JP4456593B2 - 高周波焼入用軸受鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、被削性に優れた高周波焼入用軸受鋼に係り、特に、冷間加工を施しその後に切削加工や矯正を施すことにより、所望形状の製品をより効率的に製造することができる機械部品用の高周波焼入用軸受鋼に関するものである。
S55C鋼等の高周波焼入用軸受鋼は、車軸、クランク軸、ピストン棒、連接棒、歯車、レール、その他の機械部品用の鋼材として広く使用されている。そうした高周波焼入用軸受鋼は、冷間加工性を向上させるための熱処理と、冷間加工とを繰り返しながら所定寸法に加工され、その後、高周波焼入れをした後に切削加工されて所望の形状に加工される。なお、所望の形状に加工する過程においては、適宜矯正が実施されている。
例えば、直動案内装置に使用される直動レールを製造する場合においては、質量%で、C:0.55%、Si:0.18%、Mn:1.47%、P:0.019%、S:0.027%、Ni:0.06%、Cr:0.16%、O2:0.0005%を含有する炭素鋼の丸材を、720℃の温度で約7時間程度熱処理した後、冷間引き抜き加工を行い、さらに同様の熱処理と冷間引き抜き加工を繰り返し行って、所定寸法からなる高周波焼入用軸受鋼を製造していた。なお、応力除去を目的とした最後の熱処理においては、820〜850℃の温度から630℃まで50℃/hrの冷却速度で冷却し、その後放冷することにより、得られた高周波焼入用軸受鋼に被削性を付与していた。
しかしながら、上述した成分組成からなる高周波焼入用軸受鋼を冷間引き抜き加工する場合および切削加工する場合においては、最終熱処理した後の硬さが93〜96HRBと高く、切削加工の際の加工抵抗が大きくなって被削性にやや劣ることから、さらなる改善が要請されていた。
本発明は、上記課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、被削性に優れるとともに機械部品に対して好適に用いることが可能な高周波焼入用軸受鋼を提供することにある。
本発明に係る高周波焼入用軸受鋼は、質量%で、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2:0.002%以下、Si:0.35%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.3%以下、Cr:0.1〜0.5%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織を有する高周波焼入用軸受鋼であって、ロックウエル硬さが83〜92HRBであり、且つ、直径8mmのストレートドリル(SKH51)を使用し、切削速度29.7m/分、送り0.2mm/rev、穿孔深さ20mmの条件で切削加工したときの穿孔不能となるまでの穴数である被削性穴数が122〜316であることを特徴とする。
すなわち、上記の成分組成からなる高周波焼入用軸受鋼は、冷間加工性に優れた球状セメンタイトと、切削加工の応力集中源となるラメラーパーライトとが混在する金属組織を有するので、切削抵抗が低下し、その結果、被削性が顕著に向上する。また、本発明に係る高周波焼入用軸受鋼は、機械部品に対して好適に用いることが可能なロックウエル硬さである83〜92HRBと、良好な被削性を示す被削性穴数122〜316という2つの特性値を満足するので、例えば直動案内装置に使用される直動レール等のような厳しい機械的特性を要求される機械材料部品に対して用いるのに好適である。
また、本発明に係る高周波焼入用軸受鋼は、質量%で、Al:0.005〜0.040%を、さらに含有することとすることができる。
すなわち、上記の成分組成を含有することによって、本発明に係る高周波焼入用軸受鋼は、レール部材等の機械材料部品に好ましく適用可能な機械的特性を有することとなる。
本発明に係る高周波焼入用軸受鋼は、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織を有するので、その混合組織中のラメラーパーライトが切削加工の際の応力集中源になり、上記成分組成からなる高周波焼入用軸受鋼に優れた被削性を持たせることができる。特に、本発明に係る高周波焼入用軸受鋼は、ロックウエル硬さが83〜92HRBであることと、被削性穴数が122〜316であるという2つの特性を兼備するので、例えば直動案内装置に使用される直動レール等のような厳しい機械的特性を要求される機械材料部品に対して、初めて好適に適用可能となった鋼材である。
