JP4458706B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CAVあるいはZCAV対応の光記録媒体に対応した光記録媒体、さらにはCLVも含め高記録線速度に対応した光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
記録可能な光情報記録媒体に記録を行う光情報記録媒体の記録装置においては、記録に要する時間短縮のために、記録線速度の高速化が図られている。この記録線速度の高速化手法の1つとして、CAV記録あるいはZCAV記録がある。例えば、追記型DVDにおいて記録時間の短縮のために、CAV記録や、ZCAV記録を行う場合を考えた場合、最内周で1倍速記録(基準速度)とすると最外周では2.5倍速記録となる(記録可能な最内周半径と最外周半径によって決まる)。
【0003】
ところで、高記録線速度に対応した記録ストラテジに関しては、例えば特開平11−232652号公報には、1倍速以上の高速記録においても、良好な記録が行える記録方法が開示されている。
【0004】
この記録方法は、1倍速を超える高速記録を行うに際して、1倍速の記録における先頭パルスのパルス幅および後続パルスのパルス幅よりも、先頭パルスのパルス幅および後続パルスのパルス幅を大きく設定する、あるいは1倍速を超える高速記録を行うに際して、記録用レーザ光のパワーを1倍速の記録の場合よりも大きく設定することを特徴とするものである。しかし、高記録線速度に適したディスク構成は十分検討されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
記録した情報を正しく再生できる記録速度の限界値は、光情報記録媒体の種類や製造メーカーごと、あるいは記録装置ごとに異なる。したがって例えばCLV記録の場合、4倍速(規定再生速度の4倍速)で記録する記録装置を用いて、4倍速に未対応の光記録媒体に記録を行うとエラーが多い、あるいは再生不能な光記録媒体が作製されてしまう(実際にそのような使用不可能な光記録媒体が作製されてしまう)。同様に、CAV記録の場合、内周側はエラーの少ない良好な記録が行えても、外周では最内周での記録線速度に対し高記録線速度となるため、エラーが多い、あるいは再生不能な光記録媒体を作製してしまうことになる。
【0006】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、特にCAV記録あるいはZCAV記録に適した光記録媒体構成を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の光記録媒体は、下記(1)〜(5)に示す技術的特徴を有する。
【0010】
(1):少なくとも熱可塑性を示す基板上に記録層が形成され、さらに記録層上に反射層が設けられ、記録によって記録層材料の体積変化が起こる光記録媒体であって、記録再生をCAVもしくはZCAVで行う光記録媒体において、反射層の外周上のみに該反射層よりも高硬度の硬質層が設けられたことを特徴とする。
【0011】
(2):少なくとも熱可塑性を示す基板上に記録層が形成され、さらに記録層上に反射層が設けられ、記録によって記録層材料の体積変化が起こる光記録媒体であって、記録再生をCAVもしくはZCAVで行う光記録媒体において、反射層の外周上のみに該反射層よりも熱伝導度の高い熱伝導層が設けられたことを特徴とする。
【0012】
(3):少なくとも熱可塑性を示す基板上に記録層が形成され、さらに記録層上に反射層、保護層が順次設けられ、記録によって記録層材料の体積変化が起こる光記録媒体であって、記録再生をCAVもしくはZCAVで行う光記録媒体において、保護層の硬度が外周ほど高められたことを特徴とする。
【0013】
(4):少なくとも熱可塑性を示す基板上に記録層が形成され、さらに記録層上に反射層、紫外線硬化型樹脂からなる保護層が設けられ、記録によって記録層材料の体積変化が起こる光記録媒体であって、記録再生をCAVもしくはZCAVで行う光記録媒体において、紫外線硬化型樹脂の硬化度が外周ほど高められたことを特徴とする。
