JP4441046B2 - 無線通信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、親局装置と子局装置とがフレームにより無線通信する無線LANシステム等の無線通信システムやこのような親局装置や子局装置に関し、特に、子局装置から親局装置に対して無線送信される要求信号の衝突を低減させて、無線回線のスループットを向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば時分割2重(TDD:Time Division Duplex)方式を通信方式として採用した無線LANシステムでは、1つの無線回線を時間的に分割して親局装置と子局装置とで無線信号を双方向通信することが行われ、このような双方向通信を実現するために所定のフレーム(TDD無線フレーム)が無線通信に用いられている。また、親局装置では例えばセクタアンテナを用いることにより複数のセクタを形成して子局装置と無線通信することが行われる。
【0003】
上記したTDD方式で用いられるフレームには、一般に、親局装置から子局装置へ報知信号を送信する報知信号スロットと、子局装置から親局装置へ送信要求信号を送信する送信要求信号スロットと、親局装置から子局装置へ送信許可信号を送信する送信許可信号スロットと、親局装置と子局装置との間で(親局装置から子局装置へ、又は、子局装置から親局装置へ)データ信号を送信するデータ信号スロットと、親局装置と子局装置との間で(親局装置から子局装置へ、又は、子局装置から親局装置へ)受信確認信号を送信する受信確認信号スロットとが含まれている。
【0004】
報知信号は、例えば親局装置と子局装置との間の同期を確保するための制御チャネル信号であり、親局装置から各セクタの通信可能領域に存する全ての子局装置に対して一定の時間間隔毎に無線送信される。
送信要求信号は、例えば子局装置が無線区間を介して親局装置に対してデータ信号を送信する際に(送信する前に)、当該子局装置が親局装置に対して当該親局装置へのデータ通信を要求する(送信開始を要求する)ための制御チャネル信号である。
【0005】
ここで、一般に、親局装置の1つのセクタの通信可能領域に複数の子局装置が存するときには当該通信可能領域に存する2以上の子局装置で同時に送信要求が発生してしまうことも生じ得るため、フレームには複数の送信要求信号スロットが含まれており、これにより、2以上の子局装置から無線送信される送信要求信号の衝突を低減させている。
【0006】
送信許可信号は、例えば親局装置が子局装置から送信要求信号を受信したことに応じて当該子局装置に対してデータ通信を許可するための制御チャネル信号であり、また、例えば親局装置が無線区間を介して子局装置に対してデータ信号を送信する際に(送信する前に)、子局装置に対して当該子局装置へのデータ通信の開始を通知するための制御チャネル信号としても用いられる。
【0007】
データ信号は、親局装置から子局装置へのデータや子局装置から親局装置へのデータを伝送するためのチャネル信号である。
受信確認信号は、親局装置から子局装置に対してデータ信号が無線送信される場合や子局装置から親局装置に対してデータ信号が無線送信される場合に、受信側の装置(すなわち、子局装置或いは親局装置)が送信側の装置(すなわち、親局装置或いは子局装置)に対して受信状況を通知するための制御チャネル信号である。具体的には、データ信号を正常に受信したことを通知するACKや、データ信号を正常に受信することができなかったことを通知するNAKが受信確認信号として用いられる。
【0008】
次に、以上のような構成のフレームを用いて行われる無線通信の一例として、子局装置から親局装置に対してデータ信号を無線送信する場合の通信手順の一例を示す。
すなわち、親局装置の各セクタの通信可能領域に存する子局装置は、当該親局装置から無線受信する報知信号に基づいて当該親局装置との同期(無線チャネル同期)を確立しており、親局装置に対して送信すべきデータが発生した場合には、まず、当該親局装置に対して送信要求信号を無線送信する。
【0009】
次に、子局装置は、親局装置から送信許可信号が送られてくるのを待機し、親局装置から送信許可信号を無線受信した場合には、例えば当該送信許可信号により指示される送信タイミングに従って親局装置に対してデータ信号を無線送信する。そして、子局装置は、親局装置から無線送信される受信確認信号を受信し、例えばACKを受信した場合には当該データ信号の送信処理を終了する一方、NAKを受信した場合には当該データ信号の再送処理を実行する。
【0010】
