JP4450693B2 - オボアルブミンに対する抗体およびその使用 - Google Patents

オボアルブミンに対する抗体およびその使用 Download PDF

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本発明は、オボアルブミンに対する抗体およびその使用に関し、特に食品中のオボアルブミンを検出するために優れたモノクローナル抗体を提供するものである。
卵は年々増加傾向にある食物アレルギーの原因食品の一つであり、牛乳と並んでアレルギー症状を誘発しやすいと言われている(非特許文献1)。平成13年4月からはアレルギー発症数と重篤度の高い5品目の一つとして、卵も特定原材料としての表示が義務付けられた(非特許文献2)。さらに平成14年11月には食品中の特定原材料の有無を検査する市販キット(スクリーニング検査と確認検査)が通知された(非特許文献3)。スクリーニング検査はそれぞれのタンパク質に特異的な抗体を用いたサンドイッチELISAで行われている(非特許文献4、5)。しかし、市販キットでは、偽陽性・偽陰性になる食品がリストアップされており、その中にはレトルト食品が偽陰性になることが報告されている(非特許文献3)。レトルト食品は嫌気性芽胞菌を死滅させるために中心温度120℃・4分間以上の高温・高圧で殺菌されているため、タンパク質の構造には凝集反応やペプチド結合の加水分解など様々な変化が生じている。また、レトルト殺菌に限らず、食品中のタンパク質では様々な加工工程の中で構造の変化や重合体形成が生じていると考えられる。食品からのタンパク質の抽出効率はタンパク質の検出精度に大きく影響しており、このようなタンパク質の構造変化が市販キットでのタンパク質の抽出を不十分にしていることにより、偽陰性の食品が存在していると思われる。特許文献1(特開2003-155297)には、未加熱だけでなくオートクレーブ加熱した卵タンパク質を免疫原として得られた抗体を使用していることや、タンパク質の抽出が不十分な場合には変性剤や還元剤を添加することで抽出効率を改善できることが記載されているが、実際にはレトルト殺菌のような過度の加熱をおこなった食品からの卵タンパク質の検出は依然として困難な状況である。市販キットで偽陰性となる食品であっても、原材料として卵白を使用していない製品にキャリーオーバーとして卵白が含まれている危険性や、同一工場内の卵白を使用している製品からのコンタミネーションの危険性が考えられる。そのため、現在市販キットで偽陰性を示す食品からの卵タンパク質検出は、食品メーカーにとっては重要事項であると言える。そのため、加工条件に関わらず様々な食品から高感度に卵タンパク質を検出する方法が望まれている。
特開2003−155297 小川 正,栄養とアレルギー,栄食誌,55(4),227-229 (2002) 厚生労働省通知医薬局食品保健部通知,アレルギー物質を含む食品に関する表示について,食企発第2号・食監発第46号(2001.3.21) 厚生労働省通知医薬局食品保健部長通知,アレルギー物質を含む食品の検査方法について,食発第1106001号(2002.11.6) 本庄 勉,村岡嗣朗,豆越慎一,境 雅寿,ELISA法による特定原材料の検出,Foods & Food Ingredients Journal of Japan,206,13-22 (2002). 高畑能久,森松文毅,特定原材料検査キット「FASTKITエライザ」の開発と応用,Foods & Food Ingredients Journal of Japan,206,23-32 (2002).