【0014】
(5):少なくとも熱可塑性を示す基板上に記録層が形成され、さらに記録層上に反射層、保護層が順次設けられた第一のディスクと、第二のディスクを互いの基板が外側になるように接着層を介して張り合わせた光記録媒体であって、記録によって記録層材料の体積変化が起こり、記録再生をCAVもしくはZCAVで行う光記録媒体において、接着層の硬化度が外周ほど高められたことを特徴とする。
【0021】
熱可塑性を示す基板上に直接記録層が形成された構造を有する光記録媒体の記録部は、主に基板の熱膨張による変形と、記録層材料の分解により形成される。この記録層材料の分解は、例えば記録層材料が有機材料の場合、有機物の基本骨格の分解や基本骨格に導入された置換基の離脱あるいはその置換基の分解を意味する。
【0022】
これらの分解物の1部は、熱膨張して密度が低下した基板中へ拡散する。また、基本骨格からの置換基の離脱あるいは、その置換基の分解によって、立体障害性が緩和されるため、記録層の体積は減少する。この基板の膨張(基板の体積変化)と記録層の体積変化によって、記録層上に設けられた反射層や保護層も変形を起こす。
【0023】
また記録層材料の分解では、閾値以上の狭い温度範囲で分解が完全に起こらない場合(熱重量分析において、分解時の温度に対する重量変化の傾きが小さい場合に相当する)、あるいは記録層膜厚が厚い場合や高記録パワーで記録する場合、基板に伝わる熱量が増加するため、基板が大きく熱膨張する。そして、この熱膨張した領域では、急冷される部分のみ、その状態が固化されるため、記録マークの輪郭部が盛上がり(凸変形)、中央部がへこんだ(凹変形)形状となる場合が一般的である。
【0024】
したがって、この記録原理からすれば、記録層上の反射層や保護層の硬度は、良好な記録特性を実現するにあたって非常に重要であることが理解できる。ゆえに、反射層の硬度については、例えば特開平9−63115号公報に、記録層と接する層の硬度を高めることで、良好な記録特性を有するCD−Rが提供できる旨の記載があるが、これは上述した記録メカニズムによるものであると考えられる。
【0025】
また、特許第2764895号公報には、記録層と反射層の間に基板よりも熱変形しにくい硬質層を設ける、あるいは反射層上に基板よりも,熱変形しにくい硬質層を設ける技術が記載されているが、これも上述した記録メカニズムによるものであると考えられる。
【0026】
しかし、本発明では上述の公開技術を用いてもCAV対応あるいはZCAV対応の光記録媒体を実現する場合、不十分であることを見出した。また、上述の公開技術はCD−Rを基本として発明されたものでり、CD−Rでは生じなかった問題が、記録密度が増したDVD−Rで生じることを本発明で見出したのである(したがって、本発明はDVD−Rでの高線速記録に関わるもので、CLV記録における高線速記録にも適用できる)。
【0027】
つまり本発明でのキーポイントは,記録線速度が高速化すると、長マークに対して短マークの温度が低下する、あるいは記録層深さ方向の温度分布に大きなバラツキが生じることを見出し、これが低記録線速度時に対して高記録線速度時の記録パワーがより必要となり、結局高記録線速度での記録では、基板変形量および記録層の体積変化量、あるいはリム等の変形量(凹部や凸部の大きさ)が増大することを発見したことにある。
【0028】
基板変形と記録層材料の分解、変質によって、記録マークの中央部と輪郭部では異なる体積変化を起こす。記録層上の反射層や保護層は、この記録マーク近傍で大きく不均一に体積変化した変形によって、同じく変形を起こすが、記録線速度の高速化によって基板や記録層に生ずる体積変化量が増加すると、この変形に記録層上の反射層や保護層は追従することができないため、記録層と反射層が剥離する可能性があることがわかったものである。
【0029】
この記録層と反射層の剥離は、凸変形や凹変形がそれぞれ単独に生じる場合、それらの変形量が著しく増大した場合生じるが、凸変形と凹変形の両者が同時に存在する場合は比較的それぞれの変形量が小さくても生じるようになる。また、この記録層と反射層の剥離現象は、分解がシャープにおきない記録材料や、記録層膜厚が厚い場合に多発し、これらの場合には、記録マークの外側に大きなリム部が形成される。
