以下に、本発明に係る電池システムおよび上限電流制御方法の最良の実施形態について、その一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、本発明の実施の形態を例示する電池システムとして、複数のニッケル水素蓄電池の組み合わせからなるニッケル水素蓄電池システムによって構成する場合を例にとって説明することとするが、本発明は、かかる場合のみに限られるものではない。例えば、複数のリチウムイオン電池など、ニッケル水素蓄電池以外の二次電池の組み合わせからなる二次電池システム、一次電池を含め、複数の電池の組み合わせからなる電池システムであっても、全く同様に適用することができる。
(発明の概要)
まず、本発明の概要について説明する。本発明は、負荷に対する放電出力電流の制御を行う電池システムおよび上限電流制御方法に関し、負荷に対して一対の放電器が並列接続された組放電器の上限電流値(垂下制御動作を行う電流値)を、垂下制御動作の発生状態如何に応じて上下に変更する制御を行う点にその特徴があり、その結果として、電池システムを構成する各組放電器間の出力電流のばらつきが抑制され、各組放電器へ電力を入力している各組電池に蓄積された電力エネルギーを有効に利用することができるという効果が得られる。
つまり、本発明に係る電池システムおよび上限電流制御方法においては、出力電圧が異なる一対の放電器を並列接続して組放電器を構成して、出力電圧が高い方の放電器を、出力電圧が低い放電器よりも低い上限電流値(垂下電流値)を設定し、かつ、当該放電器の垂下制御動作の発生状態の如何によって、当該上限電流値を上下に変化させて設定するように制御することにより、各組放電器の出力電流の均等化を図ることを可能としている。
(実施例の構成)
次に、本発明に係る電池システムの構成の一例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る電池システムの構成の一例を説明するための回路図であり、従来技術として説明した図8の場合と同様に、複数の組電池と複数の放電器と複数の充電器とを用いて構成しているが、図1に示す本実施例においては、図8の放電器10Aの位置に、出力電圧が異なる一対の放電器を並列接続した組放電器10を配置して構成した電池システムの一構成例を示している。
図1において、例えば、ニッケル水素蓄電池を用いて出力30kWhの電池システムを実現する場合においては、定格1.2Vのニッケル水素蓄電池セル(平均電圧1.2V、電流容量95Ah)を10本直列接続し、これを1モジュールとし、さらに、4モジュール分を直列接続して、これを1系統の組電池(出力5kWh)とし、さらに、6系統の組電池を並列接続した形に構成する。
つまり、図1の電池システムは、複数の組電池を用いる電池システムとして、例えば、それぞれが満充電状態で5kWhの電力容量を有する1系組電池301、2系組電池302、3系組電池303、4系組電池304、5系組電池305、6系組電池306、の6系統の組電池が並列接続されている。
さらに、6系統の組電池30それぞれから出力される電池電圧を負荷40の許容電圧範囲内に収めるように昇降圧させるための複数の組放電器10(図1の場合、1系組電池301、2系組電池302用として組放電器1 101、3系組電池303、4系組電池304用として組放電器2 102、5系組電池305、6系組電池306用として組放電器3 103)と、整流器50から複数の組電池30それぞれに間欠充電を行うための複数の充電器20(図1の場合、1系組電池301、2系組電池302用として充電器1 201、3系組電池303、4系組電池304用として充電器2 202、5系組電池305、6系組電池306用として充電器3 203)と、組放電器10、充電器20を含む電池システム全体の動作を制御する電源制御部60とを少なくとも備えている。
言い換えると、図1の電池システムにおいては、3台の各組放電器10の入力側に組電池30を複数系列(図1では2系列)ずつ接続し、各組放電器10の出力側を電気的に共通接続して、負荷40へ電力を供給するように構成され、一方、3台の各充電器20の出力側に、間欠充電を行う組電池30を複数(図1では2系列)ずつ接続し、各充電器20の入力側を電気的に共通接続して、整流器50から直流電力を入力するように構成される。
すなわち、図1の電池システムは、前述のように、複数の組放電器10は、その出力側で電気的に共通接続されて、負荷40に接続され、また、複数の充電器20は、その入力側で電気的に共通接続されて、整流器50に接続される構成とされており、組放電器10、充電器20および組電池30を増設することによって、電池システムの拡張が可能となっている。
例えば、1系統の出力が5kWhの組電池30を、図1に示すように、6系統並列接続することによって、30kWh電池システムの電池架を構成した場合、この30kWh電池システムの電池架をさらに3架分並列接続することによって、100kWh級の電池システムを実現することができる。
ここで、3台の各組放電器10(101,102,103)は、同程度の電力容量で、かつ、出力電圧が異なる複数(図1では一対)の放電器a,bを並列接続して構成されており、組放電器1 101は、放電器1a 101a,1b 101bを、組放電器2 102は、放電器2a 102a,2b 102bを、組放電器3 103は、放電器3a 103a,3b 103bを、それぞれ並列接続して構成されている。以下の説明においては、各組放電器10(101,102,103)を構成する複数(図1では一対)の放電器a,bのうち、放電器a(すなわち、放電器1a 101a,放電器2a 102a,放電器3a 103a)が、放電器b(すなわち、放電器1b 101b,放電器2b 102b,放電器3b 103b)よりも、出力電圧が高く、上限電流値(垂下電流値)が低く設定しているものとして説明する。
また、各組放電器10(101,102,103)を構成する各放電器10ab(101a,101b,102a,102b,103a,103b)は、負荷40側の許容電圧範囲内のあらかじめ定めた出力電圧を出力するためのDC−DCコンバータである。
つまり、図1に示す各組放電器10(101,102,103)を構成する各放電器10ab(101a,101b,102a,102b,103a,103b)それぞれは、図2に示すように、昇圧部11aおよび降圧部11bを含んで構成される。図2は、放電器に搭載される昇降圧用のDC−DCコンバータの回路構成の一例を示す回路図であり、制御部12を除いて、従来技術として前述した図9の構成とほぼ同様の構成からなり、制御部12の制御により、あらかじめ定めた出力電圧に設定するための昇降圧用のDC−DCコンバータとして構成される昇圧部11aと降圧部11bとの回路構成の一例を示している。
放電器10abへ電力を入力する直流電源として、前述のように、複数のニッケル水素蓄電池からなる組電池30が用いられ、図9の放電器10Aに示した回路構成の場合と同様に、直流電源からの入力電圧を昇圧またはそのまま出力する昇圧手段である昇圧部11aと、直流電源からの入力電圧を降圧またはそのまま出力する降圧手段である降圧部11bとの双方を介して、制御部12により、出力電圧値を制御して、負荷40へ電力を供給するように構成されている。
ここで、放電器10abの昇圧部11a、降圧部11bは、それぞれ、リアクトル1a,1b、ダイオード2a,2b、コンデンサ3a,3b、スイッチング素子4a,4bを、少なくとも備えて構成されている。
つまり、放電器10abは、スイッチング素子4a,4bの動作を含め、当該放電器10ab全体の動作を制御する制御手段である制御部12からの制御に基づいて、スイッチング素子4(4a,4b)を適当なスイッチング周波数でスイッチング動作させることにより、組電池30からの入力電圧を所望の電圧設定値にまで昇圧動作または降圧動作を行って、負荷40への出力電圧として出力したりする。
あるいは、制御部12からの制御に基づいて、スイッチング素子4aを開放し、スイッチング素子4bを短絡することにより、組電池30からの入力電圧を、そのまま、負荷40への出力電圧として出力したり、あるいは、スイッチング素子4bを開放することにより、負荷40に対する放電動作を停止させ、出力電圧を急激に低下させる垂下制御を行ったりする動作を行う。
昇圧部11aは、制御部12の制御によって、組電池30から負荷40へ供給される電圧が負荷40の動作電圧範囲を下回る場合に、あるいは、出力電流があらかじめ設定された電流閾値以下になっている場合に、スイッチング素子4aを制御して、あらかじめ定めた所定の電圧設定値へ昇圧動作を行うものである。
