しかしながら、以上のように像担持体の表面に潤滑物質を塗布する画像形成装置にあっては、像担持体上に付着するトナー粒子に潤滑物質が付いてトナー粒子が潤滑物質で汚染することとなる。特許文献1に記載されるように、転写装置を通じて潤滑物質を塗布する場合には、トナー粒子には像担持体側と転写装置側の両側から潤滑物質が塗布することとなり、トナー粒子の表面の多くの部分が潤滑物質で汚染することとなる。
また、クリーナレス方式の画像形成装置にあっては、潤滑物質で汚染された転写残トナーが現像装置に回収されると、現像装置内の他のトナー粒子にも潤滑物質が付着して現像装置内のトナー粒子が広く汚染することとなる。
ところで、現像装置内のトナー粒子は、一般的に摩擦帯電によって帯電して像担持体に付着する。すなわち、トナー粒子とキャリア粒子とからなる二成分現像剤を用いる現像装置では、トナー粒子とキャリア粒子との摩擦によって帯電し、トナー粒子のみからなる一成分現像剤を用いる現像装置では、トナー粒子と現像剤担持体や層厚規制部材との摩擦によって帯電する。
ところが、発明者らの検討によると、潤滑物質によって汚染されたトナー粒子は、摩擦によって帯電しにくくなる。摩擦帯電は、トナー粒子表面に存在する帯電サイトが、キャリア粒子や現像剤担持体上に存在する帯電サイトに対して非常に近接することによって両者の間で電荷の授受が行われることによる。汚染トナー粒子が摩擦帯電しにくくなる理由は、このとき両者の界面に潤滑物質が存在すると電荷の授受が妨げられることになるからであり、また両者の帯電サイトを近接するためには、現像剤の撹拌により強い圧力でキャリア粒子とトナー粒子とを接触させたり、層厚規制部材によって強い圧力でトナー粒子を現像剤担持体へ接触させたりする必要があるが、潤滑物質が存在する状態においては強い圧力をかけると滑りが生じ、両者が充分に近接することができないからではないかと考えられる。
したがって、潤滑物質が表面に付着したトナー粒子が現像装置に回収されると、かかるトナー粒子は適正に帯電しにくく、弱帯電トナーとなってしまう。弱帯電トナーは、現像電界に反応しにくいために現像への寄与が小さく、現像装置に回収しても再利用率が低くなってしまう。さらに、トナー粒子中の弱帯電トナーの割合が増えると、現像能力の低下を引き起こし、トナー飛散を発生させることもある。またさらに、上述したように、潤滑物質が転写残トナーから他のトナーに移動することで汚染が広がり、転写残トナー以外のトナー粒子においても弱帯電トナーが増加する。
特許文献2に記載されるように、潤滑物質を現像装置から像担持体上に供給する方式のものでは、もともと現像装置内に潤滑物質が含まれていることを計算に入れた上でトナー粒子が適正に帯電するように各種条件が設定されているはずであるが、このような方式においても新たな潤滑物質が像担持体上から現像装置内に混入すると、トナー粒子の摩擦帯電能力は低下し、その結果、弱帯電トナーが発生することとなる。
また、特許文献4に記載されるように、現像ローラ上のトナーの帯電量を高く安定させるために、現像剤担持体と当接するトナー帯電ローラに電圧を印加して放電によってトナーの帯電量を上昇させる技術も知られている。しかし、この特許文献4では、クリーナレス方式において潤滑物質を像担持体に供給した際の課題についてはまったく記載されていない。
そこで、この発明の目的は、潤滑物質を付着したトナーが現像装置内に回収されたときに生ずるトナー帯電量の低下を抑制し、これによって現像能力の低下を防止し、トナー飛散の発生を低減することにある。
請求項1に記載の発明は、現像装置に備える現像剤担持体により帯電トナー粒子を付着して像担持体の静電潜像を現像し、その現像後のトナー像を直接または間接的に転写して転写材に画像を形成する画像形成装置にあって、
潤滑物質供給手段により前記像担持体の表面に潤滑物質を供給する一方、前記像担持体上の転写残トナーを前記現像装置に回収する画像形成装置において、
交流電圧を印加することによって発生する放電を用いて前記現像装置内のトナー粒子を帯電するローラ形状のトナー帯電部材を設け、
前記現像剤担持体の回転方向における前記トナー帯電部材の前後に、前記現像剤担持体の表面に対向してその現像剤担持体の長手方向に絶縁性のトナー飛散防止部材を設けたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記現像装置に、トナー粒子を担持して現像位置へと搬送し、前記像担持体に付着する現像剤担持体と、その現像剤担持体で担持するトナー粒子を規制位置で層厚規制する層厚規制部材とを備えるとともに、
前記現像剤担持体の回転方向において、前記現像位置の上流で、前記規制位置の下流に、前記トナー帯電部材を配置する、ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記現像剤担持体と、その現像剤担持体が担持するトナー粒子を挟んでその現像剤担持体に押し当てる部材のいずれか一方に電圧を印加したときに、他方に流れる電流を検出する電流検出手段を備えるとともに、
その電流検出手段の検出出力に応じて、前記トナー帯電部材に印加する電圧を制御する制御手段を備える、ことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1に記載の画像形成装置において、
前記像担持体上のトナー像またはそのトナー像を直接もしくは間接的に転写して形成した記録媒体上のトナー像のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段を備えるとともに、
そのトナー濃度検知手段の検出出力に応じて、前記トナー帯電部材に印加する電圧を制御する制御手段を備える、ことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1に記載の画像形成装置において、
