JP4457191B2 - 子癇前症および糖尿病の診断および処置に関する材料および方法 - Google Patents

子癇前症および糖尿病の診断および処置に関する材料および方法 Download PDF

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Description

発明の属する技術分野
本発明は、子癇前症および糖尿病の診断および処置のための材料および方法、さらには、子癇前症の発症におけるP型イノシトールホスホグリカン(IPG)の役割、子癇前症の診断方法、並びに子癇前症の処置にP型IPGのアンタゴニストを使用することに関する。
発明の背景
子癇前症は、胎盤の疾患であり[1]、不十分な子宮胎盤の循環によって特徴付けられ[2]、全妊婦の10−12%に影響し、周産期死亡率の主要なファクターである。直接または間接的に母系の内皮の機能不全を引き起こす一以上の胎盤由来ファクターが、母系の循環中に放出され、続いて、凝固系の活性化に係る母系の問題が血管収縮に次いで母系器官における血管の浸透性および虚血を増大するという証拠がある[3]。
発明の要旨
本発明は、子癇前症と、子癇前症患者におけるその深刻度およびイノシトールホスホグリカン(IPG)のプロフィール、並びに年齢および経産が適応したそれらの対照との間に関係があるか否かを調べることから生じた。子癇前症の胎盤における乱れた炭水化物代謝の意味の情報を得るために、グリコーゲン蓄積の顕著な増加によって以前に示されたように[4]、子癇前症の同程度に生命を脅かす後遺症を伴わないが、胎盤のグリコーゲン蓄積が目立った特徴である糖尿病の妊婦と比較した[4、5]。
従って、第1の態様では、本願発明は、子癇前症の処置用の薬剤の調製におけるP型イノシトールホスホグリカン(IPG)アンタゴニストの使用を提供する。
さらなる態様では、本発明は、患者における子癇前症を処置する方法を提供するものであり、この方法は、患者に治療に有効な量のP型IPGアンタゴニストを投与することを含む。
さらなる態様では、本発明は、薬学的に許容できるキャリアーと組み合わせてP型アンタゴニストを含む薬学的組成物を提供する。
P型IPGおよびヒト組織からそれらを単離する方法を後述する。これは当業者にP型IPGアンタゴニストの調製を可能にする。
本発明では、“P型IPGアンタゴニスト”は、以下の特徴の一つ以上を備えた物質を含む:
(a)胎盤からのP型IPGの放出を阻害する;
(b)胎盤由来IPGに対するIPG結合物質(例えば抗体または特異的結合タンパク)を介して胎盤由来P型IPGのレベルを低減する;および/または、
(c)胎盤由来P型IPGの効果を低減する。
さらなる態様では、本発明はP型IPGアンタゴニストをスクリーニングする方法を提供するものであり、この方法は、以下の工程を含む:
(a)候補アンタゴニストとP型IPGとが競合する条件下でP型IPGの生物学的特徴についてアッセイする際に候補アンタゴニストとP型IPGとを接触させる工程;
(b)P型IPGの生物学的特徴を測定する工程;並びに、
(c)P型IPGの生物学的活性を低減する候補アンタゴニストを選択する工程。
P型IPGのある種の生物学的特徴と、上記スクリーニング方法に用いられるこれらの特徴を調べるためのアッセイについては、後述する。組合せ化学の技術は、大量の合成的候補アンタゴニストの調製に特に適しており、上記方法により活性に関してスクリーニングされうる。
子癇前症と糖尿病妊婦との両方におけるIPGの分泌の測定に置かれた特別な強調は、代謝経路の制御キー部位における化合物のクラスの既知の根本的な重要性に関連し、異なる組織において、IPG P型の場合には炭水化物を酸化およびグリコーゲン合成に向け、IPG A型の場合には脂質生成に向け、この制御は関連する器官と器官間の両方である[6、9]。
英国特許公開第9618934.5号に基づいて優先権主張した継続中の出願において、我々は糖尿病患者のIPGの尿中含量について報告し、この文献から、インスリン耐性、肥満症および高血圧のような症候群Xに関連するパラメーターに関連する変更されたイノシトールホスホグリカンプロフィールの臨床的役割について証拠が提示された。子癇前症と症候群Xにおける代謝変化は類似している[10]。
後述する我々の研究の結果を、以下に示す:
(a)子癇前症の女性の尿中のIPG P型の24時間の分泌は、年齢、経産および妊娠段階が適合した対照の妊婦よりも顕著に高い(2から3倍)。
(b)糖尿病の妊婦は、年齢、経産および妊娠段階が適合した対照の妊婦に比べてIPG P型の尿中分泌において意味のある変化を全く示さない。
(c)妊娠そのものが、年齢の適合した妊娠していない対照と比べてIPG P型の尿中分泌の増大と関連する。
(d)結果をクレアチニン1ミリモル当たりのユニット数として示した場合に、子癇前症グループにおけるIPG A型が増大することを除いて、子癇前症または糖尿病のグループにおけるIPG A型の毎日の分泌には意味のある変化が全く見いだされなかった。
(e)IPG P型の尿排出は、子癇前症の深刻さのマーカー、プラスマアラニンアスパラギン酸トランスアミナーゼ、蛋白尿の程度、および血小板数と相関していた。
(f)ヒト胎盤は、非常に高濃度のIPG−P型を含有し、あるものはヒトまたはラット肝臓のいずれより100倍大きかった。PDHホスファターゼ系で試験された同じ調製物の量を増大したときに、活性における計算された減少によって証明されるように、IPG−P型活性の阻害剤を含むと思われる(図7)。子癇前症の胎盤は、正常妊婦の胎盤の約2倍多いIPG−P型を含む。胎盤から単離されたIPG−A(pH1.3フラクション)は、ラット脂肪細胞の脂質生成を刺激する能力について試験したときに、活性を全く示さなかった。
(g)避妊用のピルの使用は、正常女性の尿中のIPG−P型の増大と関連付けられることを示唆する証拠が見いだされた(各グループにつき5の値)。
(h)−80℃で10ヶ月貯蔵した後に、子癇前症の女性の尿は、尿が不安定な阻害剤を最初に含むことを示唆する増大したP型活性(図8A)を示した。同じ尿から単離されたIPG A型の収量は、活性において低減した(図8B)。
(i)妊娠していない女性と正常男性のIPG P型とIPG A型の比率に意味のある差異が見いだされた。すなわち、IPG P型は両方のグループにおいて類似するが、IPG A型は女性において5から6倍高かった。
(j)正常な妊婦と比較して、子癇前症の女性の尿中において、IPG P型が2.7倍増加した。正常妊婦と比較して子癇前症女性の胎盤由来P型メディエーターが2.7倍増加した(表5参照)。
(k)子癇前症における高い尿排出IPG P型は、高い胎盤および循環レベルを反映し、IPG P型がグリコーゲンシンターゼホスファターゼを活性化することから、この条件において胎盤におけるグリコーゲンの蓄積と直接関連する。
(l)子癇前症女性の尿中におけるP型メディエーターの濃度は、生後のサンプルでは基準に戻り(図6参照)、子癇前症女性における関連のあるP型メディエーター源が胎盤であることを確認する。
(m)胎盤を起源とするIPG P型の高い循環レベルは、例えば他の内分泌腺を刺激する、および/または子癇前症症候群の病因に寄与しうる内皮細胞に影響を与えるパラクリン効果を有する。
