JP4447853B2 - バター状物質の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なバター状物質及びその製造方法に関する。
更に詳しくは、複雑な製造工程を必要とせずに容易に作ることができ、しかも30℃以下での保存が可能であり、更に低カロリーで、優れた生理機能性を有する新規なバター状物質及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、バターは食卓用油脂としてパン等に塗布したり、調理用油脂として菓子の材料や各種料理に用いられている。バターは牛乳を原料として、下記のような製造工程を経て製造される。
【0003】
即ち、
▲1▼ 牛乳を遠心分離して、比重の小さい脂肪分をクリームとして分離する。
▲2▼ クリームの脂肪分を調整し、殺菌する。
▲3▼ 殺菌後、冷却して保持する(エージング)。
▲4▼ 加温後、チャーニングにして、バター粒子を生成する。
▲5▼ バター粒子を冷水で洗浄し、練圧してバター塊をつくる(ワーキング)。
▲6▼ ワーキング後、バターを充填・包装し、冷蔵する。
【0004】
このように、バターは複雑な製造工程を経て製造されており、製造設備も大掛かりである。
【0005】
また製品後は、保存時や流通過程等で-15℃に冷却する必要があり、常温保存することはできない。更に、バターの脂肪含有量は80.0%以上と高カロリーであるため、健康を気遣うものにとっては敬遠されがちな食品である。
【0006】
そこで本発明者らは、上記した課題を解決することができる新規なバター状物質を得るべく、鋭意研究開発に努めた。その結果、驚くべきことに、フラクトオリゴ糖と、水と、ジアシルグリセロールを主成分とする食用油とを混合して撹拌することにより、油分が乳化してバター状になる新規な物性変化を見い出した。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0007】
(本発明の目的)
本発明の目的は、複雑な製造工程を必要とせずに容易に作ることができ、しかも30℃以下での保存が可能であり、更に低カロリーで、優れた生理機能性を有する新規なバター状物質及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
本発明は、
フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類と、水と、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂とを、30℃以下で混合・撹拌するバター状物質の製造方法であって、
フラクトオリゴ糖は、
シュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1、2結合で1〜9分子結合した構造のフラクトオリゴ糖、
シュクロースのグルコースにフラクトースがβ−2、6結合で1分子結合した構造のネオケストース(6G-β-fructofranosyl-Sucrose)、
シュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1、2結合で1〜9分子結合した構造のフラクトオリゴ糖のグルコースに、更にフラクトースがβ−2、6結合で1分子結合したフラクトオリゴ糖、
の少なくとも一種であり、
ジアシルグリセロールを主成分とする油脂は、大豆油を加工して得た植物加工油であり、 フラクトオリゴ糖を含有する糖類中のフラクトオリゴ糖の含有量が5重量%以上であり、
フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類と、水と、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂の合計100重量部において、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂を5〜15重量%含有するものであり、
上記混合・撹拌は、フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類が水に溶けている状態の、Brix65以上の糖液に、必要な量のジアシルグリセロールを主成分とする油脂を所要時間ごとに分けて加えるのではなく、一度に加えて行うようにしたことを特徴とする、
30℃以下で保存することができるバター状物質の製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類と、水と、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂の三成分を、30℃以下(常温)で混合・撹拌することにより、その混合物をバター状にすることができる。
