JP4447077B2 - ガスタービンエンジン用燃焼装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスタービンエンジンのための燃焼装置に関し、特に、各燃焼チャンバーが点火目的のためにクロスファイアー(交差点火)チューブによって相互に接続されている燃焼装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的な工業用ガスタービンエンジンにおいては、多数の燃焼チャンバー(以下、「燃焼器」とも称する)その中で燃焼させるガス状又は液状燃料のためのオキシダントとして圧縮機段から加圧空気流を受け取るようにエンジンの周りに並列に配列されている。例えば、エンジンから所定の半径方向の間隔を置いてエンジンの中心線の周りに円周方向に等間隔に6基〜8基の燃焼器が配置される。エンジンの始動時に燃焼を開始させるための点火器を各燃焼器毎に設ける必要性を回避するために、各燃焼器をクロスファイアーチューブと称されるチューブで相互に接続することが一般的になってきている。クロスファイアーチューブは、点火された1つの燃焼器から他の燃焼器へ順次に点火用火炎を通すようになされている。しかしながら、このタイプの構成に随伴する1つの問題は、エンジン始動後の平常運転中、クロスファイアーチューブ又は燃焼器が高温ガスの流れによって損傷を受けるという問題である。
【0003】
この問題を軽減する1つの方法が、本出願人のヨーロッパ特許EP−0 503 018に開示されている。同特許に開示された構成では、空気は、クロスファイアーチューブの、燃焼器への接続点に近接した部位の内表面を被って流れるように拘束されるような態様でクロスファイアーチューブに導入され、それによってクロスファイアーチューブを、その交差点火機能を阻害することなく、冷却することができ、従ってその有効寿命を延長する。
【0004】
この構成は、従来のクロスファイアーチューブ構成に対する相当な改良であることが認められたが、実際の使用においては、燃焼器の、クロスファイアーチューブが突入している部位の近傍の壁を過熱させるおそれがあるという問題が残っていることが判明した。
【0005】
US−A−5 001 896は、各燃焼器を相互に接続するためのクロスファイアーチューブ組立体を開示している。この構成では、二重壁クロスファイアーチューブが用いられ、二重壁の外側壁に内外両壁間の空間に冷却空気を導入するための多数の小孔が形成されており、内側壁にも、若干の空気をクロスファイアーチューブ内のガス流内へ逃出させるための複数の孔が形成されている。クロスファイアーチューブ(以下、「相互接続チューブ」又は単に「チューブ」とも称する)の外側壁は、燃焼器の壁を貫通して燃焼器内へ突出した環状フランジに嵌入しており、クロスファイアーチューブの内側壁は、外側壁より先へ突出して該フランジに嵌入している。この構成は、相互接続チューブの冷却を良好にするが、燃焼器の内方へ向けられたフランジ及びそれを取り巻く燃焼器壁、並びに、相互接続チューブの、フランジに突入している部位の内表面の局部的過熱を起こすという問題が残っている。極端な条件下では、局部的過熱は、それらの部材のは破損を招くことがあり、その結果金属の破片がタービン内へ吹き飛ばされ、それがタービンを破損させるおそれがある。そのような大きな破損の危険性は非常に小さいとはいえ、フランジ周辺の過熱による燃焼器の早期破損の可能性は、かなり高い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術に随伴する上記諸問題を解決し、それによって、燃焼装置の耐用年数を改善することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明の概要
上記課題を解決するために、本発明は、隣接した燃焼器が、点火された1つの燃焼器から他の燃焼器へ点火用火炎を通すように構成されたクロスファイアーチューブ組立体によって相互に接続されており、各クロスファイアーチューブ組立体は、その点火用火炎に面する内表面をフィルム冷却即ち膜冷却(薄い流体層即ち流体膜を維持することによって物体や表面を冷却すること)するための空気を導入するための入口手段を備えているガスタービンエンジン用燃焼装置において、前記クロスファイアーチューブ組立体の、燃焼器への接続部を囲繞する冷却手段を設け、該冷却手段は、該クロスファイアーチューブ組立体の外表面を膜冷却するように構成されており、それによって、該クロスファイアーチューブ組立体の内表面と外表面の両方を膜冷却することができることを特徴とするガスタービンエンジン用燃焼装置を提供する。