【0030】
図5、図6は記録線速度による温度分布の変化をシミュレーションによって検証した結果を示す。図5は単純矩形波パルスによる記録で、記録線速度が3.5(m/s)(DVD基準線速度)の場合の各マーク長に対する記録層温度を計算した結果、図6は単純矩形波パルスによる記録で、記録線速度が14.0(m/s)(DVD基準線速度に対し、4倍速)の場合の各マーク長に対する記録層温度を計算した結果である(本来2.5倍速の場合を計算すべきであるが、1倍速度の結果を比較しやすくするために4倍速の計算を行った)。なお、計算条件は記録層膜厚150(nm)、金反射層膜厚100(nm)、保護層膜厚1000(nm)で、記録波長650(nm)である。
【0031】
また図5,6中では、横軸は記録クロック周波数(記録線速度が3.5(m/s)の場合、26.16MHzで1T=38.2nsであり、記録線速度が14.0(m/s)の場合、104.64MHzで1T=9.55nsとなる)で規格化された記録マーク長を表し、縦軸は最高到達温度で規格化した温度を表す。さらに、凡例は記録層の深さ方向位置を示もので、z=0〜1000が保護層、z=1000〜1100(nm)が金反射層、z=1100〜1250が記録層である。
【0032】
この各マーク長に対する記録層温度を計算した結果から、3Tや4Tなどの短マークは長マークに対して温度が十分に上昇せず、記録線速度が上がるとより長マークに対する短マークの温度は低下し、また長マークに対して短マークは記録層の温度分布バラツキが大きくなることがわかる。
【0033】
したがって高記録線速度では、短マークを明瞭に形成させるため、記録線速度の増加によるエネルギー低下分を補償する記録パワーより、一層の高記録パワーが必要となる。つまり、CD−R(最短記録マーク長0.83(μm))では、記録線速度に対する記録パワーの変化が、
(記録パワー)≦(基準記録速度の記録パワー)×(基準記録速度に対する速度比)1/2
となるが、追記型のDVD(最短記録マーク長0.40(μm))では、例えば「Jpn.J.Appl.Phys.Vol.39(2000)Pt.1、No.2B」で記載されているような、
(記録パワー)=(基準記録速度の記録パワー)×(基準記録速度に対する速度比)1/2
という関係が成り立たず、
(記録パワー)>(基準記録速度の記録パワー)×(基準記録速度に対する速度比)1/2
となり、高記録線速度で記録パワーが余分に必要になるため、より高記録線速度の記録特性が悪化することがわかった(図7参照)。
【0034】
この図7において、記号◆はCD−R、記号▲はDVD−Rの記録線速度と記録パワーの関係を表し、記号■はCD−Rの1倍速記録の結果をもとに、
(記録パワー)=(基準記録速度の記録パワー)×(基準記録速度に対する速度比)1/2
という関係式を用いて高記録線速度の記録パワーを推定した結果を表す。なお、図7の横軸は各メディアの基準線速度に対する記録線速度比である。
【0035】
ところで、CD−Rの最短記録マークはDVDの約6Tに相当する。したがって図5〜6の結果より、もともとCD−Rは短マークと長マークの記録層温度差がDVD−Rのように大きくなく、また記録線速度が上がっても短マークと長マークの記録層温度差がDVD−Rのように大きくならないため、本発明の技術課題やそのメカニズムの発見は、CD−Rに基づいて見出された上述公開技術では見出されることのないものであることが明確である。
【0036】
したがって、従来技術と本発明は類似点もあるが、CD−Rを開発の基本としている、すなわち最短マーク長の長い光記録媒体での開発を基本としている従来技術では、本発明の技術的内容は見出せるものではない。したがって、上述公開技術では、いずれも記録層上の層の硬度を高めることで記録特性の改善が図れることを記載しているものの、記録線速度の高速化に伴う記録特性の変化に対しては何ら記載がない(記載できない筈である)。
【0037】