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、以下において、「%」は質量%を表している。
(高周波焼入用軸受鋼)
本実施形態に係る高周波焼入用軸受鋼は、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2:0.002%以下を少なくとも含有する高周波焼入用軸受鋼であればいかなるものであってもよく特に限定されないが、Si:0.35%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.3%以下、Cr:0.1〜0.5%およびAl:0.005〜0.040%から選択される1種又は2種以上をさらに含有する高周波焼入用軸受鋼は、硬度、転動疲労寿命、靱性、焼入性等の機械的特性に優れるので、例えば、直動案内装置の直動レール用の高周波焼入用軸受鋼として好ましく使用できる。
本実施形態に係る高周波焼入用軸受鋼は、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織を有している。この混合組織は、図1の温度パターンに示すように、上記組成の高周波焼入用軸受鋼を750〜800℃まで加熱し、その温度で所定時間(処理量や処理炉によって設定され、特に限定されないが、例えば2〜7時間保持される。)保持した後、10〜100℃/hrの冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後放冷することにより形成される。なお、上記の温度パターンにおいて、オーステナイト化温度である750〜800℃までは一気に加熱される。なお、その加熱速度は特に限定されない。また、500〜650℃からの放冷については、通常、空冷により行われ、その際の冷却速度は特に限定されない。
図2は、本実施形態に係る高周波焼入用軸受鋼(C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2:0.002%以下を少なくとも含有する高周波焼入用軸受鋼)を、上述の温度パターンで熱処理して形成されたラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織を示す代表的な図面代用写真である。具体的には、C:0.55%、Mn:1.47%、O2:0.0005%、Si:0.18%、P:0.019%、S:0.027%、Ni:0.06%、Cr:0.16%を含有する高周波焼入用軸受鋼を、760℃で加熱保持したもの(図2(A))、および、780℃で加熱保持したもの(図2(B))であり、いずれにおいてもラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織が現れている。
次に、本実施形態に係る高周波焼入用軸受鋼の成分組成を上述の範囲に限定した理由を説明する。
C(炭素)は、0.5〜0.8%含まれ、高周波焼入用軸受鋼に所定の機械的特性(例えば、硬度:87〜92HRB等。)を付与するとともに、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織が上記の温度パターンで形成されるための必須の成分である。C含有量が0.5%未満の場合は、上記の混合組織が形成されないことがあったり、硬度が低くなったりすることがある。一方、C含有量が0.8%を超えると、上記の混合組織が形成されないことがあったり、被削性や冷間加工性が低下したりすることがある。
Mn(マンガン)は、比較的安価であり、本実施形態においては、0.8〜1.7%の範囲で含まれ、焼入性および被削性を向上させるように作用する。Mn含有量が0.8%未満では、焼入性が低下することがある。一方、Mn含有量が1.7%を超えると、被削性および冷間加工性が低下することがある。
2(酸素)は、0.002%以下とし、疲労寿命の低下を防止する。O2含有量が0.002%を超えると、他の金属元素と酸化物を生じて疲れ寿命が低下することがある。なお、O2は、通常の製鋼法では製鋼条件にもよるが、0.0004%程度は不可避的に含まれる。
Si(ケイ素)は、脱酸剤として添加されるものであり、0.35%以下含まれ、硬さと強度を高めるように作用する。Si含有量が0.35%を超えると、被削性や冷間加工性が低下することがある。なお、Siも、上述のO2の場合と同様に、0.05%程度は不可避的に含まれる。
