような成果をも期待できる。
【0062】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能であることは言うまでもない。以下本発明概念に含まれる他の実施の形態を説明する。
【0063】
たとえば、他の実施の形態の取引システムでは、余剰能力を購入したい委託生産者や余剰生産能力を販売したい工場はそれぞれの提示価格が競合他社に見られないように制限をかけることができる。
【0064】
また、その他の実施の形態では、品質や納期管理など無理な注文を要求する顧客に対しプレミアムを設定しておき、このような顧客からの注文は高めの価格で落札するよう設定することもできる。すなわち、本実施の形態の取引システム上で各会員の取引状況情報を記録しデータベース化しておく。この情報の内容としては、例えば製造能力を提供している工場であれば品質トラブルの確率や個々の品質トラブルの程度、納期おくれなどがあげられる。これらトラブル情報等を平均化などして数値化する。品質や納期トラブルに対し個々の委託生産者は価値判断が異なる。そこで個々の委託生産者は各工場の当該トラブル数値ある係数を掛けあわせ、マイナスプレミアムとして入札価格に上のせすることができる。この手段により、より良い品質や正確な納期対応ができる工場を適正な価格で選ぶことが可能である。この例では製造能力提供側についてのみ示したが逆の委託生産者に関しても同様である。
【0065】
また、前記実施の形態では半導体のウェハ製造工程について例示したが、さらに他の実施の形態は、半導体製品のパッケージングやテスト工程でも同様の取引を実現できる。さらに、半導体以外の鉄鋼などの産業でも同様の取引を成立させることができる。
【0066】
また、その他の実施の形態では、前記取引システムによっても余剰な工場の製造能力に買い手が付かなかった場合、あらかじめ決めた価格で本実施の形態の取引システムの運営元(取引サービス事業者)が当該スポット的な余剰な工場の製造能力を買い、あらかじめ決めた製品を委託生産させることができる。通常、半導体は在庫をできるだけ抱えないようにするために受注生産方式をとっており、DRAMやFPGAのように汎用性が高いものでなければ買い手の目処がつかない状態で生産することはない。逆に汎用性が高いものであれば余剰な工場の製造能力を安く買ってこれを生産し、在庫しておいても不良在庫になる恐れが少ない。しかも当該FPGA等は安く製造されるので安く販売できる。この結果、設備稼働率を高く維持して産業上の無駄を省き、安く製品を供給できる。
【0067】
前記取引システムは完成品の物品を取引するのでなく、製造能力を取引ので、実際に製造してみると完成品として見なされる歩留まりが大きく変動する可能性がある。こうした事態に対応するためその他の実施の形態では、属性情報リスト中の標準TEG(ここの工場の製造能力をテストするために試験的に製造されるテスト回路)の歩留まりデータを含めることができる。この歩留まりデータを基に買い手の委託生産したい回路の歩留まりをある程度計算することができる。このあらかじめ計算された歩留まり下限値を下回った場合、生産能力を売買する買い手は売り手に罰金の支払いを要求することができる。これにより取引の安全性を高め、本実施の形態の取引システムの信頼性を高めることができる。
【0068】
また、前記取引システムではインターネットを通じて世界中の同種の工場や委託生産者をつなげることにより小さなロットにいたる生産能力の過不足まで売買し、効率よく世界の工場の稼働率を市場経済メカニズムにより調整することができる。しかしながら半導体製品に代表される巨額の装置、設備を必要とする産業では好況時には一斉に設備が不足し、不況時には一斉に設備の稼働率が下がってしまう。よって、長期にわたる生産能力の調整メカニズムが要望される。このような要求を満たすため、前記実施の形態の取引形態(forward取引)に代えて、その他の実施の形態では、先物取引(futures)市場を形成できる。forward取引は、現在より先の時点の製造能力を取引するものであり、個々の取引には必ず実際のある工場の製造能力という現物が対応している。これに対し本その他の実施の形態ではそういった長期の過不足を調整するためのメカニズムを提供する。