JP4442167B2 - フィルタ装置 - Google Patents
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Description
さらに、MEMS構造によるフィルタ装置では、振動子53という機械的な構造の特性を利用しているため、中心周波数の温度特性が数十〜数百ppm程度とそれほど良くない。そのため、振動子53が所望の通りに精度良く形成されている場合であっても、環境温度によっては透過周波数や遮断周波数等が変動してしまう可能性もある。
また、フィルタ装置に対しては、これを使用する際の汎用性等の観点から、同一構造で異なる仕様(中心周波数、遮断周波数、リップル、スカート特性等)に対応可能にするための技術が常に求められている。
ここで、一般に、振動子に直流電圧を印加すると、振動子と下部電極(入力電極または出力電極)が当接する電圧に向けて徐々に共振周波数が下がっていくが、その度合いは当接電圧に近づくにつれて大きくなっていく。これは、静電バネのソフトニング効果によるものである。つまり、例えば電圧を余計に印加することで共振周波数を低周波側に変化させたり、また印加する電圧を抑えることで共振周波数を高周波側に変化させたりすることが可能となる。
したがって、振動子への印加電圧の値を可変させれば、その振動子における共振周波数が想定した共振周波数と異なる場合であっても、その相違の修正が行えるようになる。
したがって、本発明のフィルタ装置では、MEMS構造を用いた場合であっても、プロセス変動や外乱等の影響を極力受けることなく、適切な透過周波数や遮断周波数等に対応することが可能となる。
これらの振動子1、入力電極2および出力電極3は、いずれも、例えばSi(単結晶シリコン)からなる半導体基板5上にSiO2(二酸化ケイ素)膜6およびSiN(窒化ケイ素)膜7が積層された、さらにその上方に形成されている。つまり、これらを備えてなるフィルタ装置は、半導体基板5上に形成されるものであることから、他の半導体デバイスとのインテグレーションが可能である。
また、振動子1には、直流電圧が印加されることから、出力信号と寄生容量の相関を無くすことができ、SN比を十分に確保することが可能となる。
なお、振動子1は、必ずしも単独である必要はなく、複数が組み合わされてなるもの、すなわち振動子群を構成するものであってもよい。
電圧調整手段8は、振動子1とその振動子1への電圧の印加を行うための電源9との間に配設されたもので、振動子1への印加電圧の値を可変させるためのものである。具体的には、ボリュームやレギュレータ等を用いて構成することが考えられるが、その詳細については公知技術を利用すればよいため、ここではその説明を省略する。
上述した構成のフィルタ装置において、振動子1に直流電圧を印加すると、図2(a)に示すように、振動子1と入力電極2または出力電極3といった下部電極とが当接する電圧(図中におけるA部参照)に向けて、徐々に共振周波数が下がっていく。その度合いは、当接電圧に近づくにつれて大きくなっていく。これは、振動子1において、静電バネのソフトニング効果が作用することによるものである。
つまり、例えば図中において、印加する直流電圧の値を「V0」から「+ΔV」だけ大きくすれば、振動子1における共振周波数が「f0」から「−Δf」だけ低周波側に変化し、直流電圧の値を「V0」から「−ΔV」だけ小さくすれば、振動子1における共振周波数が「f0」から「+Δf」だけ高周波側に変化することになる。
また、図2(b)に示すように、印加する直流電圧の値によっては、振動子1の振幅も変化する。例えば、直流電圧の値を大きくすれば、共振周波数の変化に伴って、振動子1の振幅が大きくなるといった具合である。
例えば、フィルタ装置を動作させた状態で、出力電極3にて検出された振動、すなわち出力電極3からの出力信号を、公知の波形検出装置等を用いてモニタリングし、そのモニタリングの結果に基づいて電圧調整手段8におけるボリューム等を作業員の人手により調整することで、振動子1への印加電圧の値を適宜可変させることが考えられる。このような周波数調整は、フィルタ装置の製造工程の最終段階にて行われる初期チューニングに適用するのが望ましい。当該周波数調整を行うようにすれば、初期チューニングによって、プロセス変動等に起因する製造ばらつきを抑えることができるからである。
また、例えば、フィルタ装置に公知の温度補償回路を付設し、その温度補償回路からの出力信号に応じて電圧調整手段8が振動子1への印加電圧の値を自動的に可変させる、いわゆるフィードバック制御を行うことで、電圧調整手段8を介した周波数調整を行うことも考えられる。このような周波数調整は、フィルタ装置の使用段階での周波数チューニングに適用するのが望ましい。当該周波数調整を行うようにすれば、環境温度の変化等といった外乱に対しても安定した動作が可能なフィルタ特性を得ることができるからである。
図3は、本発明に係るフィルタ装置の第1の具体的な構成例を示す説明図である。図例は、反共振を持つ振動子を備えて構成された帯域透過型のフィルタ装置の一具体例を示している。
これら第一の振動子群11および第二の振動子群12は、いずれも、上述した基本的な構成、すなわち振動子、入力電極、出力電極および電圧調整手段を有してなるものである。ただし、振動子は、少なくとも一つを有していれば、単独のものであっても、あるいは複数の組み合わせからなるものであってもよい。また、電圧調整手段は、第一の振動子群11と第二の振動子群12の少なくとも一方が有していれば、必ずしも両方が有していなくともよい。