本発明は、様々な加工条件の食品より抽出したオボアルブミンと高い反応性を有する抗体、様々な加工条件の食品よりタンパク質を効率的に抽出する方法、その抗体を用いてタンパク質抽出溶液からオボアルブミンを高感度に検出する方法、および該抗体を備えるキットを提供することを目的とする。
本発明は、以下の項1〜13のアレルギー性タンパク質に対する抗体、様々な加工条件の食品よりタンパク質を効率的に抽出する方法、該抗体を使用する食品中のオボアルブミンの検出方法、該抗体を製造する方法および該抗体を備えるキットを提供する。
項1 受託番号がFERM P-20110またはFERM AP-20020であるハイブリドーマによって産生される、変性状態のオボアルブミンに対するモノクローナル抗体。
項2 変性および未変性状態のオボアルブミンの両方を認識する項1に記載のモノクローナル抗体。
項3 前記変性状態のオボアルブミンが変性剤および還元剤で処理されたものである、項1または2に記載の抗体。
項4 変性状態のオボアルブミンに対するモノクローナル抗体を産生する、受託番号FERM P-20110であるハイブリドーマ。
項5 変性状態のオボアルブミンに対するモノクローナル抗体を産生する、受託番号FERM AP-20020であるハイブリドーマ。
項6 タンパク質を含む可能性がある食品サンプルにタンパク質の変性剤および還元剤を作用させて該タンパク質を変性状態にして抽出する工程;残存する変性剤および還元剤の影響を排除する工程;該抽出タンパク質と、変性状態の該タンパク質を認識し得る抗体を反応させる工程を包含する、食品中のタンパク質の有無を確認する方法。
項7 アレルギー性タンパク質を含む可能性がある食品サンプルにタンパク質の変性剤および還元剤を作用させて該タンパク質を変性状態にして抽出する工程;残存する変性剤および還元剤の影響を排除する工程;該抽出タンパク質と、変性状態の該タンパク質の認識し得る抗体を反応させる工程を包含する、食品中のアレルギー性タンパク質の有無を確認する方法。
項8 アレルギー性タンパク質がオボアルブミンである、項7に記載の方法。
項9 変性状態のオボアルブミンを認識し得る抗体が、受託番号がFERM P-20110またはFERM AP-20020であるハイブリドーマによって産生される抗体である、項7または8に記載の方法。
項10 以下の工程を包含する、変性オボアルブミンに対する抗体の製造方法:
1)オボアルブミンで動物を免疫する工程;
2)免疫した動物から脾臓細胞を取り出す工程;
3)得られた脾臓細胞をミエローマ細胞と細胞融合させてハイブリドーマを作製する工程;
4)変性オボアルブミンと特異的に反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程;ならびに
5)ハイブリドーマの培養上清から抗体を精製する工程。
項11 前記抗体が、100℃を超える高圧滅菌処理後の変性オボアルブミンと100℃以下の熱処理後の変性オボアルブミンとを同程度に検出可能な抗体である項10に記載の方法。
項12 項1〜3のいずれかに記載の抗体、マイクロプレート、抽出溶液、緩衝液、シスチン溶液および停止液を備えることを特徴とする、食品中のオボアルブミンを検出するためのキット。
項13 抗体と反応させる前に、食品サンプル中のタンパク質を変性剤および還元剤で処理することを特徴とする、食品中のタンパク質を検出するための前処理方法。
本発明の抗体は、変性オボアルブミンを特異的に認識する抗体である。本発明の抗体はまた、様々な加工処理をした食品より抽出したオボアルブミンと高い反応性を有する。本発明の抗体は、好ましくは、未変性オボアルブミンおよび変性アルブミンを同程度に認識する。本発明の抗体のオボアルブミンとの反応性は、好ましくは、オボアルブミンの加熱処理温度に関わらず、未加熱のオボアルブミンと同程度である。
本発明の抗体は以下のようにして製造される。
