JP4452847B2 - 金属磁性粉の製造法 - Google Patents

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本発明は、高密度磁気記録媒体、ナノスケール・エレクトロニクス、永久磁石材料、生体分子標識剤、薬剤キャリアなどに用いることのできる磁性粉およびその製造法に関する
ものである。本発明の磁性粉は、厳密には後述の一般式によって表される成分組成をもつ粒子からなるが、T=Fe、M=Ptである場合のFePt系合金粒子がその代表例とし
て挙げられるので、本明細書では該材料の粒子を単にFePt粒子、若しくはFePtナ
ノ粒子と呼ぶことがあるが、それらは該材料の粒子の例示である。
高密度磁気記録媒体では、記録密度の上昇のために記録単位のサイズ低下が必要であるが、従来のスパッタ薄膜を用いた媒体では、熱ゆらぎや結晶粒子サイズの微細化やバラツ
キ等の問題から高記録密度化の限界に近づいている。このようなことから、最近、高密度磁気記録媒体として、熱ゆらぎの問題がなく、高い異方性を有し且つ大きな保磁力を示す
FePt系の磁性金属ナノ粒子が注目されている。
このような磁性金属ナノ粒子に関して、特許文献1には、鉄ペンタカルボニルの熱分解反応と、白金(II)アセチルアセトナートの多価アルコール(文中で、多価アルコールを
ポリオール、もしくはポリアルコールと表現している場合があるが、多価アルコール、ポリオール、ポリアルコールは同義である)による還元作用を同時に行わせることにより、
単分散状態のFePt合金粒子を生成する方法が記載されている。非特許文献1には、オクタンを油相、CTAB(cetyl trimethyl ammonium bromide)を界面活性剤とした、油中水滴
型(W/O type)逆ミセルを反応場として、水素化ホウ素を用いて金属イオンを還元する方
法が記載されている。
これらの方法で得られるFePt粒子の結晶構造は、不規則相であるfcc(面心立方晶)構造であるため、ナノオーダーの粒子では常温において超常磁性を示す。したがって
強磁性粒子として使用する場合は、熱処理によってL10規則相(fct(面心正方晶)構
造)に結晶構造転移させる必要がある。
この熱処理は、不規則相から規則相への結晶構造転移温度(Tt)以上で処理する必要があるが、一般に450℃以上の高温で行う。この熱処理の際、熱により粒子同士の合体
による巨大化が起こるために粒度分布の分布幅が広がり、粒子は単磁区と多磁区構造に混在するようになって高密度磁気記録媒体には適さなくなる。したがって、粒子合成直後の
粒径を保存したまま、強磁性を有するFePt粒子を得るためには、粒子同士の合体を防止する保護剤で粒子を被覆することや、何らかの方法によりTtを低下させ、熱処理温度
がより低温で実施できるようにすることが有効である。
非特許文献2には、ポリオール法によるFePt粒子合成の際に、Ag、Cu、Sb、Bi、Pbなどの元素を添加すると、fcc構造からfct構造への結晶構造転移温度(
Tt) を低下できる旨が記載されている。
非特許文献3には、ポリオール法によるFePt粒子合成の際に、ポリオールとしてテトラエチレングリコール(TEG)を使用し、白金及び鉄アセチルアセトネートを300
℃で還元すると、合成されたままで、fct構造を有するFePtナノ粒子が得られたと
記載されている。
特許第3258295号公報(特開2000-54012号公報) Journal of Applied Physics, Vol.87, No.9, 1 May 2000, p.5615-5617 電子材料2002年1月号, p.61-67 Japanese Journal of Applied Physics, Vol.42, No.4A, 1 April 2003, p.L350-352
特許文献1、非特許文献1および非特許文献2の方法で得られるFePt粒子は、反応直後のものは磁性を持たないfcc(面心立方晶)構造であり、そのままでは磁気記録媒
体用途の磁性粒子として利用することはできない。このため、fct結晶構造転移温度(Tt)以上に加熱処理することにより、強磁性を発現するfct(面心正方晶)構造に転
移させる必要がある。
しかし、該方法で得られるFePt粒子の結晶構造転移温度は450℃程度である。このため、fct構造に転移するには450℃以上の温度での熱処理が必要である。したが
って、このFePt粒子からなる集合体(粉体)をそのまま450℃以上の温度に加熱すると、金属粒子同士が合体して巨大化してしまい、fct構造が得られたとしても、高密
度記録媒体の用途に適したナノ粒子形態とはならないし、粒子同士の合体が一様に進行しないのが普通であるから、粒径分布が発生し、これに伴って磁気特性に大きな分布を生じ
て、実用上の問題となる。
加熱によって粒子同士が合体して巨大化するのを防止するには、各粒子が互いに所定の間隔をあけて位置決めされた状態で, 例えば基板上に各粒子を所定位置に固定した状態で
, あるいは粒子同士の焼結を防止するための何等かの障壁を設けた状態で、該熱処理を行うことが必要である。しかし、このような熱処理を実現するには、粒子の規則的な配置を
行うための精密技術が必要である。それが技術的に可能であるとしても、反応直後に得られたFePt粒子が既にfct構造を有していれば、このような熱処理が省略もしくは簡
