以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に関わる送信機の第一の構成例を示す図である。より詳しくは、図1は、2つのデータ列である第一ビット列と第二ビット列を多重して送信するが、送信信号としてはシングルキャリア信号の形式で送信するための送信機の第一の構成例を示す。
第一ビット列は、第一変調部11において第一の変調方法においてデータ変調が施され複数個の第一変調シンボルとして出力される。第一ブロック生成部14では、N/2個の第一変調シンボルが集められて第一ブロックが構成され出力される。
第二ビット列は、第二変調部14において第二の変調方法においてデータ変調が施され、第一変調シンボルと同数の複数の第二変調シンボルとして出力される。ただし、第二変調部14が使用する信号点である第二変調信号点は、第一ブロック内の第一変調シンボルが使用した信号点である第一変調信号点によって変化し、信号点制御部(信号点選択部)13によって制御される。本発明では、信号点制御部13の動作によって、最終的に送信されるシンボル(送信ブロック構成部16により生成されるシンボル)の信号点を調整することでピーク電力を抑えたシングルキャリア信号を生成する。信号点制御部13は、IQ平面上の原点を中心に回転させられた関係にある複数の信号点セットから、各第一変調シンボル毎に当該第一変調シンボルの値に応じた信号点セットを選択し、選択した信号点セットを、当該第一変調シンボルに対応するビットの変調に使用するように第二変調部14に指定する。信号点セット選択部の動作の詳細は後述する。第二ブロック生成部15では、第一ブロック生成部14と同様に、第二変調部14から出力された、N/2個の第二変調シンボルが集められ第二ブロックが構成され出力される。
送信ブロック構成部(送信ブロック生成部)16では、第一ブロックと第二ブロックの加算と減算とを行うことにより、N個のシンボルから構成される送信ブロックを生成し出力する。図2は、送信ブロック構成部16の動作を説明する図である。図2(a)に示すように第一ブロックが、a(1)〜a(N/2)までのN/2個の第一変調シンボルで構成され、また図2(b)に示すように第二ブロックが、b(1)〜b(N/2)までのN/2個の第二変調シンボルで構成されている。この場合には、送信ブロック内の送信シンボルは、図2(c)に示すように、前半部分x(1)〜x(N/2)が第一ブロッと第二ブロックの和、つまり、x(n)=a(n)+b(n)であり、後半部分x(N/2+1)〜x(N)が第一ブロックと第二ブロックの差、つまり、x(N/2+n)=a(n)-b(n)として生成される。このように、第一ブロックが、同じ符号で繰り返され(「a(1)〜a(N/2)」が2つ並べられ)、第二ブロックが、符号が反転して繰り返されている(「b(1)〜b(N/2)」と「-b(1)〜-b(N/2)」とが並べられている)のは、受信機においてフーリエ変換処理後に、第一ブロックが、偶数周波数成分のみを持ち、第二ブロックが奇数周波数成分のみを持つようにするためである。つまり、もし「a(1),a(2) ,a(3)...a(N/2) ,a(1) ,a(2) ,a(3)...a(N2)」のNシンボルのブロック(ブロックAとする)を送信すると、受信機においてフーリエ変換処理後に、このブロックは偶数周波数成分のみを持つ。同様に、もし「b(1) ,b(2) ,b(3)...b(N/2) ,-b(1) ,-b(2) ,-b(3)...-b(N2)」のNシンボルのブロック(ブロックBとする)を送信すると、受信機においてフーリエ変換処理後に、このブロックは奇数周波数成分のみを持つ。したがって、これらブロックAおよびブロックBを加算して得られる、Nシンボルのブロック「a(1)+b(1), a(2)+b(2) ,a(3)+b(3)...a(N/2)+b(N/2) ,a(1) -b(1) ,a(2) -b(2) ,a(3) -b(3)...a(N2) -b(N2)」を送信すると、受信機においてフーリエ変換後に、偶数周波数成分においてブロックAから得られ、奇数周波数成分においてブロックBが得られる。本発明の特徴の1つは、送信ブロック内の送信シンボルx(n)が、QPSKや8PSKといった広く用いられている変調方式における特定の信号点になるように、信号点制御部13を動作させることにある。
次に、GI付加部17において、送信ブロックに対して通信路でのマルチパスによる干渉を低減する目的でガードインターバル(GI)を付加する。図3(a)に示す送信ブロックの場合、図3(b)のように送信ブロックの末尾のKシンボルが、送信ブロックの前にガードインターバルとして付加される。このように送信ブロックを巡回的に繰り返されるように拡張するガードインターバルは、サイクリックプレフィクスとも呼ばれる。
GIが付加された送信ブロックは、D/A変換部18においてデジタル信号からアナログ信号に変換され、RF/IF送信部19において無線信号に変換されアンテナ20より送信される。
図4は、本発明の実施の形態に関わる送信機の第二の構成例を示す図である。図1に示した送信機の第一の構成例は、送信ブロックを時間軸上の信号処理で生成するための構成であったが、図4の送信機の第二の構成例は、送信ブロックを周波数軸上での信号処理で生成するための構成である。
図4において、第一ブロック生成部14および第二ブロック生成部15でそれぞれ第一ブロックおよび第二ブロックが出力されるまでの動作は、図1の第一の構成例と同じであるのでここでは説明は省略する。
位相補正部22では、第二ブロックのn番目(n=1,2,…,N/2)の要素であるb(n)に対して、位相回転exp(j(n-1)φ)を乗積する。ただし、φ=2π/Nである。位相補正部22の入力および出力を図5(a)および図5(b)に示す。第二ブロックに対して、このような位相回転を乗積する理由は、第二ブロックを周波数領域に変換し奇数番目のサブキャリアにマッピングした後で、時間領域に戻す際に生じる位相回転を相殺するためである。
次に、FFT変換部(第一フーリエ変換部、第二フーリエ変換部)21、23では、第一ブロックと、位相補正部22で位相回転が施された第二ブロックそれぞれに対して、サイズN/2のフーリエ変換(Fast Fourier Transform)処理が実施され、それぞれサイズN/2の周波数領域のデータである、第一周波数ブロック(第一周波数データ)と第二周波数ブロック(第二周波数データ)に変換される。サブキャリアマッピング部24では、第一周波数ブロックと第二周波数ブロックの各要素を、図6で示すようなN本の直交するサブキャリアにマッピングする。N本のサブキャリアは、直流成分が偶数となるように、番号付けされている。偶数番号のサブキャリアまたは奇数番号のサブキャリアは、N本のサブキャリアのうち1つおきの各第一サブキャリアであり、奇数番号のサブキャリアまたは偶数番号のサブキャリアは各第一サブキャリアと異なる1つおきの各第二サブキャリアに相当する。
