JP4454091B2 - スパイラル型膜モジュールおよびスパイラル型膜エレメントの装填方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低圧逆浸透膜分離装置、限外濾過装置、精密濾過装置等の膜分離装置に用いられるスパイラル型膜モジュールおよびスパイラル型膜エレメントの装填方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、浄水技術へ膜分離技術が適用されるとともに、海水淡水化等で用いられる逆浸透膜分離システムの前処理として膜分離技術が適用されつつある。このような膜分離に使用される膜の種類としては、高透過水量が得られる精密濾過膜や限外濾過膜が多く使用されているが、最近、10kgf/cm2 以下の超低圧力で高透過水量が得られる逆浸透膜も開発されてきた。
【0003】
また、膜分離に使用されるスパイラル型膜エレメントの形態としては、単位体積当たりの膜面積(体積効率)の点から中空糸膜エレメントが多く使用されている。しかしながら、中空糸膜エレメントは、膜が折れやすく、膜が折れると、原水が透過水に混ざり、分離性能が低下するという欠点を有している。
【0004】
一方、膜面積を多くとれるスパイラル型膜エレメントの形態としてスパイラル型膜エレメントがある。このスパイラル型膜エレメントは、中空糸膜エレメントと比較すると、分離性能を維持でき、信頼性が高いという利点を有している。
【0005】
図15は従来のスパイラル型膜エレメントの一部切欠き斜視図であり、図16は従来のスパイラル型膜エレメントの外観斜視図である。
【0006】
図15に示すように、スパイラル型膜エレメント21は、透過水スペーサ(透過液流路材)25の両面に分離膜26を重ね合わせて3辺を接着することにより封筒状膜(袋状膜)23を形成し、その封筒状膜23の開口部を有孔中空管からなる集水管22に取り付け、ネット状(網状)の原水スペーサ24(原液流路材)とともに集水管22の外周面にスパイラル状に巻回することにより構成される。
【0007】
原水スペーサ24は、封筒状膜23間に原水が通る流路を形成するために設けられる。原水スペーサ24の厚みが小さいと、分離膜26の充填効率は高くなるが、懸濁物質による詰まりが生じる。そのため、通常、原水スペーサ24の厚みは約0.7mm〜3.0mmに設定される。
【0008】
なお、河川水のように懸濁物質を多く含む原水を処理するためにジグザグ状の波板状原水スペーサ(いわゆるコルゲートスペーサ)を用いたスパイラル型膜エレメントがすでに公知となっている。
【0009】
図16に示すように、スパイラル型膜エレメント21の外周面は、FRP(繊維強化プラスチック)、収縮チューブ等からなる外装材27で被覆され、両端部にはアンチテレスコープと呼ばれるパッキンホルダ28がそれぞれ取り付けられている。
【0010】
図17は従来のスパイラル型膜エレメントの運転方法の一例を示す断面図である。図17に示すように、耐圧容器30は、筒形ケース31および1対の端板32a,32bにより構成される。一方の端板32aには原水入口33が形成され、他方の端板32bには濃縮水出口35が形成されている。また、他方の端板32bの中央部には透過水出口34が設けられている。
【0011】
外周面の一端部近傍にパッキン37が取り付けられたスパイラル型膜エレメント21を筒形ケース31内に装着し、筒形ケース31の両方の開口端をそれぞれ端板32a,32bで封止する。集水管22の一方の開口端は端板32bの透過水出口34に嵌合され、他方の開口端にはエンドキャップ36が装着される。なお、図17では、図16のパッキンホルダ28の図示が省略されている。
【0012】
スパイラル型膜エレメント21の運転時には、原水51を耐圧容器30の原水入口33から第1の液室38内に導入する。図17に示すように、原水51は、スパイラル型膜エレメント21の一方の端面側から供給される。この原水51は原水スペーサ24に沿って軸方向に流れ、スパイラル型膜エレメント21の他方の端面側から濃縮水53として排出される。原水51が原水スペーサ24に沿って流れる過程で分離膜26を透過した透過水52が透過水スペーサ25に沿って集水管22の内部に流れ込み、集水管22の端部から排出される。
【0013】
その透過水52は、図17の耐圧容器30の透過水出口34から外部へ取り出される。また、濃縮水53は、耐圧容器30内の第2の液室39から濃縮水出口35を通して外部へ取り出される。
【0014】
スパイラル型膜エレメントを運転すると、原水中の濁質物質により膜の目詰まりが生じ、膜流束が低下する。そのため、薬品洗浄等を行って目詰まりを取り除き、膜流束を回復させるが、薬品洗浄に要する手間およびコストが問題となる。そこで、目詰まりが生じないように、例えば中空糸膜エレメントでは、透過水または空気による逆流洗浄が定期的に行われる。
【0015】
しかし、従来のスパイラル型膜エレメント21では、逆流洗浄を行うと次のような問題が生じる。
【0016】
図18は従来のスパイラル型膜エレメントにおける逆流洗浄動作を示す一部切欠き斜視図である。図18に示すように、透過水52が集水管22の端部から導入される。集水管22に巻回された封筒状膜23の外周面が外装材27で被覆されているので、集水管22の外周面から導出された透過水52は、封筒状膜23を透過して原水スペーサ24に沿ってスパイラル型膜エレメント21の内部を軸方向に流れ、スパイラル型膜エレメント21の端部から排出される。そのため、逆流洗浄を行っても、膜の目詰まりの原因となっている濁質物質等の汚染物質が、スパイラル型膜エレメント21の端部から排出されるまでに原水スペーサ24に捕捉されやすく、十分に除去されないという問題がある。
【0017】
また、図17の耐圧容器30の筒形ケース31の内周面とスパイラル型膜エレメント21との間に存在する空隙がデッドスペースSとなり、流体の滞溜(液溜まり)が生じる。スパイラル型膜エレメント21を長期間使用すると、デッドスペースに滞溜している流体が変成を起こす。特に、流体が有機物を含有する液体である場合には、微生物等の雑菌が繁殖し、この雑菌が有機物を分解して悪臭を発生したり、分離膜を分解してしまうことがあり、信頼性の低下につながる。
【0018】
さらに、従来のスパイラル型膜エレメント21では、原水がスパイラル型膜エレメント21の一端部から供給され、他端部から排出されるので、集水管22に巻回された封筒状膜23が竹の子状に変形することを防止するために、パッキンホルダ28が必要となる。また、原水スペーサ24による圧力損失および目詰まりによる圧力損失によって原水流入側と濃縮水出口側との間に圧力差が生じ、スパイラル型膜エレメント21に変形が生じる。この変形を防止するために、集水管22に巻回された封筒状膜23の外周面をFRP、収縮チューブ等の外装材27で被覆している。これらにより、部品コストおよび製造コストが高くなる。
【0019】
