JP4438126B2 - 段付きガラス板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、段付きガラス板に関し、特に自動車側方の窓ガラス板等に用いられる段付き強化ガラス板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラス板の強化方法として、吹口面上に冷却用ノズルを格子状あるいは千鳥状に配置した吹口により、ガラスの軟化点付近の温度まで加熱されたガラス板の両表面に噴流状の冷却媒体を吹きつけて急冷する方法が知られている。この強化方法においては、ガラス板は、その冷却時にガラス板の内部と表面とに温度差がつけられ、最終的に固化されたガラス板の表面に残留圧縮応力層を生成させることにより強化される。
【0003】
もし、ガラス板が無限寸法の一定の板厚を有し且つその両面が均一に冷却されれば、板厚方向の応力分布は、いわゆる放物線上の分布に従う。そして表面圧縮応力の値がガラス板の板厚方向内部中心での引張応力値の2倍に等しくなり、板厚方向の応力の積分値は0となる。ところが、実際は、ガラス板は有限寸法である。なお、ガラス板の端部は冷却時の割れ防止や意匠性の観点から、通常面取り処理がなされている。
【0004】
このようなガラス板を冷却する場合には、端部の影響が殆んどない中央領域とは異なり、ガラス板の端部における冷却は面取り部分の全面に作用し、且つガラス板端部の全厚に局所的に影響を及ぼす。これにより、ガラス板の最端部に板厚の2倍から3倍の幅で、板厚方向の応力の積分平均値が圧縮を示す領域と、これに釣り合う形でガラス板の内周側に板厚方向の応力の積分平均値が引張を示す中間領域とが生成される。このことは、ガラス板端部の若干内周側に、一定幅で、外部からの衝撃に対して弱い領域が存在することを意味する。
【0005】
ここで、積分平均値について、あわせて主応力の方向、主応力差について説明する。まず、ガラス板面に垂直なある1平面(ガラス板の断面)を選ぶ。選ばれた平面は、ガラス板面に平行なある直線に対しあらゆる角度をとり得る。また、この平面内にある1点を選ぶ。この点に働く選ばれた平面に垂直な方向の応力値は、選ばれた平面の角度によってそれぞれ異なるので、その角度のうち応力値が最大になる角度と最小になる角度とが存在する。この、最大値を示す応力の方向と、これに直交する最小値を示す方向とが、主応力方向である。代表して、最大値を示す応力の方向を主応力方向と呼ぶ。
【0006】
ところで、主応力自身を直接測定することはできないので、強化ガラスにおいては、光弾性法により得られる主応力差によって、主応力が評価される。この光弾性法により得られる主応力差は、強化ガラスにおいて、板厚方向に並んだ全ての点について、各点における応力の最大値から最小値を引いた値の総和を板厚で割った値(応力の最大値から応力の最小値を引いた値の積分値を板厚で平均化した値)に相当する。したがって、ガラス板面上にある点を選び、この点から板厚方向についての、各点の応力の最大値から応力の最小値を引いた値の積分平均値が、その点での主応力差となる(このときの主応力方向が、その点での主応力方向となる)。なお、本明細書において、主応力方向はすべてガラス板面に平行な方向にある。
【0007】
ところで、自動車側方に配置される窓ガラスとして、自動車の空力性能の向上や意匠面でのニーズにより、車体フランジとの段差をなくした窓ガラス板の一種である段付きガラス板が開発されている。図3はその端部形状、配置状態の1例を示す図である。図3中、1はガラス板であり、図示のとおりガラス板の周縁が段状に形成されている。2はサッシュであり、サッシュ2には凹部3が設けられ、この凹部3にガラス板1の周縁が嵌め込まれる。このガラス板は、ガラス板の端部に対して段付き面取りを施すことにより、板厚の厚い部分の周辺に一定幅で板厚の薄い部分を持つ自動車用ガラス板である。
【0008】