図7は、サブキャリアマッピングにおける、第一周波数ブロックと第二周波数ブロックのサブキャリアへのマッピング方法を示す図である。図7(a)は第一周波数ブロック、図7(b)は第二周波数ブロックを示す。図7(c)に示すように、第一周波数ブロックの要素A(1)〜A(N/2)は、偶数番目のサブキャリアに順番にマッピングされ、第二周波数ブロックの要素のB(1)〜B(N/2)は、奇数番目のサブキャリアに順番にマッピングされる。
IFFT変換部(逆フーリエ変換部)25では、N本のサブキャリアにマッピングされた周波数データを、逆フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform)処理により再度、時間領域のデータに変換する。IFFT変換部25でのIFFTのサイズがNであれば、IFFT変換部25の出力は、図2(c)で示した第一の構成例での送信ブロックと同じになる。実際には、IFFTのサイズは、デジタル部やアナログ部でのフィルタ処理(図示せず)のために、データがマッピングされたサイズNより大きな値を用いるのが一般的であるが、これは本発明の論点ではないので、説明を判りやすくために、特に断りのない限りIFFTのサイズは必要最低限のサイズ(この場合はN)であるとする。 図4のGI付加部17以降の動作は、図1に示した動作と本質的に同等であるので、説明を省略する。
図8は、本発明の実施の形態に関わる送信機の第三の構成例を示す図である。図8において、送信ブロック構成部16までの動作は、図1の送信機の第一の構成例と同じであり、図8の送信ブロック構成部16の出力も図2(c)に示したものと同様の送信ブロックである。第三の構成例では、送信ブロックをFFT変換部(フーリエ変換部)26においてフーリエ変換処理して周波数領域のデータに変換し、周波数領域のデータをサブキャリアマッピング部24でサブキャリアにマッピングし、マッピングデータをIFFT変換部25においてフーリエ逆変換処理することにより再度、時間領域のデータに変換する。
図9は、サブキャリアマッピング部24において、FFT変換部26の出力の周波数データX(1)〜X(N)と、図6で示したサブキャリアとの対応を示す図である。N本のサブキャリアにマッピングされた周波数データを、IFFT変換部25では、逆フーリエ変換処理により再度、時間領域のデータに変換する。以降の動作は、図1、図4で示した第一および第二の構成例と同じであるので、説明を省略する。また、IFFT変換部25の出力は、図2(c)で示した送信ブロックと等価である。
図10は、本発明の実施の形態に関わる送信機の第四の構成例を示す図である。図1、図4、図8で示した第一から第三の送信機の構成例では、一旦、第一ブロックと第二ブロックの2つのブロックを構成した後に、送信ブロックまたはそれに相当するIFFT変換部の出力を生成していた。送信機の第四の構成例では、第一ビット列と第二ビット列から直接送信ブロックを生成する点が異なっている。
図2に示したように、送信ブロックの各要素x(n)は、a(n)とb(n)の加算または減算から構成されている。ここで第一変調部11が用いる変調信号点の集合を“第一変調信号点セット”、第二変調部14が用いる変調信号点の集合を“第二変調信号点セット”と定義する。つまり、{a(n)∈第一変調信号点セット}、{b(n)∈第二変調信号点セット}である。さらに、x(n)の信号点の集合を“送信変調信号点セット”と定義、つまり、{x(n)∈送信変調信号点セット}とすると、送信変調信号点セット=第一変調信号点セット±第二変調信号点セットの関係がある。ただし、本発明では、後述のようにb(n)の第二変調信号点は、a(n)の値に依存して変化することに特徴がある。
図10において、信号点選択部31では、第一ビット列と第二ビット列から、直接、x(n)に対応する信号点を送信変調信号点セットから選択し、変調部32は、選択された信号点に対応するシンボルを出力する。信号点x(n)とx(N/2+n)は、a(n)+b(n)とa(n)-b(n)のように一種のペアの関係であるので、x(n)を決定する際には、自動的にx(N/2+n)も決定されることになる。ブロック生成部33では、変調部32から出力されるN個のシンボルx(1)〜x(N)をあつめて図2(c)で示したような送信ブロックを構成し出力する。変調部32とブロック生成部33との組はたとえば送信ブロック生成部を形成する。
このように信号点選択部31は、第一ビットデータ(たとえばa(n))を第一変調して得られる第一変調シンボルと、第二ビットデータ(たとえばb(n))を第二変調して得られる第二変調シンボルとの間で加算処理および減算処理して得られる信号点を、第一ビットデータと第二ビットデータとの組み合わせに応じて定義した信号点セットを記憶する信号点セット記憶部と、複数の第一ビットデータを含む第一ビット列と、第一ビット列に含まれる第一ビットデータと同数の第二ビットデータを含む第二ビット列とを受信する受信部とを含んでいる。信号点選択部31は、互いに対応する第一ビットデータおよび第二ビットデータの組ごとに、第一ビットデータおよび第二ビットデータの加算および減算のそれぞれに対応する信号点を前記信号点セット記憶部内の信号点セットから選択する。送信ブロック生成部(変調部32およびブロック生成部33)は、信号点選択部31により組ごとに選択された信号点に対応する送信シンボルを生成し、各組から得られた送信シンボルを含む送信ブロックを生成する。
図10におけるGI付加部17以降の動作は、図1と同じであるので説明を省略する。
図11は、本発明の実施の形態に関わる送信機の第五の構成例を示す図である。ブロック生成部33までは、図10で示した第四の構成例と同じである。図10との違いは、送信ブロックをFFT変換部(フーリエ変換部)26によりいったん周波数領域に変換し、周波数領域データをサブキャリアマッピング部24によりサブキャリアにマッピングした後、マッピングデータをIFFT変換部(逆フーリエ変換部)25により再度、時間領域に変換して送信する点である。つまりFFT変換部26以降の動作は、図8で示した第三の構成例と同じである。
図12は、本発明の実施の形態に関わる送信機の第六の構成例を示す図である。図1で示した第一の構成例との違いは、第一ビット列と第一変調部11が、パイロット生成部41に置き換わっただけである。つまり、第一変調部11の出力の変調シンボルa(n)(n=1,2,…,N/2)が、固定のパイロットシンボルになったと見なせば、第六の構成例は、第一の構成例(図1)と等価である。ただし、パイロットシンボルである場合には、後述のように受信機にとってa(n)が復調するまでもなく既知であるという点が異なる。それ以外の点は、図1の第一の構成例と同じであるので、説明を省略する。
図13は、本発明の実施の形態に関わる送信機の第七の構成例を示す図である。図10で示した第四の構成例において、信号点選択部31が、第一ビット列と第二ビット列から、信号点を選択していたのを、パイロット生成部41で生成されたパイロットシンボルと第二ビット列とから、信号点を選択するように変更した点が異なるだけである。
第一ビット列の代わりにパイロットシンボルを伝送する構成については、図4、図8、図11で示した送信機の第二、第三、第五の構成例についても図12あるいは図13と同様にして実現できることは明らかである。