降圧部11bは、制御部12の制御によって、組電池30から負荷40へ供給される電圧が負荷40の許容電圧範囲を上回る場合に、あるいは、出力電流があらかじめ設定された上限電流値(垂下電流値)を上回っている場合に、スイッチング素子4bを制御して、あらかじめ定めた所定の電圧設定値へ降圧動作を行ったり、あるいは、出力電圧を急激に低下させる垂下制御動作を行ったりするものである。
この結果、放電器10abに入力される組電池30の電源電圧が充放電時の条件や残容量に応じて変化したとしても、放電器10abの制御部12は、スイッチング素子4(4a,4b)を制御して、放電器10abから負荷40に対して出力される放電器出力電圧の昇圧または降圧動作を行い、負荷40の許容電圧範囲(入力電源電圧範囲)内の出力電圧として一定の電圧値に保持され、かつ、放電器10abの上限電流値を超えた出力電流が流れた場合には、放電器出力電圧を急激に低下させて、機器を保護するようにしている。
なお、組放電器10を構成する一対の放電器a,b(つまり、複数の放電器10abのうち、組放電器101の一対の放電器1a 101a,1b 101b、組放電器102の一対の放電器2a 102a,2b 102b,組放電器103の一対の放電器3a 103a,3b 103b。以下、放電器a,bと略記する)のそれぞれの出力電圧については、放電器a,bのそれぞれの制御部12の制御によって、前述のように、負荷40の許容電圧範囲に適合する電圧に設定されるが、放電器a,bのうち、放電器a(すなわち、放電器1a 101a,放電器2a 102a,放電器3a 103a)の方の出力電圧が、放電器b(すなわち、放電器1b 101b,放電器2b 102b,放電器3b 103b)の出力電圧よりも高い一定の電圧に保持するように設定されている。
これにより、各組放電器10を構成する放電器a,bのうち、出力電圧を高く設定した放電器aが、優先的に負荷40側へ電力を供給する状態に設定され、他方の放電器bは、当該放電器bと対になっている放電器aが垂下制御動作によって出力電圧を急激に低下させて、組放電器10としての出力電圧が、当該放電器bに設定されている出力電圧まで低下してくるまで、負荷40に対する給電動作が停止状態に設定される。
また、出力電圧を急激に低下させる垂下制御動作を行う上限電流値については、組放電器10の一対を構成するほぼ同程度の出力電流容量(最大電流容量)を有する2つの放電器a,bにおいて、それぞれの制御部12の制御によって、出力電圧を高く設定した放電器a(すなわち、放電器1a 101a,放電器2a 102a,放電器3a 103a)では、当該放電器aの出力電流容量よりも小さい電流値を上限電流値としてあらかじめ設定し、出力電圧が低い放電器b(すなわち、放電器1b 101b,放電器2b 102b,放電器3b 103b)では、当該放電器bの出力電流容量まで放電電流を出力することが可能な電流値を上限電流値としてあらかじめ設定して、結果として、前述のように、放電器aの方が、放電器bよりも低い上限電流値に設定されている。
さらに、出力電圧を高く設定した放電器aの上限電流値については、当該放電器aの制御部12の制御によって、垂下制御動作の発生状態の如何に応じて、現在設定されている上限電流値の現在値を上下に変化させて可変に設定することとしている。
なお、以下に説明する各実施例においては、図1、図2のごとき構成を有する電池システムの組放電器10について、各組電池30の電圧が、充放電の条件や、電池の残容量に応じて64V〜40Vの範囲で変化するものとし、一方、負荷40は、DC48V機器であり、電源電圧としての入力範囲(許容電圧範囲)は、53V〜42Vとした場合を例にとって、負荷40の負荷電流が増加した場合の「負荷増加モード」における放電制御動作(上限電流値制御動作)、負荷40の負荷電流が減少した場合の「負荷減少モード」における放電制御動作(上限電流値制御動作)、負荷40の負荷電流として増加・減少の両方が生じる場合の「負荷増加・減少モード」における放電制御動作(上限電流値制御動作)のそれぞれについて、放電電流を効果的に制御して、各組放電器10間の出力電流のばらつきの発生を回避して、複数の組電池30すべての能力を有効に活用することができる電池システムを実現する一例について説明する。
また、本実施例においては、各放電器10abの制御部12は、ハードウェア論理によって構成される場合を例示するが、本発明は、かかる場合のみに限るものではない。例えば、制御部12として、プログラム(放電制御プログラム)の実行が可能なコンピュータによって構成して、プログラム論理によって放電器10abの放電動作を制御するすなわち出力電圧と出力電流とを制御するようにしても良い。コンピュータによって構成する場合は、放電器10abの放電動作を制御する放電制御プログラムを該コンピュータによって読み取り可能なROMやフラッシュメモリなどの記録媒体に記録して、制御部12のコンピュータの動作を行わせるようにしても良い。
(第1の実施例)
まず、図1,2に示す本発明に係る電池システムの第1の実施例の動作について、負荷40の負荷電流が増加する場合における組放電器10の「負荷増加モード」の放電動作制御の一例を詳細に説明する。
図1の電池システムの構成において、整流器50からの直流電源により充電器20を介して組電池30が満充電状態にされ、整流器50が停止した後、組電池30から組放電器10を介して負荷40へ電力供給する場合、組放電器10を構成する一対の放電器a,bのうち、出力電圧の高い放電器aが優先して負荷40へ電力を出力する動作が実施される。
すなわち、3台の組放電器10(101,102,103)を備えている電池システムの場合、3台分の放電器a(放電器1a 101a、放電器2a 102a、放電器3a 103a)の合計出力電力容量が負荷40の消費電力容量よりも大きい場合は、組放電器10を構成する一対の放電器a,bのうち、出力電圧が低い放電器b(放電器1b 101b、放電器2b 102b、放電器3b 103b)は放電を行わない。
このように、出力電圧が高い放電器aのみから負荷40へ電力を出力する場合、各放電器a(放電器1a 101a、放電器2a 102a、放電器3a 103a)の出力端から、それぞれが並列接続されている並列接続点までの配線抵抗値の差に伴って、各放電器a間に出力電流に偏りが生じているが、負荷40の消費電力が3台分の放電器aの合計電力容量より小さい軽負荷時であり、組放電器10のいずれでも負荷40への給電が十分に可能な状態にあり、電池システムとしての電力容量の低下の問題とはならない。
3組の組放電器10の複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が高い放電器aから負荷40に電力を供給している状態で、負荷40側の負荷の増加により所要電力容量が増加して、3台分の放電器aの合計出力電力容量では不足する状態になったとき、3組の組放電器10の放電器aは、上限電流値(垂下電流値)を超える状態にまで出力電流が増加する結果、出力電圧を低下させる垂下制御動作が実施される。
放電器a側の垂下制御動作により、負荷40に対する出力電圧が低下して、組放電器10として並列接続されている他方の放電器bの出力電圧に達すると、今まで放電動作をしていなかった放電器bも放電を開始し、3台の放電器bから負荷40へ不足分の電流が供給される状態になる。
すなわち、放電器aが垂下制御動作中で出力電流を流していない状態では、放電器b側(上限電流値が放電器aの上限電流値よりも大きい出力電流容量の値に設定されている放電器b側)から負荷40側へ出力電流が供給される。その結果、放電器aが垂下制御動作から脱して、出力電流の供給を再開すると、出力電圧が高い放電器aから優先的に出力電流を供給するようになり、放電器bは、放電器aの不足分の電流を補う形態で出力電流を供給する。したがって、負荷40の負荷電流が増加している場合には、再度、出力電流が、放電器aの上限電流値を超えて流れようとして、垂下制御動作に移行して、出力電圧が低下するという動作を継続的に繰り返す。
ここで、放電器bによる負荷40への給電動作については、各組放電器10の放電器bから並列接続点までの配線抵抗値の差によって、各放電器b間で不足分の放電電流に偏りが生じている。しかし、各組放電器10の放電器aが、検知時間としてあらかじめ定めた第1の継続時間ΔT1の時間の間、当該放電器a自身の垂下制御動作が繰り返し継続されていることを検知したとき、待機時間としてあらかじめ定めた第1の経過時間Te1だけ経過した時点で、出力を制限する上限電流値(垂下電流値)を、あらかじめ定めた一定量の電流増分値ΔIaだけ増加する動作を繰り返すことによって、放電器b側からの不足分の電流供給量は徐々に減少していき、各組放電器10の出力電流は、均等に分担される状態に移行していくことになる。