本発明の抗体はオボアルブミンをマウスに免疫して得られたハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体である。オボアルブミンは、卵白タンパク質の主成分であり、卵白タンパク質の約54%を占める。鶏に限らずアヒルやウズラ等の鳥類の卵にもオボアルブミンは含まれるが、食物アレルギーの発症例から判断すると、免疫用のオボアルブミンとして用いるのは、鶏由来が最も好ましい。オボアルブミンでマウスに免疫した後、いくつかのハイブリドーマが得られる。その中で必要となる抗体は、変性状態のオボアルブミン(以下、変性オボアルブミン)に反応する抗体を産生するハイブリドーマである。変性オボアルブミンとは、変性処理を行うことで、本来の立体構造が破壊され、ジスルフィド結合が切断されている状態のオボアルブミンを言う。ここで言う変性処理とは、加熱処理に加えて、変性剤と還元剤を添加してタンパク質の本来の立体構造を破壊して、タンパク質を線状ポリペプチドの状態にするための処理を指す。これに用いる変性剤としては尿素、塩酸グアニジン及び界面活性剤などが挙げられるが、尿素が特に好ましい。また、還元剤としては、特に制限はないが、ジチオスレイトールが最も好ましい。さらに、変性工程を有効に進めるためには、変性剤および還元剤による化学的方法だけでなく、熱処理などの物理的処理を並行して行うと効果的にオボアルブミンの変性を達成することができる。
免疫に用いられる動物には、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ等があげられるが、マウスが特に好ましい。本発明の抗体を得るためには、オボアルブミンを免疫原としてハイブリドーマを作製した後、変性オボアルブミンに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択する必要がある。免疫の惹起は、通常1ng〜10mgの量の免疫原を10〜14日の日数を開けて1〜5回に分けた操作で行うことができる。十分な免疫後、抗体産生能を有する器官(脾臓やリンパ節)を動物から無菌的に摘出し、細胞融合時の親株とする。なお、摘出する器官としては、脾臓が最も好ましい。細胞融合のパートナーとしては、ミエローマ細胞が用いられる。ミエローマ細胞には、マウス由来、ラット由来、ヒト由来等があるが、マウス由来が好ましい。細胞融合には、ポリエチレングリコールを用いる方法、細胞電気融合法等が挙げられるが、ポリエチレングリコールを用いる方法が簡便で好ましい。細胞融合しなかった脾臓細胞やミエローマ細胞とハイブリドーマとの選択は、例えばHATサプリメント(ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン)を添加した血清培地で培養することで行うことができる。
変性オボアルブミンに対する抗体を産生するハイブリドーマの選択は、前述の培養上清を採取し、変性オボアルブミンを固相化したEIAプレートでの直接ELISAが好ましい。直接ELISAの結果、強い発色がみられたウエルを選択し、そのウエルの細胞をクローニングに供する。その強く発色した培養上清に対応するハイブリドーマを、変性オボアルブミンに反応する抗体を産生するハイブリドーマとして選択する。ハイブリドーマの中には未変性状態のオボアルブミンには反応するが、変性オボアルブミンには反応しない抗体を産生するハイブリドーマも存在するために、このような選択操作が目的とする(変性オボアルブミンに反応する抗体を産生する)ハイブリドーマを得るには必要不可欠である。クローニングとは、抗体産生ハイブリドーマを選別し単一化する作業であり、限界希釈法、フィブリンゲル法、セルソーターを用いる方法等があるが限界希釈法が好ましい。これにより、目的とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを獲得することができる。
上記方法により得られたハイブリドーマを培養することで、培養上清中にモノクローナル抗体を得ることができる。さらに、大量のモノクローナル抗体を得るには、in vivoおよびin vitroによる方法があるが、in vivoによる方法、特にマウス腹水で得る方法が好ましい。培養上清やマウス腹水からのモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム塩折法、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー等により行われるが、精製純度や簡便性を考慮するとアフィニティークロマトグラフィーが最も好ましい。さらに高純度のモノクローナル抗体を得るためには、アフィニティークロマトグラフィーの後に最終精製としてゲルろ過クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィー等を行うのが好ましい。