つまり、既存のバターとは相違して、複雑な製造工程を必要とせず、30℃以下で容易にバター状物質を得ることができる。
【0019】
三成分を混合・撹拌する温度は30℃以下であり、例えば40〜50℃の高温になるとバター状にならない傾向があるため、好ましくない。
【0020】
原料の撹拌には、例えば撹拌機を使用することができる。その撹拌速度は500〜1000rpmで、撹拌時間は3〜60分である。
【0021】
上記した三成分のうち、使用するフラクトオリゴ糖としては、転移酵素であるフラクトシルトランスフェラーゼ(β-fructo-franosidase)をシュクロース(蔗糖)に作用させて得られるフラクトオリゴ糖を用いることができるし、植物などから抽出したフラクトオリゴ糖を用いることもできる。
【0022】
フラクトオリゴ糖としては、シュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1,2結合(つまり、イヌリン型に結合)で1〜9分子結合した構造のフラクトオリゴ糖を挙げることができる。
具体的には、例えば1−ケストース、ニストース、1−フラクトシルニストース等である。これらのフラクトオリゴ糖の構造式を下記の化1に示す。
【0023】
【化1】
【0024】
その他、シュクロースのグルコースにフラクトースがβ−2,6結合で1分子結合した構造のネオケストース(6G-β-fructofranosyl-Sucrose)を挙げることができる。この構造式を下記の化2に示す。
【0025】
【化2】
【0026】
また、シュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1,2結合で1〜9分子結合した構造のフラクトオリゴ糖のグルコースに、更にフラクトースがβ−2,6結合で1分子結合したフラクトオリゴ糖等を挙げることができる。これらのフラクトオリゴ糖の構造式を下記の化3に示す。
【0027】
【化3】
【0028】
なお、上記したフラクトオリゴ糖は、それらを単独でまたは混合して使用することができる。
【0029】
フラクトオリゴ糖を含む糖類を用いた場合、フラクトオリゴ糖以外の糖類については特に限定しない。例えばシュクロース、グルコース、フラクトース、マルトース、トレハロース、パラチノース、ラクトース、水飴等、あるいはそれらの混合物を挙げることができる。
【0030】
ジアシルグリセロールを主成分とする油脂としては、一般の食用油を用いることができるが、通常の食用油(大豆油や菜種油等)にはジアシルグリセロールが数%、高くて9.0%前後しか含まれていないため、バター状にはならない。このため、ジアシルグリセロール含有量が高くなるように、天然の植物油を改質した食用油を用いることが好ましい。その改質した食用油としては、例えば花王株式会社の商標名「エコナ」を用いることができる。
【0031】
ジアシルグリセロールとしては、1,3−ジアシル−Sn−グリセロール、1,2−ジアシル−Sn−グリセロール、2,3−ジアシル−Sn−グリセロールを挙げることができる。
【0032】
1,3−ジアシル−Sn−グリセロールの化学式を下記化4に、1,2−ジアシル−Sn−グリセロールを下記化5に、2,3−ジアシル−Sn−グリセロールを下記化6に示す。
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
使用する水としては、通常の飲料水の他、各種物理・化学的に処理したものを用いることができる。
【0037】
混合・撹拌工程において、フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類が水に溶けている状態の糖液に、必要な量のジアシルグリセロールを主成分とする油脂を一度に加えて撹拌することが好ましい。ジアシルグリセロールを主成分とする油脂を所要時間ごとに分けて加えると、バター状にならない傾向があるので好ましくない。
【0038】
上記したように、この三成分(フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類、水、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂)を混合・撹拌することにより、その物性が極めて容易にバター状に変化する。
【0039】
この理由は定かでないが、例えば以下の二つの物理・化学的作用が考えられる。
▲1▼ 二成分間(ジアシルグリセロールとフラクトオリゴ糖と)の分子構造上の特異反応が考えられる。
▲2▼ 水に対するフラクトオリゴ糖の特異性〜表面不活性(表面張力を増加させる作用)が他の糖類よりも強いことが考えられる。
【0040】
以下、詳しく説明する。
▲1▼ 二成分間の分子構造上の特異反応