また、原水中の汚染物質によるケークの形成を防ぐために十分な膜面線速を得ることが必要であり、そのためには十分な濃縮側流量が必要となる。濃縮側流量を大きくすると、スパイラル型膜エレメント当たりの回収率が低くなる上、原水を供給するポンプが大きいものとなり、システムコストも非常に大きくなる。
【0020】
ここで、上記の課題を解決するために、特開平10−165780号には以下のようなスパイラル型膜エレメントが提案されている。
【0021】
このスパイラル型膜エレメントは、独立または連続した前述の封筒状膜が原水スペーサを介して集水管の外周面に巻回されてなるスパイラル状膜要素を有し、スパイラル状膜要素の外周面がネット等の外周部流路材で全体的または部分的に覆われてなる。
【0022】
上記のスパイラル型膜エレメントは、図17に示すような耐圧容器内に装填される。この場合においても、図17において前述したように、少なくとも一方の端板の中央に設けられた透過水出口にスパイラル型膜エレメントの集水管の少なくとも一端部が嵌合される。
【0023】
なお、上記のスパイラル型膜エレメントが複数本耐圧容器内に装填される場合においては、各スパイラル型膜エレメントの集水管同士がコネクタにより連結されており、端部のスパイラル型膜エレメントの集水管の少なくとも一端部が耐圧容器の端板の透過水出口に嵌合される。
【0024】
上記のスパイラル型膜エレメントの運転時には、耐圧容器の原水入口を通じてスパイラル型膜エレメントの少なくとも外周部側から原水を供給し、集水管の少なくとも一方の開口端から透過水を取り出す。この場合、原水中の汚染物質がスパイラル型膜エレメントの少なくとも外周部で捕捉される。
【0025】
また、上記のスパイラル型膜エレメントの洗浄時には、集水管の少なくとも一方の開口端から洗浄水を導入し、集水管の外周面から導出される洗浄水をスパイラル型膜エレメントの少なくとも外周部から排出させる。このような逆流洗浄により、スパイラル型膜エレメントの膜面および少なくとも外周部に捕捉された汚染物質がスパイラル型膜エレメントから剥離し、洗浄水とともに外部へ排出される。このように、上記のスパイラル型膜エレメントにおいては、膜面および少なくとも外周部に捕捉された汚染物質を均一に除去することができ、運転時に常に一定した透過液量を維持することが可能となる。
【0026】
また、この場合、スパイラル型膜エレメントと耐圧容器との間の空隙部にデッドスペースが形成されないので、スパイラル型膜エレメントと耐圧容器との空隙部において液体の滞溜が生じない。したがって、有機物を含有する液体の分離に使用した場合でも、微生物等の雑菌の繁殖、有機物の分解による悪臭の発生、分離膜の分解等の問題が起こらず、高い信頼性が得られる。
【0027】
さらに、スパイラル型膜エレメントの少なくも外周部側から原水が供給され、スパイラル型膜エレメントに全方向から圧力が加わり、軸方向に変位を起こさせるような圧力が加わらないので、集水管に巻回された封筒状膜が竹の子状に変形することがない。それにより、パッキンホルダが不要になるとともに外装材も不要となる。このため、部品コストおよび製造コストが低減される。また、原水を供給するポンプに大きなものを用いることなく高い回収率が得られるため、システムコストが低減される。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のスパイラル型膜エレメントにおいては、スパイラル型膜エレメントの直径が耐圧容器の内径に比べて小さくかつ耐圧容器内においてスパイラル型膜エレメントを保持するパッキンホルダが設けられていない。このため、耐圧容器とスパイラル型膜エレメントとの間に大きな隙間が生じており、スパイラル型膜エレメントが保持されない。したがって、スパイラル型膜エレメントの集水管を耐圧容器内の中心部に位置決めすることが困難であり、耐圧容器内にスパイラル型膜エレメントを装填する際、耐圧容器の端板に設けられた透過水出口にスパイラル型膜エレメントの集水管の端部を嵌合させるのが困難である。このため、スパイラル型膜エレメントの装填に非常に時間および手間がかかる。
【0029】
また、パッキンホルダを有さない上記のスパイラル型膜エレメントを、例えば直列に3本連結して耐圧容器内に装填した場合、中央のスパイラル型膜エレメントはコネクタによる連結のみにより耐圧容器内に保持される。このため、中央のスパイラル型膜エレメントは耐圧容器内において十分に保持されず、スパイラル型膜エレメントの外周部が耐圧容器の内周面に接触するおそれがある。スパイラル型膜エレメントの外周部が耐圧容器の内周面に接触すると、スパイラル型膜エレメントが流路を塞ぐため、スパイラル型膜エレメントの外周部の全周にわたって耐圧容器の内周面との間に流路が確保されない。したがって、運転時にスパイラル型膜エレメントの外周部側の全方向から均一に原水を供給することが困難になるとともに、洗浄時にスパイラル型膜エレメントから剥離した汚染物質を洗浄水とともに外部に排出する際、汚染物質を確実かつ円滑に外部に排出することが困難となる。
【0030】
本発明の目的は、スパイラル型膜エレメントを耐圧容器に容易に装填することが可能であるとともに、スパイラル型膜エレメントの外周部と耐圧容器の内周面との間に流路を確保でき、低コスト化が可能でかつ洗浄が容易であり信頼性の高いスパイラル型膜モジュールを提供することである。
【0031】
本発明の他の目的は、低コスト化が可能でかつ洗浄が容易であり信頼性の高いスパイラル型膜エレメントを容易に装填することが可能であり、スパイラル型膜エレメントの外周部と耐圧容器の内周面との間に流路を確保することが可能なスパイラル型膜エレメントの装填方法を提供することである。
【0032】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明に係るスパイラル型膜モジュールは、耐圧容器内にスパイラル型膜エレメントが装填されてなるスパイラル型膜モジュールであって、スパイラル型膜エレメントは、有孔中空管の外周面に独立または連続した複数の封筒状膜が原液流路材を介して巻回されてなるスパイラル状膜要素を有し、スパイラル状膜要素の外周部が全体的または部分的に外周部流路材で覆われ、スパイラル状膜要素の少なくとも外周部側から原液が供給されて有孔中空管の少なくとも一方の開口端から透過液が取り出されるように原液流路材が設けられ、スパイラル型膜エレメントの少なくとも一端面に、空隙を有する保持板が取り付けられ、耐圧容器の内周面とスパイラル型膜エレメントの外周面との間に流路が形成されるとともに、保持板の一部分が耐圧容器の内周面に当接し、かつ耐圧容器の内周面と保持板の他の部分との間に流路に連通する空隙が形成されたものである。
【0033】
本発明に係るスパイラル型膜モジュールにおいては、スパイラル型膜エレメントの少なくとも一端面に耐圧容器の内周面に当接する保持板が取り付けられているので、スパイラル型膜エレメントを耐圧容器内に装填する際に、簡単な構造によりスパイラル型膜エレメントの有孔中空管を耐圧容器内の中心部に容易かつ確実に位置決めすることができる。したがって、耐圧容器内へのスパイラル型膜エレメントの装填時間が短くなり、かつ装填の作業性が向上する。