図14は、本発明の実施の形態に関わる送信機の第八の構成例を示す図である。図1で示した第一の構成例と同様に、まず、第一のビット列から、第一変調部11において変調シンボルa(n) (n=1,2,…,N/2) が生成される。第一ブロック生成部12では、a(1)からa(N/2)までを2回繰り返したN個のシンボルからなる第一ブロックを出力する。図15(a)は、第一ブロックの構成例を示す図である。a(n)(第一変調シンボル)はたとえばMPSK(Multiple Phase Shift Keying)変調の信号点に相当する。
ビット反転部44には第二のビット列が入力される。ビット列反転部44は、第二ビット列を受けるビット列受信部を含んでいる。a(n)の信号点に応じて、第二のビット列の“0”と“1”を反転させる。ビット反転部44の出力をc(n) (n=1,2,…,N/2)とすると、第二ブロック生成部15では、c(1)からc(N/2)と、それらをビット反転したものとを連結したNビットから構成される第二ブロックを出力する。図15(b)は、第二ブロックの構成例を示す図である。ただし、d(n)は、c(n)をビット反転、つまり、“1”と“0”を入れ替えたものである。c(1)〜c(N/2)のビット列はたとえば第三のビット列に相当する。
次に、位相制御部45では、第二ブロック生成部15の出力である第二ブロックのn番目(n=1,2,…,N)のビットの値に応じて、第一ブロックのn番目のシンボルの値を回転させる。例えば、ビットが“0”の場合には、位相相回転量が0でそのままで、ビットが“1”の場合にはθ [rad]だけ第一ブロックのn番目のシンボルの値を回転させる。すなわちa(n)(第一変調シンボル)に与えられる位相回転は、第一変調シンボルが再びMPSK変調の信号点になるような位相回転である。ブロック生成部33では、位相制御部45の出力のNシンボルを送信ブロックとして出力する。ブロック生成部33と位相制御部45との組はたとえば送信ブロック生成部を形成する。図15(c)は、送信ブロックの構成例を示す図である。ブロック生成部33以降の動作は、図10に示した第四の送信機の構成例と同じであるので説明を省略する。
送信機の第八の構成例によって生成される送信ブロックも、これまでに示した送信機の第一から第七の構成例によって生成される送信ブロックと本質的に同じで、2つの変調信号点の加算と減算で等価的に表すことができる。つまり、x(n)=a1(n)+b1(n)とx(n+N/2)=a1(n)-b1(n)の形式で表現することが可能である。例えば、c(n)=1とすれば、a1(n) = (x(n)+x(n+N/2))/2 = a(n)(1+exp(jθ))/2であり、b1(n) = (x(n)-x(n+N/2))/2 = a(n)(1-exp(jθ)/2)として読みかえれば同じである。
また、図14において、ブロック生成部以降の構成として、フーリエ変換処理を用いた図11で示した送信機の第五の構成例と同じ構成を用いることも可能であることは明らかである。
図16は、本発明の実施の形態に関わる送信機の第九の構成例を示す図である。図16は、図14において、第一変調部11をパイロット生成部41に置き換え、第一変調シンボルが既知のパイロットシンボルに置き換わっただけであるので、第八の構成例と同様の議論が成立することは明白であるので、説明は省略する。第九の構成例では、パイロットシンボルに第二のビット列により単純な位相回転を付与することにより、送信機の第六、第七の構成例と同様にパイロットシンボルにビット列を多重することが可能になり、受信側では後述するようにフーリエ変換により、パイロットシンボルと第二ビット列を簡単に分離することができる。
以下、送信機の第一、第二、第三、および第六の送信機の構成例において、第一変調部11(あるいはパイロット生成部41)、信号点制御部13、第二変調部14によって、どのように送信ブロック内の送信変調信号点が構成されるかを説明する。
図17は、第一変調部11の出力であり第一ブロックの要素でもある第一変調シンボル(あるいはパイロットシンボル)に依存して、どのように信号点制御部13と第二変調部14が動作し、その結果どのような送信変調信号点が出力されるかを説明する図である。
図17(a)は、第一変調シンボルa(n)の一例を示しており、a(n)は複素信号点a(n)=R1×exp(jθ)であるとする。ただし、a(n)は、PSK(Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、 APSK(Amplitude Phase Shift Keying)などの変調方式の一信号点、あるいは、a(n)がパイロットシンボルの場合には、ある固定的な複素信号点である。
図17(b)は、信号点制御部13で制御される前の、第二変調部14が使用する第二変調信号点の一例を示し、BPSK(Binary Phase Shift Keying)の信号点を示している。この例では、b(n)がビットの“1”である場合には、b(n)=R2、ビットの“0”である場合には、b(n)=-R2である。
信号点制御部13では、原点とa(n)を結ぶ直線に対して、BPSKのI軸が垂直になるように、BPSKの2つの第二変調信号点(信号点セット)を、回転させる。より正確には、BPSKの2つの第二変調信号点を結んだ直線が、原点とa(n)を結ぶ直線に対して垂直になるように、BPSKの信号点セットを回転させる。ここでは、a(n)の位相が複素平面のI軸を基準としてθ[rad]であるので、第二変調信号点を、原点を中心としてθ−π/2 [rad]反時計周りに回転させたものを第二変調信号点(図17(c))として第二変調部14に使用させるように制御する。
BPSKの場合には、垂直になる回転量は、θ−π/2[rad]とθ+π/2[rad]との2つがあるが、常に−π/2より大きくπ/2以下であるような回転量を選択するように信号点制御部13は制御しても良い。このような制御を施すことで、信号点の回転後も、b(n)のビットの“1”である信号点が、複素平面上で実部が0以上の領域に常に存在するようにできる。ただし、実部が0で、虚数部が0以下の領域を除く。このような信号点の制御を実施すると、位相回転が施されていてもBPSK単独での復調も可能となる。
図17(d)は、第一変調シンボルa(n)と第二変調シンボルb(n)が、図17(a)と図17(c)であるときに、送信ブロックのn番目の要素であるx(n)=a(n)+b(n)の送信変調信号点を示す図である。同図において、PX1は、b(n)が“1”である場合、PX0は、b(n)が“0”である場合の信号点である。このとき、x(N/2+n)=a(n)-b(n)で表すことができるので、x(n)がPX1であれば、x(N/2+n)がPX0となり、x(n)がPX0である場合には、x(N/2+n)がPX1となる性質がある。さらに、PX0とPX1の振幅は共に
である。
このように、第二変調信号点のI軸あるいはBPSKの2つの信号点を結んだ直線を、原点と第一変調シンボルを結ぶ直線に対して垂直になるようにBPSKの信号点セットを回転させることで、2つの変調シンボルa(n)とb(n)を加算、減算した場合の振幅値Rの最大値を最小にすることができ、その結果送信信号のピーク電力の増加を抑えることができる。さらに、後述のように第一変調シンボルと第二変調シンボルの振幅R1、R2をそれぞれ適切に設定することで、送信変調信号点がPSKなど特定の変調方式の信号点になるように制御することができる。