また、シミュレーションによって、反射層の熱伝導性を低下させると、短マークに対して長マークの熱蓄積量が増加し、温度がより上昇することが確かめられた。すなわち、反射層の熱伝導性を低下させると、より長マークに対する短マークの温度を低下させることになり、すなわち長マークに対する短マークの変調度を低下させることになり、高記録線速度では、記録線速度の増加によるエネルギー低下分を補償する記録パワーより、さらに高記録パワーが必要となる。
【0038】
これが結果として、高記録線速度で基板変形、色素変形、反射層変形をより増大させ、高記録線速度でのジッタやクロストークを悪化させるのである。したがって、本発明では高記録線速度でのジッタやクロストークの悪化を抑制するために、少なくとも高記録線速度となる外周ほど熱伝導性を高めることが有効であることを見出した。なお、外周ほど熱伝導性を高める方法としては、外周ほど反射層膜厚を厚くする、外周に反射層材料よりも高い熱伝導率を持つ熱伝導層を設ける、あるいは合金の場合、内外周で組成比を変える方法などがある。
【0039】
実際に外周ほど熱伝導率が高められていることを確認する方法としては、反射層膜厚の測定以外に、記録層膜厚の内外周均一性が一定範囲内に確保されている条件下で(例えば内外周での反射率差がない、あるいはプッシュプル信号等の振幅差がないという条件)、長マークに対する短マークの変調度比(いわゆるレゾリューション)を測定する方法がある。この方法では、長マークに対する短マークの変調度比(いわゆるレゾリューション)が大きくなった場合、外周ほど熱伝導率が高められていると判断することができる。
【0040】
本発明では、反射層自体の硬度、保護層などの層の硬度だけでなく、記録層上に多くの層を形成させること、また記録層上に形成された層の厚さを増加させること、あるいは記録層上に形成された層の硬度を高めることが、高記録線速に対応させるには重要であることを見出したのである。
【0041】
特に反射層の硬度を高めるためには、反射層自体の硬度以外に、反射層上に形成される多目的層の総膜厚が非常に重要であることが見出されたのである。本発明でいう多目的層とは、保護層、印刷層、接着層、第二の基板等、反射層上に設けられる全ての層を含めた総称である。
【0042】
本発明でいう保護層や接着層等の外周側の硬度を高めるとは、具体的には外周ほど膜厚を厚くする、硬化させるための熱や紫外線の照射量を増やす、硬化のための圧力を増すなどの方法により行うことができる。また、実際に保護層や接着層等の外周側の硬度が高められていることを確認する方法としては、膜厚の測定、引掻き試験、ラビングテスト、耐溶剤性テスト等の方法によって確認することが可能である。
【0043】
本発明で用いることのできる硬質層としては、記録層上に形成された反射層材料よりも硬度の高い材料が適している。一般的には、保存安定性や反射率確保の点からAu(2.5)あるいはAg(2.7)が最も適した反射層材料と言える(カッコ内の数字はモース硬度を表す)。
【0044】
したがって、反射層上に設ける硬質層としては、例えばAg(2.7)、Al(2.9)、As(3.5),Bi(3.5),Co(5.5),Cr(9.0)、Cu(3.0),Fe(4.5),Ir(6.5),Mn(5.0),Ni(3.5),Os(7.0),Pd(4.8).Pt(4.3),Sb(3.0).Si(7.0),W(6.5〜7.5)等の純金属、あるいはこれらの純金属どうしの合金、あるいはこれらの純金属を主体とする合金を用いることが可能である(カッコ内の数字はモース硬度を表す)。
【0045】
本発明で用いることのできる熱伝導層としては、記録層上に形成された反射層材料よりも熱伝導度の高い材料が適している。一般的には、保存安定性や反射率確保の点からAu(315)あるいはAg(427)が最も適した反射層材料と言える(カッコ内の数字は300Kにおける熱伝導度(Wm-1K-1)を表す)。したがって、反射層上に設ける熱伝導層としては、例えばAg(427)やCu(398)等の純金属、あるいはこれらの純金属どうしの合金、あるいはこれらの純金属を主体とする合金を用いることが可能である(カッコ内の数字は300Kにおける熱伝導度(Wm-1K-1)を表す)。
