まず、本発明の振幅変調器、切替えスイッチおよびそれを具備する高周波送受信器について、図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。
図1は本発明の振幅変調器の実施の形態の一例を示す模式的な回路図である。また、図2(a)および(b)は、それぞれ図1に示す振幅変調器を模式的に示す斜視図および平面図である。また、図3は図2に示す振幅変調器における高周波変調部の例を示す模式的な平面図である。また、図4は本発明の振幅変調器の実施の形態の他の例を示す模式的な平面図である。また、図5は本発明の切替えスイッチの実施の形態の一例を示す模式的な回路図である。また、図6は図1に示す振幅変調器におけるバイアス供給回路の構成要素であるトリマブルチップ抵抗の例を示す模式的な図であり、(a)は平面図、(b)はその側面図である。また、図7(a)〜(e)は、それぞれ図6に示すトリマブルチップ抵抗における他のトリミング方法の例を示す模式的な平面図である。また、図8は可変抵抗器としてのポリマポテンショメータの例を示す模式的な斜視図である。また、図9は本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例を示す模式的なブロック回路図である。また、図10は図9に示す高周波送受信器の模式的な平面図である。また、図11は非放射性誘電体線路型のミキサーに用いられるダイオードが実装された基板の一例を模式的に示す斜視図である。また、図12は本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例を示す模式的なブロック回路図である。また、図13は図12に示す高周波送受信器の模式的な平面図である。また、図14は本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の一例を示す模式的なブロック回路図である。また、図15は本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の一例を示す模式的なブロック回路図である。また、図16は、本発明の振幅変調器および切替えスイッチに用いられるPINダイオードに印加されるバイアス電圧とバイアス電流との関係を示す線図である。また、図17は、本発明の振幅変調器および切替えスイッチに用いられるトリマブルチップ抵抗4の抵抗値と高周波信号の減衰量との関係を示す線図である。また、図18は非放射性誘電体線路の基本的な構成を示す部分破断斜視図である。
図1〜図7において、1,2は高周波用伝送線路、1aおよび2aは入力端および出力端、1’,1”は入力用の誘電体線路、2’,2”は出力用の誘電体線路、1’a,1”aおよび2’a,2”aは入力端および出力端(ただし、これらは誘電体線路1’,2’における一端である。)、1’b,2’bは端部(ただし、これらは誘電体線路1’,2’における他端である。)、3,3”はPINダイオード、4,4”は可変抵抗器としてのトリマブルチップ抵抗、4aは誘電体基体、4bは抵抗体層、4c1,3c2は電極、4d,3d1〜3d4はトリミング部、5,5”はチョークインダクタ、5’はチョーク型バイアス供給線路、5’aは幅の広い線路、5’bは幅の狭い線路、5’cは線路導体、5’dは接続用導体、5’eは島状導体、6,6”は信号源、7は基板、8はフェライト板、9は変調用の誘電体線路、10は無反射終端器である。また、81は入力側高周波用伝送線路,82,83は出力側高周波用伝送線路、81aは入力端、82a,83aは出力端である。
また、図8において、106はローター,105a,105b,105cはリード線である。
また、図9〜図15において、11は高周波発振器、12は分岐器、13は変調器、14は信号分離器としてのサーキュレータ、15は送受信アンテナ、16はミキサー、17はスイッチ、18はアイソレータ、19は送信アンテナ、20は受信アンテナ、21,31は平板導体、22,32は第1の誘電体線路、23,33は第2の誘電体線路、24,34は磁性体としてのフェライト板、25,35は第3の誘電体線路、26,36は第4の誘電体線路、27,37は第5の誘電体線路、28,38a,38bは無反射終端器、39は第6の誘電体線路、40は基板、41はチョーク型バイアス供給線路、42は接続用端子、43は高周波検波用素子、12aは入力端、12bは一方の出力端、12cは他方の出力端、13a,は入力端、18aは入力端子、13bは出力端、18bは出力端子、14a,24a,34aは第1の端子、14b,24b,34bは第2の端子、14c,24c,34cは第3の端子である。また、71は切替えスイッチ、72は信号分離器としての第2の切替えスイッチ、71aは入力端、71bは一方の出力端、71cは他方の出力端、72aは第2の端子としての入出力端、72bは第1の端子としての入力端、72cは第3の端子としての出力端である。また、図18において、51,52は平板導体、53は誘電体線路である。
以下、同様の箇所には同じ符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
なお、図2および図4において平板導体は図示していない。また、図10および図13において、上側の平板導体は図示していない。
本発明の振幅変調器の実施の形態の一例においては、図1に模式的な回路図で示すように、高周波信号を伝送する2つの高周波用伝送線路1,2の間に、一方の高周波用伝送線路1から入力される高周波信号を変調して他方の高周波用伝送線路2の出力端2a側に出力する高周波変調用素子としてのPINダイオード3が設けられており、このPINダイオード3に接続されたバイアス供給回路Cが、PINダイオード3に流れるバイアス電流を調節する可変抵抗器としてのトリマブルチップ抵抗4を備えている構成である。また、この構成において、バイアス回路Cにはさらにチョークインダクタ5および信号源6が接続されており、PINダイオード3にトリマブルチップ抵抗4とチョークインダクタ5と信号源6とが順次接続されている。
信号源6は、トリマブルチップ抵抗4およびチョークインダクタ5を介してPINダイオード3にバイアス電圧を供給する。信号源6は、外部から与えられる高周波信号を振幅変調するための制御信号に基づいて、バイアス電圧をPINダイオード3に供給し、ここではPINダイオード3に一定の順方向バイアス電圧と、一定の逆方向バイアス電圧あるいは0Vの電圧とを選択的に印加する。PINダイオード3のカソードは接地され、アノードはチョークインダクタ5に接続される。さらに詳細には、チョークインダクタ5と信号源6との間にトリマブルチップ抵抗4が接続される。
また、図1に示す振幅変調器は、高周波用伝送線路1,2を非放射性誘電体線路で構成しており、図2(a)および(b)にそれぞれ斜視図および平面図で示すように、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で平行に配置した平板導体(図示せず)間に、入力用および出力用の誘電体線路1’および2’がそれらの対向する端部1’b,2’b間に、図3に平面図で示すような基板7上に形成されたチョーク型バイアス供給線路5’にPINダイオード3を接続した高周波変調部MのそのPINダイオード3を挟んで配置している。入力用の誘電体線路1’および出力用の誘電体線路2’は、それらの延在方向に連なって設けられる。入力用の誘電体線路1’の出力用の誘電体線路2’側の端部1’bは、基板7の厚み方向の一表面に接触し、出力用の誘電体線路2’の入力用の誘電体線路1’側の端部2’bは、基板7の厚み方向の表面上に実装されるPINダイオード3に接触して設けられる。なお、チョーク型バイアス供給線路5’は、チョークインダクタ5に相当するものである。なお、誘電体線路1’および誘電体線路2’は、それぞれ図1における高周波用伝送線路1および高周波用伝送線路2に対応している。