交流電圧を印加することによって前記像担持体を帯電する帯電装置を備える、ことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、プロセスカートリッジにおいて、
像担持体と、現像剤担持体により帯電トナー粒子を付着して前記像担持体の静電潜像を現像するとともに、その現像後のトナー像を直接または間接的に転写材に転写して後になお前記像担持体上に残留する転写残トナーを回収する現像装置と、前記像担持体の表面に潤滑物質を供給する潤滑物質供給手段と、交流電圧を印加することによって発生する放電を用いて前記現像装置内のトナー粒子を帯電するローラ形状のトナー帯電部材と、前記現像剤担持体の回転方向における前記トナー帯電部材の前後に、前記現像剤担持体の表面に対向してその現像剤担持体の長手方向に絶縁性のトナー飛散防止部材とを備えることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、現像装置において、
トナー粒子を担持して現像位置へと搬送する現像剤担持体と、その現像剤担持体で担持するトナー粒子を規制位置で層厚規制する層厚規制部材と、交流電圧を印加することによって発生する放電を用いて前記現像剤担持体上のトナー粒子を帯電するローラ形状のトナー帯電部材と、前記現像剤担持体の回転方向における前記トナー帯電部材の前後に、前記現像剤担持体の表面に対向してその現像剤担持体の長手方向に絶縁性のトナー飛散防止部材とを備え、
前記現像剤担持体で帯電トナー粒子を付着して像担持体の静電潜像を現像するとともに、その現像後のトナー像を直接または間接的に転写材に転写して後になお前記像担持体上に残留する転写残トナーを回収する、ことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、画像形成装置における作像方法において、
画像形成時に、現像装置内で、現像剤担持体によりトナー粒子を担持して搬送し、その現像剤担持体で担持するトナー粒子を層厚規制部材で層厚規制するとともに、交流電圧を印加することによって発生する放電を用いて前記現像剤担持体上のトナー粒子をローラ形状のトナー帯電部材で帯電し、
前記現像剤担持体の回転方向における前記トナー帯電部材の前後に、前記現像剤担持体の表面に対向して、その現像剤担持体の長手方向に設ける絶縁性のトナー飛散防止部材で、トナー粒子を閉じ込めてトナー飛散を防止しながら、その帯電したトナー粒子を前記現像剤担持体で現像位置まで搬送して像担持体に付着することによりその像担持体上の静電潜像を現像し、
その現像後のトナー像を直接または間接的に転写材に転写し、その後なお前記像担持体上に残留する転写残トナーを前記現像装置に回収する一方、
非画像形成時に、潤滑物質供給手段により前記像担持体の表面に潤滑物質を供給する、ことを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、現像装置により帯電トナー粒子を付着して像担持体の静電潜像を現像し、その現像後のトナー像を直接または間接的に転写して転写材に画像を形成する画像形成装置にあって、潤滑物質供給手段により像担持体の表面に潤滑物質を供給する一方、像担持体上の転写残トナーを現像装置に回収するから、潤滑物質により汚染したトナー粒子が回収されることにより現像装置内のトナー汚染が広がり、摩擦によって適正に帯電しにくくなって弱帯電トナーが増加するおそれがある。しかし、電圧を印加することによって発生する放電を用いて現像装置内のトナー粒子を帯電するトナー帯電部材を設け、像担持体に付着するトナー粒子を強制的に帯電するので、弱帯電トナーの発生を抑制して現像能力の低下を防止し、トナー飛散の発生を低減することができる。
請求項2に記載の発明によれば、トナー粒子を担持して現像位置へと搬送し、像担持体に付着する現像剤担持体と、その現像剤担持体で担持するトナー粒子を規制位置で層厚規制する層厚規制部材とを現像装置に備え、現像剤担持体の回転方向において、現像位置の上流で、規制位置の下流に、トナー帯電部材を配置するので、そのトナー帯電部材で、像担持体に付着するトナー粒子を強制的に帯電し、弱帯電トナーの発生を抑制して現像能力の低下を防止し、トナー飛散の発生を低減することができる。
請求項1に記載の発明によれば、また、トナー帯電部材に交流電圧を印加するので、直流電圧を印加する場合よりも現像剤担持体をむらなく帯電し、トナー粒子を均一に帯電することができるとともに、交流電圧による双方向放電により、トナー表面に付着した潤滑物質を効率よく分解してトナー粒子の汚染を解消することができる。トナー帯電部材に交流電圧を印加すると、トナー粒子が飛散するおそれがあるが、トナー帯電部材まわりで現像剤担持体の表面に対向してトナー飛散防止部材を設け、そのトナー飛散防止部材でトナー粒子を閉じ込めてトナー飛散を防止することができる。
請求項3に記載の発明によれば、現像剤担持体と、その現像剤担持体が担持するトナー粒子を挟んでその現像剤担持体に押し当てる部材のいずれか一方に電圧を印加したときに、他方に流れる電流を検出する電流検出手段を備え、その電流検出手段の検出出力に応じて制御手段によりトナー帯電部材に印加する電圧を制御するので、時の経過とともに、トナー汚染の程度が増加したりトナー帯電部材に付着するトナーが多くなったりすることがあったとしても、それに基づく放電量の変化を、現像剤担持体または他の部材を流れる電流の変化から電流検出手段で検出する。そして、放電量の変化に合わせて制御手段によりトナー帯電部材に対する印加電圧を変化し、現像剤担持体または他の部材を流れる電流を元に戻すことによりトナー帯電量を一定とし、弱帯電トナーの発生を抑制して現像能力の低下を防止し、トナー飛散の発生を低減することができる。