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施例における組放電器10の制御動作として、「負荷増加モード」における組放電器10の放電器aの上限電流値を制御する制御方法をさらに説明する。図3は、本発明に係る電池システムを構成する組放電器10の動作の第1の実施例を説明するためのフローチャートであり、負荷40の負荷電流が増加する場合すなわち組放電器10の「負荷増加モード」の放電動作制御について、本発明における上限電流制御方法の一例として示している。
組放電器10の一対の放電器a,bのうち、出力電圧が高い放電器aは、前述のように、制御部12によって、出力電圧を低下させる垂下制御を行う電流値である上限電流値Iuを可変に設定することが可能であり、図3に示すフローチャートの手順によってあらかじめ定めた初期値から変化していく。すなわち、各放電器aの制御部12は、自己の放電器aの出力電流が、あらかじめ定めた上限電流値Iuの初期値(例えば30A)を超えて負荷40側に流れようとしたことを検知した場合、前述のように、出力電圧を急激に低下させる垂下制御動作を行う。しかる後、垂下制御動作が、あらかじめ定めた第1の継続時間ΔT1(例えば1秒)の間継続しているか否かを確認する(ステップS01)。
第1の継続時間ΔT1の間、垂下制御動作が継続していることを検知した場合(ステップS01のYES)、制御部12は、第1の経過時間Te1としてあらかじめ定めた時間(例えば1秒)だけさらに経過した後で、現在設定されている上限電流値(垂下電流値)Iuの現在値例えば初期値に対して、電流増分値ΔIaとしてあらかじめ定めた電流値(例えば1A(アンペア))だけ加算し(例えば現在値が初期値30Aであった場合は、30Aに1Aだけ加算して31Aとし)、新たな上限電流値Iuの現在値として変更して設定する(ステップS02)。
なお、第1の経過時間Te1は、電池システムの各組放電器10それぞれを構成する各放電器aにおける動作タイミングの違いを吸収するための待機時間である。
しかる後、ステップS01に復帰して、さらに、垂下制御動作が行われているか否かを確認する動作に移る。ただし、当該放電器aの出力電流が、垂下制御動作を行う上限電流値Iuは、初期値例えば30Aとの比較ではなく、変更後の上限電流値Iuの現在値例えば31Aになっており、出力電流が初期値例えば30Aを超えていたとしても、垂下制御動作は行わず、変更後の上限電流値Iuの現在値例えば31Aを超えていることが制御部12で検知されると、垂下制御動作を実施することになる。
かくのごときステップS01,S02の手順を繰り返すことによって、放電器aの出力電流が、現在設定されている上限電流値Iuの現在値以下に低下しない限り、放電器aの上限電流値Iuの現在値は、第1の継続時間ΔT1(例えば1秒)と第1の経過時間Te1(例えば1秒)との合計時間(ΔT1+Te1)が経過する都度、電流増分値ΔIa(例えば1A)ずつ、増加して設定されていく動作が繰り返される。
なお、前述の説明においては、第1の継続時間ΔT1と第1の経過時間Te1とを、同じ1秒とする場合を例示しているが、本発明では、同じ時間に必ずしも揃える必要はなく、異なる時間を設定するようにしても良い。
次に、図3のフローチャートに示した制御部12の出力電流制御方法の動作について、図4の説明図を用いてさらに説明する。図4は、本発明に係る上限電流制御方法の第1の実施例を説明するための説明図であり、負荷40側へ出力する組放電器10の放電器aの出力電流が増加して、時刻T1において、上限電流値Iuを超えて、さらに増加して流れ続けている場合を例にとって示している。図4において、時間軸を横軸にして、図4(A)には、組放電器10の放電器aの出力電流と上限電流値Iuの変化の様子を、また、図4(B)には、組放電器10の放電器aの出力電圧の変化の様子を示している。
図4(A)に示すように、時刻T1の時点で、組放電器10の放電器aの制御部12が、出力電流が上限電流値Iuの初期値例えば30Aを超えたことを検知すると、図2に示すスイッチング素子4(4a,4b)を制御して、垂下制御動作を行い、図4(B)に示すように、出力電圧V1を低下させるとともに、継続時間の計時を開始する。したがって、組放電器10のもう一方の放電器bの出力電圧すなわち第2の出力電圧V2まで低下した時点で、放電器bも放電動作を開始して、放電器aの出力電流の不足分をカバーする出力電流を負荷40に流すようになる。
この結果、放電器aの出力電流は、図4(A)のように、上限電流値Iuの現在値(最初の場合は、初期値)を下回ることになり、出力電圧を元の出力電圧V1に復帰させて放電動作を再開することになるが、放電器bよりも優先して出力電流を流す状態になるため、負荷40への出力電流が直ちに上限電流値Iuの現在値を超えてしまい、垂下制御動作を再び行うという動作を繰り返すことになる。
放電器aの出力電圧が垂下制御動作により出力電圧が低下する動作を開始してから、検知時間となる第1の継続時間ΔT1の間、出力電流が上限電流値Iuの初期値30A以下にならず、垂下制御動作が継続すると、さらに、待機時間となる第1の経過時間Te1の時間を経過した後に、すなわち、垂下制御動作で出力電圧が低下してから(ΔT1+Te1)の時間だけ経過した時刻T2において、図4(A)に示すように、現在設定されている放電器aの上限電流値Iuの初期値30Aに電流増分値ΔIa(例えば1A)だけ加算して、上限電流値Iuの現在値を31Aに変更して設定する。
しかる後においても、図4(A)に示す例においては、出力電流が変更後の上限電流値Iuの現在値よりも大きい値で出力され続けるので、垂下制御動作による出力電圧の低下動作を繰り返し、放電器aの上限電流値Iuの現在値を変更設定してから(ΔT1+Te1)の時間だけ経過する都度、変更後の上限電流値Iuの現在値に電流増分値ΔIa(例えば1A)だけさらに加算して、上限電流値Iuの現在値を変更する動作を繰り返し、時刻T5において、放電器aの出力電流が、変更後の上限電流値Iuの現在値よりも小さい電流値になったことが検知されると、制御部12は、出力電圧を低下させる垂下制御動作を停止するとともに、継続時間の計時を停止する。
さらに、放電器aの制御部12は、垂下制御動作の停止後、放電器aの出力電圧を元の出力電圧V1に復帰させる。この結果、組放電器10の出力電圧が、もう一方の放電器bの出力電圧よりも高い電圧値に設定されるので、放電器bの放電動作が停止する。
以上のように、組放電器10の一対の放電器a,bのうち、負荷40に対して出力電流を優先的に流す放電器aの上限電流値Iuの現在値を検知時間の第1の継続時間ΔT1と待機時間の第1の経過時間Te1との合計時間を待って変更して設定する制御を行うことによって、電池システムを構成する複数の各組放電器10について、ほぼ同時に実施することが可能となり、各放電器aの出力電流の不均衡を極めて小さくすることができる。
例えば、整流器50の出力電圧が52V、放電器aの出力電圧が51V、放電器bの出力電圧が50Vであり、放電器a,bの出力電流容量が100A、放電器aの上限電流値Iuの初期値が30Aであって、かつ、負荷40の負荷電流が50Aから99Aまで増加するとした場合について、「負荷増加モード」の場合の動作を以下にさらに説明する。
負荷40が50A(一定電流)となった時点で、整流器50が停止して、組電池30から入力される電力を組放電器10から負荷40に対して放電を開始すると、組放電器10の一対の放電器a,bのうち、出力電圧が高い放電器すなわち出力電圧が51Vの放電器aから優先的に放電が実施される。
ここで、放電器aの上限電流値Iuは30Aであるので、放電器bの放電動作を行わなくても、3台の放電器aの放電動作だけで、負荷40への電力供給が可能である。このとき、各放電器aの出力端から、各放電器aの出力端が並列接続される並列接続点までの配線抵抗値の差により、各放電器aの出力電流に偏りが生じている。
しかし、このまま、放電器aからの放電が継続して、いずれかの組放電器10の放電器aが重負荷となって、出力を停止したとしても、負荷40への全負荷電流50Aを、いずれか1組の組放電器10の放電器a,bでも十分に供給可能(出力電流容量100Aまで可能)であるため、電池システムとしての能力低下の問題は起こらない。
