JP4457061B2 - 歯科補綴物製造用キット - Google Patents

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Description

本発明は、インレー及びアンレーの審美的修復に適した、複数の光硬化性ペーストからなる歯科補綴物を製造するためのキットに関する。
近年、金属よりも天然歯に近い色調を有し、高い咬合圧のかかる臼歯部にも使用可能な機械的強度を有する材料として、レジン系歯冠修復材料が広く使用されている。ここで、該レジン系歯冠材料を用いて歯科用補綴物を作製する上で、天然歯に対する色調適合性が重要視されることは言うまでも無い。
通常、歯科医師によって口腔内印象が採取され、その印象を元に口腔内模型が作製され、この模型に対し、技工士がレジン系材料を少量ずつ適宜に、光硬化させながら築盛し、歯科用補綴物が作製される。このとき、補綴物の色調に関する情報はシェードガイドの番号や写真等の方法によって歯科医師から技工士に伝えられ、その情報を元に技工士が適宜複数の色調のペーストを選択しながら補綴物を作製する。このうち透明性に関しては、象牙質部分を修復するペーストとして、該天然歯における象牙質部分の標準的な透明性の範囲に合わせて、硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.60〜0.80程度のものが採択され、他方、その上に積層するエナメル質部分のペーストとして、該エナメル質部分の標準的な透明性の範囲に合わせて、同コントラスト比が0.30〜0.50程度のものが採択されるのが普通である。
ところが、このような透明性を有する象牙質部分の修復用ペーストと、エナメル質部分の修復用ペーストを組み合わせて補綴物を製造したのでは、凹凸に富み、しかも、表層のエナメル質部分と深層の象牙質部分との間ではもちろんのこと、これら各層のなかでも部分によって微妙に色が異なる天然歯の色調の複雑さを再現することは難しかった。さらには、環境光による色の見え方の違いの影響もあって、正確な色調情報を伝達することは困難であった。このようにして補綴物が色調の再現不良になると、例えば、補綴物が白く浮き上がった感じになり違和感があった。また、インレー、アンレーといった歯牙の部分的な欠損を修復する症例においては、天然歯と修復物との間の境界線が判別しやすくなり、色調の再現が難しい症例として認識されてきた。
これに対し、天然歯の象牙質部分に相当する箇所に、エナメル質よりも平行線透過率の高いレジン系材料を用いることで審美性の高い歯科用補綴物を作製する方法が提案されている(特許文献1)。具体的には、象牙質部分を修復するペーストとして、平行線透過率Tpが35〜60であり、エナメル質部分を修復するペーストして該平行線透過率Tpが20〜40で、Tp−Tpが10以上のものが使用されている。この象牙質部分を修復するペーストの透明性はエナメル質部分を修復するペーストよりも高く、前記硬化体1.0mm厚のコントラスト比に換算して示すと、約0.2〜0.3になると考えられ、高い透明性を有する値になる。
しかして、この方法で得られた補綴物は、上記の如くに象牙質部分を修復するペーストにより形成された修復材部分が高透明性になるため、この部分において周囲の天然歯の色調を取り込み易くなる。そのため、天然歯の修復箇所が、浅いI級窩洞であるような場合には、該天然歯に対する色調適合性がかなり良好な補綴物が製造可能である。
特開2002−282280号公報
しかしながら、より深い窩洞や天然歯との隣接面を多く含む症例になるII級窩洞の場合、例えば、アンレーの症例などの欠損部分の多い症例、隣接歯に金属修復物を有する症例、及びMOD窩洞の症例においては、修復部底面或いは隣接歯壁面の背景色を反映しすぎて、補綴物が全体的に暗く見えたり、部分的にグレーゾーンを生じてしまい、天然歯と良好な外観上の調和がとれず、今一歩十分な色調適合性が得られないことが発覚した。
そこで本発明は、簡単な築盛方法にも関わらず、インレー、アンレーを用いるようなII級窩洞の症例において、良好な天然歯との色調適合性を達成するために最適な歯科補綴物製造用キットを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行ってきた。その結果、最適なコントラスト比を有する特定の歯冠修復材を積層して歯科補綴物を構成することによって、暗く見えたり白く浮き上がったりすること無く、天然歯と良好な色調適合性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、象牙質部分修復材とその上に積層されたエナメル質部分修復材とからなる積層構造からなる、II級窩洞用の歯科補綴物を製造するためのキットであって、
(A)上記象牙質部分修復材を形成するための、硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.47〜0.52の範囲にある象牙質部分修復用光硬化性ペースト、と