金融先物のような先物取引(futures)市場を形成するため、長期的な需要予測の精度が上がるとともに適正な価格形成がなされ得る。これにより工場側は計画的に設備投資が行われる。すなわち産業の製造に関してリスク部分とリスクフリーの部分にわけ、リスク部分を純粋な投資家に任せることにより製造に従事する者のリスクを減らし個々の産業の健全な発展を狙うことができる。金融先物市場と大きく異なるのは属性情報により製造能力が細かなグループに分けられ、個々のグループ毎に先物取引が行われる点である。本他の実施の形態のシステムを図3のフローチャートを用いて説明すれば以下の通りである。本他の実施の形態のシステムは前記コンピュータシステムと同じシステムを使って取引は行われ、当該コンピュータシステムで初めて先物取引に参加する者は新規登録メニューを選択して、新規登録を行う。新規登録メニューを選択すると新規登録画面が現われここでforwardsあるいはfutures/optionsを選択するボタンが表示される。ここでfutures/optionsボタンを選択すると当該新規登録者にfutures/options取引用新規IDが発行される。当該新規登録者は次に当該IDに対応するパスワードを設定する。当該IDが活性化された後の手順は前記実施の形態と同様である。ただし実際に製造能力を提供あるいは使用することがなくても売り手と買い手の価格が合致すれば取引は成立する。
【0069】
また、その他の実施の形態では、前記先物取引に加え、さらにプット、コールのオプションを組み合わせて製造者と委託生産者の両者にリスクヘッジの仕組みを提供することができる。例えばこのオプションをうまく組み合せれば歩留まりに対する実物提供型保険を実現できる。前記取引システムでは製造能力を売買するため実際に製造を行うと想定していた製造歩止りより多かったり少なかったりすることがある。委託生産を依頼する委託生産者は予想した歩止りより少なかった場合罰金を受け取っても問題の本質的解決にならず、不足量を至急補給することが重要である。本その他の実施の形態ではこうした事態を想定し、ある委託生産者が特定あるいは不特定の工場の一部の能力をこうした事態をバックアップするための保険用コールオプションとして買っておくことにより確保する。当然そのためにプレミアムのオプション料を払うことになるが、実際に使用しなかった場合には製造能力の実物提供型の保険料と考えることができる。
【0070】
また、その他の実施の形態では、各々の工場の平均歩止りから予想した歩止りより少なくなる期待値を算出し、リスクレイティング値を提供することができる。個々の委託生産者はリスクレイティング値を見ながら必要なオプション量を計算し、これを買うことができる。オプションプレミアムはその時点での予想相場に関係し決定される。コールオプションを売る側は実際に権利履行がなければそのプレミアムはただで手に入るが、実際に権利履行がなされれば自社の製品を差し置いてもコールオプションの買い手の委託生産を受けなければならない。オプション取引への仕組については新規登録時にfutures/options取引用新規IDを取得することで始まり以降、前記取引システムの手順と同じである。また、これらオプション取引を組み合わせて金融市場で行われているようなデリバティブ商品も開発可能である。
【0071】
また、その他の実施の形態では、ルールベースにより、取引への参加を支援するコンピュータシステムを提供できる。これにより、その産業に詳しくないユーザも取引に参加できるようになる。例えば、半導体産業を例にあげれば、半導体に詳しくないユーザ、たとえば半導体製品を部品として使用するユーザにもルールベースにより、個々のユーザが必要とするプロセスや必要製造能力を自動算出するサービスをシステムとして提供できる。これにより各ユーザは取引に直接参加できるようになる。製造工場や委託生産者だけでなくこれら工場で生産されたものを部品として使用するユーザ側にもメリットがあり、直接取引に参加することが想定される。ユーザは自ら自分が使用する半導体部品(LSI)の個数は予測できるが、そのために必要な製造能力およびその半導体を製造するのに適当な工場がどれなのかユーザが自ら判断することは難しい。