負荷40側の負荷が増加して、負荷電流が放電器aの上限電流値Iu30Aの3台分の合計90Aに達するまでは、放電器bの放電動作を行うことなく、3台の放電器aのみの放電動作が継続する。
負荷40側の負荷がさらに増加して、負荷電流が放電器aの上限電流値Iu30Aの3台分の合計90Aを超えて、例えば99Aに達すると、3台の放電器aはすべて垂下制御動作を実施することとなり、3台の組放電器10の各放電器aの出力電圧は、放電器bの出力電圧である50Vまで低下する。
この結果、3台の組放電器10の各放電器bは放電動作を開始するが、垂下制御状態から復帰する都度、3台の放電器aに優先的に出力電流が流れるので、各放電器bから出力される合計の電流量は、平均的には、3台の放電器aから出力されている出力電流の合計すなわち上限電流値の合計の90Aを超える残りの部分の電流値すなわち9Aであり、この残りの9Aの出力電流を3台の放電器bで分担することになる。
一方、各放電器aの制御部12は、放電器a自身の出力電圧が低下して垂下制御動作が、検知時間としてあらかじめ定めた第1の継続時間ΔT1(例えば1秒)の間継続していることを検知すると、待機時間としてあらかじめ定めた第1の経過時間Te1(例えば1秒)が経過した後に、上限電流値Iuの現在値に電流増分値ΔIa(例えば1A)を加算して、新たな上限電流値Iuの現在値として設定する。したがって、最初の上限電流値Iuの現在値の変更動作の場合は、上限電流値Iuの現在値がその初期値の30Aであれば、3台の放電器aはいずれも上限電流値の現在値が31Aに設定される。
かかる上限電流値Iuの現在値の変更動作は、3台の放電器aの垂下制御動作が停止するまで繰り返され、前述のように、負荷40の負荷電流が99Aの場合は、3台の放電器aのいずれも、第1の継続時間ΔT1の時間に亘って垂下制御の継続を検知した後、第1の経過時間Te1を待ち合わせた後、順次更新されていって、上限電流値が33Aとなると、3台の放電器aが33Aずつの出力電流を分担して、負荷40側に出力するような状態になり、3台の放電器aの上限電流値Iuの現在値が、いずれも、33Aに達した時点で、3台の放電器aの垂下制御動作が停止する。3台の放電器aの垂下制御動作が停止すると、3台の放電器aの出力電圧は50Vから51Vに復帰し、放電器b側の放電動作も完全に停止するという動作を行う。
すなわち、本発明に係る電池システムおよび上限電流制御方法の一例を示す本実施例においては、複数の電池を組み合わせてなる組電池30と組電池30から入力される直流電力を降圧または昇圧して負荷40側に出力する放電器10abとのそれぞれを、複数備えた電池システムであって、出力電圧が異なる複数例えば一対の放電器a,bを並列接続した組放電器10を複数組構成し、組放電器10それぞれに、1組以上の組電池30を並列接続して入力し、かつ、複数組の組放電器10それぞれの出力側を並列接続して、負荷40に接続して構成している。
ここで、組放電器10を構成する放電器10abは、リアクトル1a,1bとダイオード2a,2bとコンデンサ3a,3bとスイッチング素子4a,4bとからなり、スイッチング素子4a,4bを制御することにより、組電池30から入力される直流電力を、降圧または昇圧して、負荷40側に出力する。
また、本実施例においては、組放電器10を構成する複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が最も高い放電器aの上限電流値Iuの初期値または現在設定されている上限電流値Iuの現在値が、出力電圧が低い他の放電器の上限電流値Iuよりも低く設定されている。
ここで、組放電器10を構成する複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が最も高い放電器aが、優先的に、負荷40に対する電力供給を行うように、組放電器10は構成されている。
さらに、本実施例においては、組放電器10を構成する複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が最も高い(すなわち、上限電流値が最も小さい)放電器aの出力電流が、当該放電器aに現在設定されている上限電流値Iuの現在値を超えて流れて、出力電圧を低下させる垂下制御動作を開始してから、第1の継続時間ΔT1としてあらかじめ定めた時間の間、出力電圧が最も高い当該放電器aの出力電流が当該放電器aの上限電流値Iuの現在値を超えて継続して流れていることを検知した場合、しかる後さらに第1の経過時間Te1としてあらかじめ定めた時間を経過した際に、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値に、あらかじめ定めた電流増分値ΔIaを加算して、新たな上限電流値Iuの現在値として設定する。
また、組放電器10を構成する複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が最も高い放電器aの上限電流値Iuの現在値を変更設定した後、放電器aの出力電流が、当該放電器aに現在設定されている上限電流値Iuの現在値を超えて流れて、垂下制御動作を開始してから、第1の継続時間ΔT1の間、当該放電器aの出力電流が上限電流値Iuの現在値を超えて継続して流れていることを検知した場合も、しかる後さらに第1の経過時間Te1を経過した際に、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値に、電流増分値ΔIaを加算して、新たな上限電流値Iuの現在値として設定する。
このような放電制御(上限電流制御)を行うことによって、組放電器10の複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が高い放電器a側の上限電流値Iuの現在値の変更制御を、電池システムを構成する複数の各組放電器10について、ほぼ同時に実施することによって、各放電器aの出力電流の不均衡を極めて小さくすることができる。
而して、各組電池30が同一仕様で放電開始前に満充電の状態に充電済みであった場合には、各組電池30は、ほぼ同一の減少率で、残容量が減少することになり、すべての組電池がほぼ同時に放電終止電圧に達して放電が停止するため、各組電池30に蓄積された放電可能なエネルギーのすべてを負荷40へ有効に供給することができる。
(第2の実施例)
次に、図1,2に示す本発明に係る電池システムの第2の実施例の動作について、負荷40の負荷電流が減少する場合における組放電器10の「負荷減少モード」の放電動作制御の一例を詳細に説明する。
図1の電池システムの構成において、整流器50からの直流電源により充電器20を介して組電池30が満充電状態にされ、整流器50が停止した後、組電池30から組放電器10を介して負荷40へ電力供給する場合、第1の実施例の場合と同様、組放電器10を構成する一対の放電器a,bのうち、出力電圧の高い放電器aが優先して負荷40へ電力を出力する動作が実施される。
すなわち、3台の組放電器10(101,102,103)を備えている電池システムの場合、3台分の放電器a(放電器1a 101a、放電器2a 102a、放電器3a 103a)の合計出力電力容量が負荷40の消費電力容量よりも大きい場合は、第1の実施例の場合と同様、組放電器10を構成する一対の放電器a,bのうち、出力電圧が低い放電器b(放電器1b 101b、放電器2b 102b、放電器3b 103b)は放電を行わない。
また、本実施例の「負荷減少モード」として、負荷40の負荷電流が減少するときには、出力電圧が高い放電器aの出力電流は、現在設定されている上限電流値Iuの現在値よりも小さい状態であるため、垂下制御動作を実施しない状態となり、放電器aとしてあらかじめ設定している出力電圧のまま放電動作を継続しているが、3台の放電器a(放電器1a 101a、放電器2a 102a、放電器3a 103a)間では、配線抵抗値の差により、各放電器aの出力電流に不均衡が生じている可能性がある。
したがって、各放電器aの出力電流を均等にするために、放電器aの制御部12は、検知時間としてあらかじめ定めた第2の継続時間ΔT2の時間の間、当該放電器a自身が垂下制御動作を行っていないことを検知した場合は、待機時間としてあらかじめ定めた第2の経過時間Te2だけ経過した時点で、出力を制限する上限電流値(垂下電流値)を、あらかじめ定めた一定量の電流減分値ΔIsだけ減少させる。