フラクトオリゴ糖は、例えば上記した化1に示すように、シュクロースのフラクトーズに、フラクトーズが1〜9個結合した構造を有するオリゴ糖である。
【0041】
これに対し、ジアシルグリセロールは、例えば上記した化4、化5、化6に示すように、グリセリンに脂肪酸が2個エステル結合した脂肪である。
【0042】
上記したフラクトオリゴ糖とジアシルグリセロールを所要量の水の存在下で混合・撹拌すると、フラクトオリゴ糖とジアシルグリセロールの複合体が形成する。この複合体は親水性と疎水性の両作用を持つようになり、複合体の周りに一定水量の水を固定化するためにバター状になると推定される。
【0043】
▲2▼ 水に対するフラクトオリゴ糖の特異性
フラクトオリゴ糖は他の糖類よりも、表面不活性(即ち、表面張力を増加させる作用)が強い。
例えばフラクトオリゴ糖の50.0重量%水溶液に、5.0%(W/W)の食用油を加えて混合撹拌した。これを静置後、その糖溶液を一定量分取し、蒸留水に対して50倍希釈して光電比色計(波長720nm)で乳濁度を測定した。また対照として、シュクロースを同様に処理したものの乳濁度を測定した。両者の乳濁率を比較すると、フラクトオリゴ糖の乳化力はシュクロースの約2倍であった。
【0044】
一般に気相に接する水の表面張力は、20℃で73.0ダイン/cm(730×10-5N)である。シュクロースの水溶液では、シュクロースの濃度増加と共に、その表面張力は増加する(表1参照)。
【0045】
【表1】
【0046】
このように考えると、フラクトオリゴ糖とジアシルグリセロールの複合体に固定化されていない水、即ち、遊離水が重要と推定できる。
【0047】
推定される遊離水と複合体とバター状になる物性との関係を示すグラフを図1に示す。
図1では、フラクトオリゴ糖を含む糖類及び水に対する油脂の添加量を10重量%と一定にし、三成分(フラクトオリゴ糖を含む糖類、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂、水)中の水分含有量を変化させたときの、得られた混合物の物性の状態を示している。油脂中に含まれるジアシルグリセロールは80.0重量%である。
【0048】
混合・撹拌工程には、自転・公転する二本の撹拌棒を下向きに取り付けた撹拌機を用いた。そして、500mLのビーカーにフラクトオリゴ糖を含む糖液と、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂を入れ、撹拌機でそれらを混合・撹拌した。撹拌速度は1000rpm、室温30℃、撹拌時間は3分である。
【0049】
フラクトオリゴ糖を含む糖液としては、市販のフラクトオリゴ糖シロップ(商品名、日本オリゴ株式会社製)を用い、油脂としては大豆油を加工して得た市販の植物加工油(商標名「エコナ」、花王株式会社製)を用いた。
【0050】
なお、図1のとおり、横軸は三成分中の水分含有量(重量%)、縦軸はフラクトオリゴ糖とジアシルグリセロールの複合体と水分との重量比である。複合体の重量は、ジアシルグリセロールと等量のフラクトオリゴ糖が複合体を形成するものと仮定した。
【0051】
即ち、例えばフラクトオリゴ糖を含む糖液が例えばBrix72.0(水分28.0重量%)である場合、三成分中の水分含有量及び複合体と水分との重量比は、以下のようにして求めた。
・三成分中の水分含有量(重量%)=水分28g/(糖類100g+油脂10g)×100=25.5
・複合体の重量(g)/水分(g)=(油脂10g×0.8×2)/水分28g=0.57
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
500mLのビーカーに、下記に示す原料(フラクトオリゴ糖を含む糖液と食用油)を入れ、撹拌機を用いてそれらを混合・撹拌した。撹拌機としては、自転・公転する二本の撹拌棒を下向きに取り付けたものを用いた。撹拌速度は1000rpm、室温30℃±2、撹拌時間は3分である。
【0054】
(原料)
上記した原料のうち、フラクトオリゴ糖を含む糖液としては、市販のフラクトオリゴ糖シロップ(商品名、日本オリゴ株式会社製)を用いた。この糖液はpH5.4、水分28.0重量%、Brix72.0であり、糖組成は下記表2のとおりである。即ち、フラクトオリゴ糖シロップは、55.0重量%のフラクトオリゴ糖を含有している。
【0055】
【表2】
【0056】
他方、食用油としては、下記の表3に示すものをそれぞれ別々に用いた。表2に、各食用油に含まれるジアシルグリセロールの量を併せて示す。なお、表2中の「エコナ油」とは、大豆油を加工して得た市販の植物加工油(商標名「エコナ」、花王株式会社製)を示している。
【0057】
【表3】
【0058】
(原料の混合比)
