JP4439159B2 - 動架橋変性重合体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟性や耐磨耗性、耐傷付き性、耐油性等の良好な動架橋重合体組成物に関し、更に詳しくは、特定の重合体又は特定の重合体と熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体、及び特定の官能基を有する架橋剤から構成される重合体組成物を加硫剤の存在下に動的に架橋してなる動架橋重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴム的な軟質材料であって加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性を有する熱可塑性エラストマーが自動車部品、家電部品、電線被覆材、医療部品、雑貨、履物等の分野で使用されている。このようななかで、熱可塑性エラストマーとしてビニル芳香族化合物の含有量が比較的少ない、例えばビニル芳香族化合物の含有量が約30重量%の共役ジエンとビニル芳香族化合物からなるブロック共重合体やその水添物が加硫ゴムに似た特性を示すため好適に利用されている。また、かかるブロック共重合体やその水添物を部分架橋する方法が特開昭59−131613号公報等に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
かかる状況下において、なお一層加硫ゴムに似た柔軟性を有し、耐磨耗性、耐傷付き性、耐油性等の良好な材料が望まれていた。
本発明は、柔軟性や耐磨耗性、耐傷付き性、耐油性等の良好な動架橋重合体組成物を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、柔軟性や耐磨耗性、耐傷付き性、耐油性等の良好な動架橋重合体組成物を開発するために鋭意検討を重ねた結果、特定の重合体又は特定の重合体と熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体から構成される重合体組成物を加硫剤の存在下に動的に架橋することにより上記課題を効果的に解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は下記の通りである。
1.下記aおよびbからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなる変性重合体又はその水添物であって、重量平均分子量は3万以上150万以下である成分(1)20〜90重量部、熱可塑性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分(2)80〜10重量部、および成分(1)の官能基と反応性を有する架橋剤成分(3)を、成分(1)100重量部に対して0.01〜20重量部から構成される変性重合体組成物を、加硫剤の存在下に動的に加硫してなる動的架橋重合体と未反応原料との混合物である動架橋重合体組成物。
a.共役ジエン重合体
b.共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる重合体であり、しかも該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が50重量%未満である重合体
【0006】
2.下記aおよびbからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなる変性重合体又はその水添物であって、重量平均分子量は3万以上150万以下である成分(1)に、架橋剤成分(3)を成分(1)に結合されている官能基1当量あたり0.3〜10モル反応させた二次変性重合体である成分(1')20〜90重量部、熱可塑性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分(2)80〜10重量部から構成される変性重合体組成物を、加硫剤の存在下に動的に加硫してなる動的架橋重合体と未反応原料との混合物である動架橋重合体組成物。
a.共役ジエン重合体
b.共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる重合体であり、しかも該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が50重量%未満である重合体
【0007】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明で使用する成分(1)は、有機リチウム化合物を重合触媒として得た、下記aおよびbからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなる変性重合体又はその水添物である。
a.共役ジエン重合体
b.共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる重合体であり、しかも該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が50重量%未満である重合体。
【0008】
本発明で使用する共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる変性重合体又はその水添物のビニル芳香族炭化水素含有量は、一般に5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは15〜85重量である。本発明において、ビニル芳香族炭化水素含有量が5重量%未満の場合は実質的に共役ジエン重合体とする。
なお、本発明において、水添物中のビニル芳香族化合物の含有量は、変性前の重合体、或いは水素添加前の重合体中のビニル芳香族化合物含有量で把握しても良い。共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる変性重合体又はその水添物中のビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、又テーパー状に分布していてもよい。又、該重合体中には、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。
【0009】
本発明で使用する共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる変性重合体又はその水添物は、該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合(以後、重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量の割合をビニル芳香族炭化水素のブロック率という)が50重量%未満、好ましくは40重量%以下、更に好ましくは20重量%以下であるである重合体である。ブロック率が50重量%未満の場合、柔軟性の良好な組成物が得られる。
【0010】
ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量の測定は、例えば四酸化オスミウムを触媒として水素添加前の共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分の重量(但し、平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めることができる。
ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量(重量%)
=(水素添加前の重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの重量/水素添加前の重合体の重量)×100
【0011】
本発明において、水添反応前の変性重合体は、有機リチウム化合物を重合触媒として公知の方法で得られる重合体のリビング末端に後述する変性剤を付加反応することにより得られ、例えば下記一般式で表されるような構造を有する。
(B)n−X
(A−B)n−X、 A−(B−A)n−X、
B−(A−B)n−X、 X−(A−B)n、
