以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタを示す。このインクジェットプリンタは、写真プリントシステムに用いられるものであって、画像データの取得及びオーダ情報の取得を行いかつ必要な補正処理等を行う受付ブロック100(図8参照)と通信ケーブルを介して接続されており、この受付ブロック100から通信ケーブルを介して伝送される画像データをオーダ情報に基づきプリントペーパPに対してプリントを行うようになされている。
上記インクジェットプリンタは、筐体1と、この筐体1内の下部に配設されたマガジン収容部2と、筐体1内の上下方向略中央部に配設されたカセット収容部3と、筐体1内の略中央部に配設され、プリントペーパPに対して画像データのプリントを行うプリント部4と、プリントペーパPをマガジン収容部2からプリント部4へ搬送するための第1搬送路と、プリントペーパPをカセット収容部3からプリント部4へ搬送するための第2搬送路と、プリント部4でプリントされたプリントペーパPを該プリント部4から筐体1の外部へ排出するための第3搬送路と、筐体1の外部に設けられ、第3搬送路により筐体1の外部へ排出されたプリントペーパPを受け止める第1の排出トレイ5及び第2の排出トレイ6と、を備えている。尚、筐体前後方向は図1の左右方向であり、筐体前側は図1の右側であり、筐体後側は図1の左側である。また、筐体左右方向は図1の紙面に垂直な方向である。
上記マガジン収容部2には、ロール状に巻かれた長尺状ペーパであるプリントペーパPがペーパマガジン8に収容保持された状態でセットされるようになっている。このプリントペーパPは、プリントされるプリント面が外側となるように巻かれている。一方、上記カセット収容部3には、単票紙である複数枚のプリントペーパPが矩形箱状の給紙カセット9内に収容保持された状態でセットされるようになっている。この給紙カセット9内のプリントペーパPは、プリント面を上向きにして厚み方向(上下方向)に重ねられているとともに、押付け板10により、上側に位置する後述の送出しローラ35に押し付けられている。上記マガジン収容部2及びカセット収容部3は、プリントペーパPがセットされるペーパセット部を構成することになる。そして、マガジン収容部2又はカセット収容部3にセットされたプリントペーパPが選択的に、後述の如くプリント部4へと搬送されて該プリント部4でプリントされ、上記第1又は第2の排出トレイ5,6へ排出されるようになっている。尚、マガジン収容部2には、幅寸法が小さいプリントペーパPを2つ筐体左右方向に並列にセットすることも可能になっており、このように2つ並列にセットした場合には、そのセットされた2つのプリントペーパPがマガジン収容部2から同時に引き出されて2列で搬送され、プリント部4において2つのプリントペーパPにプリントが行われ、排出トレイに同時に排出されることになる。
上記筐体1内には、上記第1〜第3搬送路を構成すべく、第1供給ユニットU1、第2供給ユニットU2、プリントユニットU3、カッターユニットU4及びスイッチバックユニットU5が設けられている。第1搬送路は、マガジン収容部2から順に、第1供給ユニットU1及びプリントユニットU3で構成されている。また、第2搬送路は、カセット収容部3から順に、第2供給ユニットU2及びプリントユニットU3で構成されている。さらに、第3搬送路はプリントユニットU3から順に、カッターユニットU4及びスイッチバックユニットU5で構成されている。
上記第1供給ユニットU1は主に、マガジン収容部2(ペーパマガジン8)内に設けられている。この第1供給ユニットU1は、ロール状のプリントペーパPを支持する3つの支持ローラ15と、ペーパマガジン8内でプリントペーパPをプリントユニットU3へと導く内部ガイド部材16と、この内部ガイド部材16の途中に設けられかつプリントペーパPをプリントユニットU3へ搬送するための、駆動及び従動ローラ17a,17bからなる圧着型の供給ローラ17と、内部ガイド部材16の上流側に設けられ、プリントペーパPが巻き掛けられるガイドローラ18と、ペーパマガジン8の外でプリントペーパPをプリントユニットU3へと導く外部ガイド部材19と、を備えている。上記3つの支持ローラ15のうちロールの下側で筐体前側に配設されたローラは、不図示の電動モータによって回転駆動されて、プリントペーパPに対しロール中心回りに回転力を付与するようになっている。このペーパマガジン8には、第1ペーパ検出センサ20が設けられており、この第1ペーパ検出センサ20により、プリントペーパーPがマガジン収容部2から全て引き出された場合の該プリントペーパーPの後端が検出されるようになっている。このプリントペーパーPの後端が検出された場合には、その旨をディスプレイ等を介してオペレータに知らせるようになっている。