このためユーザが自分の使用する半導体部品(LSI)のスペックと必要量を入力すれば、確保すべき適切な製造能力およびその半導体製品を製造するのに適当な工場をアドバイスすることができるシステムが必要とされる。特にこれがシステムLSIと呼ばれるカスタムLSIの場合は顕著である。図7は、このようなユーザが必要とするLSIの属性を入力するための登録画面の一例を示した表示画面図である。使用する製造プロセスのタイプや使用回路ライブラリ、必要信号数、最大クロックスピード、ゲート規模、必要なIP、アナログIPなどを入力する。また、必要な個数と時期を登録する。当該登録に対し、図8に示すようなフローチャートにしたがって製造能力の提供可能な工場のリストを自動作成できる。まず、前記した取引情報ファイル115にアクセスし(ステップ160)、当該データベースから当該ユーザが必要とする時期の取引を検索し絞り込む(ステップ161)。次に属性情報ファイルを参照しながらユーザが登録したユーザが必要とするLSIの属性のうち必須の項目で更に絞り込む(ステップ162)。ここでいう必須の項目とは必要信号数、最大クロックスピード、ゲート規模、必要なIP、アナログIPなどである。ここまで絞りこんだリストを2つのグループに分ける(ステップ163)。1つは同じプロセス技術の同じライブラリを使用できるグループで、もう1つはそうでないグループである。同じプロセス技術の同じライブラリを使用できるグループに対しては属性情報ファイルの標準歩留りデータとユーザが登録した回路規模やIPから当該LSIの歩留りを推定する(ステップ164)。この推定歩留りと入札価格から最終的なLSIの単価を推定し、安い順にリストアップする(ステップ165)。もう一つのグループに対しては同じプロセス技術の同じライブラリを使用できないので、ライブラリ変換と再シミュレーションが必要で、このために必要な期間と工数を算出する(ステップ166)。これを外部に委託した場合の推定費用を上乗せして1つ目のグループと同じ手順で最終的なLSIの単価を推定し、安い順にリストアップする(ステップ165)。ユーザはこのリストの内容を確認した後取引ファイルに自動登録する(ステップ167)。これにより、その産業、たとえば半導体産業に詳しくないユーザでも容易に本システムを利用することが可能になる。なお、必要とされるライブラリ変換などの技術サービスを提供する設計サポート会社などの関連サービスの広告を本実施の形態の取引システムの表示画面上に掲示し、広告収入を得ることも可能である。
【0072】
また、その他の実施の形態では、余剰な工場の製造能力を売買するだけでなく、半導体ユーザが必要とするIP(Intellectual Property)の開発や適切な技術サポートなどをあるルールに沿って掲示できる。これにより当該IPを提供あるいは開発するIP提供者や技術サポートなどの技術サービスが入札制により入札し、当該IPやサービスを調達することができる。半導体の集積度が増すに従い、その上に集積する回路や技術サポートを外部から調達することが不可欠になってきている。本実施の形態では既に完成したIPを取引するだけでなく、こうした技術サービスも個々の品質といった属性でプレミアムを付け、適正な価格で取引が行われるように工夫したものである。まず、この取引に参加したい会社は事前に過去に行った技術サービスに対する格付けをあらかじめ専門の第3者である格付け会社から受けておく。専門の格付け会社は個々の技術サービス提供会社の過去の仕事に対して調査を行い、設計した回路の品質や提供された技術サポートに対して技術サービス提供会社の顧客の協力を得て格付けを行う。個々の技術サービス提供会社の過去の仕事に対しての格付け例を図9に示す。図9に示すような形式で属性データとして登録できる。これら過去の仕事に対しての格付けは1つの会社でも専門分野毎に別途登録される。この過去の仕事の格付けを例えば平均値として算出し、これをある係数をかけて価格プレミアムにし、専門分野毎に別途取引を実行することもできる。ユーザにとっては将来のある時期の技術サービスを確実に確保でき、かつそのサービスレベルが保証される。