(B)上記エナメル質部分修復材を形成するための、硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.32〜0.38の範囲にあるエナメル質部分修復用光硬化性ペースト
とを、少なくとも含んでなることを特徴とする歯科補綴物製造用キットである。
さらに、本発明は、()硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.47〜0.52の範囲にある象牙質部分修復用光硬化性ペースト
を用いた硬化体層の上に、
)硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.32〜0.38の範囲にあるエナメル質部分修復用光硬化性ペースト
を用いた硬化体層を形成させることを特徴とするII級窩洞用の歯科補綴物の製造方法も提供する。
本発明のキットを用いれば、得られる歯科補綴物は、II級窩洞の修復用として、天然歯に対する色調適合性に極めて優れるものになる。これは、上記II級窩洞の深い窩洞、具体的には、2mm以上の深さの窩洞の症例において良好に発揮され、補綴物は、暗く見えたり白く浮き上がったりすることがなく、天然歯と良好な外観上の調和を示す。また、天然歯との隣接面を多く含む症例においても、上記効果が良好に発揮され、これら状況のインレーの症例、アンレーの症例隣接歯に金属修復物を有する症例、及びMOD窩洞の症例等において、好適に使用できる。
したがって、少ない色調数でより多様なインレー、アンレー症例において適用可能であり、作成も容易なため、審美性の高い補綴物を効率的に製造できるII級窩洞用の歯科修復キットとして極めて有用である。
本発明において、コントラスト比とは透明性を表す尺度であり、JIS Z8701に規定されるXYZ表色系の三刺激値のうち明るさに関するY値を用いて算出するものである。具体的には、1.0mm厚の試料板に黒背景、もしくは白背景を接触させ、標準の光Cを照射した際の反射光におけるY値を読み取る。黒背景の場合のYをYb、白背景の場合のYをYwとすると、コントラスト比(C)はYb/Ywから求められる。Cの値が1に近いほど不透明な材料であり、0に近いほど透明な材料であることを示す。
修復材のコントラスト比が、歯科補綴物における、天然歯に対する色調適合性、具体的には、インレー、アンレーといった歯牙の部分的な欠損を修復するII級窩洞の症例において、重要な要素になることは、以下の理由による。即ち、インレー、アンレーの症例においては、周囲の天然歯との境界線が明瞭になり両者を区別しやすくなるため、補綴物自体の色味や色の濃さを天然歯に合わせようと尽力するよりも、周囲の色調を積極的に取り込むほうが、色調適合のためには有利になる。更に、これらは形態が複雑であり症例によっても種々の窩洞形態が想定されることから、観察方向によって背景色の影響が変化し、見え方に違いが生まれるため、材料の透明性、即ちコントラスト比が重要となる。
こうした状況にあって、本発明における歯科補綴物製造用キットは、
(A)上記象牙質部分修復材を形成するための、硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.47〜0.52の範囲にある象牙質部分修復用光硬化性ペースト、と
(B)上記エナメル質部分修復材を形成するための、硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.32〜0.38の範囲にあるエナメル質部分修復用光硬化性ペースト
とを含む構成をしている。ここで、象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)が、前記コントラスト比の値を有していることが極めて重要である。即ち、前記したとおり、天然歯における象牙質部分の標準的な透明性の範囲に合わせれば、この象牙質部分修復用光硬化性ペーストは、硬化体のコントラスト比が0.60〜0.80程度のものを用いるのが普通になる。しかしながら、この場合、インレー、アンレーといった歯牙の部分的な欠損を修復するII級窩洞の症例においては、補綴物は、天然歯の色調の複雑さを再現することは難しいものになり、天然歯との境界においても色調が異なるものになることが避けられない。
他方、このように補綴物自体の色調を天然歯に合わせるのではなく、周囲の色調を積極的に取り込むことでその適合性を改善することを狙って、該象牙質部分修復用光硬化性ペーストとして、コントラスト比が極度に小さい高透明なものを用いても、II級窩洞における、深い窩洞や隣接面を含む症例が対象の場合には、深さや背景色を反映しすぎて補綴物が全体的に暗く見えるようになる。
これに対して、上記象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)のように、硬化体のコントラスト比が0.47〜0.52の範囲にあるものを用いれば、天然歯の透明性と比較的近い透明性を有する状況にあって、周囲の色調も適度に取り込むことになり、これらの作用が相乗的に作用しあって、周囲の天然歯に対する色調適合性が著しく向上する。その結果、インレーにおける単純な浅い窩洞の症例から、深い窩洞や、天然歯との隣接面を含む症例にまで、II級窩洞における種々の状況に応じて幅広く周囲の天然歯と調和する補綴物が製造できる。