P(リン)は、鋼材を脆化させるので少ない方が望ましい。なお、Pは、0.01%程度は不可避的に含まれるが、製造コスト等を考えた場合の許容される含有量は0.03%以下である。
S(硫黄)は、0.03%以下含まれ、マンガンと結合してMnSとなり、被削性を向上させるように作用する。S含有量が0.03%を超えると、軟らかくて脆いMnSが増して機械的特性を低下させることがある。なお、Sも同様に、0.005%程度は不可避的に含まれる。
Ni(ニッケル)は、0.3%以下含まれ、強度と靭性を高めるように作用する。Ni含有量が0.3%を超えると、原料費がかさんだり、加工性を低下させたりするという欠点がある。なお、Niも同様に、0.05%程度は不可避的に含まれる。
Cr(クロム)は、0.1〜0.5%含まれ、硬度、耐食性、焼入性および耐熱性を向上させるように作用する。Cr含有量が0.1%未満では、焼入性が低下する。一方、Cr含有量が0.5%を超えると、加工性が低下する。
Al(アルミニウム)は、0.005〜0.040%含まれ、脱酸の安定化や、窒化物による結晶粒微細化に寄与する。この効果は、0.005%以上で得られるが、多すぎると被削性を劣化させるため、0.040%を上限とする。
本実施形態に係る高周波焼入用軸受鋼の残部は、鉄および不可避不純物である。
上述したC、MnおよびO2を少なくとも含有する高周波焼入用軸受鋼は、図1に示す温度パターンの熱処理により、冷間加工性に優れた球状セメンタイト1と、切削加工の応力集中源となるラメラーパーライト2とが混在する金属組織を有するので、切削抵抗が低下し、その結果、被削性が顕著に向上する。
また、上述したC、Mn、O2、Si、P、S、NiおよびCrを含有する高周波焼入用軸受鋼は、図1に示す温度パターンの熱処理により、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織(図2を参照。)となり、被削性に優れるとともに、好ましい機械的特性(87〜92HRBの硬度を有し、さらに矯正し易いという効果等。)を有するレール部材等の機械部品用材料となる。
(高周波焼入用軸受鋼の製造方法)
本実施形態に係る高周波焼入用軸受鋼は、例えば、被削性を向上させるための熱処理方法である第1態様に係る製造方法と、冷間加工性を向上させるための熱処理方法である第2態様に係る製造方法と、冷間加工性を向上させるとともに被削性を向上させるための熱処理方法である第3態様に係る製造方法とを適用して製造することが可能である。
先ず、第1態様に係る高周波焼入用軸受鋼の製造方法は、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2:0.002%以下を少なくとも含有する高周波焼入用軸受鋼、または、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2:0.002%以下を含有し、Si:0.35%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.3%以下、Cr:0.1〜0.5%およびAl:0.005〜0.040%から選択される1種又は2種以上をさらに含有する高周波焼入用軸受鋼を、750〜800℃まで加熱し、その温度で所定時間保持した後、10〜100℃/hrの冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後放冷してなる方法である(図1の温度パターンを参照。)。
この方法により、高周波焼入用軸受鋼に、図2に示すようなラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織が形成されるので、その混合組織中のラメラーパーライトにより高周波焼入用軸受鋼の被削性が向上する。さらに、熱処理の条件を上述の範囲とすることにより、製造された後の軸受鋼の矯正性(矯正しやすい性質のことであり、本願においては、曲がりの矯正し易さや歪みの調整し易さのことである。)を改善することができる。
高周波焼入用軸受鋼の成分組成を上記の範囲内に限定した理由は上述の通りである。また、温度パターンにおいても、上述と同様であり、オーステナイト化温度である750〜800℃までは一気に加熱され、また、500〜650℃からの放冷は、通常、空冷により行われ、その際の冷却速度は特に限定されない。
加熱保持温度を750〜800℃の範囲としたのは、オーステナイト化の際に炭化物の一部を固溶させるためであり、加熱保持温度が750℃未満では、炭化物の固溶不足を招くことがあり、加熱保持温度が800℃を超えると、炭化物の固溶が促進させることがある。