特に、自動車側方に配置される段付き強化ガラス板は、上下方向あるいは斜め上下方向へ摺動され、しかもそれが頻繁に行われる。このためガラス板の端部部分に過酷な高い機械的負荷がかかる。そして、ガラス板には、その負荷に耐え得る強度が求められる。ところが、上記のような段付き強化ガラス板については、ガラス板の表面全体に渡って冷却速度を均一にする従来方法で強化されたガラス板は、中間領域の表面に存在する圧縮応力層の応力値が小さくなり、強度を十分に付与することは困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、自動車側方用窓ガラス板等に用いられる段付き強化ガラス板における上記のような課題に鑑みてなされたものであり、段付き強化ガラス板においてその端部部分にかかる過酷な高い機械的負荷に対して問題なく耐える段付き強化ガラス板を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、周縁領域Aと、中央領域Cと、周縁領域Aと中央領域Cとの間の中間領域Bとを有するガラス板であって、周縁領域Aと中間領域Bとの境界に段部が設けられ、周縁領域Aの板厚が中央領域Cの板厚に比べて薄くなるように形成されてなる段付きガラス板において、前記ガラス板は強化処理されたものであり、中間領域Bにおける平均表面圧縮応力が、中央領域Cにおける平均表面圧縮応力に比べて100〜500kg/cm2 大きいことを特徴とする段付きガラス板を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1〜図2は本発明の段付き強化ガラス板を説明する概略図であり、図1は平面図、図2は図1中ZーZ線断面図である。図1より相対的に拡大して示したものである。Aは周縁領域を示す。Cは中央領域を示し、板厚の厚い部分に相当する。Bは中央領域Cの周辺部で、中央領域Cと周縁領域Aとの間の中間領域を示す。中間領域Bは中央領域Cと同じく板厚の厚い部分である。図1に示すように各領域A、B、Cはガラス板を平面視で見たときに定義づけられる領域である。
【0012】
本発明においては、上記のような段付きガラス板は強化処理が施されたガラス板である。そして、この段付きガラス板の中間領域Bにおける平均表面圧縮応力を、中央領域Cにおける平均表面圧縮応力に比べて100〜500kg/cm2 大きくする。これにより、板厚方向の応力の積分平均値が引張を示す中間領域である板厚の厚い部分の周辺部における、板厚の薄い部分との境界領域(すなわち中間領域B)に十分な強度が付与される。
【0013】
中間領域Bにおける平均表面圧縮応力が中央領域Cにおける平均表面圧縮応力に比べて100kg/cm2 未満大きい強度であれば、例えばこのガラス板を自動車側方窓に用いる場合の頻繁に行われる上下摺動に耐え得る強度が不足する。このため、中間領域Bにおける平均表面圧縮応力は、中央領域Cにおける平均表面圧縮応力に比べて100kg/cm2大きい。
【0014】
本発明においては、中間領域Bが好ましくは周縁領域Aと中間領域Bとの境界からガラス板における内周に向けて5〜30mmの幅を有する。これにより板厚方向の応力の積分平均値が引張を示す中間領域Bが、周縁領域A(板厚の薄い部分)と中央領域C(板厚の厚い部分)との両方にまたがる場合にも所定の強度を十分に確保することができる。
【0015】
さらに、本発明においては、上記段付き強化ガラス板が、平均表面圧縮応力の高い部分に近接周辺の主応力差に比べて大きい主応力差を有する特徴点を有することが好ましい。そして、この特徴点に最も近い、近接周辺の主応力差に比べて大きい主応力差を有する第2の特徴点と、前記の特徴点との距離が5〜15mmの範囲であることが好ましい。このような主応力差を形成することにより、ガラス板が破壊した場合にも大きな破片の発生を抑制することができる。
【0016】
図4を用いて、さらに詳細に説明する。図4は、図1の要部(P)拡大概念図である。中間領域Bには、近接周辺に比べて大きな主応力差を有する特徴点bが点在して設けられている。本例では、この特徴点bでの主応力方向はガラス板の縁方向に対し垂直方向である。一方で、周縁領域Aには、近接周辺に比べて大きな主応力差を有する特徴点aが散在して設けられている。本例では、隣接する各特徴点aどうしについて、各特徴点aの主応力方向はそれぞれ異なる方向を向いている。本例では、特徴点bに最も近い点は特徴点aである。そして、図示の点線で示したLの値が、5〜10mmの範囲にある。これにより、ガラス板の破砕時に大きな破片の発生を防止できる。
【0017】
このように、上記例では、特徴点bに最も近い点は周縁領域Aにある特徴点aである。一方で、ある特徴点bに最も近い点が特徴点aではなく中間領域Bの他の特徴点bである場合には、上記Lは中間領域内にある特徴点b間にあることになる。中央領域Cに、近接周辺の主応力差に比べて大きい主応力差を有する他の特徴点があり、この特徴点が特徴点bから最も近い距離にある場合には、この距離がLに相当する。