さらに具体的には、上記構成において、基板7に形成されたチョーク型バイアス供給線路5’は、図3に平面図で示すように、幅の広い線路5’a(第1の線路)と幅の狭い線路5’b(第2の線路)とがλ/4(λは誘電体線路1’,2’に伝送される高周波信号の波長である。)周期の長さで交互に接続されているとともに、その中途の途切れた部分に線路導体5’cおよび接続用導体5’dが設けられている。また、基板7上の接続用導体5’dの両側の近傍には島状導体5’eが設けられている。そして、PINダイオード3は、高周波変調部Mが誘電体線路1’,2’の端部1’b,2’b間に配置される際に、誘電体線路1’,2’に伝送される高周波信号が入射するとともにそのLSEモードの電界の方向にほぼ平行な方向に電流が流れるように基板7上において配置されるとともに接続用導体5’dに接続され、このPINダイオード3にバイアスが供給されるように、チョーク型バイアス供給線路5’の両端にバイアス供給回路C(図示せず)が接続されている。なお、基板7の接続用導体5’dにPINダイオード3を接続するには、フリップチップ接続をするかまたはワイヤボンド接続をすればよい。
このようなPINダイオード3に順方向バイアス電圧を印加すると、PINダイオード3は高周波信号を透過し、PINダイオード3に逆方向バイアス電圧を印加する、あるいは電圧を印加しないと、PINダイオード3は高周波信号を透過せずに反射する。
また、本発明の振幅変調器の実施の形態の他の例は、図4に平面図で示すように、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で平行に配置した平板導体(図示せず)間に、この平板導体の内面に互いに対向させて配置された2枚のフェライト板8と、この2枚のフェライト板8に対して放射状に配置された、高周波信号を入力する入力用の誘電体線路1”、先端部にPINダイオード3が設けられた変調用の誘電体線路9、この変調用の誘電体線路9のその先端部の延長方向上にPINダイオード3を透過した高周波信号を終端するように配置された無反射終端器10およびPINダイオード3によって振幅変調された高周波信号を出力する出力用の誘電体線路2”を備えており、PINダイオード3は、図1に示す構成と同様に、PINダイオード3に流れるバイアス電流を調節するトリマブルチップ抵抗4とチョークインダクタ5と信号源6とが順次接続されたバイアス回路C(図示せず)が接続されている構成である。
さらに具体的には、上記構成において、PINダイオード3は、図3に示すものと同様である基板7上のチョーク型バイアス供給線路5’の接続用導体5’dに接続され、このPINダイオード3が接続された基板7が変調用の誘電体線路9の先端部にその変調用の誘電体線路9からPINダイオード3に高周波信号が入射するように配置され、PINダイオード3を透過した高周波信号が入射して終端されるように無反射終端器10がその変調用の誘電体線路9の延長方向に配置されている。なお、PINダイオード3の変調用の誘電体線路9に対する配置は上記PINダイオード3の誘電体線路1’に対する配置と同様である。
また、図5に示す本発明の切替えスイッチの実施の形態の一例は、入力端81aを有する入力用高周波用伝送線路81、一方の出力端82aおよび他方の出力端83aをそれぞれ有する2つの出力側高周波用伝送線路を有し、入力端81aおよび一方の出力端82aの間ならびに入力端81aおよび他方の出力端83aの間のそれぞれにPINダイオード3,3”が設けられており、PINダイオード3,3”は、それぞれバイアス電圧を印加するバイアス供給回路C1,C2が接続されており、これらバイアス供給回路C1,C2がPINダイオード3,3”に流れるバイアス電流を調節する可変抵抗器としてのトリマブルチップ抵抗4,4”を備えている構成である。
さらに具体的には、2つのPINダイオード3,3”のそれぞれに図1に示す振幅変調器の例におけるバイアス供給回路Cと同様のバイアス供給回路C1,C2を接続し、PINダイオード3,3”のいずれか一方に順方向バイアス電圧および他方に逆方向バイアス電圧を印加して、入力端81aに入力された高周波信号を一方の出力端82aまたは他方の出力端83aから出力するように信号源6,6”は設定されている。また、PINダイオード3,3”に印加されるバイアス電圧が、それぞれ順方向バイアス電圧から逆方向バイアス電圧に切り替わるときに、または逆方向バイアス電圧から順方向バイアス電圧に切り替わるときに、PINダイオード3,3”間でバイアス電圧を切替えるタイミングが多少ずれて、両者に同時に同じ方向のバイアス電圧が印加されてもよい。
また、図5に示すように、PINダイオード3のカソードを接地し、アノードをチョークインダクタ5に接続するとともに、PINダイオード3”のアノードを接地し、カソードをチョークインダクタ5”に接続すれば、信号源6をバイアス供給回路C1,C2で共有することにより、バイアス供給回路C1,C2にそれぞれ必要であった信号源6,6”を1つ減らすことができるので、切替えスイッチの構成を簡略化することができ好ましい。すなわち、PINダイオード3,3”それぞれのアノードとカソードとを上記のように接続し、信号源6が一定の順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧とを選択して供給すれば、信号源6を一つとしてもPINダイオード3,3”のいずれか一方に順方向バイアス電圧を、他方に逆方向バイアス電圧を印加することができるので、入力端81aに入力された高周波信号を一方の出力端82aまたは他方の出力端83aから選択的に出力することができる。
また、さらに具体的には、図1〜図4に示す上記各構成の振幅変調器および図5に示す切替えスイッチにおいて、トリマブルチップ抵抗4(以下、トリマブルチップ抵抗4”も同様である。)は、図6に示すように、例えば、アルミナセラミックス等の誘電体から成る誘電体基体4a上にNi−Cr合金等の抵抗体から成る抵抗体層4bが形成されており、この抵抗体層4bの両端に接続されるとともに誘電体基体4aの両端を覆うように電極4c1,4c2が形成されているようなものを用いればよい。このトリマブルチップ抵抗4の抵抗体層4bにYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ等からのレーザ光を照射して抵抗体層4bの一部分を適当な面積だけ酸化させて電気絶縁性を有する金属酸化物からなるトリミング部4dを形成することにより、電極4c1,4c2間の抵抗値を変化させることができるといったものである。
