JP4452524B2 - チタン系金属製品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、チタン系金属製品の製造方法に関し、特に表面が鏡面に仕上げられたチタン系金属製品を得ることのできるチタン系金属製品の製造方法に関する。
チタンおよびチタン合金は、軽量、高強度、耐食性に優れる等、他の金属よりも優れた特性を有する。このため、チタンおよびチタン合金は、宇宙、航空機材料のほか、各種プラント設備、建築材料、医療材料、光学機器、装飾品、レジャー用品など広い分野で使用されている。また、機能性材料として現在実用化されている形状記憶合金は、チタンとニッケルの原子比が1:1である金属間化合物であり、高強度、耐熱性、耐磨耗性、耐食性に優れるという特徴を持つ。このため、形状記憶合金は、宇宙、航空機材料、自動車や家電品のアクチュエータ、歯列矯正ワイヤ、ガイドワイヤなどの医療用具、携帯電話のアンテナなどの通信機器、めがねフレームなどの装身具等に広く用いられている。
上記のチタン、チタン合金および形状記憶合金を各種の基材として使用する場合、製品の表面を鏡面仕上げとすることは、製品の審美性および安全性を向上させる上で極めて重要である。例えば、チタン、チタン合金または形状記憶合金製品の表面が鏡面仕上げとなっていれば、建築部材、装飾品、装身具および医療機器の美観を向上させられるほか、化学プラント等で使用される曲面状の構成部品への付着防止や、装身具、医療器具の雑菌の付着と繁殖の防止にも効果がある。さらに半導体装置内部で鏡面仕上りのチタン等を用いれば、製造プロセス中の不純物の混入を防ぐ効果も期待される。
チタン、チタン合金または形状記憶合金の表面を鏡面に仕上げる方法としては、これまで、バブ研磨、バレル研磨などの機械的研磨法のほか、化学研磨法、電解複合研磨法が知られていた。しかし、機械的研磨法は、加工歪が生じやすく、化学的親和力に起因して研磨用砥粒と材料との融着が起こり、チタン表面層が毟り取られて一様な平滑面を得ることが難しいという欠点がある。また、化学研磨法は、有毒ガスが発生する危険性があるとともに、安定した鏡面を得ることが難しく、さらに光沢が鈍く、しかも光沢が持続しないため、良好な鏡面が得られないという欠点がある。さらに電解複合研磨法は、チタンの薄板コイル材などを短時間で鏡面仕上げすることは可能であるが、加工した製品などの仕上げに期待する複雑形状の鏡面仕上げには適用できないなどの欠点がある。このように、いずれの研磨方法であっても、チタン等の表面を鏡面仕上げとすることは非常に困難であった。
一方、チタン等の表面を鏡面仕上げとする別の方法として電解研磨法がある。電解研磨法は、短時間の処理で比較的複雑な形状であっても研磨面の光沢が得られるというメリットがある。しかし、これまでの電解研磨法は、研磨対象が比較的小面積のものに限られる上、高い電圧を印加する必要があり、さらに電解研磨液の組成によってはチタン等の表面に厚い膜が形成されてしまうという問題があった。また、従来使用されていたチタンの電解研磨用電解液としては、爆発の危険性がある過塩素酸や有毒ガス発生の危険性があるフッ化物を含むものが多く、現場での使用は困難であった。
このような状況下、森田直久、歯科技術・器械Vol.9 No.2 p218〜239(1990)(非特許文献1)において、チタンの電解研磨方法に関する研究が報告された。非特許文献1には、アルコールを含む電解液に小型の純チタン板を浸漬して30V程度の電圧を5分程度印加すれば、電解研磨で鏡面仕上げの純チタンを得ることができると記載されている。
しかし、非特許文献1に記載された電解研磨法の対象は純チタンに限定されていた。本発明者らが検討した結果、この電解研磨法ではチタン合金やチタン系形状記憶合金では十分な効果が得られず、更なる改善、検討が必要であることが判明した。
そこで、本発明者らは、比較的低い電流密度でチタン系金属製品を電解研磨することにより、鏡面仕上がりのチタン系金属製品を得る方法を提案した(特開2004−18954号公報(特許文献1))。特許文献1に記載の方法によれば、電解研磨法により、表面が滑らかな鏡面仕上がりのチタン系金属製品を得ることができる。しかし、特許文献1に記載の方法は、低電流密度電解を使用するため、通常の電解研磨法と比較して、研磨時間が長くかかるものであり、また、電解研磨停止後に、電解中にチタン表面に生成する皮膜除去のために超音波処理を行うことが必須であった。