上記第2供給ユニットU2は、カセット収容部3にセットされた複数枚のプリントペーパP(単票紙)の最上部に位置するプリントペーパPのプリント面に当接する送出しローラ35と、この送出しローラ35を、ギヤ列37を介して駆動する電動モータ36と、プリントペーパPをプリントユニットU3へと導くガイド部材34と、を備えており、送出しローラ35の駆動により、最上部に位置するプリントペーパPが1枚だけ筐体前向きに移動して、ガイド部材34に案内されてプリントユニットU3へと送り出されるようになっている。
上記プリントユニットU3は、筐体前方に位置する上流端から筐体後方の上方に、斜め方向に配設されかつ、プリント時にプリントペーパPを支持するプリント台66と、このプリント台66上に位置するプリントペーパPと対向し、該プリントペーパPに対しインクを吐出してプリントを行うプリントヘッド67とを備えている。このプリント台66及びプリントヘッド67が上記プリント部4を構成する。
上記プリント台66は、プリントペーパPを図示省略のファンによりプリント台66の下側から吸引して吸着保持する構成になっており、図2に示すように、多数の吸引用孔66cが、そのプリント面の全体に貫通形成されている。尚、図2においてはプリント台66の四隅の吸引用孔66cのみを図示しており、その他の吸引用孔66cの図示を省略している。このプリント台66のペーパ幅方向(図2に示すX方向)両端部には、ペーパ搬送方向(Y方向)に延びる複数(本実施形態では、片側6つずつ)の溝66aがペーパ幅方向に所定間隔をあけて並ぶように形成されている。これら各溝66aは、種々のサイズのプリントペーパPの幅方向両端位置に対応して設けられており、各溝66a内には、上記プリントヘッド67から吐出されたインクがプリントペーパPの幅方向両端から外側に外れた場合(特に縁なしプリントを行う際に外側に外れ易い)に、該インクを吸収するためのインク吸収材68が嵌め込まれている。また、プリント台66のペーパ幅方向中央部には、後述の3つのヘッドユニット67aの各位置にそれぞれ対応して凹部66bが形成されており、この各凹部66b内には、プリントペーパPを2列で搬送してプリントする際に、プリントヘッド67の各ヘッドユニット67aより予備吐出(プリントを行う前の試し打ち)されたインクを吸収するインク吸収材69が嵌め込まれている。
本実施形態では、上記プリントヘッド67は、図2に示すように、その底面(プリント台66と対向する面)に複数のインク吐出ノズル67bが副走査方向(ペーパ搬送方向(Y方向))に列をなすように設けられた3つのヘッドユニット67aを有しており、これら3つのヘッドユニット67aが互いに副走査方向に間隔をあけて並んでいる。尚、各ヘッドユニット67aのノズル列は、図2では1列しか記載していないが、実際には、複数色のインクにそれぞれ対応してペーパ幅方向に複数並ぶように設けられる。また、ヘッドユニット67aは3つである必要はなく、1つや2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