略(例えば熱処理温度の低下)になるので、そのメリットは甚大である。
非特許文献3には、その可能性が示された。すなわち、合成されたまま状態でfct構造をもつFePtナノ粒子が得られる可能性が示された。しかし、該文献に記載された方
法で得られたFePtナノ粒子粉末は、TEGを用いて300℃で合成する方法のものでも、室温における保磁力Hcは370エルステッド(Oe )に過ぎない。このFePtナ
ノ粒子粉末は、同じくTEG(テトラエチレングリコール)を用いて260℃で合成したものに比べると、fct構造を有することが確認されているが、それでも、室温での保磁
力Hcが370Oe 程度では、実際の磁気記録用に適用するには難がある。
したがって、本発明の課題は、前記の非特許文献3に示されたFePtナノ粒子の製法をさらに改善して、実際の磁気記録用材料に適した高い保磁力を有するfct構造のFe
Ptナノ粒子粉体を直接合成することにある。
本発明者は、合成反応終了の時点でfct構造を有し、室温での保磁力Hcが100Oe 以上、場合によっては1000Oe 以上、さらには1500Oe 以上を示すことができ
るFePtナノ粒子粉体を得ることに成功した。
すなわち本発明によれば、FeまたはCoの少なくとも1種とPtまたはPdの少なくとも1種とを主成分とし且つ面心正方晶の割合が10〜100%の範囲にある磁性合金か
らなる平均粒径が50nm以下の磁性粉であって、X線結晶粒径(Dx):4.0nm以上、室温での保磁力Hc:100Oe 以上、室温での飽和磁化量σs:20emu/g 以上で
あり、且つ流動性を有する磁性粉を提供する。この磁性粉は、一般式〔TX1-XY1-Yで表される量比の成分を含有するのが好ましい(ただし、式中において、T:Feま
たはCoの1種または2種、M:PtまたはPdの1種または2種、Z:TとM以外の相
転移に影響を与える金属元素、X:0.3〜0.7、Y:0.7〜1.0を表す)。
当該磁性粉は、前記のTおよびM、さらに必要に応じてZの成分を含む金属塩を、沸点が200℃以上の多価アルコールおよび/またはこれらの誘導体からなる液に、固形分が
残存しない状態にまで溶解し、その溶液を不活性ガス雰囲気下で200℃以上の温度で且つ大気圧を超える圧力に保持して該金属塩を該多価アルコールおよび/またはこれらの誘
導体で還元し、この還元によって該磁性粉を合成することによって得ることができる。この方法によれば、この合成された粒子粉末が、合成された状態において面心正方晶の割合
が10〜100%の範囲にあり、且つ平均粒径:50nm以下、X線結晶粒径(Dx):4.0nm以上、室温での保磁力:100Oe 以上、室温での飽和磁化量σs:20 emu
/g以上を具備する。
前記の製法において、還元中の圧力は大気圧との差圧で+100Pa以上とすることができ、還元温度に昇温するさいの昇温速度を1〜20℃/分の範囲で変化させるのが好ま
しい。多価アルコールとしては、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールの1種または2種を使用することができ、T、MおよびZ成分の塩としては、これらの
成分のアセチルアセトナートであることができる。また、多価アルコールおよび/またはこれらの誘導体と原料金属塩とのモル比(多価アルコールモル/原料金属モル)は50〜
3000とすることができ、還元温度を270℃以上、大気圧を超える圧力に保持する時
間を1時間以上とするのがよい。
非特許文献3に記載されているように、ポリオール法によるFePt粒子合成の際に、テトラエチレングリコール(TEG)を用いて白金及び鉄アセチルアセトネートを260
℃で還元しても、fct構造をもつFePtナノ粒子を合成することは困難であるが、テトラエチレングリコール(TEG)を使用して該アセチルアセトネートを300℃で還元
すると、合成されたままでfct構造を有するFePtナノ粒子を得ることができる。
本発明者は、この高沸点のポリアルコールを用いるポリオール法について鋭意、研究を進めた結果、その還元反応を大気圧に対して100Pa以上の正圧下で実施し、さらに昇
温速度を1〜20℃/分の間で制御することによって、合成されるFePt粒子ナノ粒子の結晶粒径を制御することができることがわかった。そしてこのFePtナノ粒子の磁気
特性が、この粒子の結晶粒径に大きく依存していることを見い出した。すなわち、出来るだけ沸点の高い多価アルコール類を還元剤として使用してFePtナノ粒子を合成する実
験を繰り返してきたが、沸点が200℃以上の多価アルコール類を使用し、不活性ガス雰囲気下で反応温度を200℃以上として該多価アルコール中のFeイオンおよびPtイオ
ンを還流下で還元するさいに、還元反応中の雰囲気圧力を大気圧に対して100Pa以上の正圧下に保持したうえで、昇温速度を1〜20℃/分の間で変化させた条件で還元を進
行させると、結晶粒子径を変化させることができ、それによって、用途にあった保磁力の
fct 構造のFePtナノ粒子粉末を直接的に合成できることを見い出した。
以下に本発明で特定する事項について説明する。
〔磁性合金の成分組成と組織〕
本発明の磁性粉は、少なくともFeおよび/またはCoと、Ptおよび/またはPdを含む磁性合金からなり、面心正方晶(fct:L10規則相)の割合が10〜100%の範