【0034】
また、保持板が耐圧容器の内周面に当接することにより、スパイラル型膜エレメントの有孔中空管が耐圧容器の中心部に保持されるので、スパイラル型膜エレメントの外周部が耐圧容器の内周面に接触することなくスパイラル型膜エレメントの外周部の全周にわたって耐圧容器の内周面との間に流路が確保される。
【0035】
運転時には、原液が耐圧容器内のスパイラル型膜エレメントの少なくとも外周部側から外周部流路材を通してスパイラル状膜要素内に供給され、原液流路材に沿って流れ、複数の封筒状膜を透過した透過液が有孔中空管内に導かれ、有孔中空管の少なくとも一方の開口端から取り出される。
【0036】
この場合、耐圧容器の端部側から導入された原液が保持板の空隙を通してスパイラル型膜エレメントの一端面に容易に供給されるとともに、保持板と耐圧容器の内周面と間に形成される空隙を通してスパイラル型膜エレメントの外周部に容易に供給される。
また、上記のように、保持板により有孔中空管が耐圧容器内の中心部に保持され、スパイラル型膜エレメントの外周部の全周にわたって耐圧容器の内周面との間に流路が確保されているので、スパイラル型膜エレメントの外周部側の全方向からスパイラル状膜要素内に均一に原液が供給される。このとき、汚染物質がスパイラル型膜エレメントの少なくとも外周部で捕捉される。
【0037】
洗浄時には、有孔中空管の少なくとも一方の開口端から洗浄液が導入されると、有孔中空管の外周面から封筒状膜内に導出される洗浄液が封筒状膜を透過して原液流路材に沿って流れ、スパイラル状膜要素の外周部から外周部流路材を通して排出される。スパイラル状膜要素から排出された洗浄液は外周部流路材に沿って流れる。それにより、スパイラル型膜エレメントの膜面および少なくとも外周部に捕捉された汚染物質がスパイラル型膜エレメントから剥離する。
【0038】
この場合、スパイラル型膜エレメントの一端面から排出された洗浄液が汚染物質とともに保持板の空隙を通して耐圧容器の端部側から容易に排出されるとともに、スパイラル型膜エレメントの外周部から排出された洗浄液が汚染物質ととも保持板と耐圧容器の内周面との間に形成される空隙を通して耐圧容器の端部側から容易に排出される。
また、上記のように、保持板により有孔中空管が耐圧容器内の中心部に保持され、スパイラル型膜エレメントの外周部の全周にわたって耐圧容器の内周面との間に流路が確保されているので、剥離した汚染物質が洗浄液とともにスパイラル型膜エレメントの外周部流路材に沿って流れ、耐圧容器の外部に円滑に排出される。
【0039】
また、スパイラル型膜エレメントの外周部の全周にわたって耐圧容器の内周面との間に流路が確保されているので、スパイラル型膜エレメントの外周部と耐圧容器との間にデッドスペースが形成されない。それにより、スパイラル型膜エレメントの外周部の流路において流体の滞溜が生じない。したがって、有機物を含有する流体の分離に使用した場合でも、微生物等の雑菌の繁殖、有機物の分解による悪臭の発生、分離膜の分解等の問題が起こらず、高い信頼性が得られる。
【0040】
さらに、スパイラル型膜エレメントの外周部側の全方向から均一に原液が供給され、スパイラル型膜エレメントの全方向から均等に圧力が加わり、軸方向に変形を起こさせるような圧力が加わらないので、有孔中空管に巻回された封筒状膜が竹の子状に変形することがない。それにより、パッキンホルダが不要となり、外装材も不要であるので、部品コストおよび製造コストが低減される。また、原液を供給するポンプに大きなものを用いることなく高い回収率が得られる。それにより、システムコストが低減される。
【0041】
また、スパイラル型膜エレメントの外周部側の全方向から均等に圧力が加わるので、原液の供給圧力を高くしてもスパイラル型膜エレメントの変形が生じない。したがって、高い耐圧性が得られる。
【0043】
保持板の厚みは5mm以上80mm以下であることが好ましい。この場合、保持板の変形を防止しつつ耐圧容器の軸方向における寸法の増大を抑制することができる。
【0044】
保持板は多角形状を有してもよい。この場合、保持板の角部が耐圧容器の内周面に当接し、保持板の角部間と耐圧容器の内周面との間に隙間が形成される。したがって、運転時に耐圧容器の端部側から導入された原液が保持板と耐圧容器との間の隙間を通してスパイラル型膜エレメントの外周部に容易に供給されるとともに、洗浄時にスパイラル型膜エレメントの外周部から排出された洗浄液が汚染物質とともに保持板と耐圧容器との間の隙間を通して耐圧容器の端部側から容易に排出される。
【0046】
耐圧容器の内部空間の断面積に対する保持板の空隙率が80%以上であることが好ましい。これにより、保持板自体が原液または洗浄液の流れを妨げることが防止される。
【0047】
スパイラル状膜要素の外周部が液体透過性材料で覆われ、液体透過性材料の外周面側が全体的または部分的に外周部流路材で覆われてもよい。
【0048】
この場合、液体透過性材料および外周部流路材によりスパイラル状膜要素の外周部での封筒状膜間の広がりが防止されるので、スパイラル型膜エレメントの外周部の全周にわたって耐圧容器の内周面との間に原液を供給するための流路および洗浄液とともに汚染物質を排出するための流路が十分に確保される。
【0049】
本発明に係るスパイラル型膜エレメントの装填方法は、耐圧容器内にスパイラル型膜エレメントを装填する方法であって、スパイラル型膜エレメントは、有孔中空管の外周面に独立または連続した複数の封筒状膜が原液流路材を介して巻回されてなるスパイラル状膜要素を有し、スパイラル状膜要素の外周部が全体的または部分的に外周部流路材で覆われ、スパイラル状膜要素の少なくとも外周部側から原液が供給されて有孔中空管の少なくとも一方の開口端から透過液が取り出されるように原液流路材が配置され、スパイラル型膜エレメントの少なくとも一端面に、空隙を有する保持板を取り付け、耐圧容器の内周面とスパイラル型膜エレメントの外周面との間に流路が形成されるとともに、保持板の一部分が耐圧容器の内周面に当接し、かつ耐圧容器の内周面と保持板の他の部分との間に流路に連通する空隙が形成されるように、スパイラル型膜エレメントを耐圧容器内に装填するものである。
【0050】
本発明に係るスパイラル型膜エレメントの装填方法においては、スパイラル型膜エレメントを耐圧容器内に装填する際に、スパイラル型膜エレメントの少なくとも一端部に取り付ける保持板によりスパイラル型膜エレメントの有孔中空管を耐圧容器内の中心部に容易に位置決めすることができる。したがって、耐圧容器内へのスパイラル型膜エレメントの装填時間が短くなり、かつ装填の作業性が向上する。
【0051】
また、保持板が耐圧容器の内周面に当接することにより、スパイラル型膜エレメントの有孔中空管が耐圧容器の中心部に保持されるので、スパイラル型膜エレメントの外周部が耐圧容器の内周面に接触することなくスパイラル型膜エレメントの外周部の全周にわたって耐圧容器の内周面との間に流路が確保される。
【0052】