このような動作を繰り返すことによって、3台の組放電器10の一対の放電器a,bで放電動作を行っている3台の放電器aのうち、出力電流が偏在して最も大きい電流が流れている放電器aが、まず、上限電流値に達して、垂下制御動作に移行して、出力電圧を急激に低下させる動作を行うことになり、負荷40側における所要電流の不足分は、他の放電器aに分配されることになる。
次に、図5のフローチャートを用いて、本実施例における組放電器10の制御動作として、「負荷減少モード」における組放電器10の放電器aの上限電流値を制御する制御方法をさらに説明する。図5は、本発明に係る電池システムを構成する組放電器10の動作の第2の実施例を説明するためのフローチャートであり、負荷40の負荷電流が減少する場合すなわち組放電器10の「負荷減少モード」の放電動作制御について、本発明における上限電流制御方法の一例として示している。
組放電器10の一対の放電器a,bのうち、出力電圧が高い放電器aは、前述のように、制御部12によって、出力電圧を低下させる垂下制御を行う電流値である上限電流値Iuを可変に設定することが可能であり、図5に示すフローチャートの手順によってあらかじめ定めた初期値から変化していく。
すなわち、各放電器aの制御部12は、負荷40の負荷電流が増加して、自己の放電器aの出力電流があらかじめ定めた上限電流値Iuの初期値(例えば30A)を超えて負荷40側に流れようとしたことを検知した場合、出力電圧を急激に低下させる垂下制御動作を行うとともに、現在設定されている上限電流値Iuの現在値を変更(増加)する動作を行うが、一方、負荷40の負荷電流が減少している状態にあるときには、垂下制御動作を行わない状態が、あらかじめ定めた第2の継続時間ΔT2の間、継続していた場合には、前述のように、上限電流値Iuの現在値を変更(減少)する動作を行う。
このため、図5に示すように、負荷40の負荷電流が減少している場合は、まず、垂下制御動作を実施していない状態が、あらかじめ定めた第2の継続時間ΔT2(例えば1秒)の間継続しているか否かを確認する(ステップS11)。
第2の継続時間ΔT2の間、垂下制御動作を実施していない状態が継続していることを検知した場合(ステップS11のYES)、制御部12は、第2の経過時間Te2としてあらかじめ定めた時間(例えば1秒)だけさらに経過した後で、現在設定されている上限電流値(垂下電流値)Iuの現在値から、電流減分値ΔIsとしてあらかじめ定めた電流値(例えば1A(アンペア))だけ減算し(例えば現在値が34Aであった場合は、1Aだけ減算して33Aとし)、新たな上限電流値Iuの現在値として変更して設定する(ステップS12)。
なお、第2の経過時間Te2は、電池システムの各組放電器10それぞれを構成する各放電器aにおける動作タイミングの違いを吸収するための待機時間である。
しかる後、ステップS11に復帰して、さらに、垂下制御動作を実施していない状態が継続しているか否かを確認する動作に移る。ただし、当該放電器aの出力電流が、垂下制御動作を行う上限電流値Iuは、今まで設定されていた現在値例えば34Aとの比較ではなく、変更後の上限電流値Iuの現在値例えば33Aになっており、変更後の上限電流値Iuの現在値例えば33Aを超えていることが制御部12で検知されると、垂下制御動作を実施することになる。
かくのごときステップS11,S12の手順を繰り返すことによって、負荷40の負荷電流が減少している場合であって、放電器aの垂下制御動作が実施されない状態が継続する限り、放電器aの上限電流値Iuの現在値は、第2の継続時間ΔT2(例えば1秒)と第2の経過時間Te2(例えば1秒)との合計時間(ΔT2+Te2)が経過する都度、電流減分値ΔIs(例えば1A)ずつ、減少して設定されていく動作が繰り返される。
なお、前述の説明においては、第2の継続時間ΔT2と第2の経過時間Te2とを、同じ1秒とする場合を例示しているが、本発明では、同じ時間に必ずしも揃える必要はなく、異なる時間を設定するようにしても良い。
次に、図5のフローチャートに示した制御部12の出力電流制御方法の動作について、図6の説明図を用いてさらに説明する。図6は、本発明に係る上限電流制御方法の第2の実施例を説明するための説明図であり、今まで、現在設定されている上限電流値Iuの現在値を超えて負荷40側へ出力していた組放電器10の放電器aの出力電流が減少して、時刻T6の時点において、上限電流値Iuの現在値を下回り、さらに減少し続けている場合を例にとって示している。図6において、時間軸を横軸にして、図6(A)には、組放電器10の放電器aの出力電流と上限電流値Iuの変化の様子を、また、図6(B)には、組放電器10の放電器aの出力電圧の変化の様子を示している。
図6(A)に示すように、時刻T6の時点で、組放電器10の放電器aの制御部12が、出力電流が現在設定されている上限電流値Iuの現在値例えば34Aを下回ったことを検知すると、図6(B)に示すように、継続時間の計時を開始する。
出力電流が上限電流値Iuの現在値を下回った時点から、検知時間となる第2の継続時間ΔT2の間、出力電流が上限電流値Iuの現在値を超えた状態にならず、放電器aの出力電圧が低下する垂下制御動作が実施されない状態が継続すると、さらに、待機時間となる第2の経過時間Te2の時間を経過した後に、すなわち、出力電流が上限電流値Iuの現在値を下回った時刻T6から(ΔT2+Te2)の時間だけ経過した時刻T7において、図6(A)に示すように、現在設定されている放電器aの上限電流値Iuの現在値34Aから電流減分値ΔIs(例えば1A)だけ減算して、上限電流値Iuの現在値を33Aに変更して設定する。
しかる後においても、図6(A)に示す例においては、出力電流が変更後の上限電流値Iuの現在値よりも小さい値で減少し続けるので、出力電圧を低下させる垂下制御動作を行うことがない状態が継続し、放電器aの上限電流値Iuの現在値を変更設定してから(ΔT2+Te2)の時間だけ経過する都度、変更後の上限電流値Iuの現在値から電流減分値ΔIs(例えば1A)だけさらに減算して、上限電流値Iuの現在値を変更する動作を繰り返し、時刻T10において、放電器aの上限電流値Iuの現在値が、十分に小さい電流としてあらかじめ定めた初期値例えば30Aと同一の電流値以下になったことを検知すると、制御部12は、上限電流値Iuの現在値を低下させる動作を停止するとともに、継続時間の計時を停止する。
なお、垂下制御動作を起動する上限電流値Iuの現在値が、十分に小さい電流値として定めていた初期値以下になった場合であっても、上限電流値Iuの現在値を低下させる動作を停止することなく、(ΔT2+Te2)の時間が経過するまで、垂下制御動作が実施されない状態が継続する限り、引き続き、上限電流値Iuの現在値を低下させる動作を継続することにしても良い。
以上のように、垂下制御動作を行うための上限電流値Iuの現在値を下回って出力電流が減少するような場合においても、組放電器10の一対の放電器a,bのうち、負荷40に対して出力電流を優先的に流す放電器aの上限電流値Iuの現在値を、検知時間の第2の継続時間ΔT2と待機時間の第2の経過時間Te2との合計時間を待って変更して設定する制御を行うことによって、電池システムを構成する複数の各組放電器10について、ほぼ同時に実施することが可能となり、各放電器aの出力電流の不均衡を極めて小さくすることができる。
例えば、整流器50の出力電圧が52V、放電器aの出力電圧が51V、放電器bの出力電圧が50Vであり、放電器a,bの出力電流容量が100A、放電器aの上限電流値Iuの現在値が33Aであって、かつ、負荷40の負荷電流が99Aから90Aへと減少した場合について、「負荷減少モード」の場合の動作を以下にさらに説明する。
負荷40が90A(一定電流)へ減少した場合で、かつ、各放電器aの上限電流値33Aの場合は、3台の放電器aの上限電流値Iuの合計が99Aであるので、放電器bの放電動作を行わなくても、3台の放電器aの放電動作だけで、負荷40への電力供給が可能である。さらに、各放電器aは、垂下制御動作を行うことなく、出力電圧が51Vの状態に維持される。このとき、各放電器aの出力端から、各放電器aの出力端が並列接続される並列接続点までの配線抵抗値の差により、各放電器aの出力電流に偏りが生じている。