森田直久、歯科技術・器械Vol.9 No.2 p218〜239(1990) 特開2004−18954号公報
そこで、本発明は、研磨時間を大幅に短縮しつつ、表面が滑らかな鏡面仕上がりのチタン系金属製品を得ることができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、比較的高電流密度での電解研磨と比較的低電流密度での電解研磨とを組み合わせることにより、従来よりも大幅に短時間で、鏡面仕上がりのチタン系金属製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的を達成するための手段は、以下の通りである。
[請求項1]表面に鏡面部を有するチタン系金属製品の製造方法であって、前記チタン系金属製品を、無水系電解液に浸漬し、40〜200mA/cm2の範囲の電流密度で電解研磨し(以下、「高電流密度電解工程」という)、次いで、前記高電流密度電解工程での電流密度より低い電流密度であって、5〜40mA/cm2の範囲の電流密度で電解研磨すること(以下、「低電流密度電解工程」という)を含むことを特徴とする、前記製造方法。
[請求項2]前記高電流密度電解工程を、0.5〜10分間行う、請求項1に記載の製造方法。
[請求項3]前記低電流密度電解工程を、3〜15分間行う、請求項1または2に記載の製造方法。
[請求項4]前記チタン系金属が、純チタン、チタン合金またはチタン系形状記憶合金である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項5]前記無水系電解液が、炭素数1〜6のアルコールを1種または2種以上含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項6]前記無水系電解液が、エチルアルコール、iso−プロピルアルコール、無水塩化アルミニウムおよび無水塩化亜鉛を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項7]前記無水系電解液が、エチルアルコールおよび塩化リチウムを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
本発明の方法によれば、表面が滑らかな鏡面仕上りのチタン系金属製品を、従来の方法よりも大幅に短時間で得ることができる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。

本発明の製造方法の被研磨体である「チタン系金属製品」は、純チタンからなる製品のほか、チタンとその他の少なくとも1種の金属からなる製品を含む。本発明において使用されるチタン系金属は、純チタン、チタン合金およびチタン系形状記憶合金から選ばれる1種であることが好ましい。
本発明において使用されるチタン系金属の具体例としては、純チタン;Ti−15Mo、Ti−5Al−2.5Sn、Ti−6Al−4V ELI、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−7Nb、Ti−15Mo−5Zr、Ti−5Al−3Mo−4Zr、Ti−13Nb−13Ta、Ti−12Mo−6Zr−2Fe、Ti−15Zr−4Nb−2Ta−0.2Pd、Ti−35.3Nb−5.1Ta−4.6Zr、Ti−29Nb−13Ta−4.6Zr、Ti−15Sn−4Nb−2Ta−0.2Pd、その他Tiを多量に含む合金等;Ni−Ti系、Ni−Ti−Co系、Ni−Ti−Fe系、Ni−Ti−Cr系、Ni−Ti−Cu系、Ni−Ti−Cu−Cr系形状記憶合金、その他、Ni、Tiを主成分とする各種の形状記憶合金などが挙げられる。
本発明の製造方法で得られるチタン系金属製品は、表面に鏡面部を有する。本発明の製造方法における「鏡面」とは、得られるチタン系金属製品の表面状態を表すものであり、表面粗さRaが0.2μm以下の面をいう。ここで、表面粗さRaは、JIS B0601−1994に基づき測定したRa(算術平均粗さ)をいうものとする。