X−(A−B)n−X、 X−A−(B−A)n−X、
X−B−(A−B)n−X、 [(B−A)n]m−X、
[(A−B)n]m−X、 [(B−A)n−B]m−X、
[(A−B)n−A]m−X
【0012】
(上式において、Aはビニル芳香族炭化水素重合体セグメントであり、Bは共役ジエン重合体又は共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体、或いは共役ジエン重合体セグメント又は共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体セグメントである。nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。Xは、後述する官能基を有する原子団が結合している変性剤の残基を示す。Xを後述するメタレーション反応で付加させる場合は、A及び/又はBの側鎖に結合している。また、Xに複数結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていても良い。)
本発明で使用する重合体は、上記一般式で表される重合体の任意の混合物でもよい。
【0013】
本発明において、重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができ、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量は好ましくは5〜90%、より好ましくは10〜80%、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は好ましくは3〜80%、より好ましくは5〜70%である。
但し、重合体として水添物を使用する場合のミクロ構造は、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量は好ましくは10〜80%、更に好ましくは15〜75%、特に好ましくは20〜50%であり、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は好ましくは5〜70%、更に好ましくは10〜50%であることが推奨される。
【0014】
なお、本発明においては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)を以後ビニル結合量と呼ぶ。本発明において、共役ジエン重合体又は共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体、或いは共役ジエン重合体セグメント又は共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体セグメント中にビニル結合量が異なる部分がそれぞれ少なくとも1つ存在しても良い。例えばビニル結合量が25%以下、好ましくは10〜23%の部分とビニル結合量が25%を超える部分、好ましくは28〜80%の部分がそれぞれ少なくとも一つ存在しても良い。また、セグメントBを二つ以上有する重合体において、それぞれのセグメントBのビニル結合量は同一でも異なっていても良い。
【0015】
本発明において、共役ジエンとは1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどであるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。これらは一つの重合体の製造において一種のみならず二種以上を使用してもよい。又、ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、などがあるが、特に一般的なものとしてはスチレンが挙げられる。これらは一つの重合体の製造において一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0016】
本発明において、共役ジエンとしてイソプレンと1,3−ブタジエンを併用する場合、イソプレンと1,3−ブタジエンの質量比は好ましくは95/5〜5/95、より好ましくは90/10〜10/90、更に好ましくは85/15〜15/85である。特に、低温特性の良好な組成物を得る場合には、イソプレンと1,3−ブタジエンの質量比は好ましくは49/51〜5/95、より好ましくは45/55〜10/90、更に好ましくは40/60〜15/85であることが推奨される。イソプレンと1,3−ブタジエンを併用すると高温時においても加工性の良好な組成物が得られる。
【0017】
本発明において、重合体の製造に用いられる溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、或いはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素系溶媒が使用できる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。
又、重合体の製造に用いられる有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子を結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムなどが挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。又、有機リチウム化合物は、重合体の製造において重合途中で1回以上分割添加してもよい。
【0018】
本発明において、重合体の製造時重合速度の調整、重合した共役ジエン部分のミクロ構造の変更、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との反応性比の調整などの目的で極性化合物やランダム化剤を使用することができる。極性化合物やランダム化剤としては、エーテル類、アミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、カリウムまたはナトリウムのアルコキシドなどが挙げられる。
適当なエーテル類の例はジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルである。アミン類としては第三級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、その他環状第三級アミンなども使用できる。ホスフィン及びホスホルアミドとしては、トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミドなどがある。
【0019】
本発明において、重合体を製造する際の重合温度は、好ましくは−10〜150℃、より好ましくは30〜120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、好ましくは48時間以内であり、特に好適には0.5〜10時間である。又、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないようにすることが好ましい。
【0020】
本発明で用いる有機リチウム化合物を重合触媒として得た、変性重合体又はその水添物である成分(1)は、重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなり、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、シラノール基、アルコキシシラン、ハロゲン化ケイ素基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性重合体又はその水添物である。
【0021】
かかる官能基を有する原子団が結合している変性重合体又はその水添物を得る方法は、重合体のリビング末端との付加反応により、該重合体に前記の官能基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合されている変性重合体又はその水添物を生成する官能基を有する変性剤、あるいは該官能基を公知の方法で保護した原子団が結合している変性剤を付加反応させる方法により得ることができる。