精製したモノクローナル抗体をサンドイッチELISAに利用するためには、抗体の組み合わせを決定しなければならない。サンドイッチELISAは異なる2種類の抗体で抗原を挟み込むことで微量な抗原を測定できるが、それぞれの抗体は異なるエピトープに反応することが好ましい。組み合わせを決定するためには、精製したモノクローナル抗体の一部をEIAプレートに固相化し、一部をビオチン等で標識化することが好ましいが、抗体のクラスが異なれば標識化は必ずしも必要ではない。抗体を固相化したEIAプレートに変性オボアルブミンを段階希釈したものを添加し、標識化した、あるいはしていない抗体を添加して組み合わせを検討する。最終的に、少なくとも10ng/ml、好ましくは1ng/mlの変性オボアルブミンまで測定できる組み合わせを選択することが好ましい。
本発明の抗体作製方法によれば、あらゆるタンパク質に適用することが可能である。例えば、食品加工での使用頻度の高い畜肉、魚肉、乳、ダイズ、コムギ等のある適当なタンパク質を本発明の方法で変性処理した後に免疫することで、変性タンパク質に特異的な性質を持つモノクローナル抗体が得られる。さらに、モノクローナル抗体に限らず、抗血清より得られるポリクローナル抗体も同様の特徴を持つことができる。
一般的に食品からのタンパク質抽出には、水、リン酸緩衝生理食塩水、アルコールなどが用いられる。しかし食品中のタンパク質は様々な加工工程を経ることで変性するため、上記溶媒だけではタンパク質抽出が困難となる場合がある。食品からのタンパク質の抽出効率改善は、上記の溶媒に尿素、SDSなどの界面活性剤、塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤やメルカプトエタノール、ジチオスレイトールなどの還元剤を添加することで達成することができる。そのため、本発明の食品からのタンパク質抽出方法は、上述の変性剤と還元剤(好ましくは尿素とジチオスレイトール)を添加して加熱処理することにより行われる。この抽出処理により、加工条件が異なる食品中のオボアルブミンは抽出溶液の中で本発明の抗体が認識する状態(変性状態)になり、この抗体を用いたELISAやウェスタンブロット等の免疫学的手法により食品中のオボアルブミンを検出することができる。しかし、抗体はタンパク質であるため、抽出溶液中に変性剤や還元剤が残存していると抗体が変性し、その働きが阻害される危険性がある。そのため、タンパク質抽出後の溶液に還元剤の働きを抑制する物質を添加し、さらに適当な緩衝液で希釈することで変性剤の影響を小さくする必要がある。還元剤の働きを抑制する物質としては、例えばシスチンが挙げられ、さらに適当な濃度のシスチン溶液でタンパク質抽出後の溶液を希釈することで、変性剤と還元剤の影響はほとんどなくなる。
本発明のオボアルブミンを検出する方法は、本発明の抗体と食品からの抽出溶液を使用する。本発明の検出方法により、様々な加工条件の食品からオボアルブミンを検出することができる。本発明の食品中のオボアルブミンを検出する方法は、サンドイッチELISA、競合ELISA、ウェスタンブロット等の免疫学的手法が挙げられるが、好ましくはサンドイッチELISAを用いて行う。
本発明のキットは、本発明の抗体、マイクロプレート、抽出溶液、緩衝液、シスチン溶液および停止液を備えることを特徴とする。本発明のキットは、様々な加熱条件の食品中のオボアルブミンを検出するために使用され、優れた検出能力を示す。
本発明の抗体が適用される食品は、未加熱食品および加熱食品(ボイル加熱食品およびレトルト食品を含むがこれらに限定されない)である。本発明の抗体が適用される食品としては、プリン、カステラ、洋菓子、ケーキ、クッキーのような卵を主原料としている食品や畜肉ハム、畜肉ソーセージ、ベーコン、ハンバーグ、チキンから揚げ、チキンナゲットのような卵を副原料として用いる食品が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の検出方法により、市販のキットでは検出が困難なボイル加熱処理した魚肉ソーセージから、オボアルブミンを検出することができる。
本発明の検出方法は、市販のキットでは検出ができないレトルト殺菌処理した魚肉ソーセージからもオボアルブミンを検出することができる。