トリマブルチップ抵抗4は、電極4c1,4c2間で抵抗体層4bを覆い、電気絶縁性を有する保護膜を有していてもよい。この保護膜としては、例えば石英ガラスのようにYAGレーザの光を、99%程度透過させるものが好ましい。このような保護膜を設けることによって、トリミングを行った後に、抵抗体層4bを保護するための処理を別途行う必要がないので、後処理が容易となり、また抵抗体層4bが保護膜によって保護されるので、抵抗体層4bの抵抗値が変化してしまうことを抑制して、トリマブルチップ抵抗4において安定した抵抗値が維持される。
このトリマブルチップ抵抗4は次のように使用すればよい。すなわち、図6に示すように抵抗体層4bの電極4c1,4c2が接続されていない周辺部の外側から内側に向かってYAGレーザ光を照射して、直線状の切り込み(直線状カット)を入れてトリミング部4dを形成すればよい。この直線状カットの面積によりトリマブルチップ抵抗4の抵抗値が変わり、この面積を大きくするに従って抵抗体層4bの断面における電流が流れる断面積が小さくなるためその抵抗値を大きくすることができる。通常は、所望の調整範囲で抵抗値の初期値が小さめのものを選定し、その抵抗値を大きくする方向で調整するようにすればよい。
なお、直線状カットの面積を広げる際には、幅はYAGレーザ光のスポットサイズで決まる一定の大きさとしておいて、そのYAGレーザ光を一軸方向に走査するようにしてその走査する方向にその面積を広げるようにすればよい。また、その際には、次の走査をする前に同じ部位で複数回、パルス状のYAGレーザ光を照射すればよい。このようにすれば抵抗値の調整(トリミング)を高精度で行なうことができる。
また、図6に示すような直線状カットの他にも、図7(a)に平面図で示すように、上記のような直線状カットを抵抗体層4bの中央部に設けたトリミング部4dとしてもよい。また、図7(b)に同様に示すように、上記のような直線状カットを第1カット4d1として設けた後、同様の直線状カットを第2カット4d2として第1カット4d1から少し離れた位置に第1カット4d1よりも短い長さで設けてもよい(ダブルカット)。また、図7(c)に同様に示すように、そのようなダブルカットに対して、第1カット4d1を設けた辺に対向する辺に第2カット4d2を設けるようにしたダブルカットとしてもよい。また、図7(d)に同様に示すように、図7(c)に示すようなダブルカット4d1,4d2と、これと同様のダブルカット4d3,4d4とを櫛歯状に設けてもよい(サーペンタインカット)。これら図7(b)〜(d)に示すようにトリミング部4d(4d1〜4d4)を形成すれば、第2カット4d2,4d4がより緻密に抵抗値を設定するように働くため、より高精度なトリミングを行なうことができる。またこのようにトリミング部4dを形成することによって、抵抗体層4bの線路長を長くすることができるので、抵抗を大きくすることができる。また、図7(e)に同様に示すように、上記直線状カットに対して走査する方向を途中でほぼ直角に1回だけ曲げたL字状の切り込み(Lカット)を設けてもよい。この場合には、抵抗体層4bにかかる応力が緩和されて抵抗体層4bにマイクロクラックが入りにくくなり、それによるドリフトを小さくすることができる。
なお、このようなトリマブルチップ抵抗4は、1つでも十分な調整幅のトリミングをしうるものであるが、これを複数個直列や並列に接続する等したものを用いても構わない。
またトリマブルチップ抵抗4は、振幅変調器もしくは切替えスイッチを高周波送受信器に組み付けたときに、外部に露出するように設けられる。これによって高周波送受信器に、振幅変調器を組み付けた状態、あるいは切替えスイッチを組み付けた状態で、トリマブルチップ抵抗4の抵抗値を変化させることができる。また、上記例では、抵抗体層4bの一部を酸化してトリミング部4dを形成した例について説明したが、レーザにより抵抗体層4bの一部を蒸発させてトリミング部4dを形成してもよい。
図1〜図4に示す本発明の振幅変調器の実施の形態の例は、従来の振幅変調器と同様に、入力用の誘電体線路1’,1”(高周波用伝送線路1)に入力された被変調信号である高周波信号を、信号源6から出力された変調信号によって高周波変調部Mで振幅変調して、その振幅変調された高周波信号を出力用の誘電体線路2’,2” (高周波用伝送線路2)から出力するように動作する。その際、振幅変調器を透過する(誘電体線路1’,1”の入力端1’a,1”aから誘電体線路2’,2”の出力端2’a,2”aに透過する)高周波信号の透過特性はPINダイオード3に流れるバイアス電流に依存することとなるが、本発明の振幅変調器においては、信号源6とPINダイオード3との間に可変抵抗器であるトリマブルチップ抵抗4を設けたので、このトリマブルチップ抵抗4の抵抗値を調整(トリミング)することにより、バイアス電流を調節し、その透過特性を最適な状態に調整(チューニング)することができる。そして、例えば振幅変調器をモジュール等に組み込んだ後においても、そのトリマブルチップ抵抗4により簡単に変調器特性をチューニングすることができる。
図5に示す本発明の切替えスイッチの実施の形態の一例は、入力端81aに入力された高周波信号を、PINダイオード3,3”のいずれか一方を透過させることにより、一方の出力端82aまたは他方の出力端83aから出力するように動作する。その際、切替えスイッチを透過する(入力端81aから一方の出力端82aに透過するかまたは入力端81aから他方の出力端83aに透過する)高周波信号の透過特性はPINダイオード3,3”に流れるバイアス電流に依存することとなるが、本発明の切替えスイッチにおいては、信号源6,6”とPINダイオード3,3”との間に可変抵抗器であるトリマブルチップ抵抗4,4”を設けたので、このトリマブルチップ抵抗4,4”の抵抗値を調整(トリミング)することにより、バイアス電流を調節し、その透過特性を最適な状態に調整(チューニング)することができる。そして、例えば切替えスイッチをモジュール等に組み込んだ後においても、そのトリマブルチップ抵抗4,4”により簡単に切替えスイッチの透過特性をチューニングすることができる。
なお、上記のようなトリマブルチップ抵抗4の働きは、トリマブルチップ抵抗4の他にも回転方式や接点方式等の機械式のトリマ抵抗やポテンショメータ、トリマポテンショメータ等の可変抵抗器を用いても同様に得ることができるが、トリマブルチップ抵抗4は振動が加わっても抵抗値がずれないことや温度や湿度に対する信頼性が高い点で好ましい。これは、トリマブルチップ抵抗4”についても同様である。
また、トリマブルチップ抵抗4の代わりのものとして、トリマポテンショメータを用いてもよい。図8にトリマポテンショメータ104の構成を示す斜視図を示す。トリマポテンショメータは、リード線105とロータ106とを有する。リード線105cは信号源6に接続され、リード線105aはチョークインダクタ5に接続される。リード線105bはどこにも接続されなくて良い。トリマポテンショメータは、ロータ106に設けられる係合部に係合具を係合してロータ106をその軸線まわりに回動することによって、リード線105a,105c間およびリード線105b,105c間の抵抗値を変更することができる。
この場合には、トリマポテンショメータは外部から入力される制御用の信号に応じて動的に抵抗値を設定するように働くため、周囲温度等の環境条件の変化や高周波変調用素子の特性の経時変化等に対しても所望の変調器特性となるようにチューニングすることができるので、変調器特性をより安定にすることができる。また、トリマブルチップ抵抗4と同様に、抵抗値を可変に設定することができるものであって、かつ一度設定した抵抗値が不用意に変わってしまいにくいという特性を有している点で好適である(トリマブルチップ抵抗4”についても同様である。)。