このような通信処理において、子局装置は、例えばフレームに含まれる複数の送信要求信号スロットの中からランダムに1つの送信要求信号スロットを選択し、選択した送信要求信号スロットを用いて親局装置に対して送信要求信号を無線送信することを行う。このように各子局装置がランダムに送信要求信号スロットを選択して用いる構成とすると、親局装置の各セクタの通信可能領域に存する2以上の子局装置から同時に(或いは、ほぼ同時に)送信要求信号が無線送信されてしまうことによる当該信号の衝突を低減することができる。
【0011】
また、上記のような送信要求信号の衝突を更に低減させるものとして、例えば特開平10−209956号公報(以下、文献1と言う)に記載された無線パケット通信方法では、無線基地局と複数の無線パケット端末との間で無線パケット通信を行うに際して、無線基地局が下りスロット(無線基地局から無線パケット端末へパケットを転送するスロット)によりパケット通信に使用可能な上りスロット(無線パケット端末から無線基地局へパケットを転送するスロット)を指示する空きスロット情報を一定周期毎等に報知する一方、無線パケット端末が当該空きスロット情報により指示される上りスロットの中からランダムに選択した上りスロットを用いて無線基地局に対してパケットを無線送信することを行う。
【0012】
このような無線パケット通信方法を用いると、使用可能な(すなわち、空いている)上りスロットが無線基地局から無線パケット端末に通知されるため、無線パケット端末では空いている上りスロットの中から使用する上りスロットを選択することができる。このため、例えば無線パケット端末が使用できない(すなわち、空いていない)上りスロットをも含めた全ての上りスロットの中から使用する上りスロットを選択する場合と比べて、特定の上りスロットにランダムアクセスが集中してしまうことが防止され、これにより、チャネル全体としてのスループットの低下が抑制される。
【0013】
なお、上記した無線パケット通信方法における無線基地局を親局装置とみなし、無線パケット端末を子局装置とみなし、上りスロットを送信要求信号スロットとみなし、パケットを送信要求信号とみなして、当該無線パケット通信方法と同様な通信方法を上記した無線LANシステムに適用すれば、この無線LANシステムにおいても同様な効果を得ることが可能である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の無線LANシステムでは、常に各子局装置がランダムに選択した送信要求信号スロットを用いて送信要求信号を無線送信する構成であったため、例えば親局装置の各セクタの通信可能領域に存する子局装置の総数がフレームに含まれる送信要求信号スロットの総数より小さい場合には、送信要求信号スロットの数が子局装置の数に対して十分に確保されているにもかかわらずに各子局装置が送信要求信号スロットをランダムに選択してしまうことから、送信要求信号の衝突が発生してしまうといった不具合があった。そして、このような送信要求信号の衝突が発生してしまう結果として、無線回線のスループットが低下してしまうといった不具合があった。
【0015】
なお、一般的な無線LANシステムでは、例えば10個前後の送信要求信号スロットを含んだフレームが無線通信に用いられる場合が多いが、親局装置の各セクタ毎の通信可能領域の面積を考えると、フレームに含まれる送信要求信号スロットの総数より多数の子局装置が1つのセクタの通信可能領域に存することは少ない場合も多い。このため、各子局装置が常に送信要求信号スロットをランダムに選択するような構成を用いると、信号衝突の低減にあまり効果を奏さないこともあった。
【0016】
また、上記文献1に記載された無線パケット通信方法によれば、上記従来例で述べたように送信要求信号の衝突を更に低減させることができるものの、この無線パケット通信方法においても、スロットをランダムに選択する(すなわち、空きスロット情報により指示される上りスロットの中から上りスロットをランダムに選択する)点では信号衝突の低減の効果が不十分であり、特に、アクセス要求が多い無線パケット端末同士の間での信号衝突が発生して無線回線のスループットの低下を招いてしまうといった問題があった。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、親局装置と子局装置とがフレームにより無線通信するに際して、子局装置から親局装置に対して無線送信される要求信号の衝突を低減させて無線回線のスループットを向上させることができる無線通信システムや、このような親局装置や子局装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る無線通信システムでは、親局装置と子局装置とがフレームにより無線通信するに際して、次のようにして、子局装置から親局装置へ要求信号を無線送信する。ここで、要求信号とは子局装置が親局装置に対して当該親局装置へのデータ通信を要求するための信号であり、フレームには当該要求信号を送信する複数の要求信号スロットが含まれている。