囲にある金属組織を有する磁性体からなる。
その合金組成は、代表的には、一般式〔TX1-XY1-Yで表される。ただし、式中のTはFeまたはCoの1種または2種、MはPtまたはPdの1種または2種であり
、Zは相転移に影響を与えるTとM以外の添加金属元素である。Xは0.3〜0.7の範囲、Yは0.7〜1.0である。面心正方晶を形成する組成としてはX=0. 5が理想的
であるが、X:0. 3〜0. 7の範囲でも面心正方晶が10〜100%の金属組織を得る
ことができる。
Z成分において相転移に影響を与えるとは、ポリオール法によるFePt粒子合成の際にfcc構造からfct構造への結晶構造転移温度(Tt) を低下させる作用を有するこ
とを意味する。具体的には、そのZ塩を添加しておくと、金属に還元されたさいにそのZ金属が結晶粒界または粒界に偏析して、前記の作用を示すことを意味している。このよう
な作用を有する金属元素としてはAg、Cu、Sb、Bi、Pbなどがある。Z成分に関しては、その塩がポリオールで還元されることが重要である。Yの値は、Zの種類によっ
て最適値は異なるが0. 7〜1. 0の範囲であればよい。Yが0. 7未満の場合にはZが多くなりすぎてfct構造の発現を阻害するため、磁気特性の急激な悪化が起きるので好
ましくない。Yが1.0の場合はZ成分を含まないことになるが、Z成分は、場合によっては含有しなくてもよい。本発明に従う磁性粉の粉末としての平均組成の測定は、粉末を
酸により完全に溶解したものをICP測定で行うことができる。また、TEM−EXD測定を行うこともできる。TEM−EXD測定でも十分に校正を実施したものではICP測
定結果と誤差が数%以内となることを確認した。本発明の磁性粉は、前記の一般式で表される成分組成の磁性体を主成分とするが、この磁性体中に製造上不可避的に混入する不純
物等が存在しても、特性に大きな影響を与えない限りそのような不純物の存在は許容され
る。
本発明に従う磁性粉は、前記のようにFePtの粒子粉末が代表的である。このため、以下に主としてFePt粒子粉末を例として説明するが、本明細書において、FePt粒
子粉末と言えば, 実際には前記の一般式の金属粒子粉末を意味するものとする。
〔面心正方晶の割合〕
本発明に従うFePt粒子粉末は、メスバウワー分光法で計測される強磁性構造の体積割合(面心正方晶の割合)が10〜100%の範囲にある。一般に、金属組織中における
或る金属相の割合(その結晶構造の割合)は、X線回折のピーク強度の比較によって行われる場合が多い。しかし、本発明が対象とするFePt合金などでは、fcc構造(面心
立方晶)とfct構造(面心正方晶)のX線回折パターンが殆ど同じであり、またfct構造のみから得られる(001)と(110)の反射は強度が非常に弱いので、これらの
ピークだけで定量化を行うことは困難である。
しかし、メスバウワー分光法で計測されるFePt合金についての強磁性構造の体積割合を解析することによって、そのfct構造の体積割合を算出することができる。そこで
本発明においては、FePt粒子のfct構造の体積割合については、Fe原子のメスバウアー分光測定による強磁性構造の体積割合の解析によって、すなわち、Fe原子のメス
バウアー分光測定による磁気秩序下にあるFe原子の個数割合を求めることによって、こ
れをfct構造の体積割合とする。
fct構造すなわち面心正方晶の体積割合(容積%)が10vol.%未満では磁気異方性が小さくなり、磁気記録材料として必要な保磁力、および熱安定性が得られなくなる。磁
気異方性が大き過ぎる場合には保磁力が大きくなりすぎるため、磁気記録媒体用途に用いることが困難になることもあるが、強力な永久磁石用途にはむしろ好適である。したがっ
て、本発明の金属磁性粒子の面心正方晶(fct)の割合は、体積割合で10〜100%
とする。
〔粒径〕
本発明に従うFePt粒子粉末は、透過電子顕微鏡(TEM)観察による1次粒子の粒径の平均値が50nm以下、好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下で
ある。1次粒子はそれ以上には分けられない最小単位の粒子を言う。本発明に従って合成されたfct構造をもつFePt粒子粉末は、その合成されたまま粉末として回収された
段階では、1次粒子の粒子間に静磁場作用が働くことから、多数の1次粒子が群をなして存在することが多い。すなわち、多数の1次粒子が集まって一つの群をなし、この群の多
数が分散した状態に成りやすい。多数の1次粒子からなる一つの群を2次粒子と言う。この2次粒子の粒径は合成反応の条件によって様々であるが、約100μm程度になる場合
もある。いずれにしても、このような2次粒子が形成されていても、全体として流動性を
有する粉体を構成している。
本発明者は、適切な界面活性剤等からなる分散剤をこのような2次粒子が存在している溶媒に添加するか、或いは該分散剤を含む溶媒を当該2次粒子に添加して、超音波ホモジ
ナイザーなどで分散処理を施すと、1次粒子が所定の間隔をあけて分散した状態となることを知見した。前記のTEM観察による1次粒子の粒径測定はこのような分散処理を施し
たうえで実施することができ、この場合、1次粒子の粒径の平均値は、例えば30万倍の倍率のTEM写真により1次粒子100個以上の粒径を測定したときの平均値として算出
