JP4439805B2 - 混和剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スプレー用セメント組成物に使用する低アルカリおよびアルカリフリーの促進剤に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
スプレーにより施工されるコンクリートなどのセメント組成物において、従来のアルミン酸塩および他の強いアルカリ材料のかわりに、低アルカリおよびアルカリフリー促進剤の使用が、現在かなり定着している。そのような促進剤の主要成分は、アルミニウム化合物であり、もっとも一般的に使用されるものは硫酸アルミニウムおよびアモルファス水酸化アルミニウムである。これらのアルミニウム化合物に加えて、種々の他の成分、アルカノールアミン、他のアルミニウム塩(シュウ酸塩および硝酸塩など)およびさまざまな有機酸を含むものが、そのような促進剤に使用されている。より最近の組成物は、フッ化物イオンの使用を伴っている。
【0003】
当該技術分野での主な問題は、所要の性能、所要の安定性および所要の圧縮強度を併せて有する促進剤組成物を見いだすことである。安定性が問題となる場合があるが、過酷な条件、たとえば時にトンネル中で遭遇するような条件下では、適度な品質保持期限が実用的な促進剤には必要である。スプレー用コンクリート・モルタルで使用されるすべての促進剤は、促進剤なしの同一のコンクリートの圧縮強度と比較して、圧縮強度を低下させる。この低下を最小限に押さえることが必要である。加えて、スプレー後、1〜4時間の間の初期強度の良好な発現が、特に要求される。
【0004】
加えて、世界中で使用されるセメントのタイプの差異も問題を引き起こす。あるセメント、例えばヨーロッパのセメントでは良好に機能したところで、オーストラリアのセメントと同様には必ずしも機能しない。すべてのタイプに良好に受け入れられる機能を有する促進剤を処方することは、困難である。特に困難なのは、日本製の普通なポルトランドセメントである(OPCs)。
【0005】
【課題を解決するための手段】
材料のある特有の組み合わせが、殊に優れた機能を有しかつ非常に安定な促進剤を与えることが、現時点で見いだされた。すなわち、本発明は、スプレー用セメント組成物への使用に適合する、必須成分1〜3を配合したものの水溶液または分散体(dispersion)である促進剤組成物を提供する:
成分1 − 硫酸アルミニウム
成分2 − アルカノールアミンおよびアルキレンジアミンのうちの少なくとも1種
成分3 − フッ化水素酸
【0006】
任意に、成分4〜7の少なくとも1種を含み、ただし、成分4または成分5の少なくとも1種が存在する:
成分4 − 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムおよび硫酸リチウムの少なくとも1種;
成分5 − C1〜C10脂肪族モノ−およびジカルボン酸ならびにそれらの金属塩;
成分6 − アモルファス水酸化アルミニウム;
成分7 − リン酸
【0007】
構成要素は以下の比率で存在する(活性成分の質量による)
成分1 − 30〜60%(17%粉末硫酸アルミニウムの質量換算)
成分2 − 0.1〜15%
成分3 − 0.2〜8.0%
成分4 − 15%まで
成分5 − 15%まで
成分6 − 15%まで
成分7 − 3%まで
【0008】
【発明の実施の形態】
成分1の硫酸アルミニウムは、促進剤の製造において使用される硫酸アルミニウムであればよい。それは完全に水和されてもよく、または全体としてもしくは部分的に焼かれてもよい。典型的なグレードであり、そして前記比率のベースとしたグレードは、17%硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3・14H2O)(その中の酸化アルミニウムの割合のためそう呼ばれる)である。他の硫酸アルミニウムが要求される場合には、その適量はこれを基礎として容易に計算できる。成分1は、好ましくは促進剤組成物全体の42〜56重量%の割合で存在する。
【0009】