請求項4に記載の発明によれば、像担持体上のトナー像またはそのトナー像を直接もしくは間接的に転写して形成した記録媒体上のトナー像のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段を備え、そのトナー濃度検知手段の検出出力に応じてトナー帯電部材に印加する電圧を制御する制御手段を備えるので、時の経過とともに、トナー汚染の程度が増加したりトナー帯電部材に付着するトナーが多くなったりすることがあったとしても、それに基づくトナー濃度の変化をトナー濃度検知手段で検知する。そして、トナー濃度の変化に合わせて制御手段によりトナー帯電部材に対する印加電圧を変化し、トナー濃度を元に戻すことによりトナー帯電量を一定とし、弱帯電トナーの発生を抑制して現像能力の低下を防止し、トナー飛散の発生を低減することができる。
請求項5に記載の発明によれば、交流電圧を印加することによって像担持体を帯電する帯電装置を備えるので、潤滑物質で汚染されている転写残トナーを摩擦帯電によって帯電することは難しいが、摩擦帯電によらず、帯電装置による放電によって帯電することで、逆帯電トナーや弱帯電トナーを多く含む転写残トナーを現像装置に確実に回収することができる。
請求項6に記載の発明によれば、現像装置に備える現像剤担持体により帯電トナー粒子を付着して像担持体の静電潜像を現像し、その現像後のトナー像を直接または間接的に転写して転写材に画像を形成するプロセスカートリッジにあって、潤滑物質供給手段により像担持体の表面に潤滑物質を供給する一方、像担持体上の転写残トナーを現像装置に回収するから、潤滑物質により汚染したトナー粒子が回収されることにより現像装置内のトナー汚染が広がり、摩擦によって適正に帯電しにくくなって弱帯電トナーが増加するおそれがある。しかし、交流電圧を印加することによって発生する放電を用いて現像装置内のトナー粒子を帯電するローラ形状のトナー帯電部材を設け、そのトナー帯電部材で、像担持体に付着するトナー粒子を強制的に帯電することとし、弱帯電トナーの発生を抑制して現像能力の低下を防止し、トナー飛散の発生を低減することができる。
請求項7に記載の発明によれば、潤滑物質供給手段により像担持体の表面に潤滑物質を供給する画像形成装置にあって、現像装置で、現像剤担持体で帯電トナー粒子を付着して像担持体の静電潜像を現像するとともに、その現像後のトナー像を直接または間接的に転写材に転写して後になお像担持体上に残留する転写残トナーを回収する。よって、潤滑物質により汚染したトナー粒子が回収されることにより現像装置内のトナー汚染が広がり、摩擦によって適正に帯電しにくくなって弱帯電トナーが増加するおそれがある。しかし、現像装置に、トナー粒子を担持して現像位置へと搬送する現像剤担持体と、その現像剤担持体で担持するトナー粒子を規制位置で層厚規制する層厚規制部材とともに、ローラ形状のトナー帯電部材を備え、そのトナー帯電部材で、交流電圧を印加することによって発生する放電を用いて、像担持体に付着する現像剤担持体上のトナー粒子を強制的に帯電することとし、弱帯電トナーの発生を抑制して現像能力の低下を防止し、トナー飛散の発生を低減することができる。
請求項8に記載の発明によれば、非画像形成時に、潤滑物質供給手段により像担持体の表面に潤滑物質を供給する画像形成装置にあって、画像形成時に、現像装置で、現像剤担持体で帯電トナー粒子を付着して像担持体の静電潜像を現像するとともに、その現像後のトナー像を直接または間接的に転写材に転写して後になお像担持体上に残留する転写残トナーを回収する。よって、潤滑物質により汚染したトナー粒子が回収されることにより現像装置内のトナー汚染が広がり、摩擦によって適正に帯電しにくくなって弱帯電トナーが増加するおそれがある。しかし、現像装置内で、現像剤担持体によりトナー粒子を担持して搬送し、その現像剤担持体で担持するトナー粒子を層厚規制部材で層厚規制するとともに、交流電圧を印加することによって発生する放電を用いて現像剤担持体上のトナー粒子をローラ形状のトナー帯電部材で帯電し、その帯電したトナー粒子を現像剤担持体で現像位置まで搬送して像担持体に付着することによりその像担持体上の静電潜像を現像することで、弱帯電トナーの発生を抑制して現像能力の低下を防止し、トナー飛散の発生を低減することができる。
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1は、画像形成装置の一例であるタンデム方式のカラープリンタで、その内部機構の全体概略構成を示す。
図中符号Aは、画像形成装置本体であるプリンタ本体を示す。プリンタ本体A内には、転写材搬送装置1を設ける。転写材搬送装置1は、4つのローラ11a〜11dに掛けまわして転写材搬送ベルト10を備える。転写材搬送ベルト10のまわりには、転写材搬送ベルト10を介してローラ11aに対向してベルトクリーニング装置2を備える。転写材搬送ベルト10は、2つのローラ11a・11d間に張り渡す部分を、下方から上方へと転写材Pを搬送する転写材搬送路Rに沿って垂直に設ける。
そして、その張り渡し部分に沿って下方から順に、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの4つのドラム状の像担持体12を一定間隔で設置する。各像担持体12のまわりには、それぞれ帯電装置13、現像装置14、転写材ベルト10を挟んで転写装置15、潤滑物質供給手段16を配置する。また、像担持体12から少し離れた位置には、各々書込み装置17を設ける。