本発明のハイブリドーマFERM P-20110により産生される抗体は、競合ELISAにおいて、オートクレーブ処理を行ったオボアルブミンでも反応性が変化しなかったことから、様々な加熱履歴のある食品中のオボアルブミン検出に単独で用いることができる。
以下の実施例において、本発明の抗体および検出方法の有用性を明らかにすることを目的として、先ず、本発明の抗体と加熱処理したオボアルブミンとの反応性を調査するために、競合ELISAを行った。さらに、様々な濃度の卵タンパク質を添加し、異なる条件で加熱した魚肉ソーセージからの変性オボアルブミン検出をサンドイッチELISAで行った。
(1-1)変性オボアルブミン溶液の作製
鶏卵白オボアルブミン(以下、OVA)100 mgを精秤し、0.05M Tris緩衝液 (pH8.6) 0.4mlを添加した。次に約90℃で保持していた抽出溶液[0.125M Tris緩衝液(pH8.6)、12.8M尿素、20mM(±)ジチオスレイトール(以下、DTT)]を添加して約90℃で60分間振とうしながら保持した。60分後、シスチン溶液(7mMシスチン、60mM NaCl、pH9.0)を添加し、緩やかに攪拌しながら室温に戻した後、シスチン溶液で20mlにメスアップした。最後に、濾過した最初の10mlを終濃度5mg/mlの変性オボアルブミン溶液(以下、変性OVA)とした。
(1-2)モノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体の作製は常法にしたがった(Kohler, G. and Milstein, C., Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity. Nature, 256, 495-497 (1975))。すなわち、OVA溶液に等量のフロイント完全アジュバントを混和してエマルジョンを作製し、マウス(BALB/c,雌,6週齢)あたりOVAが50μgとなるように腹腔内投与した。2週間後に、OVA溶液に等量のフロイント不完全アジュバントを混和したエマルジョンをマウスあたりOVAが50μgとなるように腹腔内投与した。二次免疫から10日目に抗体力価を測定し、十分な抗体力価が得られたマウスについては、二次免疫から2週間後にマウスあたりOVAが50μgとなるように尾静脈に投与し,最終免疫を行った。最終免疫から2日後に脾臓を無菌的に摘出してミエローマ細胞(P3X63 Ag8U.1、大日本製薬製)との細胞融合に供した。細胞融合後、ハイブリドーマをHAT培地で選択した後、10μg/mlの変性OVAを固相化したEIAプレート(Corning社製)を用いて培養上清の抗体力価測定を直接ELISAで行い、抗体産生の有無を調べた。直接ELISAの結果、強い発色がみられたウエルを選択し、ハイブリドーマのクローニングを行った。以上の操作により、変性OVAに反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをいくつか得た。
(1-3)モノクローナル抗体の精製とサンドイッチELISAに使用する抗体の組み合わせの選択
サンドイッチELISAに使用する組み合わせを決定するために、先ずハイブリドーマの培養上清から抗体を精製した。精製した抗体の一部をEIAプレートに固相化し、一部をビオチン標識して、段階希釈した変性OVAとを反応させて10ng/ml以下まで標準曲線を得られる組み合わせを検討した。良好な標準曲線が得られた抗体の組み合わせを決定後、これらの抗体を産生するハイブリドーマを「独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター」に寄託し、それぞれ受託番号FERM P-20110およびFERM AP-20020として平成16年7月2日および平成16年4月23日に受託された(以下、モノクローナル抗体の名称をP-20110およびAP-20020とする)。
大量のP-20110およびAP-20020を得るために、予めプリスタンで前処理したマウス(BALB/c,雌,6週齢)の腹腔内に、ハイブリドーマ(1.0×107個/匹)をそれぞれ投与し、腹水を採取することで大量のP-20110およびAP-20020を得た。
(2)競合ELISA