【0046】
さらに本発明では、高記録線速度でのジッタやクロストークの低減を図るために、
▲1▼対応可能な最高の記録速度まで各記録速度における最適記録パワーで記録した場合、記録速度変化に対する変調度の変化が連続的であり変極点が存在しないことを特徴とする光記録媒体、
▲2▼レーザパワーの上限まで記録パワーを変化させた時の変調度変化が、対応可能な全ての記録速度において連続的であり変極点が存在しないことを特徴とする光記録媒体、
▲3▼対応可能な最高の記録速度まで各記録速度における最適記録パワーで記録した場合、記録線速度変化に対する変調度の変化が連続的であり変極点が存在しない膜厚に反射層が設定されていることを特徴とする光記録媒体、
▲4▼レーザパワーの上限まで記録パワーを変化させた時の変調度変化が、対応可能な全ての記録速度において連続的であり変極点が存在しない膜厚に反射層が設定されていることを特徴とする光記録媒体、
▲5▼対応可能な最高の記録速度まで各記録速度における最適記録パワーで記録した場合、記録線速度変化に対する変調度の変化が連続的であり変極点が存在しない膜厚に少なくとも1つの多目的層が設定されていることを特徴とする光記録媒体、
▲6▼レーザパワーの上限まで記録パワーを変化させた時の変調度変化が、対応可能な全ての記録速度において連続的であり変極点が存在しない膜厚に少なくとも1つの多目的層が設定されていることを特徴とする光記録媒体、という構成とする。
【0047】
これは、対応可能な最高の記録速度まで各記録速度における最適記録パワーで記録した場合、記録線速度変化に対する変調度の変化に変極点が存在する場合は(突然変調度が増加する場合を指す)、基板変形や記録層、さらには反射層の変形量が急激に増大したことを示すものであり、特にその変調度変化が急激である場合は、記録層と反射層間の剥離が起きた可能性を示すためである。
【0048】
同様に、レーザパワーの上限まで記録パワーを変化させた時の変調度変化が、対応可能な記録速度において変極点が存在する場合は(突然変調度が増加する場合を指す)、基板変形や記録層、さらには反射層の変形量が急激に増大したことを示すものであり、特にその変調度変化が急激である場合は、記録層と反射層間の剥離が起きた可能性を示すためである。なお、この基板変形や記録層、さらには反射層の変形量の増大や記録層と反射層間の剥離による変調度の急激な増加が、ジッタやクロストークの増大をもたらすことは上述したとおりである。
【0049】
以上のように、本発明は下記(a)〜(c)ような記録メカニズムによる光記録媒体に適用できる。
(a)基板が熱可塑性を示す。すなわち熱によって熱膨張を起こす。
(b)記録層材料が分解や変質等を起こし、体積変化を起こす(体積変化は滅少、増加、その組合わせであってよい)。
(c)上記(a)(b)によって記録層と反射層の界面に凹変形や凸変形、あるいはその組合わせが形成される。
【0050】
本発明ではCAV記録あるいはZCAV記録を主眼においているが、技術の内容から、高線速度対応のCLV対応光記録媒体にも有効であることは明らかである。
【0051】
図1は本発明の層構成例を示すもので、反射層は外周ほど膜厚が厚く、あるいは外周ほど硬度が高められている例を示すものである。図2は本発明の層構成例を示すもので、保護層は外周ほど膜厚が厚く、あるいは外周ほど硬度が高められている例を示すものである。図3は本発明の層構成例を示すもので、少なくとも外周側には反射層よりも硬度の高い硬質層が設けられている例を示すものである。図4は本発明の層構成例を示すもので、第二の基板が設けられた例、また接着層の硬度が外周ほど高められている例を示すものである。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
厚さ0.6mm、トラックピッチ0.74(μm)のポリカーボネート基板上(4.7ギガバイト対応)に下記構造式の化合物を主成分とする記録層をスピンコートによって成膜し、その上にスパッタにより膜厚を変えた金反射層または銀反射層を設け光記録媒体を作成した。