本発明は、とりわけ、子癇前症の治療処置を提供する:
(1)胎盤からのP型メディエーターの放出を阻害する;
(2)胎盤由来IPGに対する抗体を介して胎盤由来P型IPGのレベルを低減する;
(3)P型アンタゴニストを解して胎盤由来P型IPGの効果を低減する。
この物質は、単独の活性物質として、あるいは他の形態の処置に付随して投与されうる。その小さい分子量と、熱および酸安定性のために、IPGは経口投与に適しているが、他の形態の投与も用いることができる。抗体、もしくは経口投与に適さない他のタンパクまたは物質の場合には、非経口投与のような他の方法が用いられる。投与される抗体は、好ましくはヒトの、または周知技術に従って“ヒューマナイズ”される。これについては、さらに後述する。
本発明は、子癇前症の診断として血液または尿中のP型IPGの測定も考慮する。しかして、さらなる態様では、本発明は、患者における子癇前症の診断方法を提供し、この方法は、患者から得られた生物学的サンプルのP型IPGのレベルを測定することを含む。しかして、診断は、測定されたレベルと、既知のP型IPGレベルとを相関させることによって成される。
ある実施態様では、この方法は以下の工程を有する:
(a)患者から得られた生物学的サンプルを、一つ以上のP型IPGに特異的な結合部位を備えた結合試薬を表面に固定した固体支持体と接触させる工程;
(b)固体支持体と、未結合の結合部位、結合したP型IPGまたは占有された結合部位に結合しうるラベルされた発色試薬とを接触させる工程;並びに、
(c)サンプル中のP型IPGのレベルを示す値を得るために、工程(b)で特異的に結合した発色試薬のラベルを検出する工程。
以下に記載するように、本発明のこの態様において、P型IPGのレベルは、P型IPGのレベルと相関するマーカーを用いてさらに確認することができる。
本発明を実施例として以下に記載するが添付図面を参照して限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
図1は、子癇前症グループの妊婦、糖尿病グループの妊婦、それぞれに対応する正常な妊婦、および妊娠していない女性の尿中のIPG P型の濃度(ユニット/ミリモル クレアチン)についての個々の値を示し(A、B)、子癇前症グループの妊婦、糖尿病グループの妊婦、それぞれに対応する正常な妊婦、および妊娠していない女性の尿中のIPG A型の濃度(ユニット/ミリモル クレアチン)についての個々の値を示す(C、D)。
図2A、Bは、妊娠していない対照の患者におけるIPG P型およびIPG A型の尿中への分泌に対する、避妊用ピルの影響を示す。
図3A、Bは、子癇前症、糖尿病および対応する対照の妊婦のグループからサンプルを回収した時の妊娠段階と、P型との関係を示す。
図4は、(A)子癇前症における尿中タンパクと尿中IPG P型との間の関係、(B)尿中IPG P型とアラニン−アスパラギン酸トランスアミナーゼの上昇したプラスマレベルとの間の関係、および(C)子癇前症の血小板数と尿中IPG P型との間の関係を示す。
図5は、子癇前症の出生前および生後のサンプルの尿中のIPG P型の濃度(A)および(B)、並びに子癇前症の出生前および生後のサンプルの尿堆積(C)を示す。
図6は、子癇前症および糖尿病の胎盤グリコーゲン代謝を制御するファクターを説明する図式を示す。
図7は、正常者の胎盤のP型IPGの評価についてのアッセイに用いられた量と組織の重量の効果を示す。
図8A、Bは、正常および子癇前症患者の両方の妊婦の尿におけるIPG−P型の不安定な阻害因子の証拠、並びに、P−型およびA−型IPG活性に対する−80℃で10ヶ月間尿サンプルを貯蔵した場合の効果を示す。
図9および10は、正常および子癇前症患者において抽出された胎盤組織の重量とP型IPGの収量との間の関係を示す。
発明の詳細な説明
IPG
研究により、A型メディエーターが、cAMP依存性タンパクキナーゼ(阻害)、アデニレートシクラーゼ(阻害)およびcAMPホスホジエステラーゼ(刺激)のような多くのインスリン依存性酵素の活性を調節することが示された。対照的に、P型メディエーターは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼホスファターゼ(刺激)およびグリコーゲンシンターゼホスファターゼ(刺激)のようなインスリン依存性酵素の活性を調節する。A型メディエーターは、脂肪細胞におけるインスリンの脂質生成活性をまねるものであり、一方、P型メディエーターは、筋肉におけるインスリンの糖原生成性活性をまねる。A−およびP型メディエーターの両方が、血清を含まない培地中の繊維芽細胞に添加された場合にマイトジェンである。細胞にEGF−レセプターが移入されれば、繊維芽細胞の増殖を刺激するメディエーターの能力が増幅される。A型メディエーターは、ひな鳥の蝸牛前庭神経節において細胞増殖を刺激しうる。
A型およびP型活性を備える可溶性IPGフラクションは、ラットの組織(肝臓、腎臓、筋肉、脳、脂肪、心臓、胎盤)および小ウシの肝臓を含む種々の動物の組織から得られた。A−およびP型IPG生物学的活性は、ヒトの肝臓および胎盤、マラリア寄生RBCおよびミコバクテリアにおいても検出された。ヒト胎盤栄養膜細胞層およびBC3H1筋細胞に対するインスリンの作用、もしくはラットの横隔膜およびひな鳥の神経節に対するウシ由来IPGの作用を阻害する抗イノシトールグリカン抗体の能力は、多くの構造的特徴が種を越えて保存されていることを示唆する。しかしながら、従来の技術は、ある生物学的フラクションにおけるA−およびP型IPG活性についての報告を含むが、その活性の原因である試薬の精製または特徴付けについては記載されていないことに注意することは重要である。
英国特許公開第9618930.3号および英国特許公開第9618929.5号に基づいて優先権主張した我々の継続中の特許出願において、我々はP型およびA型IPGの単離および特徴付けを記載した。
A型物質は、シクリトール含有炭水化物であり、Zn2+イオンおよび任意にリン酸を含み、脂質生成活性を制御し、cAMP依存性タンパクキナーゼを阻害する特性を備えるものである。これらは、アデニレートシクラーゼも阻害し、血清を含まない培地中のEGF形質移入繊維芽細胞に添加された場合にマイトジェンであり、脂肪細胞における脂質生成を刺激する。
P型物質は、シクリトール含有炭水化物であり、Mn2+および/またはZn2+イオンおよび任意にリン酸を含有し、グリコーゲン代謝を制御し、ピルビン酸デヒドロゲナーゼホスファターゼを活性化する特性を備えるものである。これらは、グリコーゲンシンターゼホスファターゼの活性も刺激し、血清を含まない培地中の繊維芽細胞に添加された場合にマイトジェンであり、ピルビン酸デヒドロゲナーゼホスファターゼを刺激する。
A−およびP型物質は、以下の特徴を有することもわかっている:
1.溶媒としてブタノール/エタノール/水=4/1/1を用いた濾紙クロマトグラフィーで起点の近くに移動。
2.活性に直接関係するリン酸塩を含む。
3.遊離GPI前駆物質がGPI−PLCによる切断に対して耐性である。
4.Dowex AG50(H+)カチオン交換樹脂に結合する。