象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)のコントラスト比が0.4未満の場合、口腔内において補綴物が暗く見えるようになるため好ましくない。このコントラスト比が0.5より大きい場合、口腔内において補綴物が白っぽく浮き出たように見える等、色調適合性が低下するようになり好ましくない。
本発明において、エナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)は、天然歯におけるエナメル質部分の標準的な透明性の範囲に合わせて、コントラスト比が0.32〜0.38である。このように歯牙の表層部を形成する透明性の高いエナメル質部分とほぼ同じ透明性を有しているため、本発明のキットにより製造される補綴物は、同部分における色調適合性も最適である。
エナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)のコントラスト比が0.3未満の場合、透明感が強く暗い仕上がりになるため好ましくない。このコントラスト比が0.38よりも大きい場合は、修復物の内部と表層で透明感に差異が少なく、質感が単調になるため好ましくない。
本発明において、上記各々の光硬化性ペースト(A)(B)は、コントラスト比が各特定の範囲にあるものであれば特に制限されず、従来の歯科用光硬化性ペーストから採択して用いればよい。一般的な光硬化性ペーストとしては、充填材、重合性単量体、光重合開始剤からなるコンポジットレジンが使用される。
充填材としては、非晶質シリカ、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、石英、アルミナ、バリウムガラス、コロイダルシリカ等の無機粉体、もしくはそのシランカップリング剤等による表面処理物、有機粉体、有機無機複合粉体が使用され、例えば特開昭58−110414号公報、特開昭58−156524号公報等の記載の方法で製造できる球状複合酸化物が特に好ましい。
好適に使用できる重合性単量体としては、硬化体が透明性樹脂になる公知のものが使用可能であり、一般には、アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有する重合性単量体が挙げられる。具体的には、下記〔I−1〕〜〔I−4〕に示される各モノマーが挙げられる。
〔I−1〕 単官能性ビニルモノマー
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;あるいはアクリル酸、メタクリル酸、p−メタクリロイルオキシ安息香酸、N−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−N−フェニルグリシン、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、及びその無水物、6−メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、10−メタクリロイルオキシデカメチレンジハイドロジェンフォスフェート、2−ヒドロキシエチルハイドロジェンフェニルフォスフォネート等。
〔I−2〕 ニ官能性ビニルモノマー
(i) 芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート、あるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
(ii) 脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト、例えば1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2−4−トリメチルヘキサン;無水アクリル酸、無水メタクリル酸、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、ジ(2−メタクリロイルオキシプロピル)フォスフェート等。
〔I−3〕 三官能性ビニルモノマー
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
〔I−4〕 四官能性ビニルモノマー
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
が挙げられ、このうち2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(以下、bis−GMAと略する)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(以下、bis−MPEPPと略する)、トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、TEGDMAと略する)、1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2−4−トリメチルヘキサン(以下、UDMAと略す。)等の多官能メタクリレートが好ましく、これらが単独もしくは2種類以上のものを混合して用いられる。