上記プリントヘッド67の上面は、該プリントヘッド67を主走査方向(図1の紙面に垂直な方向(図2に示すX方向))に往復移動させるための駆動ベルト70に取付固定されている。この駆動ベルト70は、主走査方向に延びていて、その両端部にそれぞれ配設されかつ筐体1に回転自在に支持された2つのプーリ71(図1では1つのみ示す)に巻き掛けられている。この一方のプーリ71は、不図示の電動モータにより回転駆動されるようになっている。また、プリントヘッド67の上方には駆動ベルト70に沿って主走査方向に延びるガイドレール72が配設されており、プリントヘッド67は、このガイドレール72に案内されながら、駆動ベルト70によって主走査方向に往復移動するようになっている。そして、プリント台66上のプリントペーパPは、プリント台66の上流側に設けられた搬送ローラ75により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向に搬送され、この間欠搬送時におけるプリントペーパPの各停止時に、プリントヘッド67が主走査方向に一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向の各位置で、各ヘッドユニット67aのインク吐出ノズル67bからインクが吐出される。つまり、プリントヘッド67の一走査後に、プリントペーパPが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッド67が一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像がプリントされることになる。ここで、このプリントユニットU3では、図3に示すように、マガジン収容部2にセットされている長尺状のプリントペーパPに対して画像のプリントを行う場合には、そのプリントペーパPにおける互いに間隔dだけあいている領域G,…に画像のプリントを行うと共に、この間隔dの領域に切断マークmを形成する。
上記搬送ローラ75は、プリントユニットU3の上流側端部に設けられており、第1又は第2供給ユニットU1,U2からのプリントペーパPをプリント部4へ搬送する役割を有している。この搬送ローラ75は、プリントペーパPを挟持する1つの駆動ローラ75aと2つの従動ローラ75bとからなり、2つの従動ローラ75bが1つの圧縮コイルばね76により駆動ローラ75aに押し付けられている。
一方、プリント台66の下流側には、プリントされたプリントペーパPをプリント台66上から排出するための駆動及び従動ローラ81a,81bからなる圧着型の排出ローラ81が設けられている。
上記カッターユニットU4は、プリントユニットU3に対して筐体後側の斜め上方位置に配設されていて、プリントペーパPを切断するための、固定刃26a及び可動刃26bからなるカッター26と、該可動刃26bを駆動する駆動機構等が収容されたカッター駆動部27と、筐体前側の下方位置から筐体後側の上方位置に向かって斜め方向に延びてプリントペーパPをカッター26による切断位置へ案内するガイド部材28と、上記切断マークmを検出するカット位置センサ29と、プリントペーパPの切断くずが収容されるくず箱33と、を備えている。また、カッターユニットU4は、くず箱33の筐体後方に配置された電動モータ32によって、搬送方向の前後に、つまり斜め方向に移動可能に構成されており(図1の矢印参照)、このことにより、プリントユニットU3から単位搬送量で間欠的に搬送されるプリントペーパPの搬送誤差を吸収して、所定のカット位置でプリントペーパPを切断するようにしている。
このカッターユニットU4では、カット位置センサ29により上記切断マークmを検出して該検出結果に基づき、プリントペーパPの切断を行う。つまり、プリントユニットU3から単位搬送量で搬送されるプリントペーパPに対して、カッターユニットU4を搬送方向の前後に移動させて、所定のカット位置で切断を行う。縁なしプリントの場合には、図3に示すように、カット位置センサ29の検出結果に基づき切断マークmを基準にして間隔dよりも僅かに広い間隔の領域を取り除くことにより、画像の周囲に余白を残さないように切断動作を行う。そのときの切断くずは、カッター26の下方に配置されたくず箱33の収容される。このようにカッターユニットU4では、プリントペーパPが予め決められた長さ(画像がプリントされる領域Gの長さによって決まる)に切断される。