運転時には、原液が耐圧容器内のスパイラル型膜エレメントの少なくとも外周部側から外周部流路材を通してスパイラル状膜要素内に供給され、原液流路材に沿って流れ、複数の封筒状膜を透過した透過液が有孔中空管内に導かれ、有孔中空管の少なくとも一方の開口端から取り出される。
【0053】
この場合、耐圧容器の端部側から導入された原液が保持板の空隙を通してスパイラル型膜エレメントの一端面に容易に供給されるとともに、保持板と耐圧容器の内周面と間に形成される空隙を通してスパイラル型膜エレメントの外周部に容易に供給される。
また、上記のように、保持板により有孔中空管が耐圧容器内の中心部に保持され、スパイラル型膜エレメントの外周部の全周にわたって耐圧容器の内周面との間に流路が確保されるので、スパイラル型膜エレメントの外周部側の全方向からスパイラル状膜要素内に均一に原液が供給される。このとき、汚染物質がスパイラル型膜エレメントの少なくとも外周部で捕捉される。
【0054】
洗浄時には、有孔中空管の少なくとも一方の開口端から洗浄液が導入されると、有孔中空管の外周面から封筒状膜内に導出される洗浄液が封筒状膜を透過して原液流路材に沿って流れ、スパイラル状膜要素の外周部から外周部流路材を通して排出される。スパイラル状膜要素から排出された洗浄液は外周部流路材に沿って流れる。それにより、スパイラル型膜エレメントの膜面および少なくとも外周部に捕捉された汚染物質がスパイラル型膜エレメントから剥離する。
【0055】
この場合、スパイラル型膜エレメントの一端面から排出された洗浄液が汚染物質とともに保持板の空隙を通して耐圧容器の端部側から容易に排出されるとともに、スパイラル型膜エレメントの外周部から排出された洗浄液が汚染物質ととも保持板と耐圧容器の内周面との間に形成される空隙を通して耐圧容器の端部側から容易に排出される。
また、上記のように、保持板により有孔中空管が耐圧容器内の中心部に保持され、スパイラル型膜エレメントの外周部の全周にわたって耐圧容器の内周面との間に流路が確保されるので、剥離した汚染物質が洗浄液とともにスパイラル型膜エレメントの外周部流路材に沿って流れ、耐圧容器の外部に円滑に排出される。
【0056】
また、スパイラル型膜エレメントの外周部の全周にわたって耐圧容器の内周面との間に流路が確保されるので、スパイラル型膜エレメントの外周部と耐圧容器との間にデッドスペースが形成されない。それにより、スパイラル型膜エレメントの外周部の流路において流体の滞溜が生じない。したがって、有機物を含有する流体の分離に使用した場合でも、微生物等の雑菌の繁殖、有機物の分解による悪臭の発生、分離膜の分解等の問題が起こらず、高い信頼性が得られる。
【0057】
さらに、スパイラル型膜エレメントの外周部側の全方向から均一に原液が供給され、スパイラル型膜エレメントの全方向から均等に圧力が加わり、軸方向に変形を起こさせるような圧力が加わらないので、有孔中空管に巻回された封筒状膜が竹の子状に変形することがない。それにより、パッキンホルダが不要となり、外装材も不要であるので、部品コストおよび製造コストが低減される。また、原液を供給するポンプに大きなものを用いることなく高い回収率が得られる。それにより、システムコストが低減される。
【0058】
また、スパイラル型膜エレメントの外周部側の全方向から均等に圧力が加わるので、原液の供給圧力を高くしてもスパイラル型膜エレメントの変形が生じない。したがって、高い耐圧性が得られる。
【0059】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施例におけるスパイラル型膜モジュールを示す模式的断面図である。
【0060】
図1に示すように、本例におけるスパイラル型膜モジュールは、直列に連結された3本のスパイラル型膜エレメント1が耐圧容器100内に装填されてなる。なお、スパイラル型膜エレメント1の詳細については後述する。
【0061】
耐圧容器100は、筒形ケース111および1対の端板120a,120bにより構成される。筒形ケース111の底部には原水入口130が形成され、上部には原水出口131が形成されている。原水出口131はエアー抜きにも用いられる。また、端板120a,120bの中央部には透過水出口140が設けられている。
【0063】
図2(a)は保持板200の正面図であり、図2(b)は、図2(a)の保持板200のA−A線における断面図である。なお、図1においては、図2(b)の保持板200の断面図を示している。
【0064】
図1および図2(a),(b)に示すように、保持板200の中央に設けられた集水管貫通孔210にスパイラル型膜エレメント1の集水管2を通すことにより、保持板200がスパイラル型膜エレメント1の両端部に取り付けられる。
【0065】
保持板200は四角形状を有し、各々の角部が耐圧容器100(図1)の内周面に当接している。保持板200の角部間と耐圧容器100の内周面との間には隙間が形成されている。このような保持板200が取り付けられたスパイラル型膜エレメント1においては、保持板200により、集水管2が耐圧容器100の中心部に保持される。
【0066】
保持板200は、中央に設けられた集水管貫通孔210の他に、分散配置された複数の孔部220を有する。この場合、孔部220の数、配置および孔径は特に限定されるものではない。
【0067】
このように、保持板200に複数の孔部220が設けられるとともに保持板200の角部間と耐圧容器100の内周面との間に隙間が形成されるため、スパイラル型膜モジュールの運転時には、これらの孔部220および隙間を通して容易に原水が供給される。また、スパイラル型膜モジュールの洗浄時には、これらの空隙部を通して、剥離した汚染物質を含む逆流洗浄排水が容易に排出される。したがって、保持板200が流路の妨げになることはない。
【0068】
ここで、耐圧容器100の内部空間の断面積に対する保持板200の空隙率は80%以上であることが好ましい。耐圧容器100の内部空間の断面積に対する保持板200の空隙率が80%未満の場合、スパイラル型膜モジュールにおいて、保持板200により、運転時における原水の流れおよび洗浄時における逆流洗浄排水の流れが妨げられる。
【0069】
また、保持板200の厚みW1 は5mm以上80mm以下であることが好ましい。保持板200の厚みW1 が5mm未満の場合、耐圧容器100にスパイラル型膜エレメント1を装填する際に、保持板200が変形するおそれがある。一方、保持板200の厚みW1 が80mmより大きい場合、3本のスパイラル型膜エレメント1を装填してなる図1のスパイラル型膜モジュールにおいては、保持板200に要する分だけ耐圧容器100の軸方向における長さを大きくする必要がある。このような長さの大きなスパイラル型膜モジュールは、設置に大きな面積を必要とするため好ましくない。
【0070】