【0019】
すなわち、親局装置では、子局装置から無線受信する信号に基づいて、判定手段が通信可能領域に存する子局装置の総数がフレームに含まれる要求信号スロットの総数以下であるか否かを判定し、子局装置の総数がフレームに含まれる要求信号スロットの総数以下である場合には、通知手段が各子局装置に異なる要求信号スロットを割り当てて当該割り当てを当該各子局装置に通知する一方、子局装置の総数がフレームに含まれる要求信号スロットの総数より大きい場合には、通知手段が要求信号スロットのランダム選択指示を子局装置に通知する。
【0020】
一方、子局装置では、検出手段が親局装置の通知手段による通知内容を検出し、検出した通知内容が要求信号スロットの割り当てである場合には、要求信号送信手段が自己に割り当てられた要求信号スロットを用いて要求信号を無線送信する一方、検出した通知内容が要求信号スロットのランダム選択指示である場合には、要求信号送信手段がフレーム内の任意の要求信号スロットをランダムに選択した要求信号スロットを用いて要求信号を無線送信する。
【0021】
従って、例えば親局装置の通信可能領域に存する子局装置の総数がフレームに含まれる要求信号スロットの総数以下である場合には、各子局装置に異なる要求信号スロットが割り当てられるため、子局装置から親局装置に対して無線送信される要求信号の衝突をなくすことができ、これにより、無線回線のスループットを向上させることができる。一方、例えば親局装置の通信可能領域に存する子局装置の総数がフレームに含まれる要求信号スロットの総数より大きい場合には、例えば全ての子局装置により要求信号スロットをランダムに選択することが行われるため、このようなランダム選択により、要求信号の衝突を低減することができ、無線回線のスループットを向上させることができる。
【0022】
なお、例えば親局装置が複数のセクタを形成して子局装置と無線通信するような場合には、各セクタ毎に別個な通信可能領域が実現されるため、このような親局装置を用いたシステムに本発明が適用される場合には、本発明に言う通信可能領域とは例えば各セクタ毎の通信可能領域を示す。
また、本発明では、以上に示したような無線通信システムばかりでなく、上記のような判定手段や通知手段を備えた親局装置や、上記のような検出手段や要求信号送信手段を備えた子局装置も提供する。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
なお、本例では、親局装置と子局装置とがTDD方式を用いてフレームにより無線通信する無線LANシステムに本発明に係る無線通信システムを適用した場合を示し、また、本発明に係る親局装置の一実施例及び本発明に係る子局装置の一実施例も共に示す。
【0024】
まず、本例の無線LANシステムの概要を説明する。
図1には、本例の無線LANシステムに備えられた装置として、1つの親局装置1と、例えば当該親局装置1の通信可能領域に存する複数の子局装置2a〜2tと、親局装置1と接続された例えば有線の回線(例えばバックボーンネットワーク)3と、例えば有線LANを介して当該回線3と接続された1つのパーソナルコンピュータ(PC)4とを示してある。
【0025】
また、本例の親局装置はセクタアンテナを用いることにより例えば12個のセクタ(セクタs1〜セクタs12)を形成して、各セクタ毎に別個のフレームを用いて当該各セクタ毎の通信可能領域に点在する子局装置と無線通信するものとし、同図では、例えば全ての(12個の)セクタの通信可能領域を合わせた通信可能領域(例えば基本サービスエリア)BSAを点線で示してある。
【0026】
ここで、同図に示した装置1、2a〜2t、3、4は、本例の無線LANシステムを構成する一部の装置であり、例えば回線3には同図に示した親局装置1とは異なる親局装置もアクセスポイントとして接続されており、また、例えば同図に示した子局装置2a〜2tとは異なる子局装置も図外に存在しており、また、例えば回線3には同図に示したPC4とは異なるPCも接続されている。なお、PC4は例えば回線3を介して各親局装置1等を管理する機能を有している。
【0027】