チタン系金属製品の鏡面部は、チタン系金属製品の表面の一部および全部のいずれであってもよい。
本発明の製造方法では、チタン系金属製品を、無水系電解液に浸漬し、40〜200mA/cm2の範囲の電流密度で電解研磨する高電流密度電解工程を行い、次いで、前記高電流密度電解工程での電流密度より低い電流密度であって、5〜40mA/cm2の範囲の電流密度で電解研磨する低電流密度電解工程を行う。本発明の製造方法における電解研磨では、無水系電解液中に陰極と、チタン系金属製品からなる陽極とを浸漬し、両電極間に電圧を印加してチタン系金属製品の表面の研磨を行う。
本発明において、電解研磨の電極として用いられる陰極の材料は、使用される無水系電解液の種類に応じて適宜選択できる。そのような材料としては、例えば、チタン、白金、ステンレス、銅などを挙げることができ、陽極での析出の弊害を防ぐためには、チタンであることが好ましい。また陰極の形状については特に制限はなく、研磨する製品の形状に応じて、電流が均一に流れるような形状にすることが好ましく、例えば、円筒状とすることができる。
本発明の製造方法における電解研磨工程では、無水系電解液が用いられる。本発明で用いられる無水系電解液は、炭素数1〜6のアルコールを1種または2種以上含むことが好ましい。炭素数1〜6のアルコールの具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、iso−ブチルアルコール、グリセリン、n−ペンタノール、n−ヘキサノールなどを挙げることができる。中でも、エチルアルコールとiso−プロピルアルコールを用いることが好ましい。
上記無水系電解液は、上記のアルコール成分以外の成分を更に含むことができる。そのような成分として、例えば、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化リチウムなどを挙げることができる。中でも、安全性の面からは、塩化リチウムを用いることが好ましい。
本発明の製造方法では、例えば、エチルアルコール、iso−プロピルアルコール、無水塩化アルミニウムおよび無水塩化亜鉛を含む無水系電解液、または、エチルアルコールおよび塩化リチウムを含む無水系電解液、を用いることができる。無水系電解液の各成分の含有量(質量%)は、電解研磨するチタン系金属製品の種類、形状、電解研磨面積の大きさ等に応じて適宜決定できる。
本発明の製造方法では、チタン系金属製品を、無水系電解液に浸漬し、40〜200mA/cm2の範囲の電流密度で電解研磨する高電流密度電解工程を行い、次いで、前記高電流密度電解工程での電流密度より低い電流密度であって、5〜40mA/cm2の範囲の電流密度で電解研磨する低電流密度電解工程を行う。なお、定電圧で電解を行う場合には、電圧印加直後には電流値が変動することがある。本発明における「電流密度」とは、電流密度の変動が収まり安定になった後に測定した値をいうものとする。
比較的高電流密度で電解研磨を行うと、短時間で研磨を行うことができる。しかし、高電流密度での電解研磨のみで鏡面仕上げを行うと、時間がある程度以上になると、熱、温度、皮膜等が不均一になり易く、気泡も発生する。このような熱、温度、皮膜等の不均一性と気泡の発生が研磨効果を阻害することにより、白あるいは灰色の曇り面が研磨面の一部あるいは全面に生じてしまう。
一方、比較的低電流密度で電解研磨を行うと、安定性の高い鏡面を形成することができるが、長時間を要する。また、比較的低電流密度で電解研磨を行った場合、表面に皮膜が形成された後、自然に剥離する部分と滞留する部分とができ、その結果、研磨面が不均一になる。そのため、均一な鏡面にするためには、超音波処理等の皮膜除去工程を行う必要がある。
それに対し、本発明の方法によれば、比較的高電流密度での電解研磨と比較的低電流密度での電解研磨とを組み合わせることにより、表面が滑らかな鏡面仕上がりのチタン系金属製品を、短時間で得ることができる。
この点について、より詳細に説明する。
チタン系金属製品の電解研磨においては、皮膜を形成する反応と皮膜を除去する反応とが同時に進行していると考えられる。陰極と陽極(被研磨物)に電圧を加えると、陽極面近傍に粘液層が生じ、電圧を加えた直後(初期)には、この粘液層は薄いため、皮膜の生成が皮膜除去よりも優位に進行する。一方、時間が経ち粘液層が十分厚くなると、皮膜を剥離する反応も進行し、研磨効果が現れる。つまり、チタン系金属製品の電解研磨は、皮膜の生成→剥離により進行すると考えられる。