しかし、図5のフローチャートや図6の説明図に示したように、各放電器aの制御部12は、自己の放電器aのあらかじめ定めた出力電圧V1(51V)が継続して、垂下制御動作を実施していない状態が、検知時間としてあらかじめ定めた第2の継続時間ΔT2(例えば1秒)の間継続していることを検知すると、待機時間としてあらかじめ定めた第2の経過時間Te2(例えば1秒)が経過した後に、上限電流値Iuの現在値から電流減分値ΔIs(例えば1A)を減算して、新たな上限電流値Iuの現在値として設定する。したがって、例えば、上限電流値Iuの現在値が34Aの場合の変更動作の場合は、3台の放電器aはいずれも上限電流値の現在値33Aに設定される。
かかる上限電流値Iuの現在値の変更動作は、3台の放電器aの垂下制御動作が実施されるまで繰り返され、前述のように、負荷40の負荷電流が90A(一定電流)に低下した場合は、3台の放電器aのいずれも、第2の継続時間ΔT2の時間に亘って、垂下制御動作の実施がない状態の継続を検知してから、第2の経過時間Te2を待ち合わせた後、順次更新されていって、上限電流値Iuの現在値が30Aまで低下してくる。各放電器aの上限電流値Iuの現在値が30Aに低下すると、それぞれの放電器aでは垂下制御動作が実施され、上限電流値Iuの現在値の減算動作が停止する。この結果、3台の放電器aが30Aずつの出力電流を分担して、負荷40側に出力するようになる。
すなわち、本発明に係る電池システムおよび上限電流制御方法の一例を示す本実施例においても、第1の実施例の場合と同様に、複数の電池を組み合わせてなる組電池30と組電池30から入力される直流電力を降圧または昇圧して負荷40側に出力する放電器10abとのそれぞれを、複数備えた電池システムであって、出力電圧が異なる複数例えば一対の放電器a,bを並列接続した組放電器10を複数組構成し、組放電器10それぞれに、1組以上の組電池30を並列接続して入力し、かつ、複数組の組放電器10それぞれの出力側を並列接続して、負荷40に接続して構成している。
ここで、組放電器10を構成する放電器10abは、リアクトル1a,1bとダイオード2a,2bとコンデンサ3a,3bとスイッチング素子4a,4bとからなり、スイッチング素子4a,4bを制御することにより、組電池30から入力される直流電力を、降圧または昇圧して、負荷40側に出力する。
また、本実施例においても、第1の実施例の場合と同様に、組放電器10を構成する複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が最も高い放電器aの上限電流値Iuの初期値または現在設定されている上限電流値Iuの現在値が、出力電圧が低い他の放電器の上限電流値Iuよりも低く設定されている。
ここで、組放電器10を構成する複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が最も高い放電器aが、優先的に、負荷40に対する電力供給を行うように、組放電器10は構成されている。
さらに、本実施例においては、組放電器10を構成する複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が最も高い(すなわち、上限電流値が最も小さい)放電器aの出力電圧を低下させる垂下制御動作を実施した後、放電器aの出力電流が、当該放電器aに現在設定されている上限電流値Iuの現在値以下になり、第2の継続時間ΔT2としてあらかじめ定めた時間の間、当該放電器aの垂下制御動作を実施していない状態が継続していることを検知した場合、しかる後さらに第2の経過時間Te2としてあらかじめ定めた時間を経過した際に、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値から、あらかじめ定めた電流減分値ΔIsを減算して、新たな上限電流値Iuの現在値として設定する。
また、組放電器10を構成する複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が最も高い放電器aの上限電流値Iuの現在値を変更設定した後、放電器aの出力電流が、当該放電器aに現在設定されている上限電流値Iuの現在値以下であり、第2の継続時間ΔT2の間、当該放電器aの垂下制御動作を実施していない状態が継続していることを検知した場合も、しかる後さらに第2の経過時間Te2を経過した際に、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値から、電流減分値ΔIsを減算して、新たな上限電流値Iuの現在値として設定する。
このような放電制御(上限電流制御)を行うことによって、組放電器10の複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が高い放電器a側の上限電流値Iuの現在値の変更制御を、電池システムを構成する複数の各組放電器10について、ほぼ同時に実施することによって、各放電器aの出力電流の不均衡を極めて小さくすることができる。
而して、上限電流値以下に出力電流が減少している場合であっても、第1の実施例の場合と同様、各組電池30が同一仕様で放電開始前に満充電の状態に充電済みであった場合には、各組電池30は、ほぼ同一の減少率で、残容量が減少することになり、すべての組電池がほぼ同時に放電終止電圧に達して放電が停止するため、各組電池30に蓄積された放電可能なエネルギーのすべてを負荷40へ有効に供給することができる。
(第3の実施例)
次に、図1,2に示す本発明に係る電池システムの第2の実施例の動作について、負荷40の負荷電流が増加したり減少したりする場合における組放電器10の「負荷増加・減少モード」の放電動作制御の一例を詳細に説明する。
図1の電池システムの構成において、整流器50からの直流電源により充電器20を介して組電池30が満充電状態にされ、整流器50が停止した後、組電池30から組放電器10を介して負荷40へ電力供給する場合、第1の実施例の場合と同様、組放電器10を構成する一対の放電器a,bのうち、出力電圧の高い放電器aが優先して負荷40へ電力を出力する動作が実施される。
すなわち、3台の組放電器10(101,102,103)を備えている電池システムの場合、3台分の放電器a(放電器1a 101a、放電器2a 102a、放電器3a 103a)の合計出力電力容量が負荷40の消費電力容量よりも大きい場合は、第1の実施例の場合と同様、組放電器10を構成する一対の放電器a,bのうち、出力電圧が低い放電器b(放電器1b 101b、放電器2b 102b、放電器3b 103b)は放電を行わない。
また、本実施例の「負荷増加・減少モード」としては、負荷40の負荷電流が増加する場合の「負荷増加モード」の放電動作のみを実行させる場合、負荷40の負荷電流が減少する場合の「負荷減少モード」の放電動作のみを実行させる場合、あるいは、負荷40の負荷電流が増加したり、減少したりする両方の放電動作を実行させる場合、のいずれの動作でも可能としている。
ここで、「負荷増加モード」の放電動作のみを実行させる場合には、第1の実施例と同様の放電動作を行うことになり、組放電器10を構成する一対の放電器a,bのうち、上限電流値Iuを可変に設定可能な放電器aの出力電流が、上限電流値Iuの初期値(例えば30A)を下回ったことを検知した場合に、現在設定されている上限電流値Iuの現在値を、上限電流値Iuの初期値に戻すように設定すれば良い。例えば、商用電源のバックアップ用として電池システムを用いる場合、商用電源が停電からの復電した際の電池システムのリセット動作の一環として、上限電流値Iuの現在値を上限電流値Iuの初期値に復帰させることができる。
また、「負荷減少モード」の放電動作のみを実行させる場合には、第2の実施例と同様の放電動作を行うことになり、放電器aの出力電流が、いずれかの放電器aへ偏って集中する事態が生じたとしても、電池システムの電力供給能力に影響がない程度にまで、出力電流が十分に小さくなっているときに、もしくは、商用電源のバックアップ用として電池システムを用いる場合、「負荷増加モード」と同様、商用電源が停電からの復電したときに、上限電流値Iuの現在値を上限電流値Iuの初期値に復帰させるようにすれば良い。
「負荷増加・減少モード」の放電動作を実行させる場合は、「負荷増加モード」の放電動作のみを実行させる場合と「負荷減少モード」の放電動作のみを実行させる場合との両方の放電動作を実行させることによって、負荷40の増加、減少の両方に対応した放電電流の制御が可能となる。