【0053】
さらに、厚さ0.6mm、トラックピッチ0.74(μm)のポリカーボネート基板上(4.7ギガバイト対応)に下記構造式の化合物を主成分とする記録層をスピンコートによって成膜し、その上にスパッタにより膜厚を変えた金反射層または銀反射層を設け、その上に紫外線硬化型樹脂からなる保護層を有する光記録媒体、および該紫外線硬化型樹脂からなる保護層上に接着層を介して第二のディスクを張合わせた光記録媒体を作成した。記録装置(記録再生装置)は、パルステック工業製のDDU−1000(波長が660(nm)、開口率NAが0.63)を用いた。
【0054】
【化1】
【0055】
(1)反射層の厚さの影響と反射層上の多目的層の影響
ここでは、反射層の厚さと反射層上の多目的層である保護層の有無によって、記録線速度の高速化に伴うジッタ変化を評価した。図8は、ジッタの記録線速度依存性を評価した結果である。図中の記号▲は基板/記録層/金反射層(膜厚10nm)、記号■は基板/記録層/金反射層(膜厚100nm)、記号◆は基板/記録層/金反射層(膜厚100nm)/保護層という構成のメディアの単独トラック記録によるジッタ測定結果である。
【0056】
図9は基板/記録層/金反射層(膜厚100nm)/保護層という構成メディアの、単独トラック記録時と、連続トラック記録時のジッタの記録線速度依存性を評価した結果である。図10は基板/記録層/金反射層(膜厚100nm)という構成メディアの、単独トラック記録時と、連続トラック記録時のジッタの記録線速度依存性を評価した結果である。図11は、図9と図10の結果を、単独トラック記録時に対する連続トラック記録時のジッタの比(ジッタ増加率)で示したものである。
【0057】
なお、記録ストラテジはここでの最高記録線速度である8.5(m/s)で最適化された単純矩形波パルスを用い(記録線速度にかかわらず、記録クロック周波数で規格化された矩形波パルス長は固定した)、記録線速度に合わせて最適記録パワーを変化させた。
【0058】
この結果から、記録線速度の高速化によって、ジッタおよびクロストークが悪化することが確認された(本発明の目的が確認できた)。また、このジッタやクロストークの悪化は反射層を厚くすることで(硬くすることで)、また反射層上に多目的層を設けることで抑制できることが確認され、本発明の光記録媒体が高記録線速度に適した層構成となることが実証された。
【0059】
(2)反射層材料の硬度の影響
ここでは、反射層の硬度による記録線速度の高速化に伴うジッタ変化を評価した。また、ここでは金反射層(モース硬度2.5)と銀反射層(モース硬度2.7)の比較を行った。図12は基板/記録層/金反射層(膜厚100nm)/保護層/接着層/第二の基板という構成メディアの、単独トラック記録時と、連続トラック記録時のジッタの記録線速度依存性を評価した結果である。図13は基板/記録層/銀反射層(膜厚100nm)/保護層/接着層/第二のディスクという構成メディアの、単独トラック記録時と、連続トラック記録時のジッタの記録線速度依存性を評価した結果である。図14は、図12と図13の結果を、単独トラック記録時に対する連続トラック記録時のジッタの比(ジッタ増加率)で示したものである。
【0060】
この結果から、記録線速度の高速化によって、ジッタおよびクロストークが悪化する傾向があることが確認された(本発明の目的が確認できた)。また、このジッタやクロスロークの悪化は反射層材料の硬度を高くすることで、また反射層材料の熱伝導率を上げることで抑制できることが確認され(金の熱伝導率315Wm-1K-1、銀の熱伝導率427Wm-1K-1)、本発明の光記録媒体が高記録線速度に適した層構成となることが実証された。
【0061】
(3)高記録線速度に伴うジッタ悪化の原因
ここでは、反射層の硬度や厚さ、あるいは反射層上の多目的層の硬度や厚さによって高記録線速度時のジッタに差異が生じ原因を検討した。また、本発明の「対応可能な最高の記録速度まで各記録速度における最適記録パワーで記録した場合、記録速度変化に対する変調度の変化が連続的であり変極点が存在しないことを特徴とする光記録媒体」の有効性を証明する。