5.AG3Aアニオン交換樹脂に結合する。
6.活性がプロナーゼに耐性である。
7.Dionesクロマトグラフィーシステムを用いて検出される。
8.P型物質は、C−18アフィニティー樹脂に部分的に保持される。
A−およびP型物質は、以下の手段によってヒト肝臓または胎盤から得られる:
(a)肝臓ホモジェネートの熱および酸処理によって抽出物を調製する。ホモジェネートは液体窒素中で直ちに冷凍された組織から調製された;
(b)遠心および木炭処理(charcoal treatment)後、得られた溶液をAG1−X8(ギ酸塩形態)アニオン交換樹脂と一晩相互作用させる;
(c)50mM HClでカラムを溶出することによって得られたA型IPG活性を備えたフラクション、もしくは10mM HClでカラムを溶出することによって得られたP型IPG活性を備えたフラクションを回収する;
(d)pH4まで中和し(pH7.8を越えない)、物質を単離するためにフラクションを凍結乾燥する。
(e)溶媒としてブタノール/エタノール/水=4/1/1を用いて濾紙クロマトグラフィーにかける。
(f)ピリジン/酢酸/水中において高圧濾紙電気泳動を用いて精製する。
(g)Dionexアニオン交換クロマトグラフィーを用いて精製、もしくはVydac301 PLX575 HPLCクロマトグラフィーを用いて精製および単離する。
これらのIPGを得る方法のさらなる詳細は、前記特許出願に記載されており、その内容をここに参照として含める。
アンタゴニスト
上述したように、天然もしくは合成により生じたP型活性のアンタゴニストは、一つ以上の以下の特徴を備えた物質を含む。
(a)胎盤からのP型メディエーターの放出を阻害しうる物質;
(b)胎盤由来IPGに対するIPG結合物質(例えば、抗体または特異的結合タンパク)を介して胎盤由来P型IPGのレベルを低減しうる物質;および/または、
(c)胎盤由来P型IPGの効果を低減することができる物質。
ある実施態様では、IPGアンタゴニストは特異的結合タンパクである。天然に生じる特異的結合タンパクは、IPGに結合するタンパクについて生物学的サンプルをスクリーニングすることによって得られる。
さらなる実施態様においては、アンタゴニストは抗体である。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の調製は、当該技術分野において十分に確立されており、模範的なプロトコルが以下の実施例に記載されている。モノクローナル抗体は、元の抗体の特異性を保持する別の抗体またはキメラ分子を調製するために組み換えDNA技術によって処理されうる。このような技術は、抗体のイムノグロブリン可変領域または相補性決定領域(CDR)をコードするDNAを、別のイムノグロブリンの定常領域、もしくは定常領域+フレームワーク領域に導入することを含んでも良い。例えば、欧州特許公開第184187号、英国特許公開第2188638号または欧州特許公開第239400号参照。モノクローナル抗体を調製するハイブリドーマは、産生された抗体の結合特異性を変化させる、あるいは変化させない、遺伝的変異または別の変化が行われても良い。
抗体は、当該技術分野において標準的な技術を用いて得られる。抗体を産生する方法は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヤギ、ヒツジまたはサル)をタンパクまたはそのフラグメントで免疫することを含む。抗体は、当該技術分野において公知の種々の技術を用いて免疫された動物から得られ、好ましくは関心の向けられた抗原に対する抗体の結合を用いて選別される。例えば、ウェスタンブロッティングまたは免疫沈降法を用いることができる(Armitageら,Nature,357:80-82,1992)。動物から抗体および/または抗体産生細胞を単離することは、動物をと殺する工程を伴っても良い。
ペプチドで哺乳動物を免疫する代案または補足として、タンパクに特異的な抗体が、例えば国際公開第92/01047号に記載されているように、表面に機能的イムノグロブリン結合ドメインを提示するラムダバクテリオファージまたは糸状バクテリオファージを用いて、発現されたイムノグロブリン可変ドメインの組み換えにより産生されたライブラリーから得られても良い。このライブラリーは、純粋、すなわちタンパク(またはフラグメント)で免疫されていない生物から得られた配列から構成されてもよく、また、関心の向けられた抗原に曝された生物から得られた配列を用いて構成されたものであっても良い。
本発明に係る抗体は、多数の方法によって修飾されても良い。用語“抗体”は、必要な特異性を備えた結合ドメインを備えたあらゆる結合物質をカバーすると解釈されるべきである。しかして本発明は、抗体フラグメント、抗体の誘導体、機能的等価物および相同体をカバーし、合成分子および抗原またはエピトープに結合可能な抗体に似た形状を備えた分子を含む。
抗原または他の結合パートナーに結合することができる抗体フラグメントの例は、VL、VH、ClおよびCH1ドメインからなるFabフラグメント;VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体のシングルアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;VHドメインからなるdAbフラグメント;単離されたCDR領域およびF(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結した二つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントである。一本鎖Fvフラグメントも含まれる。
親である非ヒト抗体よりも免疫原性が少ない抗体を提供するために、通常はフレームワークアミノ酸残基のいくつかの変更を伴う、ヒトフレームワーク領域にヒト以外に由来するCDRがグラフトされたヒューマナイズされた抗体も、本発明の範囲に含まれる。
本発明に係るモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、遺伝的変異または他の変化を受けてもよい。さらに、当業者であれば、モノクローナル抗体が、元の抗体の特異性を保持する別の抗体またはキメラ抗体を産生する組み換えDNA技術を受けてもよいことが理解されるだろう。このような技術は、抗体のイムノグロブリン可変領域または相補性決定領域(CDR)をコードするDNAを、異なるイムノグロブリンの定常領域または定常領域+フレームワーク領域に導入することを含んでもよい。例えば、欧州特許公開第184187号、英国特許公開第2188638号または欧州特許公開第239400号参照。キメラ抗体のクローニングおよび発現については、欧州特許公開第0120694号および欧州特許公開第0125023号に記載されている。
所望の結合特性を備えた抗体を産生し得るハイブリドーマは、真核または原核の、抗体(抗体フラグメントを含む)をコードする核酸を含み、それらを発現することができる宿主細胞として、本願発明の範囲内である。また本発明は、抗体が産生、好ましくは分泌される条件下で抗体を産生しうる細胞を生育することを含む抗体の産生方法を提供する。