また、図2には、本例の親局装置1と子局装置2a〜2tとの間の無線通信で用いられるフレーム(TDD無線フレーム)の一例を示してあり、このフレームには、報知信号を送信する報知信号スロットと、受信確認信号を送信する受信確認信号スロットと、送信要求信号を送信するn(nは複数であり、本例では例えばn=12)個の送信要求信号スロットと、送信許可信号を送信する送信許可信号スロットと、データ信号を送信するデータ信号スロットとが記載順に含まれている。なお、報知信号や送信要求信号や送信許可信号やデータ信号や受信確認信号の役割については、例えば上記従来例で述べたのと同様である。
【0028】
また、図3には、本例の親局装置1と子局装置2a〜2tとの間で行われる無線通信の一例として、子局装置2a〜2tから親局装置1に対してデータ信号を無線送信する場合の通信手順の一例を示してある。
すなわち、例えば上記従来例で述べたのと同様に、親局装置1は一定の時間間隔毎に報知信号を各セクタの通信可能領域に存する全ての子局装置2a〜2tに対して無線送信しており、子局装置2a〜2tは親局装置1から無線受信する報知信号に基づいて当該親局装置1との同期を確立し、親局装置1に対して送信すべきデータが発生した場合には、まず、当該親局装置1に対して送信要求信号を無線送信する。
【0029】
次に、親局装置1は子局装置2a〜2tから送信要求信号を無線受信すると、当該子局装置2a〜2tに対して送信許可信号を無線送信し、当該子局装置2a〜2tは例えば親局装置1から無線受信した送信許可信号により指示される送信タイミングに従って親局装置1に対してデータ信号を無線送信する。
【0030】
そして、親局装置1は子局装置2a〜2tから無線送信されたデータ信号の受信状況に応じて当該子局装置2a〜2tに対して受信確認信号を無線送信し、当該子局装置2a〜2tは例えば受信確認信号としてACKを受信した場合には当該データ信号の送信処理を終了する一方、受信確認信号としてNAKを受信した場合には当該データ信号の再送処理を実行する。
【0031】
次に、主として本発明の要部に係る構成部分を説明する観点で、本例の無線LANシステムに備えられた親局装置1や子局装置2a〜2tを更に詳しく説明する。なお、本例の親局装置1には、本例の特徴的な構成部分として、判定手段11と通知手段12とが備えられており、本例の子局装置2a〜2tには、本例の特徴的な構成部分として、検出手段21と要求信号送信手段22とが備えられている。
【0032】
まず、本例の親局装置1の特徴的な構成部分について説明する。
親局装置1は例えば図4に示すような子局管理テーブルをメモリに格納して有しており、この子局管理テーブルでは各セクタ毎に子局管理情報(セクタs1子局管理情報〜セクタs12子局管理情報)が管理されている。そして、各セクタ毎の子局管理情報としては、例えば当該セクタの通信可能領域に存する各子局装置の識別子と、MACアドレスと、通信開始時刻と、送信要求信号スロットの割り当て番号(本例では、1〜n)とが各子局装置毎に対応付けられて格納されている。なお、同図では、セクタs1の子局管理情報として、n個の子局装置(子局#1〜子局#n)に関する情報が格納されている場合を示してある。
【0033】
ここで、子局管理テーブルの管理の仕方の具体例を説明する。
すなわち、本例の子局装置2a〜2tは、例えば親局装置1の通信可能領域へ移動してきたときや親局装置1の通信可能領域で電源がオンにされたときには、当該親局装置1との同期を確立した後に最初に当該親局装置1への送信を行うに際して、まず、当該親局装置1に対して送信要求信号を無線送信する。なお、親局装置1により管理されていない子局装置2a〜2tが最初に親局装置1に対して送信要求信号を無線送信する場合には、本例では、例えばフレームに含まれる任意の送信要求信号スロットの中からランダムに選択した送信要求信号スロットを用いて当該送信が行われる。
【0034】
一方、親局装置1では、子局装置2〜2tから無線送信される送信要求信号が、当該子局装置2a〜2tの存するセクタ(本例では、セクタs1〜セクタs12)で受信され、親局装置1は当該セクタの番号(本例では、1〜12)や当該子局装置2a〜2tのMACアドレス等を検出する。
【0035】
図5には、本例の子局装置2a〜2tから無線送信される送信要求信号の一例を示してあり、この送信要求信号には、ビット同期を確立するのに用いられるビット同期信号と、フレーム同期を確立するのに用いられるフレーム同期信号と、信号の種別を特定する情報である信号種別と、当該送信要求信号のシーケンス番号の情報であるシーケンス番号と、当該送信要求信号の送信元となる子局装置2a〜2tの識別情報である子局識別子と、各種の制御情報である制御情報と、誤り制御のための情報であるフレームチェックシーケンス(FCS)とが含まれている。