また、このようなトリマポテンショメータを切替えスイッチを構成する可変抵抗器として用いた場合には、1つのバイアス供給回路でPINダイオード3,3”にそれぞれ所望のバイアス電圧を印加することができるので、切替えスイッチの構成を簡単にすることができるので好ましい。
また、PINダイオード3の代わりの高周波変調用素子として、ショットキバリアダイオード等他のダイオードやMESFET等の電界効果トランジスタおよびバイポーラトランジスタ等のトランジスタを用いても構わない。ただし、ミリ波帯の高周波信号に対するPINダイオード3のように被変調信号としての高周波信号に対して検波作用を有していないものを用いたほうが、そのような高周波信号を変調する際に、入力される高周波信号の強度が変動してもそれにより高周波変調用素子に流れるバイアス電流が変動することはなく、高周波変調用素子を透過する高周波信号の透過特性を安定にすることができるので、入力される高周波信号の強度が変わっても変調器特性を比較的安定にすることができるという点で好ましい。
また、PINダイオード3,3”の代わりのスイッチング用素子として、ショットキバリアダイオード等他のダイオードやMESFET等の電界効果トランジスタおよびバイポーラトランジスタ等のトランジスタを用いても構わない。ただし、ミリ波帯の高周波信号に対するPINダイオード3,3”のように高周波信号に対して検波作用を有していないものを用いたほうが、そのような高周波信号をスイッチングする際に、入力される高周波信号の強度が変動してもそれによりスイッチング用素子に流れるバイアス電流が変動することはなく、スイッチング用素子を透過する高周波信号の透過特性を安定にすることができるので、入力される高周波信号の強度が変わっても切替えスイッチの透過特性を比較的安定にすることができるという点で好ましい。
また、上記のように被変調信号としての高周波信号に対して検波作用を有していない高周波変調用素子を用いる場合には、前述のように基板7のチョーク型バイアス供給線路5’から離れてその両側(もしくは片側)に島状導体5’eを形成すれば、島状導体5’eと線路導体5dおよびチョーク型バイアス供給線路の高周波変調用素子の近傍との間で容量(キャパシタンス)が形成され、この容量が、高周波信号の電界を閉じこめて高周波信号の電界が誘電体線路2’または無反射終端器10側に漏れないように働くので、図1および図2に示す振幅変調器においては、オフの時に高周波信号が誘電体線路2’側に結合しにくくなり、振幅変調のオン/オフ比を高くとることができるという点で好ましい。また、図3に示す振幅変調器においては、オンの時に高周波信号が無反射終端器10側に結合しにくくなり、オンの時に誘電体線路2”から出力される高周波信号の出力を大きくすることができるという点で好ましい。
また、上記各構成の振幅変調器と、出力端2a,2’a,2”aに入力端1a,1’a,1”aが接続された他の同様の振幅変調器とから成り、それぞれの振幅変調器が備えているバイアス供給回路の可変抵抗器としてのトリマブルチップ抵抗4の抵抗値が異なるものとしてもよい。この場合には、それぞれの振幅変調器でオン/オフ比の周波数特性が異なるため、オン/オフ比が高くなる周波数が異なる2つの周波数特性を組み合わせてそれらを足し合わせたオン/オフ比の周波数特性のオン/オフ比が所定値以上となる周波数帯域幅を広げるようにすることができるので、所定のオン/オフが得られる周波数帯域幅を広くすることができる。
なお、本発明の振幅変調器においては、高周波用伝送線路として、上記非放射性誘電体線路の他に、ストリップ線路,マイクロストリップ線路,コプレーナ線路,グランド付きコプレーナ線路,スロット線路,導波管,誘電体導波管等を用いてもよい。ただし、高周波用伝送線路として非放射性誘電体線路、導波管および誘電体導波管を用いたときには、被変調信号としての高周波信号を伝送する回路と変調信号を伝送するバイアス回路Cとがほとんど独立に機能するため、バイアス回路Cが具備する可変抵抗器は高周波変調用素子に対して働いて、その被変調信号としての高周波信号に対しては直接的に影響を与えることがほとんどないので、簡単な構成で制御性の良いチューニングをすることができるものとなり好ましい。
なお、本発明の切替えスイッチにおいては、高周波用伝送線路として、上記非放射性誘電体線路の他に、ストリップ線路,マイクロストリップ線路,コプレーナ線路,グランド付きコプレーナ線路,スロット線路,導波管,誘電体導波管等を用いてもよい。ただし、高周波用伝送線路として非放射性誘電体線路、導波管および誘電体導波管を用いたときには、高周波信号を伝送する回路と切替えスイッチ制御信号を伝送するバイアス回路C1,C2とがほとんど独立に機能するため、バイアス回路C1,C2が具備する可変抵抗器はPINダイオード3,3’に対して働いて、その高周波信号に対しては直接的に影響を与えることがほとんどないので、簡単な構成で制御性の良いチューニングをすることができるものとなり好ましい。
次に、本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例は、図9にブロック回路図で示すように、高周波信号を発生する高周波発振器11と、この高周波発振器11に接続された、高周波信号を分岐して一方の出力端12bと他方の出力端12cとに出力する分岐器12と、一方の出力端12bに振幅変調器13を構成する高周波用伝送線路の入力端13aが接続され、この一方の出力端12bに分岐された高周波信号を変調して振幅変調器13を構成する高周波用伝送線路の出力端13bから送信用高周波信号を出力する上記各構成の本発明の実施の形態の例のいずれかの振幅変調器13と、磁性体の周囲に第1の端子14a,第2の端子14bおよび第3の端子14cを有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、振幅変調器13の出力が第1の端子14aに入力される信号分離器としてのサーキュレータ14と、このサーキュレータ14の第2の端子14bに接続された送受信アンテナ15と、分岐器12の他方の出力端12cとサーキュレータ14の第3の端子14cとの間に接続された、他方の出力端12cに分岐された高周波信号と送受信アンテナ15で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー16とを備えている構成である。
また、図9に示す本発明の第1の高周波送受信器は、上記各構成要素間を接続するための高周波用伝送線路として、非放射性誘電体線路を用いている。この非放射性誘電体線路の基本的な構成は、図18に部分破断斜視図で示すものと同様である。