成分2のアルカノールアミンまたはアルキルジアミンは、いずれのアルカノールアミンまたはアルキレンジアミンでもよいが、好ましくは、エチレンジアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンであり、もっとも好ましくはジエタノールアミンである。それは、好ましくは促進剤組成物全体の0.1〜10質量%の割合で存在し、より好ましくは0.1〜8質量%である。これらの材料の2または3種以上の組み合わせを使用することができる。
成分3のフッ化水素酸は、一般的に約40質量%のHF水溶液として使用される。合計の促進剤組成物中に存在するフッ化水素酸の割合は(HFとして)、促進剤全体の4〜6重量%が好ましい。
【0010】
成分4は、先に指定した物質の中から選択してよい。ナトリウムおよびカリウムはアルカリ金属であるけれども、本発明の促進剤組成物中のそのような金属の割合は、一般に認められたヨーロッパの定義条項によりアルカリフリーとしてみなされることが、これらの促進剤には許されるほど十分に低い(Na2O等価物の1重量%より低い)。8.5%までのNa2O等価物は、「低アルカリ」とみなされ、および多くの目的に受け入れられる−多くの場合では、健康および環境上の理由により、アルカリの厳密な排除は必要とされず、および少なくとも1種のアルカリ金属の少量が、初期強度の発現を高める。したがって、本発明の目的のためにおよびアルカリフリー促進剤に関する技術の現在の慣行に反して、少量のアルカリ金属が存在することが好ましい。この割合としては、Na2O等価物5%より高くないものが好ましい。成分4の好ましい割合は、促進剤組成物全体の1〜10質量%である。成分4は、典型的に30重量%の水溶液として促進剤組成物に加えられる。
【0011】
成分5は、1または2種以上の酸の前記群から選択されてもよい。殊に好ましいのは、ギ酸、シュウ酸およびグリコール酸ならびにその金属塩であるが、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸および酒石酸などの他の酸もまた使用できる。成分5の好ましい割合は、促進剤組成物全体の2〜10質量%であり、より好ましくは、4〜8質量%である。
【0012】
成分4および成分5の少なくとも1種が組成物中に存在することが要求される。本発明の目的のために好ましい成分4および/または成分5は、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウムおよびこれらのうちの1種または両方と水酸化リチウムとの混合物である。水酸化リチウム/シュウ酸ナトリウム−カリウム混合物は、特に好ましい。
【0013】
成分6の水酸化アルミニウムは、スプレー用コンクリートの促進剤に一般的に使用される型のアモルファス水酸化アルミニウムである。それは、促進剤組成物の合計の10質量%までの割合で好ましく存在する。
成分7のリン酸は、安定剤として働く。それを除くことも可能であるが、これは本発明の促進剤組成物において、促進剤が長期間使用できる状態で保管しなければならないようなトンネル工事などで十分に考慮されるべき有効な安定性を与える。したがって、それは、好ましくは存在し、および促進剤組成物の0.1〜2質量%の濃度が好ましい。
【0014】
促進剤組成物は、上記に説明した成分を任意の順序で混合し、および攪拌することにより簡便に調製することによって、水溶液を与える。ある場合には、追加の水を加える必要がある。最終的な組成物は、一般的に40〜70質量%の水を含む。
構成要素の本質により、得られる促進剤組成物は、単なる構成要素の混合物ではなく、反応生成物の複雑なブレンドとなる。たとえば、HFは、他のいくつかの成分と反応する(存在する場合は、水酸化アルミニウムと最もよく反応する)。この組成物は、非常に安定であるので、一般的な貯蔵条件下では数ヶ月の品質保持期限を有する。
【0015】
使用に際しては、本発明の促進剤組成物は、慣用の方法でスプレーノズルに注入する。添加量は、典型的にセメント質量に対して促進剤組成物は5〜12質量%である。本発明はまた、まだ固まらないセメント組成物のバッチを混合するステップおよびそれをスプレーノズルに搬送するステップを含み、そこで上記で記載した促進剤をノズルに注入する、スプレーにより基材にセメント組成物を施工する方法を提供する。
【0016】