様々な食品の加熱条件を想定して、いくつかの加熱条件で処理したOVAとP-20110或いはAP-20020との反応性を、競合ELISAを用いて調査した。すなわち、OVAを蒸留水で5mg/mlに調製し、その後、OVA加熱条件として設けた80℃・30分間(80℃区)、90℃・30分間(90℃区)、105℃・30分間(105℃区)、120℃・30分間(120℃区)および130℃・30分間(130℃区)の5区でそれぞれ加熱処理を行った。加熱処理後、未加熱区を合わせた6区からそれぞれ500μlを採取し、そこへ0.05M Tris緩衝液 (pH8.6) 2mlを添加し、約90℃で保持していた(1-1)に記載した抽出溶液を添加して約90℃で60分間振とうしながら保持した。その後、(1-1)に記載したシスチン溶液を添加し、緩やかに攪拌しながら室温に戻した後、シスチン溶液で100mlに希釈した。濾過した後、それぞれの処理区における終濃度25μgOVA/mlの測定溶液を得た。
あらかじめ、それぞれの処理区における測定溶液と適度に希釈したP-20110或いはAP-20020を反応させた後、変性OVAを10μg/ml で固相化したEIAプレートに上述の反応溶液を100μlずつ移し、60分間反応させた。洗浄後、2000倍希釈した二次抗体(HRP標識ヤギ抗マウスIgG,VECTOR社製)を100μl添加し、室温で1時間静置した。未反応の二次抗体を除去し、TMB酵素基質(Kirkagaard & Perry Laboratories, Inc.社製)を100μl加えた。室温で10分間反応させた後、1M硫酸を100μl加えて酵素反応を停止させ、450nmの吸光度を測定した。その結果を図1に示す。
AP-20020とOVAとの反応では80℃区と90℃区は未加熱区と同様の反応曲線が得られたが、105℃区、120℃区および130℃区では、高濃度のOVAに対してもB/Bo値は高い値を維持した(図1a)。一方、P-20110とOVAとの反応では加熱処理条件に関わらず同様の反応曲線が得られた(図1b)。このことから、P-20110は強い加熱を経たOVAでも未加熱と同程度反応することがわかり、P-20110単独でも食品中のOVA検出に利用できる可能性が考えられた。
(3-1)卵白添加魚肉ソーセージの作製
表1に魚肉ソーセージの配合を示した。冷凍スケソウすり身は、予め卵白アルブミンキット(森永生科学研究所製)を用いて卵タンパク質が陰性であることを確認したものを使用した。その他の原材料は全て新規に入手し、開封時のコンタミネーションが全くないようにした。
Figure 0004450693
卵白製剤濃度と試験区を表2に示した。添加回収用の卵白製剤は、Egg White Spray Dried (全タンパク質濃度82.2%:ICN Biomedicals, Inc製)を用いた。卵白製剤濃度が0ppm,10ppm,100ppm,10000ppmになるように、練り肉のカッティング時に添加した。練り肉作製後、塩化ビニリデンケーシング(折径40mm)にそれぞれ100gずつ充填した。その後、加熱条件として、ボイル加熱条件80℃・63分間(中心温度80℃・45分間)、ボイル加熱条件90℃・50分間、レトルト処理条件120℃・12分間、レトルト処理条件120℃・30分間で処理した。各加熱条件で処理した後は氷水で10分間冷却し、その後-18℃で保管した。なお、未加熱区については、ケーシングに充填後すぐに-18℃で保管した。
Figure 0004450693
(3-2)測定溶液の作製
各処理区の魚肉ソーセージをフードカッターで細かく破砕した後、500mgを精秤し、そこへ0.05M Tris緩衝液(pH8.6) 2mlを添加し、約90℃で保持していた(1-1)に記載した抽出溶液を添加して約90℃で60分間振とうしながら保持した。その後、(1-1)に記載したシスチン溶液を添加し、緩やかに攪拌しながら室温に戻した後、シスチン溶液で100mlに希釈した。濾過した後、それぞれの処理区における終濃度5mg/mlの測定溶液を得た。
(3-3)サンドイッチELISAを用いたスクリーニング検査