他の方法としては、重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属が付加した重合体に上記の変性剤を付加反応させる方法が上げられる。後者の場合、重合体の水添物を得た後にメタレーション反応させ、上記の変性剤を反応させてもよい。変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般に水酸基やアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、水酸基やアミノ基等にすることができる。
【0022】
尚、本発明においては、重合体のリビング末端に変性剤を反応させる際に、一部変性されていない重合体が成分(1)の変性重合体に混在しても良い。成分(1)の変性重合体に混在する未変性の重合体の割合は、好ましくは70wt%以下、より好ましくは60wt%以下、更に好ましくは50wt%以下であることが推奨される。
本発明の動架橋重合体組成物においては、変性重合体又はその水添物に結合している原子団は前記の官能基から選ばれる官能基を少なくとも1個有するため、熱可塑性樹脂やゴム状重合体との親和性が高く、熱可塑性樹脂やゴム状重合体との化学的な結合や水素結合等の物理的な親和力により相互作用が効果的に発現され、本発明が目的とする特性に優れた組成物を得ることができる。
【0023】
本発明で用いる成分(1)の変性重合体又はその水添物として特に好ましいものは、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性重合体又はその水添物である。
本発明において、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団として好ましい原子団は、下記式(1)〜式(14)のような一般式で示されるものから選ばれる原子団が上げられる。
【0024】
【化2】
【0025】
(上式で、R1〜R4は、水素又は炭素数1〜24の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基。R5は炭素数1〜48の炭化水素鎖、あるいは水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜48の炭化水素鎖。なおR1〜R4の炭化水素基、及びR5の炭化水素鎖中には、水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素、窒素、シリコン等の元素が結合していても良い。R6は水素又は炭素数1〜8のアルキル基)
本発明において、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性重合体又はその水添物を得るために使用される変性剤としては、下記のものが上げられる。
【0026】
例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジンである。
また、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシランである。
【0027】
また、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシランである。
【0028】
さらに、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン、トリス(γ−グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシランである。
【0029】
さらに、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシランである。
【0030】
また、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジイソプロペンオキシシランである。
【0031】
さらにまた、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
上記の変性剤を反応させることにより、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤の残基が結合している変性重合体が得られる。セグメントAとセグメントBを有する重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させる場合、重合体のリビング末端はセグメントAでもセグメントBのいずれでも良いが、耐熱性等に優れた組成物を得るためにはセグメントAの末端に結合していることが好ましい。
上記の変性剤の使用量は、重合体のリビング末端1当量に対して、0.5当量を超え、10当量以下、好ましくは0.7当量を超え、5当量以下、更に好ましくは1当量を超え、4当量以下で使用することが推奨される。なお、本発明において、重合体のリビング末端の量は、重合に使用した有機リチウム化合物の量と該有機リチウム化合物に結合しているリチウム原子の数から算出しても良いし、得られた重合体の数平均分子量から算出しても良い。
【0032】
本発明において、変性重合体の水添物は、上記で得られた変性重合体を水素添加することにより得られる。水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物があげられる。
【0033】
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
水添反応は好ましくは0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1〜15MPa、より好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜5MPaが推奨される。また、水添反応時間は好ましくは3分〜10時間、より好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0034】
本発明に使用される変性重合体の水添物において、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータル水素添加率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の70%を超える、好ましくは75%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上が水添されていても良いし、一部のみが水添されていても良い。一部のみを水添する場合には、水添率が10〜70%、或いは15〜65%特に好ましくは20〜60%にすることが好ましい。
更に、本発明では、水素添加重合体において、水素添加前の共役ジエンにもとづくビニル結合の水素添加率が、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上であることが、熱安定性に優れた組成物を得る上で推奨される。ここで、ビニル結合の水素添加率とは、重合体中に組み込まれている水素添加前の共役ジエンにもとづくビニル結合のうち、水素添加されたビニル結合の割合をいう。
【0035】
なお、重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下が推奨される。水添添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)により知ることができる。
本発明で使用する変性重合体又はその水添物の重量平均分子量は、動架橋重合体組成物の機械的強度等の点から3万以上、加工性の点から150万以下であることが好ましく、より好ましくは4万〜100万、更に好ましくは5〜80万である。また、分子量分布は1.05〜6、好ましくは1.1〜6、更に好ましくは1.55〜5.0、特に好ましくは1.6〜4である。分子量分布をかかる範囲にすることは、加工性の点で推奨される。
【0036】