する。FePt粒子を磁気記録媒体の磁性層を構成するのに使用する場合には、その粒子の粒径が記録密度と密接に関係しており、一般に粒径が小さいほど記録密度を高めること
ができる。本発明に従う粒子粉末は、透過電子顕微鏡(TEM)観察による1次粒子の粒径の平均値が50nm以下、好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下で
あるので、磁気記録媒体の用途に適する。
〔X線結晶粒径(Dx)〕
本発明に従うFePt粒子粉末は、結晶粒子径Dが4.0nm以上、好ましくは5.0nm以上、さらに好ましくは6.0nm以上である。本発明に従うFePt粒子の結晶粒
子径はX線回折結果から Scherrer の式より求めることができる。このため、結晶粒子径
は本明細書ではX線結晶粒径(Dx)と呼ぶ。その求め方は、次のとおりである。
Scherrer の式は、次の一般式で表現される。
D=K・λ/β COSθ
式中、K:Scherrer定数、D:結晶粒子径、λ:測定X線波長、β:X線回折で得られた
ピークの半価幅、θ:回折線のブラッグ角をそれぞれ表す。
後記の実施例では、Kは0.94の値を採用し、X線の管球はCuを用いた。このため前式は
次のように書き換えられる。
D=0.94×1.5405/β COSθ
この式でDを求めるFePt粒子のピークについては41°付近に観察される(111) のも
のを採用できる。
FePt粒子の磁気異方性の起源は結晶構造に由来し、一般に、結晶磁気異方性といわれる。この結晶磁気異方性の強さはその粒子の結晶性ひいては結晶粒子径の大きさによっ
て決まる。FePt粒子におけるfct構造の結晶磁気異方性に関しては、X線結晶粒径(Dx)が小さすぎると、熱によるスピンの擾乱の効果が顕著になり出し、磁化を持たな
い状態の超常磁性になる。そのため、X線結晶粒径(Dx)は、或る一定以上の大きさを有することが必要である。本発明者は本発明に従うFePt粒子のX線結晶粒径(Dx)
が制御可能であることを見い出し、さらにX線結晶粒径(Dx)と磁気特性との関係を調らべた結果、X線結晶粒径(Dx)が4.0nm以上、好ましくは5.0nm以上、さら
に好ましくは、6.0nm以上とすることによって、良好な磁気特性を有するFePt粒子粉末が得られることがわかった。具体的には後記の実施例に示すが、図2に示されるよ
うに、X線結晶粒径(Dx)が4.0nmより大きくなると、それにつれて保磁力が高くなり、また図3に示されるように、X線結晶粒径(Dx)が4.0nmより大きくなると
、それにつれて飽和磁化値(σs)も高くなることがわかった。本発明はこの知見事実に
基いてFePt粒子粉末のX線結晶粒径(Dx)を4.0nm以上と規定する。
〔磁気特性〕
本発明に従うFePt粒子粉末は、合成されたままの状態で(熱処理を施さない状態
で)fct構造を有し、X線結晶粒径(Dx)が4.0nm以上を有することから、室温での保磁力Hcが100Oe 以上、好ましくは500Oe 以上、さらに好ましくは100
0Oe 以上、最も好ましくは1500Oe 以上を有する。磁気記録用途や永久磁石用途としては、保磁力は500Oe 以上であることが望ましく、この点で、本発明のFePt粒
子粉末は磁気記録用途や永久磁石用途に適する。磁性流体の原料、生体分子標識剤、薬剤
キャリヤーなどの用途には保磁力が500Oe 未満でも適用可能である。
磁気記録用途においては、保磁力Hcはとくに1000Oe 以上であるのが好適である(後述の図5参照)。FePt粒子粉末の保磁力Hcは、本発明によればX線結晶粒径(
Dx)が大きくなるほど高くできることがわかった。後記の実施例に示したように、FePt粒子粉末のX線結晶粒径(Dx)が5.5nm以上となると保磁力Hcを1000O
e 以上とすることが可能となり、6.0nm以上で安定して1000Oe 以上とすること
ができる。
本発明に従う磁性粉の飽和磁化量σsは20emu/g 以上、好ましくは30emu/g 以上、さらに好ましくは40emu/g 以上である。永久磁石や磁性流体でも、磁性粉の磁力が弱す
ぎるとモーターの駆動力が弱くなったり軸シールの耐圧が小さくなって好ましいことではない。本発明の磁性粉は20emu/g 以上のσs値を有することから、これらの用途に好適
である。生体分子標識剤や薬剤キャリヤーではσsが20emu/g 未満では生体外からの検出が困難になるが、本発明の磁性粉はそのようなことがなく、これらの用途にも好適に適
用できる。
とくに、磁気記録用の磁性粉では飽和磁化量σsが30emu/g 未満では書き込んだ情報が弱すぎて高感度ヘッドでも読み取りができない場合がある(後述の図6参照)。FeP
t粒子粉末のσsは、本発明によればX線結晶粒径(Dx)が大きくなるにつれて高くできることがわかった。後記の実施例に示したように、FePt粒子粉末のX線結晶粒径(
Dx)が3nm以上となると、飽和磁化量σs を30emu/g 以上にすることができる。
本発明に従う磁性粉の角形比SQ(残留磁化/飽和磁化)は0.30以上、好ましくは0.40以上である。また本発明に従う磁性粉のSFDは1.1以下、好ましくは1.0