技術サービス提供会社にとっては優れたサービスが適切な価格で受け入れられメリットがある。その時々の需給バランスを経済原理によってサービス費を入札で決めることができるため業界全体で最適化が行われ、業界全体で効率化が図れる。技術サポートについても提供可能なサービスのレベルを厳密に定めて、事前に格付けしておき、これによりサービスの品質をめぐるトラブルを防止することができる。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような効果がある。すなわち、たとえば半導体製品のような、その能力に各種の技術的カテゴリ(属性)を有する生産能力を取引する市場が形成できる。また、、取引された生産能力の信頼性を担保することができる。また、生産能力の取引に際し、取引者に有益な情報を提示できる。また、取引に関するトラブルを解決する手段を提供でき、前記トラブル情報等を活用して、適正な価格情報を生成し提示することができる。また、半導体や鉄鋼など巨額な設備を必要とする産業において、安定的に操業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の取引システムの一例を示した概念図である。
【図2】取引事業者により利用されるサーバのシステム構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の取引方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】取引内容の入力画面の一例を示す表示画面図である。
【図5】製造能力の属性情報のリストを示した図面である。
【図6】属性情報の入力画面の一例を示した表示画面図である。
【図7】LSIの属性を入力するための登録画面の一例を示した表示画面図である。
【図8】製造能力の提供可能な工場のリストを自動作成する手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】技術サービス提供会社の過去の仕事に対しての格付け例を示す表示画面図である。
【符号の説明】
100…インターネット、101…サーバ、102…ワークステーション、103…パソコン、104…メインフレーム、104a〜104c…端末、110…制御手段、111…入力制御手段、112…出力制御手段、113…メインプログラムファイル、114…属性情報ファイル、115…取引情報ファイル、116…決済情報ファイル、117…ユーザ支援用データベースファイル、140〜143…フィールド、144,153…ボタン、145〜151…フィールド、TA…ターミナルアダプタ。
Claims (10)
- ネットワークを介して取引者のコンピュータシステムに接続され、前記取引者間での生産能力の取引を制御する取引サーバにおける前記生産能力の取引方法であって、
前記生産能力は、半導体ウエハプロセスの生産能力であり、
前記取引サーバには、前記コンピュータシステムから送信された取引情報を記録する取引情報ファイルと、前記生産能力に関連する属性情報を記録する属性情報ファイルとを備え、
前記取引情報には、前記半導体ウエハプロセスの生産能力に関連付けられたコード情報と、売りまたは買い情報と、取引の価格、規模、期日および期間に関する情報とが含まれ、
前記属性情報には、前記半導体ウエハプロセスのタイプと、前記半導体ウエハプロセスで製造される製品に使用する回路ライブラリと、前記製品の仕様および標準歩留まりとが含まれ、
前記取引サーバの入力制御手段が、前記半導体ウエハプロセスの生産能力を買おうとする前記取引者のコンピュータシステムから、前記半導体ウエハプロセスのタイプ、前記製品に使用する回路ライブラリ、前記製品の仕様を含む要求を受け取り、
前記取引サーバの制御手段が、前記要求に応じて、前記取引情報ファイルを検索し、前記要求に合致する取引情報を抽出し、
抽出された前記取引情報のうち、前記半導体ウエハプロセスのタイプおよび前記製品に使用する回路ライブラリが前記要求に合致するものについて、前記取引サーバの制御手段が、前記要求に含まれる前記製品の仕様および前記属性情報に含まれる前記製品の標準歩留まりから前記製品の単価を算出し、