【0062】
図15は、変調度の記録線速度依存性を評価した結果である(対応可能な最高の記録速度まで各記録速度における最適記録パワーで記録した時の変調度を測定)。図中の記号◆は基板/記録層/金反射層(膜厚10nm)、記号■は基板/記録層/金反射層(膜厚100nm)、記号▲は基板/記録層/金反射層(膜厚100nm)/保護層、記号×は基板/記録層/金反射層(膜厚100nm)/保護層/接着層/第二のディスク、記号○は基板/記録層/銀反射層(膜厚100nm)/保護層/接着層/第二のディスクという構成のメディアの、各記録線速度時の最適記録パワーで記録した場合の変調度を測定した結果である。
【0063】
この結果、図8において基板/記録層/金反射層(膜厚100nm)という構成メディアのジッタが悪化する記録線速度と、図15で記録線速度に対する変調度に急激な増加が見られる記録線速度が一致し(5.5m/s近傍)、また図8に示すように基板/記録層/金反射層(膜厚10nm)という構成メディアのジッタは低記録線速度から記録線速度の増加とともに急激に悪化して行くが、このジッタ急増と図15において低記録線速度で既に記録線速度に対する変調度が急増する現象とが一致することがわかった(図15では、変調度が急激に増加した領域を破線で囲んだ)。
【0064】
すなわち、記録線速度の高速化に伴うジッタやクロストークの悪化が、変調度の急激な変化にあることがわかった(記録線速度に対する変調度の変化に変極点が現れる)。また本発明の「対応可能な最高の記録速度まで各記録速度における最適記録パワーで記録した場合、記録速度変化に対する変調度の変化が連続的であり変極点が存在しないことを特徴とする光記録媒体」がジッタおよびクロストークの低減につながることが明らかになった。
【0065】
なお、ここでは対応可能な最高の記録速度まで各記録速度における最適記録パワーで記録した場合、記録速度変化に対する変調度の変化が連続的であり変極点が存在しない光記録媒体を例にとって示したが、レーザパワーの上限まで記録パワーを変化させた時の変調度変化が、対応可能な全ての記録速度において連続的であり変極点が存在しない光記録媒体も同様な効果があることは、その原理から明白である。
【0066】
図16は基板/記録層/金反射層(膜厚100nm)という構成メディアの記録線速度5.0(m/s)時のアイパターン、図17は記録線速度7.0(m/s)時のアイパターンである。この結果からも、記録線速度の高速化に伴うジッタやクロストークの悪化が、変調度の急激な変化(乱れ)にあることがわかった。
【0067】
そこで、この変調度の急激な増加、あるいは乱れの原因を調べた結果、図18に示すように(反射層を剥がした色素面上のSEM写真)、記録マークには色素分解領域とリム部(細矢印)の他に、第三の記録マーク(太矢印)が形成されていることがわかり、これが変調度の急激な増加、あるいは乱れの原因となっていることが確かめられた(この第三の記録マークは、変調度が急増する記録パワー近傍から高パワーで出現する)。
【0068】
なお、この第三の記録マークは長マークに現れやすく、また短スペースを介した記録マーク全体を覆うように現れ、かつリム部よりもかなり広い領域にわたって形成されること、また基板膨張や記録層の体積変化、あるいは記録層材料の屈折率変化は、連続的な変化であり、記録パワー、あるいは記録線速度の増加に対して不連続には変化しないこと(徐々に飽和するような変化をするはずである)、さらに記録部のリム部が非常に小さい記録材料では第三の記録マークは観察されないことなどから、基板膨張と記録部のリム部等の増大によって反射層が記録層から剥離した跡と考えられる。この結果から、本発明に示された技術的内容が支持された。
【0069】
【発明の効果】