上記抗体は、直接または間接的に検出可能な、好ましくは測定可能なシグナルを生じることのできるラベルまたはレポーター分子で標識されることによって、本発明の診断の態様に用いることもできる。レポーター分子の結合は、直接または間接的に、例えばペプチド結合を介して共有的に、または非共有的に成される。ペプチド結合を介した結合は、抗体およびレポーター分子をコードする遺伝子融合物の組み換え発現の結果であってもよい。
一つの好ましい形態は、分光学的に分離された吸収または放射特性を備えた個々の蛍光色素、リン光体、レーザー色素と各抗体との共有結合による。適切な蛍光色素は、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリンおよびTexasRedを含む。適切な発色染料は、ジアミノベンジジンを含む。
他のレポーターは、着色、磁性または常磁性のラテックスビーズのような高分子コロイド粒子または粒状材料、並びに直接または間接的に検出可能なシグナルを視覚的に観察、電気的に検出または他の方法で記録されるようにする生物学的または化学的に活性な試薬を含む。これらの分子は、例えば、発色または色を変化させる、あるいは電気的特性に変化を引き起こす反応を触媒する酵素であってもよい。これらは、エネルギー状態間の電子遷移が特徴的なスペクトル吸収または放射を生じるように分子的に励起しうる。これらは、バイオセンサーと組み合わせて用いられる化学的なものを含む。ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンおよびアルカリホスファターゼ検出システムを用いてもよい。
さらなる実施態様において、IPGアンタゴニストは、合成化合物である。これらは、慣例的な化学的技術または組合せ化学を用いて調製され、IPGアンタゴニスト活性について選別される。これらの化合物はそれ自身で有用であり、模擬物の設計に使用され、薬品としての開発において候補となるリード化合物を提供する。合成化合物は、比較的容易に合成され、薬品として投与に適した特性を備える場合に好ましく、例えば消化管においてプロテアーゼによって分解されるならば、ペプチドであるアンタゴニストは経口用組成物用の活性剤として望ましくない。模擬設計、合成および試験は、標的の特性について多数の分子を不規則に選別することをさけるために一般的に用いられる。
モノクローナル抗体の産生
連続的な薄層クロマトグラフィー(TLC)によてラットの肝臓から精製されたイノシトールホスホグリカン(IPG)を用いて、慣例的な手段を用いて、New ZealandラビットおよびBalb/cマウスを免疫した。
免疫後、モノクローナル抗体を、変異ミエローマ細胞(106細胞/ml)とマウス脾臓細胞(5x106細胞/ml)とを融合する手段を用いて調製した。使用したミエローマ細胞系は、ヒポキサンチン−グアニンホスホリバシル(phosphoribasyl)トランスフェラーゼを欠く細胞である。ハイブリドーマ細胞のスクリーニング法は、抗原(IPG)が固体相に固定されている非競合固体相酵素イムノアッセイに基づくものであった。培養物の上清を添加し、陽性ハイブリドーマ細胞を選択した。
単一の細胞クローニングは、限界希釈によって成された。3つのモノクローナル抗体(2D1、5HGおよび2P7)のハイブリドーマを選別した。全てのモノクローナル抗体は、EK−5050キット(Hyclone)を用いてIgMであることが調べられた。
全てのモノクローナル抗体がIPGを認識することを試験するために、非競合固相酵素イムノアッセイを行った。F96 Polysorp Nunc-Immuno Platesがアッセイに用いられた。このポリソープ表面は、ある種の抗原が固定されるアッセイに推奨される。
1:800に希釈された固定された抗原(IPG)は、組織培養上清、腹水から、そして精製されたモノクローナル抗体が用いられた場合に、モノクローナル抗体を捕獲した。
検出方法は、抗マウスIgM、ビオチニル化全体抗体(ヤギ由来)およびストレプトアビジン−ビオチニル化ホースラディシュペルオキシダーゼ複合体(Amersham)、ABTSおよびABTS用のバッファー(Boehringer Mannheim)を用いた。
同じイムノアッセイを、ポリクローナル抗体を評価するために用いた。このアッセイにおいて、検出方法は、抗ウサギIg、ビオチニル化種特異的全体抗体(ロバ由来)を用いた。
抗体は以下の方法を用いて精製される。ポリクローナルIPG抗体を精製するために、勾配プログラマーGP−250プラスと高精度ポンプP−500を備えた高速タンパク液体クロマトグラフィー(Pharmacia FPLC system)を用いた。
ウサギ血清からポリクローナルIPGを精製するためにHiTrapタンパクAアフィニティーカラムを用いた。タンパク定量は、Micro BCAタンパクアッセイ試薬キット(Pierce)を用いて行われた。
モノクローナルIgM抗体は二段階で精製された。硫酸アンモニウム沈殿は、第一段階として選択された方法である。組織培養上清を硫酸アンモニウムで処理した(50%飽和)。PBS中に希釈されたペレットは、第二段階の前に透析チューブに移された。
硫酸アンモニウム沈降法が一回の精製に適していないので、続いてゲル濾過クロマトグラフィーを行い、PBS中の抗体溶液がPharmacia Sepharose 4Bカラムに充填された。Perkin-Elmer lambda 2 UV/VIS分光光度計で220−280nmの吸収を読みとることによってタンパク定量を行った。
サンドウィッチELISAのプロトコル
以下の方法は、ヒト血清のような生物学的流体中のイノシトールホスホグリカン(IPG)の定量のための間接的、非競合的、固相酵素イムノアッセイ(サンドウィッチELISA)である。
このアッセイにおいて、モノクローナルIgM抗体が固相に固定される。組織培養上清、腹膜にハイブリドーマ細胞を注入することによって誘導された腹膜の腫瘍を有するマウスの腹水および精製されたモノクローナル抗体がイムノアッセイに用いられた。F96 Maxisorp Nunc-Immunoプレートをこれらのアッセイに用いた。タンパク、特に抗体のような糖タンパクがプラスティックに結合するMaxisorp表面が推奨される。
固定された抗体は、試験サンプルから抗原を捕獲する(ヒト血清またはIPGが陽性対照のように使用された)。
架橋抗体(ウサギ由来の精製されたポリクローナルIPG抗体)は、抗原に対してビオチニル化された抗抗体を連結するのに必要である。
検出方法は、抗ウサギIg、ビオチニル化種特異的全体抗体(ロバ由来)およびストレプトアビジン−ビオチニル化ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体(Amersham)、ABTSおよびABTS用バッファー(Boehringer-Mannheim)を用いる。
ELISAアッセイは、以下のようにして行われる:
1.全ての工程に100μl/ウェルを添加。
2.PBSに1:100に希釈されたモノクローナル抗体をF96 Maxisorp Nunc-Immunoプレートに添加。4℃で少なくとも2日間インキュベート。
3.PBSで3度洗浄。