上記スイッチバックユニットU5は、プリントユニットU3に対して筐体後側の斜め上方でかつ、後述する第1の排出トレイ5と略同じ高さ位置に配置されていて、このスイッチバックユニットU5よりも上流側の搬送路(つまりカッターユニットU4)から搬送されてきたプリントペーパPを、該スイッチバックユニットU5に対して上記搬送路とは反対側に位置する引込用搬送路に引き込んだ後に、該プリントペーパPの搬送方向を逆転させて該引込用搬送路から下流側(つまり第1の排出トレイ5)へ搬送するスイッチバック部を構成している。スイッチバックユニットU5は、プリントペーパPを送り出すための圧着型の送り出しローラ42と、プリントペーパPを搬送する駆動ローラ43と、この駆動ローラ43と共にプリントペーパPを挟持する従動ローラ44と、これら駆動ローラ43及び従動ローラ44からなる作動ローラ対45の向きを変更する切換機構46(図4参照)と、プリントペーパPのプリント面側に設けられた回転自在のガイドローラ55と、プリントペーパPを第1の排出トレイ5に搬送する圧着型の搬出ローラ59と、を備えている。
上記切換機構46は、駆動ローラ43の回転軸回りに回動可能に設けられた支持フレーム47を有し、上記従動ローラ44及びガイドローラ55は、この支持フレーム47に支持されており、該支持フレーム47の回動に伴って従動ローラ44及びガイドローラ55が後述の如く移動し、これにより作動ローラ対45の向きが変更されることになる。
そして、スイッチバックユニットU5では、カッターユニットU4によって先端側から送り込まれたプリントペーパPを、その後端部が作動ローラ対45の位置まで来るように作動ローラ対45によって引込用搬送路に引き込んだ後、切換機構46によって作動ローラ対45の向きを変更し、それから駆動ローラ43を逆向きに回転させることによりプリントペーパPをその後端部から第1の排出トレイ5に送り出す。
上記第1の排出トレイ5は、筐体1の外部における、上記スイッチバックユニットU5の搬出ローラ59よりも筐体前方位置に設けられていて、上記プリントユニットU3に対してほぼ真上に位置している。
ここで、上記スイッチバックユニットU5の構成及び動作についてさらに詳述すると、図4に示すように、上記切換機構46は、上記支持フレーム47に加えて、この支持フレーム47に固定されたカム溝48を有する従動部材49と、このカム溝48に係合するカムフォロア50を有するカム51と、このカム51を、スイッチバックユニットU5の下方に配置されたモータ31(図1参照)により回転させる不図示の回転機構とを有している。
図5は、カム51と従動部材49との関係を示す平面図である。従動部材49は断面コ字状で内側がカム溝48になっている。カム51は、回転軸52により回転可能に支持されている。そして、回転機構の作動によりカム51が回転すると、カムフォロア50がカム溝48内を案内されながら支持フレーム47を駆動ローラ43の回転軸回りに図4で反時計回り方向に回動させる(図6及び図7参照)。この支持フレーム47の回動に伴って従動ローラ44が駆動ローラ43を中心に公転し、この従動ローラ44の公転により作動ローラ対45の向きが変更される。
また、上記切換機構46には、作動ローラ対45と上流側の搬送路との間でプリントペーパPを案内するガイド部材53が設けられている。このガイド部材53は、支持フレーム47が回動して図7の状態になったときには、作動ローラ対45と下流側の搬送路との間でプリントペーパPを案内する役目を有し、作動ローラ対45の向きの変更に合わせてプリントペーパPの案内方向を変更する。このガイド部材53は、プリントペーパPの裏面側に位置するガイド板54と、上記ガイドローラ55とで構成されている。
上記作動ローラ対45と送り出しローラ42との間には、プリントペーパPを検出する第2ペーパ検出センサ58が設けられ、上記引込用搬送路には、回転可能に支持された受けローラ57が設けられている。
上記支持フレーム47には、スイッチバック動作中のプリントペーパPを押さえる押さえ部材85が設けられている。この押さえ部材85は、支持フレーム47に回動可能に取り付けられた押さえフレーム86と、この押さえフレーム86の先端部に回転可能に取り付けられた押さえローラ87とを有していて、駆動ローラ43と従動ローラ44とに挟持されたプリントペーパPを受けローラ57に対して自重により押さえつけるようになっている。
次に、上記構成のスイッチバックユニットU5の動作について説明する。