光重合開始剤としては、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイド等が使用され、必要に応じて還元剤として三級アミン等が添加される。また、必要に応じて、重合禁止剤や紫外線吸収剤等の既知の添加剤を制限無く添加することができる。
これらの各成分の配合比は、一般には、重合性単量体100重量部に対して、充填材200〜1900重量部、より好ましくは300〜900重量部、光重合開始剤0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲から、後述する硬化体のコントラスト比や、その他、硬化体の機械的強度等の物性の調整を考慮して、採択すれば良い。
こうした光硬化性ペーストにおける硬化体のコントラスト比は、充填材の屈折率、粒径、配合量、重合性単量体の屈折率等を変更することによって調整することができる。例えば、通常、光硬化性ペーストの硬化体のコントラスト比は、充填材の屈折率と重合性単量体を含むマトリックスの硬化体の屈折率の差によって決定し、差を小さくするほど透明に、差を大きくするほど不透明にすることができる。
このとき、硬化前の重合性単量体を含むマトリックスの屈折率と充填材の屈折率との差の絶対値と、硬化後のマトリックスの屈折率と充填材の屈折率との差の絶対値の差は、小さくなるように調節するのが好ましい。これは、重合硬化の前後で透明性の変化が小さくし、築盛しながら最終的な歯冠修復物の色調を確認しやすくするためである。
このように、主成分である充填材や重合性単量体の組成を変更することでコントラスト比を調整する方法においては、その他の物性、例えば、機械的強度や操作性に及ぼす影響が大きくなり、設計が容易でなくなる場合がある。このような場合には、充填材と重合性単量体を含むマトリックスの硬化体の屈折率の差の絶対値が0.1以下、好ましくは0.05以下程度に近似させることで光硬化性ペーストを重合硬化して得られる硬化体のコントラスト比を十分に低く、好ましくはコントラスト比が0.25以下となるような基礎ペーストを調整しておき、これに対して適宜顔料を添加する事によって、コントラスト比のみを用意に調整する事ができる。
具体的には、酸化チタン、亜鉛華、酸化ジルコニウム等の屈折率の高い顔料を添加することによって、容易にコントラスト比を高くすることができる。顔料は少量の添加で大幅に色調が変わってしまうことがしばしばあるため、顔料の添加量を制御するためには、予め適当な希釈材中に分散させたものである顔料マスターを使用するのが効果的である。
なお、本発明のキットを用いて製造した歯科補綴物は適度に周囲の天然歯の色調を拾う特性を有するため、同一の色調で、様々なより広い色調の天然歯の修復に適用することができるが、該歯科補綴物自体も天然歯と近似した色調を有することがより好ましい。好ましい色調の範囲を例示すれば、CIELab表色系における1.0mm硬化体の白背景条件下での測色値が、象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)については、L*が55〜75、a*が−2.0〜3.0、b*が0〜30の範囲にあることが好ましい。また、エナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)については、L*が65〜85、a*が−3.0〜2.0、b*が−5.0〜25の範囲にあることが好ましい。
上記の各光硬化性ペースト(A)(B)は、一般に前記各構成成分を所定量採り、これらを混合して真空脱泡して製造される。このようにして得られた光硬化性ペーストは各々遮光性の容器に充填して保存、流通させればよく、該容器の種類を例示すれば、シリンジ、コンピュール、蓋付壷等が挙げられる。
次に、本発明における歯科補綴物製造用キットで一般的な使用方法について説明する。まず、口腔内の窩洞形態の印象を歯科用印象材等を用いて採取し、これもとに石膏製の支台模型を作製する。これに、必要に応じて石膏硬化材や石膏分離材を塗布し、次いで窩洞内に上記象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)を築盛する。この象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)層は未硬化のまま、さらに、その上にエナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)層を積層し、該(A)層と(B)層を同時に光照射器を用いて硬化させても良いが、通常は、この象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)層のみを完全又は予備的に光硬化させてから、得られた硬化体層の上に、該エナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)層を積層し、これを光硬化させるのが、作業性の面から効率的である。