【0036】
なお、本例では、各子局装置2a〜2tを識別するための情報として、例えば各子局装置2a〜2tに固有に割り当てられたMACアドレスが用いられるとともに、例えば子局装置2a〜2tが親局装置1により管理されているときには当該親局装置1により当該子局装置2a〜2tに対して付与される識別子(例えば識別番号)も用いられる。
【0037】
親局装置1は、子局装置2a〜2tから無線送信される送信要求信号を受信すると、当該送信要求信号を受信したセクタ(受信セクタ)に関する子局管理情報(例えばセクタs1であれば、セクタs1子局管理情報)を子局管理テーブル中で参照して、当該子局装置2a〜2tのMACアドレス(当該送信要求信号に含まれているMACアドレス)が子局管理情報として管理されているか否かを検索し、当該MACアドレスが子局管理情報として管理されていない場合には、当該子局装置2a〜2tに関して次のような新規登録処理を行う。
【0038】
すなわち、新規登録処理では、親局装置1は、新規登録対象となる子局装置2a〜2t(すなわち、受信した送信要求信号を送信した子局装置2a〜2t)に対して識別子を新たに付与し、当該識別子と、当該子局装置2a〜2tのMACアドレスと、当該子局装置2a〜2tとの通信開始時刻(例えばタイムスタンプ)と、当該子局装置2a〜2tに割り当てた送信要求信号スロットの割り当て番号とを対応付けて、子局管理テーブル中の受信セクタに関する子局管理情報として登録(格納)する。なお、このようにして子局管理テーブルに登録された各子局装置2a〜2tの情報は、本例では、例えば当該子局装置2a〜2tとの通信が一定時間(例えばタイムスタンプで示される時刻から一定時間)経過した後に発生していない場合には、抹消(消去)される。
【0039】
上記のような新規登録処理及び登録抹消処理を行うことにより、親局装置1では、各セクタ毎の通信可能領域に存する子局装置2a〜2tの総数を把握することができる。そして、本例の判定手段11は、上記のように各セクタの通信可能領域に存する子局装置2a〜2tから無線受信する送信要求信号に基づいて管理される子局管理テーブルを参照して、各セクタ毎に、通信可能領域に存する子局装置2a〜2tの総数がフレームに含まれる送信要求信号スロットの総数(本例では、n個)以下であるか否かを判定する機能を有している。
【0040】
また、親局装置1が各子局装置2a〜2tに対して送信要求信号スロットを割り当てる手順の具体例を説明する。
すなわち、親局装置1は、各セクタ毎に、子局管理テーブルに登録していく順番に従って、登録対象となる各子局装置2a〜2tに対して1番目の送信要求信号スロット(送信要求信号スロット1)からn番目の送信要求信号スロット(送信要求信号スロットn)までを順次固定的に割り当てていく。
【0041】
ここで、この割り当ての手順は各セクタについて同様である。
具体的に、セクタs1を例として示すと、まず、例えばセクタs1子局管理情報としていずれの子局装置の情報も管理されていないときに親局装置1が子局装置2aからの送信要求信号をセクタs1で受信したとすると、親局装置1は当該子局装置2aの情報をセクタs1子局管理情報として登録するに際して、当該子局装置2aに1番目の送信要求信号スロット1を割り当てる。
【0042】
次に、上記のようにしてセクタs1子局管理情報として1つの子局装置2aの情報が管理されているときに親局装置1が他の子局装置2bからの送信要求信号をセクタs1で受信したとすると、親局装置1は当該子局装置2aの情報をセクタs1子局管理情報として登録するに際して、当該セクタs1子局管理情報を検索して空いている送信要求信号スロットの中で最も番号が小さい2番目の送信要求信号スロット2を当該子局装置2bに割り当てる。そして、3番目以降についても同様にして、親局装置1は、セクタs1で送信要求信号を受信した各子局装置2a〜2tに対して、n番目までの送信要求信号スロットを順番に割り当てていく。
【0043】
一方、例えばセクタs1子局管理情報としてn個の子局装置の情報が管理されているときに親局装置1が他の子局装置2a〜2tからの送信要求信号を受信した場合には、親局装置1は当該子局装置2a〜2tの情報をセクタs1子局管理情報として登録するに際して、当該セクタs1子局管理情報により管理される子局装置2a〜2tの総数がフレームに含まれる送信要求信号スロットの総数を超えることを検出したことに応じて、当該セクタs1子局管理情報により管理される全ての子局装置2a〜2tに対する送信要求信号スロットの固定的な割り当てを解除し、これら全ての子局装置2a〜2tによりランダムに送信要求信号スロットを選択(ランダム選択)させるように切り替える。