本発明の記録媒体によって、高記録線速度や高記録パワーでのジッタ悪化、クロストークの増加を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光記録媒体の層構成例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る光記録媒体の別の層構成例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る光記録媒体の更に別の層構成例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る光記録媒体の更に別の層構成例を示す断面図である。
【図5】単純矩形波パルスによる記録で、記録線速度が3.5(m/s)の場合の各マーク長に対する記録層温度を計算した結果を示すグラフである。
【図6】単純矩形波パルスによる記録で、記録線速度が14.0(m/s)の場合の各マーク長に対する記録層温度を計算した結果を示すグラフである。
【図7】記録線速度と記録パワーの関係を表すグラフである。
【図8】ジッタの記録線速度依存性を評価した結果を表すグラフである。
【図9】基板/記録層/金反射層/保護層という構成メディアにおけるジッタの記録線速度依存性を評価した結果を表すグラフである。
【図10】基板/記録層/金反射層という構成メディアにおけるジッタの記録線速度依存性を評価した結果を表すグラフである。
【図11】図9と図10の結果を、単独トラック記録時に対する連続トラック記録時のジッタの比で示すグラフである。
【図12】基板/記録層/金反射層/保護層/接着層/第二の基板という構成メディアにおけるジッタの記録線速度依存性を評価した結果を示すグラフである。
【図13】基板/記録層/銀反射層/保護層/接着層/第二のディスクという構成メディアにおけるジッタの記録線速度依存性を評価した結果を示すグラフである。
【図14】図12と図13の結果を、単独トラック記録時に対する連続トラック記録時のジッタの比で示すグラフである。
【図15】変調度の記録線速度依存性を評価した結果を示すグラフである。
【図16】基板/記録層/金反射層という構成メディアの記録線速度5.0(m/s)時のアイパターンである。
【図17】基板/記録層/金反射層という構成メディアの記録線速度7.0(m/s)時のアイパターンである。
【図18】図16、図17に係る記録後のメディアの反射層を剥がした色素面上のSEM写真である。
Claims (5)
- 少なくとも熱可塑性を示す基板上に記録層が形成され、さらに記録層上に反射層が設けられ、記録によって記録層材料の体積変化が起こる光記録媒体であって、記録再生をCAVもしくはZCAVで行う光記録媒体において、反射層の外周上のみに該反射層よりも高硬度の硬質層が設けられたことを特徴とする光記録媒体。
- 少なくとも熱可塑性を示す基板上に記録層が形成され、さらに記録層上に反射層が設けられ、記録によって記録層材料の体積変化が起こる光記録媒体であって、記録再生をCAVもしくはZCAVで行う光記録媒体において、反射層の外周上のみに該反射層よりも熱伝導度の高い熱伝導層が設けられたことを特徴とする光記録媒体。
- 少なくとも熱可塑性を示す基板上に記録層が形成され、さらに記録層上に反射層、保護層が順次設けられ、記録によって記録層材料の体積変化が起こる光記録媒体であって、記録再生をCAVもしくはZCAVで行う光記録媒体において、保護層の硬度が外周ほど高められたことを特徴とする光記録媒体。
- 少なくとも熱可塑性を示す基板上に記録層が形成され、さらに記録層上に反射層、紫外線硬化型樹脂からなる保護層が設けられ、記録によって記録層材料の体積変化が起こる光記録媒体であって、記録再生をCAVもしくはZCAVで行う光記録媒体において、紫外線硬化型樹脂の硬化度が外周ほど高められたことを特徴とする光記録媒体。
- 少なくとも熱可塑性を示す基板上に記録層が形成され、さらに記録層上に反射層、保護層が順次設けられた第一のディスクと、第二のディスクを互いの基板が外側になるように接着層を介して張り合わせた光記録媒体であって、記録によって記録層材料の体積変化が起こり、記録再生をCAVもしくはZCAVで行う光記録媒体において、接着層の硬化度が外周ほど高められたことを特徴とする光記録媒体。
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