先に述べたように、比較的高電流密度での電解研磨を長時間行うと、曇り面が生じるが、曇り面が生じる前に電解研磨を停止すると、研磨が不十分な部分が残ってしまう。そこで、再度高電流密度での電解研磨を行い、研磨が不十分な部分の研磨を行うことも考えられる。しかし、研磨が不十分な部分には、皮膜が剥離せずに残っているため、その部分に更に高電流密度での電解を行うと、その初期において皮膜の上に更に皮膜を形成することになり、剥離困難な皮膜が形成され、鏡面を得ることができない。
それに対し、本発明では、高電流密度電解工程において短時間で研磨を行い、曇り面が生じる前に低電流密度電解工程に切り替えることで、高電流密度電解工程で研磨しきれなかった部分を研磨し、均一な鏡面を得ることができる。低電流密度電解工程では、研磨効果のある反応は穏やかにしか進行しないが、研磨面の皮膜の生成と剥離、発熱と放熱等が平衡し、時間が経っても均一な電解研磨が保たれるため、安定性の高い鏡面を形成することができる。このように、本発明では、高電流密度電解工程と低電流密度電解工程とを組み合わせることにより、短時間で安定性の高い鏡面を形成することができる。
更に、このように高低2種類の電流密度での電解研磨を行った場合にチタン表面に生成される皮膜は、特に振動を加えなくても電解中に剥離したり、電解停止後に軽く液を撹拌するだけで剥がれるものである。よって、本発明の製造方法は、表面皮膜を除去するための超音波処理を行わなくても、鏡面仕上がりのチタン系金属製品が得られるというメリットも有する。
本発明における高電流密度電解工程とは、前述のように、研磨効果のある反応が急速に進行する電解条件(電流密度、電圧)において電解研磨を行う工程である。前記高電流密度電解工程における電流密度は、40〜200mA/cm2の範囲であり、好ましくは50〜100mA/cm2、特に好ましくは60〜80mA/cm2の範囲である。電流密度が200mA/cm2を超えると、直ちに研磨面に曇り面が生じることがある。また、研磨面の発熱により、電解液の温度が上昇したり、電解液に対流が起こり、陽極面近傍に生じる粘液層を破壊し、電解研磨の進行が妨げられるという問題がある。一方、電流密度が40mA/cm2未満では、研磨は可能であるが長時間を要する。電解研磨における電流密度は、印加する電圧を調整することにより所望の値に設定することができる。
本発明における低電流密度電解工程は、前述のように、研磨効果のある反応は穏やかにしか進行しないが、研磨面の皮膜の生成と剥離、発熱と放熱等が平衡し、時間が経っても均一な研磨を行うことができる電解条件(電流密度、電圧)において電解研磨を行う工程である。前記低電流密度電解工程における電流密度は、前記高電流密度電解工程における電流密度より低い電流密度であって、5〜40mA/cm2の範囲であり、好ましくは10〜30mA/cm2、特に好ましくは15〜25mA/cm2の範囲である。低電流密度電解工程での電流密度が40mA/cm2を超えると、前述のように、皮膜の上に更に皮膜を形成することになり、剥離困難な皮膜が形成され、研磨面を得ることができない。一方、低電流密度電解工程での電流密度が5mA/cm2未満では、研磨を行うことができない。
前記高電流密度電解工程では、短時間で鏡面を形成することができるが、過度に長時間行うと、研磨面に曇り等が発生してしまう。よって、本発明では、前記高電流密度電解工程を、0.5〜10分間行うことが好ましく、3〜5分間行うことがより好ましい。一方、前記低電圧電解工程は、長時間行っても研磨面に悪影響を与えることはないが、短時間で安定な鏡面を得るという観点から、例えば、3〜15分間、好ましくは3〜10分間行うことができる。