また、プリンタ本体Aは、底部に、シート・OHPフィルム等の転写材Pを積載して収納する転写材収納装置20を備える。転写材収納装置20からは、上述した転写材搬送路Rが上方に向けてのびる。そして、その転写材搬送路Rのはじめに、転写材搬送ベルト10を介してローラ11dに対向して吸着ローラ21を配置し、終わりに、定着装置22を配置する。プリンタ本体A上には、スタック装置23を設ける。
そして、画像形成時は、タイミングを取って不図示の給送部材で転写材収納装置20から転写材Pを送り出し、吸着ローラ21に電圧を印加して転写材搬送ベルト10に吸着し、転写材搬送ベルト10を時計まわりに走行して転写材Pを転写材搬送路Rに沿って上方へと搬送する。
一方、像担持体12を反時計まわりに回転し、その表面を帯電装置13で一様に帯電し、書込み装置17で書込み光Lを照射して書込みを行い、像担持体10上に静電潜像を形成し、現像装置14でトナー粒子を付着して現像を行い、それぞれ各像担持体10上にイエロ、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像を形成する。
それらのトナー像を、転写材搬送路Rに沿って上方へと搬送する上述した転写材Pに転写装置15で順次転写し、転写材P上に合成トナー画像を形成して定着装置22に入れ、加熱ローラ24と加圧ローラ25とで挟んで熱と圧力とを加えることで合成トナー画像を定着し、記録媒体の一例である転写材P上に画像を形成してプリンタ本体Aから排出し、スタック装置23上にスタックする。ベルトクリーニング装置2は、非画像形成時や転写材間に、像担持体12から転写材搬送ベルト10に付着したトナー粒子を除去する。
ところで、図示例では、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの各作像装置ごとに、像担持体12と帯電装置13と現像装置14と潤滑物質供給手段16とを一体化してプロセスカートリッジ100を構成する。そして、メンテナンス時には、プリンタ本体Aの不図示の正面カバーを開き、図2に示すようにローラ11dの軸を中心として転写材搬送装置1を手前側に倒してプリンタ本体Aの正面側を開放し、各プロセスカートリッジ100をスライドしてプリンタ本体Aに対して一括して着脱自在とする。
イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの各作像装置は、同一構成であり、図3には、その1の作像装置の構成を拡大して示す。
像担持体12は、外径30mmの負帯電の有機感光体であり、図示省略した回転駆動機構により反時計まわりに回転する。表面速度は、100[mm/sec]である。図示例では、ドラム状であるが、ベルト状のものを用いることもできる。
帯電装置13は、芯金27と中抵抗層28とからなる、弾性を有する帯電ローラで構成する。中抵抗層28は、106〜109[Ω・cm]程度で、ウレタン樹脂、導電性粒子としてのカーボンブラック、硫化剤、発泡剤等を処方した発泡ウレタン層などでつくる。この他、ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムや、イソプレンゴム等に抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散したゴム材や、またこれらを発泡させたものを用いることもできる。なお、帯電装置13は、像担持体12に対して5〜200μm程度のギャップをもって非接触で設けるようにしてもよい。
そして、たとえば帯電装置13の芯金27に、−400Vの直流電圧に、周波数が1000Hzで、ピーク間電圧(=Vpp)が1400Vである正弦波形の交流電圧を重畳した電圧を印加することにより、像担持体12の表面を−400Vに帯電する。
現像装置14は、プロセスカートリッジ100のカートリッジケースの一部で構成する現像ケース30内に、現像剤担持体である現像ローラ31と、供給ローラ32と、層厚規制部材33と、2つの攪拌部材34と、この発明により新たに設けたトナー帯電部材35を備え、この例では、トナー粒子のみからなる一成分現像剤を収納してなる。
現像ローラ31は、芯金であるアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属製の円筒基体の表面に、外被層として樹脂中にカーボンブラックやグラファイトをほぼ均一に含有させた導電性樹脂層を設けた構成となっており、現像位置で像担持体12と接触して表面速度125[mm/sec]で時計まわりに回転する。
供給ローラ32は、発泡ポリウレタン等の弾性体からなり、時計まわりに回転して現像ローラ31に対してトナー粒子を供給する。層厚規制部材33は、ウレタンゴム、シリコーンゴム、リン青銅、ステンレス鋼等の弾性材料からなる弾性ブレードであり、全画像領域で先端を現像ローラ31に押し当てて、現像ローラ31で担持するトナー粒子の厚みを規制位置で層厚規制する機能を果たしつつ、摩擦によりトナー粒子を負帯電させる働きをする。また、攪拌部材34は、現像ケース30内のトナー粒子を攪拌しながら供給ローラ32に向けて移動する。
トナー帯電部材35は、帯電装置13と同様に、芯金37上に中抵抗層38を有する。そして、現像ローラ31の回転方向において、現像位置の上流で、規制位置の下流に配置する。中抵抗層38としては、発泡ウレタン層などを設けるが、発泡ウレタン層に限らず、現像ローラ31との間で放電を発生させる程度の抵抗値であれば、ゴムローラなどでもよい。そして、芯金37に、図示せぬ電源から電圧を印加して、現像ローラ31との間で放電を発生し、層厚規制部材33の押し当て位置通過後に、現像ローラ31で担持するトナー粒子を帯電する。現像ローラ31との位置関係を安定に保つためには、現像ローラ31への当接部でニップを形成する程度の硬度を有することが望ましいが、現像ローラ31に対してトナー帯電部材35を非接触に設けてもよい。