なお、保持時間は、高周波焼入用軸受鋼の処理量や処理炉の規模により任意に設定されるものであり、特に限定されるものではないが、後述の実施例のように例えば2〜7時間の範囲を例示できる。
冷却速度を10〜100℃/hrとしたのは、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトの混合組織を形成させるためであり、冷却速度が10℃/hr未満では、セメンタイトの球状化が顕著に進行し、冷却速度が100℃/hrを超えると、ラメラーパーライトの生成が顕著に促進する。
上記の冷却速度で冷却する温度を500〜650℃としたのは、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトの混合組織を形成させるためであり、その温度が500℃未満では、生産効率が低下することとなり、その温度が650℃を超えると、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトの混合組織の形成が不十分となることがある。
次に、第2態様に係る高周波焼入用軸受鋼の製造方法は、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2:0.002%以下を含有する高周波焼入用軸受鋼を、725〜760℃まで加熱し、当該温度で所定時間保持した後、50℃以下/hrの冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後放冷してなる方法である(図3の温度パターンを参照。)。
この方法により、高周波焼入用軸受鋼に、図4に示すような球状セメンタイトからなる混合組織が形成される。その球状セメンタイトは冷間加工性に優れるので、処理後の高周波焼入用軸受鋼の冷間加工性が向上する。さらに、冷間加工ダイスの寿命を長くするために、前記の範囲内で熱処理条件を変化させて軸受鋼の硬さをコントロールすることができる。
高周波焼入用軸受鋼の成分組成を上記の範囲内に限定した理由は上述の通りである。なお、図4は、本実施形態に係る高周波焼入用軸受鋼(C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2:0.002%以下を少なくとも含有する高周波焼入用軸受鋼)を、第2態様の温度パターンで熱処理して形成された球状セメンタイトからなる混合組織を示す代表的な図面代用写真である。具体的には、C:0.55%、Mn:1.47%、O2:0.0005%、Si:0.18%、P:0.019%、S:0.027%、Ni:0.06%、Cr:0.16%を含有する高周波焼入用軸受鋼を、730℃で加熱保持したもの(図4(A))、および、それを冷間引き抜き加工したもの(図4(B))であり、何れにおいても、球状セメンタイトからなる混合組織が現れている。
この第2態様の製造方法において、加熱保持温度を725〜760℃の範囲としたのは、処理後の高周波焼入用軸受鋼の硬さを低減させるためであり、加熱保持温度が725℃未満では、炭化物の未分解により硬さが上昇してしまうことがあり、加熱保持温度が760℃を超えると、ラメラーパーライトの生成が起こることにより硬さが上昇してしまうことがある。なお、保持時間は、上述の第1態様と同様、高周波焼入用軸受鋼の処理量や処理炉の規模により任意に設定されるものであり、特に限定されるものではないが、後述の実施例のように例えば2〜5時間の範囲を例示できる。
冷却速度を50℃/hr以下としたのは、処理後の高周波焼入用軸受鋼の硬さを低減させるためであり、冷却速度が50℃/hrを超えると、硬さが上昇してしまうことがある。なお、冷却速度の下限は5℃/hrであり、冷却速度が5℃/hr未満では、生産効率の低下となることがある。
上記の冷却速度で冷却する温度を500〜650℃としたのは、硬さを低減させるためであり、その温度が500℃未満では、その効果が飽和し、生産効率の低下を招くこととなり、その温度が650℃を超えると、硬さが上昇することとなる。なお、500〜650℃からの放冷は、通常、空冷により行われ、その際の冷却速度は特に限定されない。