本発明の方法によれば、高電流密度電解工程と低電流密度電解工程を1回行うだけで、鏡面部を有する製品を得ることができる。表面粗さを低減するためには、これらの工程を2回以上繰りかえすことが好ましい。本発明では、高電流密度電解工程と低電流密度電解工程を、例えば、2回以上、好ましくは3回以上行うことができる。但し、これらの工程を繰り返すと、研磨により被研磨物の形状精度が低下することがある。よって、高電流密度電解工程と低電流密度電解工程の回数は、形状精度と表面粗さとのバランスを考慮し、適宜設定することが好ましい。前記工程の繰り返し回数の上限は、例えば7回とすることができる。
本発明においては、電解を休止することなく全工程を連続して行うこともできるが、高電流密度電解工程と低電流密度電解工程との間、および/または、次の高電流密度電解工程への移行前に、電解を一旦休止することもできる。高電流密度電解工程、低電流密度電解工程のいずれにおいても、前述のように、電圧を加えた直後(初期)は陽極面近傍の粘液層が薄いため、皮膜の生成が剥離と比べて優位に進行する。チタン系金属製品の電解研磨においては、皮膜が剥離した後に光沢面(鏡面)が得られることから、皮膜の生成も、表面粗さ低減に必要な反応と考えられる。つまり、電解初期の皮膜生成は、表面粗さ低減に効果があると考えられる。よって、皮膜の生成を剥離と比べて優位に進行させるために、電解を休止して電解液を攪拌したり、被研磨物に振動を与えるなどして、粘液層を電解液中に拡散させることにより、電解液を電圧を加える前の状態(初期状態)に戻すことによって、より表面粗さが低減された鏡面を得ることができる。また、電解を休止することは、高電流密度電解工程、低電流密度電解工程で生じた研磨面近傍の熱を放出する効果もあると考えられる。
本発明において、電解研磨を行う温度が過度に高いと、無水系電解液の組成が変化してしまう場合があり、また、研磨面に曇りが生じる場合もある。よって、電解液の組成変化防止および曇りの防止の観点から、電解研磨を行う温度は、比較的低い方が好ましく、例えば−10〜40℃、好ましくは、5〜20℃とすることができる。
本発明の製造方法は、電解工程後、チタン表面に形成された皮膜を除去するための工程を更に含むこともできる。但し、本発明の方法においてチタン表面に生成される皮膜は、特に振動を加えなくても電解中に剥離したり、電解停止後に軽く液を撹拌するだけで剥がれるものであるので、皮膜除去の工程は必須ではない。皮膜除去方法としては、液の撹拌、超音波処理等を挙げることができる。超音波処理を行う場合には、一般の超音波洗浄に用いられる超音波洗浄装置をそのまま用いることができる。使用する超音波は、例えば、振動数10〜100MHz、出力25〜300Wの超音波であることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。

電解研磨実験装置の構成を、図1に示す。
電源は、直流電源((株))エー・アンド・ディ、AD−8723、0〜30V)を用いた。電解槽には300mlのガラス製ビーカーを用い、電極(陰極)は純チタン板(厚さ0.2mm)、を円筒状に曲げ、ビーカーの壁面に沿わせるように配置した。そして、電解槽を超音波洗浄器(アズワン(株)、VC−1、超音波振動子:PZT電歪型振動子、出力:45W)の洗浄槽の中に入れた。
電解液として、以下に示す組成のアルコール系電解液を使用した。液温を15℃に調整した。
エチルアルコール 210ml
iso−プロピルアルコール 90ml
塩化アルミニウム 18g
塩化亜鉛 75g
[実施例1]
図2に示すような研磨試料を準備した。
上記試料を使用して、電流密度70mA/cm2(極間電圧25V)での電解研磨を3分間行い、次いで電流密度20mA/cm2(極間電圧7V)での電解研磨を所定時間行った。その際の試料表面の状態を、図3に示す。
図3に示すように、電流密度70mA/cm2での電解研磨を3分行うことにより光沢面が形成され、その後、電流密度20mA/cm2での電解研磨を行うことにより、全面均一な光沢面が形成された。しかも、この条件において電解中に研磨面に形成する皮膜は、特に振動を与えなくても電解中に剥離したり、電解を止めて軽く液を撹拌するだけで剥がれるものであった。
[実施例2]