放電を発生させるために必要な印加電圧は、現像ローラ31に印加された電圧値、トナーの電気抵抗、トナー層厚、トナー帯電部材35の中抵抗層38の抵抗値およびその層厚をパラメータとして、理論的にはパッシェン則により求めることができる。ただし、紛体であるトナー粒子の層には空隙が含まれており、空隙含有率は常に一定ではないために、層としての抵抗値を求めることは困難である。また、トナー粒子の電気抵抗の値は、測定方法や測定条件の選択によって変動する。これらのことを考慮すると、パッシェン則に数値を代入してトナー帯電部材35に印加すべき電圧を決定するよりも、トナー帯電部材35に印加する電圧とトナー帯電量との関係を予め求めておき、これに基づいてトナー粒子が狙いの帯電量となるような印加電圧値を決定する方が現実的である。
トナー粒子としては、バインダー樹脂としてスチレン系またはアクリル系の重合性単量体を、重合開始剤とともに水中に分散させた状態でラジカル重合させたものや、あるいはポリエステル系樹脂を水中に分散させ重付加反応により高分子化させたものを用い、これに着色剤、帯電制御剤などを加えて造粒することにより得られた、重量平均粒径約5μmの非磁性のものを用いる。
そして、このような現像装置14では、攪拌部材34を回転して現像ケース30内のトナー粒子を攪拌しながら供給ローラ32に向けて移動し、時計まわりに回転する供給ローラ32で現像ローラ31に付着する。現像ローラ31に付着したトナー粒子は、層厚規制部材33で厚みを規制するとともに、摩擦により負帯電し、トナー帯電部材35との間に導く。
ところで、図示現像装置14では、トナー粒子が潤滑物質で汚染されていない初期状態において、現像ローラ31の芯金に−300[V]、トナー帯電部材35の芯金37に−1200[V]の直流電圧が印加されると、現像ローラ31上に担持されたトナー粒子の帯電量が狙いの値である−30[μC/g]となるように調整されている。そこで、画像形成初期においては、トナー帯電部材35の芯金37に−1200[V]の直流電圧が印加される。
ここで、トナー帯電部材35の芯金37に印加される電圧とトナー粒子の帯電量との関係について説明する。本例では、トナー帯電部材35の芯金37には直流電圧が印加されているため、トナー層の表面電位とトナー帯電部材35の表面との電位差が放電開始電圧を越えた時点で放電が開始される。放電が開始されると、トナー帯電部材35に電圧を印加することによって像担持体12が帯電させられるのと同様に現像ローラ31上のトナー粒子が帯電され、トナー帯電量の絶対値が増加する。放電開始後に、トナー層の表面電位とトナー帯電部材35の表面との電位差がさらに増加するようにトナー帯電部材35の芯金37に印加する電圧を変化させると、トナー粒子の帯電量は電位差の増加分とほぼ比例して増加していくが、上限値に近づくにつれて増加が穏やかになり収束する。また、本例の場合には、トナー帯電部材35に直流電圧を印加することが望ましい。交流電圧を印加すると、現像ローラ31上のトナー粒子が振動し、トナー薄層が乱れてしまうおそれがあるからである。
このようにして、現像ローラ31上に担持されたトナー層の表面に存在するトナー粒子は、放電によってほぼ均一に帯電される。その後、トナー帯電部材35との当接部を通過したトナー粒子層は、現像ローラ31の回転にしたがって像担持体12との対向部である現像位置に搬送される。
現像位置においては、現像ローラ31に対して−300Vの直流バイアスが印加されることで現像ローラ31と像担持体12との間に直流電界が形成され、負帯電させられたトナー粒子はこの直流電界によって像担持体12上の画像部にのみ選択的に付着してトナー像となる。
次に、プロセスカートリッジ100に備える潤滑物質供給手段16は、固形潤滑物質40と、この固形潤滑物質40を像担持体12の表面に供給するための塗布ブラシ41と、回転することによりその塗布ブラシ41を像担持体12に対して接離可能とするカム部材42とで構成する。固形潤滑物質40は、ステアリン酸亜鉛のごとき金属石鹸、あるいはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを主成分としており、塗布ブラシ41に対して図示せぬ付勢手段により付勢されて当接されている。
塗布ブラシ41の長手方向端部にはギアが設けられ、そのギアが像担持体12端部に設けられたギアと噛み合うことにより塗布ブラシ41が像担持体12に対して連れまわりし、これにより固形潤滑物質40が塗布ブラシ41を介して像担持体12上に塗布されるようになっている。このように本例の画像形成装置では、像担持体12上に潤滑物質を塗布することで、トナーの転写率を向上するとともに、転写残トナーの現像装置14への回収率を高めることができる。
しかし、クリーナレス方式の場合、画像形成時に塗布ブラシ41が像担持体12に常時当接していると、塗布ブラシ41に転写残トナーが付着して固形潤滑物質40の供給が阻害される。また、塗布ブラシ41に付着したトナー粒子が再び像担持体12上に移動すると、多量の潤滑物質で汚染されたトナー粒子が帯電装置13、現像ローラ31、および現像装置14内のトナー粒子と接触して2次汚染を引き起こすこととなる。
そこで、本例の画像形成装置においては、カム部材42を用いて、画像形成時においては塗布ブラシ41が像担持体12に接触せず、非画像形成時には所定のタイミングで塗布ブラシ41が像担持体12に接触するように制御する。
ここで、塗布ブラシ41が像担持体12に接触する所定のタイミングは、画像形成前後であって像担持体12が回転している時間や、連続通紙中に潤滑物質を塗布する場合においては像担持体12が1の転写材Pにトナー像を転写した後であって次の転写材Pに接触する前の時間などを適宜選ぶことができる。