フラクトオリゴ糖を含む糖液と食用油の混合比を下記表4に示す。即ち、フラクトオリゴ糖を含む糖液と食用油を合わせた全体重量に対し、食用油がそれぞれ5.0、10.0、15.0、20.0(重量%)になるように混合した。
【0059】
【表4】
【0060】
上記のようにして得られた各混合物の物性を確認した。その結果を表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
表5の結果から明らかなとおり、ジアシルグリセロールを主成分とするエコナ油を5.0〜15.0重量%用いた場合に限り、バター状のものが得られた。
【0063】
[比較例1]
フラクトオリゴ糖を含む糖液の代わりに、シュクロースで作った糖液(水分28.0%、Brix72.0に調整)を用い、それ以外は実施例1と同様に、糖液と食用油を混合・撹拌した。その結果、どの食用油を用いた場合でも(つまり、エコナ油を用いた場合でも)、更に配合比を変えた場合であっても、バター状にはならなかった。
【0064】
[実施例2]
実施例1で使用した同じフラクトオリゴ糖を含む糖液(フラクトオリゴ糖シロップ)を用い、そのBrix(糖度)を60、72、75、80と段階的に変えた。
【0065】
他方、食用油は、実施例1でバター状にすることができたエコナ油を用いた。フラクトオリゴ糖を含む糖液と食用油の混合比は、実施例1と同様、その糖液と食用油を合わせた全体重量に対し、食用油がそれぞれ5.0、10.0、15.0、20.0(重量%)になるように調整した。表6にその結果を示す。
【0066】
【表6】
【0067】
表6の結果から明らかなとおり、Brixが65以上であればバター状になることが分かる。
【0068】
[比較例2]
フラクトオリゴ糖を含む糖液の代わりに、シュクロースで作った糖液(水分28.0%、Brix72.0に調整)を用いた以外は、実施例2と同様にして混合・撹拌した。その結果を表7に示す。
【0069】
【表7】
【0070】
即ち、Brix75(水分25.0重量%)以下では、食用油の割合を変えてもすべてバター状にならずに、油分が表面に分離した。これに対し、Brix80(水分20.0重量%)では食用油の割合が5.0〜10.0重量%の場合に一旦バター状になったが、24時間静置(室温30℃)しておくと、全体にシュクロースの結晶が析出して結果的にバター状とはならなかった。
【0071】
[実施例3]
糖液に含まれるフラクトオリゴ糖の量を変えて、実施例1と同様に撹拌・混合を行った。即ち、糖類はシュクロースとフラクトオリゴ糖(具体的には1−ケストース)の二種類を用いた。フラクトオリゴ糖の配合割合は、糖類全体重量に対して0、5.0、15.0、20.0重量%と変化させた。なお、糖液は水分28.0重量%、Brix72.0に調整した。
【0072】
他方、食用油としては、実施例1でバター状にすることができたエコナ油を用い、糖液と食用油を合わせた全体重量に対し10重量%とした。表8に混合・撹拌後の結果を示す。
【0073】
【表8】
【0074】
表8の結果から明らかなとおり、フラクトオリゴ糖の配合割合が5.0重量%以上であれば、バター状になることが分かる。
【0075】
[比較例3]
フラクトオリゴ糖の代わりに、下記表9に示す各種糖類を用いた以外は、実施例3と同様にして混合・撹拌した。なお、各糖液はすべて水分28.0重量%、Brix72.0に調整した。
【0076】
【表9】
【0077】
表9の結果から明らかなとおり、いずれの場合でもバター状にはならなかった。
【0078】
ただし、水飴(DE045)を用い、Brixを80.0(水分20重量%)にした場合、バター状になった。この水飴の糖組成は、単糖(グルコース)16.9%、二糖(マルトース)13.2%、三糖11.2%、四糖9.7%、五糖8.3%、六糖6.7%、七糖5.7%、その他(八糖以上)28.3%であり、グルコースが三箇所以上結合したグルコ・オリゴ糖がバター状の基因になっていると推察される。
【0079】
[実施例4]
フラクトオリゴ糖を含む糖液の代わりに、1−ケストースだけを糖類として用いた糖液(水分28.0重量%、Brix72.0)を用い、実施例1及び実施例2と同様にして撹拌・混合を行った。その結果、フラクトオリゴ糖を含む糖液と同じ結果が得られた。
【0080】
なお、使用した1−ケストースは、市販のフラクトオリゴ糖シロップ(商品名、日本オリゴ株式会社製)をカラムクロマトグラフィーにより分離したもの(純度98.0%)を用いた。
【0081】
以上、本実施例で明示したように、ジアシルグリセロールを主成分とする食用油が、特定の糖類、即ち、フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類糖液と、所要量の水の存在下で混合・撹拌されると、瞬時(撹拌機の撹拌速度は1000rpm、撹拌時間3分)に三成分がバター状の物質になる。