図18は、第二変調部14でQPSKを用いた場合に、第一変調部11の出力であり第一ブロックの要素でもある第一変調シンボル(あるいはパイロットシンボル)に依存して、どのように信号点制御部13と第二変調部14が動作し、送信変調信号点が生成されるかを説明する図である。
図18(a)は、第一変調シンボルa(n)の一例を示しており、a(n)は複素信号点a(n)=R1×exp(jθ)であるとする。ただし、a(n)は、PSK(Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、 APSK(Amplitude Phase Shift Keying)などの変調の一信号点、あるいは、a(n)がパイロットシンボルの場合には、ある固定的な複素信号点である。
図18(b)は、信号点制御部13で制御される前の、第二変調部14が使用する第二変調信号点の一例を示し、QPSKの信号点を示している。すなわち、b(n)の2つのビットの情報がそれぞれ、“00”、“01”、“10”、“11”の場合の信号点を示している。
図18(c)に示すように、信号点制御部13では、原点とa(n)を結ぶ直線に対して、4つの第二変調信号点の外周(外形)を規定する直線が平行あるいは垂直になるように回転させる。すなわち4つの第二変調信号点(信号点セット)の外形を規定する各隣接する信号点を結んだ直線の少なくともいずれかが原点とa(n)を結ぶ直線に対して垂直になるように回転させる。ここでは、BPSKの場合と同様に、原点とa(n)を結ぶ直線が、b(n)= “01”とb(n)= “00”同士を結ぶ直線に対して垂直になるようにQPSKの信号点をθ−π/2[rad]反時計周りに回転させる。QPSKの場合には、垂直または平行になる回転量は、θ−π/2 [rad]以外にも、θ[rad]、θ−π [rad]、θ+π/2 [rad]の計4つが存在するが、常に−π/4より大きくπ/4以下であるような回転量を選択するように信号点制御部13は制御しても良い。このような制御をすることで、b(n)= “00”が常に複素平面の第一象限(実部と虚部が共に0以上)に配置される。ただし、I軸上の点を除く。このような位相回転を用いると、QPSK単独での復調も可能になる。
図18(d)は、第一変調シンボルa(n)と第二変調シンボルb(n)を加算あるいは減算することで生成される信号点PX0〜PX3を示している。この場合には、PX0とPX1の振幅が同図に示すようにR3となり、PX2とPX3の振幅がR4となる。つまり、送信変調信号点が2つの振幅
の円周上の信号点として生成される。
以下、送信変調信号点の構成方法について、具体例を用いて説明する。
図19は、本発明の実施の形態に関わる送信変調信号点の第一の構成例を示す図である。
図19(a)は、第一変調部11での変調方式であるQPSKの第一変調信号点PA1〜PA4を示す図である。図19(b)は、第二変調部14での変調方式であるBPSKの第二変調信号点を示す図である。第一変調信号点が、PA1またはPA3の場合に、第二変調信号点としてPB10あるいはPB11が使用され、第一変調信号点が、PA2またはPA4の場合に、PB20またはPB21が使用される。図19(c)は、第一変調信号点と第二変調信号点の加算と減算から生成される送信変調信号点PX1〜PX4を示す図である。図19(c)の例では、第一変調信号点と第二変調信号点の振幅(電力)が等しい場合であり、その結果、送信変調信号点は、第一変調信号点と同様にQPSKになる。ただし、振幅は、
倍になっている。図19(c)に示した送信変調信号点は、図10および図11で示した送信機の第四あるいは第五の構成例の信号点選択部31を用いて、第一ビット列と第二ビット列から、直接生成することが可能である。
図20は、送信変調信号点の第一の構成例(図19)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の一例を纏めた図である。同図には、対応する、第一変調信号点と第二変調信号点も併記してある。例えば、第一ビット列の2ビットが“00”で、第二ビット列の1ビットが“0”である場合には、送信変調信号点として、x(n)に対しPX2、x(N/2+n)に対しPX1を選択することになる。図20の例では、第二ビット列のビットが”1”の場合の第二変調信号点の実部が0以上(ただし、実部が0で、虚部が0以下を除く)になるように設定されている。同図のビット列と変調信号点の組み合わせは一例であるので、これ以外の組み合わせでも同様の議論が成立することは明らかである。図21は、送信変調信号点の第一の構成例(図19)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の別の例を纏めた図である。図21の例では、第二ビット列のBPSKの変調点が、第一変調信号点に対して単純に回転したものになるように設定されている。これらの図には、第二変調信号点の図17(b)のBPSKの基準位相に対する位相回転量[rad]が示してある。
図22は、本発明の実施の形態に関わる送信変調信号点の第二の構成例を示す図である。
図22(a)は、第一変調部11での変調方式であるπ/4シフトQPSKの第一変調信号点PA1〜PA4、PA5〜PA8を示す図である。図22(b)は、第二変調部14での変調方式であるBPSKの第二変調信号点を示す図である。図19と同様に、第一変調信号点が、PA1またはPA3の場合に、第二変調信号点としてPB10あるいはPB11が使用され、第一変調信号点が、PA2またはPA4の場合に、PB20またはPB21が使用され、第一変調信号点が、PA5、PA7の場合には、PB30あるいはPB31が使用され、第一変調信号点が、PA6、PA8の場合には、PB40あるいはPB41が使用される。図22(c)は、第一変調信号点と第二変調信号点の加算と減算から生成される送信変調信号点PX1〜PX8を示す図である。図22(c)の例では、第一変調信号点と第二変調信号点の振幅(電力)が等しい場合であり、その結果、送信変調信号点は、第一変調信号点と同様にπ/4シフトQPSKになる。図22で示した第二の構成例は、図19で示した信号点を、奇数番目のシンボルか偶数番目シンボルかに応じて、単純にπ/4シフトしていると見ても良い。
図23は、送信変調信号点の第二の構成例(図22)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の一例を纏めた図である。図23の例では、第二ビット列のビットが”1”の場合の第二変調信号点の実部が0以上(ただし、実部が0で、虚部が0以下を除く)になるように設定されている。図24は、送信変調信号点の第二の構成例(図22)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の別の例を纏めた図である。図24の例では、第二ビット列のBPSKの変調点が、第一変調信号点に対して単純に回転したものになるように設定されている。これらの図には、第二変調信号点の図17(b)のBPSKの基準位相に対する位相回転量[rad]が示してある。