本発明において、重合体中の共役ジエン化合物に基づくビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて知ることができる。また水添率も、同装置を用いて知ることができる。重合体又はその水添物の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。重合体の分子量分布は、同様にGPCによる測定から求めることができる。
【0037】
上記のようにして得られた変性重合体又はその水添物の溶液は、必要に応じて触媒残渣を除去し、変性重合体又はその水添物を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば重合後又は水添後の溶液にアセトンまたはアルコール等の重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、変性重合体又はその水添物の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。尚、本発明で使用する変性重合体又はその水添物には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
【0038】
本発明において特に好ましい変性重合体又はその水添物は、水添前の重合体鎖中におけるビニル結合含量の最大値と最小値との差が10重量%未満、好ましくは8重量%以下の変性重合体又はその水添物が挙げられる。
また、本発明において特に好ましい変性重合体又はその水添物としては、GPC/FTIR測定で得られる分子量と末端メチル炭素原子の個数の関係が、次の式の関係を満たす変性重合体又はその水添物が挙げられる。
Va−Vb≧0.03Vc、好ましくは Va−Vb≧0.05Vc
(ここで,Vaはピークトップ分子量の2倍の分子量における重合体中の1000個当たりの炭素原子中に含まれる末端メチル炭素原子の個数、Vbはピークトップ分子量の1/2の分子量における同個数、Vcはピークトップ分子量における同個数である。)
【0039】
GPC−FTIRは,GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ)の検出器としてFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)を使用したもので、分子量で分別した各フラクション毎のミクロ構造を測定することができる。末端メチル炭素原子の個数は、メチレン基に帰属される吸光度I(−CH2−)<吸収波数:2925cm-1>とメチル基に帰属される吸光度I(−CH3)<吸収波数:2960cm-1>の比、I(−CH3)/I(−CH2−)から求めることができる。この方法は,例えば,NICOLET FT−IR CUSTOMERNEWSLETTERのVol.2,No2,1994等に記載された方法である。
【0040】
また、本発明において特に好ましい変性重合体又はその水添物は、ビニル芳香族炭化水素の含有量が50重量%以下、好ましくは40重量%以下、更に好ましくは35重量%以下の変性重合体又はその水添物が挙げられる。特に共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる重合体においては、ビニル芳香族化合物の含有量は5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%であることが推奨される。
さらに、本発明において特に好ましい変性重合体又はその水添物は、ビニル芳香族炭化水素の含有量が50重量%を越え、90重量%以下、好ましくは60重量%越え、88重量%以下であり、重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量が40重量%以下、好ましくは10〜40重量%の変性重合体又はその水添物が挙げられる。かかる変性重合体の水添物において特に好ましいものは、示差走査熱量測定法(DSC法)において、−50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが実質的に存在しない水素添加物である。
【0041】
ここで、−50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが実質的に存在しないとは、この温度範囲において結晶化に起因するピークが現れない、もしくは結晶化に起因するピークが認められる場合においてもその結晶化による結晶化ピーク熱量が3J/g未満、好ましくは2J/g未満、更に好ましくは1J/g未満であり、特に好ましくは結晶化ピーク熱量が無いものである。
本発明においては、変性重合体又はその水添物に熱可塑性樹脂を組み合わせて使用することができる。成分(2)として使用される熱可塑性樹脂は、特に制限はないが、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等の芳香族系樹脂、6.6ナイロン、6ナイロン等のポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等を挙げることができる。
【0042】
スチレン系樹脂としてはポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン(ハイインパクトポリエステル)、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合樹脂及びその水素添加物、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン ・メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)等のスチレン・メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体(ABS樹脂)、ゴム強化MS樹脂、無水マレイン酸・スチレン三元共重合体、無水マレイン酸・アクリロニトリル・スチレン三元共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン三元共重合体、メタクリロニトリル・スチレン共重合体、メタクリル酸メチル・アクリロニトリル・スチレン三元共重合体等を挙げることができる。
【0043】
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のホモポリマー、及びブテン、ヘキセン、オクテンと等のブロック、ランダム共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン−1、プロピレン・ブテン−1共重合体、塩素化ポリオレフィン、エチレン・メタクリル酸およびそのエステル共重合体、スチレン・アクリル酸およびそのエステル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)等を挙げることができる。メタクリル樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体等を例示することができる。これらの熱可塑性樹脂は2種類以上混合して使用しても良い。
【0044】
また本発明においては、変性重合体又はその水添物にゴム状重合体を組み合わせて使用することができる。成分(2)として使用されるゴム状重合体は、特に制限はないが、ブタジエンゴム及びその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム及びその水素添加物、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びその水素添加物、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチエン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びその水素添加物等のスチレン系エラストマー、天然ゴムなどが挙げられる。
【0045】