上記送り出しローラ42によって送り込まれたプリントペーパPはガイド板54及びガイドローラ55により案内され、第2ペーパ検出センサ58によりプリントペーパPの先端部が検出されると駆動ローラ43が回転して、プリントペーパPは駆動ローラ43及び従動ローラ44からなる作動ローラ対45に挟持されて、上流側の搬送路とは反対側の引込用搬送路に引き込まれる。
図4中二点鎖線で示すように、プリントペーパPが進行して第2ペーパ検出センサ58により後端部が検出されると駆動ローラ43が停止する。このようにプリントペーパPを引込用搬送路に完全に引き込まなくても方向転換することができるので、スイッチバック時にプリントペーパPを引き込むための空間を小さくしてスイッチバックユニットU5の小型化を図ることができる。そして、カム51の回転機構が作動してカム51を回転させる。これにより、支持フレーム47が回動する。
図6は、支持フレーム47の回動途中の状態を示す。この支持フレーム47の回動により、従動ローラ44が駆動ローラ43の周りを公転して作動ローラ対45の向きが変わる。これに伴い作動ローラ対45に挟持されたプリントペーパPの向きも変わる。また、支持フレーム47の回動に伴って押さえ部材85が下降して、押さえローラ87がプリントペーパPを受けローラ57に押し当てる。これにより、プリントペーパPの先端が跳ねて他の部材に当接することにより折れ曲がったりプリント面に傷が付いたりするのを防止することができる。
図7は、支持フレーム47の回動が完了した状態を示す。このとき、プリントペーパPの後端部が搬出ローラ59の方向(下流側の搬送路の方向)を向く。また、従動ローラ44がプリントペーパPを介して受けローラ57に押し当たり、プリントペーパPを従動ローラ44と受けローラ57との間に挟み込む。これにより、プリントペーパPは、従動ローラ44と受けローラ57とで反対方向に曲げられる。つまり、マガジン収容部2から搬送されてきたプリントペーパPは、上記ロールによる巻き癖によって、長さ方向中央部が両端部に対してプリント面側に突出するようにカールしているが、受けローラ57では、プリントペーパPのカールにより突出している側とは反対側(プリント裏面側)に曲げられ、従動ローラ44では、プリントペーパPのカールにより突出している側(プリント面側)に曲げられ、このことで、プリントペーパPのカールが矯正される。
そして、駆動ローラ43が逆転して、プリントペーパPの後端部が今度は先端部となって第1の排出トレイ5に送り出される。こうしてスイッチバック動作が完了する。このスイッチバック動作の完了後は、カム51の回転機構が逆方向に作動して支持フレーム47を元の状態(図4に示す状態)に戻す。
本実施形態では、上記のようにスイッチバックユニットU5(スイッチバック装置)が、プリントペーパPのカールを矯正するカール矯正機構を有しており、このカール矯正機構は、スイッチバックユニットU5によりプリントペーパPが引込用搬送路から下流側へ搬送される際に、該プリントペーパPのカールを矯正するように構成されていることになる。ここで、マガジン収容部2から搬送されてきたプリントペーパPは、上記ロールの巻き癖によるカールを矯正する必要があるものの、カセット収容部3から搬送されてきたプリントペーパPの場合には、通常、カールしていないのでカールを矯正する必要はなく、カール矯正機構によるカールの矯正を行うことによって不要なカールがついてしまう。
そこで、本実施形態では、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPは、第1の排出トレイ5に搬送する一方、カセット収容部3から引き出されたプリントペーパPは、第2の排出トレイ6に搬送するよう、搬送経路を切り換え、それによってプリントペーパPの種類に応じてカール矯正を選択的に行うようにしている。
ここで、上記第2の排出トレイ6は、図1に示すように、筐体1の後側における上記スイッチバックユニットU5の受けローラ57近傍に取り付けられて斜め下方に延びている。すなわち、上記引込用搬送路が第2の排出トレイ6への搬送経路とされ、プリントペーパPを第2の排出トレイ6へ搬送する場合には、プリントペーパPを引込用搬送路に引き込んだ後、該プリントペーパPの搬送方向を逆転させない(つまり駆動ローラ43を逆転させない)で、プリントペーパPを搬送し続けて、第2の排出トレイ6へ搬送する。