図25は、本発明の実施の形態に関わる送信変調信号点の第三の構成例を示す図である。
図25(a)は、第一変調部11での変調方式である8PSKの第一変調信号点PA1〜PA8を示す図である。図25(b)は、第二変調部14での変調方式であるBPSKの第二変調信号点を示す図である。図22と同様に、第一変調信号点が、PA1またはPA3の場合に、第二変調信号点としてPB10あるいはPB11が使用され、第一変調信号点が、PA2またはPA4の場合に、PB20またはPB21が使用され、第一変調信号点が、PA5、PA7の場合には、PB30あるいはPB31が使用され、第一変調信号点が、PA6、PA8の場合には、PB40あるいはPB41が使用される。図25(c)は、第一変調信号点と第二変調信号点の加算と減算から生成される送信変調信号点PX1〜PX8を示す図である。図22(c)の例では、第一変調信号点と第二変調信号点の振幅(電力)が等しい場合であり、その結果、送信変調信号点は、第一変調信号点と同様に8PSKになる。π/4シフトQPSKは、8PSKの信号点の内、奇数番目のシンボルと偶数番目のシンボルとで異なる信号点のサブセットを使用しているのと等価であるから、図25は本質的に図22と同じである。
図26は、送信変調信号点の第三の構成例(図25)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の一例を纏めた図である。図26の例では、第二ビット列のビットが“1”の場合の第二変調信号点の実部が0以上(ただし、実部が0で、虚部が0以下を除く)になるように設定されている。図27は、送信変調信号点の第三の構成例(図25)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の別の例を纏めた図である。図27の例では、第二ビット列のBPSKの変調点が、第一変調信号点に対して単純に回転したものになるように設定されている。これらの図には、第二変調信号点の図17(b)のBPSKの基準位相に対する位相回転量[rad]が示してある。
図28は、本発明の実施の形態に関わる送信変調信号点の第四の構成例を示す図である。
図28(a)は、第一変調部11での変調方式である8PSKの第一変調信号点PA1〜PA8を示す図であり、図25(a)と同じである。図28(b)は、第二変調部14での変調方式であるBPSKの第二変調信号点を示す図である。ただし、図28(b)と図25(b)との違いは、信号点の振幅が異なる点であり、図28(b)では8PSKとBPSKの振幅の比は、1:tan(0.1875π)=1:0.66818である。図28(c)は、第一変調信号点と第二変調信号点の加算と減算から生成される送信変調信号点PX1〜PX16を示す図である。8PSKとBPSKの振幅を調整した結果、同図に示すように送信変調信号点は、16PSKとなる。
図29は、送信変調信号点の第四の構成例(図28)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の一例を纏めた図である。図29の例では、第二ビット列のビットが“1”の場合の第二変調信号点の実部が0以上(ただし、実部が0で、虚部が0以下を除く)になるように設定されている。図30は、送信変調信号点の第四の構成例(図28)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の別の例を纏めた図である。図30の例では、第二ビット列のBPSKの変調点が、第一変調信号点に対して単純に回転したものになるように設定されている。これらの図には、第二変調信号点の図17(b)のBPSKの基準位相に対する位相回転量[rad]が示してある。
図31は、本発明の実施の形態に関わる送信変調信号点の第五の構成例を示す図である。
図31(a)は、第一変調部11での変調方式であるπ/4シフトBPSKの第一変調信号点PA1〜PA4を示す図である。図31(b)は、第二変調部14での変調方式であるBPSKの第二変調信号点を示す図である。第一変調信号点が、PA1またはPA3の場合に、第二変調信号点としてPB10あるいはPB11が使用され、第一変調信号点が、PA2またはPA4の場合に、PB20またはPB21が使用される。図31(c)は、第一変調信号点と第二変調信号点の加算と減算から生成される送信変調信号点PX1〜PX8を示す図である。図31(c)の例では、第一変調信号点と第二変調信号点の振幅(電力)が等しい場合であり、その結果、送信変調信号点は、π/4シフトQPSKになる。
図32は、送信変調信号点の第五の構成例(図31)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の一例を纏めた図である。図32の例では、第二ビット列のビットが“1”の場合の第二変調信号点の実部が0以上(ただし、実部が0で、虚部が0以下を除く)になるように設定されている。図33は、送信変調信号点の第五の構成例(図31)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の別の例を纏めた図である。図33の例では、第二ビット列のBPSKの変調点が、第一変調信号点に対して単純に回転したものになるように設定されている。これらの図には、第二変調信号点の図17(b)のBPSKの基準位相に対する位相回転量[rad]が示してある。
図34は、本発明の実施の形態に関わる送信変調信号点の第六の構成例を示す図である。
図34(a)は、第一変調部11での変調方式である8PSKあるいはπ/4シフトQPSKの第一変調信号点PA1〜PA8を示す図である。図34(b)は、第二変調部14での変調方式であるQPSKの第二変調信号点を示す図である。第一変調信号点が、PA1、PA3、PA5、PA7の場合に、第二変調信号点としてPB11、PB12、PA13、PA14のいずれか使用され、第一変調信号点が、PA2、PA4、PA6、PA8の場合に、PB21、PB22、PB23、PB24のいずれかが使用される。図34(c)は、第一変調信号点と第二変調信号点の加算と減算から生成される送信変調信号点を示す図である。図34(c)の例では、第一変調信号点と第二変調信号点の振幅(電力)が等しい場合であり、その結果、送信変調信号点は、振幅の異なる2つの8PSKで構成される16APSKの信号点PX1〜PX16となる。このとき、第一変調信号点と第二変調信号点の振幅を共にRとすると、16APSKの信号点の振幅は、
となる。
図35は、送信変調信号点の第六の構成例(図34)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の一例を纏めた図である。図35の例では、第二ビット列のビットが“00”の場合の第二変調信号点が第一象限(I軸上の点を除いて、実部と虚部が共に0以上)になるように設定されている。図36は、送信変調信号点の第六の構成例(図34)に関して第一ビット列および第二ビット列と、送信変調信号点との関係の別の例を纏めた図である。図36の例では、第二ビット列のQPSKの変調点が、第一変調信号点に対して単純に回転したものになるように設定されている。これらの図には、第二変調信号点の図18(b)のQPSKの基準位相に対する位相回転量[rad]が示してある。