【0044】
ここで、上記のような送信要求信号スロットの割り当ての情報や、ランダム選択を指示する情報は、本例では、親局装置1から子局装置2a〜2bに対して無線送信される送信許可信号を用いて通知される。
図6には、本例の親局装置1から無線送信される送信許可信号の一例を示してあり、この送信許可信号には、ビット同期を確立するのに用いられるビット同期信号と、フレーム同期を確立するのに用いられるフレーム同期信号と、信号の種別を特定する情報である信号種別と、当該送信許可信号のシーケンス番号の情報であるシーケンス番号と、当該送信許可信号の送信先(許可対象)となる子局装置2a〜2tの識別情報である許可対象子局識別子と、各種の制御情報である制御情報と、誤り制御のための情報であるフレームチェックシーケンス(FCS)とが含まれている。
【0045】
本例の親局装置1は、例えば子局装置2a〜2tに割り当てた送信要求信号スロットの番号情報を同図に示した送信許可信号に含ませることにより、当該送信許可信号の送信先となる子局装置2a〜2tに対して当該割り当てを通知する一方、例えば同図に示した送信許可信号に含められる子局MACアドレスのフィールド(6バイト)を全て“0”値(ALL0)として無線送信することにより、当該送信許可信号を受信する全ての子局装置2a〜2tに対してランダム選択の指示を通知する。
【0046】
本例の通知手段12は、以上のような仕方で、各セクタ毎に、通信可能領域に存する子局装置2a〜2tの総数がフレームに含まれる送信要求信号スロットの総数(本例では、n個)以下である場合には、これら各子局装置2a〜2tのそれぞれに異なる送信要求信号スロットを割り当てて当該割り当てを当該各子局装置2a〜2tに通知する一方、通信可能領域に存する子局装置2a〜2tの総数がフレームに含まれる送信要求信号スロットの総数(本例では、n個)より大きい場合には、送信要求信号スロットのランダム選択の指示をこれら全ての子局装置2a〜2tに通知する。
【0047】
次に、本例の子局装置2a〜2tの特徴的な構成部分について説明する。なお、本例では、各子局装置2a〜2tは同一の構成を有しており、各子局装置2a〜2tは親局装置1の通信可能領域BSA等を移動することが可能な装置である。
各子局装置2a〜2tは、上述のように、自己が存在する通信可能領域BSAの親局装置1との間で同期を確立した後に、当該親局装置1に対する送信の要求が発生した場合には、まず、自己のMACアドレスを含んだ送信要求信号を当該親局装置1に対して無線送信する。
【0048】
そして、各子局装置2a〜2tは、上記した送信要求信号に応じて親局装置1から無線送信される送信許可信号を受信し、受信した送信許可信号に含まれる通知内容を検出して、当該通知内容に従って次回からの送信要求信号の送信に用いる送信要求信号スロット(すなわち、送信要求信号を送信するタイミング)を選択する。
【0049】
具体的には、例えば子局装置2a〜2tが受信した送信許可信号中に(いずれかの)子局装置のMACアドレスが含まれていて、当該MACアドレスが自己のMACアドレスと一致した場合(すなわち、当該送信許可信号が自己宛てであった場合)には、当該子局装置2a〜2tは、通知内容が送信要求信号スロットの割り当てであると判定し、自己に割り当てられた送信要求信号スロットの番号を当該送信許可信号中から検出して、次回からの送信要求信号の送信には当該番号の送信要求信号スロットを用いる。
【0050】
一方、例えば子局装置2a〜2tが受信した送信許可信号中のMACアドレスのフィールド(6バイト)が全て“0”値である場合には、当該子局装置2a〜2tは、通知内容がランダム選択の指示であると判定し、次回からの送信要求信号の送信にはフレームに含まれる任意の送信要求信号スロットの中から1つの送信要求信号スロットをランダムに選択して用いる。なお、このようなランダム選択(ランダムアクセス)は、例えば各子局装置2a〜2tが1からnまでの1つの数値をランダムに発生させて、発生した数値と同じ番号の送信要求信号スロットを選択して用いるといった仕方で実現される。
【0051】
本例の検出手段21は、以上のような仕方で、親局装置1の通知手段12による通知内容を検出する。