すなわち、図9に示す本発明の第1の高周波送受信器は、具体的には、図10に平面図で示すように、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で平行に配置された平板導体21(他方の平板導体は図示していない。)間に、第1の誘電体線路22の一端が接続された、高周波ダイオードから出力された高周波信号を周波数変調するとともに高周波信号として第1の誘電体線路22を伝搬させて出力する高周波発振器11と、第1の誘電体線路22の他端に接続された、その高周波信号をパルス信号に応じて入力端13a側に反射するかまたは出力端13b側に透過させる上記各構成の本発明の実施の形態の例のいずれかの振幅変調器13と、振幅変調器13の出力端13bに一端が接続された第2の誘電体線路23と、平板導体21に平行に配設されたフェライト板24の周縁部に、それぞれ高周波信号の入出力端子とされた第1の端子24a,第2の端子24bおよび第3の端子24cを有し、この順に、一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、第1の端子24aが第2の誘電体線路23の他端に接続されたサーキュレータ14と、サーキュレータ14のフェライト板24の周縁部に放射状に配置され、かつ第2の端子24bおよび第3の端子24cにそれぞれの一端が接続された第3の誘電体線路25および第4の誘電体線路26と、第3の誘電体線路25の他端に接続された送受信アンテナ15と、中途を第1の誘電体線路22の中途に近接もしくは接合させた、第1の誘電体線路22を伝搬する高周波信号の一部を分岐して伝搬させる第5の誘電体線路27と、第5の誘電体線路27の高周波発振器11側の一端に接続された無反射終端器28と、第4の誘電体線路26の他端と第5の誘電体線路27の他端との間に接続された、第5の誘電体線路27から入力される高周波信号と送受信アンテナ15で受信してサーキュレータ14から入力される高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー16とを備えている構成である。なお、この構成において、第1の誘電体線路22と第5の誘電体線路27とを近接もしくは接合させた部分が分岐器12を構成している。
なお、図10において、第1の端子24a,第2の端子24b,第3の端子24cは、それぞれ図9における第1の端子14a,第2の端子14b,第3の端子14cに対応している。
この構成において、ミキサー16は、図11に斜視図で示すように、基板40の表面に形成されたチョーク型バイアス供給線路41の途中の途切れた部位に形成された接続端子42に高周波変調用素子としてのダイオード43を接続した高周波検波部を、第4の誘電体線路26の他端と、第5の誘電体線路27の他端とのそれぞれに、第4の誘電体線路26および第5の誘電体線路27から出力される高周波信号がダイオード43に入射するように配置している。この構成において、高周波検波用素子としてのダイオード43には、ショットキーバリアダイオードを用いればよい。
以上のように構成された図9および図10に示す本発明の第1の高周波送受信器は、従来の高周波送受信器と同様に動作する。しかしながら、その際、振幅変調器13として本発明の振幅変調器を備えているため、振幅変調器13がPINダイオード3の特性やその実装状態に応じて変調器特性をチューニングする働きをするため、良好な送信出力を安定して得られる高性能なものとなる。また、トリマブルチップ抵抗は振動や温度変化等が激しい環境下においても所定の抵抗値を安定に保持するため、そのような環境下においても良好な変調器特性を維持するので、常に安定な性能を得ることができるものとなる。
また、上記構成において、振幅変調器13のバイアス回路Cの構成要素として接続される可変抵抗器をポテンショメータもしくはトリマポテンショメータとし、このポテンショメータもしくはトリマポテンショメータの抵抗値を制御する制御用の端子に、ミキサー16の他方の端子12c側(第5の誘電体線路27側)の高周波検波部で検波した検波出力の一部を制御用の信号として入力するようにしてもよい。また、その場合には、ミキサー16の高周波検波部が、ほとんど分岐器12の他方の端子12cから出力された高周波信号のみを検波している時にポテンショメータもしくはトリマポテンショメータの抵抗値を設定するようにするとよい。このようにすれば、高周波発振器11から出力された高周波信号の強度をモニターして、その強度の変動に応じて振幅変調器13から所望の出力強度に調節された送信用高周波信号を出力させることができる。
また、上記構成に対して、好ましくは、ミキサー16の出力端には、外部からの開閉制御信号に応じて開閉(スイッチング)するスイッチ17を設けるとよい。ミキサー16の出力端、すなわち生成された中間周波信号を出力する出力部に、外部からの開閉制御信号に応じて開閉(スイッチング)するスイッチ17を設けたときには、サーキュレータ14の第1の端子14aと第3の端子14cとの間のアイソレーションの不足等で、サーキュレータ14の第3の端子14cに送信用高周波信号の一部が漏洩したとしても、この漏洩した高周波信号に対する中間周波信号を出力させないように、スイッチ17がそのような中間周波信号を遮断するように動作させることができるので、受信すべき高周波信号を受信側で識別しやすくすることができる。
次に、本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例は、図12にブロック回路図で示すように、高周波信号を発生する高周波発振器11と、この高周波発振器11に接続された、高周波信号を分岐して一方の出力端12bと他方の出力端12cとに出力する分岐器12と、一方の出力端12bに振幅変調器13を構成する一方の高周波用伝送線路の入力端13aが接続され、この一方の出力端12bに分岐された高周波信号を変調して振幅変調器13を構成する他方の高周波用伝送線路の出力端13bから送信用高周波信号を出力する上記各構成の本発明の実施の形態の例のいずれかの振幅変調器13と、この振幅変調器13の出力端13bに入力端子18aが接続され、入力端子18a側から出力端子18b側へ送信用高周波信号を透過させるアイソレータ18と、このアイソレータ18に接続された送信アンテナ19と、分岐器12の他方の出力端12c側に接続された受信アンテナ20と、分岐器12の他方の出力端12cと受信アンテナ20とに2つの入力端16a,16bのそれぞれが接続された、他方の出力端12cに分岐された高周波信号と受信アンテナ20で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー16とを備えている構成である。
また、図12に示す本発明の第2の高周波送受信器は、上記各構成要素間を接続するための高周波用伝送線路として、非放射性誘電体線路を用いている。この非放射性誘電体線路の基本的な構成は、図18に部分破断斜視図で示すものと同様である。