次に、送信機の第八および第九の構成例(図14および図16)による送信ブロックの生成方法の一例を示す。第一変調部11あるいはパイロット生成部41からの出力のN/2個のシンボルa(n) (n=1,2,…,N/2)が、図22(c)で示したπ/4シフトQPSKの変調信号点である場合を例に説明する。つまり、a(n)は、nが偶数ではPX1からPX4、nが奇数ではPX5からPX8のいずれかの信号点である。ビット反転部44は、第二のビット列のビットの値を、第一変調部11あるいはパイロット生成部41のa(n)の信号点に依存して反転させる。第二のビット列は、ビット反転部44によって場合によっては一部ビットが反転されたN/2ビットのビット列c(n) (n=1,2,…,N/2)にされる。位相制御部45では、0あるいはπ/2[rad]の位相回転を実施するとすれば、送信ブロックのN個のシンボルは、c(n) or d(n)=”0”では、x(n)=a(n)、x(N/2+n)=j×a(n)、c(n) or d(n)=”1”ではx(n)=j×a(n)、x(N/2+n)=a(n)となり、a(n)に対して単純な操作で送信ブロックを構成することが可能であることが判る。ここで、
である。この場合、x(n)は、a(n)に対して0あるいはπ/2[rad]の位相回転のみしか付加されないので、x(n)の信号点もa(n)と同じπ/4シフトQPSKの信号点上であることは明らかである。例えば、a(n)が8PSKの信号点であるなら、x(n)も8PSKの信号点となり、a(n)が16PSKの信号点であるなら、x(n)も16PSKの信号点となることは明らかである。
図37は、図23で示した送信変調信号点の第二の構成例と等価になるようにビット反転部44によるビット反転を設定した場合での、第一変調信号点と、第二ビット列と、送信変調信号点との関係を纏めた図である。ここで、b(n)がビット反転部44への入力ビットであり、c(n)がビット反転部44の出力ビットである。また、d(n)は、c(n)をビット反転させたものである。先に示したように、この方法によって生成される送信ブロックは、図23に示したように2つの変調信号点の加算、減算で表したものと全く等価であるので、このビット反転部44でのビット反転は、第二変調信号点のビットの“1”が複素平面状の実部の0以上の点になるように、第二変調信号点のBPSKの信号点の“0”と“1”を単純に入れ替えることを意味している。
図38は、図24で示した送信変調信号点の第二の構成例と等価になるようにビット反転部44によるビット反転を設定した場合での、第一変調信号点と、第二ビット列と、送信変調信号点との関係を纏めた図である。この場合は、BPSKの変調信号点の単純な回転に相当するので、ビット反転は必要なく図38のb(n)とc(n)は同じである。
以上のような方法で送信機の第八あるいは第九の構成例により生成された送信ブロックが、送信機の第一から第七の構成例で生成する送信ブロックと本質的に等価であることを説明する。上記の例と同様に、送信機の第八あるいは第九の構成例より生成された送信ブロックのn番目のシンボルx(n)が図22(c)のようなπ/4シフトQPSKの信号点であるとする。例えば、c(n)= “0”であり、x(n)=AX1、x(N/2+n)=AX2=j×AX1であったとすると、x(n)とx(N/2+n)は、図22(a)の第一の変調信号点a1(n)と図22(b)で示した第二の変調信号点b1(n)の加算と減算を用いて、x(n)=a1(n)+b1(n)、x(N/2+n)=a1(n)-b1(n)と表現することが可能である。ただし、a1(n)=PA1、b1(n)=PB10である。送信機の第一から第七の構成例で説明したように、x(n)とx(N/2+n)はそれぞれ二つの変調信号点の加算と減算で表現されていることが判り、よって送信機の第一から第九の構成例によって生成される送信ブロックが本質的にはすべて等価であるということが判る。このとき、図14の第一変調部11の出力a(n)と、例えば、図1の第一変調部11の出力a1(n)とは等価であり、その関係としては、a(n)は単にa1(n)に対して固定値
を乗積した関係になっているのは明らかである。同様に、c(n)は、b1(n)に一対一に対応していることが判る。
図23と図37を比較すると、同じ送信変調信号点を生成するための、第一データ列と第二データ列(図37の場合にはb(n))の値が全く同じであることが判る。同様に、図24と図38を比較すると、同じ送信変調信号点を生成するための、第一データ列と第二データ列(図38の場合はb(n))の値も全く同じであることが判る。つまり、送信機では、図37や図38のように第八あるいは第九の構成例に従って送信ブロックを生成したとしても、この送信ブロックは送信信号としては第一から第七の構成例で生成したものと完全に等価であるので、受信機ではあたかも図23や図24に従って送信ブロックが生成されたものとして復調することが可能である。
ここでは、図22で示した第一変調信号点がπ/4シフトQPSKの場合を例にして送信機の第八と第九の構成例について説明したが、図19、図25、図28、図31で示したように、第一変調信号点がQPSK、8PSK、16PSK、BPSKであっても同様の方法で第一変調信号点に対する位相回転により送信ブロックを生成することが可能なことは明らかである。
以下に、送信機の第一から第九の構成例から送信される信号を受信するための受信機の構成について説明する。
図39は、本発明の実施の形態に関わる受信機の第一の構成例を示す図である。受信機の第一の構成例は、送信機の第一から第五、および第八の構成例からの信号を受信するための受信機の構成である。
アンテナ50から受信された無線信号は、RF/IF受信部51を経てベースバンド信号に変換され、A/D変換部52によってアナログ信号からデジタル信号に変換される。GI除去部53では、デジタル信号に対して、送信機のGI付加部17で付加された長さのガードインターバルを除去する。次にFFT変換部(フーリエ変換部)54では、送信された送信ブロックに対してフーリエ変換を実施し、受信した送信ブロックを直交する周波数成分(サブキャリア)に分解する。フーリエ変換が施された受信信号を、ここでは受信周波数データと呼ぶことにする。受信周波数データが含まれるFFT変換部54の出力でのN個の周波数成分(サブキャリア)の例を図40に示す。次に、受信周波数データに対して、等化部55において、通信路の歪みを補正するために、周波数成分毎に複素数を乗算して通信路の補正を実施する。補正方法は、MMSE(Minimum−Mean Square Error)やZF(Zero−Forcing)基準の等化方法がある。また、本発明の焦点ではないので詳細な説明は省くが、送信信号に対して、フィルタ処理が施されている場合には、FFT変換部54での出力ではN個より多くの周波数成分に、送信ブロックの成分が含まれているが、N個より余分な周波数成分はエイリアス成分であるので、等化部55における等化処理の際に、この余分な周波数成分をN個の周波数成分へ合成することが可能である。