これらのゴム状重合体は、官能基を付与した変性ゴムであっても良い。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができる。成分(2)として特に好ましいものは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、PMMA、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート三元共重合体(MBS)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、及びこれらの水素添加物、例えばスチレン−エチレン−ブチレンブロックポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレンブロックポリマー(SEPS)、スチレン−ブタジエンラバー(SBR)、EPDM、ブチルゴム等を例示することができる。成分(2)の熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体の使用量は、成分(1)/成分(2)の重量比率で、好ましくは20/80〜90/10、更に好ましくは30/70〜80/20である。成分(2)の熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体は変性重合体又はその水添物と共に加硫剤の存在下に動的に加硫させても良いし、予め水添共重合体又はその水添物を動架橋させた後に成分(2)を配合して用いても良い。
【0046】
本発明において、成分(3)の架橋剤は、変性重合体又はその水添物である成分(1)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する架橋剤である。成分(3)の架橋剤として好ましくいものは、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する架橋剤である。架橋剤の配合量は、成分(1)の変性重合体又はその水添物100重量部に対して、動架橋重合体組成物の目的とする作用効果の観点から0.01〜20重量部である。好ましくは0.02〜10重量部、更に好ましくは0.05〜7重量部である。
成分(3)の架橋剤として具体的なものは、カルボキシル基を有する架橋剤としては、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、カルバリル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0047】
酸無水物基を有する架橋剤としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、シス−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキシテトラヒドロキシフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物などである。
イソシアネート基を有する架橋剤としてはトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、多官能芳香族イソシアナートなどである。アルコキシシランを有する架橋剤としてはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン、エトキシシロキサンオリゴマーである。
【0048】
エポキシ基を有する架橋剤としてはテトラグリジジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、エチレングリコールジグリシジル、プロピレングリコールジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレートなどである。
特に好ましい架橋剤は、カルボキシル基を2個以上有するカルボン酸又はその酸無水物、或いは酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基を2個以上有する架橋剤であり、例えば無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、トルイレンジイソシアナート、テトラグリジジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等である。
【0049】
本発明においては、上記の成分(1)に成分(3)を予め反応させた二次変性重合体(本発明では成分(1‘)と規定)を成分(2)と配合して動架橋重合体組成物とすることができる。成分(1)に成分(3)を予め反応させる場合、成分(1)に結合されている官能基1当量あたり、成分(3)が0.3〜10モル、好ましくは0.4〜5モル、更に好ましくは0.5〜4モルである。成分(1)と成分(3)を予め反応させる方法は、溶融混練方法や各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法など上げられる。
【0050】
溶融混練方法は特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法等が用いられる。溶融混練方法の場合、混練温度は一般に、50〜250℃、好ましくは100〜230℃の範囲で行われる。
また、各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法において、溶媒としては各成分を溶解又は分散するものであれば特に制限はなく、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などの炭化水素系溶媒の他、含ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが使用できる。かかる方法において特に好ましい方法は、成分(1)を製造した溶液中に成分(3)を添加して反応させて成分(1‘)を得る方法が推奨される。
【0051】
反応させる温度は、一般に−10〜150℃、好ましくは30〜120℃である。反応に要する時間は条件によって異なるが、一般に3時間以内であり、好ましくは数秒〜1時間である。
このようにして得られた成分(1‘)を成分(2)と配合して動架橋重合体組成物とする場合、成分(1‘)と成分(2)の合計量100重量部に対して、更に成分(3)を0.01〜20重量部配合することができる。
本発明で云う動的加硫とは、各種配合物を溶融状態で加硫剤が反応する温度条件下で混練させることにより分散と架橋を同時に起こさせる手法であり、 A.Y.Coranらの文献(Rub.Chem.an d Technol.vol.53.141〜(1980))に詳細に記されている。動的加硫時の混練機は通常バンバリーミキサー、加圧式ニーダーのような密閉式混練機、一軸や二軸押出機等を用いて行われる。混練温度は通常130〜300℃、好ましくは150〜250℃である。混練時間は通常1〜30分である。動的加硫の際の加硫剤としては通常有機過酸化物やフェノール樹脂架橋剤が良く用いられる。
【0052】
有機過酸化物としては、具体的にはジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどがあげられる。
【0053】
これらの中では、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ジ−ter−ブチルパーオキサイド等が好ましい。
【0054】
上記有機過酸化物を使用して架橋するに際しては、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミド等のペルオキシ架橋用助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーなどを併用することができる。
【0055】
本発明において加硫剤の使用量は、通常は、変性重合体又はその水添物、或いは変性重合体又はその水添物と熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体から構成される変性重合体組成物100重量部に対し0.01〜15重量部、好ましくは0.04〜10重量部の割合で用いられる。