すなわち、図12に示す本発明の第2の高周波送受信器は、具体的には、図13に平面図で示すように、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で平行に配置された平板導体31(他方の平板導体は図示していない。)間に、第1の誘電体線路32の一端が接続された、高周波ダイオードから出力された高周波信号を周波数変調するとともに第1の誘電体線路32を伝搬させて出力する高周波発振器11と、第1の誘電体線路32の他端に接続された、その高周波信号をパルス信号に応じて入力端13a側に反射するかまたは出力端13b側に透過させる上記各構成の本発明の実施の形態の例のいずれかの振幅変調器13と、振幅変調器13の出力端13bに一端が接続された第2の誘電体線路33と、平板導体31に平行に配設されたフェライト板34の周縁部に、それぞれ高周波信号の入出力端子とされた第1の端子34a,第2の端子34bおよび第3の端子34cを有し、この順に、一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、第1の端子34aが第2の誘電体線路33の他端に接続されたサーキュレータ14と、サーキュレータ14のフェライト板34の周縁部に放射状に配置され、かつ第2の端子34bおよび第3の端子34cにそれぞれの一端が接続された第3の誘電体線路35および第4の誘電体線路36と、第3の誘電体線路35の他端に接続された送信アンテナ19と、中途を第1の誘電体線路32の中途に近接もしくは接合させた、第1の誘電体線路32を伝搬する高周波信号の一部を分岐して伝搬させる第5の誘電体線路37と、第4の誘電体線路36の他端に接続された無反射終端器38aと、第5の誘電体線路37の高周波発振器11側の一端に接続された無反射終端器38bと、一端が受信アンテナ20に接続された第6の誘電体線路39と、第5の誘電体線路37の他端と第6の誘電体線路39の他端との間に接続された、第5の誘電体線路37から入力される高周波信号と受信アンテナ20で受信して第6の誘電体線路39から入力される高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー16とを備えている構成である。なお、第1の誘電体線路32および第5の誘電体線路37は、それらの近接部もしくは接合部において分岐器12を構成している。サーキュレータ14と、第4の誘電体線路36と、無反射終端器38aとを含んでアイソレータ18が構成される。
なお、図13において、第1の端子34a,第2の端子34bは、それぞれ図12における入力端子18a,出力端子18bに対応している。
この構成において、ミキサー16は、図11に斜視図で示すように、基板40の表面に形成されたチョーク型バイアス供給線路41の途中の途切れた部位に形成された接続端子42に高周波変調用素子としてのダイオード43を接続した高周波検波部を、第5の誘電体線路27の他端と、第6の誘電体線路39の他端とのそれぞれに、第5の誘電体線路37および第6の誘電体線路39から出力される高周波信号がダイオード43に入射するように配置している。この構成において、高周波検波用素子としてのダイオード43には、ショットキーバリアダイオードを用いればよい。
以上のように構成された図12および図13に示す本発明の第2の高周波送受信器は、従来の高周波送受信器と同様に動作する。しかしながら、その際、振幅変調器13として本発明の振幅変調器を備えているため、振幅変調器13がPINダイオード3の特性やその実装状態に応じて変調器特性をチューニングする働きをするため、良好な送信出力を安定して得られる高性能なものとなる。また、トリマブルチップ抵抗は振動や温度変化等が激しい環境下においても所定の抵抗値を安定に保持するため、そのような環境下においても良好な変調器特性を維持するので、常に安定な性能を得ることができるものとなる。
また、上記構成において、振幅変調器13のバイアス回路Cの構成要素として接続される可変抵抗器をポテンショメータもしくはトリマポテンショメータとし、このポテンショメータもしくはトリマポテンショメータの抵抗値を制御する制御用の端子に、ミキサー16の他方の端子12c側(第5の誘電体線路37側)の高周波検波部で検波した検波出力の一部を制御用の信号として入力するようにしてもよい。また、その場合には、ミキサー16の高周波検波部がほとんど分岐器12の他方の端子12cから出力された高周波信号のみを検波している時にポテンショメータもしくはトリマポテンショメータの抵抗値を設定するようにするとよい。このようにすれば、高周波発振器11から出力された高周波信号の強度をモニターして、その強度の変動に応じて振幅変調器13から所望の出力強度に調節された送信用高周波信号を出力させることができる。
また、上記構成に対して、好ましくは、ミキサー16の出力端には、外部からの開閉制御信号に応じて開閉(スイッチング)するスイッチ17を設けるとよい。ミキサー16の出力端、すなわち生成された中間周波信号を出力する出力部に、外部からの開閉制御信号に応じて開閉(スイッチング)するスイッチ17を設けたときには、送信アンテナ19と受信アンテナ20との間のアイソレーションの不足等で、受信アンテナ20に送信用高周波信号の一部が漏洩したとしても、この漏洩した高周波信号に対する中間周波信号を出力させないように、スイッチ17がそのような中間周波信号を遮断するように動作させることができるので、受信すべき高周波信号を受信側で識別しやすくすることができる。
次に、図14に示す本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の一例は、高周波信号を発生する高周波発振器11と、この高周波発振器11に入力端71aが接続された、高周波信号を切り替えて一方の出力端71bに送信用高周波信号RFtとして出力するかまたは他方の出力端71cにローカル信号LOとして出力する上記構成の本発明の実施の形態の例の切替えスイッチ71と、第1の端子としての入力端72b、第3の端子としての出力端72cおよび第2の端子としての入出力端72aを有し、一方の出力端71bに入力端72bが接続され、入出力端72aを入力端72bまたは出力端72cに切り替えて接続する信号分離器としての第2の切替えスイッチ72と、この第2の切替えスイッチ72の入出力端72aに接続された送受信アンテナ15と、切替えスイッチ71の他方の出力端71cと第2の切替えスイッチ72の出力端72cとの間に接続され、他方の出力端71cに出力されたローカル信号LOと送受信アンテナ15で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー16とを備えている構成である。
信号分離器である第2の切替えスイッチ72は、第1の端子72b、第2の端子72aおよび第3の端子72c間の接続状態を切替えることによって、第1の端子72bに切替えスイッチ71から送信用高周波信号が与えられ、第1の端子72bから入力される高周波信号を第2の端子72aから出力し、第2の端子72aから入力される高周波信号を第3の端子72cから出力する。ミキサー16は、切替えスイッチ71の他方の出力端71cと、第2の切替えスイッチ72の第3の端子72cとに接続される。
送受信アンテナ15から送信用高周波信号を出力するときには、切替えスイッチ71において入力端71aに与えられる高周波信号を一方の出力端71bから出力し、かつ第2切替えスイッチ72において第1の端子72bに与えられる高周波信号を第2の端子72aに与えるように、切替えスイッチ71および第2切替えスイッチ72に外部からの制御信号が与えられる。また送受信アンテナ15によって高周波信号を受信するときには、切替えスイッチ71において入力端71aに与えられる高周波信号を他方の出力端71cから出力し、かつ第2切替えスイッチ72において第2の端子72aに与えられる高周波信号を第3の端子72cに与えるように、切替えスイッチ71および第2切替えスイッチ72に外部からの制御信号が与えられる。
図14における入力端71a、一方の出力端71b、および他方の出力端71cは、図5における入力端81a、一方の出力端82a、他方の出力端83aにそれぞれ対応する。