次に、サブキャリア分割部(分離部)56において、等化処理が施されたN個の周波数成分からなる受信周波数データは、偶数の周波数成分と奇数の周波数成分とに分割される。受信周波数データを、偶数周波数成分である第一受信周波数ブロック(第一受信周波数データ)と、奇数周波数成分である第二受信周波数ブロック(第二受信周波数データ)へと分割する例を示す図41に示す。図41(a)が受信周波数データとサブキャリアとの対応、図41(b)が第一受信周波数ブロック、図41(c)が第二受信周波数ブロックを示す。偶数または奇数の周波数成分は、たとえば複数の周波数成分のうち1つおきの各第一周波数成分に相当し、奇数または偶数の周波数成分は、たとえば各第一周波数成分と異なる1つおきの各第二周波数成分に相当する。
第一受信周波数ブロックと第二受信周波数ブロックは、それぞれIFFT変換部57、58においてサイズN/2の逆フーリエ変換処理が施され、時間軸の信号へと再度変換される。IFFT変換部57、58の出力を、それぞれ第一受信ブロック(たとえば複数の第一受信シンボルを含む第一シンボル列に相当)、第二受信ブロック(たとえば複数の第二受信シンボルを含む第二シンボル列に相当)と定義する。第一受信ブロック、第二受信ブロックは、それぞれ、送信された第一ブロックと第二ブロックに対応している。
第二受信ブロックは、奇数番目の周波数成分で構成され、IFFT変換部58で位相回転が発生しているので、位相補正部59では、第二受信ブロックに対して、位相回転を補償する処理を施す。位相補正部59の動作例を図42に示す。同図に示すように第二受信ブロックのn番目(n=1,2,…,N/2)の要素である
は、位相回転が施され、
が出力される。ただし、φ=2π/Nである。
第一復調部60では、第一変調部11で変調されたデータの復調を実施する。復調方法は、通常のデータ復調方法そのものでよく、例えば、第一変調部11においてQPSK変調が用いられていれば、通常のQPSK復調を用いればよい。
一方、第二復調部62では、第一復調部60での第一受信ブロックの復調結果、あるいは、第一受信ブロックに含まれる第一受信シンボルそのものの値に依存した信号点補正を伴うデータ復調を実施する。
図43は、信号点補正部(信号点選択部)61と第二復調部62の動作を説明する図である。
図43(a)は、第一受信ブロックのn番目の要素
そのもの、あるいは、第一復調部での判定結果を示し、
の位相が図で示すようにθ(n)であったとする。信号点補正部61では、図43(b)に示す、位相補正部59の出力での第二受信ブロックのn番目の要素
に対して、送信機の信号点制御部13で適用された位相回転を相殺するような制御を実施する。
例えば、送信機において第一変調信号点が
の判定結果の信号点であり、かつ信号点制御部13での第二変調信号点の位相回転量がφである場合には、
に対してexp(-jφ)を乗積したのちに、第二復調部62において通常の、例えば、図17(b)のような信号点を持つBPSK復調を行う(図43(c)参照)。なお第八の構成例の送信機の場合は、常にBPSK復調を行う。このような処理を実施できるのは、図20から図35に示したように変調信号点の対応から、第一変調信号点の判定結果によって、第二変調部14でどのような変調信号点が使用されるか判るからである。
あるいは、第一復調部60における判定結果
でなく、
の判定前の位相θ(n)を用いて、
に対してexp(-jθ(n))を乗積したのちに、第二復調部62において通常の、例えば、図17(b)のような信号点を持つBPSK復調を行うことも可能である。この方法では、第一復調部60の復調結果を用いずに、第二復調部62でのデータ復調をすることができる。
一方、第二復調部62において、第一復調部60とは完全に独立した復調を実施することも可能である。この方法は、例えば、偶数サブキャリアのみ非常に大きな干渉を受けて復調できないような場合にも適用可能な復調方法である。図19(b)、図22(b)、図25(b)、図28(b)、図31(b)および図34(b)に示したように、第二変調信号点として使用される可能性のある信号点数は、元々の第二変調信号点のデータを変調するのに必要な信号点数よりも増えた変調信号点となっている。例えば、図19(b)の場合には、第二変調部14での変調方式は、BPSKであるが、第二変調部14で生成される第二変調信号点は、QPSKのものである。ただし、2つの信号点(例えば、PB10とPB20)は共に同じビット“0”を意味している。つまり、第二復調部62では、BPSKとしてではなくQPSKとして復調し、最もユークリッド距離の近い信号点を選択することで、直接的に第二ビット列を復調することができる。ただし、この場合には、復調の誤り率特性は、BPSKのものではなく、QPSKのシンボル誤り率特性となる。
図44は、本発明の実施の形態に関わる受信機の第二の構成例を示す図である。受信機の第二の構成例は、送信機の第六、第七および第九の構成例からの信号を受信するための受信機の構成である。第一の構成例(図39)との違いは、送信されたのが第一ビット列ではなく、パイロットシンボルになっているために、第一復調部60がなく、その代わりに、送信機におけるパイロット生成部41と同様のパイロットシンボルを生成するパイロット生成部65と、パイロットシンボルを用いてチャネル推定を行うチャネル推定部(通信路推定部)64がある点である。また、等化部63が、第二ビット列に対してのみ必要であるので、サブキャリア分割部56の後ろにある点である。パイロット生成部65はたとえば複数のパイロットシンボルを記憶するパイロット記憶部に相当する。FFT変換部54までの動作は、受信機の第一の構成例と同じであるので説明を省略する。
サブキャリア分割部56では図41の例と同様に、受信周波数データを偶数周波数と奇数周波数の成分にそれぞれ分割する。第一受信周波数ブロックは、既知データであるパイロットシンボルの周波数応答に対して、通信路の周波数応答が乗積されたものである。したがって、チャネル推定部64は、第一受信周波数ブロックと、パイロット生成部65で生成されるパイロットシンボルとから、通信路応答を推定することができる。
等化部63では、チャネル推定部64の結果を利用して通信路の歪みを補正する。
等化処理が施された第二受信周波数ブロックは、図39と同様に、IFFT変換部58において逆フーリエ変換処理が施され、図42で示したのと同様に位相補正部59での位相補正処理が施され、これにより、N/2個の要素からなる第二受信ブロックが位相補正部59から出力される。
信号点補正部(信号点選択部)61と第二復調部62の動作も、基本的に、図39の第一の構成例と同じである。違いは、第一の構成例では、第一復調部60の復調結果を利用していたが、第二の構成例では、既知データであるパイロットシンボルそのものを用いて、信号点の補償を行うことができる点である。