【0008】
本発明は、又、ガスタービンエンジン用燃焼装置であって、
複数基の燃焼器と、
隣接する燃焼器の間に点火用火炎を通すためのクロスファイアーチューブ組立体であって、点火用火炎を燃焼器の内外へ通すための端部チューブを含むクロスファイアーチューブ組立体と、
前記端部チューブの内表面を膜冷却するために冷却空気を前記クロスファイアーチューブ組立体内へ冷却空気を供給するための供給手段とから成り、
前記端部チューブは、前記燃焼器にスリーブを介して接続されており、該スリーブは、該燃焼器の壁から延長して該端部チューブの全長のうちの、該燃焼器に近接した一部分をそれとオーバーラップする(重なる)ように囲繞し、該端部チューブの外表面と該スリーブの内表面との間に環状間隙を画定し、該スリーブは、該端部チューブの、前記燃焼器の壁に近接した外表面と、該スリーブ自体の内表面との両方を膜冷却するように冷却空気を前記環状間隙内へ冷却空気を導入するための入口手段を有することを特徴とするガスタービンエンジン用燃焼装置を提供する。
【0009】
好ましい実施例では、前記端部チューブの外表面を膜冷却するための空気が導入されるように、前記スリーブの、それが該端部チューブに接続されている部位に近接したところの周壁に複数の孔を穿設する。
【0010】
好ましい実施例では、前記端部チューブは、前記スリーブを越えて燃焼器の内部に突出しないように配置される。より好ましくは、スリーブと端部チューブとのオーバーラップ部分がスリーブの全長に亘らないようにし、それによって、前記燃焼器の壁の内表面と端部チューブとの間に間隙が形成されるようにする。端部チューブと燃焼器の壁の内表面との間で測定した該間隙の長手方向の寸法が該スリーブの内表面と端部チューブの外表面との間の環状間隙の幅方向の寸法のほぼ2倍となるようにした場合、良好な性能が得られることが認められた。
【0011】
前記スリーブは、又、燃焼器内へ突出しないように配置することが好ましく、それによって、冷却空気がスリーブからそれを囲繞する燃焼器の壁の内表面を被って流出するように構成する。
【0012】
好ましい実施例では、前記クロスファイアーチューブ組立体は、上記EP−0503 018に開示されたタイプの構成とし、第1燃焼器と第2燃焼器の間に延長する完成クロスファイアーチューブ(クロスファイアーチューブとして組立照られ完成した状態のクロスファイアーチューブ)は、クロスファイアーチューブの中央チューブ部分(中央クロスファイアーチューブ部分)と、該第1燃焼器と第2燃焼器からそれぞれ延長した第1端部チューブと第2端部チューブとから成り、中央クロスファイアーチューブ部分の一端は、第1端部チューブ内に嵌入されて溶接され、中央チューブ部分の他端は、第2端部チューブ内に押込嵌めされる。冷却空気は、中央クロスファイアーチューブ部分の外表面と各端部チューブ(第1端部チューブと第2端部チューブ)の内表面との間に画定された環状間隙内へ差し向けられ、中央クロスファイアーチューブ部分の両端と、各端部チューブの内表面を膜冷却する。
【0013】
本発明は、又、上述した燃焼装置を組み入れたガスタービンエンジンを提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
好ましい具体例の説明
図1は、EP−0 503 018の発明によるガスタービンエンジン用燃焼装置の一部分であるクロスファイアーチューブ組立の断面図である。クロスファイアーチューブ組立体は、隣接する2基の燃焼器の壁11と壁12の間に延設されており、図1でみて左端において一方の燃焼器の壁11から突出した端部チューブ15に嵌入してそれに溶接されており、右端において他方の燃焼器の壁12から突出した端部チューブ17に押込み嵌めされた中央クロスファイアーチューブ部分16から成る。冷却空気18は、中央クロスファイアーチューブ部分16の両端部20、並びに、両端部チューブ15,17の内表面を膜冷却するために、中央クロスファイアーチューブ部分16の両端に穿設された孔19を通して、中央クロスファイアーチューブ部分16の両端の外表面と各端部チューブ15,17のフレア(外方に拡開した)部分22の内表面との間に画定された環状間隙又はダクト13内へ差し向けられる。この先行発明の詳細については、公開された明細書を参照されたい。