4.蒸留水中のELISA用のブロッキング試薬(Boehringer-Mannheim)(1:9)を添加、室温で2時間。
5.PBS−Tween20(0.1%)で3度洗浄。
6.精製されたポリクローナル抗体(PBS中に1:100で希釈)を添加、4℃で一晩。
7.PBS−Tween20(0.1%)で3度洗浄。
8.PBSに1:1000に希釈された抗ウサギIg、ビオチニル化種特異的全体抗体(ロバ由来)(Amersham)を添加、室温で1時間30分。
9.PBS−Tween20(0.1%)で3度洗浄。
10.PBSに1:500で希釈されたストレプトアビジン−ビオチニル化ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体(Amersham)を添加、室温で1時間30分。
11.PBSで3度洗浄。
12.2.2−アジノ−ジ−(3−エチルベンズチアゾリンスルホナート(6))ジアンモニウム塩結晶(ABTS)(Boehringer Mannheim)をABTS用バッファー(BM)に添加:ABTS用バッファーを蒸留水中に添加(1:9v/v)。1mgのABTSが1mlのABTS用希釈バッファーに添加される。
13.5−15分における405mmフィルターを用いてMultiscan Plus P 2.01で吸収を読みとる。
薬学的組成物
本発明のアンタゴニストは、薬学的組成物中に製剤化される。これらの組成物は、さらに一つ以上のP型アンタゴニスト、薬学的に許容される賦形剤、キャリアー、緩衝剤、安定剤または当業者に周知の他の材料を含んでもよい。このような材料は、無毒であるべきであり、活性試薬の効率に抵触すべきでない。キャリアーまたは他の材料の正確な性質は、例えば、経口、静脈内、皮膚または皮下、鼻腔、筋内、腹腔内経路等の投与経路に依存する。
経口投与用の薬学的組成物は、タブレット、カプセル、パウダーまたは液状であってもよい。タブレットは、ゼラチンまたはアジュバントのような固体キャリアーを含んでもよい。液状薬学的組成物は、一般的に、水、油、動物または植物油、鉱油または合成油のような液状キャリアーを含む。生理食塩水、ブドウ糖または他のサッカリド溶液またはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのようなグリコールが含まれてもよい。
静脈、皮膚または皮下注入、もしくは患部への注入には、活性成分は、ピロジェンを含まず、適切なpH、等張性および安定性を備える非経口的に許容される水溶液の形態とされる。当業者であれば、例えば塩化ナトリウム液、リンガー液、乳酸加リンガー液のような等張媒体を用いて適当な溶液を調製することができる。必要であれば、防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤、および/または他の添加剤を含んでもよい。
ポリペプチド、抗体、ペプチド、小さい分子または個人に投与されるべき本願発明に係る他の薬学的に使用可能な化合物のいずれであろうと、投与は好ましくは“予防に有効な量”または“治療に有効な量”(場合によって、予防は治療と考えられる)であることが好ましく、これは個人に利益を示すのに十分な量である。投与の実際量、投与速度およびタイムコースは、処理されるものの性質および深刻度に依存する。処置の処方、例えば投与量の決定等は、一般的な医師と医学博士の信頼性の範囲内であり、通常は処置される疾患、患者の状態、輸送部位、投与方法および医師に知られる他のファクターを考慮する。上述した技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.(ed),1980に見いだされる。
組成物は、単独、または他の処置と組み合わせて、処置されるべき条件に依存して同時または連続的に投与されてもよい。
診断方法
個人からの生物学的サンプル中のアナライト濃度を測定する方法は当該技術分野で周知であり、個人が上昇したレベルのP型IPGを有するか否か、それゆえ子癇前症の危険性を有するか否かを調べるために本発明において用いられる。この分析の目的は、子癇前症の深刻度または進行を調べることにおいて医師を支援し、および/またはその処置を最適化する診断または予後のために用いられてもよい。診断方法の例は、以下の実験に記載されている。
好ましい診断方法は、P型IPGの検出に依存し、その上昇したレベルが子癇前症に関連して見いだされる。この方法は、血液、血清、組織サンプル(特に胎盤)、または尿のような生物学的サンプルを用いることができる。
P型IPGの濃度を測定するアッセイ方法は、通常は、他の分子に優先してP型IPGの一つ以上と特異的に結合しうる結合部位を備えた結合試薬を用いる。結合試薬の例は、抗体、レセプターおよびP型IPGと特異的に結合しうる他の分子を含む。都合よく、結合試薬は、アッセイ中の操作を簡便にするために、固体支持体の、例えば決められた位置に、固定される。
サンプルは一般的に、サンプル中に存在するP型IPGが結合試薬に結合することができるような、適切な条件下で結合試薬と接触される。結合試薬の結合部位のわずかな占有は、発色試薬を用いて測定されうる。通常、発色試薬は、当該技術分野で周知の技術を用いて測定されうるようにラベルされる(例えば、放射活性、蛍光または酵素ラベルを用いて)。しかして、放射活性ラベルは、シンチレーションカウンターまたは他の放射計測装置を用いて検出され、蛍光ラベルはレーザーおよび共焦点顕微鏡を用い、酵素ラベルは基質への酵素ラベルの作用、通常は色の変化を生じるものによって検出される。発色試薬は、競合方法において用いることができ、そこでは発色試薬は結合試薬の占有された結合部位に対してアナライト(P型IPG)と競合し、あるいは非競合方法において用いることができ、そこではラベルされた発色試薬は結合試薬が結合したアナライトまたは占有された結合部位に対して結合する。どちらの方法も、アナライトによって占有された結合部位の総数の示度を示し、しかして、例えば既知の濃度のアナライトを含むサンプルを用いて得られた標準と比較することにより、サンプル中のアナライトの濃度を提供する。
実験の記載
A.実験
1.IPG A型およびIPG P型活性のアッセイ
尿および胎盤抽出物中のP−およびA−型IPGの活性を、特異的バイオアッセイ方法を用いて研究した。IPG P型は、PDHホスファターゼの活性化を用いて測定した[11]。PDH複合体およびPDHホスファターゼ(金属依存形態)をLilleyら[11]に記載されているようにウシ心臓から調製し、ホスファターゼの活性化のアッセイを前記著者によって記載された2段階システムの分光学的変異によって行った。このアッセイは、IPG P型の特徴であると考えられる(Larnerら[12]参照)。IPG A型は、Rodbell[13]の方法に従って精巣上体の脂肪パッドから単離された脂肪細胞の脂質中への[U14C]グルコースの取り込みによって測定された脂質生成の刺激によって測定された。IPG A型の高度の特異性がこのバイオアッセイに見いだされた。