図1に示すように、隣接するスパイラル型膜エレメント1の集水管2の端部は、保持板200を介してインターコネクタ116により直列に連結されている。このように連結された3本のスパイラル型膜エレメント1が筒形ケース111内に収納され、筒形ケース111の両方の開口端がそれぞれ端板120a,120bで封止される。両端部のスパイラル型膜エレメント1の集水管2の一端部は、保持板200およびアダプタ115を介して、それぞれ端板120a,120bの透過水出口140に嵌合される。
【0071】
この場合、各スパイラル型膜エレメント1が保持板200により耐圧容器100内において保持されているため、スパイラル型膜エレメント1の集水管2を耐圧容器100内の中心部に容易に位置決めすることができる。したがって、両端部のスパイラル型膜エレメント1の集水管2の一端部を透過水出口140に容易に嵌合させることが可能であり、耐圧容器100へのスパイラル型膜エレメント1の装填にかかる時間および手間が低減され、装填作業の効率が向上する。
【0072】
また、上記のスパイラル型膜モジュールにおいては、保持板200により、スパイラル型膜エレメント1が耐圧容器100内において保持されているため、各スパイラル型膜エレメント1、特に中央のスパイラル型膜エレメント1の外周部が耐圧容器100の内周面に接触するおそれがない。したがって、スパイラル型膜エレメント1の外周部の全周にわたって耐圧容器100の内周面との間に流路が確保される。
【0073】
図3は本発明の他の実施例におけるスパイラル型膜モジュールを示す模式的断面図である。本例におけるスパイラル型膜モジュールは、以下の点を除いて、図1に示すスパイラル型膜モジュールと同様の構造を有する。
【0074】
図3のスパイラル型膜モジュールにおいては、隣接するスパイラル型膜エレメント1の間に共通の保持板201が設けられている。この場合、保持板201はインターコネクタの機能も兼ね備えている。また、両端部のスパイラル型膜エレメント1においては、透過水出口140側の端部に保持板201が設けられておらず、集水管2の一端部がアダプタ115を介してそれぞれ端板120a,120bの透過水出口140に嵌合されている。
【0075】
図4(a)は保持板201の正面図であり、図4(b)は、図4(a)の保持板201のB−B線における断面図である。なお、図3においては、図4(b)の保持板201の断面図を示している。
【0076】
図3および図4(a),(b)に示すように、保持板201の中央に設けられた集水管貫通孔211に、隣接するスパイラル型膜エレメント1の各々の集水管2の一端部を嵌合させる。この場合、保持板201の集水管貫通孔211周辺にはOリング溝が設けられており、このOリング溝にOリング212が取り付けられている。このような保持板201により、隣接するスパイラル型膜エレメント1の各々の集水管2が連結される。このように、本例においては、各スパイラル型膜エレメント1が、図1のインターコネクタ116の代わりに、保持板201により連結される。
【0077】
図4(a)に示すように、保持板201は八角形状を有し、各々の角部は耐圧容器100(図3)の内周面に当接している。保持板201の角部間と耐圧容器100の内周面との間には隙間が形成されている。このような保持板201により、各スパイラル型膜エレメント1の集水管2が耐圧容器100の中心部に保持される。
【0078】
保持板201は、図2の保持板200と同様、中央に設けられた集水管貫通孔211の他に、分散配置された大きさの異なる複数の孔部221a,221bを有する。この場合、孔部221a,221bの数、配置および孔径は、特に限定されるものではない。
【0079】
このように、保持板201に複数の孔部221a,221bが設けられるとともに保持板201の角部間と耐圧容器100の内周面との間に隙間が形成されるため、スパイラル型膜モジュールの運転時には、これらの孔部221a,221bおよび隙間を通して容易に原水が供給される。また、スパイラル型膜モジュールの洗浄時には、これらの孔部221a,221bおよび隙間を通して、剥離した汚染物質を含む逆流洗浄排水が容易に排出される。したがって、保持板201が流路の妨げになることはない。
【0080】
ここで、耐圧容器100の内部空間の断面積に対する保持板201の空隙率は、保持板200の場合と同様、80%以上であることが好ましい。耐圧容器100の内部空間の断面積に対する保持板201の空隙率が80%未満の場合、スパイラル型膜モジュールにおいて、保持板201により、運転時における原水の流れおよび洗浄時における逆流洗浄排水の流れが妨げられる。
【0081】
また、保持板201の厚みW2 は5mm以上80mm以下であることが好ましい。保持板201の厚みW2 が5mm未満の場合、耐圧容器100にスパイラル型膜エレメント1を装填する際に、保持板201が変形するおそれがある。一方、保持板201の厚みW2 が80mmより大きい場合、3本のスパイラル型膜エレメント1を装填してなる図3のスパイラル型膜モジュールにおいては、保持板201に要する分だけ耐圧容器100の軸方向における長さを大きくする必要がある。このような長さの大きなスパイラル型膜モジュールは、設置に大きな面積を必要とするため好ましくない。
【0082】
上記のような保持板201を備えた図3のスパイラル型膜モジュールにおいては、各スパイラル型膜エレメント1が保持板201により耐圧容器100内において保持されているため、スパイラル型膜エレメント1の集水管2を耐圧容器100内の中心部に容易に位置決めすることができる。したがって、両端部のスパイラル型膜エレメント1の集水管2の一端部を透過水出口140に容易に嵌合させることが可能であり、耐圧容器100へのスパイラル型膜エレメント1の装填にかかる時間および手間が低減され、装填作業の効率が向上する。
【0083】
また、上記のスパイラル型膜モジュールにおいては、保持板201によりスパイラル型膜エレメント1が耐圧容器100内において保持されているため、各スパイラル型膜エレメント1、特に中央のスパイラル型膜エレメント1の外周部が耐圧容器100の内周面に接触するおそれがない。したがって、スパイラル型膜エレメント1の外周部の全周にわたって耐圧容器100の内周面との間に流路が確保される。
【0084】
図5は、図1および図3のスパイラル型膜モジュールに用いられるスパイラル型膜エレメントの例を示す一部切欠き斜視図である。また、図6は図5のスパイラル型膜エレメントの封筒状膜の一例を示す横断面図であり、図7は図6のスパイラル型膜エレメントの封筒状膜の他の例を示す横断面図である。
【0085】
図5に示すスパイラル型膜エレメント1は、有孔中空管からなる集水管2の外周面にそれぞれ独立した複数の封筒状膜3または連続した複数の封筒状膜3を巻回することにより構成されるスパイラル状膜要素1aを含む。封筒状膜3の間には、封筒状膜3同士が密着して膜面積が狭くなることを防止するため、および原水の流路を形成するために原水スペーサ(原液流路材)4が挿入されている。
【0086】
また、スパイラル状膜要素1aの外周面は、液体透過性材料である分離膜9で覆われている。この分離膜9としては、精密濾過膜または限外濾過膜が用いられる。