【0015】
図2は、1つの燃焼器100の一側に装着された本発明のクロスファイアーチューブ組立体の半分を示す。このクロスファイアーチューブ組立体は、1つの燃焼器100の壁101からそれと隣接する燃焼器(図示せず)の壁に向かって突出している。図1から理解されるように、一方の燃焼器は、クロスファイアーチューブ組立体の雄型部分組立体(図1の例では、溶接された中央クロスファイアーチューブ部分16全体を含む左側の部分組立体)を有し、隣接する他方の燃焼器は雌型部分組立体(図1の例では、中央クロスファイアーチューブ部分16を含まない右側の部分組立体)を有し、一方の燃焼器の雄型部分組立体の中央クロスファイアーチューブ部分を他方の燃焼器の雌型部分組立体の端部チューブに押込め嵌めすることによって嵌合結合させて完全なクロスファイアーチューブ組立体を構成する。図2に示された本発明のクロスファイアーチューブ組立体の中央チューブ102は、図2にはその一部分だけしか示されていないが、中央チューブ102の他方の部分組立体への接続態様は、上記EP−0 503 018に示されたものと実質的に同じである。
【0016】
中央チューブ102は、端部チューブ104のフレア部分103内に嵌入され溶接される。冷却空気流106を導入するために、この溶接部に近接した、端部チューブ104のフレア部分103の周りに複数の孔(空気入口手段)105が穿設されている。使用時には、端部チューブ104のフレア部分103と中央チューブ102の自由端114(溶接部より内方の最先端)との間に画定された環状ノズルが、空気流106を端部チューブ104の内表面に沿って導き、その内表面を冷却してチューブ内の点火用火炎110の加熱作用から防護する。本発明によれば、冷却手段として、燃焼器100の壁101から突出させたソケット又はスリーブ107の形とした外側冷却空気チューブを形成する。このスリーブ107内に、その内表面と端部チューブ104の外表面との間のオーバーラップ部分に環状間隙空間112が画定されるように端部チューブ104を嵌入し溶接する。この外側冷却用スリーブ107は、燃焼器100の壁101の一体的延長部となるように壁101に溶接によって取り付けるか、あるいは、ボルト付きフランジ又は他の任意の適当な取付手段によって取り付けることができる。
【0017】
冷却空気109をスリーブ107と端部チューブ104の外表面との間の環状間隙空間112内へ導入するために、外側スリーブ107と端部チューブ104との溶接部に近接した部位の外側スリーブ107の周りに複数の入口孔108を形成する。冷却空気109は、端部チューブ104の外表面を被って流れることによってそれを冷却し、燃焼器100に流入してその壁101の内表面を被って内方へ流れ、それによって、端部チューブ104の端部114と、燃焼器壁101と外側冷却用スリーブ107との間の接続部とに冷却作用を施す。
【0018】
ここで、スリーブ107と端部チューブ10とのオーバーラップ部分は、スリーブ107の全長に亘っては延長していないことに留意されたい。即ち、端部チューブ104の端部114は、燃焼器壁101の内表面から外方へ間隙距離Dだけ離れた位置にある。この間隙距離Dは、スリーブ107の内表面と端部チューブ104の外表面との間の間隙距離Gのほぼ2倍とすることが好ましいことが判明した。この距離は、端部チューブ104の端部114を燃焼器100の内部の燃焼過程の全熱に露呈させるのを回避する距離である。
【0019】
更に、金属製の端部チューブ104の点火用火炎に面する内表面が、始動時にクロスファイアーチューブ組立体を通って隣の燃焼器を点火するための点火用火炎からその通過を妨害しないほどの薄い内側冷却空気膜によって隔離される。その結果として、クロスファイアーチューブ組立体の温度が低下され、それによって、クロスファイアーチューブ組立体の寿命を延長し、クロスファイアーチューブ組立体の、燃焼器に近接した端部に熱損傷が及ぼされる危険性が大幅に減少される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、EP−0 503 018の発明によるガスタービンエンジン用燃焼装置の一部分であるクロスファイアーチューブ組立の断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態によるクロスファイアーチューブ組立体の2分の1の概略断面図である。