添加されたIPGとPDHホスファターゼ活性の刺激(IPG P型)および完全な脂肪細胞中の脂肪生成(IPG A型)との間の直線的関係が得られた;この関係は、少なくとも+250%の刺激まで保持する。これらの観察は、種々の組織および尿サンプル由来のIPGの収量の比較の目的のために定義され、用いられるユニットの基礎を提供する。添加されたIPGと反応のパーセント変化との間の直線性は、他でも観察されるが(Lilleyら[11]およびNewmanら[14]参照)、Asplinら[15]は、正常および糖尿病患者の尿中のIPGに関する研究において直線性を示さず、その効果は特にIPG A型を用いて示された(pH1.3フラクション)。
2.尿からのIPG P型およびIPG A型の抽出
尿を、Asplinら[15]に記載されているようにして抽出した。最終的なフラクションを凍結乾燥させ、−20℃で貯蔵した。使用のために、10μlの再懸濁IPGが10mlの尿に対応するように、アッセイ直前にIPGフラクションを水に再度懸濁した。
高度かつ種々の量のIPGが、妊娠した子癇前症の患者の種々のグループにおいて排泄される可能性があるという観点から、また、樹脂の容量が添加量を超えることを確認するために、開始尿体積に対する樹脂の最適な比率を調べるために予備試験が行われた。18gの樹脂当たり尿100mlまでに回収の直線性が得られた。今回の研究においては、IPG含量の変化を許容できるように18gの樹脂当たり30mlの尿の割合を維持した。
3.胎盤の調製
予備試験において、二つの正常な胎盤を以下のように得て、処置した:
(i)第1は出産の40分以内に回収し、この組織のサンプルをフリーズクランプし(freeze-clamped)、固体CO2中に移した。
(ii)第2の胎盤は、出産後約30分に回収され、15gのサンプルが直ちにフリーズクランプされた。残りが二つに分けられ、一方が室温に貯蔵され、他方は氷中で貯蔵された。これらの各々の10gのサンプルが1,3および5時間後に取り出され、フリーズクランプされ、上述したように処理された。
これらのサンプルを、抽出まで−80℃で貯蔵した。
4.胎盤からのイノシトールホスホグリカンの抽出
抽出方法は、液体窒素下で凍結された組織(5g)を粉砕し、次いで3分間100℃で50mMギ酸で抽出することを含む。遠心した後に上清フラクションを炭(10mg/ml)で処理して、再度遠心した。炭上清をMilliporeフィルターに通過させ、水で5倍に希釈し、アンモニアでpH6にした。遠心後、抽出物を15gのAG1−X8に添加し、一晩0℃で貯蔵した。樹脂をカラムに移し、40mlの水、次いでpH3の40mlのHClで洗浄した。IPG P型を、100mlのHCl、pH2.0、IPG A型を100mlHCl、pH1.3で溶出した。抽出物をアンモニアでpH4にして、約5mlまで蒸発させ、より小さいチューブに移して凍結乾燥した。使用時まで−20℃でこの状態で貯蔵される。この抽出工程は、Nestlerら[16]の記載に基づいている。
種々の組織のイノシトールホスホグリカン含量の広い変化[9]は、以下の予備試験を促進した:
(i)IPG P型およびIPG A型の単離および分離に用いられる樹脂の重量に対する胎盤組織の最適な重量、および
(ii)投与量応答曲線の直線部分にアッセイが入ることを確実にするためのバイオアッセイシステムに用いられるべき単離されたフラクションの量。
18mlの樹脂を含むカラムを用いて、胎盤サンプルが0.3g未満の時に最大IPG−P型活性が回収されたこと(図9および10)、並びにこのようにして得られたIPG P型が100μlの水に再懸濁され、その1または2μlがPDHホスファターゼ活性化システムにおけるアッセイに用いられたときに最終アッセイが最も信頼できることが確認された。これらの条件下で、+300%までの刺激が得られ、所定のパラメーターの範囲内で応答が直線的であった。0.3gより多い量の胎盤が用いられた場合には、効果のある阻害剤の共抽出、もしくは樹脂の利用可能な結合部位に競合する材料の存在のいずれかにより、P型IPGの収量(抽出物のグラム当たりで計算)は鋭く落ち込む。
ラットの脂肪細胞中の脂肪生成の刺激によって証明されるかぎり、IPG A型の活性は全く検出されなかった。6つの別個のpH1.3抽出物は、胎盤から調製され、4つの別個の抽出物が3回ずつ試験された。ラット肝臓からの平行した抽出が、同時に行われ、1.92ユニット/gの収量を示し、同時にアッセイされたインスリン標準は+258%のベースライン以上を刺激した。
5.結果の表示
IPGのユニットは、試験システムの基準値の50%の活性化を引き起こす量として定義される。
尿におけるIPGの収量は、以下の3つの異なる基準に基づいて得られる:
(i)Asplinら[15]のデータと直接比較することができる、最終尿抽出物10μlによる試験システムのパーセント刺激(Col 1)。
(ii)1mmolのクレアチニン当たりのIPGのユニット数。
(iii)24時間回収または尿のサンプル、すなわち妊娠の段階における毎日の全放出量中に見いだされるIPGのユニット数。
結果は平均±SEMとして与えられ、患者の選別が妊娠の段階、経産および年齢に適応する、対応する対のサンプルに基づいて、あるいは非パラメトリックデータに関するMann-Whitneyランキング試験に基づいて評価される。
6.実験の設計
研究された10人の子癇前症および妊娠した糖尿病の女性は、妊娠の段階(±13日)、産経(0,1−3,4+)および年齢(±4年)について正常な妊婦の対照患者とそれぞれ適合するものであった。在胎齢は、子癇前症グループで26−37週であり、糖尿病妊婦グループで31−38週であった。イノシトールホスホグリカンの尿排泄においてそれ自身妊娠の影響の評価を行うために生殖可能な年齢の正常な妊娠していない女性が含まれた。
子癇前症におけるイノシトールホスホグリカンの変化は、状態の深刻度と関連していた。
尿:クレアチニン、尿素。Na+、K+、Ca++タンパクおよび体積/24時間
血液:クレアチニン、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(肝臓酵素マーカー)、血小板数。
バイオデータ:年齢、在胎齢、産経、血圧、誕生時重量、胎盤重量
B.結果
1.胎盤から単離されたイノシトールホスホグリカンの安定性:
分娩室から受け取ってすぐにフリーズクランプされた第1の胎盤由来の材料は、IPG P型の並外れて高い収量を与え、IPG A型の活性は全く見いだされなかった。
第2の胎盤からの直接的サンプルの活性は非常に少なかったが、約7ユニットの活性/gを含んでいた。室温で1,3または5時間貯蔵された胎盤由来のサンプルは、全てIPG P型活性に欠けるものであった。1時間氷上で貯蔵されたサンプルは、直ちにフリーズクランプされたサンプルと比較してその活性の約半分を欠失しているが、3または5時間貯蔵されたサンプルの両方が、1ユニットの活性/g未満をもたらした。0℃でさえ、未処理組織中でIPGが高度に不安定であることが結論される。
2.摘出された胎盤中のイノシトールホスホグリカン:
抽出されたIPG P型とIPG A型のユニット/g組織の値が、ヒト胎盤、ヒト肝臓およびラット肝臓について表1に示されている。胎盤におけるIPG P型のとりわけ高い値が見られる。