このようにして、図1に示すような積層構造の歯科補綴物が製造される。即ち、図1は、本発明のキットを用いて得られる代表的な歯科補綴物の断面模式図(アンレーの症例)であり、支台模型1の窩洞内には、象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)の硬化体からなる象牙質部分修復材層2と、その上に積層されるエナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)の硬化体からなるエナメル質部分修復材層3からなる歯科補綴物4が形成されている。
ここで、本発明の歯科補綴物製造用キットにおいて、象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)の適用箇所は、修復するII級窩洞の象牙質相当部分であり、他方、エナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)の適用箇所は、同じく修復するII級窩洞のエナメル質相当部分である。しかしながら、その境界は必ずしも厳密に一致させる必要はなく、多少、それぞれの層が、対応する歯の象牙質部分やエナメル質部分よりも、厚くなりすぎたり薄くなりすぎたりしても許容される。一般には、象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)層の厚みは、補綴物全体の厚みの5〜9割である。


また、歯科補綴物4において、象牙質部分修復材層2とエナメル質部分修復材層3とは大部分は直接積層されるものであるが、部分的に歯の変色が激しかったり、或いは部分的に、より天然歯に近い質感を付与したい箇所がある場合等には、その部分において両層の間に、任意の色調の光硬化性ペーストを追加して使用し、このような着色用の介在層を設けて審美性を高めても良い。この場合において、象牙質部分修復材層2とエナメル質部分修復材層3とが直接積層されている箇所の面積は、境界面全体の50%以上の面積、より好適には70%以上を占めるのが好ましい。上記の使用態様を想定して、本発明の補綴物製造用キットには、上記象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)、及びエナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)の他に、こうした着色用の光硬化性ペーストも、構成品に含ませるのが好適な態様である。
同様に、本発明のキットには、その他に任意のコントラスト比を有する光硬化性ペーストが構成品として含まれていてもよく、更に金属色遮蔽用ペースト、石膏分離材、研磨材等のその他、歯科補綴物の製造に必要な部材を共に構成品として含んでいても良い。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例、および比較例で用いた重合性単量体、光重合開始剤、及び充填材は以下の通りである。
(1)充填材
・F−1:球状シリカ−ジルコニア(平均粒子径;0.4ミクロン)60重量部、微粒子シリカ−チタニア(平均粒子径;0.07ミクロン)40重量部を混合、解砕したものをγ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理を行ったもの。屈折率1.52
・F−2:不定形シリカジルコニア(平均粒径;1.2ミクロン)をγ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理を行ったもの。屈折率1.53
・F−3:微粒子コロイダルシリカ(平均粒径;0.02ミクロン)をγ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理を行ったもの。屈折率1.47
・F−4:有機無機複合充填材、bis−GMA40重量部、TEGDMA60重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部、F−1 300重量部を混合、脱気、熱重合した後に、粉砕、表面処理を行ったもの、平均粒径30ミクロン。屈折率1.52
(2)重合性単量体組成物
・M−1:bis−MPEPP(70)/TEGDMA(15)/UDMA(15)
硬化体の屈折率1.55
・M−2:bis−GMA(60)/TEGDMA(40)
硬化体の屈折率1.55
・M−3:UDMA(80)/TEGDMA(20)
硬化体の屈折率1.51
(3)光重合開始剤
・C−1:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイド
・C−2:カンファーキノン
・C−3:ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル
(4)添加剤
・I−1:ヒドロキノンモノメチルエーテル
なお、本実施例及び比較例において、各項目は以下の方法によって評価した。
(1) 色差