次に、図7のフローチャートを用いて、本実施例における組放電器10の制御動作として、負荷40の負荷電流が増加したり、減少したりする両方の放電動作を実行させる「負荷増加・減少モード」について組放電器10の放電器aの上限電流値を制御する制御方法をさらに説明する。図7は、本発明に係る電池システムを構成する組放電器10の動作の第3の実施例を説明するためのフローチャートであり、組放電器10の「負荷増加・減少モード」の放電動作制御として、負荷40の負荷電流が増加したり減少したりする場合について、本発明における上限電流制御方法の一例として示している。
組放電器10の一対の放電器a,bのうち、出力電圧が高い放電器aは、前述のように、制御部12によって、出力電圧を低下させる垂下制御を行う電流値である上限電流値Iuを可変に設定することが可能であり、図7に示すフローチャートの手順によってあらかじめ定めた初期値から変化していく。
まず、各放電器aの制御部12は、負荷40の負荷電流が増加している場合であって、自己の放電器aの出力電流が、あらかじめ定めた上限電流値Iuの初期値(例えば30A)を超えて負荷40側に流れようとしたことを検知した場合、前述のように、出力電圧を急激に低下させる垂下制御動作を行う。しかる後、垂下制御動作が、あらかじめ定めた第1の継続時間ΔT1(例えば1秒)の間継続しているか否かを確認する(ステップS21)。
第1の継続時間ΔT1の間、垂下制御動作が継続していることを検知した場合(ステップS21のYES)、制御部12は、第1の経過時間Te1としてあらかじめ定めた時間(例えば1秒)だけさらに経過した後で、現在設定されている上限電流値(垂下電流値)Iuの現在値例えば初期値に対して、電流増分値ΔIaとしてあらかじめ定めた電流値(例えば1A)だけ加算し、新たな上限電流値Iuの現在値として変更して設定する(ステップS22)。
しかる後、ステップS21に復帰して、さらに、垂下制御動作が行われているか否かを確認する動作に移る。かくのごときステップS21,S22の手順を繰り返すことによって、放電器aの出力電流が、現在設定されている上限電流値Iuの現在値以下に低下しない限り、放電器aの上限電流値Iuの現在値は、第1の継続時間ΔT1(例えば1秒)と第1の経過時間Te1(例えば1秒)との合計時間(ΔT1+Te1)が経過する都度、電流増分値ΔIa(例えば1A)ずつ、増加して設定されていく動作が繰り返される。
一方、第1の継続時間ΔT1の間、垂下制御動作が継続していなかったことを検知した場合で(ステップS21のNO)、負荷40の負荷電流が減少している場合には、垂下制御動作を実施していない状態が、あらかじめ定めた第2の継続時間ΔT2(例えば1秒)の間継続しているか否かを確認する(ステップS23)。
第2の継続時間ΔT2の間、垂下制御動作を実施していない状態が継続していることを検知した場合(ステップS23のYES)、制御部12は、第2の経過時間Te2としてあらかじめ定めた時間(例えば1秒)だけさらに経過した後で、現在設定されている上限電流値(垂下電流値)Iuの現在値から、電流減分値ΔIsとしてあらかじめ定めた電流値(例えば1A)だけ減算し、新たな上限電流値Iuの現在値として変更して設定する(ステップS24)。
しかる後、ステップS21に復帰して、負荷電流が減少している場合は、ステップS23に移行して、さらに、垂下制御動作を実施していない状態が継続しているか否かを確認する動作に移る。かくのごときステップS21〜S24の手順を繰り返すことによって、負荷40の負荷電流が減少している場合であって、放電器aの垂下制御動作が実施されない状態が継続する限り、放電器aの上限電流値Iuの現在値は、第2の継続時間ΔT2(例えば1秒)と第2の経過時間Te2(例えば1秒)との合計時間(ΔT2+Te2)が経過する都度、電流減分値ΔIs(例えば1A)ずつ、減少して設定されていく動作が繰り返される。
なお、前述の説明においては、第1,2の継続時間ΔT1,ΔT2および第1,2の経過時間Te1,Te2を、すべて、同じ1秒とする場合を例示しているが、本発明では、同じ時間に必ずしも揃える必要はなく、一部あるいはすべてについて、異なる時間を設定するようにしても良い。
このようにして、「負荷増加・減少モード」の放電動作の場合においても、第1の実施例と第2の実施例との組み合わせとして、負荷40の負荷電流が増加する場合にも、減少する場合にも、それぞれ、第1の実施例と第2の実施例で前述した動作と同様の放電動作をすることによって、組放電器10の一対の放電器a,bのうち、出力電圧が高い放電器a側の上限電流値Iuの現在値の変更制御を、電池システムを構成する複数の各組放電器10について、ほぼ同時に実施することによって、各放電器aの出力電流の不均衡を極めて小さくすることができる。
而して、負荷40の負荷電流が増加したり、減少したりする状態にあっても、各組電池30が同一仕様で放電開始前に満充電の状態に充電済みであった場合には、各組電池30は、ほぼ同一の減少率で、残容量が減少することになり、すべての組電池がほぼ同時に放電終止電圧に達して放電が停止するため、各組電池30に蓄積された放電可能なエネルギーのすべてを負荷40へ有効に供給することができる。
(他の実施例)
以上、前述した各実施例については、ニッケル水素蓄電池を用いる電池システムを例にとって説明したが、前述したように、本発明はこれに限られるものではない。例えば、複数のリチウムイオン電池など、ニッケル水素蓄電池以外の二次電池の組み合わせからなる二次電池システム、一次電池を含め、複数の電池の組み合わせからなる電池システムであっても、全く同様に適用することができる。すなわち、組電池30を構成する電池として、ニッケル水素蓄電池のみならずリチウムイオン電池など他の二次電池からなっていても良いし、一次電池を含めて複数の電池の組み合わせからなっていても良い。
また、前述した各実施例における電池システムや上限電流制御方法としては、図1に示したように、複数の電池を組み合わせてなる組電池30を6組と、各組電池30から入力される直流電力を降圧または昇圧して負荷40側に出力する組放電器10を3個備え、3個の組放電器10それぞれからの出力点において並列接続して負荷40側に接続する構成を例にとって、一つの組放電器10の入力側には2組ずつの組電池30を並列接続するという構成例を説明したが、組電池30や組放電器10の個数は、かかる場合に限るものではない。
用途に応じて任意に選択した複数の組電池30、組放電器10を備えるようにしても良いし、また、一つの組放電器10の入力側に接続する組電池30の個数も、1ないし複数の任意の個数の組電池30を接続するようにしても良い。
また、前述した各実施例における放電器10abの構成として、図2に示すように、リアクトル1a,1bとダイオード2a,2bとコンデンサ3a,3bとスイッチング素子4a,4bとを少なくとも含み、スイッチング素子4a,4bを制御することにより、直流電源すなわち組電池30から入力される直流電力を、降圧または昇圧する構成例を示したが、本発明の放電器はかかる構成に限るものではなく、例えば、スイッチドキャパシタを用いた構成であっても良いし、垂下制御動作の発生状態如何に応じて上限電流値の変更設定が可能なものであれば、如何なる構成のものであっても良い。
また、前述した各実施例における電池システムや上限電流制御方法においては、複数(例えば3組)の組放電器10をそれぞれ構成する放電器10abとして、出力電圧が異なる一対の放電器a,bを並列接続した組放電器10を複数組構成し、組放電器10それぞれに、1組以上(例えば2組)の組電池30を並列接続して入力し、かつ、複数組の組放電器10それぞれの出力側を並列接続して、負荷40に接続する場合を説明したが、本発明はかかる個数の構成に限るものではない。
例えば、組放電器10として、出力電圧が異なる任意の個数からなる複数の放電器a,b,…を並列接続して構成し、前述したように、組放電器10を構成する複数の放電器a,b,…のうち、出力電圧が最も高い放電器aの上限電流値Iuの初期値または現在設定されている上限電流値Iuの現在値が、出力電圧が低い他の放電器b,…の上限電流値Iuよりも低く設定され、出力電圧が最も高い放電器aが、優先的に、負荷40に対する電力供給を行うように、組放電器10の出力電圧を設定するように構成しても良い。
さらに、前述した第1の実施例においては、組放電器10を構成する複数の放電器a,b,…のうち、出力電圧が最も高い放電器aの出力電流が、当該放電器aに現在設定されている上限電流値Iuの現在値を超えて流れて、出力電圧を低下させる垂下制御動作を開始してから、第1の継続時間ΔT1としてあらかじめ定めた時間の間、当該放電器aの出力電流が当該放電器aの上限電流値Iuの現在値を超えて継続して流れていることを検知した場合、しかる後さらに第1の経過時間Te1としてあらかじめ定めた時間を経過した際に、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値に、あらかじめ定めた電流増分値ΔIaを加算して、新たな上限電流値Iuの現在値として設定する場合を説明した。