図45は、本発明の実施の形態に関わる受信機の第三の構成例を示す図である。第一の構成例(図39)との本質的な違いは、各ビット列を復調するために位相補正部59を使用する代わりに、サイズがNであるIFFT変換部66、67と、抽出部68、69を用いる点である。等化部55までの処理は第一の構成例と同じであるが、サブキャリア分割部(受信周波数データ生成部)70では、図41(a)で示した受信周波数データに対して、図46(a)および図46(b)で示したようなNサンプルの信号をIFFT変換部66、67への入力とするようにサブキャリアの分割を行う。つまり、偶数周波数成分だけそのままでそれ以外を0にした信号がIFFT変換部66に入力され、奇数周波数成分だけそのままでそれ以外を0にした信号がIFFT変換部67へ入力される。図46(a)の信号に対してサイズNのIFFT変換部(たとえば第一の逆フーリエ変換部に相当)66で逆フーリエ変換を施すと、長さN/2の同じデータ繰り返された信号(図46(c))が出力されるので、抽出部(たとえば第一抽出部に相当)68では、IFFT変換部66の出力の前からN/2の長さを抽出し、それを第一復調部60への入力とする。また、図46(b)の信号に対してサイズNのIFFT変換部(たとえば第二の逆フーリエ変換部に相当)67で逆フーリエ変換を施すと、長さN/2の同じデータが符号反転して繰り返された信号(図46(d))が出力されるので、抽出部(たとえば第二抽出部に相当)69では、IFFT変換部67の出力の前からN/2の長さを抽出し、それを第二復調部62への入力とする。このようにサブキャリア分割部(受信周波数データ生成部)70は、複数の周波数成分のうち1つおきの各第一周波数成分(偶数周波数成分あるいは奇数周波数成分)の値をゼロに設定した第一受信周波数データと、各第一周波数成分と異なる1つおきの各第二周波数成分(奇数周波数成分あるいは偶数周波数成分)をゼロに設定した第二受信周波数データとを生成する。各復調部60、62への入力信号は、第一の構成例(図39)と全く同じになるので、それ以降の動作の説明は省略する。
図47は、本発明の実施の形態に関わる受信機の第四の構成例を示す図である。受信機の第四の構成例は、送信機の第六、第七および第九の構成例からの信号を受信するための受信機の構成である。第三の構成例(図45)との違いは、送信されたのが第一ビット列ではなく、パイロットシンボルになっているために、第一復調部60がなく、その代わりに、送信機におけるパイロット生成部41と同様のパイロットシンボルを生成するパイロット生成部(パイロット記憶部)65と、パイロットシンボルを用いてチャネル推定を行うチャネル推定部(通信路推定部)64がある点である。また、等化部70が、第二ビット列に対してのみ必要であるので、サブキャリア分割部56の後ろにある点である。それ以外については、第二の構成例(図44)と第三の構成例(図45)を組み合わせたものであるので説明は省略する。
これまでの本実施の形態では、第一ビット列によって生成された第一変調シンボルが、フーリエ変換後の周波数領域では偶数周波数成分に含まれ、第二ビット列によって生成される第二変調シンボルが奇数周波数成分に含まれる場合について説明した。しかし、第一ビット列によって生成された第一変調シンボルが奇数周波数成分に含まれ、第二ビット列によって生成される第二変調シンボルが偶数周波数成分に含まれる場合についても同様に本発明が適用できること明らかである。以下に、奇数周波数成分と偶数周波数成分が入れ替わった場合での本実施の形態による送信機と受信機の構成の違いを説明する。
これまで、送信機の第一、第二、第三、第六の構成例において、第一変調シンボルがa(n) (n=1,2,…,N/2)、第二変調シンボルがb(n) (n=1,2,…,N/2)である場合には、送信ブロック内の送信シンボルx(n) (n=1,2,…,N)が、x(n)=a(n)+b(n) (n=1,2,…,N/2)、x(N/2+n)=a(n)-b(n) (n=1,2,…,N/2)であった。これを、x(n) (n=1,2,…,N/2)はそのままで、x(N/2+n)に対して-1を乗積して、x(N/2+n)=-a(n)+b(n)とすれば、第一変調シンボルが奇数周波数成分に含まれ、第二変調シンボルが偶数周波数成分に含まれることになる。これは、図4の送信機の第二の構成例では、サブキャリアマッピング部24において、図7で示した第一周波数ブロックを奇数サブキャリアにマッピングし、第二周波数ブロックを偶数サブキャリアにマッピングし、尚且つ、第二ブロック生成部15の後段の位相補正部を第一ブロック生成部の後段に移動することと等価である。
同様に、送信機の第四、第五、第七の構成例では、図20、図21、図23、図24、図26、図27、図29、図30、図32、図33、図35、図36、図37、図38における送信変調信号点x(N/2+n)が、-1を乗積した信号点に置き換わることを意味する。例えば、図20、図21の場合では、x(N/2+n)の信号点PX1、PX2、PX3、PX4が、それぞれ、PX3、PX4、PX1、PX2に置き換わることになる。
また、送信機の第八、第九の構成例では、図15においてa(1),a(2),…,a(N/2)が逆符号で繰り返されたもの、つまり、a(1),a(2),…,a(N/2),-a(1),-a(2),…,-a(N/2)を第一ブロックとすれば、偶数周波数成分と奇数周波数成分を入れ替えることができる。
次に偶数周波数成分と奇数周波数成分が入れ替わった場合の受信機の構成について説明する。受信機の第一、第二の構成例においては、サブキャリア分割部56において、受信周波数データの奇数周波数成分を第一周波数ブロックとし、偶数周波数成分を第二周波数ブロックとする。つまり、図41において、単純に、第一受信周波数ブロックと第二受信周波数ブロックを入れ替えたことを意味する。更に、位相補正部59(図39参照)は、奇数周波数成分の補正に必要であるので、第二復調部62の前段の位相補正部は必要なくなり、代わりに受信機の第一の構成例においては、第一復調部60の手前に挿入されることになる。本実施の形態における受信機の第五の構成例を図48に示す。これは、図39で示した受信機の第一の構成例に対して上記の変更を加えた受信機の構成例である。
また、受信機の第三、第四の構成例においては、サブキャリア分割部の出力を入れ替えるだけで良い。つまり、図46(a)が、第二ビット列のためのIFFT変換部67への入力となり、図46(b)が第一ビット列のためのIFFT変換部66への入力となる。
以上のような方法を用いることで、第一ビット列によって生成された第一変調シンボルがフーリエ変換後の周波数領域では奇数周波数成分に含まれ、第二ビット列によって生成される第二変調シンボルが奇数周波数成分に含まれる場合にも本発明は適用可能である。
以上のように、本実施の形態により、シングルキャリア信号の変調信号点を維持したまま、2つの異なるデータ列を周波数多重して送信することが可能な送信機が実現できる。また、本実施の形態により、シングルキャリア信号を受信しながら、フーリエ変換によって周波数成分を分離することで、2つの異なるデータ列の復調を可能とする受信機が実現できる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。