本例の塗布方式を用いると、転写領域から潤滑物質を供給する場合と異なり、像担持体12上のトナー粒子の表面を汚染することなく、像担持体12の表面に潤滑物質を供給することができる。また、転写残トナーが存在しない非画像形成時に潤滑物質を像担持体12上に供給することとし、その後像担持体12上に供給されるトナー粒子は、潤滑物質の表面に乗ることとなり、このためトナー粒子と像担持体12との付着力は確実に低減され、トナー転写率を向上し、現像装置14へのトナー回収率を高めることができる。
さて、プロセスカートリッジ100の外に備える書込み装置17は、それぞれプロセスカートリッジ100に対して、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの画像情報に応じた書込み光Lを照射する。これにより、画像部と非画像部との間に電位差を設け、電位コントラストによる静電潜像を形成する。ポリゴンを用いた光走査装置やLEDアレイ等、種々のものを使用することができる。
また、プロセスカートリッジ100の外に備える転写装置15は、少なくとも芯金44と、その芯金44を被覆する導電性弾性層45とからなる弾性を有する転写ローラで構成する。導電性弾性層45は、ポリウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)等の弾性材料に、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ等の導電性付与剤を配合分散し、電気抵抗値(体積抵抗率)を106〜1010[Ω・cm]の中抵抗に調整してなる。そして、転写装置15に電圧を印加して、その転写装置15で像担持体12上のトナー像を転写材Pに転写する。
さて、図示カラープリンタでは、転写材Pに転写されずに像担持体12上に残留したトナー粒子は、像担持体12上に担持されたままそのまま帯電装置13との対向部に至り、そこで帯電装置13の芯金27に印加された電圧によって生じる放電によって負帯電される。ここで、像担持体12上に残留したトナー粒子には、逆帯電トナーや弱帯電トナーが多く含まれ、このようなトナー粒子を現像装置14に回収するためにはトナー粒子の帯電量を正規の帯電量に近づける必要がある。しかし、本例の転写残トナーには、潤滑物質が付着していることから、摩擦帯電によってトナー粒子を帯電させることは困難である。
そこで、この例では、帯電装置13に交流電圧を印加することによって像担持体12を帯電するとともに、放電によって潤滑物質が付着した状態で像担持体12上に残留したトナー粒子を帯電し、現像装置14に回収可能とする。負帯電させられたトナー粒子は、像担持体12上に担持されたまま現像位置まで搬送され、静電潜像の画像部(トナー粒子が付着するべき画像部分)に存在するトナー粒子は現像電界によって像担持体12上に残留され、非画像部に存在するトナー粒子は現像電界によって現像ローラ31上に移動されて現像装置14の内部に回収される。
以上のとおり、図示カラープリンタでは、現像装置14に回収されたトナー粒子の中には、潤滑物質によって汚染されているものがある。そのようなトナー粒子は、摩擦帯電によっては帯電せず、弱帯電トナーとなりやすい。また、トナー粒子同士の接触によって潤滑物質がもともと現像装置14内にあったトナー粒子にも付着し、摩擦帯電しにくいトナー粒子が増加する。さらに、潤滑物質で汚染されたトナー粒子は、摩擦係数が低いために層厚規制部材33と現像ローラ31間をすり抜け、像担持体12との対向部まで到達しやすく、また潤滑物質で汚染された多量のトナー粒子が層厚規制部材33との間をすり抜けるとトナー層厚に変化をもたらすこともある。
しかし、本例の画像形成装置では、トナー帯電部材35と現像ローラ31との間に発生する放電によって潤滑物質で汚染されたトナー粒子が帯電される。放電に基づく帯電では、放電によって発生したイオンなどが表面に付着することによってトナー粒子を帯電させるので、摩擦帯電による帯電をしにくいトナー粒子であっても帯電させることができる。また、トナー層の表面に存在するトナー粒子のみを帯電させるので、トナー層厚の変動が濃度ムラとして現れにくい。したがって、潤滑物質で汚染されたトナー粒子が現像装置14に混入した場合にも、濃度低下やトナー飛散を起こしにくくなり、経時に渡り良好な画像を形成することができる。
ところで、潤滑物質で汚染されたトナー粒子が現像装置14内で増加すると、表面に付着した潤滑物質によってトナー粒子の抵抗値が変化する。また、前述したように現像ローラ31上のトナー層厚も変動しやすくなり、これによってもトナー層の電気抵抗が変動する。トナー層の電気抵抗が変動すると、トナー粒子を所定の帯電量に帯電させるためにはトナー帯電部材35の芯金37に印加する電圧の値を変化させなければならない。さもないと、トナー粒子の帯電量が経時的に変動し、濃度変化やトナー飛散などを発生することとなる。
そこで、本例の画像形成装置では、トナー層の電気抵抗値の変化を現像ローラ31の芯金に流れる電流の変化によって検出する。具体的には、非画像形成時に現像ローラ31への電圧印加を行なわない状態でトナー帯電部材35の芯金37に振幅900[V]の交流電圧を印加し、このとき現像ローラ31の芯金を流れる電流値を測定する。図4に、この機構を示す。トナー帯電部材35の芯金37に交流電圧を印加すると、電圧が変化するたびにコンデンサ46に電荷が誘起され、電流Iは交流電圧の立ち上がり時に正の値を取り、立ち下がり時に負の値をとって発生する。電流Iのうち正の値を有する部分だけが整流回路(電流検出手段)47を通過してIsとなり、電流検出回路48がこのIsの値を検出して現像ローラ31の芯金49を流れる電流値を測定し、コントローラ(制御手段)50に送る。そして、電流検出回路48の検出出力に応じて、トナー帯電部材35に印加する電圧を制御する。