【0087】
精密濾過膜としては、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース等の高分子有機膜を用いることができる。また、限外濾過膜としては、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース、ポリエチレン等の高分子有機膜を用いることができる。
【0088】
分離膜9の外周面側は、ネットからなる外周部流路材5で覆われている。ネットの材質としては、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース等の高分子材料、セラミック等の無機材料、金属、合成ゴムまたは繊維等を用いることができる。
【0089】
精密濾過膜の孔径は、0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。限外濾過膜の孔径は、分画分子量20000以上孔径0.01μm以下であることが好ましい。さらに、外周部流路材5として用いるネットは、4メッシュ以上100メッシュ以下であることが好ましい。
【0090】
分離膜9として用いる精密濾過膜または限外濾過膜の孔径および外周部流路材5として用いるネットの網目の数は原水の水質に応じて選択する。
【0091】
図5に示すスパイラル型膜エレメント1においては、分離膜9として、エチレンビニルアルコール等のポリオレフィンからなる孔径0.4μmの精密濾過膜を用いる。また、分離膜9として、ポリスルホンからなる限外濾過膜を用いてもよい。さらに、外周部流路材5として、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる50メッシュのネットを用いる。
【0092】
なお、スパイラル状膜要素1aの外周面に加えてスパイラル状膜要素1aの端面も分離膜9で覆ってもよい。
【0093】
図6および図7に示すように、封筒状膜3は、透過水スペーサ(透過液流路材)6の両面に2枚の分離膜7を重ね合わせて3辺を接着することにより形成され、その封筒状膜3の開口部が集水管2の外周面に取り付けられている。分離膜7としては、10kgf/cm2 以下で運転される低圧逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜等が用いられる。
【0094】
図6の例では、複数の封筒状膜3がそれぞれ独立した分離膜7により形成される。図7の例では、複数の封筒状膜3が連続した分離膜7を折り畳むことにより形成される。
【0095】
原水スペーサ4の厚みが0.5mmよりも大きいと、原水中の汚染物質をスパイラル型膜エレメント1の少なくとも外周部で捕捉しにくくなる。一方、原水スペーサ4の厚みが0.1mmよりも小さいと、封筒状膜3同士が接触しやすくなり、膜面積が小さくなる。したがって、原水スペーサ4の厚みは0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0096】
図5に示すように、外周部流路材5は、複数の線材61,62が互いに直角に交差するように格子状に形成されている。線材61の厚さは線材62の厚さよりも大きく設定されている。それにより、原水51が線材61間において線材61と平行な方向にほぼ直線状に流れやすくなる。
【0097】
また、図5に示すように、外周部流路材5は線材61が集水管2の軸方向と平行になるように配置されている。したがって、原水がスパイラル状膜要素1aの外周部で軸方向に流れやすくなる。
【0098】
外周部流路材5の厚みtが30mmよりも大きいと、スパイラル型膜エレメント1を収納する耐圧容器に対するスパイラル型膜エレメント1の容積効率が小さくなる。一方、外周部流路材5の厚みtが0.6mmよりも小さいと、透過水の逆流洗浄時にスパイラル型膜エレメント1の少なくとも外周部に付着した汚染物質を系外に排出するための原水の流速が小さくなる。したがって、外周部流路材5の厚みは0.6mm以上30mm以下であることが好ましい。
【0099】
また、外周部流路材5の厚み方向における空隙率は例えば20%以上60%以下と設定する。これにより、逆流洗浄時に汚染物質を軸方向に動かす原水の抵抗を低減しつつ外周部流路材5の十分な強度を確保することができる。また、外周部流路材5の網目の縦および横のピッチは例えば3mm以上30mm以下とする。これにより、スパイラル状膜要素1aの外周面が耐圧容器に接触して原水の流路が狭くなることを防止しつつ封筒状膜3間に原水を十分に供給することができる。
【0100】
なお、外周部の分離膜9の全体を外周部流路材5で覆ってもよく、あるいは一部の領域を外周部流路材5で覆ってもよい。
【0101】
上記のようなスパイラル型膜エレメント1を備えた図1および図3に示すスパイラル型膜モジュールは、以下に示す運転方法により運転される。
【0102】
図1および図3に示すスパイラル型膜モジュールの運転時には、原水出口131を閉じ、耐圧容器100の原水入口130から原水51を耐圧容器100の内部に導入する。図5に示すように、原水51は、各スパイラル型膜エレメント1の外周部流路材5に沿って流れる。各スパイラル型膜エレメント1において、原水51は少なくとも外周部側から分離膜9を透過し、原水スペーサ4に沿って封筒状膜3間に浸入する。分離膜7を透過した透過水が透過水スペーサ6に沿って集水管2の内部に流れ込み、耐圧容器100の両端部の透過水出口140から透過水52が取り出される。このようにして、全量濾過が行われる。この場合、各スパイラル型膜エレメント1において、汚染物質が少なくとも外周部で捕捉されるため、封筒状膜3を構成する分離膜7の負荷が減少する。
【0103】
一定時間濾過を行った後、透過側から透過水52による逆流洗浄を行う。図1および図3に示すように、逆流洗浄には、耐圧容器100の両端部の透過水出口140からスパイラル型膜エレメント1の集水管2内部に透過水52を導入する。
【0104】
図8は各スパイラル型膜エレメント1の逆流洗浄動作を示す一部切欠き斜視図である。図8に示すように、各スパイラル型膜エレメント1において、透過水52は集水管2から封筒状膜3を透過し、膜面の汚染物質を膜面から剥離させ原水スペーサ4に沿って少なくとも外周部に向かって流れる。また、この透過水52により各スパイラル型膜エレメント1の少なくとも外周部に捕捉された汚染物質が容易に剥離する。
【0105】
その後、原水出口131を開くとともに原水入口130から原水51を供給してフラッシングを行い、剥離した汚染物質を原水とともに原水出口131からスパイラル型膜モジュールの外部に排出する。なお、この場合、逆流洗浄の前に原水によるフラッシングを行ってもよく、あるいは、逆流洗浄と並行して原水によるフラッシングを行ってもよい。
【0106】
前述のように、上記のスパイラル型膜モジュールにおいては、保持板200,201により、各スパイラル型膜エレメント1の外周部の全周にわたって耐圧容器100の内周面との間に流路が確保されている。この場合、保持板200,201に複数の孔部220,221a,221bが設けられるとともに、保持板200,201の角部間と耐圧容器100の内周面との間に隙間が形成されているため、保持板200,201が流路の妨げになることはない。