以下である。このようにSQが大きくSFDが小さいことは粒子個々の磁気特性にバラツキが少ないことを意味している。このことは、前記のいずれの用途にも本発明の磁性粉が
適していることを意味する。
磁気特性の測定は次のようにして行うことができる。合成反応終了後の液に3倍量のメタノールを添加したあと遠心分離器にかけ、上澄み液を取り除く。上澄み液を除いたあと
の残留分(粒子粉末)にメタノール100mLを添加して超音波洗浄槽に装填し、この超音波洗浄槽で該粒子粉末を分散させ、得られた分散液を遠心分離器にかけたあと上澄み液
を取り除く。得られた残留分(粒子粉末)を同じくメタノールを加えて超音波洗浄槽および遠心分離器で処理する洗浄操作を、さらに2回繰り返す。最後に上澄み液を分別して得
られたFePtナノ粒子粉末含有物を真空乾燥機で十分に乾燥する。この乾燥粉をカプセルに詰め、測定中サンプルが動かないように、接着剤で十分に固定し、振動試料型磁力計
(VSM)を用いて測定する。試料をカプセルに詰めるときには特別に磁化方向を配向さ
せる操作等は行わない。
本発明の磁性粉は前記のように合成されたままの状態で優れた磁気特性を有するので、このまま磁気記録媒体用の磁性粉として適用が可能である。また、熱処理を施す場合にあ
ってもその簡略化ができる。そのため、熱処理に伴う粒子間の固着が防止できるので、流
動性を有する粉末の状態で採取できる。
〔製造法〕
非特許文献3では保磁力Hc=370Oe のfct構造のFePt粒子粉末が得られている。本発明によると、その限界を超えて、さらに高い保磁力を有するfct構造のFe
Pt粒子を直接的に合成することができる。本発明の製造法の要旨は前記したとおりであるが、特に、その還元反応を大気圧を超える圧力で実施する点と、反応温度までの昇温速
度を操作してX線結晶粒径(Dx)を制御する点に特徴がある。すなわち、前記の一般式のTおよびM、さらに必要に応じてZの成分を含む金属塩を、沸点が200℃以上、好ま
しくは270℃以上の多価アルコールおよび/またはこれらの誘導体からなる液に、固形分が残存しない状態にまで溶解したあと、その溶液を不活性ガス雰囲気下で200℃以上
、好ましくは270℃以上の温度で且つ大気圧を超える圧力に保持して該金属塩を該多価アルコールおよび/またはこれらの誘導体で還元し、そのさい、還元温度までの昇温速度
を1〜20℃/分の範囲とする。
ここで、大気圧を超える圧力とは、大気圧よりも5Pa以上高い圧力である。好ましくは大気圧よりも10Pa以上、さらに好ましくは100Pa以上の圧力である。大気圧よ
り高くしても、その差圧が5Pa未満では100Oe 以上の保磁力を有するFePt粒子粉末を安定して得ることが困難となる。この圧力は実際には反応槽内の内圧である。この
反応槽内圧を高めるることにより溶媒の沸点があがることになる。このため同じ反応温度でも溶媒の気化を抑制することができ、安定に反応を進めることができる。また、反応槽
内圧を高くすれば、低いときよりも反応温度を高めることができる。このため面心正方晶の成長を有利に進行させることができる。しかし、あまり高圧にして、例えば大気圧より
10MPaを超えるような高い圧力にすると、保磁力の向上効果が飽和に近づく共に反応装置の耐圧構造を厳重にしなければならなくなり、経済的ではない。したがって、反応槽
内圧は、溶媒の種類、反応温度、目的とする磁気特性を勘案して設定しなければならないが、例えば、溶媒にテトラエチレングリコールを用いる場合は、大気圧との差圧が100
00Pa以内、好ましくは5000Pa以内の圧力に収めるのがよい。
還元反応を進行させる反応温度は200℃以上、好ましくは270℃以上とする必要がある。200℃未満ではfct構造を10vol.%以上有するFePt粒子粉末を安定して
得ることが困難となる。しかし、あまり高い温度では溶媒の蒸発が激しくなるので、40
0℃以下、好ましくは350℃以下とするのがよい。
そのさい、この反応温度に至るまでの昇温速度を操作すると、合成されるFePtナノ粒子のX線結晶粒径(Dx)が変化することがわかった。また、得られるFePtナノ粒
子粉末の磁気特性はそのX線結晶粒径(Dx)に大きく依存していることがわかった。具体的には、X線結晶粒径(Dx)が4nm以上のFePtナノ粒子粉末を得るには、前記
の圧力および温度条件において、昇温速度を0.2〜20℃/分の範囲、好ましくは1〜20℃/分の範囲で調節するのがよく、この範囲を外れる昇温速度を採用した場合には、
X線結晶粒径(Dx)が4nm以上のものを安定して得ることが困難となる。また、昇温速度が0.2℃/分より遅いと生産性の観点からも好ましくない。ここで、本発明で言う昇
温速度とは厳密には50℃から150℃に至るまでの平均昇温速度(℃/分)である。実際には、最終目標とする反応温度に近づいた時点では、例えば最終目標温度より20℃ほ
ど低い温度付近にまで達したら、実際の温度が目標の反応温度を超えてしまわないように
、昇温速度を落としてゆっくりと目標温度まで昇温するのが好ましい。
本発明法で使用する多価アルコールとしては、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールが好ましい。しかし、これに限らず、沸点が270℃以上の多価アルコ
ールまたはその誘導体であれば本発明で使用できる。また多価アルコールまたはその誘導体は、1種のみでなく2種以上を混合して使用することもできる。エチレングリコールは