固相化抗体としてAP-20020を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で5μg/mlに調製して、EIAプレートに100μlずつ分注後、4℃で一晩静置し、プレートに吸着させた。その後、ブロッキング溶液(Blocking One,ナカライテスク製)を260μlずつ加え、37℃で90分間静置した。洗浄後、各ウエルに測定溶液を100μl加え、室温で1時間静置した。洗浄後、一次抗体として適度に希釈したP-20110を100μl加えて、室温で1時間静置し、固相化抗体と反応した変性OVAに反応させた。洗浄後、10,000倍希釈した二次抗体(HRP標識ヤギ抗マウスIgM,VECTOR社製)を100μl添加し、室温で1時間静置した。未反応の二次抗体を除去し、TMB酵素基質(Kirkagaard & Perry Laboratories, Inc.社製)を100μl加えた。室温で10分間反応させた後、1M硫酸を100μl加えて酵素反応を停止させ、吸光度を測定した。
その結果、卵白製剤を1.0%添加した魚肉ソーセージでは、加熱条件にかかわらず全て10ppm以上のOVAが検出された(表3)。卵白製剤を100ppm添加した魚肉ソーセージでは、120℃・30分間処理区以外は10ppm以上となり、また、卵白製剤を10ppm添加した魚肉ソーセージでは、未加熱区で2.5ppm、80℃・45分間処理区で3.9ppm、90℃・50分間処理区で3.6ppmのOVAが検出されたが、2つのレトルト処理区では1.0ppm未満となった。
Figure 0004450693
(3-4)サンドイッチELISAを用いた卵白タンパク質回収率
測定溶液中の卵白タンパク質濃度を定量するために、測定溶液を適度に希釈したものをAP-20020固相化プレートに100μlずつ加えた後、室温で1時間静置した。以後の操作は上述と同様とした。本方法では標準物質としてOVAを使用したため、得られたOVA濃度から卵白タンパク質濃度に換算し、さらに、卵白製剤中の全タンパク質の割合(82.2%)から本方法における卵白タンパク質の回収率を求めた。
その結果、90℃・50分間の加熱処理を行っても高い回収率を示したが、レトルト処理を行うことで回収率は大きく低下した(表4)。卵白製剤を10ppm添加した魚肉ソーセージでは、未加熱区で56.3%、80℃・45分間処理区で87.9%、90℃・50分間処理区で81.1%の卵白タンパク質が回収された。また、卵白製剤を100ppm添加した魚肉ソーセージでは、未加熱区で98.0%、80℃・45分間処理区で91.5%、90℃・50分間処理区で101.2%の回収率を示したが、120℃・12分間処理区での回収率は22.5%となった。卵白製剤を1.0%添加した魚肉ソーセージでは、未加熱区で102.1%、80℃・45分間処理区で118.2%、90℃・50分間処理区で154.8%となったが、120℃・12分間処理区での回収率は27.9%となり、さらに120℃・30分間処理区では2.6%となった。
以上のように、レトルト殺菌処理によりオボアルブミンの回収率は未加熱区と比較すると約1/50にまで低下した。しかし、ある程度のオボアルブミンが食品中に存在すれば、市販キットでは困難であるレトルト殺菌処理後の食品からでも、本発明の抗体を用いたサンドイッチELISAで検査することで、オボアルブミンを検出することが可能になった。
Figure 0004450693
競合ELISAを用いた各加熱条件でのオボアルブミン溶液と抗OVA抗体との反応性。a)抗体AP-20020とオボアルブミンとの反応;b) 抗体P-20110とオボアルブミンとの反応

Claims (4)

  1. 受託番号がFERM P-20110であるハイブリドーマによって産生される、オボアルブミンを認識するモノクローナル抗体。
  2. ボアルブミンを認識するモノクローナル抗体を産生する、受託番号FERM P-20110であるハイブリドーマ。
  3. オボアルブミンを含む可能性がある食品サンプルにタンパク質の変性剤および還元剤を作用させて該タンパク質を変性状態にして抽出する工程;残存する変性剤および還元剤の影響を排除する工程;該抽出タンパク質と、請求項1に記載の抗体を反応させる工程を包含する、食品中のアレルギー性タンパク質の有無を確認する方法。
  4. 請求項1に記載の抗体、マイクロプレート、抽出溶液、緩衝液、シスチン溶液および停止液を備えることを特徴とする、食品中のオボアルブミンを検出するためのキット。
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