また、本例の要求信号送信手段22は、以上のような仕方で、検出した通知内容が送信要求信号スロットの割り当てである場合には自己に割り当てられた送信要求信号スロットを用いて送信要求信号を無線送信する一方、検出した通知内容が送信要求信号スロットのランダム選択指示である場合にはフレーム内の任意の送信要求信号スロットをランダムに選択した送信要求信号スロットを用いて送信要求信号を無線送信する。
【0052】
このように、本例の無線LANシステムでは、例えば親局装置1の各セクタ毎に、通信可能領域に存する子局装置2a〜2tの総数がフレームに含まれる送信要求信号スロットの総数(本例では、n個)以下である場合には、各子局装置2a〜2tに異なる送信要求信号スロットが割り当てられるため、子局装置2a〜2tから親局装置1に対して無線送信される送信要求信号の衝突をなくすことができる。
【0053】
一方、本例の無線LANシステムでは、例えば親局装置1の各セクタ毎に、通信可能領域に存する子局装置2a〜2tの総数がフレームに含まれる送信要求信号スロットの総数(本例では、n個)より大きい場合には、複数の子局装置2a〜2tに同一の送信要求信号スロットを重複して割り当てることなく、全ての子局装置2a〜2tにより送信要求信号スロットをランダムに選択することが行われるため、送信要求信号の衝突を低減することができる。
【0054】
以上のように、本例の無線LANシステムでは、例えば子局装置2a〜2tの移動が日常的に発生するようなモバイル環境においても、上述したように親局装置1の各セクタの通信可能領域に存する子局装置2a〜2tの総数に応じて各子局装置2a〜2tに異なる送信要求信号スロットを割り当てること或いはランダムアクセスさせることが動的に行われるため、2以上の子局装置間での送信要求信号の衝突を低減させることができ、これにより、無線回線のスループットを向上させることができる。
【0055】
なお、本例では、上記図5に示した送信要求信号が本発明に言う要求信号に相当し、上記図2に示したフレームに含まれる送信要求信号スロットが本発明に言う要求信号スロットに相当する。
ここで、本発明に係る無線通信システムや親局装置や子局装置やフレームの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。
【0056】
一例として、フレームに含まれる要求信号スロットの総数としては、複数であれば、任意であってもよい。
また、例えば、子局装置の総数がフレームに含まれる要求信号スロットの総数以下であるか否かを判定する仕方や、当該総数以下である場合に各子局装置に異なる要求信号スロットを割り当てる仕方や、当該割り当てやランダム選択指示を子局装置に通知する仕方としては、種々な仕方が用いられてもよい。
【0057】
また、本例では、各子局装置を識別するために各子局装置に割り当てられたMACアドレスを用いた場合を示したが、例えば他の子局装置機器アドレスが用いられてもよい。
また、本例では、親局装置が複数のセクタを形成して無線通信を行う場合を示したが、必ずしもこのようなセクタ方式が親局装置で用いられなくともよく、例えば親局装置が単一の通信可能領域を形成するような場合には、当該親局装置では当該単一の通信可能領域に対応した子局管理情報が管理されればよい。
【0058】
また、本例では、子局装置の総数がフレームに含まれる要求信号スロットの総数より大きい場合には全ての子局装置に対して親局装置がランダム選択指示を与える構成としたが、本発明では、他の構成を用いることも可能である。具体的には、このような場合に、例えば送信要求が頻繁に発生する(1又は複数の)子局装置に対しては親局装置が要求信号スロット(重複して割り当てる場合も含む)を割り当てる一方、残りの子局装置(すなわち、比較的送信要求が発生しない1以上の子局装置)に対しては親局装置がランダム選択指示を与えるといった構成とすることも可能であり、本発明は、このような構成をも包含するものである。
【0059】
また、本発明に係る親局装置により行われる各種の処理や本発明に係る子局装置により行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROMに格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成であってもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピーディスクやCD−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体として把握することもでき、当該制御プログラムを記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【0060】