【0107】
このことから、スパイラル型膜モジュールの運転時においては、スパイラル型膜エレメント1の外周部側の全方向からスパイラル状膜要素1a内に均一に原水51が供給される。
【0108】
また、スパイラル型膜モジュールの洗浄時においては、逆流洗浄により各スパイラル型膜エレメント1の膜面、原水スペーサ4、外周部等から剥離した汚染物質を含む逆流洗浄排水をスパイラル型膜エレメント1の外周部流路材5に沿って耐圧容器100の外部に容易にかつ確実に排出することができる。それにより、安定した透過水量を維持することが可能となる。
【0109】
また、上記のスパイラル型膜モジュールにおいては、スパイラル型膜エレメント1の外周部の全周にわたって耐圧容器100の内周面との間に流路が確保された状態で前述のような全量濾過が行われるため、各スパイラル型膜エレメント1と耐圧容器100との間の空隙部にデッドスペースが形成されない。このため、微生物等の雑菌の繁殖、有機物の分解による悪臭の発生、分離膜の分解等の問題が発生せず、高い信頼性が得られる。
【0110】
また、各スパイラル型膜エレメント1の外周部の全方向から均一に原水51が供給されるので、スパイラル型膜エレメント1の全方向から均等に圧力が加わる。このため、スパイラル型膜エレメント1の変形の問題が生じず、パッキンホルダおよび外装材が不要となる。それにより、部品コストおよび製造コストが低減される。
【0111】
また、全量濾過が行われるので、原水51を供給するポンプに大きな物を用いる必要がない。それにより、システムコストが低減される。
【0112】
さらに、スパイラル型膜エレメント1の外周部側の全方向から均等に圧力が加わるので、原水51の供給圧力を高くしてもスパイラル型膜エレメント1の変形が生じない。したがって、高い耐圧性が得られる。
【0113】
なお、上記のスパイラル型膜モジュールの運転時において、原水出口131から一部原水を取り出し、各スパイラル型膜エレメント1の外周部において軸方向に原水の流れを形成してもよい。この場合、原水中の汚染物質の沈降を抑制しつつ汚染物質の一部を耐圧容器100の外部に排出することができるため、さらに安定した透過水量を維持することが可能となる。
【0114】
また、上記においては、複数の孔部220,221a,221bを有する四角形状および八角形状を有する保持板200,201を用いた場合について説明したが、耐圧容器100の内周面に当接しかつ耐圧容器100の内部空間の断面積に対する空隙率が80%以上であれば、これ以外の多角形状または円形状を有する保持板を用いてもよい。
【0115】
さらに、上記においては、スパイラル型膜モジュールが図5のスパイラル型膜エレメント1を備えているが、これ以外の構造を有するスパイラル型膜エレメントを備えてもよい。この場合について、以下に説明する。
【0116】
図9はスパイラル型膜エレメントの他の例を示す正面図である。図9では、外周部流路材の図示が省略されている。
【0117】
図9(a)のスパイラル型膜エレメント1においては、スパイラル状膜要素1aの両端部が樹脂層40で封止されている。図9(b)のスパイラル型膜エレメント1においては、スパイラル状膜要素1aの一端部が樹脂層40で封止されている。
【0118】
図9(a),(b)のスパイラル型膜エレメント1では、製造時の作業工程が増加するが、スパイラル型膜エレメント1の両端部または一端部に原水を供給するスペースが不要となる。したがって、耐圧容器を小型化することができ、耐圧容器内にスパイラル型膜エレメント1を収納してなるスパイラル型膜モジュールを小型化することができる。
【0119】
また、スパイラル型膜エレメント1の樹脂層40で封止された端部を耐圧容器の原水入口側に配置することにより、原水導入時に原水の動圧によりスパイラル型膜エレメント1の端面に汚れが付着することを防止することができる。
【0120】
図10はスパイラル型膜エレメントのさらに他の例を示す一部切欠き斜視図である。また、図11は図10のスパイラル型膜エレメントの封筒状膜の一例を示す横断面図であり、図12は図10のスパイラル型膜エレメントの封筒状膜の他の例を示す横断面図である。さらに、図13は図10のスパイラル型膜エレメントの一部切欠き正面図である。
【0121】
図10に示すスパイラル型膜エレメント1は、有孔中空管からなる集水管2の外周面にそれぞれ独立した複数の封筒状膜3または連続した複数の封筒状膜3を巻回することにより構成されるスパイラル状膜要素1aを含む。封筒状膜3の間には、封筒状膜3同士が密着して膜面積が狭くなることを防止するため、および原水の流路を形成するために原水スペーサ(原液流路材)4が挿入されている。
【0122】
図11および図12に示すように、封筒状膜3は、透過水スペーサ(透過液流路材)6の両面に2枚の分離膜7を重ね合わせて3辺を接着することにより形成され、その封筒状膜3の開口部が集水管2の外周面に取り付けられている。分離膜7としては、10kgf/cm2 以下で運転される低圧逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜等が用いられる。
【0123】
図11の例では、複数の封筒状膜3がそれぞれ独立した分離膜7により形成される。図11の例では、複数の封筒状膜3が連続した分離膜7を折り畳むことにより形成される。
【0124】
また、スパイラル状膜要素1aの外周面は液体透過性材料であるネット8で覆われている。このネット8の材質としては、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の合成樹脂、またはステンレス、鉄等の金属を用いることができる。
【0125】
ネット8は、3メッシュ以上200メッシュ以下であることが好ましい。それにより、逆流洗浄時の逆圧によるスパイラル状膜要素1aの膨らみを確実に抑えることができるとともに、運転時に外周部側からスパイラル状膜要素1a内に原水を十分に供給することができる。
【0126】
図10に示すスパイラル型分離膜エレメント1においては、ネット8の材質として、トリコット布にエポキシ樹脂を含浸させたものを使用する。このネット8は、50メッシュであり、縦糸および横糸のピッチは0.5mm、縦糸および横糸の径は0.15mmである。
【0127】
なお、スパイラル状膜要素1aの外周面に加えてスパイラル状膜要素1aの端面もネット8で覆ってもよい。
【0128】
図13に示すように、スパイラル状膜要素1aの外周面を覆うネット8の3箇所に等間隔で円周方向に沿って樹脂81が塗布され、それによりネット8がスパイラル状膜要素1aの外周面に3箇所で固定されている。樹脂81の塗布箇所の数は、逆流洗浄時に生じる逆圧に依存するため特に限定しないが、樹脂81の塗布箇所が3箇所よりも多くなると、逆流洗浄時にスパイラル状膜要素1aの外周部の汚染物質が除去されにくくなる。したがって、例えば長さ944cmのスパイラル状膜要素1aでは、3箇所程度を樹脂81で固定することが好ましい。