【0018】
ところで、上記例では周縁領域Aと中間領域Bとの境界に、階段状の段部形成されたものである。他に、周縁領域Aと中間領域Bとの境界が滑らかに形成される場合にも、実質的にこの境界に段部を設けることができる。この場合、図5に示すように、中間領域Bから周縁領域Aに向かって段部が形成されている側のガラス板面(図示の上側)を左から右にたどっていくと、下に凸曲線から上に凸曲線に変わっている、すなわち、周縁領域Aから中間領域Bまでの間に変曲点が存在する。この変曲点を、実質的な段部を形成する周縁領域Aと中間領域Bとの境界と呼ぶことができる。なお、本発明において、段部の形状が階段状(図2)であっても滑らかな形状(図5)であっても、周縁領域Aの幅は、ガラス板の端縁から5〜15mmの範囲にあることが、車体との整合性の観点から好ましい。
【0019】
上記のような条件を満たす具体的なガラス板の強化手段としては、ガラス板の軟化点付近の温度まで加熱されたガラス板の両表面に噴流状の冷却媒体を吹きつけて急冷する方法により実施することができる。その好ましい例としては、EP884286Aに記載の冷却装置を用いることができる。
【0020】
この冷却装置は、ガラス板の両面に対向配置された風箱と、該風箱のガラス板側に装着された複数のノズルとを有し、所定温度に加熱されたガラス板に向けて各ノズルから噴出する冷却風を吹き付けるガラス板の冷却装置において、前記ノズルは、ガラス板に対向する側に凸状曲面形式の先端面を有する中空管状のものであって、前記先端面には、風箱内から供給される冷却風をガラス板に向けて吹き付ける複数の開口孔が設けられてなる冷却装置である。
【0021】
この冷却装置における、先端面に複数の開口孔が設けられたノズルを用いることは、以下の点で有利である。すなわち、通常冷却時に必要なガラス板の摺動動作によって、冷却能を高めるためにノズルをガラス板に近づけた場合に生じるガラス板とノズルとの衝突、を回避できる。具体的には、このノズルを用いることにより、各ノズル間のピッチを小ピッチにすることができる。ノズルを小ピッチに配列することによって摺動距離を小さくすることにより、ガラス板とノズルとの衝突を避けることができ、冷却能の大きい部分と小さい部分との境界で冷却能に明瞭な差異を与えることができる。また、開口孔の径を小さくすることでガラスーノズル間の距離に対する冷却能の感度を高めることができる。こうして、ガラスーノズル間の距離をガラス板における各領域で変える場合に、異なる距離の差が小さくても、板厚の薄い部分と板厚の厚い部分とで大きな冷却能の差を生むことが可能であり、本発明に従った応力分布が得られる。
【0022】
すなわち、上記冷却装置において、複数のノズルにおけるガラス板に向けて吹き付ける複数の開口孔のうち、高い平均表面圧縮応力の必要な領域である中間領域Bにおけるガラスーノズル間の距離を前記中央領域Cにおける平均表面圧縮応力に比べて100〜500kg/cm2 大きくするために必要な短い距離にし、高い平均表面圧縮応力を必要としない面ではガラスーノズル間距離を長くし、選択的に冷却能を変化させて行うことで実施される。
【0023】
なお、段付きガラス板は周縁領域Aの板厚が中央領域Cの板厚より小さい。そのため中間領域Bにおける平均表面圧縮応力を中央領域Cにおける平均表面圧縮応力に比べて100〜500kg/cm2大きくすると、周縁領域Aにおける平均表面圧縮応力の値は中央領域Cにおける平均表面圧縮応力の値に比べて100〜300kg/cm2大きくできる。通常の使用状態における好ましい強度を得るために、中央領域Cにおける平均表面圧縮応力の値は850〜1200kg/cm2の範囲にすることが好ましい。
【0024】
本発明で使用できる冷却装置としては、上記のような冷却装置のほか、従来公知の冷却装置においても、冷却能の大きい部分と小さい部分との境界が明瞭に現れるように工夫することにより、必要領域以外の影響を抑えことが可能である。さらに、従来公知の冷却装置のうち、必要箇所のノズルを上記の開口孔を複数有するノズルに代えて使用することもできる。こうして中間領域B、板厚が中間領域B及び中央領域Cの板厚に比べて薄い周縁領域Aにおいても所定強度を有するガラス板が得られる。
【0025】