ここで、Isの値と、トナー帯電部材35の芯金37に印加すべき電圧の値との関係は、トナー帯電部材35の芯金37に印加すべき電圧の値との関係は、製品出荷前に予め実験によって求められており、両者の対応関係はテーブルとして画像形成装置内のメモリに記憶されている。あるIsの値が検出された場合に、トナー帯電量を−30[μC/g]とすべく、コントローラ50はこのメモリに記憶されたテーブルを用いて次回の画像形成時にトナー帯電部材35の芯金37に印加すべき電圧の値を求め、次回の画像形成時にはこの電圧値をトナー帯電部材35の芯金37に印加する。このようにして、トナー帯電部材35の芯金37に印加する電圧値を決定することにより、潤滑物質によるトナー粒子の汚染が経時的に増加した場合にも、現像ローラ31に担持されたトナー粒子の帯電量の変動を抑制することができる。
なお、本例では、トナー帯電部材35の芯金37に電圧を印加し、このときに現像ローラ31に流れる電流値を検出したが、トナー層の電気抵抗値の変化を検出できるのであれば電流検出に用いる部材に特に制限はなく、現像ローラ31の芯金49に電圧を印加してトナー帯電部材35の芯金37に流れる電流値を検出してもよいし、現像ローラ31の芯金49に電圧を印加して層厚規制部材33に流れる電流値を検出するようにしてもよい。すなわち、現像剤担持体と、その現像剤担持体で担持するトナー粒子を挟んでその現像剤担持体に押し当てる部材のいずれか一方に電圧を印加したときに、他方に流れる電流を電流検出手段で検出するようにする。
さて、上述した例では、トナー帯電部材35を、現像剤担持体である現像ローラ31の回転方向において、現像位置の上流で、規制位置の下流に配置したが、トナー帯電部材35を別途設けることなく、現像ローラ31に弾性的に押し当ててそれで担持するトナー粒子の層厚を規制する層厚規制部材33で兼ね、例えば図5に示すように層厚規制部材33をトナー帯電部材としても利用するようにしてもよい。この図5において、図3と対応する部分には、同一の符号を付し、重複説明を省略する。
すなわち、層厚規制部材33に電圧を印加することによって層厚規制部材33と現像ローラ31との間、特に層厚規制部材33と現像ローラ31との当接部にトナー層が突入する入り口側(現像ローラ31の回転方向で上流側)において放電を発生させ、この放電によってトナー粒子を帯電させる。
図6は、現像ローラ31と層厚規制部材33との当接部を拡大した図である。層厚規制部材33は、絶縁部52と中抵抗部53とを有し、図示せぬ電源から中抵抗部53に対して電圧が印加することにより、現像ローラ31との近接部のうち現像ローラ31の回転方向上流側の部分aで放電を発生させ、この放電によってトナー粒子を帯電させる。中抵抗部53は、金属製の板状部材の周囲を中抵抗(106〜109[Ω・cm])な部材で被覆して構成し、金属製の板状部材に対して電圧を印加するようにする。
なお、図5および図6に示す例では、層厚規制部材33に絶縁部52と中抵抗部53を設ける場合について説明したが、絶縁部52に相当する部分をプロセスカートリッジ100のカートリッジケースと一体化した凸部として、その先端に中抵抗部53に相当する部分を設けるようにしても、本発明の効果を達成することができる。
ところで、この中抵抗部53には、直流電圧に、交流電圧を重畳させた電圧を印加することが望ましい。図1ないし図4で示す構成において交流電圧を印加すると、トナー粒子が飛び散るなどして薄層が乱れることになるが、本例では、薄層形成前での電圧印加であり、かつ層厚規制部材33と現像ローラ31とによって挟まれた領域での放電であるので、トナー粒子の飛び散りが抑制される。交流電圧のピーク間電圧Vppは放電開始電圧の2倍以上に設定されており、これにより層厚規制部材33と現像ローラ31との間で双方向放電が発生する。像担持体12を帯電させる際に交流電圧による双方向放電を用いると、帯電ムラなく像担持体12が帯電されることが知られており、トナー粒子を帯電させる際にも交流電圧による双方向放電を用いると、トナー層の表面電位が安定するので好ましい。このような帯電量安定効果は、潤滑物質でトナー粒子が汚染されていない場合にも得られる。
しかし、交流電圧によってトナー粒子を帯電させることは、トナー粒子表面に潤滑物質が付着している場合に特に好ましい効果をもたらす。この点について以下、説明する。
本発明者らは、以前、像担持体に対して接触または近接して設けられたトナー帯電部材35に対して交流電圧を印加したところ、像担持体の感光層の膜厚が減少することを発見した。このときの実験について説明すると、帯電ローラ(帯電装置)と感光体(像担持体)のみから構成される実験系において、帯電ローラに印加する交流電圧の周波数を固定させたままピーク間電圧値Vppを2.2[kV]、2.6[kV]、3.0[kV]と変化させて113[mm/s]の表面速度を有する感光体を帯電させたところ、図7に示すようにVppの増加に比例して感光体の膜厚減少量が増加することが確認できた。
また、交流電圧のピーク間電圧値Vppを固定させたまま周波数を変化させた実験では、主端数の増加に比例して感光体の膜厚減少量が増加することが確認できた。次に、感光体表面に潤滑物質であるステアリン酸亜鉛を塗布しながら同様な実験を行なったところ、感光体の膜厚は減少しなかった。このとき、感光体の表面を調べたところ、ステアリン酸亜鉛のラメラ結晶構造は破壊され、ステアリン酸亜鉛の残骸と思われる低分子がわずかに検出された。