本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、軟化剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤等の添加物を配合することが出来る。製品の硬さや流動性の調節の為に、必要に応じて配合することが出来る軟化剤としては、具体的にはパラフィン系、ナフテン系、アロマ系プロセスオイル、流動パラフィン等の鉱物油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油等種々のものが使われる。これらの軟化剤は混練時に添加しても、変性重合体又はその水添物の製造時に予め該共重合体の中に含ませておいても良い(いわゆる油展ゴム)。軟化剤の添加量は、変性重合体又はその水添物100重量部に対し通常0〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、更に好ましくは20〜100重量部が好ましい。
【0056】
また、充填剤としては、具体的には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、種々の表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等の合成ケイ酸塩、タルク、マイカ、クレイ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、天然ケイ酸、合成ケイ酸、珪酸カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナ、カーボン等が挙げられ、これらの充填剤の添加量は、変性重合体又はその水添物100重量部に対し通常0〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、更に好ましくは20〜100重量部が好ましい。
【0057】
また、充填剤を添加する場合シランカップリング剤を併用することが好ましい。具体的には、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル、メチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0058】
また、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等があげられる。
【0059】
シランカップリング剤の配合量は、充填剤に対して、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1〜15重量%である。
本発明において、変性重合体組成物を加硫剤の存在下に動的に加硫してなる動架橋重合体組成物は、ゲル含量(ただし、無機充填材等の不溶物等の不溶成分はこれに含まない)が5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは20〜60重量%になるように加硫することが推奨される。ここで、ゲル含量とは、動架橋重合体組成物(試料)1gを、沸騰キシレンを用いてソックスレー抽出器で10時間リフラックスし、残留物を80メッシュの金網でろ過し、メッシュ上に残留した不溶物乾燥重量(g)の試料1gに対する割合(重量%)で表したものである。
【0060】
【発明の実施の形態】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、以下の実施例において、変性重合体及びその水添物等(以後変性重合体等と呼ぶ)の特性の測定等は、次のようにして行った。
A.重合体等及びその水添物の特性
(1)スチレン含有量
紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
(2)ポリスチレンブロック含量
水添前の重合体を用い、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法で測定した。
(3)ビニル結合量及び水添率
核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX−400)を用いて測定した。
【0061】
(4)分子量
GPC(装置:島津製作所社製LC10、カラム:島津製作所社製Shimpac GPC805+GPC804+GPC804+GPC803)で測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
(5)未変性ブロック共重合体の割合
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用し、変性重合体と低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液について、上記(4)で測定したクロマトグラム中の標準ポリスチレンに対する変性重合体の割合と、シリカ系カラムGPC〔装置はデュポン社製:Zorbax〕で測定したクロマトグラム中の標準ポリスチレンに対する変性重合体の割合を比較し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定した。未変性重合体の割合は、シリカカラムへ吸着しなかったものの割合である。
【0062】
(6)末端メチル炭素原子の個数(GPC/FTIR)
GPC〔装置は、ウォーターズ社製〕で測定し、検出器としてFT−IR〔装置は、パーキンエルマー社製〕を用いた。測定条件は、下記のとおりである。
・カラム;AT−807S(1本)〔昭和電工社製〕とGMH−HT6(2本)
〔東ソー社〕を直列に接続
・移動相;トリクロロベンゼン
・カラム温度;140℃
・流量;1.0ml/分
・試料濃度;20mg/20ml
・溶解温度;140℃
(7)結晶化ピーク及び結晶化ピーク熱量
DSC[マックサイエンス社製、DSC3200S]で測定した。室温から30℃/分の昇温速度で150℃まで昇温し、その後10℃/分の降温速度で−100℃まで降温して結晶化カーブを測定して結晶化ピークの有無を確認した。また、結晶化ピークがある場合、そのピークが出る温度を結晶化ピーク温度とし、結晶化ピーク熱量を測定した。
【0063】
B.重合体等の調製
なお、水添反応に用いた水添触媒は、下記の方法で調製した。
1)水添触媒I
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン2リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジ−(p−トリル)40ミリモルと分子量が約1,000の1,2−ポリブタジエン(1,2−ビニル結合量約85%)150グラムを溶解した後、n−ブチルリチウム60ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加して室温で5分反応させ、直ちにn−ブタノール40ミリモルを添加攪拌して室温で保存した。
2)水添触媒II
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
本発明で用いた重合体等は、以下の方法で調製した。
【0064】
a.ポリマー1
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器に、ブタジエン濃度が20重量%のシクロヘキサン溶液を6.19L/hrの供給速度で、n−ブチルリチウムをブタジエン100gに対して0.25gになるような濃度に調整したシクロヘキサン溶液を2L/hrの供給速度で、更にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのシクロヘキサン溶液をn−ブチルリチウム1モルに対して0.25モルになるような供給速度でそれぞれ供給し、90℃で連続重合した。
反応温度はジャケット温度で調整し、反応器の底部付近の温度は約88℃、反応器の中部付近の温度は約90℃,反応器の上部付近の温度は約90℃であった。重合反応器における平均滞留時間は、約45分であり、ブタジエンの転化率はほぼ100%であった。