しかし、場合によっては、第1の経過時間Te1の時間経過を待つことなく、あるいは、さらに、第1の継続時間ΔT1の時間経過を待つことなく、出力電圧が最も高い放電器aの出力電流が、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値を超えて流れて、出力電圧を低下させる垂下制御動作を開始してから、第1の継続時間ΔT1の間、当該放電器aの出力電流が上限電流値Iuの現在値を超えて継続して流れていることを検知した際に、あるいは、出力電圧が最も高い放電器aの出力電流が、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値を超えて流れて、出力電圧を低下させる垂下制御動作を開始した際に、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値に、電流増分値ΔIaを加算して、新たな上限電流値Iuの現在値として設定するようにしても良い。
さらに、前述した第2の実施例においては、組放電器10を構成する複数の放電器a,b,…のうち、出力電圧が最も高い放電器aの出力電圧を低下させる垂下制御動作を実施した後、当該放電器aの出力電流が、当該放電器aに現在設定されている上限電流値Iuの現在値以下になり、第2の継続時間ΔT2としてあらかじめ定めた時間の間、当該放電器aの垂下制御動作を実施していない状態が継続していることを検知した場合、しかる後さらに第2の経過時間Te2としてあらかじめ定めた時間を経過した際に、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値から、あらかじめ定めた電流減分値ΔIsを減算して、新たな上限電流値Iuの現在値として設定する場合を説明した。
しかし、場合によっては、第2の経過時間Te2の時間経過を待つことなく、あるいは、さらに、第2の継続時間ΔT2の時間経過を待つことなく、出力電圧が最も高い放電器aの出力電圧を低下させる垂下制御動作を実施した後、当該放電器aの出力電流が、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値以下であり、第2の継続時間ΔT2の間、垂下制御動作を実施していない状態が継続していることを検知した際に、あるいは、出力電圧が最も高い当該放電器aの出力電流が、当該放電器aの上限電流値Iuの現在値以下であることを検知した際に、上限電流値Iuの現在値から、電流減分値ΔIsを減算して、新たな上限電流値Iuの現在値として設定するようにしても良い。
(本発明の主要な特徴)
以上の各実施例において詳細に説明したように、本発明に係る電池システムおよび上限電流制御方法の主要な特徴は、出力電圧が異なる複数の放電器(例えば一対の放電器a,b)を並列接続した組放電器10を構成し、かつ、出力電圧が高い放電器aを、出力電圧が低い他の放電器bよりも小さな値の上限電流値(垂下電流値)Iuとして設定し、かつ、当該放電器aの垂下制御の実施状態如何によって、上限電流値Iuの値を変化させることにある。
例えば、組放電器10を出力電圧が異なる複数例えば一対の放電器a,bで構成する場合、組放電器10の一対の放電器a,bのうち、出力電圧が高い放電器aの優先的な放電動作により、負荷に電力を供給している状態で、負荷40の負荷電流が増加して、放電器aの出力電流が、現在設定されている上限電流値Iuの現在値を超えた場合、出力電圧を低下させる垂下制御動作を行うとともに、垂下制御動作が、検知時間としてあらかじめ定めた第1の継続時間ΔT1の間継続した場合には、待機時間としてあらかじめ定めた第1の経過時間Te1を経過した時点で、上限電流値Iuの現在値をあらかじめ定めた電流増分値ΔIaだけ加算して、新たな上限電流値Iuとして変更して設定するという動作を、垂下制御動作が発生しなくなるまで繰り返す。
また、組放電器10の複数例えば一対の放電器a,bのうち、出力電圧が高い放電器aの優先的な放電動作により、負荷に電力を供給している状態で、負荷40の負荷電流が減少して、放電器aの出力電流が、現在設定されている上限電流値Iuの現在値以下になって、垂下制御動作を実施しない状態が、検知時間としてあらかじめ定めた第2の継続時間ΔT2の間継続した場合には、待機時間としてあらかじめ定めた第2の経過時間Te2を経過した時点で、上限電流値Iuの現在値をあらかじめ定めた電流減分値ΔIsだけ減算して、新たな上限電流値Iuとして変更して設定するという動作を、垂下制御動作が発生するまで繰り返す。
かくのごとき動作を行うことによって、各組放電器10の出力電流が均等化され、複数台の組放電器10を並列接続して構成する電池システムにおける従来技術における問題点、すなわち、特定の組電池30へ放電電流が集中してしまう結果として、電池システムとしての余力を残したまま、電池システムの放電が停止するという問題点が解消され、さらに、負荷40側の負荷増加や組放電器10、放電器10abの故障に際しても、負荷40への給電の安定性を維持可能な電池システムを実現することができる。
(本発明の各実施例における効果)
以下に、本発明の各実施例によって生じる効果について説明する。
(1)複数の放電器の出力点で並列接続して負荷に電力を出力する電池システムの構成においては、複数の放電器それぞれが並列接続点までに至る配線抵抗値に差があるため、配線抵抗値が小さい放電器へ出力電流が集中し、その結果、出力電流が集中した放電器に接続される組電池の電力消費が他の組電池に比して大きくなり、他の組電池よりも先に、電力容量低下により放電終止状態となるため、電池システムとしても放電停止状態に陥ってしまい、放電停止状態になった時点では、他の電池系列すなわち他の組電池はまだ電力供給可能な余力を残したまま、使用されない状態が発生してしまう。
本発明においては、出力電圧が異なる複数の放電器(例えば一対の放電器a,b)を並列接続した組放電器10を用い、かつ、出力電圧が最も高い放電器aの上限電流値(垂下電流値)を、出力電圧が低い放電器bよりも小さな電流値に設定するとともに、放電器aの上限電流値を、垂下制御動作の実施状態如何に応じて可変に設定可能とすることにより、各組放電器10の出力電流をほぼ等しく制御する構成としているので、各電池系列すなわち各組電池30に対して出力電流をほぼ等しく分担させることが可能である。
したがって、各組電池30が同一仕様で放電開始前に満充電の状態に充電済みであった場合には、各組電池30は、ほぼ同一の減少率で残容量が減少し、すべての組電池30がほぼ同時に放電終止電圧に達して放電が停止するため、各組電池30のいずれも電力供給能力を余すことなく、電力供給可能な余力を有効に負荷40に出力することができ、かつ、複数の放電器の並列接続によって電池システムのシステム容量を所望の電力容量に応じて増加することも容易に可能となる。
(2)複数の放電器の出力点で並列接続して負荷40側に電力を出力する電池システムにおいて、複数の放電器間の出力電流を均等化するには、全負荷電流と有効放電器台数との演算結果に基づいて、各放電器の上限電流値を設定するという方法もあるが、各放電器の出力電流の計測や演算を行う処理部や、各放電器へ指令するための通信線などを追加する必要があり、コスト増や故障率の上昇を招くといった問題がある。
本発明においては、複数の組放電器10同士で通信を行うことなく、それぞれの組放電器10が、独立に、垂下制御動作の実施状態如何に応じて、上限電流値を変更して設定する放電制御を行うので、各組放電器10の出力電流の計測や演算を行う処理部や組放電器10同士の通信を行う配線が不要であり、コスト増や故障率の上昇もなく、各組放電器10間の出力電流を均等化することが可能となる。
(3)また、各放電器の出力電流に上限電流値を設定するだけでは、負荷の電力需要の増加時や放電器の故障の発生時にも、垂下制御動作が実行されてしまい、負荷電圧の急激な低下を引き起こし、負荷の動作が停止してしまうという大きな問題が伴う。
本発明においては、出力電圧が異なる一対の放電器a,bを並列接続した組放電器10を用いているので、負荷40の電力需要の増加や放電器a,bの故障の発生に際しても、負荷40側への電力供給が継続されて、負荷40の動作を継続させることができ、かつ、各組放電器10間の電流ばらつきも解消することができる。