次に、図15に示す本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の一例は、高周波信号を発生する高周波発振器11と、この高周波発振器11に入力端71aが接続され、高周波信号を切り替えて一方の出力端71bに送信用高周波信号RFtとして出力するかまたは他方の出力端71cにローカル信号LOとして出力する上記構成の本発明の実施の形態の例の切替えスイッチ71と、一方の出力端71bに接続された送信アンテナ19と、切替えスイッチ71の他方の出力端71c側に接続された受信アンテナ20と、切替えスイッチ71の他方の出力端71cと受信アンテナ20との間に接続された、他方の出力端71cに出力されたローカル信号LOと受信アンテナ20で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー16とを備えている構成である。
送信アンテナ19から送信用高周波信号を出力するときには、切替えスイッチ71において入力端71aに与えられる高周波信号を一方の出力端71bから出力するように、切替えスイッチ71に外部からの制御信号が与えられる。また受信アンテナ20によって高周波信号を受信するときには、切替えスイッチ71において入力端71aに与えられる高周波信号を他方の出力端71cから出力するように、切替えスイッチ71に外部からの制御信号が与えられる。
また、図14および図15に示す本発明の第3および第4の高周波送受信器においても、上記各構成要素間を接続するための高周波用伝送線路として、非放射性誘電体線路を用いればよい。この非放射性誘電体線路の基本的な構成は、図18に部分破断斜視図で示すものと同様である。
図14および図15に示す本発明の第3および第4の高周波送受信器によれば、切替えスイッチ71として本発明の切替えスイッチを備えているため、切替スイッチ71がPINダイオード3,3”の特性やその実装状態に応じて切替えスイッチの透過特性をチューニングする働きをするため、良好な送信出力を安定して得られる高性能なものとなる。また、トリマブルチップ抵抗は振動や温度変化等が激しい環境下においても所定の抵抗値を安定に保持するため、そのような環境下においても良好な切替えスイッチの透過特性を維持するので、常に安定な性能を得ることができるものとなる。
また、上記構成において、切替えスイッチ71のバイアス回路C1,C2の構成要素として接続される可変抵抗器をポテンショメータもしくはトリマポテンショメータとし、このポテンショメータもしくはトリマポテンショメータの抵抗値を制御する制御用の端子に、ミキサー16の他方の出力端71c側の高周波検波部で検波した検波出力の一部を制御用の信号として入力するようにしてもよい。また、その場合には、ミキサー16の高周波検波部がほとんど切替えスイッチ71の他方の出力端71cから出力された高周波信号のみを検波している時にポテンショメータもしくはトリマポテンショメータの抵抗値を設定するようにするとよい。このようにすれば、高周波発振器11から出力された高周波信号の強度をモニターして、その強度の変動に応じて切替えスイッチ71から所望の出力強度に調節された送信用高周波信号RFtを出力させることができる。
また、上記各構成の本発明の第3〜第4の高周波信号においても、図14および図15に示すようにミキサー16の出力端に外部からの制御信号に応じて中間周波信号を遮断するCMOS等の半導体素子で構成されるスイッチ17を接続してもよい。この場合には、スイッチ17が、第2切替えスイッチ72の第1の端子72bおよび第3の端子72cの間または送信アンテナ19および受信アンテナ20の間を透過し、ミキサー16に漏洩して入力された高周波信号に対応する不要な中間周波信号を遮断するように動作するため、受信すべき中間周波信号に不要なノイズが混入しないようにすることができるので受信性能を高くすることができる。
次に、本発明の高周波送受信器において、第1〜第6の誘電体線路22,23,25〜27,32,33,35〜37,39の材質には、四フッ化エチレン,ポリスチレン等の樹脂、または低比誘電率のコーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)セラミックス,アルミナ(Al2O3)セラミックス,ガラスセラミックス等のセラミックスが好ましく、これらはミリ波帯域の高周波信号において低損失である。
また、第1〜第6の誘電体線路22,23,25〜27,32,33,35〜37,39の断面形状は基本的には矩形状であるが、矩形の角部をまるめた形状であってもよく、高周波信号の伝送に使用される種々の断面形状のものを使用することができる。
また、フェライト板24,34の材質には、フェライトの中でも、例えば高周波信号に対しては、亜鉛・ニッケル・鉄酸化物(ZnaNibFecOx)が好適である。
また、フェライト板24,34の形状は、通常は円板状とされるが、その他、平面形状が正多角形状であってもよい。その場合は、接続される誘電体線路の本数をn本(nは3以上の整数)とすると、その平面形状は正m角形(mは3以上のnより大きい整数)とするのがよい。
また、平板導体21,31および図示していない他方の平板導体の材質には、高い電気伝導度および良好な加工性等の点で、Cu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS(ステンレススチール),真鍮(Cu−Zn合金)等の導体板が好適である。あるいは、セラミックス,樹脂等から成る絶縁板の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。
また、無反射終端器28,38a,38bは、例えば図18に示すような誘電体線路53に対して、誘電体線路53の内部の平板導体51,52に平行な面に、膜状の抵抗体または電波吸収体を付着させて構成すればよい。その際、抵抗体の材質としては、ニッケルクロム合金またはカーボンが好適である。また、電波吸収体の材質としては、パーマロイまたはセンダストが好適である。これらの材質を用いれば、効率良くミリ波信号を減衰させることができる。また、これら以外の材質で、ミリ波信号を減衰させることができるものを用いても構わない。
また、基板7,40は、四フッ化エチレン,ポリスチレン,ガラスセラミックス,ガラスエポキシ樹脂,エポキシ樹脂、いわゆる液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂等から成る板状の基体の一主面に、アルミニウム(Al),金(Au),銅(Cu)等から成るストリップ導体等によるチョーク型バイアス供給線路5’,41を形成したものが使用される。
なお、本発明の高周波送受信器においては、本発明の振幅変調器および切替えスイッチの少なくともいずれか一方を備えている構成が重要であり、各回路要素間を接続する高周波用伝送線路としては、非放射性誘電体線路の他にも、導波管,誘電体導波管,ストリップ線路,マイクロストリップ線路,コプレーナ線路,スロット線路,同軸線路,またはこれらを変形した高周波用伝送線路を、使用する周波数帯域や用途に応じて選択して用いても構わない。また、使用する周波数帯域は、ミリ波帯の他にも、マイクロ波帯またはそれ以下の周波数帯にも有効である。