次に、第3態様に係る高周波焼入用軸受鋼の製造方法は、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2:0.002%以下を少なくとも含有する高周波焼入用軸受鋼、または、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2:0.002%以下を含有し、Si:0.35%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.3%以下、Cr:0.1〜0.5%およびAl:0.005〜0.040%から選択される1種又は2種以上をさらに含有する高周波焼入用軸受鋼を、725〜760℃まで加熱し、その温度で所定時間保持した後、50℃以下/hrの冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後放冷する工程Aと、工程A後の高周波焼入用軸受鋼を冷間加工する工程Bと、工程Aおよび工程Bを1回実施しまたは2回以上繰り返して所定の形状に加工した高周波焼入用軸受鋼を750〜800℃まで加熱し、当該温度で所定時間保持した後、10〜100℃/hrの冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後放冷する工程Cとを有する方法である(図1および図3の温度パターンを参照。)。
すなわち、この方法によれば、上記成分組成からなる高周波焼入用軸受鋼を、1回実施しまたは2回以上繰り返し実施する。すなわち、工程A→工程B→工程Cからなる製造方法に供したり、工程A→工程B→工程A→工程B→工程Cからなる製造方法に供したり、工程A→工程B→工程A→工程B→……→工程B→工程Cからなる製造方法に供したりすることにより、その炭素鋼素材を容易且つ効率的に冷間加工して、所望の形状からなる製品を製造する。さらに、上述の第1態様および第2態様と同様に、熱処理の条件を上述の範囲とすることにより、高周波焼入用軸受鋼を生産する際のリードタイムを短縮できるとともに、製造された後の軸受鋼の矯正性を改善できる。
工程Aは、高周波焼入用軸受鋼に優れた冷間加工性を付与する熱処理工程である。この工程Aによれば、熱処理後の高周波焼入用軸受鋼の金属組織を図4に示すような球状セメンタイトとすることができ、且つその硬度が83〜88HRBとなるので、その冷間加工性を向上させることができる。この工程Aにおける加熱保持温度、保持時間、冷却速度および放冷に関しては、上述した第2態様に係る高周波焼入用軸受鋼の製造方法の場合と同じである。この工程Aの上述の各熱処理条件は、後述する工程Bの冷間加工の回数に基づいて変化させても、一定条件のままとしてもよく、例えば、工程Bの冷間加工の回数が増すにしたがって、加熱保持温度を上記温度範囲内でやや低く設定したり、冷却速度を上記範囲内でやや大きくしたりするように変化させることができる。これは、冷間加工の回数が増すに従って、高周波焼入用軸受鋼が鈍されやすくなるためである。
工程Bは、工程Aで熱処理した後の高周波焼入用軸受鋼を冷間加工する工程である。この工程Bでの冷間加工としては、各種の冷間加工を適用でき、例えば、引き抜き加工、押し出し加工、曲げ加工、圧延加工、鍛造加工等を挙げることができる。これらのうち、引き抜き加工または押し出し加工においては、丸鋼材から所定の減面率で冷間加工することができ、その加工ダイスは、円形ダイスであっても異形ダイスであってもよく、特に限定されない。例えば、引き抜き加工においては、円形ダイスまたは異形ダイスを使用して、5〜30%の減面率で加工できる。なお、図4(B)は、工程Aで熱処理された高周波焼入用軸受鋼(図4(A)を参照。)を、減面率15%で冷間引抜加工した際の球状セメンタイト組織を示している。
工程Cは、高周波焼入用軸受鋼に優れた被削性を付与する熱処理工程である。この工程Cによれば、熱処理と冷間加工とを繰り返して所定の形状に加工した後の高周波焼入用軸受鋼の金属組織を、球状セメンタイトおよびラメラーパーライトからなる混合組織とすることができ、且つその硬度を87〜92HRBとすることができるので、その冷間加工性を向上させることができるとともに、機械的特性においても優れたものとすることができる。この工程Cにおける加熱保持温度、保持時間、冷却速度および放冷に関しては、上述した第1態様に係る高周波焼入用軸受鋼の製造方法の場合と同じである。
この工程Cは、工程Aおよび工程Bを1回実施しまたは2回以上繰り返して所定の形状に加工した後の高周波焼入用軸受鋼の熱処理工程に関するものであるので、工程Cに供される高周波焼入用軸受鋼は、切削加工前の所定の形状に冷間加工されたものであり、工程Cに供された後の高周波焼入用軸受鋼は、被削性に優れた金属組織を有し、その後、切削加工されるものである。