胎盤中の非常に高度のIPG P型の存在は、この組織におけるステロイド生成の推定上のインスリンメディエーターの既知の機能と一致し、また、グリコーゲン合成ホスファターゼの活性化におけるIPG P型の報告された作用と一致するものである[16,17]。さらに、最初に概算したように、妊娠期の尿のIPG P型の増加は、正常、糖尿病または子癇前症であろうと、胎盤に起因することが考えられる。しかして、IPG P型の濃度および24時間の一日の排出の測定が、このメディエーターの胎盤産生の指標とされてもよい。
子癇前症と正常な胎盤組織の比較研究は、子癇前症の胎盤のIPG P型において2.7倍の増大を示す(表5参照)。
研究された6つ全ての胎盤からのpH1.3のフラクションが、ラット脂肪細胞における脂肪生成を刺激できないことは、胎盤IPG A型が高度に組織特異的であることを示唆し、胎盤IPG A型が非常に特定された機能を有することを示す。
3.子癇前症および糖尿病における尿中のイノシトールホスホグリカン:
子癇前症または妊娠した糖尿病および対照患者の尿中のイノシトールホスホグリカンの濃度および全体的な1日の放出量が表2に示されている。この結果は、Asplinら[15]のデータと比較される10μlのIPG P型(pH2.0)またはIPG A型(pH1.3)フラクションによって調製されたバイオアッセイシステムの刺激として与えられる。この結果は、ユニット/mmolクレアチニン、および1日24時間に放出されるユニットとしても示される。最も著しい差異は、適応する対照グループより2ないし3倍高い子癇前症グループにおけるIPG P型に見られる。糖尿病は、妊娠の同じ段階の対照グループに対して尿中のイノシトールホスホグリカンにおいて顕著な差異を生じなかった。子癇前症、糖尿病および対照グループの値の範囲を示す個々の値は、図1A、Bに示されている。
興味のある差異は、妊娠していない対照グループが、子癇前症と糖尿病の患者に対する妊娠対照グループより低いIPG P型の濃度および一日の全体的な排出を示すことを観察したことに帰する(表2参照)。これらの差異は、統計学的に意味がある。
妊婦のなかで子癇前症グループのみがP型の顕著な増大を示したこと、IPG P型が妊娠していないグループにおいて低かったことに関する重要な知見は、子癇前症とイノシトールホスホグリカンの産生との間のつながりの証拠を提示した。
増大した尿中のIPG P型が胎盤に由来するということは、全ての妊婦が妊娠していない対照と比較して上昇したIPG P型値を備え、胎盤自身が顕著に高いIPG P型の内在濃度を有するという観察によって協力に示唆される(表5参照)。
正常な妊娠していない患者と比較して、子癇前症患者とそれに対応した対照においてIPG P型の排出率がより高くなるということは、尿のIPG P型に対する胎盤の寄与に等しいと考えられるならば(表2)、子癇前症の効果は、全ての表現形式について、子癇前症対照“子癇前症グループの対照”よりも5−ないし6−倍大きい子癇前症値でより確実に強調される(表3)。この解釈は、類似した計算をIPG A型に行った場合に強められる。この場合、胎盤の存在に帰する“過剰な”IPG A型が存在しない、この組織におけるA型の存在を証明できないことと一致することがわかる(表1)。また、図6に示したように、出産後には値が低減した。
表2および図1C、Dに記載された尿のIPG A型の唯一の顕著な差異は、結果をユニット/ミリモル クレアチニンとして表した場合に、子癇前症患者における上昇した値であった。この状況下では、IPG A型の24時間の放出において差異が全く見られなかった。
4.妊娠していない患者におけるイノシトールホスホグリカン:
この研究における10人の妊娠していない患者は、避妊用ピルを投与した5人を含み、変化したホルモンバックグラウンドがイノシトールホスホグリカンの増殖に影響を与えるか否かを調べるために、これら二つのサブセットを別々に考慮した。これらのデータは図2に示されており、このデータから避妊用ピルを摂取したグループにおいてP型のより高い排出の証拠があることが観察される。各サブセットの患者数は結果を確認するには非常に少ないが、この結果は、この調査の延長が正当であることを示唆する。
別個のプロジェクトにおいて、The Middlesex Hospitalの外来患者の診療にかかっている男性の糖尿病患者の尿中IPGの変化について、正常男性のグループが含まれた。この研究データと、正常な妊娠していない女性の研究データとを比較することにより、IPG P型/mmolクレアチニンは両方のグループで類似していたが、IPG A型は正常女性の尿サンプルにおいて5−から6−倍顕著に高いという興味深い知見が示された(表4)。IPG P−/IPG A−の比率において顕著な差異があり、女性では0.6であり、男性では3.1であった。
5.イノシトールホスホグリカンと妊娠段階
グルコース代謝と関係する多くの胎盤酵素の活性における斬新的な証拠、および妊娠の最後に向かって胎盤グリコーゲン含量における斬新的な減少の証拠の観点から[5,18−20]、尿中イノシトールホスホグリカンのデータが、サンプルが採取された妊娠の段階について調べられた;これは26−37週の間にわたる。
これらのデータは、妊娠初期段階の少数のサンプルという観点、および26週における一つの顕著に高い値によって重み付けされ得るという観点に注意して解釈されるが、ある傾向があることが明らかである。
妊娠の段階と、子癇前症患者の尿中のIPG P型との間には重大な関係があり(r=0.609;P<0.05)(図3A)、IPG P型の最も高い値は、第3のトリメスターの始期に見られ、子癇前症および年齢適合対照グループの値は、35−37週に密接に接近している。このような関係は、糖尿病または正常な対照グループでは観察されない(図3B参照)。さらに、尿中IPG A型と妊娠段階との間には全く関係が見いだされなかった。
この研究において、妊娠26−37週の種々の段階において、24時間の尿の回収が行われた。子癇前症グループとその対応する対照の間の尿中IPG P型の差異が子癇前症患者における細胞が比較的未成熟であること[4,21]、および妊娠の最後に向かってIPG P型産生における自然に生じる減衰の遅延を反映するか否か、もしくは子癇前症グループにおけるIPG P型の顕著に上昇した値が子癇前症の深刻度に特異的なマーカーであるか否かの考察は未解決である。妊娠の種々の段階における尿中のIPG P型の変化可能性の問題は、妊娠を通じて時間的間隔を置いて同一患者の尿中IPGを測定することによって解答される。
6.尿中イノシトールホスホグリカンと子癇前症のマーカー:
6.1 IPG P型と子癇前症のマーカー:
抽出されたIPG P型は、子癇前症において増加することが知られている尿中のタンパク、プラスマ中のアラニン−アスパラギン酸トランスアミナーゼの活性および血圧、並びに減少することが知られている血小板数を含む、子癇前症のマーカーと関連して調べられる。
子癇前症患者におけるこれらの種々のマーカーとIPG P型/ミリモル クレアチニンとの間の相関性は、図4A−Cに示されている。要約すると、これらの結果は以下のことを示す:
(i)尿中タンパク−IPG P型と陽性的に関連する、P<0.01。
(ii)アラニン−アスパラギン酸トランスアミナーゼ−陽性的に関連する、P<0.05。
(iii)血小板数−IPG P型と消極的に関連する、P<0.05.