また、信号分離器としてはサーキュレータ14や第2の切り替えスイッチ72の代わりに、デュプレクサ,ハイブリッド回路等を用いても構わない。また、高周波発振器,変調器およびミキサーには、ダイオードの代わりにバイポーラトランジスタ,電界効果トランジスタ(FET)またはこれらを集積化した集積回路(CMOS,MMIC等)を用いても構わない。
次に、本発明のレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶について説明する。
本発明のレーダ装置の実施の形態の一例は、上記各構成の本発明の第1乃至第4のいずれかの高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備している構成である。
本発明のレーダ装置によれば、上記構成としたことから、本発明の高周波送受信器が送信用高周波信号を良好な送信出力で安定に送信するため、速く確実に探知対象物を探知することができるとともに至近距離や遠方の探知対象物をも確実に探知することができるレーダ装置を提供することができる。また、振動や温度変化等が激しい環境下においても安定な性能が得られる上記本発明の高周波送受信器を用いれば、そのような過酷な条件下でも確実に動作するレーダ装置となる。
本発明のレーダ装置搭載車両は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いる構成である。
本発明のレーダ装置搭載車両は、このような構成としたことから、従来のレーダ装置搭載車両と同様に、レーダ装置で検出された距離情報に基づいて車両の挙動を制御したり、運転者に例えば路上の障害物や他の車両等を探知したことを音,光もしくは振動で警告したりすることができるが、本発明のレーダ装置搭載車両においては、探知対象物である路上の障害物や他の車両等をレーダ装置が早く確実に探知するため、急激な挙動を車両に起こさせることなく、車両の適切な制御や運転者への適切な警告をすることができる。
なお、本発明のレーダ装置搭載車両は、具体的には、汽車,電車,自動車等旅客や貨物を輸送するための車はもちろんのこと、自転車,原動機付き自転車,遊園地の乗り物,ゴルフ場のカート等にも用いることができる。
また、本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いる構成である。
本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、このような構成としたことから、従来のレーダ装置搭載車両と同様に、小型船舶において、レーダ装置で検出された距離情報に基づいて小型船舶の挙動を制御したり、操縦者に例えば暗礁等の障害物,他の船舶もしくは他の小型船舶等を探知したことを音,光もしくは振動で警告したりするように動作するが、本発明のレーダ装置搭載小型船舶においては、探知対象物である暗礁等の障害物,他の船舶もしくは他の小型船舶等をレーダ装置が早く確実に探知するため、急激な挙動を小型船舶に起こさせることなく、小型船舶の適切な制御や操縦者への適切な警告をすることができる。
なお、本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、具体的には、小型船舶の免許もしくは免許なしで操縦することができる船舶であって、総トン数20トン未満の船舶である手漕ぎボート,ディンギー,水上オートバイ,船外機搭載の小型バスボート,船外機搭載のインフレータブルボート(ゴムボート),漁船,遊漁船,作業船,屋形船,トーイングボート,スポーツボート,フィッシングボート,ヨット,外洋ヨット,クルーザーまたは総トン数20トン以上のプレジャーボートに用いることができる。
かくして、本発明によれば、振幅変調器の構成要素である高周波変調用素子のバイアス供給回路が可変抵抗器を備えており、この可変抵抗器により簡単に変調器特性をチューニングすることができる振幅変調器を提供することができる。また、切替えスイッチの構成要素であるPINダイオードのバイアス供給回路が可変抵抗器を備えており、この可変抵抗器により簡単に切替えスイッチの透過特性をチューニングすることができる切替えスイッチを提供することができる。また、その振幅変調器または切替えスイッチを具備することにより、簡単な構成で送信用高周波信号を所定の出力強度に安定にすることができる高性能な高周波送受信器およびそのような高性能な高周波送受信器を具備するレーダ装置ならびにそのレーダ装置を備えたレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶を提供することできる。
次に上述した図1に示す振幅増幅器および図5に示す切替えスイッチにおける高周波信号の透過特性について説明する。表1に、図1に示す振幅増幅器および図5に示す切替えスイッチにおいて、トリマブルチップ抵抗4の抵抗値を変化させたときの高周波信号の減衰量を測定した実験結果を示す。
表1において、Id(単位:mA)は、PINダイオード3,3”に流れるバイアス電流を表し、ダイオード対応Vd(単位:V)は、PINダイオード3,3”に印加されるバイアス電圧を表し、ダイオード直流R(単位:Ω)はPINダイオード3,3”の直流抵抗を表し、バイアス電圧(単位:V)は信号源6から供給される電圧を表し、トリマブル抵抗電圧Vr(単位:V)は、トリマブルチップ抵抗4に印加される電圧を表し、トリマブル抵抗値Rr(単位:Ω)はトリマブルチップ抵抗4の抵抗値を表し、減衰量(単位:dB)は、出力端から出力された高周波信号の入力端から入力された高周波信号に対する減衰量を表す。
図16は、表1に示されるPINダイオード3,3”に印加されるバイアス電圧とバイアス電流との関係を示す線図である。図16において横軸は、PINダイオード3,3”に印加されるバイアス電圧(単位:V)を表し、縦軸は、PINダイオード3,3”に流れるバイアス電流(単位:A)を表す。PINダイオード3に順方向バイアスとなるように電圧を印加すると、所定の電圧、ここでは約1.14Vまでは電流が流れないが、この所定の電圧を超えると、急激に電流が流れる。
図17は、表1に示されるトリマブルチップ抵抗4の抵抗値と高周波信号の減衰量との関係を示すグラフである。図17において、横軸はトリマブルチップ抵抗4の抵抗値(単位:Ω)を表し、縦軸は高周波信号の減衰量を表す。トリマブルチップ抵抗4の抵抗値をトリマブル抵抗値と記載する。振幅変調器および切替えスイッチにおいて、トリマブル抵抗値が増加すると、高周波信号の減衰量が大きくなる。すなわち振幅変調器においてトリマブル抵抗値を増加させることによって、高周波信号の振幅を小さくすることができる。トリマブルチップ抵抗4は、不可逆性の抵抗であるので、高周波信号の振幅を調整する場合には、PINダイオード3,3”に流れる電流を一方向に変化させる、ここでは減少させることによって行われる。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。例えば、可変抵抗器として、複数の固定抵抗が接続された固定抵抗ネットワークの接点をリレーで切り替えるようにしたものを用いてもよい。この場合には、固定抵抗ネットワークの抵抗値を動的に設定することができ、例えば、環境条件の変化に応じて振幅変調器13の動作が適切になるように振幅変調器13の動作に同期させて動的に振幅変調器13のバイアス電流を変更するといったようなことができるものとなる。