こうした好ましい各応力値を有する段付きガラス板は、昇降する自動車サイドウインドウ用ガラス板に好適に用いられる。すなわち、自動車の走行空力抵抗の低減と意匠性の向上のために、自動車サッシュと昇降する自動車サイドウインドウとの面一化が提案されている。一方で、サイドウインドウとサッシュとの間は窃盗工具を挿入する標的になりやすい。サッシュとサイドウインドウとの面一化のためには、サイドウインドウのサッシュへのかみ込み量が小さくなるため、通常のサイドウインドウの形状では、窃盗工具の進入を防止しにくい。段付きガラス板をサイドウインドウ用のガラス板に用いると、窃盗工具を挿入しにくいサイドウインドウの組付け構造が得られる。そのため、段付きガラス板は、昇降する自動車サイドウインドウ用ガラス板に好適に用いられる。そして、段付きガラス板における各応力値を上記の好ましい各応力値にすることで、自動車サイドウインドウに求められる、強度と破砕時の破片の大きさに見合う段付きガラス板が得られる。
【0026】
自動車サイドウインドウ用ガラス板は、曲げ成形されたガラス板であることが多い。一方で、サイドウインドウとサッシュとの面一化には、車外側の面に段部を設けることが、自動車へのガラス板の組付け構造上好ましい。そのため、取付け状態において、ガラス板における車外側となる凸部に段部を設けることが好ましい。さらにこの場合、強度上の観点からガラス板における車外側となる凸面にのみ段部を設けることが好ましい。
【0027】
昇降するサイドウインドウは、自動車のドア内部に設けられる昇降レギュレータと連結される。この場合、取付け状態におけるサイドウインドウ用ガラス板の下辺において、昇降レギュレータと連結される。この昇降レギュレータとの連結部は、昇降駆動力が伝達されることから過酷な機械的負荷がかかる部分である。そのため、本発明の段付きガラス板は、ガラス板の全周のうちの下辺を除く部分に段部を形成することが好ましい。さらに、ガラス板の側辺は、サッシュの側辺に係合してサイドウインドウの昇降をガイドする。
【0028】
このガイド動作の精度向上の観点とガイド時における機械的負荷の観点とから、本発明の段付きガラス板は、ガラス板の全周のうち、の下辺と側辺とを除く部分(上辺のみ)に段部を形成することが好ましい。一方で、自動車サッシュのサイドウインドウかみこみ溝幅は、サッシュの上辺と側辺とを同じ幅にすることが、サッシュの形成容易性の点から優位である。サッシュの形成優位性の観点と、側辺にもサッシュとサイドウインドウとの面一化を実現できる観点とから、本発明の段付きガラス板の全周のうちの上辺及び側辺に段部を設けることが好ましい。
【0029】
本明細書における、自動車への取付け状態における上辺、側辺、下辺の該当部位は、図1を用いて説明できる。自動車への取付け状態における下辺は、図1におけるガラス板の下辺である。自動車への取付け状態における側辺は、図1におけるガラス板の左右の辺である。自動車への取付け状態における上辺は、図1におけるガラス板の左上方の傾斜辺を含む上辺である。図1における段付きガラス板は、ガラス板の全周に段部が設けられた例を示すものである。そして、下辺にのみ段部が設けられていない例は、図1におけるガラス板の上辺及び左右辺の断面形状が図2に示す形状であり、下辺ではガラス板の断面厚みが均一である例に相当する。上辺にのみ段部が設けられる例は、図1におけるガラス板の上辺の断面形状が図2に示す形状であり、側辺及び下辺ではガラス板の断面厚みが均一である例に相当する。
【0030】
なお、図7に上辺に段部が設けられ、下辺に段部が設けられていない、車外側に凸部を有する段付きガラス板を示す。図7は、自動車へり取付け状態におけるガラス板の鉛直断面図に相当する。側辺の状態についての図示は省略するが、側辺に段部を設ける場合は、側辺の断面形状は図7の上辺の断面形状に概略一致し、側辺に段部を設けない場合は、側辺の断面形状は図7の下辺の断面形状に概略一致する。
【0031】
本発明の段付きガラス板は、1枚のガラス板に厚みの異なる部分を設けたガラス板である。すなわち、本発明の段付きガラス板は、1枚のガラス板の周縁領域Aの板厚が中央領域Cの板厚よりも小さいガラス板である。そのため、2枚のガラス板を中間膜を介して接合した合せガラスのように、2枚のガラス板の接合精度を考慮する必要がない。
【0032】
次に、応力値の測定方法について説明する。
(A)平均表面圧縮応力の測定