【符号の説明】
100:燃焼器
101:燃焼器の壁
102:中央クロスファイアーチューブ部分
104:端部チューブ
106:冷却空気流
107:スリーブ
108:入口孔(入口手段)
109:冷却空気
110:点火用火炎
112:環状間隙空間
114:端部
D:間隙(間隙距離)
G:間隙(間隙距離)

Claims (8)

  1. ガスタービンエンジン用燃焼装置であって、
    複数基の燃焼器と、
    隣接する燃焼器の間に点火用火炎(110)を通すためのクロスファイアーチューブ組立体であって、点火用火炎を燃焼器(100)の内外へ通すための端部チューブ(104)を含むクロスファイアーチューブ組立体と、
    前記端部チューブ(104)の内表面を膜冷却するために冷却空気(106)を前記クロスファイアーチューブ組立体内へ供給するための供給手段(103,105)とから成り、
    前記端部チューブ(104)は、前記燃焼器(100)にスリーブ(107)を介して接続されており、該スリーブは、該燃焼器の壁(101)から延長して該端部チューブの全長のうちの、該燃焼器に近接した一部分をそれとオーバーラップするように囲繞し、それによって該端部チューブの外表面と該スリーブの内表面との間に環状間隙(G)を画定し、該スリーブは、該端部チューブの、前記燃焼器の壁(101)に近接した外表面と、該スリーブの内表面との両方を膜冷却するように冷却空気(109)を前記環状間隙内へ冷却空気(109)を導入するための入口手段(108)を有することを特徴とするガスタービンエンジン用燃焼装置。
  2. 前記端部チューブ(104)の外表面を膜冷却するための冷却空気(109)を導入するための入口手段(108)として、前記スリーブ(107)の、それが該端部チューブに接続されている部位に近接したところの周壁に複数の孔が穿設されていることを特徴とする請求項に記載のガスタービンエンジン用燃焼装置。
  3. 前記端部チューブ(104)は、前記スリーブ(107)を越えて前記燃焼器(100)の内部に突出しないように配置されていることを特徴とする請求項又はに記載のガスタービンエンジン用燃焼装置。
  4. 前記スリーブ(107)と前記端部チューブ(104)とのオーバーラップ部分が該スリーブの全長に亘らないように配置されており、それによって、前記燃焼器の壁(101)の内表面と該端部チューブ(104)との間に間隙(D)が形成されていることを特徴とする請求項に記載のガスタービンエンジン用燃焼装置。
  5. 前記端部チューブ(104)と燃焼器の壁(101)の内表面との間で測定した前記間隙(D)の長手方向の寸法が該スリーブの内表面と端部チューブの外表面との間の前記環状間隙(G)の幅方向の寸法のほぼ2倍であることを特徴とする請求項に記載のガスタービンエンジン用燃焼装置。
  6. 前記スリーブ(107)は、冷却空気が該スリーブからそれを囲繞する燃焼器の壁(101)の内表面を被って流出するように配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスタービンエンジン用燃焼装置。
  7. 第1燃焼器と第2燃焼器の間に延長する完成クロスファイアーチューブは、中央クロスファイアーチューブ部分(102)と、該第1燃焼器と第2燃焼器からそれぞれ延長した第1及び第2端部チューブ(104)とから成り、該中央クロスファイアーチューブ部分の一端は、該第1端部チューブ内に嵌入されて溶接されており、該中央チューブ部分の他端は、第2端部チューブ内に押込嵌めされており、冷却空気(106)は、中央クロスファイアーチューブ部分(102)の外表面と各端部チューブ(104)の内表面との間に画定された環状間隙内へ差し向けられ、該中央クロスファイアーチューブ部分の両端と、各端部チューブの内表面を膜冷却することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスタービンエンジン用燃焼装置。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の燃焼装置を有するガスタービンエンジン。
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