沸点が197℃と低いので好ましくない。
該多価アルコール中に溶存させるFeおよびPtは、代表的には、鉄(III) アセチルアセトナートおよび白金 (II) アセチルアセトナートとして供給するのがよい。これらの鉄
(III) アセチルアセトナートおよび白金 (II) アセチルアセトナートを多価アルコールに完全に溶解したあと、すなわち、これらの固形分が残存しない状態にまで溶解したあと、
昇温し加圧下で還元反応を進行させるのがよい。固形分が残存していると、合成されるFePt粒子粉末には個々の粒子内においても、また粒子相互の間でも、組成のバラツキが
発生し、高い保磁力をもつFePt粒子粉末を得ることが困難になる。
このようにして、アセチルアセトナート錯体からFeとPtの双方を高沸点ポリオールで加圧下で還元すると、合成されるFePt粒子粉末は、合成されたままの状態において
メスバウワー分光法で計測される強磁性構造の体積割合(面心正方晶の割合)が10〜100%の範囲で、X線結晶粒径(Dx)が4nm以上のものとなり、室温での保磁力が5
00Oe 以上、室温での飽和磁化σsが20emu/g 以上、透過電子顕微鏡(TEM)観察による1次粒径の平均値が50nm以下の流動性を有するFePt粒子粉末を得ることが
できる。
この合成反応において、反応溶液に分散剤を含有させておくこともできる。分散剤は合成された粒子表面に吸着して粒子同士の凝集を抑制するのに有効である。また、分散剤の
種類と添加量を適切にすることによって、合成されるFePt粒子の粒径を制御することも可能である。使用できる分散剤としては、FePt粒子粉末表面に吸着しやすいN原子
を有するアミン基、アミド基、およびアゾ基を有する界面活性剤か、またチオール基またはカルボキシル基のいずれかを構造中に含有する有機分子が好適である。これらの官能基
をもつ界面活性剤は、FePt粒子等の金属表面に直接配位できるため、本発明に従うF
ePt粒子に用いる界面活性剤として好適である。
合成反応の反応速度を適正に制御することも重要である。そのための方法として溶媒中の金属濃度の制御がある。例えば金属原料の濃度を抑えることにより、生成する金属の過
飽和度を低下させ、これによって、核発生および粒子成長の速度を低下させることができる。ポリオールと金属塩中に含まれる全ての金属イオンのモル比、すなわちポリオール/
全金属イオンのモル比が1000以上であれば、本発明に従うFePt粒子を有利に製造
することができる。
当該合成反応で得られるFePt粒子の異方性磁界Hkは、反応時間によっても変化する。一般に、反応時間の増加に伴ってHkが増加する。このため、充分大きなHkを得る
ためには反応時間は1時間以上、好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3. 5時間以
上とするのがよい。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。
〔実施例1〕
テトラエチレングリコール(沸点:327℃)2 00mLに、鉄(III) アセチルアセトナート=1.37m mol/Lと白金 (II) アセチルアセトナートを1.21m mol/L添
加し、鉄(III) アセチルアセトナートと白金 (II) アセチルアセトナートの固形分が存在しなくなるまで溶解した。この溶液を還流器のついた容器に移してオイルバスに載せ、容
器内に不活性ガスとして窒素ガスを400mL/minの流量で吹込みながら、該溶液を160rpmの回転速度で撹拌しつつ加熱し、300℃の温度で5時間の還流を行って、
反応を終了した。そのさい、昇温速度は15℃/min とした。また該容器のガス排出口に圧力調節弁付きの排気管を取付けておき、その調節弁の開度を調節することによって、容
器内の圧力を大気圧よりも3100Paだけ高い圧力に反応のあいだ一定に維持した。
反応終了後の液に3倍量のメタノールを添加したうえで遠心分離器にかけ、その後、上澄み液を取り除いた。上澄み液を除いたあとの残留分(粒子粉末)に再びメタノール10
0mLを添加して超音波洗浄槽に装填し、この超音波洗浄槽で該粒子粉末を分散させた。得られた分散液を遠心分離器にかけたあと上澄み液を取り除いた。得られた残留分(粒子
粉末)に対し、前記同様のメタノールを加えて超音波洗浄槽および遠心分離器で処理する洗浄操作を、さらに2回繰り返した。最後に上澄み液を分別して得られたFePtナノ粒
子粉末含有物を、透過電子顕微鏡(TEM)、X線回折(XRD)、組成分析および磁気測定(VSM)に供した。TEM観察にさいしては、FePt粒子粒子粉末含有物をヘキ
サン中に入れ、界面活性剤としてオレイン酸とオレイルアミンを添加したうえ、超音波分
散処理して得られた分散液の状態で測定に供した。
その結果、透過電子顕微鏡(TEM)から観測された1次粒子の平均粒径は8.4nmであった。X線回折の結果、超格子反射(001)と(110)に対応する回折ピークが
現れ、面心正方晶の存在が確認された。X線結晶粒径(Dx)は9.6nmであった。組
成分析の結果は、原子比でFe:Pt=52:48であった。
図1に、本例で得られたFePtナノ粒子粉末のヒステレシスループを示したが、図1に見られるように、保磁力Hc=2485Oe 、飽和磁化量σs=52emu/g 、角形比=