本インクジェットプリンタは、制御系として、図8に示すように、マイクロプロセッサ101(以下、CPUという)と、このCPU101とデータバスを介して接続された搬送制御部102、ヘッド制御部103、プリント制御部104、半導体メモリRAM/ROM105、通信インタフェース106、上述の第1ペーパ検出センサ20、第2ペーパ検出センサ58及びカット位置センサ29と、を備えている。
上記搬送制御部102は、上記各ユニットU1〜U5夫々の動作制御を行う。ヘッド制御部103は、プリントヘッド67の動作制御を行う。通信インタフェース106は、受付ブロック100との間で情報の送受信を行うためのものである。プリント制御部104は、受付ブロック100から通信インタフェース106を介して受信した画像データに基づき、プリントペーパPに対して画像データのプリントを実現するための制御を行う。
上記搬送制御部102の制御により、上記各ユニットU1〜U5は以下のように動作する。
マガジン収容部2にセットされたプリントペーパPに対してプリントを行う場合には、第1供給ユニットU1の支持ローラ15及び供給ローラ17並びにプリントユニットU3の搬送ローラ75を作動させることにより、プリントペーパPをマガジン収容部2から引き出してプリント部4へと搬送する。プリントユニットU3では、搬送ローラ75により、プリントペーパPを単位搬送量で間欠的に搬送しながら、プリントヘッド67を主走査方向に移動させて、該プリントヘッド67の各ヘッドユニット67aのインク吐出ノズル67bよりプリント台66上のプリントペーパPに対しインクを吐出することでプリントを行う。上記プリントされたプリントペーパPは、排出ローラ81によってカッターユニットU4へと搬送される。
排出ローラ81及び送り出しローラ42により単位搬送量で間欠的に搬送されるプリント後のプリントペーパPは、カット位置センサ29により上記切断マークmが検出される。その検出結果に基づいてカッターユニットU4が電動モータ32により搬送方向の前後に移動して、所定のカット位置で、カッター26の可動刃26bが作動してプリントペーパPが切断される。尚、本実施形態では、プリントユニットU3とカッターユニットU4との間にループ形成ユニット(プリントペーパPをループ状にすることによってプリント処理とプリント後の処理とを分離するためのユニット)を設けていないため、プリントユニットU3におけるプリントヘッド67の走査タイミングと、カッターユニットU4における切断タイミングとを一致させる必要がある。つまり、プリントペーパPの搬送が停止したタイミングで、プリントヘッド67の走査と、カッター26による切断とが行われる。
切断されたプリントペーパPは、スイッチバックユニットU5の送り出しローラ42により搬送され、作動ローラ対45に挟持されて、上流側の搬送路とは反対側の引込用搬送路に引き込まれる。そうして、第2ペーパ検出センサ58により切断されたプリントペーパPの後端部が検出されると駆動ローラ43が停止し、その後、支持フレーム47が回動してプリントペーパPの向きが変わる(図7参照)。
そして、駆動ローラ43が逆転して、プリントペーパPの後端部が今度は先端部となって第1の排出トレイ5に送り出される。このときに、上記プリントペーパPに対しカールの矯正が行われ、カールが矯正されたプリントペーパPはプリント面を上側にした状態で第1の排出トレイ5によって受け止められる。
プリントペーパPを排出トレイ5に送り出した後に、支持フレーム47が上記とは逆方向(図7で時計回り方向)に回動して作動ローラ対45の向きが元に戻される(図4参照)。そうして、作動ローラ対45は、カッターユニットU4から搬送される次のプリントペーパPを受け取るようにする。ここで、上述したように、本実施形態ではループ形成ユニットが設けていないことから、カッターユニットU4から搬送されるプリントペーパPの先端がスイッチバックユニットU5に到達する時点において、上記作動ローラ対45が上流側の搬送路から搬送されてきたプリントペーパPを引込用搬送路の引き込み可能な状態(図4に示す状態)となるように、プリントユニットU3におけるプリント動作、カッターユニットU4における切断動作、及びスイッチバックユニットU5における搬送動作(作動ローラ対45の回動)の同期がとられる。例えば必要に応じてプリントユニットU3におけるプリント動作を待機させる。