連続重合で得られたポリマーの平均ビニル結合含量は、27%であった。また、重合反応時、反応の途中でサンプリングしたポリマーのビニル結合含量とその時のブタジエン供給量と反応率から算出したポリマー転換率(最終的に供給した全ブタジエンに対するポリマーへの転換率)より求めたビニル結合含量の差は5重量%以下であった。
【0065】
次に、連続重合で得られたリビングポリマーに、変性剤としてテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(以後、変性剤M1と呼ぶ)を重合に使用したn−ブチルリチウム1当量に対して1.1当量反応させた。
その後、上記のようにして得られたポリマーに水添触媒Iをポリマー100重量部当たりTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られた重合体は、水添前の重合体のビニル結合量が約27%、水添前の重合体のビニル結合含量の最大値と最小値との差が5%以下、水添添加率が99%、分子量が20万、分子量分布が1.6の変性水添重合体(ポリマー1)であった。
【0066】
b.ポリマー2
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を2基使用して連続重合を行った。1基目の底部から,ブタジエン濃度が30重量%のヘキサン溶液を4.6L/hrの供給速度で、n−ブチルリチウムをブタジエン100gに対して0.097gになるような濃度に調整したヘキサン溶液を2L/hrの供給速度で、更にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのヘキサン溶液をn−ブチルリチウム1モルに対して0.06モルになるような供給速度でそれぞれ供給し、90℃で連続重合した。反応温度はジャケット温度で調整し、反応器の底部付近の温度は約88℃、反応器の上部付近の温度は約90℃であった。
【0067】
1基目出口でのブタジエンの転化率はほぼ100%であった。1基目から出たポリマ−溶液を2基目の底部から供給,また同時に,ブタジエン濃度が30重量%のヘキサン溶液を6.8L/hrの供給速度で,更にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのヘキサン溶液をn−ブチルリチウム1モルに対して0.75モルになるような供給速度でそれぞれ供給し、90℃で連続重合した。2基目の反応器の底部付近での温度は約89℃、反応器の上部付近での温度は約90℃であった。2基目出口でのブタジエンの転化率はほぼ100%であった。2基連続重合で得られたポリマーの平均ビニル結合含量は30%であった。
次に、連続重合で得られたリビングポリマーに、変性剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以後、変性剤M2と呼ぶ)を重合に使用したn−ブチルリチウムに対して当モル反応させた。
【0068】
その後、上記のようにして得られたポリマーに水添触媒IIをポリマー100重量部当たりTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られた重合体は、水添前の重合体のビニル結合量が約30%、水添添加率が98%、分子量が22万、分子量分布が1.8、Va−Vbが15、0.03Vcが2.6の変性水添重合体(ポリマー2)であった。
【0069】
c.ポリマー3
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器に、ブタジエン/スチレンの重量比が82/18のモノマーを16重量%の濃度で含有するn−ヘキサン溶液を157g/分の供給速度で、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを10重量%の濃度で含有するシクロヘキサン溶液を6.5g/分の供給速度で、更に極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを10重量%の濃度で含有するn−ヘキサン溶液を3g/分の供給速度でそれぞれ供給し、86℃で連続重合した。
次に、連続重合で得られたリビングポリマーに、変性剤M1を重合に使用したn−ブチルリチウム1当量に対して2当量反応させた。得られたポリマーを分析したところ、スチレン含有量は18重量%、ブタジエン部のビニル結合含量は30重量%であった。ブロックスチレン量の分析値より、スチレンのブロックは存在していなかった。
【0070】
次に、連続重合で得られたポリマーに、水添触媒IIをポリマー100重量部当たりTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加した。
得られた変性水添共重合体(ポリマー3)は、ムーニー粘度70、分子量分布1.9、スチレン含有量18重量%、ブタジエン部のビニル結合含量30重量%,水素添加率84%であった。
【0071】
d.ポリマー4
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を2基使用して連続重合を行った。1基目の反応器の底部から、ブタジエン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を4.51L/hrの供給速度で、スチレン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を5.97L/hrの供給速度で,またn−ブチルリチウムをモノマー100gに対して0.077gになるような濃度に調整したシクロヘキサン溶液を2.0L/hrの供給速度で、更にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのシクロヘキサン溶液をn−ブチルリチウム1モルに対して0.44モルになるような供給速度でそれぞれ供給し、90℃で連続重合した。反応温度はジャケット温度で調整し、反応器の底部付近の温度は約88℃、反応器の上部付近の温度は約90℃であった。重合反応器における平均滞留時間は、約45分であり、ブタジエンの転化率はほぼ100%、スチレンの転化率は99%であった。
【0072】
1基目から出たポリマー溶液を2基目の底部から供給,また同時に,スチレン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を2.38L/hrの供給速度で2基目の底部に供給し,90℃で連続重合した。2基目出口でのスチレンの転化率は98%であった。
次に、2基目から出たリビングポリマーに、変性剤としてN−メチルピロリドン(以後、変性剤M3と呼ぶ)を重合に使用したn−ブチルリチウムに対して当モル反応させた。
【0073】
その後、上記のようにして得られたポリマーに、水添触媒Iをポリマー100重量部当たりTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られた重合体は、分子量が20万,分子量分布が1.9,スチレン含有量が67重量%,水添前の重合体から求めたブロックスチレン量が20重量%,水添前のブタジエン部のビニル結合含量14%,水素添加率が99%の変性水添重合体(ポリマー4)であった。なお、スチレン含有量とブロックスチレン量の分析値より、スチレンのブロック率は30%であった。また、DSC法による結晶化温度及び結晶化ピーク熱量の測定において、ポリマー4は−50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが現れず、結晶化ピーク熱量もゼロであった。
【0074】
e.ポリマー5
ポリマー2に、該ポリマーに結合する官能基1当量あたり2.1モルの無水マレイン酸(以下、架橋剤D1と呼ぶ)を配合して、30mmφ二軸押出機で210℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練し、ポリマー2の二次変性重合体(ポリマー5)を得た。
f.ポリマー6
水添反応後のポリマー3の溶液に、該ポリマーに結合する官能基1当量あたり1モルの架橋剤D1を添加して反応させ、ポリマー3の二次変性重合体(ポリマー6)を得た。
【0075】
C.動架橋重合体組成物の調製に使用した成分
重合体以外の各成分を下記に示す。
・ポリプロピレン樹脂: サンアロマーPC600S (モンテルエスディーケイサンライズ社製)