0.620、SFD=0.860であった。また、Fe原子のメスバウアー分光測定によ
るfct構造の割合は58%であった。
〔実施例2〕
昇温速度を12℃/min とした以外は実施例1を繰り返した。その結果、透過電子顕微鏡(TEM)から観測された1次粒子の平均粒径は8.2nmであった。X線回折では超
格子反射(001)と(110)に対応する回折ピークが現れ、面心正方晶の存在が確認された。X線結晶粒径(Dx)は8.4nmであった。組成分析では原子比でFe:Pt
=52:48であった。磁気測定の結果、保磁力Hc=2336Oe 、飽和磁化量σs=54emu/g 、角形比=0.620、SFD=0.880であった。また、Fe原子のメス
バウアー分光測定によるfct構造の割合は56%であった。
〔実施例3〕
昇温速度を2℃/min とした以外は実施例1を繰り返した。その結果、透過電子顕微鏡(TEM)から観測された1次粒子の平均粒径は7.9nmであった。X線回折では超格
子反射(001)と(110)に対応する回折ピークが現れ、面心正方晶の存在が確認された。X線結晶粒径(Dx)は6.2nmであった。組成分析では原子比でFe:Pt=
52:48であった。磁気測定の結果、保磁力Hc=1340Oe 、飽和磁化量σs=47emu/g 、角形比=0.490、SFD=1.08であった。また、Fe原子のメスバウ
アー分光測定によるfct構造の割合は32%であった。
〔比較例1〕
昇温速度を0.1℃/min した以外は実施例1を繰り返した。その結果、透過電子顕微鏡(TEM)から観測された1次粒子の平均粒径は6.8nmであった。X線結晶粒径(
Dx)は2.5nmであった。組成分析では原子比でFe:Pt=52:48であった。磁気測定の結果、保磁力Hc=2Oe 、飽和磁化量σs=14.9emu/g 、角形比=0.
003であった。Fe原子のメスバウアー分光測定によるfct構造の割合は0%であっ
た。
〔比較例2〕
テトラエチレングリコール(沸点:327℃)100mLに、鉄(III) アセチルアセトナート=2.539m mol/Lと白金 (II) アセチルアセトナートを1.269m mol/
L添加し、鉄(III) アセチルアセトナートと白金 (II) アセチルアセトナートの固形分が存在しなくなるまで溶解した。この溶液を還流器のついた容器に移してオイルバスに載せ
、容器内に不活性ガスとして窒素ガスを400mL/minの流量で吹込みながら、該溶液を160rpmの回転速度で撹拌しつつ加熱し、300℃の温度で3時間半の還流を行
って、反応を終了した。そのさい、昇温速度は10℃/min とした。容器内の圧力調整は
実施せず、大気圧と同じとした。
反応終了後の液に3倍量のメタノールを添加したうえで遠心分離器にかけ、その後、上澄み液を取り除いた。上澄み液を除いたあとの残留分(粒子粉末)に再びメタノール10
0mLを添加して超音波洗浄槽に装填し、この超音波洗浄槽で該粒子粉末を分散させた。得られた分散液を遠心分離器にかけたあと上澄み液を取り除いた。得られた残留分(粒子
粉末)に対し、前記同様のメタノールを加えて超音波洗浄槽および遠心分離器で処理する洗浄操作を、さらに2回繰り返した。最後に上澄み液を分別して得られたFePtナノ粒
子粉末含有物を、透過電子顕微鏡(TEM)、X線回折(XRD)、組成分析および磁気
測定(VSM)に供した。
TEM観察に関しては、FePtナノ粒子粉末含有物をヘキサンに入れ、これに界面活性剤としてオレイン酸とオレイルアミンを添加したうえ、超音波分散処理して粒子の分散
液を作成し、その分散液に関して観察を実施した。その結果、透過電子顕微鏡(TEM)
から観測された1次粒子の平均粒径は7.5nmであった。
X線回折では、超格子反射(001)と(110)に対応する回折ピークが現れ、面心正方晶の存在が確認された。X線結晶粒径(Dx)は3.7nmであった。TEM−ED
Xによる組成分析では、FeとPtの組成比は、原子比でFe:Pt=55:45であっ
た。
磁気測定では、保磁力Hc=370Oe 、飽和磁化量σs=40emu/g 、角形比=0.25、SFD=1.10であった。また、本例で得られたFePtナノ粒子粉末をメスバ
ウアー分光測定に供したところ、Fe原子のメスバウアー分光測定によるfct構造の割
合は38%であった。
図2〜図4において、前記の実施例1〜3および比較例1〜2のものに加え、さらに同じ使用原料のもとで反応条件(特に昇温速度)を変えて得られた数多くのFePtナノ粒
子粉末含有物について、X線結晶粒径(Dx)と磁気特性の関係を整理して示した。これらの結果から、FePtナノ粒子粉末の磁気特性はX線結晶粒径(Dx)と密接な相関を
有することがわかる。特に、図2からは、X線結晶粒径(Dx)が4.0nmより大きくなると、それにつれて保磁力が高くなることがわかる。図3からもX線結晶粒径(Dx)
が4.0nmより大きくなると、それにつれて飽和磁化値(σs)も高くなることがわかる。図4からはX線結晶粒径(Dx)とSFDについての相関は必ずしも明確ではないが
、6nm以上のX線結晶粒径(Dx)を有することによって、保磁力分布(SFD)が1
以下の安定した値に落ち着くことを示している。