一方、カセット収容部3にセットされたプリントペーパPに対してプリントを行う場合には、第2供給ユニットU2の送出しローラ35及びプリントユニットU3の搬送ローラ75の作動により、プリントペーパPをカセット収容部3から引き出して、プリントユニットU3へと搬送する。
続いて、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPと同様に、プリントペーパPを搬送ローラ75により単位搬送量で間欠的に搬送しながら、プリントヘッド67を主走査方向に移動させてプリントを行う。このプリントされたプリントペーパPは、排出ローラ81によって、カッターユニットU4へと搬送される。
カセット収容部3から引き出されたプリントペーパPは切断する必要がないため、カッターユニットU4をそのまま通過し、スイッチバックユニットU5へと送り出される。
スイッチバックユニットU5の送り出しローラ42により搬送されるプリントペーパPは、作動ローラ対45に挟持されて、上流側搬送路とは反対側の引込用搬送路に引き込まれる。カセット収容部3から引き出されたプリントペーパPは、カールを矯正する必要がないため、その引き込み後に、該プリントペーパPの搬送方向を逆転させないで、プリントペーパPを搬送し続けて、第2の排出トレイ6に排出される。そうして、プリントペーパPはプリント面を上側にして、筐体外部の第2の排出トレイ6に受け止められる。
したがって、上記実施形態では、スイッチバックユニットU5が、プリントユニットU4に対して筐体後方の上方位置であって、上記プリントユニットU4の上方に位置する第1の排出トレイ5と略同じ高さ位置に配設されており、プリントユニットU4よりも下流側の搬送路、つまりカッターユニットU4が斜め方向に延びて設けられている。このことにより、水平搬送路及び垂直搬送路が設けられた従来のプリンタと比べて、プリントユニットU4よりも下流側の搬送路の長さが大幅に短くなる。その結果、ローラの数が減ることで、コストの低減が図られると共に、プリントペーパPの斜行が抑制されてペーパ搬送をスムーズに行うことができる。
また、搬送路を斜め方向に延びて配置することによって、筐体1内における各構成部材の配置スペースの効率化が図られ、スイッチバックユニットU5を設けることと相俟ってインクジェットプリンタの小型化を図ることができる。
さらに、マガジン収容部2から搬送されてきたプリントペーパPは、上記スイッチバックユニットU5により、第1の排出トレイ5に排出すると共に、そのプリントペーパPのロールの巻き癖によるカールを矯正するため、第1の排出トレイ5においてプリントペーパPが互いに重ねられても、プリント面に傷が付くことを防止することができる。一方、カセット収容部3から搬送されてきたプリントペーパPは、上記スイッチバックユニットU5により、第2の排出トレイ6に排出するが、そのときにはプリントペーパPに対するカール矯正動作を行わないため、単票状のプリントペーパPに不要なカールがつくことを防止することができる。
尚、上記実施形態では、上述したように、プリントユニットU3とカッターユニットU4との間にループ形成ユニットを設けていないが、ループ形成ユニットを設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、スイッチバックユニットU4(スイッチバック部)がカール矯正機構を有していたが、スイッチバックユニットU4とは別個に、カール矯正機構(カール矯正装置)を設けてもよい。
さらに、上記実施形態では、マガジン収容部2及びカセット収容部3の両方を設けるようにしたが、マガジン収容部2だけを設けるようにしてもよく、マガジン収容部2又はカセット収容部3を複数設けるようにしてもよい。
さらにまた、上記実施形態では、本発明のプリンタを、写真プリントシステムに用いられるインクジェットプリンタに適用したが、プリントペーパPをペーパセット部からプリント部4へ搬送するようにしたプリンタであれば、本発明はどのようなものにも適用することができる。