以上説明した第1態様〜第3態様に係る高周波焼入用軸受鋼の製造方法を適用して製造された本実施形態に係る高周波焼入用軸受鋼は、冷間加工性および被削性の何れにおいても優れているので、所望の形状からなる製品を効率的に製造することができる。さらに、その硬度を83〜92HRBとすることができるので、機械的特性においても優れ、直動案内装置に使用される直動レール等のように、直進性、加工性等の特性が要求される部材の製造に好ましく適用できる。
こうした高周波焼入用軸受鋼は、所望の寸法ないし形状に加工された後、高周波焼入れされ、例えば直動案内装置に使用される直動レール等のような精密な軸受部材となる。
次に、本発明の実施例および比較例を挙げて、本発明に係る高周波焼入用軸受鋼をさらに具体的に説明する。
質量%で、C:0.55%、Mn:1.47%、O2:0.0005%、Si:0.18%、P:0.019%、S:0.027%、Ni:0.06%、Cr:0.16%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる直径63mmの炭素鋼丸材を供試材とした。
先ず、第1態様の製造方法について表1に示す温度条件で熱処理し、得られた鋼材の切削性を評価した。表1には、得られた鋼材の硬度(HRB)の測定結果を併せて示した。
Figure 0004456593
次に、第2態様の製造方法について表2に示す温度条件で熱処理し、得られた鋼材の硬度(HRB)を測定した。
Figure 0004456593
次に、第3態様の製造方法について、表3に示す工程A−1の温度条件で熱処理を行い、次いで、熱処理後の高周波焼入用軸受鋼を減面率15%でダイス引き抜き加工を行い(工程B−1)、次いで、表3に示す工程A−2の温度条件で熱処理を行い、次いで、熱処理後の高周波焼入用軸受鋼を減面率15%でダイス引き抜き加工を行い(工程B−2)、次いで、表3に示す工程Cの温度条件で熱処理を行い、最後に、熱処理後の高周波焼入用軸受鋼をドリルで切削加工して切削性を評価した。各工程後の高周波焼入用軸受鋼の硬度(HRB)を表3に併せて示した。
Figure 0004456593
表1および表3に示した実施例と比較例とは、冷却速度は同じでも、加熱温度(TA)が異なると、硬さおよび被削性が顕著に異なっていた。これは、本発明の高周波焼入用軸受鋼に被削性を容易にさせるラメラーパーライトの生成が、750〜800℃の加熱温度(TA)に大きく依存するためである。
なお、上述の被削性については、直径8mmのストレートドリル(SKH51)を使用し、切削速度29.7m/分、送り0.2mm/rev、穿孔深さ20mmの条件で切削加工し、穿孔不能となるまでの穴数で評価した。また、硬度測定は、ロックウエル硬度計Bスケールで測定した。
高周波焼入用軸受鋼にラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織を形成するための本実施形態に係る温度パターンである。 図1の温度パターンで熱処理して形成されたラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織を示す図面代用写真である。 高周波焼入用軸受鋼に球状セメンタイト組織を形成するための本実施形態に係る温度パターンである。 図3の温度パターンで熱処理して形成された球状セメンタイト組織を示す図面代用写真である。
符号の説明
1 ラメラーパーライト、2 球状セメンタイト、T1 工程Aでの加熱保持温度、T2 工程Aでの冷却温度、TA 工程Cでの加熱保持温度、TB 工程Cでの冷却温度。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2:0.002%以下、Si:0.35%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.3%以下、Cr:0.1〜0.5%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織を有する高周波焼入用軸受鋼であって、
    ロックウエル硬さが83〜92HRBであり、且つ、直径8mmのストレートドリル(SKH51)を使用し、切削速度29.7m/分、送り0.2mm/rev、穿孔深さ20mmの条件で切削加工したときの穿孔不能となるまでの穴数である被削性穴数が122〜316であることを特徴とする高周波焼入用軸受鋼。
  2. 請求項1に記載の高周波焼入用軸受鋼において、
    質量%で、Al:0.005〜0.040%を、さらに含有することを特徴とする高周波焼入用軸受鋼。
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