ところが、上述した構成のフィルタ装置では、第一の振動子群11および第二の振動子群12が電圧調整手段を有していることから、各振動子に印加する直流電圧(図3(a)中におけるDC1,DC2参照)を可変させることでソフトニング効果を起こし、それぞれにおける共振周波数を図3(c)中の左右方向にシフトさせて、雰囲気温度が上がった場合であっても想定した周波数帯域を確保するといったことが可能となる。これは、雰囲気温度が下がった場合についても、全く同様である。
したがって、プロセス変動やばらつき、雰囲気温度といった外乱等によって狙い通りの周波数帯域が得られない場合であっても、振動子への印加電圧の値を可変させて修正することで、所望の周波数帯域を実現し得るようになるので、MEMS構造を用いてフィルタ装置を構成した場合であっても、プロセス変動や外乱等の影響を極力受けることなく、適切な周波数帯域に対応することが可能となる。
なお、このような効果を得るためには、第一の振動子群11と第二の振動子群12との両方が電圧調整手段を有していることが望ましいが、これらのうちのいずれか一方のみが電圧調整手段を有している場合であっても、透過させる周波数帯域の幅を調整したり、リップルの調整やアイソレーション特性等の改善を図ったりすることは可能である。
MEMS共振子は高抵抗のデバイスなので直列接続には向いていないが、図3(a)に示した構成を基本モジュールとして、図4(a)に示すように、その基本モジュール10a,10b…10nを複数直列接続した場合であっても、各基本モジュール10a,10b…10nにおける振動子群の振動子への印加電圧の値を可変させることで、透過させる周波数帯域の幅を調整したり、リップルの調整やアイソレーション特性等の改善を図ったりすることは可能である。
さらには、図4(b)に示すように、シリーズ側の振動子群11に対して、シャント側の振動子群12a,12bの数を増やした場合についても、全く同様のことが言える。
これら第一〜第三の振動子群21〜23も、上述した基本的な構成、すなわち振動子、入力電極、出力電極および電圧調整手段を有してなるものである。ただし、振動子は、少なくとも一つを有していれば、単独のものであっても、あるいは複数の組み合わせからなるものであってもよい。また、電圧調整手段は、第一〜第三の振動子群21〜23の少なくとも一方が有していれば、必ずしも全てが有していなくともよい。
したがって、プロセス変動やばらつき、雰囲気温度といった外乱等によって狙い通りの周波数帯域が得られない場合であっても、振動子への印加電圧の値を可変させて修正することで、所望の周波数帯域を実現し得るようになるので、MEMS構造を用いてフィルタ装置を構成した場合であっても、プロセス変動や外乱等の影響を極力受けることなく、適切な周波数帯域に対応することが可能となる。
なお、このような効果を得るためには、第一〜第三の振動子群21〜23との全てが電圧調整手段を有していることが望ましいが、これらのうちのいずれか一つのみが電圧調整手段を有している場合であっても、透過させる周波数帯域の幅を調整したり、リップルの調整やアイソレーション特性等の改善を図ったりすることは可能である。
図例のように、ここで説明するフィルタ装置は、一つの振動子群31がシャント側に配置されてなるものである。振動子群31は、上述した基本的な構成、すなわち振動子、入力電極、出力電極および電圧調整手段を有してなるものである。ただし、振動子は、少なくとも一つを有していれば、単独のものであっても、あるいは複数の組み合わせからなるものであってもよい。このような振動子群31における振動子は、上述した実施例2の場合と同様に、反共振を持たないものである。これにより、振動子群31は、その振動子群31における振動子の共振のピークの大きさや中心周波数等に応じた周波数帯域の信号を遮断するフィルタ装置を構成することになる。
したがって、プロセス変動やばらつき、雰囲気温度といった外乱等によって狙い通りの周波数帯域が得られない場合であっても、振動子への印加電圧の値を可変させて修正することで、所望の周波数帯域を実現し得るようになるので、MEMS構造を用いてフィルタ装置を構成した場合であっても、プロセス変動や外乱等の影響を極力受けることなく、適切な周波数帯域に対応することが可能となる。
Claims (1)
- 特定周波数帯域の信号を透過するMEMS構造のフィルタ装置であって、
直流電圧が印加される可動構造体である少なくとも一つの振動子と、前記振動子に振動を励起するための入力電極と、前記振動子に励起された振動を検出するための出力電極とを有してなる振動子群を複数備え、
前記複数の振動子群は、第一の振動子群、第二の振動子群および第三の振動子群からなり、
前記第一の振動子群、前記第二の振動子群および前記第三の振動子群における各振動子は、それぞれが異なる中心周波数に対応したものであり、
前記各振動子が対応する中心周波数から特定される周波数帯域に信号を透過するように、前記第一の振動子群がシリーズ側に位置し、前記第二の振動子群および前記第三の振動子群がシャント側に位置して、それぞれが電気的に接続されており、
前記第一の振動子群、前記第二の振動子群および前記第三の振動子群のそれぞれには、当該振動子群における振動子への印加電圧の値を連続可変させる電圧調整手段が設けられている
フィルタ装置。
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