実施例1と同様の条件で、電流密度70mA/cm2での電解研磨を3分間行い、次いで電流密度20mA/cm2での電解研磨を3分間行った後、電解を休止してステンレス棒による液撹拌を行い皮膜を除去する工程を1サイクルとして、これを、1サイクル、3サイクル、5サイクル行った。その結果、研磨前の試料表面の表面粗さRaは0.27μmであったのに対し、1サイクル後に得られた研磨面の表面粗さ(Ra)は0.16μm、3サイクル後は0.12μm、5サイクル後は0.08μmであり、サイクルを繰り返すことによって表面粗さが低減することが確認された。なお、表面粗さ(Ra)は、表面粗さ・輪郭形状測定機SV−C624((株)ミツトヨ)において、JIS B0601−1994に基づき算術平均粗さとして測定した。
[比較例1]
実施例1と同様の装置、電解液、および研磨試料を用いて、電流密度20mA/cm2での電解研磨のみを行った。但し、この方法では、研磨面に皮膜が形成された後、自然に剥離する部分と滞留する部分ができ、不均一に研磨が進行してしまうため、15分の電解研磨を行い、次いで電解を休止して2分間超音波振動を加える工程を1サイクルとした。結果を図4に示す。
図4に示すように、低電流密度のみによる電解研磨では、1サイクルでは端部に一部光沢が見られる程度であり、2サイクルでは中央部に白い部分が残り、3サイクル(51分)でほぼ全面が光沢面となった。3サイクル終了後の研磨面の表面粗さRaは0.17μmであった。
[比較例2]
実施例1と同様の装置、電解液、および研磨試料を用いて、電流密度70mA/cm2での電解研磨のみを行った。結果を図5に示す。電解研磨開始後3分までは比較例1と同様に端部から光沢面が広がっていったが、5分後には斑点状に白く曇る部分が現れ、10分後にはほぼ全面が白〜灰色の曇り面となった。また、この条件では、電解研磨開始後3分で白い曇り部分が生じたり、5分後にほぼ全面が白い曇り面になる場合もあった。
以上の結果から、本発明の方法によれば、チタン系金属製品の表面に、短時間で鏡面仕上げを行うことができ、更に、プロセスを繰り返すことで、表面粗さを低減できることがわかる。
本発明の方法によれば、表面が滑らかな鏡面仕上がりのチタン系金属製品を得ることができる。本発明の方法は、例えば、不純物が混入するおそれの少ないステント、人工歯根、歯列矯正ワイヤ、ガイドワイヤ、チタンの柑子などの医療器具や、メガネ、指輪、イヤリング、ネックレス、腕時計、ブローチなどの装身具、細胞培養装置部品、半導体製造装置部品等への応用が可能である。
実施例および比較例で使用した電解研磨装置の概略図である。 実施例および比較例で使用した研磨試料の概略図である。 実施例1の結果を示す。 比較例1の結果を示す。 比較例2の結果を示す。

Claims (7)

  1. 表面に鏡面部を有するチタン系金属製品の製造方法であって、前記チタン系金属製品を、無水系電解液に浸漬し、40〜200mA/cm2の範囲の電流密度で電解研磨し(以下、「高電流密度電解工程」という)、次いで、前記高電流密度電解工程での電流密度より低い電流密度であって、5〜40mA/cm2の範囲の電流密度で電解研磨すること(以下、「低電流密度電解工程」という)を含むことを特徴とする、前記製造方法。
  2. 前記高電流密度電解工程を、0.5〜10分間行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記低電流密度電解工程を、3〜15分間行う、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記チタン系金属が、純チタン、チタン合金またはチタン系形状記憶合金である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記無水系電解液が、炭素数1〜6のアルコールを1種または2種以上含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記無水系電解液が、エチルアルコール、iso−プロピルアルコール、無水塩化アルミニウムおよび無水塩化亜鉛を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記無水系電解液が、エチルアルコールおよび塩化リチウムを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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