抽出された前記取引情報のうち、前記半導体ウエハプロセスのタイプおよび前記製品に使用する回路ライブラリが前記要求に合致しないものについて、前記取引サーバの制御手段が、前記要求に含まれる前記製品の仕様および前記属性情報に含まれる前記製品の標準歩留まりから算出した価格に、前記要求に合致する回路ライブラリへの変更に必要な推計価格を上乗せして前記製品の単価を算出する
生産能力の取引方法。 - 請求項1に記載の取引方法であって、算出した前記製品の単価の順にリスト化した取引情報を、前記取引サーバの出力制御手段が前記取引者のコンピュータシステムに送信する取引方法。
- 請求項1または請求項2に記載の取引方法であって、
前記取引サーバには予め審査された前記取引者に関する信用情報が蓄積された登録者ファイルを備え、
前記登録者ファイルに記録された一部の取引者に対し、前記一部の取引者が現に所有する生産能力を超えて取引を許容する取引方法。 - 請求項3に記載の取引方法であって、
前記取引の内容に、前記生産能力の買いまたは売り取引を所定の価格および期日の条件で行使する権利を売買する選択を含む取引方法。 - 請求項1〜4の何れか一項に記載の取引方法であって、
前記取引者の前記要求に合致する回路ライブラリを提供する事業者の情報を、前記取引サーバの出力制御手段が前記取引者のコンピュータシステムに送信する取引方法。 - ネットワークを介して取引者のコンピュータシステムに接続され、前記取引者間での生産能力の取引を制御する取引サーバであって、
前記生産能力は、半導体ウエハプロセスの生産能力であり、
前記取引サーバには、前記コンピュータシステムから送信された取引情報を記録する取引情報ファイルと、前記生産能力に関連する属性情報を記録する属性情報ファイルとを備え、
前記取引情報には、前記半導体ウエハプロセスの生産能力に関連付けられたコード情報と、売りまたは買い情報と、取引の価格、規模、期日および期間に関する情報とが含まれ、
前記属性情報には、前記半導体ウエハプロセスのタイプと、前記半導体ウエハプロセスで製造される製品に使用する回路ライブラリと、前記製品の仕様および標準歩留まりとが含まれ、
前記半導体ウエハプロセスの生産能力を買おうとする前記取引者のコンピュータシステムから、前記半導体ウエハプロセスのタイプ、前記製品に使用する回路ライブラリ、前記製品の仕様を含む要求を受け取る入力制御手段と、
前記要求に応じて、前記取引情報ファイルを検索し、前記要求に合致する取引情報を抽出し、抽出された前記取引情報のうち、前記半導体ウエハプロセスのタイプおよび前記製品に使用する回路ライブラリが前記要求に合致するものについて、前記要求に含まれる前記製品の仕様および前記属性情報に含まれる前記製品の標準歩留まりから前記製品の単価を算出し、抽出された前記取引情報のうち、前記半導体ウエハプロセスのタイプおよび前記製品に使用する回路ライブラリが前記要求に合致しないものについて、前記要求に含まれる前記製品の仕様および前記属性情報に含まれる前記製品の標準歩留まりから算出した価格に、前記要求に合致する回路ライブラリへの変更に必要な推計価格を上乗せして前記製品の単価を算出する制御手段と
を有する取引サーバ。 - 請求項6に記載の取引サーバであって、算出した前記製品の単価の順にリスト化した取引情報を前記取引者のコンピュータシステムに送信する出力制御手段
をさらに有する取引サーバ。 - 請求項6または請求項7に記載の取引サーバであって、
予め審査された前記取引者に関する信用情報が蓄積された登録者ファイルを備え、
前記登録者ファイルに記録された一部の取引者に対し、前記一部の取引者が現に所有する生産能力を超えて取引を許容する取引サーバ。 - 請求項8に記載の取引サーバであって、
前記取引の内容に、前記生産能力の買いまたは売り取引を所定の価格および期日の条件で行使する権利を売買する選択手段を有する取引サーバ。 - 請求項6〜9の何れか一項に記載の取引サーバであって、
前記取引者の前記要求に合致する回路ライブラリを提供する事業者の情報を、前記取引者のコンピュータシステムに送信する出力制御手段をさらに有する取引サーバ。
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