この実験結果から、交流電圧によって生じる双方向放電は、高分子の分子鎖を切断する効果があり、感光体に対して直接に放電を行なった場合には感光体表面の感光層を構成する分子が、感光体表面にステアリン酸亜鉛を存在させた状態で放電を行なった場合にはステアリン酸亜鉛を構成する分子が切断されることが判明した。このメカニズムについては詳細は定かではないが、電界によるイオン分子の衝突や、発生した活性酸素等に電子が奪われることによる分子鎖の切断などによるものと予想される。
このように放電には分子鎖を切断する効果があるため、これを利用してトナー粒子表面に付着した潤滑物質の分子構造を破壊し潤滑作用を失わせることも可能となる。例えば、ステアリン酸亜鉛のごとき金属石鹸の潤滑作用は、所定の構造をもつ層が積層し、層同士の間ですべりが生じることによって潤滑作用を発揮する、いわゆるラメラ構造による潤滑作用であることが知られているが、このラメラ構造を破壊してしまえば潤滑作用はなくなる。また、放電によって破壊された潤滑物質の残骸である低分子は、その多くがガス化してトナー粒子表面から飛散してしまうと予想される。これによっても、トナーは、再び摩擦帯電しやすい状態に戻る。さらに、潤滑物質の付着によって摩擦帯電以外の特性、例えば流動性などが変化していた場合にも、交流電圧による潤滑物質の除去によりトナー粒子の特性を汚染前の状態に回復させることができる。
以上のように、層厚規制部材33と現像ローラ31との間に交流電圧を印加することによってトナー粒子表面に付着した潤滑物質を除去し、トナー粒子の特性を汚染前の状態に戻すことができる。
さて、図5に示す例では、さらに、転写材搬送ベルト10上に所定のタイミングで形成したトナーパッチの濃度を検出するトナー濃度検知手段55を備えている。かかるトナー濃度検知手段55としては、公知のものが使用でき、例えばトナーパッチに光を照射し、この反射光を受光素子で受光し、受光された光量をトナー濃度に変換する方式などが使用できる。
トナー濃度検知手段55の検知結果は、制御手段であるコントローラ56に送られ、コントローラ56においてトナー濃度が想定された値よりも低下しているか否かが判定される。この判定は、単純に測定されたトナー濃度値Nが所定のしきい値Thよりも下回っていないか否か、すなわちV<Thが成立するか否かによって判断される。
トナー濃度が想定された値よりも低下していると判定された場合、コントローラ56は各種のプロセスコントロールを行うが、その一環として、層厚規制部材33に印加する交流電圧の値を変化させる。具体的には、交流電圧のピーク間電圧値や周波数を増加させ、トナー粒子表面の潤滑物質をより多く除去させる。つまり、トナー濃度検知手段55の検出出力に応じて、制御手段であるコントローラ56でトナー帯電部材35に印加する電圧を制御する。この制御により、トナー濃度低下の原因が潤滑物質によるトナー粒子の汚染である場合には、トナー濃度を回復させることが可能となる。
なお、多量の放電は、現像ローラ31表面の分子鎖も切断しうることに鑑み、トナー濃度が充分である場合には、逆に交流電圧のピーク間電圧値や周波数を減少させる制御を行う。これにより、必要以上の放電による各種部材の劣化を低減することができる。
また、本例においても、図1ないし図4に示す例と同様、潤滑物質で汚染されたトナー粒子の増加によってトナー粒子の抵抗値が変化することを抑制するためにトナー層の電気抵抗値の変化を現像ローラ31の芯金に流れる電流の変化によって検出する方式が採用できる。本例の場合には、もともと層厚規制部材33に交流電圧を印加する構成となっているために、専用の交流電源を設ける必要はない。また、トナー粒子の帯電量は、層厚規制部材33に印加される電圧の直流成分によって決定されるため、電圧値へのフィードバックの際には直流成分の値のみを変化させればよい。
ところで、上述したように、トナー帯電部材35に交流電圧を印加すると、直流電圧を印加する場合よりも現像ローラ31をむらなく帯電し、トナー粒子を均一に帯電することができるとともに、交流電圧による双方向放電により、トナー表面に付着した潤滑物質を効率よく分解してトナー粒子の汚染を解消することができる。しかし、トナー粒子が飛散するおそれがある。そこで、例えば図8に示すように、トナー帯電部材35まわりで現像ローラ31の表面に、長手方向における全画像領域で対向して絶縁性のトナー飛散防止部材58を設け、そのトナー飛散防止部材58と現像ローラ31とで挟まれた空間において双方向放電を起こし、トナー飛散防止部材58でトナー粒子を閉じ込めてトナー飛散を防止するようにするとよい。
さて、以上の例では、像担持体12上のトナー像を直接、記録媒体である転写材Pに転写する画像形成装置、それに備えるプロセスカートリッジや現像装置、およびその作像方法に適用した場合について説明した。しかし、ベルト状やドラム状の中間転写体を介して間接的に転写材に転写する画像形成装置、それに備えるプロセスカートリッジや現像装置、またその作像方法にも、同様に適用することができる。
なお、上述した例では、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックの各作像装置ごとに、像担持体12と帯電装置13と現像装置14と潤滑物質供給手段16とを一体化してプロセスカートリッジ100を構成し、例えばその一部に摩耗や破損などを生じたとき、プロセスカートリッジ100ごと交換することで早期に原状回復し、サービス時間を短縮するなど、メンテナンス性を向上することができ、また像担持体12のクリーニング性を良好にして高寿命化に寄与することができるようにした。
しかし、像担持体12とともに、常に帯電装置13と現像装置14と潤滑物質供給手段16のすべてを一体化する必要はなく、この発明では、像担持体と少なくとも現像装置を一体的に構成し、画像形成装置本体に対して一括して着脱し得るようにすればよい。