本発明の促進剤組成物を用いたスプレー用セメント組成物は、特別に早い圧縮強度の発現を示す。加えて、前記促進剤組成物は、他のアルカリフリー促進剤が満足する結果を与えない日本のセメントを含む、非常に広い種類のセメントに対しても良好に機能する。本発明はまた、スプレーノズルを通してスプレーにより基材に施工され、上記に記載した促進剤をノズルで加えた、硬化したセメント組成物の層を提供する。
【0017】
【実施例】
本発明は、さらに以下に制限されない例を示すが、すべての部分は、質量で与えられる。
いくつかの促進剤を、以下の構成を有する練り混ぜた試験用モルタルに添加する。
水 198部
普通ポルトランドセメント 450部
砂(DIN196-1) 1350部
高性能減水剤 2.7部
セメントは、一般的に使用される日本のセメントのタイヘイヨー(Taiheiyo)OPCである。使用される高性能減水剤は、NT−1000(たとえば株式会社エヌエムビー、日本)である。
【0018】
例1
上記で説明したセメントミックスに以下の組成を有する本発明の促進剤、31.5部を完全に混合しながら加える(質量パーセントで与える)。
硫酸アルミニウム(16水和物) 35
ジエタノールアミン 2.1
硫酸ナトリウム 11.2
シュウ酸 7.5
フッ化水素酸 6
アモルファス水酸化アルミニウム 9.5
水 100%まで加える
【0019】
例2
本発明の促進剤31.5部を、商業的に入手可能なアルカリフリー促進剤の「メイコ(MEYCO)SA162」に置き換えたことを除いて、例1を繰り返す。
【0020】
例3
本発明の促進剤31.5部を、商業的に入手可能なアルカリフリー促進剤の「メイコ(MEYCO)SA170」に置き換えたことを除いて、例1を繰り返す。
【0021】
サンプルをprEN(予備的なヨーロッパ基準)12394により圧縮強度を試験し、以下に得られた結果を示す。
【表1】
【0022】
本発明による促進剤を含む組成物は、市販される促進剤を含む組成物より、より早く圧縮強度が発現すること、および最終強度も実質的により高くなることを見いだすことができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、長期間の優れた安定性を有し、多種のセメントに適用可能な、スプレー用セメント組成物の促進剤が提供される。
Claims (5)
- スプレー用セメント組成物への使用に適合する、必須成分1〜4:
成分1 − 硫酸アルミニウム
成分2 − アルカノールアミンおよびアルキレンジアミンのうちの少なくとも1種
成分3 − フッ化水素酸
成分4 − 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムおよび硫酸リチウムの少なくとも1種;
の配合物の貯蔵安定性のよい水溶液または分散体である促進剤組成物であって、
成分1〜3は下記の比率(活性成分の質量による)
成分1 − 30〜60%(17%粉末硫酸アルミニウムの質量換算)
成分2 − 0.1〜15%
成分3 − 0.2〜8.0%
で存在する、前記促進剤組成物。 - さらに、成分5〜7:
成分5 − C1〜C10脂肪族モノ−およびジカルボン酸ならびにそれらの金属塩の1または2種以上;
成分6 − アモルファス水酸化アルミニウム;
成分7 − リン酸
の少なくとも1種を含み、ただし、成分5が存在し、
前記成分は下記の比率(活性成分の質量による)
成分5 − 15%まで
成分6 − 15%まで
成分7 − 3%まで
で存在する、請求項1に記載の促進剤組成物。 - 成分4は15%までの比率(活性成分の質量による)で存在する、請求項1に記載の促進剤組成物。
- スプレーにより基材にセメント組成物を施工する方法であって、まだ固まらないセメント組成物のバッチを混合するステップ、およびそれをスプレーノズルに搬送するステップであって、請求項1に記載の促進剤をノズルに注入する該ステップを含む、前記方法。
- スプレーノズルを通してスプレーにより基材に施工された硬化したセメント組成物の層であって、請求項1に記載の促進剤を前記ノズルに加えた、前記硬化したセメント組成物の層。
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