・パラフィン系オイル: ダイアナプロセスオイルPW−380(出光興産社製)
・炭酸カルシュウム:高級脂肪酸エステルで表面処理した炭酸カルシュウム
・有機過酸化物:パーヘキサ2,5B(日本油脂社製)
・加硫促進剤:ジビニルベンゼン
・酸化防止剤:イルガノックス1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)
D.動架橋重合体、動架橋重合体組成物の物性
1)硬さ
JIS K6253に従い、デュロメータタイプAで10秒後の値を測定した。
【0076】
2)引張強度、切断時伸び
JIS K6251に従い、3号ダンベル、クロスヘッドスピード500mm/分で測定した。
3)耐傷つき性
学振型摩擦試験器(テスター産業株式会社製、AB−301型)を用い、成形シート表面(光沢鏡面)を、摩擦布カナキン3号綿、荷重500gで100回摩擦し、摩擦前後の光沢度変化を、光沢度計にて測定し、以下の基準で判定した。
◎;光沢度変化が0〜−5以内
○; 〃 −5を越し−10以内
△; 〃 −10を越し−50以内
×; 〃 −50を越したもの
【0077】
4)耐磨耗性
学振型摩擦試験器(テスター産業株式会社製、AB−301型)を用い、成形シート表面(皮シボ加工面)を、摩擦布カナキン3号綿、荷重500gで摩擦し、摩擦後の体積減少量によって、以下の基準で判定した。
◎;摩擦回数10,000回後に、体積減少量が0.01ml以下
○; 〃 0.01を越し0.05ml以下
△; 〃 0.05を越し0.10ml以下
×; 〃 0.1mlを越したもの
5)耐油性
JIS K6301規定のNo.3試験油(潤滑油)を使用し、70℃で2時間、50mm×50mm×2mm厚さの試験片を浸漬し、浸漬前後の重量変化(%)を求めた。
【0078】
【実施例1〜4】
原料ゴムとしてポリマー1〜ポリマー4をそれぞれ使用し、表1に示した配合処方に従って各成分をヘンシェルミキサーで混合し、30mm径の二軸押出機にて190〜230℃の条件で溶融混練して動架橋する前の配合物を得る(第一段目)。この配合物に加硫剤を添加し、30mm径の二軸押出機にて190〜230℃の条件で溶融混練して動加硫した動架橋重合体組成物を得る(第二段目)。得られた組成物を射出成形して諸物性を測定する。
【0079】
【実施例5,6】
[参考例]
原料ゴムとしてポリマー1〜ポリマー4をそれぞれ使用し、表2に示した配合処方に従って各成分をヘンシェルミキサーで混合し、30mm径の二軸押出機にて190〜230℃の条件で溶融混練して動架橋する前の配合物を得る(第一段目)。この配合物に加硫剤を添加し、30mm径の二軸押出機にて190〜230℃の条件で溶融混練して動加硫した動架橋重合体組成物を得る(第二段目)。得られた組成物を射出成形して諸物性を測定する。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
本発明の動架橋重合体組成物は、柔軟性や耐磨耗性、耐傷付き性、耐油性等の特性に優れる。本発明の動架橋重合体組成物は、一般に使用される熱可塑性樹脂用成形機で成形することが可能であり、シート、フィルム、各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成形品、真空成形品、押出成形品等の多様な成形品として活用できる。これらの成形品は、食品包装材料、医療用器具材料、家電製品及びその部品、自動車部品・工業用品・日用雑貨・玩具等の素材、履物用素材等に利用できる。
Claims (7)
- 下記aおよびbからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなる変性重合体又はその水添物であって、重量平均分子量は3万以上150万以下である成分(1)20〜90重量部、熱可塑性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分(2)80〜10重量部、および成分(1)の官能基と反応性を有する架橋剤成分(3)を、成分(1)100重量部に対して0.01〜20重量部から構成される変性重合体組成物を、加硫剤の存在下に動的に加硫してなる動的架橋重合体と未反応原料との混合物である動架橋重合体組成物。
a.共役ジエン重合体
b.共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる重合体であり、しかも該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が50重量%未満である重合体。 - 下記aおよびbからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなる変性重合体又はその水添物であって、重量平均分子量は3万以上150万以下である成分(1)に、架橋剤成分(3)を成分(1)に結合されている官能基1当量あたり0.3〜10モル反応させた二次変性重合体である成分(1')20〜90重量部、熱可塑性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分(2)80〜10重量部から構成される変性重合体組成物を、加硫剤の存在下に動的に加硫してなる動的架橋重合体と未反応原料との混合物である動架橋重合体組成物。
a.共役ジエン重合体
b.共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる重合体であり、しかも該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が50重量%未満である重合体。 - 成分(1)を構成する重合体に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性重合体又はその水添物である請求項1〜2のいずれかに記載の動架橋重合体組成物。
- 成分(1)が、下記aおよびbからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなり、該重合体に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合していることを特徴とする変性重合体又はその水添物である請求項1〜3のいずれかに記載の動架橋重合体組成物。
a.共役ジエン重合体、
b.共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる重合体であり、しかも該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が50重量%未満である重合体組成物。 - 官能基含有変性剤が、重合体のリビング末端との付加反応により、該重合体に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合されている変性重合体又はその水添物を生成する官能基を有する変性剤である請求項1〜4のいずれかに記載の動架橋重合体組成物。
- 架橋剤成分(3)がカルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する架橋剤である請求項1〜5のいずれかに記載の動架橋重合体組成物。
- 成分(1)が、下記aおよびbからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなり、該重合体に下記式(1)〜式(14)から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性重合体又はその水添物である請求項1〜6のいずれかに記載の動架橋重合体組成物。
a.共役ジエン重合体、
b.共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる重合体であり、しかも該重合体中の全ビニル芳香族炭化水素含有量に対するビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が50重量%未満である重合体
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