【0082】
また既存のバターに比較すると、本実施例のバター状物質は油分の含有量が1/10以下と低カロリーである。更にこのバター状物質は、フラクトオリゴ糖を有しているので、大腸内有用細菌の増殖促進作用、ミネラルの吸収促進、腸管内の免疫等の優れた生理機能性を有している。
【0083】
また更に、常温でバター状の性状(物性)は変わらない。このことは、低温で保存する必要がある既存のバターと相違して、取扱いが便利であり、食品加工が容易に行えると優れた利点を有している。
【0084】
なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。
【0085】
【発明の効果】
(a)本発明によれば、フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類と、水と、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂とを、30℃以下で混合・撹拌することにより、複雑な製造工程を必要とせずに容易にバター状物質を作ることができる。このバター状物質は、既存のバターと相違して、30℃以下で保存することができる。また、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂を使用しているため、既存のバターと比べて低カロリーである。更にこのバター状物質は、フラクトオリゴ糖を有しているので、大腸内有用細菌の増殖促進作用、ミネラルの吸収促進、腸管内の免疫等の優れた生理機能性を有している。
【0086】
(b)上記したような優れた効果を有するバター状物質は、食品加工・製菓企業等の親近な食品素材として、また家庭での新規な食品素材として広く使用することができる。また、新しい乳化技術への道を開くと同時に、油と糖類の特異的親和性の解明、油の構造特性を利用した糖類の分離技術の開発につながると考えられる。
【0087】
(c)また、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂を使用しているため、食品としての消化吸収面からみると、体内における油分の分解・吸収を遅らせることが可能であると推定される。更に、フラクトオリゴ糖の大腸への到達率が高くなることも推定できるために、人の健康に有用な食品新素材を提供することが可能である。
【0088】
【図面の簡単な説明】
【図1】 三成分中の水分含有量を変化させたときの、得られた混合物の物性の状態を示すグラフ。
Claims (1)
- フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類と、水と、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂とを、30℃以下で混合・撹拌するバター状物質の製造方法であって、
フラクトオリゴ糖は、
シュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1、2結合で1〜9分子結合した構造のフラクトオリゴ糖、
シュクロースのグルコースにフラクトースがβ−2、6結合で1分子結合した構造のネオケストース(6G-β-fructofranosyl-Sucrose)、
シュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1、2結合で1〜9分子結合した構造のフラクトオリゴ糖のグルコースに、更にフラクトースがβ−2、6結合で1分子結合したフラクトオリゴ糖、
の少なくとも一種であり、
ジアシルグリセロールを主成分とする油脂は、大豆油を加工して得た植物加工油であり、
フラクトオリゴ糖を含有する糖類中のフラクトオリゴ糖の含有量が5重量%以上であり、
フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類と、水と、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂の合計100重量部において、ジアシルグリセロールを主成分とする油脂を5〜15重量%含有するものであり、
上記混合・撹拌は、フラクトオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖を含む糖類が水に溶けている状態の、Brix65以上の糖液に、必要な量のジアシルグリセロールを主成分とする油脂を所要時間ごとに分けて加えるのではなく、一度に加えて行うようにしたことを特徴とする、
30℃以下で保存することができるバター状物質の製造方法。
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