表面圧縮応力の測定は、JIS R3222に準じて行う。JIS R3222は、倍強度ガラスに関するものである。ここでの測定は、供試体が倍強度ガラスなので、本発明の段付き強化ガラス板を供試体として測定することになる。測定点についての規定もあるが、本発明の段付き強化ガラス板の圧縮応力を測定する際には、この規定にとらわれず適宜の複数点を測定する。その後、得られた複数点の表面圧縮応力の平均値を求める。測定点としては、各領域において、表面圧縮応力値が最大値に近いと予想される点と最小値に近いと予想される点を、それぞれ同数選ぶことが好ましい。なお、ガラス板を冷却するための冷却風の噴流の吹き付け方向線とガラス板面との交点で、表面圧縮応力値が最大値になると考えるのが妥当である。この交点について隣り合う2点の中間点で、表面圧縮応力値が最小値になると考えるのが妥当である。
【0033】
(B)主応力方向、主応力差の測定
図6に主応力方向、主応力差の測定装置を示す。基本的には、強化ガラス板Gに円偏光光線を入射させ、段付き強化ガラス板Gの歪の影響で楕円偏光となった透過光の偏光状態を測定することによって、主応力方向、主応力差を求める。光源4から発せられた光線は、偏光子5を通過させて直線偏光になる。その後、1/4波長板6を透過させて円偏光とする。段付き強化ガラス板Gの背後には検光子7が配されている。段付き強化ガラス板Gは、入射する光線に対し垂直に配しておく。段付き強化ガラス板Gに入射した円偏光光線は、段付き強化ガラス板Gを通過し、段付き強化ガラス板Gの応力歪に応じて楕円偏光となる。こうして得られた楕円偏光光線を、回転する検光子7を通した後に光検出素子8の出力を測定することにより、楕円偏光の状態を知ることができる。
【0034】
主応力方向及び主応力差は、得られた楕円偏光の状態から次のように求められる。主応力方向θ1、θ2、主応力差に対応する位相差をδとする。光検出素子の出力I(φ)は次式(1)で与えられる。但し、式中、kは比例定数、φは検光子の回転角度である。
光検出素子の出力の最小値Iminと最大値Imaxとの比は楕円率Rである。Rとδとは次式(2)で結ばれる。但し、δ>0とする。
したがって、位相差δ、主応力方向θ1、θ2は次の式(2)′〜(4)で表される。
すなわち、楕円偏光の楕円率Rと検光子の回転角度φ(最大、最小の出力値が得られるときの楕円の長軸角度)を求めることにより、主応力方向、主応力差を求めることができる。
なお、主応力差Δρとこれに対応するδとの関係は式(5)で表される。ここで、cは光弾性定数(=2.63nm/cm/kg/cm2)、tは測定部分のガラス板厚、λは光源4から発せられる光の波長であり、本応力測定装置ではλ=623.8nmである。
【0035】
【数1】
【0036】
なお、この応力測定装置において、光源4にはHeーNeレーザを使用した。強化ガラス板の強化むら等の微小変化を検出するために、微小点に光線を絞れるからである。偏光子5には偏光性のよいグラムトムソンプリズムを使用した。リファレンス光の取出しのために偏光子5と1/4波長板6との間にガラス板9を配置した。このリファレンス光を検出するにあたり、外光の影響を少なくするためにガラス板9とリファレンス光検出器との間に干渉フィルタ10を配した。1/4波長板6には、水晶を研磨し、632.8nmの波長に対しπ/2の位相差を生じさせるものを用いた。回転検光子7には、偏光子5と同じ素子を用いた。光検出器8には、リファレンス光用と同様に外光の影響を小さくするために前面に干渉フィルタを配した太陽電池を使用した。こうして主応力差および主応力方向を多数点測定することによって、本発明における基準点a、bを定めることができる。なお、基準点a、bを定めることによって、Lを定めることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が実施例に限定されないことは勿論である。本実施例では図1〜図2に示すような段付きガラス板に対して実施した。図示のとおり、この段付き強化ガラス板は僅かに円筒状に湾曲した形状を有し、上下方向あるいは斜め上下方向に摺動されるように装着した自動車用側方ドアの窓ガラスとして用いられる。
【0038】
冷却装置としてはEP884286Aに記載された冷却装置を改良した冷却装置を使用した。すなわち該冷却装置のノズルを小ピッチに配列し、ノズルの径を小さくした冷却装置である。ノズルの小ピッチ配列によって、必要な摺動距離を小さくすることができ、かつ冷却能の大きい部分と小さい部分との境界で冷却能に明瞭な差異を与えることができる。また、ノズルの径を小さくすることによりガラスーノズル間の距離に対する冷却能の感度を高めることができ、小さい距離の差で板厚の薄い部分と板厚の厚い部分とで大きな冷却能を生むことが可能になり、本発明に従った応力分布が得られる。