図5〜7は、前掲の図2〜4図の上に磁気記録に好適な磁気特性の範囲を網掛け範囲で示したものである。磁気記録に用いるためには、保磁力Hcは図5に示したように100
0Oe 以上であることが好適であるが、本発明の実施例で得られたFePt粒子粉末はこの範囲内であるのに対し、比較例1や2のものではこの範囲から外れている。図5からお
よそX線結晶粒径(Dx)が5.5nm以上で保磁力Hcは1000Oe 以上となり、6
.0以上では安定して1000Oe 以上となることがわかる。
同様に、磁気記録用には飽和磁化量σsは図6のように30emu/g 以上であることが好適であるが、本発明の実施例で得られたFePt粒子粉末はこの範囲内であるのに対し、
比較例1のものではこの範囲から外れている。図6から、およそX線結晶粒径(Dx)が3.0nm以上で飽和磁化量σsは30emu/g 以上となり、4.0以上では安定して30
emu/g 以上となることがわかる。
SFDについは磁気記録用には、図7に見られるように1.10以下であることが好適であるが、本発明の実施例で得られたFePt粒子粉末はこの範囲内であるのに対し、比
較例1や2のものではこの範囲から外れている。図7から、およそX線結晶粒径(Dx)
が5.0nm以上でSFDは1.10以下となることがわかる。
このように、本発明のFePt粒子粉末は磁気記録用の磁性粉末として好適である。とくに、図5〜7から、X線結晶粒径(Dx)が4.0nm以上、好ましくは5.5nm以
上、さらに好ましくは6.0nm以上を有している本発明のFePt粒子粉末は磁気記録
用として好適であることがわかる。
図8は、前記の実施例1と同じ使用原料のもとで同様にしてFePt粒子粉末含有物質を製造した場合に、FeとPtの仕込み比(実施例1では50:50 at.%)変えて得ら
れたFePt粒子粉末含有物について、反応時の昇温速度がそれらのX線結晶粒径(Dx)にどのように影響するかを調べた結果をプロットしたものである。図8の結果から、仕
込み比が異なっても昇温速度が高いとX線結晶粒径(Dx)が大きくなることがわかる。また、Fe仕込み量が低いほど、X線結晶粒径(Dx)が大きくなる傾向にある。仕込み
比が同等である場合には昇温速度が高いほどX線結晶粒径(Dx)は大きくなり、X線結
晶粒径(Dx)は昇温速度と密接な相関を有することがわかる。
本発明に従う磁性粉の磁気特性(ヒステレシテループ)の例を示す図である。 本発明に従う磁性粉のX線結晶粒径(Dx)と保磁力との関係を示す図である。 本発明に従う磁性粉のX線結晶粒径(Dx)と飽和磁化値との関係を示す図である。 本発明に従う磁性粉のX線結晶粒径(Dx)とSFDとの関係を示す図である。 磁気記録用として好適な範囲を図2の上に示したX線結晶粒径(Dx)と保磁力との関係を示す図である。 磁気記録用として好適な範囲を図3の上に示したX線結晶粒径(Dx)と飽和磁化値との関係を示す図である。 磁気記録用として好適な範囲を図4の上に示したX線結晶粒径(Dx)とSFDとの関係を示す図である。 FeとPtの仕込み比を変えた場合の反応時の昇温速度とX線結晶粒径(Dx)の関係を示す図である。

Claims (7)

  1. 一般式〔TX1-XY1-Y(ただし、T:FeまたはCoの1種または2種、M:PtまたはPdの1種または2種、Z:相転移に影響を与える金属元素、X:0.3〜0.7、Y:0.7〜1.0を表す)で表される量比の成分を含有している金属磁性粉の製造法において、
    前記のTおよびM、さらに必要に応じてZの成分を含む金属塩を、沸点が200℃以上の多価アルコールおよび/またはこれらの誘導体からなる液に、固形分が残存しない状態にまで溶解し、その溶液を不活性ガス雰囲気下で昇温速度1〜20℃/分に制御し200℃以上の温度で且つ大気圧を超える圧力に保持して該金属塩を該多価アルコールおよび/またはこれらの誘導体で還元し、この還元によって該磁性粉を合成すること、
    そのさい、この合成された粒子粉末が、合成された状態において面心正方晶の割合が10〜100%の範囲にあり、且つ平均粒径:50nm以下、X線結晶粒径(Dx):4.0nm以上、室温での保磁力:100Oe以上、室温での飽和磁化量σs:20emu/g以上であることを特徴とする金属磁性粉の製造法。
  2. 前記面心正方晶の割合が32〜58%であり、前記X線結晶粒径が6.2〜9.6nmである請求項1に記載の金属磁性粉の製造法。
  3. 還元中の圧力が、大気圧との差圧で+100Pa以上である請求項1または2に記載の金属磁性粉の製造法。
  4. 多価アルコールおよび/またはこれらの誘導体と原料金属塩とのモル比(多価アルコールモル/原料金属モル)が、50〜3000である請求項1〜3のいずれかに記載の金属磁性粉の製造法。
  5. 多価アルコールが、トリエチレングルコールまたはテトラエチレングリコールの1種または2種である請求項1〜4のいずれかに記載の金属磁性粉の製造法。
  6. T、MおよびZ成分の塩がこれらの成分のアセチルアセトナートである請求項1〜5のいずれかに記載の金属磁性粉の製造法。
  7. 還元温度が270℃以上で且つ大気圧を超える圧力に保持する時間が1時間以上である請求項1〜6のいずれかに記載の金属磁性粉の製造法。
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