また、本例では、特に好ましい態様として、本発明に係る無線通信システムを無線LANシステムに適用し、本発明に係る親局装置や本発明に係る子局装置を無線LANシステムに備えられる親局装置や子局装置に適用した場合を示したが、本発明の適用分野としては、必ずしも無線LANシステムに限られず、本発明は、種々な無線通信システムに適用することが可能なものである。
【0061】
具体的には、本発明は、例えば親局装置を中心に構成されるネットワークノードの構成にかかわらずに種々なシステムに適用することも可能なものであり、一例として、子局装置が固定的に使用される加入者無線アクセス(FWA:Fixed Wireless Access)のようなシステムに適用することも可能であり、例えば加入者の構成が日毎に変化するようなFWAシステムにおいて無線回線のスループットを向上させることができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る無線通信システムや親局装置や子局装置によると、複数の要求信号スロットが含まれたフレームにより親局装置と子局装置とが無線通信するに際して、親局装置では通信可能領域に存する子局装置の総数がフレームに含まれる要求信号スロットの総数以下である場合には各子局装置に異なる要求信号スロットを割り当てて当該割り当てを通知する一方、その他の場合には要求信号スロットのランダム選択指示を子局装置に通知し、子局装置では親局装置からの通知内容に従って、自己に割り当てられた要求信号スロットを用いて、或いは、ランダムに選択した要求信号スロットを用いて要求信号を無線送信するようにしたため、子局装置から親局装置に対して無線送信される要求信号の衝突を低減させることができ、これにより、無線回線のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る無線LANシステムの構成例を示す図である。
【図2】フレームの一例を示す図である。
【図3】親局装置と子局装置との無線通信シーケンスの一例を示す図である。
【図4】子局管理テーブルの一例を示す図である。
【図5】送信要求信号の一例を示す図である。
【図6】送信許可信号の一例を示す図である。
【符号の説明】
1・・親局装置、 2a〜2t・・子局装置、 3・・回線、 4・・PC、
11・・判定手段、 12・・通知手段、 21・・検出手段、
22・・要求信号送信手段、
Claims (2)
- 親局装置と子局装置とがフレームにより無線通信する無線通信システムにおいて、
フレームには、子局装置が親局装置に対して当該親局装置へのデータ通信を要求する要求信号を送信する複数の要求信号スロットが含まれており、
親局装置には、通信可能領域に存する所定の複数の子局装置に対しては要求信号スロットを割り当てて当該割り当てを通知する一方、通信可能領域に存する残りの子局装置に対しては要求信号スロットのランダム選択指示を通知する通知手段を備え、
子局装置には、親局装置の通知手段による通知内容を検出する検出手段と、
検出した通知内容が要求信号スロットの割り当てである場合には自己に割り当てられた要求信号スロットを用いて要求信号を無線送信する一方、検出した通知内容が要求信号スロットのランダム選択指示である場合にはフレーム内の任意の要求信号スロットをランダムに選択した要求信号スロットを用いて要求信号を無線送信する要求信号送信手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信システム。 - 親局装置と子局装置とがフレームにより無線通信する無線通信方法において、
フレームには、子局装置が親局装置に対して当該親局装置へのデータ通信を要求する要求信号を送信する複数の要求信号スロットが含まれており、
親局装置が、通信可能領域に存する所定の複数の子局装置に対しては要求信号スロットを割り当てて当該割り当てを通知する一方、通信可能領域に存する残りの子局装置に対しては要求信号スロットのランダム選択指示を通知し、
子局装置が、親局装置による通知内容を検出し、検出した通知内容が要求信号スロットの割り当てである場合には自己に割り当てられた要求信号スロットを用いて要求信号を無線送信する一方、検出した通知内容が要求信号スロットのランダム選択指示である場合にはフレーム内の任意の要求信号スロットをランダムに選択した要求信号スロットを用いて要求信号を無線送信する、
ことを特徴とする無線通信方法。
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