シェードガイドとしてVITAPAN classical(商品名 VITA社製)を用い、A2、A3、B2のタブに隣接面を含む模擬窩洞を作製し、これに対して調整した各光硬化ペーストのうち二種類を使用し、ペースト(A):ペースト(B)=8:2の割合で組み合わせて、各々充填、硬化、研磨を行った。デジタルカメラを用いてシェードガイドの模擬窩洞修復物を撮影し、その画像について互いに隣接するシェードガイド部分と光硬化性ペーストの硬化体の部分の色調を画像解析によって求め、CIELab表色系における色差ΔEab*を算出した。
(2) 色調適合性
右下6番臼歯の頬側隣接面を含むII級窩洞について通法に従って印象を採取した。シェードテイキングを行った結果、シェードガイドVITAPAN classicalにおけるA3相当の色調であった。印象を基に作製した石膏模型の窩洞に対して、調整した各ペーストのうち二種類を使用し、ペースト(A):ペースト(B)=8:2の割合で組み合わせて硬化させ歯科用補綴物を作製した。作製した歯科用補綴物を湿潤下で窩洞に装着し、目視にて歯質との色調の調和について観察を行い、下記三段階評価を行った。A:修復物の色調が天然歯と良く適合している。B:修復物の色調が天然歯と類似しているが適合性は良好でない。C:修復物と天然歯との違いが明確である。
実施例1
予め、C−1を重量比で1%、I−1を重量比で0.05%溶解したマトリックスモノマーM−1 100gとF−1 400gを混合練和し、光硬化性ペーストを作製した。これに、顔料として、酸化チタン、ピグメントイエロー、ピグメントレッド、ピグメントブルー、カーボンブラックを使用し、添加量を調整する事によって表1に示すコントラスト比および色調L*、a*、b*を有するペーストを作製した。コントラスト比および色調L*、a*、b*の測定には、東京電色製色差計TC-1800mkIIを使用した。
これを脱泡し、光硬化性ペースト1、2を作製した。光硬化性ペースト1を象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)、光硬化性ペースト2をエナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)として使用し、前記した方法によって各種評価を行った。結果を表2に示した。
実施例2〜5
表1に示す充填材、重合性単量体組成物、及び重合開始剤をそれぞれ用いて、実施例1と同様な方法で光硬化性ペースト3〜10を作製し、表2に示す組合せにおいて前記した方法によって各種評価を行った。結果を表2に示した。
比較例1〜5
表1に示す充填材、重合性単量体組成物、及び重合開始剤をそれぞれ用いて、実施例1と同様な方法で光硬化性ペースト11および12を作製した。表2に示す組合せにおいて前記した方法によって各種評価を行った。結果を表2に示した。
Figure 0004457061
Figure 0004457061
本発明の歯科補綴物製造用キットを用いて得られる代表的態様の補綴物の断面模式図である。
符号の説明
1:支台模型
2:象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)の硬化体からなる象牙質部分修復材層
3:エナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)の硬化体からなるエナメル質部分修復材層
4:補綴物

Claims (3)

  1. 象牙質部分修復材とその上に積層されたエナメル質部分修復材とからなる積層構造からなる、II級窩洞用の歯科補綴物を製造するためのキットであって、
    (A)上記象牙質部分修復材を形成するための、硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.47〜0.52の範囲にある象牙質部分修復用光硬化性ペースト、と
    (B)上記エナメル質部分修復材を形成するための、硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.32〜0.38の範囲にあるエナメル質部分修復用光硬化性ペースト
    とを、少なくとも含んでなることを特徴とする歯科補綴物製造用キット。
  2. CIELab表色系における1.0mm硬化体の白背景条件下での測色値が、象牙質部分修復用光硬化性ペースト(A)については、L*が55〜75、a*が−2.0〜3.0、b*が0〜30の範囲であり、エナメル質部分修復用光硬化性ペースト(B)については、L*が65〜85、a*が−3.0〜2.0、b*が−5.0〜25の範囲である請求項1記載の歯科補綴物製造用キット。
  3. (a)硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.47〜0.52の範囲にある象牙質部分修復用光硬化性ペースト
    を用いた硬化体層の上に、
    (b)硬化体1.0mm厚のコントラスト比が0.32〜0.38の範囲にあるエナメル質部分修復用光硬化性ペースト
    を用いた硬化体層を形成させることを特徴とするII級窩洞用の歯科補綴物の製造方法。
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