6.2 IPG A型と子癇前症のマーカー:
IPG A型/mmolクレアチニンを基礎として重要であり、IPG P型ほど示されなかったが、IPG A型が、子癇前症患者において上昇傾向を示したことが、表2に記載されている。10人の患者のサンプルにおける比較的小さい差異が、これらの結果から導かれる結論を単に試験的なものとしているが、増大したIPG A型と収縮期の血圧との間に陽性の相関があることがわかった(P<0.05)。この観察は、IPG A型と上昇した血圧との間に明確な陽性的相関が存在する31人の糖尿病の男性患者の個々の研究において見いだされた並行の相関によって強められる。しかしながら、おそらく、血圧の厳格な調節が子癇前症患者の全てにおいて維持され、この研究ではIPGと血圧との間の潜在的な裏に潜んだつながりを覆い隠している。
C.論考
イノシトールホスホグリカンが、グルコース制御、グリコーゲン代謝およびステロイド生成において、胎盤のシグナル導入システムの一部として特に重要である可能性が、以下の証拠から得られる:
(i)このクラスのインスリンメディエーターが、胎盤の形質膜[22]およびフリーズクランプされた完全な胎盤組織(表1)から単離されうる;
(ii)IPG P型は、グリコーゲンシンターゼホスファターゼおよびピルビン酸デヒドロゲナーゼホスファターゼを活性化する[6,7,11,17];
(iii)イノシトールホスホグリカンは、ヒト胎盤ステロイド生成の制御において、シグナル導入システムであることが示された[16,23]。
この結果は、ヒト胎盤がIPG P型の特に豊富な起源であり、正常な妊婦と子癇前症における尿中含量の上昇が胎盤に由来するという強力な証拠を、妊娠していないグループと妊娠したグループとの間の差異が提供するということを明確に示している。これは、胎盤サンプルの直接的分析によって確認された。対応する対照グループを越えて、子癇前症グループの尿中のIPG P型の高度に重要な2から3倍の上昇、妊娠の早期段階においてさらに重要な差異(図3A)は、子癇前症のマーカーに相関することが示されている(図4A−C)。さらに、上昇したIPG P型は、子癇前症の胎盤のグリコーゲンの目立った蓄積について説明を提供する(スキーム1)。
種々のメカニズムが、子癇前症および糖尿病の胎盤におけるグリコーゲン蓄積と関係することが仮定される(スキーム1参照)。子癇前症とは対照的に、対応する対照と比較して、妊娠した糖尿病の患者における尿中のIPG P型の上昇に関する証拠は全くない(表2)。また、この条件では、グリコーゲンの増大した蓄積は、Shafrirら[5,24]に示されているように、この組織におけるグルコースとグルコース6リン酸の増加に関係するかもしれない。これらの著者によって指摘されたように、グルコースとグルコース6リン酸の両方がグリコーゲン合成のアクチベーターであり、グリコーゲンの蓄積の上昇は、母系の高血糖に関連する。これに関連して、糖尿病における胎盤は、糖尿病における腎臓の反応に対してある種の平行を示し、後者はグルコースとグルコース6リン酸の含量を上昇させ、グリコーゲンを蓄積する。しかして、両方の組織が、糖尿病においてグルコースの過剰利用の特徴を示す[25]。
この結果は、子癇前症のマーカーとIPG P型の含量および毎日の排出との間に密接な関係があることを示すが、これが“原因”なのか“結果”なのかわからない。おそらく、プラスマ中のIPG P型の循環濃度も子癇前症において増大する。実験データはこの仮説を確かめるものであり、パラクリンおよびオートクライン シグナリングシステムの両方を活性化しうる上昇した循環レベルのメディエーターが、他の組織および内分泌器官の機能に影響を与えるか否かについて疑問が生じる。
子癇前症において機能不全であると広く考えられている[3]内皮細胞を上昇したレベルのIPG P型に曝すことは、胎盤におけるIPG P型の産生と全身性の効果との間の関係において重大であるかもしれない。イノシトールホスホグリカンは、胎盤のステロイド生成[16]、ブタ卵巣顆粒膜細胞におけるインスリン依存性プロゲステロン合成[23]、顆粒膜細胞のFSHおよびHCG刺激[26]に影響するオートクラインおよびパラクリン制御機能を備えるようである。ウシ副腎細胞のACTHシグナリング[27]、甲状腺細胞のTSH刺激[28]、BALB/C3T3顆粒膜細胞のIGF1刺激[29]、軟骨細胞における成長因子Bの形質転換[30]、およびヒト血小板の活性化[31]。
この研究の特に興味のある面は、6人の異なる胎盤由来および一つの胎盤由来の多重のサンプルに由来する抽出可能なIPG A型の明らかな欠失である(表1)。多数の説明がなされる。おそらく、IPG A型は第3のトリメスターに顕著に減少し、産後および凍結および抽出前の胎盤中で不安定であり、高度の組織特異性を備えかつ脂肪細胞アッセイシステムにおいて不活性であり、より興味深いことには、胎盤において顕著に低い。IPG P型と対比して、IPG A型によって影響を受ける酵素は、タンパクのリン酸化の制御の中心をなすものであり、これらは、アデニレートシクラーゼおよびcAMP依存性タンパクキナーゼの阻害、並びに膜結合型低Km値cAMPホスホジエステラーゼの活性化を含む[6、7]。
胎盤が、本質的に一方向性システムであり、母体から胎児循環系に栄養を運び、グリコーゲンの貯蔵および放出においてグルコースの緩衝システムとして作用することを議論することができる。おそらく、肝臓(解糖/糖新生)および脂肪組織(脂質生成/脂質分解)に見られるタンパクリン酸化サイクルによって制御されるon/offおよび生合成/分解サイクルは、胎盤機能における主要な役割を演じるものではない[18−20]。合成の制御およびイノシトールホスホグリカンの役割をよりよく理解するために、胎盤の代謝制御の側面においてさらなる研究が必要である。
尿中のIPG P型の増大した排出に係る新たな知見、並びにそれが子癇前症における胎盤に由来する可能性は、子癇前症の妊婦の合胞体層におけるグリコーゲン蓄積のメカニズムを示唆する。また、子癇前症症候群の深刻度のマーカーを備えたIPG P型の上記変化の相関は、この機能不全の少なくとも一部がシグナリングシステムの過剰レベルから生じるかもしれないことを示唆している。
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IPG P型はピルビン酸デヒドロゲナーゼホスファターゼとグリコーゲンシンターゼホスファターゼを活性化する。IPG P型活性のユニットは、PDHホスファターゼを50%刺激する量として定義される。値は平均±SEMである;FisherのP値は★★P<0.01によって示されている。
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参考文献:
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Claims (7)

  1. 患者から得られた生物学的サンプル中のP型イノシトールホスホグリカン(IPG)のレベルを測定することを含む、患者における子癇前症を検出する方法であって、P型IPGは、Mn 2+ および/またはZn 2+ イオンを含むシクリトール含有炭水化物であり、ピルビン酸デヒドロゲナーゼホスファターゼを活性化する生物学的活性を有し、対照患者と比較して上昇したレベルのP型IPGが、子癇前症に関連して見いだされ、P型IPGレベルが、P型IPGによるピルビン酸デヒドロゲナーゼホスファターゼの活性化を測定するアッセイで測定されるP型IPGの活性である、方法。
  2. 患者から得られた生物学的サンプル中のP型イノシトールホスホグリカン(IPG)のレベルを測定することを含む、患者における子癇前症を検出する方法であって、P型IPGは、Mn 2+ および/またはZn 2+ イオンを含むシクリトール含有炭水化物であり、ピルビン酸デヒドロゲナーゼホスファターゼを活性化する生物学的活性を有し、対照患者と比較して上昇したレベルのP型IPGが、子癇前症に関連して見いだされ、P型IPGのレベルが、特異的にP型IPGを結合しうる結合試薬を用いて測定されるP型IPGの量である、方法。
  3. 以下の工程:
    (a)患者から得られた生物学的サンプルを、一つ以上のP型IPGに特異的な結合部位を備えた結合試薬が固定された固体支持体と接触させる工程;
    (b)固体支持体を、占有されていない結合部位、結合したP型IPGもしくは占有された結合部位に結合しうるラベルされた発色試薬と接触させる工程;
    (c)サンプル中のP型IPGレベルを表す値を得るために、工程(b)で特異的に結合した発色試薬のラベルを検出する工程
    を含む、請求項記載の方法。
  4. さらに以下の工程:
    (d)患者が上昇したP型IPGレベルを有するか否かを調べるために、工程
    (c)で得られた値と対照患者のP型IPGレベルとを関係付ける工程
    を含む、請求項記載の方法。
  5. 結合試薬が抗P型IPG抗体である、請求項ないしのいずれか一項に記載の方法。
  6. 上昇したP型IPGレベルが、対照患者のレベルの2倍より大きい、請求項ないしのいずれか一項に記載の方法。
  7. サンプルが、血液、血清、組織または尿サンプルである、請求項ないしのいずれか一項に記載の方法。
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