【0039】
所定の形状に切断されたガラス板は、周縁部が面取り処理される。このとき、周縁部の所定箇所が段状になるように、段付与用の面取りホイールを用いて面取り処理を行う。その後、加熱曲げ工程を経た段付き面取り処理されたガラス板を上記改良型冷却装置を用いて強化した。この段付きガラス板は、外形寸法が1100×500mm、中央領域Cの板厚が6mm、周縁領域Aの板厚が3mm、周縁領域Aの幅が10mmのガラス板である。この段付きガラス板を上記装置により成形強化処理したガラス板に対し、各領域の平均表面圧縮応力を、(A)平均表面圧縮応力の測定により測定した。中央領域Cでは1100kg/cm2、周縁領域Aでは1200kg/cm2、周縁領域B(板厚の厚い部分と板厚の薄い部分との境界からガラス板の内周に向けて20mmの幅の領域)では1300kg/cm2であった。
【0040】
一方、上記の得られたガラス板について、(B)主応力方向、主応力差の測定に基づき、近接周辺に比べて大きな主応力差を有する特徴点を特定した。これにより中間領域Bにある第1特徴点に最も近い、近接周辺に比べて大きな主応力差を有する第2特徴点は周縁領域Aにあった。第1特徴点と第2特徴点との間の距離は10mmであった。強度を確認するための試験として、当該領域を1.5ポンドのハンマーを40cmの高さから落下させるハンマー試験、並びに、227gの鋼球を落下させて破壊する高さが2m以上である落球試験を実施した。この試験はJISーR3212に規定された自動車用窓ガラス試験に相当する。上記によって得られた段付き強化ガラス板は、JISーR3212に規定された試験に合格した。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、段付きガラス板について、中央領域Cと板厚の小さい周縁領域Aとの間にある中間領域Bに、大きな表面圧縮応力を付加し、自動車用安全ガラス板等として十分な強度に保つことができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の段付きガラス板の一例を説明する概略正面図。
【図2】本発明の段付きガラス板の一例を説明する概略断面図。
【図3】段付きガラス板の配置状態の一例を示す図。
【図4】図1の要部(P)拡大概念図。
【図5】本発明の段付きガラス板の別の例を示す概略断面図。
【図6】主応力方向、主応力差の測定方法を説明する概念図。
【図7】本発明の段付きガラス板の一例を説明する概略断面図。
【符号の説明】
1 ガラス板
2 サッシュ
3 サッシュ2の凹部
A 周縁領域
B 中央領域Cの周辺部で、中央領域Cと周縁領域Aとの間の中間領域
C 中央領域
G 段付きガラス板
Claims (5)
- 周縁領域Aと、中央領域Cと、周縁領域Aと中央領域Cとの間の板厚方向の応力の積分平均値が引張を示す中間領域Bとを有する自動車窓用ガラス板であって、周縁領域Aと中間領域Bとの境界に段部が設けられ、周縁領域Aの板厚が中央領域Cの板厚に比べて薄くなるように形成されてなる段付きガラス板において、
前記中央領域Cにおける平均表面圧縮応力の値は850〜1200kg/cm 2 であり、
前記ガラス板は強化処理されたものであり、中間領域Bにおける平均表面圧縮応力が、中央領域Cにおける平均表面圧縮応力に比べて100〜500kg/cm2大きいことを特徴とする段付きガラス板。 - 周縁領域Aにおける平均表面圧縮応力の値が、中央領域Cにおける平均表面圧縮応力に比べて100〜300kg/cm2大きい請求項1に記載の段付きガラス板。
- 中間領域Bが、周縁領域Aと中間領域Bとの境界からガラス板における内周に向けて5〜30mmの幅を有する請求項1又は2に記載の段付きガラス板。
- 前記ガラス板は曲げ成形され、当該曲げ成形されたガラス板の凸面が自動車外側面である請求項1〜3のいずれかに記載の段付きガラス板。
- 前記ガラス板は、前記曲げ成形されたガラス板が上下に摺動する自動車用窓に用いられるガラス板である請求項1〜3のいずれかに記載の段付きガラス板。
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