【0129】
ネット8の外周面側は、外周部流路材5で覆われている。外周部流路材5の材質および寸法は、図1に示した外周部流路材5の材質および寸法と同様である。
【0130】
なお、外周部のネット8の全体を外周部流路材5で覆ってもよく、あるいは一部の領域を外周部流路材5で覆ってもよい。
【0131】
さらに、図14に示すような透過水スペーサ6の一部をネットとして用いたスパイラル型膜エレメント1を用いてもよい。このようなスパイラル型膜エレメント1においては、1つの封筒状膜3内に挿入された透過水スペーサ6が封筒状膜3の外周部側の側部から外部へ突出するように延長され、透過水スペーサ6の延長された部分がネット8としてスパイラル状膜要素1aの外周面に巻回されている。封筒状膜3の外周部側の側部から外部へ突出する透過水スペーサ6と封筒状膜3との間は樹脂6aでシールされている。
【0132】
この場合、ネット8を別個に設けることによる追加の部品コストを抑えつつ逆流洗浄時の逆圧によるスパイラル状膜要素1aの膨らみを延長された透過水スペーサ6により防止することができる。
【0133】
図1または図3のスパイラル型膜モジュールに、図5のスパイラル型膜エレメント1の代わりに図9〜図14のスパイラル型膜エレメント1を装填する場合においても、図2または図4の保持板200,201を用いることにより、図1または図3の実施例と同様の効果が得られる。
【0134】
なお、図5〜図14においては、スパイラル状膜要素1aを分離膜等の液体透過性材料で被覆しさらにネット等の外周部流路材で被覆してなる2重構造のスパイラル型膜エレメント1について説明したが、本発明に係るスパイラル型膜モジュールに用いるスパイラル型膜エレメントは、スパイラル状膜要素1aを直接、外周部流路材で被覆してなる1重構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるスパイラル型膜モジュールを示す模式的断面図である。
【図2】図1のスパイラル型膜モジュールの保持板を示す図である。
【図3】本発明の他の実施例におけるスパイラル型膜モジュールを示す模式的断面図である。
【図4】図3のスパイラル型膜モジュールの保持板を示す図である。
【図5】図1および図3のスパイラル型膜モジュールにおけるスパイラル型膜エレメントの一部切欠き斜視図である。
【図6】図5のスパイラル型膜エレメントの封筒状膜の一例を示す横断面図である。
【図7】図5のスパイラル型膜エレメントの封筒状膜の他の例を示す横断面図である。
【図8】図5のスパイラル型膜エレメントにおける逆流洗浄動作を示す一部切欠き斜視図である。
【図9】図1または図3のスパイラル型膜モジュールにおけるスパイラル型膜エレメントの他の例を示す正面図である。
【図10】図1または図3のスパイラル型膜モジュールにおけるスパイラル型膜エレメントのさらに他の例を示す一部切欠き斜視図である。
【図11】図10のスパイラル型膜エレメントの封筒状膜の一例を示す横断面図である。
【図12】図10のスパイラル型膜エレメントの封筒状膜の他の例を示す横断面図である。
【図13】図10のスパイラル型膜エレメントの一部切欠き正面図である。
【図14】透過水スペーサをネットとして用いた例を示す横断面図である。
【図15】従来のスパイラル型膜エレメントの一部切欠き斜視図である。
【図16】従来のスパイラル型膜エレメントの外観斜視図である。
【図17】従来のスパイラル型膜エレメントの運転方法の一例を示す断面図である。
【図18】従来のスパイラル型膜エレメントにおける逆流洗浄動作を示す一部切欠き斜視図である。
【符号の説明】
1 スパイラル型膜エレメント
1a スパイラル状膜要素
2 集水管
3 封筒状膜
4 原水スペーサ
5 外周部流路材
6 透過水スペーサ
7 分離膜
8 ネット
9 分離膜
10,100 耐圧容器
13,130 原水入口
14,140 透過水出口
51 原水
52 透過水
61,62 線材
81 樹脂
200,201 保持板
210,211 集水管貫通孔
220,221a,221b 孔部
Claims (6)
- 耐圧容器内にスパイラル型膜エレメントが装填されてなるスパイラル型膜モジュールであって、前記スパイラル型膜エレメントは、有孔中空管の外周面に独立または連続した複数の封筒状膜が原液流路材を介して巻回されてなるスパイラル状膜要素を有し、前記スパイラル状膜要素の外周部が全体的または部分的に外周部流路材で覆われ、前記スパイラル状膜要素の少なくとも外周部側から原液が供給されて前記有孔中空管の少なくとも一方の開口端から透過液が取り出されるように前記原液流路材が設けられ、前記スパイラル型膜エレメントの少なくとも一端面に、空隙を有する保持板が取り付けられ、前記耐圧容器の内周面と前記スパイラル型膜エレメントの外周面との間に流路が形成されるとともに、前記保持板の一部分が前記耐圧容器の内周面に当接し、かつ前記耐圧容器の内周面と前記保持板の他の部分との間に前記流路に連通する空隙が形成されることを特徴とするスパイラル型膜モジュール。
- 前記所定の厚みが5mm以上80mm以下であることを特徴とする請求項1記載のスパイラル型膜モジュール。
- 前記保持板は多角形状を有することを特徴とする請求項2記載のスパイラル型膜モジュール。
- 前記耐圧容器の内部空間の断面積に対する前記保持板の空隙率が80%以上であることを特徴とする請求項2または3記載のスパイラル型膜モジュール。
- 前記スパイラル状膜要素の外周部が液体透過性材料で覆われ、前記液体透過性材料の外周面側が全体的または部分的に前記外周部流路材で覆われたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスパイラル型膜モジュール。
- 耐圧容器内にスパイラル型膜エレメントを装填する方法であって、前記スパイラル型膜エレメントは、有孔中空管の外周面に独立または連続した複数の封筒状膜が原液流路材を介して巻回されてなるスパイラル状膜要素を有し、前記スパイラル状膜要素の外周部が全体的または部分的に外周部流路材で覆われ、前記スパイラル状膜要素の少なくとも外周部側から原液が供給されて前記有孔中空管の少なくとも一方の開口端から透過液が取り出されるように前記原液流路材が配置され、
前記スパイラル型膜エレメントの少なくとも一端面に、空隙を有する保持板を取り付け、
前記耐圧容器の内周面と前記スパイラル型膜エレメントの外周面との間に流路が形成されるとともに、前記保持板の一部分が前記耐圧容器の内周面に当接し、かつ前記耐圧容器の内周面と前記保持板の他の部分との間に前記流路に連通する空隙が形成されるように、前記スパイラル型膜エレメントを前記耐圧容器内に装填することを特徴とするスパイラル型膜エレメントの装填方法。
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